更新等のお知らせ 令和2年度(2020年度)

令和2年8月22日(土曜)

今年度は、やけに忙しく、メールの転記もなかなかできませんでした。
本試験日前の最後のメールからの転記です。
この1年間は、つくづく大変でしたね。
しかし、様々な困難を抱えながらも、明日、本試験に臨むことができる方は、もしかしたら、明日はそれだけですでに「良い1日」なのかもしれません。
ただし、「良い1日」を「至上の1日」とすることもできます。
今回の本試験を受けられないような多くの方の無念もご想像頂き、明日は、思う存分ファイトしてきて下さい。
択一式では、おそらく、3割から4割は、知らない問題が出題されます。
途中で、数回は、「今年はだめかもしれない」という思いがよぎるはずです。
しかし、そこからが本試験の本当のスタートです。
6割~7割を正解すれば、合格です。論述式試験ではありませんから、知らない肢ばかりの設問であっても、正解に達することは可能です。
知っている知識とこれまでのご経験から、冷静・沈着に正解らしきものを探っていって下さい(ハートは熱くして頂く必要がありますが、頭はクールにです)。
選択式でも、とりわけ労働一般では、厳しい出題が予想されます。
しかし、皆さんが知らない問題は、他の受験生の多くも知りません。
選択式は運に左右されることもありますが、空欄に入るべき最善の1手を落ち着いて探して下さい。
残念ながら、努力が常に必ず報われるとまでいえないのは事実です。しかし、1歩1歩ゆっくりとでも進んでいきますと、明かりがうっすらと見えてくることがあります。
ゆっくりとでも進んできたからこそ見えてくる光です。
明日が、この光を確かに現認できた1日となりますように、心よりお祈り申しげます。
長い1年間、お付き合い頂き、本当に有難うございました。
God bless you! 

令和2年5月26日(火曜)

〔一部省略〕

 

1 本試験の実施

 

前回、メールしましたが〔ここでは掲載していません〕、今月〔5月〕16日に司法試験が8月12日等に実施されることが公表されましたので、特段の事情がない場合は、社労士試験も予定取り、8月23日に実施される可能性が高そうです。

公認会計士試験についても、「8月下旬を目途に実施することとして調整」しているそうです。

 

(なお、今月18日に、司法書士試験(当初は7月5日実施予定)も延期されることが法務省から正式に発表されましたが(その後、官報にも公示されています)、これはすでに4月23日に、受験申請受付期間が延期されることが公表されており、試験実施の可否の判断が困難な状況にあることが告知済みでした。)

 

ところで、本日から、連合会(試験センター)が通常業務に戻ったようですが、

 

〔以下、中略〕

 

結局、とりわけ感染症などについては、近い将来の状況を的確に予測することは難しいということにならざるを得ないのでしょう。

しかし、考えてみれば、これは我々の通常の生活・人生でも同じことですね。

明日、1年後、10年後、我々がどうなるのかということは、誰にもわからないことです。

明後日、大地震が来るかもしれません。実際、東日本大震災は、あたかも突然のように訪れ、多くの方の人生を変えてしまいました。

そうであるなら、(合理的な程度に将来を見通すことは必要ですが)現時点でできることをやっていく、一歩一歩進んでいくということがベストなのかもしれません。

 

 

2 3か月間の学習方法

 

現在のような環境下で、学習を続けられていくことに大きな障害がある方も少なくないかと思いますが、個人的な経験上も、一度蓄えた知識はそう簡単に全てすっぽりなくなるということはありません。再度学習を開始した際に、結構覚えているものです。学習環境が再度整ったときに、再始動するといった選択も可能です。

 

他方、なんとか学習環境を維持されている方は、苦しい最中であると思われますが、もう少しです。

現在は、試験まで約3か月、そろそろ本試験が射程内に入ってきた時期であり、以下、この時期からの学習方法について考えてみます。

 

(1)受験経験のある方

 

これまで受験経験のある方は、過去の経験に照らして、この時期から行うべきベストの対策を練ってみて下さい。

受験者の方お一人ずつ、3か月間に行う対策は異なると思います。

大雑把には、①テキストに重点を置く方向、②問題練習に重点を置く方向、③科目等に応じて、テキストと問題練習のバランスをとってすすめる方向などがあります。

 

ただ、最終的には、試験に出題されやすい事項について正確に記憶しているかどうかが合否の決め手となります。

 

「試験に出題されやすい事項」については、当サイトでも、今後の「直前対策講座」において予想問題をご提示致しますが、受験経験のある方の場合、これまでの経験から、今回の試験で狙われそうな箇所について「当たり」をつけながら学習していかれることも有用です。合格する年には、このような「出題されるかもしれない」と当たりをつけた箇所が選択式に出題されるような例もあります。これも日頃の学習の積み重ねから生まれた「勘」であり、実力のうちです。

 

他方、学習の際に、ご自分なりに理解をしながら進めていくというのは当然の方法ですが(これについて異論はないでしょう)、資格試験の場合は、理解も最終的には記憶に役立てるための手段であり、合否は記憶の有無、正確性によって決まります。

従いまして、この3か月間にどのような学習方法をとるかは色々でしょうが、出題されやすいところの知識を正確に記憶しているかどうかをチェックするという作業は不可欠であると考えます。

残りの期間のスケジュールとして、この記憶のチェック作業をうまく組み入れて頂けたらと思います。

 

なお、受験経験者の方の場合、実際に合否の鍵を握るのは、選択式となるでしょう。

その中でも、最も危険なのは、労働一般の選択式だと思います。また、社会一般の選択式にも注意です。その他、(労基法が難しい場合は)安衛法がネックとなることもあります。

 

このうち、社会一般の場合は、選択式においても、ある程度、法令科目(国保法、高医法、介護保険法、確定給付企業年金法、確定拠出年金法、児童手当法、社労士法、船員保険法等)から出題されることが多く、労働一般の選択式よりずっと学習はしやすいです。

社会一般の場合、これらの法令科目の択一式用の通常の学習の延長に選択式対策もありますから、この法令科目の知識の最終チェックを念入りに行なって下さい。この時期は、あまり細かい知識を追うのではなく、例えば、一冊本の知識をキーワードに注意しながら反復して読み込むという作業も有用です。

問題練習については、後に模擬試験の利用について触れます。

 

 

(2)初めての受験の方

 

対して、今回が初めての受験となる方の場合は、まず、基本科目について、重要事項を押さえているかのチェックが必要です。

後述の模擬試験によるチェックは有用ですので、模擬試験において曖昧だったような箇所について、テキストに戻って重点的に理解・記憶に努めるといった方法も取り入れてみて下さい(残り1箇月程度になりましたら、理解は不要です。ひたすら「丸暗記」します)。

 

また、現段階では、試験対象のすべての範囲について学習がまだ終わっていない方も少なくないかと思います。

とりわけ、労働一般や社会一般が残っている方があると思います。

その場合、ひとまずは、市販の1冊本などで、労働一般・社会一般について、全体を通読してみて下さい。よくわかりにくい箇所は、当サイトの対応箇所をご参照下さい。

市販書を何度が読み込みますと、ある程度のイメージができてきます。その過程で、過去問も同時にチェックして頂き、又、記憶すべき箇所については、当サイトの語呂合わせや図表も参照して頂き、過去問をやっている最中等に同時に記憶するようにします。

あまり細かい知識に深入りしない方が得策です。社会一般の選択式に対応できることが必要であり(労働一般の選択式の場合は、データー関係について独自の学習が必要です)、市販書や当サイトの赤字部分のうち、ここ最近出題されていないようなキーワードについて特に注意を払って読み込んでみて下さい。

 

 

(3)模擬試験の利用

 

毎年度、この時期にお伝えしているのですが、模擬試験の利用は非常に有用です。

大きくは、市販の模擬試験(雑誌)と予備校が実施する模擬試験があります。どちらも有用です。

 

今回が初めての受験の方は、一度は、実際の本試験の時間通りに模擬試験を受けて頂くのがよろしいです。必ずしも予備校の模擬試験でなくても、市販の模擬試験でも結構です。

択一式の場合は、時間に追われ、あまりゆっくりと考えている余裕はありません。また、個数問題(正しいものがいくつあるかといった形式の問題)や長文問題・事例問題は、後回しにするといったテクニックを使用する必要もあります。

そこらへんの感覚を、実体験して下さい。

一度体験されたら、後は、以下で記載します細切れのご利用方法で結構です。

 

受験経験者の方の場合は、本番における時間感覚が不安なようなときは、やはり、模擬試験を本番通りのスケジュールで解いてみて下さい。

ただ、そのような問題がない場合は、模擬試験を通常の過去問等と同様の方法で利用することがおすすめです。

模擬試験は有用なのですが、全体を一気に解いて、答え合わせをして、気になる事項について復習をしていくといった作業は、かなりの時間を要しますし(とても1日では終わりません。数日から1週間かかります)、また、体力も使います。

受験経験があって最終チェックだけという段階の方にとっては、模擬試験を中心とする学習は効果的ですが、そうでない方の場合(こちらのほうが圧倒的多数でしょう)は、模擬試験の答え合わせ等に追われてしまい、通常のやるべき学習に支障が生じると行った大きな弊害もあります。

そこで、模擬試験を細切れに利用して頂く方法がおすすめです。

例えば、労働一般の選択式だけを解いてみて、その後、すぐ答え合わせをして、復習に少し時間をとって下さい。出題された事項のほか、関連箇所をチェックします。当サイトの「白書対策講座」で掲載されています事項が出題された場合は、当サイトの該当箇所をチェックしてみて下さい。

その他、社会一般の択一式だけ解くとか、苦手な科目の択一式だけ解くといった利用方法があります。

できれば、選択式は、全部の科目を解いて、復習して頂くとよろしいと思います。

 

このように模擬試験の断片的な利用によって、問題を解くという実践対策をするとともに、出題予想分野について情報を収集しながら効率的に復習を行えるというメリットがありますので、うまくご活用下さい。

 

〔中略〕

 

 

なお、来月末くらいからは、直前対策講座の実施を開始します。

 

では、また次回です。

 

 

令和2年4月9日(木曜)

〔前書きは、省略。〕

 

1 社労士試験

 

明日、社労士試験について告示がなされるのではないかと思いますが、本日、社労士試験の公式サイトに、次のようなお知らせが掲載されました。

 

緊急事態宣言に伴う社会保険労務士試験センターの業務縮小のお知らせ

 

緊急事態宣言に伴い、社労士センターが5月6日まで業務を縮小するため、請求された受験案内の返送に1週間程度要するとのことです。

受験案内を請求される方は、早めになされて下さい。

 

ところで、来月の司法試験が延期されました。新たな実施時期は、まだ不明です。

来月実施予定だった国家公務員採用一般職試験は、1か月延期して5月24日に実施すると発表されたそうですが、感染拡大の状況次第では再延期の可能性があるそうです。

7月5日には司法書士試験がありますが、こちらについては、まだ延期等の動きはないようです。

 

なにしろ、感染の拡大状況がどのようになるのか誰にもわかりませんから、社労士試験の実施時期についても判断しにくいです。

仮にあと2カ月くらいで東京の感染者が落ち着き始めたとしても、他の地域では異なる動きをしている可能性があります。試験が安全に実施できる落ち着きが全国的に確保されることが必要でしょう。

 

なお、社労士法第10条第1項(こちら)では、「社会保険労務士試験は、毎年1回以上、厚生労働大臣が行なう。」と規定されているため、年内に実施する必要があるそうです(来年に延期するためには、社労士法を改正して、附則などによって、特例を定めなければなりません)。

 

このように先が見えないときは、やはり、当初の予定通り実施されるとして準備するのが得策です。結果的に延期になれば、その延期期間を利用してさらに実力を上げることが可能です。

 

ただ、個人的な見解ですが、延期を躊躇すべきでないと思います。受験者の方の健康確保が最優先です。

近日、連合会に、延期などの可能性を考えているのか等を確認してみます。連合会が個人に詳細を返答することは期待できませんが、安全第一であることを確認させる意味はあります。

 

〔追記:翌日の10日(金曜)に電話しましたが、営業を自粛しており、週2回の営業となっているそうです。来週確認してみます。詳細については、メールでご紹介します。

再追記:13日(月曜)に確認し、その内容については、同日、メールにてご紹介しました。〕

 

 

2 厚生労働白書

 

昨年中に送信しましたメールの中で、令和元年版の厚生労働白書について、官報の印刷局が3月初旬に発売のスケジュールを入れているとの話をお伝えしましたが、結局、未だ厚生労働白書は公表されていません。コロナ騒ぎの影響かもしれません。

当サイトとしても、平成30年版の厚生労働白書のチェックを進めます。

 

 

3 雇用保険法の改正

 

本題ですが、雇用保険法の改正です。3月31日に改正雇用保険法と施行規則が公布されました。

内容的には、まずは、こちらを押さえて頂ければ結構です。

 

施行規則がどのように改正されるのかに注目していたのですが、結果的に、条番号が今までとずれた程度で(この修正は、かなり大変でしたが)、内容的には従来とほとんど変わりませんでしたので、この点は深入りしないで大丈夫です。

 

 

4 労災保険法の社会復帰促進等事業

 

なお、前回のメールで、労災保険法の社会復帰促進等事業のうち一定のものについて、施行規則で根拠規定が置かれたことを取り上げました。

この新設された根拠規定の中では、「厚生労働省労働基準局長」が、社会復帰促進等事業について、基準や要件の設定等を行う旨が明記された規定が多いです。

例えば、義肢等補装具費(施行規則第25条労災保険法のパスワード)では、「障害補償給付又は障害給付の支給の決定を受けた者のうち、厚生労働省労働基準局長定める要件を満たす者」等が支給対象者となっていたり(同条第1項第1号、第2号)、「義肢等補装具費の額は、厚生労働省労働基準局長定める基準に従って算定した額とする」とされています(同条第2項)。

 

これらの改正を反映させるべく、労災保険法の初めの方で掲載しています「保険者」の箇所(こちら)も少し改めました。

従来、このリンク先の「6 社会復帰促進等事業に関する基準の設定等」は、「6 厚労省労働基準局長が定める給付(休業補償特別援護金)」となっていたものです(従来は、施行規則で規定されている厚労省労働基準局長が関与する社会復帰促進等事業については、(ボーナス特別支給金の算定基礎年額を除きますと)、厚労省労働基準局長が定める給付としての休業補償特別援護金でした)。

まあ、試験対策上は、それほど優先度は高くはなさそうです。

 

今回は、以上です。では、また次回です。

 

皆さん、くれぐれもご健康にご自愛下さい。ここは、なんとか踏ん張り、1年後、皆さん笑顔で発表日を迎えましょう。

 

 

令和2年4月5日(日曜)

皆様、ご健康にお変わりないでしょうか。

年が明けてから、世界が一変してしまいました。

 

〔以下、中略。〕

 

 

一 国際自動車事件判決

 

労基法の割増賃金に関する最新の最高裁判例からご紹介します。3月30日の【国際自動車事件 = 最判令和2.3.30】です。労基法のこちらです(労基法のパスワード)

 

この事件は、タクシー乗務員の歩合給から割増賃金分を控除して支給する賃金規則の適法性等が争われたものです。

一度、平成29年に最高裁判決が出されたのですが(【最判平成29.2.28】。以下、「第1次上告審」といいます)、原審(東京高裁の判決)の下した会社側敗訴の判決について、審理が十分でないとしてこれが破棄されて、事件が原審に差し戻されていました。

差し戻された原審(【東京高判平成30.2.15】)において、労働者側が敗訴したため、労働者側が最高裁判所に上告したのが、今回の【最判令和2.3.30】です(以下、「第2次上告審」といいます)。

 

平成29年の最高裁判決(「第1次上告審」)については、前掲のリンク先でご紹介していたのですが、今回の「第2次上告審」では、労働者側の勝訴という非常にインパクトのある結論を導きました。

 

今回の判決の判旨については、こちら以下で掲載しています。

事実関係が重要な判決なのですが、少々ややこしいです。

今回の判決の考え方については、こちら以下が参考になると思います。

 

選択式対策として注意が必要です。最終的には、前掲の判旨の色のついた部分を押さえて頂ければ、選択式対策として有効と考えらえます。

 

 

二 健康保険法の保険外併用療養費(選定療養)の改正

 

次に、健康保険法です。

保険外併用療養費に係る選定療養の対象として、次の2点が改正されています。いずれも、令和2年4月1日施行です。

 

(1)白内障関係の追加 ➡ こちら(健保法のパスワード)

 

(2)文書による紹介がない場合等における特別の料金の徴収義務の対象の拡大 ➡ こちら以下

 

※ 地域医療支援病院について、従来、一般病床の数が400以上であるものが徴収義務の対象とされていましたが、今回の改正により、一般病床の数が200以上であるものが対象となりました。 

上記(1)については、「白内障」関係が追加されたという知識で足りるでしょう。

 

 

以下、3月31日に官報に掲載されました改正事項についてご紹介します。

なお、この改正では、労基法(施行規則を含む。以下同じ)、労災保険法、雇用保険法及び徴収法が対象となっています。

雇用保険法については、従来、ご紹介していました通り、育児休業給付の失業等給付からの分離に関する改正が中心です(徴収法も、それに関連するものが中心です)。

今回は、前者の労基法と労災保険法に関する改正のご紹介です。施行規則の改正がボリュームがあり、結構、厄介です。

 

なお、改正事項の目次的な概要については、こちらの「改正・最新判例」の各科目の箇所(近時の改正事項は、各科目の下部の方に記載されています)をご参照下さい。

 

 

三 労基法の改正

 

労基法では、今回の令和2年4月1日施行の改正により、記録の保存期間、付加金の請求期間及び消滅時効の期間について改められました。

この3つの改正は、民法改正に関連した労基法の消滅時効の期間の改正が出発点となって、その他の、保存期間や付加金の請求期間についても改められたものです。

これらについての法律(労基法)の改正については、既にこれまでのメールでもご紹介しており、サイト本文も書き換え済みでした。労基法のこちらのページ中に、すべての記載があります。

改正に関する全体のまとめの表は、こちらです。

 

今回は、このうち、「記録の保存期間」について、施行規則の細かい改正が行われています。

結論として、労基法(施行規則も含みます)の記録の保存期間は、「本則は5年間だが、当分の間は3年間」であることを押さえて下さい。これがポイントです。

労基法の「賃金請求権」の「消滅時効期間」について、「本則」では(従来の2年間から)「5年間」に伸長されたうえで、当分の間は、「3年間」(退職手当請求権は、従来通り5年間)とされたことと整合させるため、記録の保存期間についても、「本則5年間、当分の間3年間」とされたものです。

 

労基法の「施行規則」においても、いくつか記録の保存期間について規定があるのですが(7つあります)、今回の改正により、これも、「本則5年間、当分の間3年間」と改められました。

こちらの「(Ⅰ)労基法(施行規則)の記録の保存期間」の箇所で列記しています。

個々の保存期間については、大体のイメージが浮かぶ程度でよいのでしょうが、例えば、「年次有給休暇管理簿」についても対象となっていることは、記憶しておく必要があります。

 

次のような出題があり得ます。

 

設問:

使用者は、法第39条第5項から第7項まで〔労働者による時季指定、計画的付与、使用者による時季指定〕の規定により有給休暇を与えたときは、年次有給休暇管理簿を作成し、当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後5年間保存しなければならないが、当分の間は2年間保存すれば足りるとされている。

 

解答:

「当分の間は2年間」ではなく、「当分の間は3年間」が正しいです。

この設問は、今回、保存期間が改正された施行規則第24条の7及び施行規則附則第72条に基づくものです。

 

 

もう一つ、今回の施行規則の改正により、記録の保存期間の「起算日(起算点)」の例外が新設されました。

記録の保存期間の起算日の原則は、こちらの表の通りです。施行規則第56条第1項で規定されています。

今回の改正では、この表中の②「賃金台帳」及び⑤「賃金その他労働関係に関する重要な書類」の保存期間(賃金関係です)について、起算日の例外が定められました。こちらです。

即ち、この表中の②「賃金台帳」及び⑤「賃金その他労働関係に関する重要な書類」の保存期間については、当該記録に係る賃金支払期日が、②と⑤原則の起算日(②は「最後の記入をした日」、⑤は、「完結日」)より遅い場合には、当該支払期日を起算日とします(施行規則第56条第2項)。

 

これは、賃金請求権が時効消滅する前に、賃金に係る記録の保存期間が満了しないようにする趣旨です。

今回の改正前は、賃金請求権(退職手当請求権を除きます)の消滅時効期間は「2年間」であり、記録の保存期間は「3年間」であったため、賃金請求権の消滅時効の期間が完成する前に、その賃金に係る記録が保存されなくなることは法律上は存在しませんでした(こちらの表の「改正前」の欄を参考)。

しかし、今回の改正により、「当分の間」は、賃金請求権の消滅時効期間と記録の保存期間がともに「3年間」とされたことから、両者の起算日の調整が必要となったものです。

こちらの具体例を参考にして下さい。

 

なお、労基法施行規則において定められているその他の記録の保存についても、上記と同様の起算日の例外が新設されました(施行規則第56条第3項)。

こちらでまとめていますが、これも細かいです。考え方は、前記と同じですので、大体のイメージが浮かべば大丈夫でしょう。

 

以上、細かい部分が多いですが、前記の通り、結論としては、労基法(施行規則も含みます)の記録の保存期間は、「本則は5年間だが、当分の間は3年間」であること、今回の改正により、保存期間の起算日について、賃金関係は例外が定められたことがポイントです。 

 

付加金の請求期間や消滅時効期間については、施行規則に関する追加の改正は行われていません。

以上、労基法の改正でした。

 

 

四 労災保険法の改正

 

労災保険法の改正も、結構、量があります。

 

 

1 介護(補償)給付の額の改正

 

まず、介護(補償)給付の額(上限額(最高限度額)及び最低保障額)が改正されています(労災保険法のこちらの表及びこちら以下)。

これは、例年の改正であり、あまり問題はないです。額自体は覚えなくても大丈夫だと思います。

前年度の改正により、介護(補償)給付の額の改定の基準が改められていますので、こちらの部分をチェックして下さい。

 

 

2 年金たる保険給付の受給権者の定期報告の改正

 

次に、年金たる保険給付の受給権者の定期報告について、少々改正があります。

 

即ち、年金たる保険給付の受給権者の定期報告(施行規則第21条)において、障害(補償)年金又は傷病(補償)年金の受給権者についてその提出を不要とできる場合(厚生労働大臣が情報提供ネットワークシステムを使用する情報連携(行政機関の間でマイナンバーから生成された符号をもとに情報をやり取りすること)により当該報告書と同一の内容を含む特定個人情報の提供を受けることができるとき)が定められました。

また、傷病(補償)年金の受給権者について、当該定期報告書の提出が必要である場合においても、医師等の診断書の添付は不要とされる見直しが行われました(令和2年3月31日施行の施行規則の改正)。

こちら以下で詳述しています。

 

 

3 前払一時金の支給を受けた場合の年金の支給停止期間において控除する額の改正

 

障害(補償)年金前払一時金又は遺族(補償)年金前払一時金が支給された場合には、当該支給を受けた前払一時金の額に相当する期間は、当該障害(死亡)に係る障害(補償)年金又は遺族(補償)年金は支給停止となります。

 

この支給停止期間について、前払一時金の支給後の初めの1年間については、各月に支給されるべき障害(補償)年金等の額を単純に合算しますが、2年目からは、各月に支給されるべき年金額は算定事由発生日における法定利率で割り引かれた額として合算して算定されます。

 

この太字部分の「算定事由発生日における法定利率」は、従来、「100分の5」であり、「年5分(5%)の単利」で割り引いていましたが(中間利息の控除)、民法(債権法)の改正により、法定利率が改正前の年5分の固定制から原則として年3分の変動制に改められたため、本件の割り引かれる利率についても、従来の5%から「算定事由発生日における法定利率」に改められました。

 

障害(補償)年金前払一時金については、こちら以下、遺族(補償)年金前払一時金については、こちら以下です。

 

 

4 社会復帰促進等事業の施行規則における根拠規定の新設

 

社会復帰促進等事業のうち一定のもの(行政処分と認められるもの)について、新たに施行規則で明文の根拠規定が置かれました。

全体については、こちらで掲載しています。

個別の事業内容については、このリンク先の条文をクリックして頂きますと、その少し上の部分においてそれぞれ(概要ですが)記載されています。

 

かなり色々ありますが、さしあたり、名称と概要をざっと把握して下さい。

本来は、このような個所は無視したいところなのですが、過去、アフターケアの出題が2回あり、この分野に関心のある出題者がいますので、余裕があったら、条文もざっと一読して下さい。

 

なお、労災保険法上の助成金について、従来の「時間外労働等改善助成金」が「働き方改革推進支援助成金」に改められています(こちら以下)。

助成金の名前と中小企業事業主の要件を押さえておきます。

(ちなみに、「職場意識改善助成金」は、すでに申請受付が終了していたのですが、新型コロナウイルス感染症対策として、特例的なコースが急遽存続されています(新たにテレワークを導入し、又は特別休暇の規定を整備した中小企業事業主について、テレワーク、職場意識改善コースが存続しています)。試験対策上は、この特例については、スルーで大丈夫でしょう。)

 

 

以上、今回は、労基法と労災保険法に関する改正でした。次回は、雇用保険法を中心とする改正についてご紹介します。

 

 

※ おまけ:

 

なお、コロナのおかげで、現状や将来ばかり見ますと、不安ですね。

そのようなときは、過去を見るという気分転換もあります。

当サイトでは、なぜか、国民年金法の老齢基礎年金の支給の繰上げの箇所(国年法のこちら)で、古代史の話が掲載されています。。

わずか数名の方からしか反響がないにもかかわらず、毎年度、バージョンアップされており、今回も最新情報を掲載し、日本の起源の解明に挑んだため(笑)、ボリュームが2倍になってしまいました🤕

気分転換されたいときはどうぞ。学習で忙しい方は、決してお読みにならないで下さい。

 

 

では、くれぐれもコロナから身を守って下さい。

 

 

令和2年3月14日(土曜)

世の中、芳しくない状況が続いていますが、ご健康にお変わりないでしょうか。

 

次から次へと、色々な問題が沢山出ております。。

まさか、生きている間に、再びトイレットペーパーが品切れになるとは思いもしませんでした。。

前回は、「幸(48)せの年」のことだったですね(生まれていない方は失礼致します)。

近所の小さ目のスーパーでは、未だにトイレットペーパー・ティシュペーパーは品切れとなっています。

昭和48年のときは、こんなに長い期間品切れになっていたかどうか、記憶が定かでありませんが、いやはやなんともです。

しかし、イオンに行ったら、余るほど積んでありました。

ですが、イオンでも、マスクやアルコール消毒剤はありませんでした。既に数か月、店頭でお目にかかったことがありませんが。

 

いずれ(来年?)ワクチン等は出てくるでしょうから、長い目で見るなら、現在の不穏な状況が永続するわけではなく、悲観しすぎる必要はないとはいえます。

ただ、いかんせん、目下の状況が非常に厳しいですね。世界経済がガタつくとは、数か月前には想像しませんでした。

 

オリンピックが重大なネックとなっていますが、パンデミックとなった以上、普通に考えれば、通常通り開催することは困難なのでしょう。

延期となりますと、それはそれで色々と問題もおきそうですが、安心して練習すらできないような選手(特に海外の選手)もいるでしょうから、開催にふさわしい状況とは言えないでしょう。

個人的な最大の懸念は、仮に2年延期となった場合に、退任せずに総裁任期を延長すると言い出さないかという点です・・・🤕

 

 

さて、このような状況の中では、お子さんの面倒、ご家族の健康状況、お仕事の問題などから、日々の生活を何とか送るだけで精一杯であり、学習どころではない方も少なくないかと思います。

 

東日本大震災の当時の受験者の方について思い返してみても、長期間、学習どころではなかった方がおられたと思います。

学習する余裕がとてもないような状況の場合は、しばし中断することは一つの選択です。

過去、当サイトでご紹介しましたいくつかの合格体験談にもありましたが、合格された会員の方でも、諸事情によって、途中、学習を中断された方はおられます。

数年中断しても、再開後には、結構中断前の事項を覚えているものです。

「いったん中断するが、時機を見て再開する。再開後は合格する。」は、重要な選択肢です。

 

一方、学習する時間をなんとかお持ちの方は、貴重ないっときを有効にご活用下さい。

「一寸先は闇」の世の中ですから、日々、ベストを尽くせれば、それこそベストです!

 

では、今回の本論です。改訂状況等のほか、近時の改正状況等をお知らせします。まず、最新の最高裁判例からです。

 

 

〔1〕最高裁の判例

 

使用者責任に関して、最高裁の判例が出ました。【最判令和2.2.28】です。

基本的には民法の問題なのですが、労働法にも関係はするため、一応、チェックしておいた方がよさそうです。

労基法のこちらで掲載しています。

 

使用者責任については、民法第715条で規定されています。

ある事業のために他人を使用する者は、原則として、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うというものです。

つまり、被用者(従業員)が事業の執行について不法行為を行い第三者に対して損害を負わせた場合は、その使用者も損害賠償責任を負うという制度です。

報償責任(使用者は被用者を利用することによって利益をあげる関係にあること)と危険責任(使用者は被用者を利用することによって、事業範囲を拡張して危険を作出・拡大していること)を根拠とするものと一般に説明されています。

 

そして、使用者責任に基づき使用者が第三者(被害者)に損害を賠償した場合は、その使用者は、加害者である被用者に対して求償権を行使できる(賠償した分を請求できる)ことは明記されています(民法第715条第3項)。

対して、加害者である被用者が先に第三者に対して損害賠償をした場合に、その被用者が、使用者に対して求償できるかについては明文がなく、今回はこの点が争われました。

最高裁判決は、これを肯定し、「被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え、その損害を賠償した場合には、被用者は、上記諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができるものと解すべきである。」としました。

 

前掲の判決のリンク先のすぐ前に【茨城石炭商事事件=最判昭和51.7.8】を掲載しているのですが、この昭和51年の判決において、使用者が第三者に対して使用者責任に基づく損害賠償義務を履行した場合には、使用者は、諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対して求償することができる旨が判示されていました。

そこで、これとは反対に、被用者が先に賠償した場合においても、使用者は相当と認められる分はリスクを負うとするのが整合的であり、今回の判決は、違和感はないものといえます。

 

この判決は、直接は、民法の問題ですが、使用者と労働者との問題ですから、労働法の対象でもあります。そこで、例えば、労働一般の択一式の1肢として出題するようなことは可能ですし、労基法や労災保険法などでも出題できなくはありません。

内容自体は重要ですので、上記の太字のキーワードは押さえて下さい。

 

〔中略。〕

 

 

〔2〕今月末の改正予定等

 

なお、今月は、年度末ということもあり、大量に改正が行われます。

現在、判明している主なものをご紹介します。

 

1 雇用保険法等の一部改正法

 

まず、雇用保険法等の一部改正法は、以前からお知らせしているものであり、育児休業給付を失業等給付から分離する等の改正を含んでいます。

昨日から審議されたそうですが、近日成立予定です。

 

この法律の改正自体は、既に当サイトの雇用保険法や徴収法で反映させています。その他、今月末に、育児休業給付と介護休業給付について、条文番号を変更する等を内容とした施行規則の改正が出ると思います。

 

 

2 労基法の一部改正法

 

こちらも、既にご紹介済みの労基法の消滅時効の期間等を改正する法律です。11日から審議を始めているそうです。

 

 

3 労災保険法施行規則の改正

 

今月末位に、労災保険法の施行規則が改正されます。

 

介護(補償)給付の額の改正といった例年通りの内容のほか、やや注意するものがあります。

 

 

(1)年金たる保険給付の受給権者の定期報告

 

年金たる保険給付の受給権者の定期報告(こちら。労災保険法のパスワード)について、日本年金機構等とのマイナンバーの情報連携により把握が可能な者については定期報告を不要とすること、医師の診断書の添付を不要とすることという改正が行われます。

 

 

(2)時間外労働等改善助成金の見直し

 

社会復帰促進等事業として、現在、「時間外労働等改善助成金」があるのですが(こちら)、名称が「働き方改革推進支援助成金」と変更される等の見直しが行われます(試験対策上はあまり重要でないでしょう。助成金の名前程度を知っていれば足りそうです)。

 

ただ、今回のコロナ対策として、緊急に「時間外労働等改善助成金」の一部も存続させることとなったようです。

 

なお、コロナ対策として、色々な特例等が制定されていますが(例:雇用保険法の雇用調整助成金の改正など)、おそらく、今回の試験対象とはならないと思います。

東日本大震災の際の特例等については、試験対象から外されました(問題用紙にその旨が明記されました)。

ただし、関連する個所が一般常識の出題の素材とされることはあり得ますから、ニュース等における情報は、把握しておいて下さい。

 

少々注意は、次の(3)です。

 

 

(3)社会復帰促進等事業の根拠規定の明記

 

社会復帰促進等事業は、従来は、通達(その一種である要綱等を含みます)で規定されていたのですが、今回、施行規則に根拠規定が置かれることとなりました。アフターケア、外科後処置、労災就学援護費など10数個あります。

アフターケアなど、これまでたまに出題されるものがあったのですが、今回の改正により、施行規則に明文がおかれることとなってしまい、より出題しやすくなったといえそうです。

かなりボリュームがあり、メリハリをつける必要があります。施行規則が制定されましたら、ご紹介します。

 

 

4 年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律 

 

ところで、現在の通常国会に提出されている年金法関係の法案があります。「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」といいます。

 

ちなみに、今回の改正法の名称中に「年金制度の機能強化」とあります。

ただ、平成24年に制定された「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」が、一般に「年金機能強化法」と略称されています。

今回の改正法は、単に「令和2年改正法」と呼ぶことになるでしょうか(以下では、「令和2年改正法」としておきます)。

 

この「令和2年改正法」では、重要な改正がてんこ盛りです。

例えば、ちまたでも話題となっています①老齢基礎(厚生)年金の支給の繰上げ・繰下げに関する改正のほか、②短時間労働者に関する特定適用事業所の規模を緩和する改正(現在の500人から、100人、50人に段階的に緩和)、 ③在職中の老齢厚生年金の受給者の年金額を毎年、定時(9月1日)を基準として改定する改正(「在職定時改定」)などがあります。

 

この令和2年改正法は、(基本的には)今回の試験対象とはなりませんから、ご安心下さい(原則として、令和4年4月1日施行ですが、令和3年4月1日施行等の改正もあり、後者は次回の試験対象となります。なお、公布日いかんでは、今回の試験対象に含まれるものもありますが、多分間に合わないでしょう。のちに(4)で触れます)。

 

ただし、将来の改正事項が本試験のネタとなることは、しばしばあることです。

ここでは、以上のビッグな改正予定事項は除外し、やや細かい改正予定事項について触れておきます。今後、テキストをチェックされる際に、以下の事項の周辺あたりは、少々ウエイトを置かれるとよさそうです。

以下、急を要するものではありませんので、そのうち、スキマ時間にでもお読み下さい。

 

 

(1)寡婦年金

 

寡婦年金の支給要件として、現在、夫が、①老齢基礎年金の支給を受けていないこと、及び②障害基礎年金の受給権者であったことがないことが必要です(国年法のこちら以下)。

しかし、令和2年改正法により、②が改められ、①と同様となり、障害基礎年金の支給を受けていないことで足りるものと改められます。

 

上記①については、死亡した夫が、老齢基礎年金の受給権を取得しても、その支給を受けていなければ、その妻は寡婦年金を支給することができます。これは、老齢基礎年金の受給権を取得しても、支給の繰下げのため裁定請求をしていない場合等を考慮したものとされています。

ただ、結果として、①と②が整合しないという問題はあり、今回の改正では、①の方向で統一するものとなります(なお、この改正は、令和3年4月1日施行です)。

 

現在の①と②の違いについては、記憶しておく必要があります。

 

 

(2)脱退一時金

 

現在は、脱退一時金(国年法、厚年法)の支給額は、対象月数が3年(36月)の場合を上限としています。しかし、令和2年改正法による令和3年4月1日施行の改正により、この支給上限の対象月数が5年に引き上げられます。

 

脱退一時金の支給額関係は、チェックして下さい(国年法の脱退一時金は、こちら)。

 

 

(3)保険料の申請免除の対象者の拡大

 

国民年金の保険料の申請免除(広義)の要件として、従来、「地方税法に定める障害者又は寡婦」(前年の所得が政令で定める額(125万円)以下)というものがあります。

 

今回の改正では、未婚のひとり親等を寡婦と同様に申請免除の対象に含めるため、「地方税に定める障害者、寡婦その他の同法〔=地方税法〕の規定による市町村民税が課されない者として政令で定める者」(要旨)といった内容の規定に改められます(令和3年4月1日施行)。

政令では、「地方税法に定める障害者、寡婦、寡夫又は単身児童扶養者であって、年間の所得が135万円以下」が対象とされる予定です。

 

 

(4)納付猶予の延長

 

現在、令和7年(旧平成37年)6月までの時限措置として、50歳未満の被保険者等の保険料の免除が定められています。

これが5年間延長され、令和12年6月までとなりました。

 

これは、令和2年改正法の公布日に施行されます。そこで、同改正法が4月初旬あたりまでに成立・公布されますと、今回の試験対象に入ってきますが、多分間に合わないでしょう。

 

 

(5)国民年金手帳の廃止

 

国民年金手帳の制度が廃止されます(令和4年4月1日施行)。

入記録の管理等の電子データー化の浸透により手帳の必要性が少なくなったことや管理コストの削減を考慮し、国民年金手帳を廃止して、個人年金番号通知書の送付に切り替えるそうです。

 

 

(6)年金担保資金貸付制度の廃止

 

受給権を担保に供することは禁止されていますが、例外として、国年法、厚年法等において、年金給付を受ける権利を独立行政法人福祉医療機構に担保に供することが認められています(年金担保資金貸付制度。労災保険法の社会復帰促進等事業(被災労働者等援護事業)として実施されています)。(こちら

 

これについて、令和4年4月1日施行の改正により廃止されることとなりました。

令和3年度末に、年金担保資金貸付事業による新規貸付の申込受付は終了します。

これは、生活費に充てられるべき年金が返済に充てられて利用者の困窮化を招く等の弊害があったことが考慮されたものです。

 

 

(7)強制適用事業所の拡大

 

厚生年金保険及び健康保険の強制適用事業所の適用業種として、法定16業種というのがあります。

これに、弁護士、税理士等の資格を有する者が行う法律又は会計に係る業務を行う事業(条文では、「弁護士、公認会計士その他政令で定める者が法令の規定に基づき行うこととされている法律又は会計に係る業務を行う事業」)が追加されました。

社労士も含まれます。

つまり、常時5人以上の従業員を使用するこの「弁護士等の事業」の個人経営の事業所も、強制適用事業所となります(令和4年4月1日施行)。

 

 

(8)適用除外者の改正

 

現在、厚年法及び健保法の適用除外者として、臨時に使用される者のうち、「2月以内の期間を定めて使用される者」があります(厚年法のこちら)。

これについて、「2月以内の期間を定めて使用される者」の次に、「であって、当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないもの」が追加されます。

つまり、2月以内の期間を定めて使用される者であっても、当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれる者については、厚生年金保険及び健康保険の被保険者とするものとされました(令和4年4月1日施行)。

 

これにより、例えば、2か月以内の雇用契約であっても、実態からみて 、2か月を超えて使用される見込みがあると判断できる場合(例:①雇用契約上、契約更新があることが明示されている場合、②同一事業所の同一契約で更新等により2か月を超えて雇用された実績がある場合)にも、最初の2か月の雇用期間を含めて、当初から社会保険を適用の対象とするものとされます。

 

 

(9)短時間労働者の要件の緩和

 

厚生年金保険法及び健康保険の「4分の3未満短時間労働者」(「4分の3基準を満たさない短時間労働者」)について、現在は、次の➀~⑤のすべての要件を満たす場合に、被保険者となります。

 

①1週間の所定労働時間が20時間以上であること。

 

②当該事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれること。= 継続1年以上の使用見込み

 

③月額報酬が8万8千円以上であること。

 

④学生等でないこと。

 

⑤次の(ⅰ)又は(ⅱ)のいずれかの要件を満たすこと。

 

(ⅰ)特定適用事業所(国又は地方公共団体の適用事業所を含みます)に使用されること。

 

(ⅱ)特定適用事業所・以外の適用事業所に使用される場合において、労使合意に基づく事業主の(適用拡大の)申出(=任意特定適用事業所の申出)があること。

 

 

これについて、令和4年4月1日施行の改正により、上記の②(継続1年以上の使用見込)の要件が削除されました。

つまり、継続1年以上の使用見込みがなくても、他の要件を満たす「4分の3未満短時間労働者」は、被保険者となります。

 

 

その他にも、まだ細かい事項はありますが、さしあたりは以上です。

前述の支給の繰下げ・繰上げの改正といった大きな改正事項につきましては、時機を見ましてご紹介します。

 

では、くれぐれもお身体をご自愛下さい。また、次回です。

 

 

令和2年2月20日(木曜)

今年度は、更新メールをこちらに転記する時間がないほど、忙しいかったのですが(年々、作成テキストが増えていたり、講座を新設したりしているため、作業量が多くなっています)、やや落ち着いてきましたので、近時のメール内容を記載しておきます。

 

今回は、今月16日(日曜日)に送信しましたメールからです(その他に、最新の情報を追記しています)。

 

先日、雇用保険法等の一部改正法と労基法の一部改正法の両法案が衆議院に提出されました。4月1日施行のものがありますから、当サイトでも、すでに雇用保険法については、主要な改正内容についてはサイトを改訂しています(これについては、前回のメールでお知らせしています)。

今回は、労基法の改正についてです。

 

 

〔1〕労基法の改正

 

労基法の改正は、主に次の3点です。

 

①記録の保存義務の期間の伸長

 

②付加金の請求期間の伸長

 

③消滅時効の期間の伸長

 

 

サイトでは、すべてこちら(労基法のパスワード)のページ内に記載がある事項です。

 

今回の改正事項の結論としては、こちらの表の通りです。

労基法の「本則」上の改正と当分の間の「附則」上の改正(暫定措置)があります。

実際は、暫定措置の方が適用されるため、暫定措置を押さえる必要がありますが、本則も押さえる必要があり、結局、両者を押さえなけれなりません(なお、改正法の施行後5年後に暫定措置の状況等を見直すこととなっていますが、暫定措置が廃止されるのか、それとも、他の多くの当分の間の措置と同様に、ほぼ永続的に暫定措置が施行されてしまうのかは不明です)。

 

①記録の保存義務の期間(こちら以下)と②付加金の請求期間(こちら以下)については、「本則では5年当分の間3年」です。

 

③消滅時効の期間(こちら以下)がやや注意であり、こちらの表がポイントです。

労基法上の権利(請求権)の消滅時効の期間は、これまでは、「原則2年、退職手当請求権は5年」でした。

改正の趣旨については、こちら以下で詳述していますので、ご覧頂きたいのですが、今回の改正は、民法の消滅時効の改正に連動したものです。

 

つまり、従来、民法上、「使用人の給料に係る債権」(労基法上の労働者の賃金請求権に相当します)については1年の短期消滅時効が定められており、労基法では、賃金請求権(退職手当請求権を除きます)について、かかる民法より労働者保護を強化して、2年の消滅時効期間が定められていました。

ところが、今回の民法の改正により、「使用人の給料に係る債権」を含む短期の消滅時効の特例が廃止され(時代に適応しない特例が多くなったこと等が理由です)、新たに、民法上の債権の原則的な消滅時効期間として、(ⅰ)「権利を行使することができる時から10年」といういわゆる客観的起算点からの10年の消滅時効期間(これは従来と同様です)のほかに、(ⅱ)「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年」という主観的起算点からの5年の消滅時効期間に統一されました(➀と②のいずれか早い時点で債権は時効消滅します)。

そうしますと、従来の労基法上の賃金請求権の2年の消滅時効期間では、上記(ⅱ)の民法上の5年の消滅時効期間より短くなってしまいます。

これは、労基法が、労働者保護の見地から、民法のルールを修正したという性格を有することを考えますと、アンバランスといえます(ちなみに、賃金請求権以外の労基法上の権利については、従来も、退職手当請求権を除いては、2年の消滅時効期間であり、改正前民法の原則的な消滅時効期間(10年)より短縮されていたため、今回の民法改正による逆転現象はおきません)。

そこで、労基法上の賃金請求権の消滅時効期間の伸長が検討されてきたのですが、事業主側の反対が強く、結局、「本則では5年とするが、当分の間は3年」ということで決着しました。

 

要するに、「労基法上の権利(請求権)」の消滅時効の期間は、本則では「原則2年賃金請求権5年」ですが、当分の間は、本則のうち「退職手当請求権を除く賃金請求権3年」(退職手当請求権は、改正前と同じく5年)であると押さえることになります。

 

以上のように、「賃金請求権」の消滅時効期間について、「本則5年、当分の間は3年」と改正されたことに伴い、前記の①「記録の保存義務の期間」や②「付加金の請求期間」についても、「本則5年、当分の間は3年」に改められたものです(①や②についても、(割増)賃金請求権が問題となるからです)。

 

以上、消滅時効について、少々、めんどくさいですが、結論としては、数字を押さえることになります。

選択式として出題する場合は、本則だけ出題するのも問題がありそうですから、条文に手を加えて、本則と附則の両者について出題するような形に作ることも可能です。

 

 

〔2〕その他

 

1「労働施策総合推進法」の改正

 

「労働施策総合推進法」の募集及び採用における年齢制限の禁止の例外として、就職氷河期世代に係る暫定措置が創設されました。詳細は、労働一般のこちらです。 

 

 

 

2 改正雇用保険法

 

現在、4月1日施行(予定)の改正雇用保険法(失業等給付からの育児休業給付の分離が中心です)について、主要な部分の改訂は終わっています。   

例えば、育児休業給付・介護休業給付のページのほか、序論(こちらのページ)、国庫負担(こちら)などです。

 

ただし、既に改訂済みのページについて、条文のリンク替えをする等の作業があり、こちらはやや時間がかかります(試験対策上は、さほど問題はなさそうです)。

 

なお、徴収法の雇用保険率(徴収法のこちら)についても、いったん、改訂を終えています。 

 

 

 

3 雇用保険法

 

なお、雇用保険法の「専門実践教育訓練給付金」について、新しい図を作成しました(雇用保険法のこちら)。

 

 

では、また次回です。

 

 

令和元年12月17日(火曜)

1 マタハラ判決

 

マタニティ・ハラスメントに関する最高裁判例(【広島中央保健生協事件 = 最判平成26.10.23】)について、改訂しました。こちらです。

 

 

2 短時間・有期雇用労働法

 

「短時間・有期雇用労働法」について、「菅野第12版」から追記をしました。労働一般のこちらこちらです。

後者については、水町説と菅野説の違いについて触れています。

 

 

3 安衛法

 

なお、労働安全衛生法のテキストが、今年中には完成する予定です。

当サイトの開始当時は、安衛法のテキストは公開できず、翌年度には、「健康診断、面接指導、ストレスチェック制度」の部分のみアップしました。

その後、時間的余裕がなくテキストの継続作成ができませんでしたが、今年の7月から作成を再開し、ようやく全体のアップが可能となりました。

 

安衛法上の主な「勧告」について、こちら(安衛法のパスワード)で整理しています。

 

 

4 その他

 

近日、引き続き、合格者の方の体験談をメール致します。

 

 

令和元年11月7日(木曜)

更新等のお知らせが、新しくなりました。

 

今年度の労基法は、民法の債権法改正を反映させています。

改正民法のうち、直接、社労士試験に影響してくるものは消滅時効ですが、労働契約の背景として間接的に関係する事項は少なくないです。

当サイトでは、随所でそのような事項も取り上げています。

 

また、水町「詳解労働法」から参考となる個所を追記しています。

 

なお、「白書対策講座」を始動しました。 

 

 

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