平成30年度版

 

§2 例外的な算定方法

前のページで学習しました原則的な算定方法に対して、例外的な算定方法も定められています。

この例外的な算定方法について、第12条において以下のような規定があります。

 

〇 例外的な算定方法:

 

一 最低保障第12条第1項ただし書

 

この平均賃金の最低保障には、次の2種類があります。

 

(一)賃金が、日、時間、出来高払制その他の請負制によって定められた場合

(即ち、日給制、時間給制、出来高払制等の場合)

 

(二)賃金の一部が、月、週その他一定の期間によって定められた場合

(即ち、賃金の一部が、月給制、週給制等の場合)

 

 

二 雇入後3箇月未満の者の平均賃金第12条第6項

 

三 日々雇い入れられる者の平均賃金同条第7項

 

四 その他、平均賃金を算定できない場合同条第8項

 

 

実際は、四の具体的ケースが多数あります(ただし、試験対策上は深入りする必要ありません)。

以下、詳しく見ます。 

 

 

一 最低保障(第12条第1項ただし書)

平均賃金の最低保障が定められている場合があります。

 

○趣旨

賃金が日給制、時間給制又は出来高払制その他の請負制によって定められている場合、平均賃金の算定期間中に欠勤・休日日数が多いときは、その平均賃金も低額となってしまうため、平均賃金の最低保障額が規定されています(第12条第1項ただし書)。

 

※ 初めに、最低保障の全体像の図を掲載しておきます。この図を覚えれば、最低保障については試験対策は終了です。 

 

 

 

(一)賃金が、日、時間、出来高払制その他の請負制によって定められた場合 = 日給制、時間給制又は出来高払制等の場合(第12条第1項第1号)

◆賃金が、時間出来高払制その他の請負制によって定められた場合(即ち、日給制時間給制又は出来高払制その他の請負制の場合)には、

「賃金の総額」を「その期間中に労働した日数」で除した金額の「100分の60」〔=上記の図の(一))が最低保障額となります(即ち、この額と既述の「原則的な算定方法により算定した額」(こちら以下)との高い方が平均賃金となります)。(第12条第1項第1号

 

※ 分母が「労働日数」に代わる点と、60%を乗ずる点に注意です。

 

(この60%と定めた理由は、通常の場合、稼働状況の最も悪い事業においても、1箇月のうち18日は働くという労基法制定当時の状況を根拠にしたものとされます。)

 

なお、最低保障の制度は、他の労働法や社会保険法でも定められていることがあり、各法ごとにしっかり記憶しませんと、混乱のもとです。

例えば、雇用保険法における賃金日額の最低保障額では、本件の(一)にあたるケースで、100分の70を乗じます(雇用保険法のこちらの図の(一)の部分)。

本件の平均賃金の日給制等における最低保障額は、「『基法ゆえ、『ろく』」とでも覚えておきます。  

 

※ 前提として、賃金形態(賃金支払形態。基本給がどのような計算単位で定められるかの問題)について言及しておきます。

 

日給制時間給制とは、労働した日又は時間によって賃金を算定して支払う制度のことです。

 

請負制とは、一定の労働の成果ないし出来高に応じて賃金を算定して支払う制度のことです(民法上の請負契約のことではありません)。

出来高払制は、この請負制の一種であり例示になります(この出来高払制その他の請負制については、第27条の出来高払制の保障給(こちら)の個所もご参照下さい)。

 

月給制とは、月を単位として賃金を算定して支払う制度のことです。

完全月給制の場合は、月給を例えば月20万円と定めたときは、その月の所定労働日数にかかわらず、毎月20万円の賃金が支払われることになります。

他方、日給月給制の場合は、月を単位として賃金を算定して支払う点では、完全月給制と同様ですが、遅刻、早退、欠勤等により所定の労働をしなかった場合には、かかる月の賃金の中から労働しなかった部分に応じて一定額を差し引いて残額を支払う制度です。つまり、月給制を前提としつつ、労働しなかった分はカットする制度です。

 

なお、この日給月給制の場合は、上記の第12条第1項ただし書(上掲(こちら)の図の〔2〕の(一)及び(二))の日給制等に係る最低保障は適用されないと解されています(【昭和27.5.10基収第6054号】参考)。

日給月給制も、月を単位とした賃金形態である点であくまで月給制の一種であり(労働しなかった分が賃金カットされるにすぎません)、文言上、第12条第1項ただし書にあたらないとされます。

ただ、日給月給制の場合にも、欠勤が多い場合に平均賃金が低下するという問題がある点では、第12条第1項ただし書の日給制等の場合と異ならないため、同条第8項に基づき、特別に最低保障額の算定方法が定められています。試験対策上は、その内容までは不要といえます。

 

 

・【過去問 平成19年問3A】

設問:

平均賃金は、原則として、これを算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除して算定するものとされているが、賃金がいわゆるパートタイマーに多くみられるように労働した時間によって算定される場合には、その金額は、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60を下回ってはならないこととされている。

 

解答:

正しいです。パートタイマーの賃金が労働した時間によって算定される場合とは、第12条第1項第1号の時給制にあたるケースです。 

 

 

(二)賃金の一部が、月、週その他一定の期間によって定められた場合 = 賃金の一部が、月給制、週給制等の場合(第12条第1項第2号)

◆賃金の一部が、その他一定の期間によって定められた場合(即ち、賃金の一部が、月給制週給制等の場合)には、「その部分の総額」を「その期間の総日数」で除した金額と「上記こちら)の(一)の金額」の合算額最低保障額となります(即ち、この額と既述の原則的な算定方法により算定した額(こちら以下)との高い方が平均賃金となります)。(第12条第1項第2号

 

例えば、月給制、週給制等による賃金(原則的な算定方法による場合です)と上記(一)(こちら)の日給制・時間給制等による賃金が併給されているケースです。

月給制のサラリーマンが、残業代は時間給制によっているような場合です。

 

以上で、最低保障について終わり、以下、その他の例外的な算定方法を見ます。 

 

 

二 雇入後3箇月未満の者の平均賃金(第12条第6項)

雇入後3箇月未満の者については、平均賃金の算定対象期間(算定事由発生日以前3箇月間。賃金締切日がある場合は、直前の賃金締切日から起算します)は、雇入後の期間とします(第12条第6項)。

 

○趣旨

雇入後3箇月未満の者については、原則的な算定方法である3箇月の算定期間では算定できないことから、雇入後の期間の総日数とその期間中の賃金総額を基礎として算定するものです。

 

(一)この雇入後3箇月未満の者に係る算定の場合においても、賃金締切日があるときは直前の賃金締切日から起算します(第12条第2項)(【昭和23.4.22基収第1065号】)。

【過去問 平成14年問3B(後掲)】

 

・雇入後3箇月未満の者に係る算定の場合においても、賃金締切日がある場合の平均賃金算定の簡易化という第12条第2項の趣旨があてはまるからです。

ただし、このように直前の賃金締切日から算定しますと、いまだ一賃金算定期間(1箇月を下らない期間)に満たなくなる場合には、算定事由発生日から起算するとされます(第12条第8項こちら)の「平均賃金が算定できない場合」の問題とされています。【昭和27.4.21基収第1371号】参考)。

(賃金締切日から起算しますと算定期間が短くなり過ぎる場合には、不当な平均賃金の額が算定されうるため、算定期間を長くしようとしたものとなります。)

 

 

(二)定年退職後継続して再雇用され、再雇用後3箇月に満たない場合の平均賃金については、「当該労働者の勤務の実態に即し、実質的に判断することとし、形式的には定年の前後によって別個の契約が存在しているが、定年退職後も引続いて嘱託として同一業務に再雇用される場合には、実質的には一つの継続した労働関係であると考えられるので・・・〔中略〕・・・算定事由発生日以前3カ月を算定期間として平均賃金を算定する」とされます(【昭和45.1.22基収第4464号】参考)。

 

即ち、定年後の継続雇用において再雇用後3箇月未満で算定事由が発生した場合に、第12条第6項をそのまま適用して再雇用後の期間のみを算定期間としては、再雇用後は通常賃金が低下することや労働日も減少すること等もあって、平均賃金が著しく低下するおそれがあります。

そこで、労働者保護の見地から、退職の前後の期間は実質的には一連の労働関係であると評価して、退職前の期間も通算するという修正を図ったものと考えられます。

 

 

(三)また、新設会社に転籍(移籍出向)したところ、転籍後3箇月未満で算定事由が発生した場合について、労働関係が実質的に継続していると認められるとして、旧会社における期間を通算した3箇月間について平均賃金を算定するとした通達もあります(【昭和27.4.21基収第194号】参考)。

 

 

・【過去問 平成14年問3B】

設問:

平均賃金は、原則としてこれを算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除して算定するものとされており、その期間は、賃金締切日がある場合においては直前の賃金締切日から起算することとされているが、雇入後3か月未満の労働者の平均賃金を算定する場合には、原則的な計算期間の3か月に満たない短期間であるので、賃金締切日の有無にかかわらずすべて算定事由発生日以前雇入後の全期間について計算することとされている。

 

解答:

設問の場合にも、原則として、直前の賃金締切日から起算します(第12条第2項。詳細は、こちらです)。よって、設問は誤りです。

 

 

三 日々雇い入れられる者の平均賃金(第12条第7項)

◆日日雇い入れられる者については、その従事する事業又は職業について、厚生労働大臣の定める金額を平均賃金とします(第12条第7項)。

 

○趣旨

日々雇い入れられる者(=1日の契約期間で雇い入れられ、その日限りで当該労働契約が終了する労働者のことです(【昭和29.9.15基収第4025号】参考))については、かかる労働者の稼働にムラがあるばかりでなく、通常、日によって就業する事業場を異にし、従って賃金額も変動することが多いです。

そこで、一般常用労働者の平均賃金と同一に取り扱うことは妥当でないことから、厚生労働大臣が全国的な基準により平均賃金を定めることとしたものです。

 

この日々雇い入れられる者の平均賃金は、原則として、一稼働日当たりの賃金額に100分の73を乗じて得た額とされています(【昭和38年労働省告示第52号「日雇労働者の平均賃金を定める告示」】/【平成12年労働省告示第2号】参考)。

 

※ この告示の具体的内容は細かいため、試験対策上は不要でしょう。厚生労働大臣が定めるという点と念のため上記の73%という数字だけ、覚えておくことにします。

この73%とは、日雇労働者の稼働率です(1箇月(30日)に22日労働するというものです)。

 

※【ゴロ合わせ】

・「日雇の平均賃金は苦労で波がある

(日雇労働者は苦労するので、平均賃金も波があるというイメージです)

 

→「日雇の・平均賃金は、苦労で(=「厚労」大臣)・波(=「73」%)がある」 

 

 

四 その他、平均賃金を算定できない場合(第12条第8項)

(一)以上の第12条第1項から第6項までの規定による算定方法によっては平均賃金を算定できない場合は、厚生労働大臣が定めます(第12条第8項)。

 

【条文】

第12条

 

〔第7項までは、省略(全文は、こちら)。〕

 

8.第1項乃至第6項によつて算定し得ない場合の平均賃金は、厚生労働大臣の定めるところによる。

 

 

※ なお、上記第8項の「第1項乃至第6項によって算定し得ない場合」とは、文字通り、算定が不可能な場合だけでなく、算定が著しく不適当な場合も含むものと解されます(なぜなら、算定が著しく不適当な場合には、合理的な平均賃金の算定のため、それを修正する必要がありますし、本条第8項は、基本的な算定方法により平均賃金を算定することが不可能な場合のみに適用を厳格に制限する趣旨とまでは読み取れないからです)。

 

 

(二)具体的には、施行規則第3条(試用期間中に算定事由が発生した場合)、施行規則第4条(控除期間が3箇月以上にわたる場合及び雇入れ日に算定事由が発生した場合)及び昭和24年労働省告示第5号(平成12年労働省告示第120号)が定めています。

 

施行規則第4条及び昭和24年労働省告示第5号(平成12年労働省告示第120号)においては、基本的には、都道府県労働局長が定め、都道府県労働局長が算定できないと認めた場合には、厚生労働省労働基準局長が定めることとされています。

 

以下、これらを若干見てみます(昭和24年の告示は、内容が詳細であり試験対策上は細かく把握する必要はありません。後述の程度で足ります)。基本的には、以下の太字部分を押さえれば足りると思われます。 

 

 

1 試用期間中に算定事由が発生した場合(施行規則第3条)

試みの使用期間中算定事由が発生した場合は、当該試用期間中日数及び賃金により算定します(施行規則第3条)。

 

 

【施行規則】

施行規則第3条

試の使用期間中に平均賃金を算定すべき事由が発生した場合においては、法第12条第3項の規定にかかわらず、その期間中の日数及びその期間中の賃金は、同条第1項及び第2項の期間並びに賃金の総額に算入する。

 

 

○趣旨

試用期間中の日数及び賃金は、平均賃金の算定基礎から控除することとなっており(第12条第3項第5号こちら)、従って、試用期間中に算定事由が発生した場合は、同条第1項から第6項までの規定によって平均賃金を算定することができないため、これらを控除しないことに修正したものです。 

 

 

2 施行規則第4条の場合

施行規則第4条では、次の(1)と(2)について、都道府県労働局長が定めるものとされています。

 

(1)控除期間(日数及び賃金総額の両者から控除される期間。試用期間は除きます)が3箇月以上にわたる場合。

 

なお、使用者の帰責事由によらない休業業務外の傷病私傷病による休業組合専従による休業など)が3箇月以上にわたる場合も同様に取り扱われます(昭和24年労働省告示第5号第1条)。

 

※ この(1)は、結局、休業期間が3箇月以上にわたる場合となります。

 

(2)雇入れ日算定事由が発生した場合

 

 

【施行規則】

施行規則第4条

法第12条第3項第1号から第4号までの期間〔=日数及び賃金総額の両者から控除されるものです。試用期間は除きます〕が平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前3箇月以上にわたる場合又は雇入れの日に平均賃金を算定すべき事由の発生した場合の平均賃金は、都道府県労働局長の定めるところによる。

 

 

○趣旨

(ア)上記2の(1)(こちら)の「控除期間が3箇月以上にわたる場合」については、算定基礎となる日数及び賃金総額がなくなり、原則的な算定方法では算定できなくなるため、都道府県労働局長が定めることとしたものです(具体的には、原則として、控除期間の最初の日を算定事由発生日とみなして算定することとしています)。

 

(イ)なお、使用者の帰責事由によらない休業期間(例えば、私傷病による休業期間)が3箇月以上にわたる場合も、上記と問題状況は類似しますから、昭和24年労働省告示第5号第1条により、都道府県労働局長が定めることとされ、具体的には、上記2の(1)の「控除期間が3箇月以上にわたる場合」の決定基準を準用することとなっています(【昭和24.4.11基発第421号】参考)。

 

例えば、業務外の傷病(私傷病)による休業期間や組合専従による休業期間などが3箇月以上にわたる場合です。

 

なお、算定期間中の「一部」に組合専従のための休業期間がある場合には、その期間中の日数及び賃金を控除して算定することは、こちらで既述しました。

対して、本件は、算定対象期間中の「全部」が組合専従による休業期間のケースです。下の3でも言及します。

 

※ 以上より、結局、「休業期間が3箇月以上にわたる場合(算定対象期間全部が休業の場合)」は、都道府県労働局長が定めることになります。 

 

 

(ウ)上記2の(2)(こちら)の「雇入れ日に算定事由が発生した場合」は、算定対象期間がなく、平均賃金を算定できないため、都道府県労働局長が定めることとしています(具体的には、当該労働者に対して一定額の賃金が予め定められている場合は、その額により推算し、そうでない場合は、その日に当該事業場で同一業務に従事した労働者の一人平均の賃金額により推算して、都道府県労働局長が定めるとされます(【昭和22.9.13発基第17号】参考))。  

 

 

3 その他、都道府県労働局長が算定できないと認めたとき

◆その他、都道府県労働局長が算定できないと認めたときは、厚生労働省労働基準局長が定めます(【昭和24年告示第5号第2条】)。

 

※ この具体的ケースは多数あり、試験対策上は不要でしょう。

ただし、以下には少し注意して下さい。

 

(1)算定対象期間中に、争議行為による休業期間がある場合、組合専従期間がある場合(上記のケースと異なり、休業期間の「一部」に争議行為による休業があるケースです)、育児介護休業法第2条第1号(労働一般のパスワード)に規定する育児休業以外の育児休業期間がある場合は、こちら以下ですでに学習しましたように、これらの期間は算定基礎の日数及び賃金総額から控除されますが、これも本件3の昭和24年告示に基づくものです。

 

 

(2)じん肺にかかった労働者に関する平均賃金の算定について

 

じん肺法第4条第2項の健康管理の区分が管理4(じん肺による著しい肺機能の障害があると認められるもの等)と決定され、又は合併症にかかっていると認められた労働者に対する災害補償等に係る平均賃金については、「診断によって疾病の発生が確定した日」を算定事由発生日として算定した金額が、

当該労働者がじん肺にかかったため「作業の転換をした日」(=つまり、粉じん作業以外の作業に従事することとなった日です)を算定事由発生日として算定した金額に満たない場合には、都道府県労働局長が、作業転換日を算定事由発生日として算定した金額をその平均賃金とするとされています(【昭和39.11.25基発第1305号】参考)。

 

疾病に係る算定事由発生日は、本来は、「診断によって疾病の発生が確定した日」となるのですが、この時点では、すでにじん肺の影響により十分に労働ができない等によって賃金が低下している場合があるため、作業転換前の期間を算定期間とした平均賃金といずれか高い方の額を平均賃金とするという趣旨です。

労災保険法の給付基礎日額(労災保険法のこちら)においても同様の取扱いがなされます。 

 

 

以上で、平均賃金を終わります。

これにて、「賃金」は終了です。続いて、「労働時間」に入ります。

  

 

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