2022年度版

 

改正・最新判例 2022年度(令和4年度)

ここでは、2022年度(令和4年度)の試験に関する改正(令和3年4月17日以降に施行された法令等を対象とします)や最新判例の情報をお知らせ致します。

 

今年度の改正も、重要なものが多く厄介です。このページで概要を押さえてから、細部に入ってみて下さい。

 

 

※ 令和3年度以前の改正事項等についても、出題されていないような事項については注意が必要です。 

 

※ 労働一般、社会一般及び安衛法については、次のページで掲載しています。

 

※ なお、ここでは、2022年度の試験の対象に係るすべての改正等を網羅しているものではありません(本文では網羅しています)。

 

 

 

〔1〕労働基準法

1 副業・兼業の促進に関するガイドライン

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」のQ&Aが令和3年7月に改定されました。

かなり内容が追加されていますが、試験対策上は細かすぎる箇所も多く、取捨選択が必要です。

労働一般のこちら(労働一般のパスワード)で掲載しています。

 

 

 

〔2〕労災保険法

1 一人親方等の特別加入者の追加

前年度に引き続き、「一人親方等の特別加入者」が追加されました。

 

即ち、こちらの図の「一人親方等の特別加入者」のうち、【1】「一人親方」の1の「自動車使用の旅客・貨物の運送事業」の中に、新たに「原動機付自転車若しくは自転車を使用して行う貨物の運送の事業」(いわゆる自転車等による配達員のケースです)が追加され(施行規則第46条の17第1号こちら)、

また、同図(こちら)の【3】「特定作業従事者」の最後の8として「情報処理システムの設計等の情報処理に係る作業の従事者」(情報処理作業従事者(ITフリーランス))が追加されました(施行規則第46条の18第8号こちら)。

 

 

 

2 年金担保資金貸付事業の廃止・受給権の担保供与の禁止の例外の廃止

従来、社会復帰促進等事業のうち「独法・福祉医療機構が行うもの」として、年金受給権を担保とする小口資金の貸付業務がありました。

いわゆる年金担保資金貸付制度であり、「被災労働者等援護事業」として行われていました。

そして、保険給付を受ける権利の譲渡、担保供与及び差押えは、原則として、禁止されていますが、例外として、この福祉医療機構に対する担保供与は認められていました。 

 

しかし、この年金担保資金貸付制度は、令和4年4月1日施行の改正(いわゆる「年金制度改正法」)により廃止されました。

これは、生活費に充てられるべき年金が返済に充てられて利用者の困窮化を招く等の弊害があったことが考慮されたものです(すでに平成22年の閣議決定により廃止が決定されていました。その後、運用上、同制度の実施が縮小されており、令和3年度末に新規貸付の申込受付が終了するものとされていました)。

 

受給権の保護(担保供与の禁止)についてはこちら以下で、社会復帰促進等事業については、こちら以下で触れています。

 

なお、国民年金及び厚生年金保険における年金担保資金貸付制度による年金受給権の担保についても、同様に認められなくなりました(国年法のこちら以下)。

 

 

3 脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準の改正

脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準が改正されました。

従来の「平成13年認定基準」(「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準」。【平成13.12.12基発第1063号】。以下、「旧認定基準」といいます)に変わり、新たに「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」(【令和3.9.14基発0914第1号】。以下、「令和3年認定基準」といいます)が発出されました。

ポイントは、こちらです。

 

ここでは、イメージ図を掲載しておきます。

この図中の紫色の文字部分は重要ポイントですが、「旧認定基準」と同じ内容です。

赤字の部分及び図中の※で示された部分が「令和3年認定基準」で追加等された箇所です。

 

 

 

 

〔3〕雇用保険法

1 特例高年齢被保険者の制度の新設

令和4年1月1日施行の改正(【令和2.3.31法律第14号)により、「高年齢被保険者の特例」が創設され、「特例高年齢被保険者」の制度が試行的に導入されました(第37条の5等)。

 

従来、「1週間の所定労働時間が20時間未満である者」は雇用保険法の適用除外者であるところ(第6条第1号)、2以上の事業主の適用事業に雇用される65歳以上の者について、1つの事業主の適用事業における週所定労働時間が20時間未満であっても、2つの事業主の適用事業における週所定労働時間5時間以上のものに限ります)の合計が20時間以上であるときは、その申出により、高年齢被保険者(「特例高年齢被保険者」といいます)となることができるとするものです。 

任意加入被保険者ということになります 。

 

この特例高年齢被保険者の制度の新設は、被保険者の改正であり、雇用保険の全体に影響を及ぼすため、かなり厄介です。

例えば、主体(事務の管轄、資格の取得・喪失の要件、適用除外、届出等)、給付(高年齢求職者給付金、介護休業給付金又は育児休業給付金における休業等)、雇用保険二事業等において問題となります。

 

なお、この特例高年齢被保険者の制度の新設により、適用除外者のうち、「1週間の所定労働時間が20時間未満である者」については、特例高年齢被保険者が除かれました(第6条第1号かっこ書こちら以下)。

つまり、「1週間の所定労働時間が20時間未満である者」に係る適用除外は、特例高年齢被保険者については適用されません。

 

概要はこちら以下、より詳しくはこちら以下です。

 

 

2 育児休業給付金における産後休業を取得した被保険者に係るみなし被保険者期間の計算方法の特例

休業をした被保険者であって、原則の計算方法(育児休業開始日を起点として、「育児休業開始日」前2年間(原則)にみなし被保険者期間が12箇月以上であるかどうかを計算する方法。こちら)によるみなし被保険者期間が12箇月に満たないものについては、産前休業開始日等〔=産前休業開始日又は所定の理由があるときは厚生労働省令で定める日。これを「特例基準日」といいます〕の前2年間12箇月以上のみなし被保険者期間がある場合には、みなし被保険者期間に係る要件を満たすものとされました(第61条の7第3項)。

 

育児休業給付金の支給要件を満たすためには、「育児休業開始日」前2年間(原則)にみなし被保険者期間が12箇月以上であることが必要であり、このみなし被保険者期間は被保険者が「育児休業を開始した日」を起点(起算点という意味ではありません)として計算します(この起点の考え方は、育児休業給付金が「育児休業による所得の喪失」を保険事故としていることに由来します)。

しかし、女性が育児休業をする場合、育児休業前に産前産後休業を取得していることが一般的であるところ、1年程度勤務した後、産前休業を開始したようなケースにおいて、出産日のタイミングによってはみなし被保険者期間の要件を満たさない場合があります。

 

そこで、産後休業をした被保険者であって、みなし被保険者期間が12箇月に満たないものについては、育児休業開始日を起点とするのではなく、産前休業開始日(等)を起点としてみなし被保険者期間を計算することに見直されたものです(育児介護休業法及び雇用保険法の一部改正法(【令和3.6.9法律第58号】第4条)による令和3年9月1日施行の改正)。

 

本文は、こちら以下です。

 

 

3 期間を定めて雇用される者(期間雇用者)が育児休業給付金・介護休業給付金の支給対象となる要件の緩和

期間を定めて雇用される者(期間雇用者。有期契約労働者)について、令和4年4月1日施行の育児介護休業法の改正により育児休業及び介護休業を取得できる要件が緩和されました(次のページのこちらを参考)。

これに伴い、雇用保険法における育児休業給付金及び介護休業給付金についても、同様に支給対象となる要件が緩和されています。

 

即ち、育児介護休業法において、期間を定めて雇用される者については、「その養育する子が1歳6か月に達する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでない者」に限り、育児休業の申出をすることができるとされました(育休法第5条第1項ただし書(労働一般のパスワード)育休法のこちら以下)。

つまり、「子が1歳6か月に達する日まで雇用継続の可能性があること」が要件です。 

(なお、1歳6か月から2歳に達するまでの子について育児休業の申出をする場合には、上記の「1歳6か月」とあるのは「2歳」と読み替えます。以下、同様です。)

 

介護休業についても類似であり、育児介護休業法において、「介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日(=以下、「93日経過日」ということがあります)から6月を経過する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでない者」に限り、介護休業の申出をすることができるとされました(育休法第11条第1項ただし書育休法のこちら

 

そこで、雇用保険法においても、一般被保険者又は高年齢被保険者である期間雇用者は、「その養育する子が1歳6か月に達する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでない者」に限り、育児休業給付金の支給対象となります(施行規則第101条の22第1項第4号)。

 

介護休業給付金の場合は、93日経過日から6月経過日まで雇用継続の可能性があることが要件です(施行規則第101条の16第1項第4号)。  

 

以上、育児休業給付金については、雇用保険法のこちら以下、介護休業給付金については、こちら以下です。

 

 

 

〔4〕国民年金法

(Ⅰ)年金制度改正法に関する改正事項

国民年金法については、まず、いわゆる年金制度改正法(【令和2.6.5法律第40号】。「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」)により重要な改正が多数行われています(厚生年金保険法においても同様です)。

主な改正事項は、以下の通りです。

 

1 国民年金手帳の廃止と基礎年金番号通知書への切り替え(国年法のこちら以下

 

2 老齢基礎年金の支給の繰上げによる減額率の(月0.5%から月0.4%への)引き下

(ただし、これは年金制度改正法による改正に基づく施行令の改正です。)こちら以下

 

3 老齢基礎年金の支給の繰下げによる増額の上限年齢の(70歳から75歳への)引上げ(こちら以下

 

4 受給権の保護における年金担保資金貸付制度の廃止(こちら以下及びこちら以下

 

5 20歳前傷病による障害基礎年金の前年所得による支給停止の期間等の改正

 

(1)支給停止の期間について、「その年の8月から翌年の7月まで」から「その年の10月から翌年の9月まで」への改正(こちらの(ⅰ))

 

(2)所得制限額の10万円の引上げ(こちらの(ⅱ))(この(2)は、年金制度改正法による改正ではなく、施行令の改正です。)

 

(3)20歳前傷病による障害基礎年金の受給権者の障害基礎年金所得状況届等の指定日(提出期限)の「7月31日」から「9月30日」への変更(こちら及びこちら以下(この(3)は、年金制度改正法による改正ではなく、告示の改正です。)

 

 

※ 厚生年金保険法においても、上記の2~4は同様であり、1についても、年金手帳が廃止され基礎年金番号通知書に切り替えられた点で同様です。 

 

 

(Ⅱ)国年法に関するその他の改正事項

1 DV被害者に係る遺族年金等の生計同一認定要件の判断に関する通達の発出

DV被害者に係る遺族年金等の生計同一認定要件の判断について、従来の事務連絡を廃止し新たな基準を定めた通達【令和3.9.1年管管発0901第1号】が発出されました。

令和3年10月1日から適用されています。

詳細は、国年法のこちら以下です。

 

 

 

 

〔5〕厚生年金保険法

(Ⅰ)年金制度改正法に関する改正事項

(A)年金制度改正法に関する国年法と共通する改正事項

まず、年金制度改正法に関する改正事項のうち、国年法と共通するものは、以下の通りです。

 

 

1 年金手帳の廃止と基礎年金番号通知書への切り替え(こちら以下

 

2 老齢厚生年金の支給の繰上げによる減額率の(月0.5%から月0.4%への)引き下

(ただし、これは年金制度改正法による改正に基づく施行令の改正です。)

(本来の老齢厚生年金の支給繰上げについては、こちら以下。経過的な繰上げ支給の老齢厚生年金については、こちら以下

 

3 老齢厚生年金の支給の繰下げによる増額の上限年齢の(70歳から75歳への)引上げ(こちら以下

 

4 受給権の保護における年金担保資金貸付制度の廃止(こちら以下及びこちら以下

 

 

(B)年金制度改正法に関する厚年法特有の改正事項

次に、年金制度改正法に関する改正事項のうち、厚年法に特有のものは以下の通りです。

 

1 在職定時改定

 

◆65歳以上の被保険者である老齢厚生年金の受給権者について、退職時改定とは別に、毎年1回定時に年金額の改定が行われることとなりました(こちら以下)。

 

即ち、65歳以上老齢厚生年金の受給権者毎年9月1日(以下、「基準日」といいます)において被保険者である場合の老齢厚生年金の額(基本年金額)は、基準日の属する月被保険者であった期間をその計算の基礎とするものとし、基準日の属する月翌月(=10月分)から、年金の額を改定します(第43条第2項)。 

一般に、「在職定時改定」といわれます。

 

就労継続する在職受給権者について、退職を待たずに早期に就労による年金額の増加を反映させようとした趣旨です。

 

なお、この在職定時改定の制度は、65歳以上の者について適用されます。

即ち、65歳以上の老齢厚生年金の受給権者である被保険者が適用対象とされていることには注意です。

従って、在職定時改定の制度は、「特別支給の老齢厚生年金」については適用されませんし(法附則第9条)、繰上げ支給の老齢厚生年金の受給権者についても、65歳未満の段階では適用されません法附則第15条の2。これは、「本来の老齢厚生年金の支給の繰上げ」だけでなく、「経過的な繰上げ支給の老齢厚生年金」についても同じです。こちら以下も参考です)。 

 

この在職定時改定の制度の新設により、従来、「退職時改定」と規定されていた箇所についても、例えば、「在職定時改定又は退職時改定」として「在職定時改定」が追加されるなど、在職定時改定の新設により影響される箇所が少なくないです。

例えば、次のような箇所です。

 

 

(1)加給年金額

 

加給年金額は、老齢厚生年金(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240(原則)以上であるものに限ります)の受給権者が受給権を取得した当時、その者によって生計を維持していたその者の所定の配偶者又は子があるときに加算されます。

ただし、受給権者が受給権を取得した当時、年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240未満であっても、退職時改定により当該月数が240以上となるに至った当時、その者によって生計を維持していた所定の配偶者又は子があれば加算されます(第44条第1項本文こちら以下)。

 

今回の「在職定時改定」の制度の新設によって、「退職時改定」に「在職定時改定」が追加されました。

即ち、受給権者が受給権を取得した当時、年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240未満であっても、在職定時改定又は退職時改定により当該月数が240以上となるに至った当時、その者によって生計を維持していた所定の配偶者又は子があれば、加給年金額が加算されます。

 

 

※ 配偶者の加給年金額の支給停止:

 

なお、年金制度改正法による改正ではないのですが、配偶者の加給年金額の支給停止について、施行令の重要な改正がありますので、便宜上、ここで触れておきます。

 

老齢厚生年金(又は障害厚生年金の受給権者配偶者が老齢厚生年金、障害基礎年金、障害厚生年金その他の被用者老齢退職年金給付障害年金給付受給権を有する間は、加給年金額の支給が停止されます(第46条第6項第54条第3項)。(加給年金額の加算による生計費の保障の必要性が乏しいからです。なお、この支給停止の問題は、老齢厚生年金の配偶者の加給年金額だけでなく、障害厚生年金の配偶者の加給年金額についても、同様です。)

 

そして、従来は、上記の給付の全額につき支給を停止されている場合は加給年金額は支給停止となりませんでした(施行令第3条の7で規定されています)。即ち、老齢退職給付が全額支給停止されている場合も、加給年金額は加算されました。

しかし、令和4年4月1日施行の施行令の改正によりこれが改められ、「障害を支給事由とする給付であってその全額につき支給を停止されているもの」のみが支給停止されないことに見直されました(施行令第3条の7ただし書)。

即ち、老齢厚生年金(又は障害厚生年金)の受給権者の配偶者が受給権を有する障害給付全額支給停止されている場合は、加給年金額支給停止になりませんが、配偶者が老齢退職給付を受給している場合は、それが全額支給停止されていても、加給年金額は支給停止されることとなりました。

これは、従来は、配偶者の老齢厚生年金等が一部でも支給されている場合には加給年金額が加算されない一方で、配偶者の賃金が高く、在職老齢年金の制度によりその全額が支給停止となっている場合には加給年金額が加算されるといった不合理が生じていたため、配偶者が老齢厚生年金等の老齢退職給付の受給権を有する場合には、その全額が支給停止されている場合であっても、加給年金額額の支給を停止することに見直されたものです。

本文は、こちらです(障害厚生年金については、こちら以下)。

 

 

(2)2以上期間者に係る在職定時改定

 

2以上の種別の被保険者であった期間を有する者(2以上期間者)に係る老齢厚生年金について、第43条第2項(在職定時改定)の規定を適用する場合は、在職定時改定に係る年金額の計算の基礎となる被保険者であった期間は、各号の厚生年金被保険者期間ごとに適用し、被保険者の資格は、被保険者の種別ごとに適用します(第78条の26第2項)。

 

退職時改定におけるのと同様の取り扱いになります(詳しくは、こちらです)。 

 

 

(3)遺族厚生年金の受給権者である65歳以上の配偶者が老齢厚生年金の受給権を有する場合に、当該老齢厚生年金の額が在職定時改定又は退職時改定により改定されたときの年金額の増額改定

 

これは、遺族厚生年金の年金額の改定の問題ですが、やや細かい箇所であるため、さしあたりは、「在職定時改定」も追加された点を押さえておいて下さい。

本文は、こちら以下です。

 

 

2 低在老の制度の改正

 

65歳未満の被保険者等である老齢厚生年金の受給権者に係る在職老齢年金の制度(いわゆる低在老の制度)は、令和4年4月1日施行の改正により、基本的に、高在老の制度と同様の支給調整の仕組みに見直されました。

 

詳しくは、総論についてこちら以下、各論についてこちら以下をご参照下さい。  

 

 

3 消滅時効に関する改正

 

消滅時効を定めた第92条について、「保険給付の返還を受ける権利は、これを行使することができる時から5年を経過したとき」に時効消滅する旨が追加される(同条第1項)とともに、「保険料徴収権、保険料の還付を受ける権利又は保険給付の返還を受ける権利の消滅時効については、その援用を要せず、その利益の放棄はできない」旨(同条第2項)が新設されました。

これらの結論自体は、従来から会計法第30条及び第31条第1項を根拠として認められていたものであり、今回は、厚年法上、根拠規定が明記されたものです。

詳しくは、こちら以下です。

 

 

 

〔6〕健康保険法

(Ⅰ)全世代対応型社会保障制度構築法(令和3年改正法)に関する改正事項

「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」(【令和3.6.11法律第66号】。当サイトでは、「全世代対応型社会保障制度構築法」ないし「令和3年改正法」といいます)が制定され、健康保険法等の医療保険法の見直しが行われています(原則として、令和4年1月1日施行です)。

 

この改正法は、「全世代型社会保障改革の方針について」(令和2年12月15日閣議決定)等を踏まえ、 現役世代への給付が少なく、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し 、全ての世代で広く安心を支えていく「全世代対応型の社会保障制度」を構築するという趣旨に基づくものです。

 

健康保険法においては、主に次のような改正が行われています。

 

1 任意継続被保険者の制度の見直し

 

(1)任意継続被保険者の申出による資格喪失を認める

 

(2)任意継続被保険者の保険料の算定基礎(標準報酬月額)の見直し

 

2 傷病手当金の支給期間の通算化 

 

3 保健事業における健診情報等の活用促進

 

 

以下、内容を簡単に見ます。

 

 

1 任意継続被保険者の制度の見直し

(1)申出による資格喪失

 

任意継続被保険者について、従来認められなかった申出による資格喪失(任意喪失・任意脱退)が認められることとなりました。

即ち、任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を保険者申し出た場合において、その申出が受理された日の属する月末日が到来したときは、当該末日翌日に資格を喪失します(第38条第7号)。

 

任意継続被保険者の制度については、近年、その廃止を含めた見直しを主張する健康保険の保険者側と、見直しにより負担増加のおそれがある国民健康保険の保険者側(地方自治体等)との対立があり、今回の任継継続被保険者の一連の制度の見直しの背景となっています。

詳しくは、本文のこちら以下こちらの表の4をご参照下さい。

 

なお、特例退職被保険者についても、同様に、申出による資格喪失が認められています(法附則第3条第6項こちら)。

 

 

(2)任意継続被保険者の標準報酬月額(保険料の算定基礎)の見直し

 

任意継続被保険者の標準報酬月額(保険料の算定基礎)については、従来、基本的には、(A)「資格喪失時の標準報酬月額」(以下、「資格喪失時標準報酬月額」といいます)又は(B)「全被保険者の標準報酬月額の平均額」の低い額に決定されていました。

しかし、令和4年1月1日施行の改正により、保険者が健康保険組合である場合において、(A)資格喪失時標準報酬月額が(B)全被保険者の標準報酬月額の平均額を超える者については、規約で定めるところにより、(A)資格喪失時標準報酬月額(規約による例外があります)を標準報酬月額とすることができるものとされました。

 

これは、退職前に高額な報酬を受けている者について、健康保険組合が退職前と同様の応能負担を求めることを可能とさせる趣旨です(保険料増収を図りたい健康保険組合側の要求を認めたものです)。

詳細は、こちら以下です。 

 

 

2 傷病手当金の支給期間の通算化

令和4年1月1日施行の改正により、傷病手当金の支給期間が通算化されました。

即ち、従来は、傷病手当金の支給期間は、支給を始めた日から「起算して1年6月を超えないもの」とされ、1年6月が支給期間の限度であり、一時的に就労した期間も含めて1年6月に算入されました。

しかし、がんの治療やメンタルの不調などによって入退院等の療養をしながら仕事を継続する例も増加しており、治療と仕事の両立等の観点から、傷病手当金による保護期間を拡大する必要性がありました(また、共済組合における傷病手当金は、従来から支給期間の通算化が行われているという制度間の不均衡も問題でした)。

そこで、第99条第4項において、従来、「起算して1年6月を超えないもの」とあったのが、「通算して1年6月間」に改められ、支給期間の通算化が行われました。

これにより、実際に支給された期間が1年6月となるまでは傷病手当金が支給され、一時的に就労して支給されなかった期間は1年6月に含まれないこととなりました。

本文は、こちら以下です。

 

以下、改正前と改正後のイメージ図を順に掲載しています。

 

【改正前】

 

【改正後】

 

 

※ なお、傷病手当金の支給を行うための労災保険等の給付の支給状況の調査権が新設されています。

即ち、保険者は、傷病手当金の支給を行うにつき必要があると認めるときは、労働者災害補償保険法、国家公務員災害補償法又は地方公務員災害補償法若しくは同法に基づく条例の規定により給付を行う者に対し、当該給付の支給状況につき、必要な資料の提供を求めることができます(第55条第2項こちら以下)。

 

同様の規定が、日雇特例被保険者に係る傷病手当金について、協会に対しても新設されています(第128条第2項こちら以下)。 

 

 

3 保健事業における健診情報等の活用促進

(1)保健事業における医療保険等関連情報、事業者等健診情報の活用

 

(ア)令和4年1月1日施行の健康保険法の改正により、労働安全衛生法等による健康診断の情報健康保険の保険者保健事業で活用できるよう、事業者等(労働安全衛生法(以下、「安衛法」といいます)に規定する事業者その他の法令に基づき健康診断(特定健康診査に相当する項目を実施するものに限ります)を実施する責務を有する者その他厚生労働省令で定める者をいいます)に対し、健康保険の保険者が被保険者等の健康診断の情報を求めることが可能となりました(第150条第2項第3項)。

 

(イ)そして、健康診断の情報等の活用により効率的・効果的な保健事業を推進していく観点から、保険者は、保健事業を行うに当たっては、医療保険等関連情報〔=高齢者医療確保法における医療費適正化計画の作成等のための調査及び分析に必要な情報〕のほか、上記(ア)の事業者等から提供を受けた被保険者等に係る健康診断に関する記録の写しその他必要な情報を活用し、適切かつ有効に行うものとされました(第150条第4項)。

 

詳細は、本文のこちら以下をご参照下さい。

 

 

 

(2)「匿名診療等関連情報」の連結開始

 

なお、高齢者医療確保法の「匿名医療保険等関連情報」(いわゆる「NDB」)と介護保険法の「匿名介護保険等関連情報」(いわゆる「介護DB」)については、令和2年10月1日からそれらを連結して分析、提供もできることとなりましたが(高齢者医療確保法第16条の2第2項(社会一般のパスワード)介護保険法第118条の3第2項)、健康保険法の「匿名診療等関連情報」については、令和4年4月1日から前2者との連結が行われました(第150条の2第2項等)。

(なお、この(2)の改正は、「全世代対応型社会保障制度構築法」(令和3年改正法)によるものではなく、令和元年改正法(【令和元.5.22法律第9号】第2条)によるものです。)

詳細は、本文のこちら以下です。

 

 

(Ⅱ)健保法に関するその他の改正事項

1 被保険者証等の交付等における保険者から被保険者に対する直接送付

被保険者証(高齢受給者証、特定疾病療養受療証、限度額適用認定証及び限度額適用・標準負担額減額認定証についても同様であり、以下、「被保険者証等」といいます)については、従来、保険者から事業主に送付し、事業主から被保険者に交付することが義務づけられていました(訂正における返付、再交付及び検認・更新等に係る送付についても同様です)。

 

しかし、テレワークの普及等に対応した柔軟な事務手続を可能とするため、令和3年10月1日施行の施行規則の改正(【令和3.8.13厚生労働省令第140号】第1条)により、保険者が支障がないと認めるときは、保険者から被保険者に対して被保険者証等を直接送付することが認められました。

詳細は、こちらの2以下です。 

 

 

2 出産育児一時金の額等

出産育児一時金の額は、従来、1児につき40万千円であり、ただし、産科医療補償制度に加入する病院等による医学的管理の下における出産の場合は、1児につき、3万円を超えない範囲内で保険者が定める額(1万千円)を加算した金額として、合計42万円でした。

 

しかし、令和4年1月1日以降の出産からは、1児につき40万千円となり、ただし、産科医療補償制度に加入する病院等による医学的管理の下における出産の場合は、1児につき、3万円を超えない範囲内で保険者が定める額(1万千円)を加算した金額として、合計42万円です(第101条施行令第36条)。

 

産科医療補償制度に係る出産の場合の合計額(42万円)は従来と変わりませんが、原則としての額が40万4千円から4千円引き上げられた(その分、加算額が1万6千円から4千円引き下げられた)ということです。

 

なお、産科医療補償制度に係る加算の対象となる「特定出産事故」の要件(基準)について、従来より緩和され、「出生した時点における在胎週数が28週以上であること」で足りることとなりました(従来の要件(基準)については、補償対象外となるケースが多いことなどの不合理性が指摘されていたため、見直されたものです)。

 

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3 夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定に関する通達の改正

被扶養者の認定について、例えば、夫婦の双方が健康保険の被保険者の場合(夫婦共働きのケース)であって、子や父母など、夫婦が共同して扶養する親族があるときに、当該親族が夫婦のどちらの被扶養者となるか問題となります。

この点、被扶養認定の具体的かつ明確な基準を策定するという見地から、従来の昭和60年発出の通達が廃止され、新たに令和3年8月1日適用開始の通達により被扶養者の認定基準が示されました。

詳細は、こちら以下です。

 

 

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