改正・最新判例 2021年度(令和3年度)

ここでは、2021年度(令和3年度)の試験に関する改正(平成31年4月11日以降に施行された法令を対象とします)や最新判例の情報をお知らせ致します。

 

今年度の改正は、広範囲に影響が及ぶものが目白押しであり、なかなか厄介です。このページで概要を押さえてから、細部に入ってみて下さい。

 

 

※ 令和2年度以前の改正事項等についても、出題されていないような事項については注意が必要です。

近時の特に選択式では、直近の改正事項より数年前の改正事項の方が出題されることがあります。

 

※ 労働一般、社会一般及び安衛法については、次のページで掲載します。

なお、2021年度の試験の対象に係るすべての改正等を網羅しているものではありません。

 

 

〔1〕労働基準法

1 副業・兼業の促進に関するガイドライン

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(平成30年策定)が改定されました(令和2年9月改定)。

労基法のみに関係するものではありませんが、ここで取り上げておきます。

労働一般のこちら以下をご参照下さい。

 

 

 

〔2〕労災保険法

1 複数事業労働者に関する改正

令和2年9月1日施行の改正(【令和2.3.31法律第14号】。「雇用保険法等の一部を改正する法律」第2条)により、複数事業労働者(事業主が同一人でない2以上の事業に使用される労働者。第1条)に対する労災保険による保護が強化されました。

 

即ち、まず、複数事業労働者2以上の事業の業務を要因とする負傷、疾病、障害又は死亡が「複数業務要因災害」とされ(第7条第1項第2号)、この「複数業務要因災害に関する保険給付」が新設されました(第20条の2等)。

複数業務要因災害は、2以上の事業の業務が要因となって初めて傷病等との因果関係が認められる場合(一つの事業の業務のみでは傷病等との因果関係が認められない場合)を意味します(複数業務要因災害も、「業務に関する傷病等」であるという点では業務災害の1種とはいえますが、複数の事業の業務を総合して初めて因果関係が認められる場合であるため、従来の「業務災害に関する保険給付」ではカバーされない類型であることから、新設されたものです)。 

 

次に、複数事業労働者に係る給付基礎日額について、複数の事業ごとに算定した給付基礎日額合算して算定することとなりました(従って、災害が発生してない事業場で支払われる賃金も合算して算定されます)。

即ち、複数事業労働者業務上の事由複数事業労働者2以上の事業の業務を要因とする事由又は複数事業労働者通勤による傷病等により保険給付が行われる場合の給付基礎日額は、原則として、当該複数事業労働者を使用する事業ごとに算定した給付基礎日額に相当する額を合算した額を基礎とするものとされました(第8条第3項施行規則第9条の2の2)。

(この給付基礎日額の合算は、「複数業務要因災害に関する保険給付」だけでなく、「複数事業労働者に係る業務災害及び通勤災害に関する保険給付」においても同様です。)

 

以上について、基本的には、こちらのページで掲載しています。

 

 

2「過重負荷による脳・心臓疾患の認定基準」及び「心理的負荷による精神障害の認定基準」の改正

いわゆる「過重負荷による脳・心臓疾患の認定基準」及び「心理的負荷による精神障害の認定基準」が改正されています。

 

まず、前記1の複数業務要因災害に関する保険給付の新設に伴い、複数業務要因災害に係る「脳・心臓疾患」及び「精神障害」の認定基準がそれぞれ見直されています(複数業務要因災害に係る部分が追加されています。【令和2.8.21日基発0821第3号】及び【令和2.8.21基発0821第4号】。こちら及びこちら)。

 

また、「心理的負荷による精神障害の認定基準」については、令和2年6月1日施行の職場におけるパワーハラスメント防止対策の法制化(労働施策総合推進法。労働一般のこちら以下(労働一般のパスワード))に伴い、同認定基準の別表1「業務による心理的負荷評価表」において、職場における「パワーハラスメント」が独立化される等の見直しが行われました(【令和2.5.29基発0529第1号】)。こちら以下で見ています。

 

 

3 休業(補償)等給付における部分算定日に関する改正

休業(補償)等給付における「賃金を受けない日」について、「部分算定日」という概念が登場しました。

詳細は、こちらです。

 

 

 

〔3〕雇用保険法

1 被保険者期間の算定方法の改正

令和2年8月1日施行の改正(【令和2.3.31法律第14号】第1条)により、被保険者期間の算定方法が改められました。

これは、被保険者期間の算定について、 賃金支払の基礎となった「日数」だけでなく「労働時間数」による基準も補完的に追加することによって、被保険者であるにもかかわらず日数が少ないために基本手当等の失業等給付等の支給を受けられないという問題に対応するための見直しです。

 

即ち、被保険者期間について、従来は、被保険者であった期間を、離職からさかのぼって1箇月ごとに区分し、この区分された各期間のうち、原則として、賃金支払基礎日数が11日以上である期間を1箇月の被保険者期間として算定するのを基本としていました(第14条第1項本文)。 

しかし、週の所定労働時間が20時間以上であり、かつ、継続雇用見込み期間が31日以上である等の被保険者となる要件(こちら)を満たしていても、例えば週2日と週3日の労働を定期的に継続する場合等、勤務態様(短日数勤務)によっては、1箇月11日以上の賃金支払基礎日数を満たすことが難しく、基本手当等の失業等給付等を受給できない被保険者が存在する場合があります。

そこで、副業・兼業の増加も踏まえて、被保険者期間の算定において、日数だけでなく労働時間数による基準も補完的に考慮することとし、原則の算定方法により被保険者期間が12箇月(特定受給資格者又は特定理由離職者にあっては6箇月)に満たない場合は、賃金支払基礎日数が11日以上である期間又は賃金支払の基礎となる時間数(賃金支払基礎時間数)が80時間以上である期間を1箇月として算定することを基本とするものと見直されました(第14条第3項)。

令和2年8月1日(以後に離職日があるもの)から適用されています。

 

なお、この賃金支払基礎時間数を補完的に考慮する改正は、例えば、高年齢受給資格の要件に係る被保険者期間の算定等においても同様に行われています。

詳しくは、こちら以下です。

 

 

2 正当な理由がない自己都合退職の給付制限期間の短縮

(A)重責解雇の場合(被保険者が、自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された場合)、又は(B)正当な理由がない自己都合退職の場合は、待期期間の満了後、1箇月以上3箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間は、基本手当は支給されません(第33条第1項本文)。

この公共職業安定所長の定める期間(給付制限期間)は、原則として3箇月とされていますが(【行政手引52205 ロ】)、令和2年10月1日施行の運用の改正により、(B)「正当な理由がない自己都合退職」の場合は、離職日以前5年間に2回以上(正当な理由がない)自己都合退職に係る離職日がないときは、給付制限期間は原則として2箇月に短縮されました((A)の「重責解雇」の場合は含まないことに注意です)。

転職を試みる労働者の再就職活動中の生活の安定を強化する趣旨の改正です。

こちら以下で掲載していますが、詳細については、施行後、行政手引に掲載されてからご紹介します。

 

 

3 賃金日額関係の改正

賃金日額関係が改正されています。

例年行われる改正であり、金額自体は、試験対策上あまり重要でありません。 

さしあたり、賃金日額の下限額・上限額はこちら、賃金日額と基本手当の給付率はこちらです。

 

 

 

〔4〕徴収法

1 労災保険率の決定方法に関する複数業務要因災害に係る災害率の反映

労災保険法において複数業務要因災害に関する保険給付が新設されたことに伴い、徴収法の労災保険率の決定方法について、複数業務要因災害に係る災害率が考慮されることとなりました(令和2年9月1日施行)。

即ち、労災保険率は、労災保険法の保険給付及び社会復帰促進等事業に要する費用の予想額に照らし、将来にわたって、労災保険の事業に係る財政の均衡を保つことができるものでなければならないものとされ、政令(施行令)で定めるところにより、労災保険法の適用を受けるすべての事業の過去3年間の業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害に係る災害率並びに二次健康診断等給付に要した費用の額、社会復帰促進等事業として行う事業の種類及び内容その他の事情を考慮して厚生労働大臣が定めます(第12条第2項)。

この条文は頻出であるため、注意が必要です。

 

なお、複数業務要因災害に係る災害率は、メリット制においては「業務災害率」であり、収支率に影響しません(第12条第3項柱書施行規則第16条第2項)。

複数業務要因災害は、事業主の事業に直接起因した(因果関係を有する)災害ではないため、事業主にその災害率を不利益に考慮すべきでないことからです。

 

以上、詳しくは、徴収法のこちら以下及びこちら以下です。 

 

 

2 二事業に係る率の弾力的変更の追加

雇用保険率は、 第12条第4項において法定の料率が規定されていますが、毎会計年度において、雇用保険の財政状況に応じて一定の範囲内で弾力的に変更ができる仕組みとなっています。

雇用保険の保険事故である失業は、経済の変動に応じて大きな増減を生じうるものであるため、雇用保険の収支について単年度ごとにバランスを図ることが困難であり、法律改正によらずに迅速に雇用保険率の変更を行う必要があるためです。

そこで、一定の場合に、法律の改正によらずに、厚生労働大臣が労働政策審議会の意見を聴いて失業等給付額等に係る雇用保険率を変更することできます(第12条第5項)。

また、二事業に係る率(雇用保険率のうち、雇用保険二事業(就職支援法事業は除きます)の費用に充てるべき部分の率。原則として1,000分の3.5)についても、弾力的変更が認められています(現在、弾力的変更が適用されているため、1,000分の3)。

 

後者の二事業に係る率の弾力的変更について、従来は、毎会計年度末の「二事業費に充てる額の残額」が「二事業費として徴収した額」の1.5倍を超えた場合には、二事業に係る率(及び失業等給付額等に係る雇用保険率の弾力的変更の範囲も)を1年間、「1,000分の0.5」(0.05%)引き下げることが認められていました(第12条第8項第10項)。

さらに、令和3年4月1日施行の改正により、労働政策審議会の意見を聴いて、1年以内の期間を定め、当該「二事業に係る率の弾力的変更」が行われた率(及び失業等給付額等に係る雇用保険率の弾力的変更の範囲)からさらに1,000分の0.5」の率を引き下げる措置が可能となりました(第12条第9項第11項)。

 

この改正(【令和2.3.31法律第14号】。育児休業給付の失業等給付からの分離や労災保険法の複数事業労働者に関する改正等を定めた法律です)が検討されていた当時は、雇用保険二事業に係る雇用安定資金(雇用保険2事業における積立金に相当するもの)の収支状況が好調だったため、二事業率をさらに引き下げられるとしたものでした。

しかし、その後のコロナ禍によって、雇用調整助成金の支出が膨大となるなど、状況が変動しています。 

 

以上、徴収法のこちら以下です。

 

 

 

〔5〕国民年金法

1 任意加入被保険者の要件の改正

日本国内に住所を有すること(国内居住)を要件とする任意加入被保険者について、新たに「国民年金法の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者」でないことが要件として追加されました(令和3年4月1日施行)。 

 

右の図の「A」、「B」及び「D-1」の任意加入被保険者についての要件です。

 

日本国内に住所を有すると認められる場合であっても、被保険者とするのが妥当でない者を適用除外とする趣旨であり、先に令和2年4月1日から施行されていた第1号被保険者及び第3号被保険者の場合と同様の改正です。

 

具体的には、「医療滞在ビザにより国内に滞在する外国人」及び「観光等(ロングステイビザ)による短期滞在の外国人」の適用を除外することが予定されています(今後、施行規則で規定されます)。  

 

 

2 改定率の改定方法の改正

令和3年4月1日施行の改正(持続可能性向上法。【平成28.12.26法律第114号】)により、改定率の改定方法が見直されました。

給付水準を現役世代の負担能力に見合ったものにして、将来の若年者世代の負担の軽減を図る趣旨です。

具体的には、現役世代の保険料負担能力を示す賃金の変動をできるだけ考慮して年金額を改定するという見地から、名目手取り賃金変動率の変動を重視した取扱いに改められています。

詳しくは、国年法のこちら以下です。

なお、厚年法の再評価率の改定についても、基本的には同様の考え方で改正が行われています。

 

 

3 寡婦年金の支給要件の改正

寡婦年金の支給要件として、従来、夫が「老齢基礎年金の支給を受けて」いないこと、及び「障害基礎年金の受給権者であったこと」がないことが必要でした。

しかし、これによると、文言上は、夫が障害基礎年金の受給権を取得しただけで寡婦年金の支給対象とならないこととなり、老齢基礎年金の場合との不均衡がありました(実務上は、夫が老齢基礎年金の受給権を取得した月に死亡した場合は寡婦年金の支給対象となり、受給権を取得した月の翌月以後に死亡した場合は原則として寡婦年金の支給対象とならないと取り扱われていました。例外は、老齢基礎年金の支給繰下げの待機のケースです。また、障害基礎年金についても、実際は、裁定請求をした場合に「障害基礎年金の受給権者であったこと」に該当すると解されていました)。

以上の文言上の問題等があったことから、令和3年4月1日施行の改正(【令和2.6.5法律第40号】。いわゆる「年金制度改正法」)により、障害基礎年金について文言の修正が図られました。

即ち、寡婦年金は、「老齢基礎年金又は障害基礎年金の支給を受けたことがある」夫が死亡したときは支給されない旨に改められました(第49条第1項ただし書)。

つまり、老齢基礎年金又は障害基礎年金の支給を受けたことがないことが、寡婦年金の支給要件です。

この障害基礎年金の「支給を受けたことがある」の具体的な解釈については、施行前にでも、通達による通知があるかもしれません。

以上、詳細はこちら以下です。

 

 

4 脱退一時金の支給額の改正

脱退一時金の支給額について、令和3年4月1日施行の改正(いわゆる「年金制度改正法)により改められています。

従来、脱退一時金の支給額は、対象月数(第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間等の月数を合算した月数のこと。改正後は「対象月数」ではなく「保険料納付済期間等の月数」と表現されます)に応じて、36月(3年)を上限としていましたが、これが60月(5年)を上限とすることに改められる予定です(こちら以下)。

細部については政令で定められるため、政令の公布後にご紹介します。

 

 

5 申請免除の要件の改正

申請免除(申請全額免除、一部免除、学生納付特例又は納付猶予)の要件として、従来、地方税法に定める「障害者」又は「寡婦」(前年の所得(原則)が125万円以下であるものに限ります)がありました。

これについて、地方税法の改正を受けて、令和3年4月1日施行の改正(いわゆる「年金制度改正法」)により、「地方税法に定める障害者、寡婦その他の同法の規定による市町村民税が課されない者として政令で定める者」という要件に改められました。

従来の地方税法に定める障害者又は寡婦のほかに、地方税法上の「ひとり親」が追加され、①妻と離婚し又は死別等し、生計同一の子を有する父(「寡」)と、②「未婚又は」であって生計同一の子を有する者、が新たに申請免除の対象とされます。

また、前年所得の要件が、125万円以下から135万円以下に改められる予定です(以上、こちら以下です)。

詳細は、今後、政令で規定されます。

 

なお、納付猶予については、従来、令和7年6月までの時限措置でしたが、5年間延長され、令和12年6月までの時限措置に改められました(いわゆる「年金制度改正法」により令和2年6月5日施行)。

 

令和12年6月については、次のゴロです。

 

※【ゴロ合わせ】

・「のうふゆうよは、無理よ」

(財政状況が悪く、国には納付猶予制度をやる余裕はもうありません。)

 

➡「のう・ふ(=「1・2」)ゆうよは、無(=「6」月)理よ」

 

 

〔6〕厚生年金保険法

1 標準報酬月額等級表の改正

令和2年8月1日施行の改正(【令和2.8.14政令第246号】第1条)により、厚生年金保険の標準報酬月額等級表の最高等級(第31級:標準報酬月額62万円)の上に、さらに1等級(第32級:標準報酬月額65万円)が追加されました(前掲の政令により、第20条第1項の表中の第31級が読み替えられています)。

即ち、厚生年金保険の第32級は、標準報酬月額は65万円、報酬月額は63万5千円以上の場合です(健康保険の等級表の第35級に相当します)。

こちら以下です。

 

なお、等級表の改正は、随時改定のこちらの問題にも影響することに注意です。 

 

 

2 脱退一時金の支給額の改正

厚生年金保険の脱退一時金の支給額についても、令和3年4月1日施行の改正(いわゆる「年金制度改正法)により改められています。

国民年金の脱退一時金の支給額の改正の場合と同様に、従来、36月(3年)であった上限が60月(5年)に改められる予定です(こちら以下)。

細部については政令で定められるため、政令の公布後にご紹介します。

 

 

3 標準報酬改定請求(3号分割標準報酬改定請求)の期限の例外の改正

離婚分割(合意分割)に係る標準報酬改定請求は、原則として、当該離婚等をしたときから2年以内に行うことが必要です。

ただし、審判、調停等により按分割合を定める場合において、離婚成立日等の翌日から起算して2年を経過した後に当該按分割合を定める審判等が確定等したときは、その審判等が確定等した日の翌日から起算して1月経過するまでは、標準報酬改定請求をすることができます(施行規則第78条の3第2項)。

家事事件や人事事件の手続に相当期間を要する場合があり、当該手続の終了前に請求期限が渡過してしまう可能性があるため、標準報酬改定請求の期限の例外を認めたものです。

 

この「1月」の期限について、令和2年8月3日公布・施行の改正(【令和2.8.3厚生労働省令第147号】)により、「6月」に伸長されました(こちら以下)。

 

ちなみに、この改正前の「の翌日から起算して1か月」については、【選択式 平成29年度 D(こちら)】で空欄とされていました。

 

なお、以上の離婚分割(合意分割)に係る標準報酬改定請求における「1月 ➡ 6月」の期間の伸長の改正については、法第78条の20第1項本文の規定により標準報酬改定請求があったときにあったものとみなされる3号分割標準報酬改定請求の請求期間(特定期間の全部又は一部を対象期間として、「離婚分割(合意分割)に係る標準報酬改定請求」をしたときは、当該請求をしたときに、原則として、3号分割標準報酬改定請求もあったものとみなされます)においても同様の改正が行われています(施行規則第78条の17第2項)。詳細は、こちら以下です。

 

 

4 立入検査等の対象となる事業主の拡大

第100条の立入検査等の対象となる事業主が、従来の①「適用事業所の事業主」及び②「第10条第2項〔=任意単独被保険者の資格取得〕の同意をした事業主」のほかに、③「適用事業所であると認められる事業所の事業主」も追加され、これらを「適用事業所の事業主」と表現することとなりました(第100条第1項)。

 

これは、適用事業所であるかどうか不明であるような場合(例:新規適用事業所の届出や被保険者資格取得届を提出していないようなケース)においても、適用事業所であると認められる事業所の事業主であれば、本条の立入検査等を行うことを可能とした改正です(厚生年金保険の適用の確実化を図るため(例:社会保険の適用を逃れている事業所の発見等)、立入検査等の実効性を確保させようとしたものです)。

 

すでに、雇用保険法の立入検査等(雇用保険法第79条第1項等(雇用保険法のパスワード)においても、令和2年4月1日施行の改正により同様の見直しが行われていました(雇用保険法のこちら参考)。 

 

なお、前記の「適用事業所等の事業主」が、正当な理由なく、第100条第1項に違反して、文書等の提出をしなかった等の場合は、罰則(6月以下の懲役又は50万円以下の罰金)が定められました(第102条第2項。従来も、前記の①と②の事業主については、本条違反の罰則が規定されていました)。

以上、本文は、こちら以下です。

 

 

 

〔7〕健康保険法

1 電子資格確認の制度の新設

令和2年10月1日施行の改正(【令和元.5.22法律第9号】。「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」第2条)により、電子資格確認(オンライン資格確認)の制度が新設されました。

 

これは、個人番号カード(いわゆるマイナンバーカード)を利用することによって、オンラインにより被保険者又は被扶養者であることの確認を受けるものです(いわばマイナンバーカードを被保険者証の代わりとして利用できるというものです。ただし、マイナンバーカードのICチップの電子証明書(利用者証明用電子証明書)を用いて(読み取って)資格に係る情報の照会を行うものであり、マイナンバー自体は用いません)。

 

この電子資格確認の制度の新設により、療養の給付等の受給手続が改められます。

即ち、療養の給付等を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、保険医療機関等又は指定訪問看護事業者のうち、自己の選定するものから、電子資格確認その他厚生労働省令で定める方法により、被保険者等であることの確認を受け、当該給付等を受けるものとします(療養の給付の第63条第3項のほか、入院時食事療養費の第85条第1項、入院時生活療養費の第85条の2第1項、保険外併用療養費の第86条第1項及び訪問看護療養費の第88条第3項が改められています)。

具体的には、電子資格確認によらない場合は、従来のように、被保険者証等を提出することにより、被保険者であることの確認を受けて療養の給付等を受けます(詳細は、施行規則において規定されています)。  

 

【厚労省の資料より転載】

 

この電子資格確認によって、被保険者証の提出が不要となり、保険医療機関等の側にとっても資格の確認が円滑化すること(なお、失効した被保険者証の利用による過誤請求等も防止できるとされます)、高齢受給者証、限度額適用・標準負担額減額認定証及び限度額適用認定証の提出の提出も不要となること、近い将来は政府が運営するマイナポータルにおいて、患者本人や医療機関等(患者の同意が必要)が薬剤情報や特定健診データ等の閲覧が可能となることといったようなメリットがあるとされます。  

 

電子資格確認の定義も含め、詳細はこちら以下です。

 

 

2 被保険者等記号・番号等の利用制限等

令和2年10月1日施行の改正(前掲の【令和元.5.22法律第9号】)により、被保険者の記号・番号について、これまでの世帯単位から個人単位(被保険者又は被扶養者ごと)に定めるものとし、「被保険者等記号・番号」に改められました。

 

これにより、保険者を異動しても個々人として資格管理が可能となり、前述の電子資格確認の制度の実現を担保することになります。 

そして、プライバシー保護の観点から、健康保険事業とこれに関連する事務以外に、被保険者等記号・番号等の告知を要求することが制限されました。

 

なお、「被保険者等記号・番号」とは、保険者が被保険者又は被扶養者の資格を管理するための記号、番号その他の符号として、被保険者又は被扶養者ごとに定めるものをいいます(第3条第12項)。

被保険者証については、前掲の図(厚労省の資料から転載)のように、これまでの世帯単位の番号に2桁の番号が追加されます(ただし、実際にこの新たな被保険者証が発行されるのは、令和3年春のようです)

 

「保険者番号」とは、厚生労働大臣が健康保険事業において保険者を識別するための番号として、保険者ごとに定めるものをいいます(第3条第11項)。

 

以上の「保険者番号」及び「被保険者等記号・番号」を「被保険者等記号・番号」といいます(第194条の2第1項)。

 

詳細は、こちら以下です。

 

 

3 匿名診療等関連情報に関する制度の新設

医療・介護分野のビッグデータについて、安全性の確保に配慮しつつ、幅広い主体による利活用を進め、学術研究、研究開発の発展等につなげていくため、研究者等へのデータ提供、データの連結解析等に関する規定が整備されました(令和2年10月1日施行ですが、一部の規定は令和4年4月1日施行です)。

 

この点、医療情報については、高齢者医療確保法において、「医療保険等関連情報」(いわゆるレセプト情報・特定健診等情報です。高齢者医療確保法第16条第1項(社会一般のパスワード))が匿名化された「匿名医療保険等関連情報」に関して規定され(同法第16条の2第1項)、介護情報については、介護保険法において、「介護保険等関連情報」(介護保険法第118条の2第1項)が匿名化された「匿名介護保険等関連情報」(同法第118条の3第1項)に関して規定され、それぞれの法においてこれらの利用・提供や連結等についての規定が整備されました。

 

さらに、医療情報については、健康保険法において、「診療等関連情報」(第77条第3項)が匿名化された「匿名診療等関連情報」(第150条の2第1項)に関して規定され、その利用・提供等についての規定が整備されました。

 

ちなみに、実務上、「NDB」(National Database。レセプト情報・特定健診等情報データベースであり、医療保険レセプト情報等から収集された匿名のデータベースです)と表現されているものが、「匿名医療保険等関連情報」に相当し、また、「介護DB」(介護保険総合データベース)と表現されているものが、「匿名介護保険等関連情報」に相当します。

健康保険法の「匿名診療等関連情報」は、「DPCデータベース」(DPCDB)といわれるもの(特定の医療機関への入院患者に係る入院期間のレセプト情報や病態等に係る情報のデータベース)が相当します。

DPC(Diagnosis Procedure Combination)とは、診断群分類包括評価のことであり、医療費を診断群分類ごとに包括支払い(定額支払)する方式において用いられるものとされます。

 

なお、高齢者医療確保法の「匿名医療保険等関連情報」と介護保険法の「匿名介護保険等関連情報」については、令和2年10月1日からそれらを連結して分析、提供もできることとなりましたが(高齢者医療確保法第16条の2第2項介護保険法第118条の3第2項)、健康保険法の「匿名診療等関連情報」については、令和4年4月1日から前2者との連結が行われます。

 

あとは、健康保険法第150条の2等の条文をチェックします。詳細は、こちら以下です。

 

 

次のページでは、安衛法、一般常識について見ます。