令和6年度版

 

§6 厚生年金保険の制度の沿革

ここでは、厚生年金保険の制度の沿革について学習します。

 

 

〔1〕労働者年金保険法の制定

被用者のための公的年金制度は、船員を対象とした「船員保険法」から始まりました(【昭和14.4.6法律第73号】。昭和14年4月6日公布、主要部分は昭和15年6月1日施行)。

船員保険法は、戦時体制のもとで海運業の重要性が高まっていたこと等を背景として、医療、年金、労働災害及び失業に関する給付を行う総合保険として誕生しました。

 

ちなみに、のちの昭和60年の改正(昭和61年4月1日施行)により、船員保険法の職務外の年金部門(公的年金制度に相当する部分です)は厚生年金保険に統合されました(船員保険の被保険者数の減少等に伴い、船員保険事業の財政の安定が損なわれていたためです)。

船員保険制度は、その後も財政状況が悪化し、さらに平成19年の改正(平成22年1月1日施行)により、労災保険に相当する部分(職務上の疾病・年金部門)は労災保険制度に、雇用保険に相当する部分(失業部門)は雇用保険制度に統合されており、現在の船員保険法は、健康保険に相当する部分(職務外疾病部門)及び船員保険制度に独自の労災保険の上乗せ給付を行っており、全国健康保険協会が保険者となっています。

 

船員保険法の制定により、一般の労働者についても年金制度の創設の気運が高まり(労働者の保護のほか、生産力の拡充・戦力の増強といった側面も考慮されたものです)、「労働者年金保険法」が昭和16年(1941年)3月11日に公布されました(【昭和16.3.11法律第60号】。昭和17年6月1日全面施行)。これが現在の厚生年金保険法の前身です。

当初は、工場等で使用される男子の現業労働者(いわゆるブルーカラー)を被保険者としていました。

財政方式は、完全積立方式(将来の給付に必要な原資を、あらかじめ保険料により積立てておく財政方式)であり、現在の世代間扶養の仕組みである賦課方式(ある年度の給付費はある年度の保険料(及び国庫負担)で賄うという財政方式。即ち、就労世代(現役世代)が納付した保険料により高齢者世代の給付費を賄うもの)ではありませんでした。

 

労働者年金保険法は、昭和19年に「厚生年金保険法」に改称され、男子の事務労働者や女子も対象とするものとなりました。

 

 

〔2〕旧法

終戦後の昭和29年厚生年金保険法全面的改正が行われました(【昭和29.5.19法律第115号】)。この改正後の厚生年金保険法を「旧法」といいます。

この昭和29年の改正による旧法は、現在の厚生年金保険法骨格を形成したものでした。

即ち、従来の報酬比例部分のみの年金であったものを、報酬比例部分定額部分組み合わせた年金制度としたこと、支給開始年齢を引き上げたこと(一般男子は55歳から60歳に、女子や坑内員は50歳から55歳に引き上げました)、財政方式を完全積立方式から修正積立方式(賦課方式の要素を取り入れた積立方式)に変更したこと等を特徴とします。

 

 

以上までの重要年号をゴロ合わせにより記憶します。国年法でご紹介したものです。

 

※【ゴロ合わせ】

・「いろいろ得つき採用された寒い国民皆年金

(いろいろメリットがあるだろうと採用された国民皆年金ですが、現状ではお寒い状態です。)

 

→「いろ、(い)ろ(=昭和「16」年に「労」働者年金保険法が制定)、とく(=昭和「19」年に厚生年金保険法に改称)、つき(=昭和「29」年に厚生年金法改正。この昭和29年改正後の旧厚生年金保険法を旧法といいます)、

採用(=国民年金が昭和「34」年制定された。無拠出制の福祉年金開始)された、さむ(=昭和「36」年に拠出制が開始。「国民皆年金」制度の実現)、(む)い(=昭和「61」年、国民年金法の改正。新法の施行)、国民皆年金」

 

 

 

〔3〕昭和60年の改正 = 基礎年金制度の導入

少子高齢化の進行、低経済成長化、財政状況が悪化した公的年金制度の出現などの諸問題を背景として、昭和60年(1985年)に国民年金法を含む公的年金制度大改正が行われ、それまで各公的年金制度が独自に支給してきた基礎的な給付の部分が国民年金に統合され、全国民共通の基礎年金制度が導入されました(【昭和60.5.1法律第34号】)。

施行は、昭和61年4月1日からです。

この昭和60年改正後の厚生年金保険法を「新法といいます。

 

この基礎年金制度の下では、厚生年金保険の従来の定額部分は基礎年金として支給されることとなり、厚生年金保険は基礎年金の上乗せとして報酬比例部分を支給することとなりました。

老齢厚生年金は65歳から支給されることとなりましたが、旧法における老齢年金の支給開始年齢は60歳(原則)であったため、当分の間、60歳台前半の者(65歳未満の者)に対しては、旧法の仕組みに準じて、定額部分が加算された特別支給の老齢厚生年金を60歳(原則)から支給することとしました。

なお、若干既述しましたが、船員保険の職務外の年金部門が厚生年金保険に統合され、船舶も適用事業所となり、船員は第3種被保険者として厚生年金保険の被保険者となることとなりました。

 

※ 次の図は、一番下からお読み下さい(再上部の図が現在の形です)。

 

 

 

 

〔4〕新法における主要な改正

一 平成6年改正

平成6年の改正(【平成6.11.9法律第95号】)により、特別支給の老齢厚生年金において、受給権者の生年月日に応じて、定額部分支給開始年齢引き上げることにより、定額部分の支給を廃止することとしました(平成7年4月1日施行)。

 

また、特別支給の老齢厚生年金と雇用保険法による給付(基本手当及び高年齢雇用継続給付)との調整が行われることとなりました(平成10年4月1日施行)。 

 

 

 

二 平成12年改正

平成12年の改正(【平成12.3.31法律第18号】)により、特別支給の老齢厚生年金について、定額部分の支給の廃止後に、報酬比例部分支給開始年齢引上げることにより、最終的に特別支給の老齢厚生年金を廃止することとしました(平成12年4月1日施行)。

 

また、総報酬制が導入され(平成15年4月1日施行)、報酬月額のほか、賞与の額も保険料の賦課・徴収の対象とし、保険給付にも反映させることとなりました。

 

さらに、報酬比例部分の年金額の引下げ(5%適正化)も行われています(平成12年4月1日施行)。

 

65歳以後の在職老齢年金(いわゆる高在老)の制度も創設されました(平成14年4月1日施行)。

 

なお、被保険者(当然被保険者)の資格については、昭和60年の改正により、65歳に達した日に資格を喪失することとなっていましたが、この平成12年の改正により、70歳に達した日資格を喪失することに改められました(平成14年4月1日施行。少子高齢化の進行による厚生年金保険制度の財政状況の悪化を考慮して、保険料の拠出期間を延長したものです)。

 

 

 

三 平成16年改正

平成16年の改正(【平成16.6.11法律第104号】)においては、持続可能な年金制度の構築のため、公的年金制度全般にわたる大きな改正がなされています。

例えば、財政については、保険料水準固定方式の導入、マクロ経済スライドによる給付水準の自動調整の導入などです(マクロ経済スライドが実際に適用されたのは、平成27年度からでした)。

 

  

 

四 平成19年改正

政府管掌年金事業の適正な運営及び政府管掌年金に対する国民の信頼の確保を図るため、社会保険庁廃止するとともに、平成22年(2010年)1月から日本年金機構が設立されました。

 

また、いわゆる年金記録問題において、対象者が消滅時効等により不利益を受けないようにする見地から、特別法も制定されました(「年金記録問題救済3法」)。

即ち、(1)年金時効特例法(「厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律」(【平成19.7.6法律第111号】)。平成19年7月6日公布、同日施行)、(2)年金給付遅延加算金支給法(「厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律」(【平成21.5.1法律第37号】)。平成22年4月30日施行)、及び(3)厚生年金特例法(「厚生年金保険の保険給付及び保険料の納付の特例等に関する法律」(【平成19.12.19法律第131号】)。平成19年12月19日公布、同日施行)です。

この3法については、すでに国年法で学習しました(国年法のこちら以下)。

 

 

 

五 平成22年改正

障害厚生年金配偶者の加給年金額要件緩和する改正が行われました(障害基礎年金の子の加算額の改正と同様です)。

 

即ち、障害厚生年金の配偶者の加給年金額について、従来は、障害厚生年金の「受給権の取得(発生)当時」に生計を維持している配偶者があることが加算の要件でした(例えば、障害厚生年金の受給権の取得後に婚姻をしても、加算の対象となりませんでした)。

しかし、平成22年の改正(「国民年金法等の一部を改正する法律」。【平成22.4.28法律第27号】。いわゆる「障害年金加算改善法」)により、障害厚生年金の受給権者によって生計を維持しているその者の65歳未満の配偶者があるときには、加給年金額が加算されることとなり、受給権の取得後に生計を維持する配偶者を有した場合にも加算が行われることとなりました(平成23年4月1日施行)。

障害者の所得保障を強化する趣旨です。

 

なお、老齢厚生年金の配偶者及び子の加給年金額においては同様の改正は行われず、従来通り、受給権の取得当時に生計を維持していた一定の配偶者又は子があることが要件であることには注意です。

前記の障害年金加算改善法による障害厚生年金及び障害基礎年金の改正は、障害者の保護のため加算の要件を緩和した趣旨ということになります。

 

 

 

六 被用者年金一元化法 = 平成24年改正

平成24年に、「被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」(【平成24.8.22法律第63号】)が制定されました。いわゆる被用者年金一元化法です。

厚生年金保険制度に公務員及び私学教職員も加入することとして、共済年金制度が厚生年金保険制度に統合されることになりました。

主要な部分は、平成27年2015年10月1日から施行されました。

前記〔3〕の昭和60年の基礎年金制度の創設以来の大改正です。

 

なお、この施行日については、【社会一般 令和元年問10①(こちら)】で出題されています。

 

※【ゴロ合わせ】

・「一元化の船出だ」 

 

→「一元化(=「一元化」法の施行日)の、船(=「27」)、出(=「10」)だ」

 

 

※ この被用者年金一元化法の制定の趣旨について、通達では、次のように説明しています。

 

・【平成24.8.22年発0822第2号】 

 

「被用者年金制度については、多様な生き方働き方に公平な社会保障制度を目指す平成24年2月17日の閣議決定『社会保障・税一体改革大綱』に基づき、公的年金制度の一元化を展望しつつ、今後の制度の成熟化少子・高齢化の一層の進展等に備え、年金財政の範囲を拡大して制度の安定性を高めるとともに、民間被用者、公務員を通じ、将来に向けて、同一の報酬であれば同一の保険料を負担し、同一の公的年金給付を受けるという公平性を確保することにより、公的年金全体に対する国民の信頼を高めるため、厚生年金保険制度に公務員及び私学教職員も加入することとし、厚生年金保険制度に統一するものである。」

 

 

ここで、被用者年金一元化法の主な特徴について簡単に説明しておきます(すでに国民年金法の「国民年金制度の沿革」の個所でもご紹介しました)。

 

(一)厚生年金保険に公務員及び私学教職員も加入することとし、公的年金制度の2階部分(被用者年金の部分)が厚生年金保険に統一されました。

 

(二)厚生年金保険と共済年金との差異については、原則として、厚生年金保険にそろえる形で差異を解消しました。

 

具体的には、次のような例があります。

 

1「主体」の問題として、「被保険者(加入者)」について、従来、公務員については年齢制限がありませんでしたが、一元化後は、公務員も厚生年金保険の被保険者となるため、原則として、70歳に達すると被保険者の資格を喪失します。

 

「実施者」の問題として、公務員等に関する厚生年金保険の事務については、事務処理の効率化・円滑化の見地から、従来の共済年金の制度と同様に、共済組合等が行うこととしています(「実施機関」の制度)。

 

2「客体」の問題として、「報酬関係」については、公務員等についても、「標準報酬制」が採用されます。

 

3「事業」の問題として、「保険給付」については、一元化法による改正前の共済年金の制度が厚生年金保険の制度に統一される次のような例があります。

即ち、改正前の退職共済年金における在職支給停止の制度は、厚生年金保険の在職老齢年金の制度と同内容に改められました。

また、改正前の障害共済年金においては不要であった保険料納付要件が必要となりました。

さらに、遺族共済年金における転給の制度は、廃止されました。

 

4「費用(財政)」の問題として、「保険料」については、公務員等の保険料率を引き上げ、厚生年金保険の保険料率(上限は18.3%となります)に統一されます。

  

(三)共済年金の3階部分である「職域加算額の加算(職域部分・職域年金)」は、廃止され、新たに「退職等年金給付(いわゆる年金払い退職給付)」の制度が創設されました。

 

 

被用者年金一元化法による改正の特徴については、次のページでやや詳しく見ます。

 

 

 

七 年金機能強化法 = 平成24年改正

平成24年に「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」(【平成24.8.22法律第62号】。前述の六の被用者年金一元化法と同じく、平成24年8月22日公布です。以下「年金機能強化法」といいます)が制定されました。

改正事項は、(国年法の改正事項も含め)非常に多岐に渡りますが、厚年法における主な改正事項は、以下の通りです。

 

 

(1)産前産後休業終了時改定(第23条の3)の創設(平成26年4月1日施行

 

産前産後休業を終了した被保険者が、当該産前産後休業終了日において当該産前産後休業に係る子を養育する場合に、随時改定の要件に該当しなくても、次の定時決定を待たずに、当該被保険者の申出により、標準報酬月額が改定されるというものです(第23条の3(厚年法のパスワード)。本文は、こちら以下)。

育児休業等終了時改定と基本的にパラレルな仕組みとなっています。

 

 

(2)産前産後休業期間中の保険料の免除(第81条の2の2)の創設(平成26年4月1日施行)

 

産前産後休業期間中の被保険者及び事業主が負担する保険料を免除することにより、産前産後休業の取得者の保険料の負担を軽減しその生活保障を図るとともに、少子化対策の一環として次世代育成支援を図ろうとした趣旨です(第81条の2の2。本文は、こちら以下)。

 

 

(3)未支給給付の請求権者の拡大(平成26年4月1日施行)

 

未支給給付の請求権者について、改正前の請求権者以外の3親等内の親族も、請求権者として追加されました(第37条第4項施行令第3条の2)。

国年法同様の改正です(本文は、こちら以下)。

 

 

(4)老齢厚生年金の支給の繰下げの申出日の擬制に係る改正(平成26年4月1日施行)

 

老齢厚生年金の支給の繰下げの申出日の擬制に係る改正が行われています(第44条の3第2項)。

老齢基礎年金の支給の繰下げの申出日の擬制に係る改正と同様の内容です。詳細は、本文で見ます(こちら以下)。

 

 

(5)障害厚生年金の額の改定請求の要件の緩和(平成26年4月1日施行)

 

障害厚生年金の受給権者は、厚生労働大臣に対し、障害程度が増進したことによる障害厚生年金の額の改定を請求することができますが、従来は、当該受給権を取得した日又は厚生労働大臣の診査を受けた日から起算して1年を経過した日「後」でなければ、当該額の改定請求を行うことはできませんでした。

 

改正により、これらの場合のほかに、「障害厚生年金の受給権者の障害の程度が増進したことが明らかである場合として厚生労働省令で定める場合」にも改定請求が認められることとなりました(第52条第3項。本文は、こちら以下)。

これも障害基礎年金の額の改定請求の要件の緩和の改正と同様です。

 

 

(6)年金たる保険給付の受給権者の所在不明の届出

 

老齢厚生年金等の年金たる保険給付の受給権者の属する世帯の世帯主その他その世帯に属する者は、当該受給権者所在1月以上明らかでないときは、速やかに、所定の事項を記載した届書を機構に提出しなければならない旨の規定が新設されました(施行規則第40条の2等。平成26年4月1日施行)。

 

近時、年金給付の受給権者が死亡しているのに年金給付の支給が継続される事例が見られるようになり、年金給付の過払を防止しようとする趣旨です(本文は、こちら以下)。

国年法の改正と同様です。 

 

平成29年度試験 改正事項

(7)短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大

 

年金機能強化法による改正に伴い、短時間労働者のうち適用除外者が明文化されるとともに、短時間労働者に対する被用者保険の適用の拡大が行われました(平成28年10月1日施行)。

 

即ち、1週間の所定労働時間又は1月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の4分の3未満である短時間労働者(以上について、当サイトでは、「4分の3未満短時間労働者」といいますが、法律上の表現ではありません)であっても、

 

①1週間の所定労働時間が20時間以上であること、

 

②月額報酬が8万8千円以上であること、

 

③学生等でないこと(以上、第12条第5号イ~ニ参考)、

 

④特定適用事業所(国又は地方公共団体の適用事業所を含みます)に使用されること(年金機能強化法附則第17条第1項第12項)、

 

というすべての要件(4要件。創設当時は5要件でしたが、令和4年10月1日施行の改正によりいわゆる「継続1年以上の使用見込み」の要件が廃止されました)を満たす場合は、被保険者となります。

 

さらに、後述の持続可能性向上法(平成28年改正法)により平成29年4月1日施行の追加改正が行われています。

即ち、特定適用事業所以外の適用事業所に使用される特定4分の3未満短時間労働者(これは法律上の表現であり、4分の3未満短時間労働者であって、法本則の適用除外事由(第12条各号)に該当しない者のことです)であっても(つまり、上記の④の要件を満たさない場合です)、労使合意に基づく事業主の適用拡大の申出(任意特定適用事業所の申出)により被保険者となることができるといった見直しが行われました。 

詳細は、本文のこちら以下です。

 

平成30年度試験 改正事項

(8)老齢厚生年金等の受給資格期間の10年への短縮

 

老齢基礎年金等と同様に、老齢厚生年金等の受給資格期間が10年に短縮されました(第42条第2号)。平成29年8月1日の施行です。詳細は、本文のこちら以下です。

 

なお、遺族厚生年金の長期要件に係る受給資格期間は、25年のままであることに注意です。

即ち、遺族厚生年金の長期要件は、老齢厚生年金の受給権者(25年(原則)以上の受給資格期間を満たす者に限ります)又は25年(原則)以上の受給資格期間を満たした者が死亡したことです(第58条第1項第4号)。

 

 

なお、受給資格期間の10年への短縮に係る改正の施行日である「平成29年8月1日」は、次のゴロでも利用して覚えておきます。

 

※【ゴロ合わせ】

・「10年で受給や

 

→「10年で、じゅ、きゅう(=「29」年)、や(=「8」月)」

 

 

 

八 平成25年改正

平成25年改正法(「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」。【平成25.6.26法律第63号】。以下、「平成25年改正法」又は「健全化法」といいます)により、厚生年金基金及び企業年金連合会に関する大改正が行われました(本文は、こちら以下)。

 

即ち、厚年法の第9章「厚生年金基金及び企業年金連合会」が削られ、その他の厚年法の基金・連合会に関連する規定も改正されるなど、平成25年改正法の施行日(基金関係の規定は、平成26年4月1日)以後は、厚生年金基金の新設は認められないこととなりました。

そして、施行日に現存する厚生年金基金については、平成25年改正法附則において「存続厚生年金基金」として例外的に存続が認められることとされました(平成25年改正前の厚生年金保険法の規定が原則として適用されます。平成25年改正法附則第4条第5条等)。

また、従来の解散の特例の制度を見直して新たに特例解散の制度を創設することにより(平成31年3月31日(平成25年改正法の施行日から5年経過)までこの特例解散が可能でした)、基金の解散や代行返上を促進するとともに、他の企業年金制度への移行を支援するための措置等が定められました。

平成31年4月1日以後は、存続厚生年金基金の厳格な存続基準を満たしていない基金は、解散命令の対象となっています。

実質的には、厚生年金基金の制度は終焉を迎えています。

 

企業年金連合会についても、平成25年改正法の施行日に現存する企業年金連合会は「存続連合会」として存続が認められますが、将来(遠い将来)は、確定給付企業年金法に基づいて新たに「企業年金連合会」が設立されることとなりました。 

 

 

 

九 平成26年改正(年金事業運営改善法)

平成26年6月11日公布の「政府管掌年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律」(【平成26.6.11法律第64号】。以下、「平成26年改正法」又は「年金事業運営改善法」といいます)において、次のような改正が行われています。

 

 

(1)特定厚生年金保険原簿記録の訂正請求の制度の創設

 

国年法の「特定国民年金原簿記録の訂正請求の制度」とパラレルに、厚年法においても、新たに年金個人情報の訂正の手続の制度が設けられました。「特定国民年金原簿記録の訂正請求の制度」です(第28条の2等の新設。平成27年3月1日施行)。(本文は、こちら

被保険者又は被保険者であった者に厚生労働大臣に対する自己の年金個人情報の訂正請求権を認めることにより、迅速な年金記録の訂正を可能とさせ、その保護を図ろうとした趣旨です。

 

 

(2)延滞金の割合の軽減

 

これも、国年法と同様の改正です(平成27年1月1日施行)。

延滞金の額は、徴収金額に、納期限の翌日から徴収金完納又は財産差押の日の前日までの期間の日数に応じ、年14.6パーセント(当該督促が保険料に係るものであるときは、当該納期限の翌日から3月〔徴収法の場合は2月〕を経過する日までの期間については、年7.3パーセント)の割合を乗じて計算した額となります(第87条第1項)。

 

しかし、本改正により、当分の間の特例が定められました。

即ち、「各年の特例基準割合が年7.3パーセントの割合に満たない場合」は、上記本則の「年14.6パーセント」は「特例基準割合に年7.3パーセントの割合を加算した割合」と読み替え、「年7.3パーセント」は「特例基準割合に年1パーセントの割合を加算した割合(当該加算した割合が年7.3パーセントの割合を超える場合には、年7.3パーセントの割合)」と読み替えることとなりました(法附則第17条の14)。

令和3年度試験 改正事項】

以上のように、「特例基準割合」を基礎として延滞金の割合の特例が定められていましたが、令和3年1月1日施行の改正(【令和2.3.31法律第8号】。「所得税法等の一部を改正する法律」附則第149条)により、この「特例基準割合」が「延滞税特例基準割合」(「平均貸付割合年1パーセントの割合を加算した割合」を意味します)に改められるといった見直しが行われました。

以上、本文はこちら以下です。

 

 

 

十 持続可能性向上法 = 平成28年改正

平成28年12月26日公布の「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律」(【平成28.12.26法律第114号】。以下、「持続可能性向上法」又は「平成28年改正法」といいます)においては、次のような改正が行われました。

 

 【平成29年度試験 改正事項

(1)機構による情報の提供等

 

厚生年金保険事業に関与する機構と厚生労働大臣との間の協力関係に関する規定が定められました(第100条の12~第100条の14。平成28年12月26日施行)。(本文は、こちら以下

国年法でも、同様の規定が定められました(国年法第109条の12~第109条の14こちら以下)。

 

平成29年度試験 改正事項

(2)短時間労働者に関する追加改正

 

前述の「年金機能強化法」による改正の(7)で触れましたように(こちら)、平成28年10月1日施行の「短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大」に関する改正にさらに追加の改正が行われました(平成29年4月1日施行)。

特定適用事業所以外の適用事業所に使用される特定4分の3未満短時間労働者が被保険者となる場合(任意特定適用事業所の申出)等が定められました。

詳細は、本文のこちら以下です。

 

平成30年度試験 改正事項

(3)マクロ経済スライドの修正 = キャリーオーバー

 

国民年金における年金額の改定の改正と同様ですが、厚生年金保険においても、キャリーオーバーの制度が新設されました(平成30年4月1日施行)。

即ち、マクロ経済スライドを適用できなかった年度がある場合(マクロ経済スライドは、通常の年金額の改定により年金額が増加する場合に適用され、また、マクロ経済スライドの適用により前年度の年金額を下回る場合には適用されません)、その未調整部分をのちの適用可能となる年度に繰り越して調整するというキャリーオーバーという制度が導入されました。

詳しくは、再評価率の改定のこちらで学習します。

 

 

 

※ その後の近時の改正事項については、「改正・最新判例」の以下の個所で整理しています(「改正・最新判例」のパスワードをご使用下さい)。

 

・平成30年度改正 = こちら

 

・令和元年度(2019年度。平成31年度)改正 = こちら

 

・令和2年度(2020年度)= こちら

 

・令和3年度(2021年度)= こちら

 

・令和4年度(2022年度)= こちら

 

・令和5年度(2023年度)= こちら

 

・令和6年度(2024年度)= こちら

 

 

 

以上で、厚生年金保険の制度の沿革を終わります。

次のページでは、被用者年金一元化法による改正の特徴を整理しておきます。