更新等のお知らせ 平成31年度(2019年度)
平成元年8月23日(金曜)
※ 前回の7月24日付のメール後、何通か、メールを発信していますが、ここでは、本年度最後のメールのみ掲載しておきます。
いよいよ本年度最後のメールとなりました。
お忙しいでしょうから、今回は、手短に、本試験当日、出かける前のチェック事項について触れておきます。
1 持ち物
➀受験票
必ず持参する必要があるのは、受験票です。
受験票は、前日(明日)には、持参されるバッグ等にあらかじめ収納しておかれるとよいです。
②時計
時計も、忘れずに。
試験会場では、時計がない部屋があります。時計は必須です。
なお、本試験中は、スマホ・携帯は使用できません。事前に、「切るように」指示があります。必ず切って下さい。
試験中に着信音が鳴り、退席させられ試験を受けられなかった例が実際にあると聞いています。
③タオル、ハンカチ
タオル、ハンカチを多めに。
ここのところ、千葉北西部は、ひところの暑さが軽減していますが、例年、本試験当日はかなり暑いです。
試験会場に着くまでに大汗をかくケースもあります(当方が受験した大学のケースです。駅から坂道が延々とあり、参りました)。
汗を拭くようなタオルを2枚程度の他、本番中に、トイレ休憩をする際、冷たい水に浸して顔や首等を冷やすためのハンカチ・ミニタオルも複数枚、用意されるとよいです。
特に択一式の場合ですが、途中のトイレ休憩は有効です。午後の択一式は、疲労や眠気によって、途中、頭の回転が悪くなるようなことがあります。そのような場合は、遠慮なく、トイレ休憩です。冷たい水で顔を洗い、首などを濡らしたハンカチで冷やして、気合を入れ直して下さい。
なお、朝から雨が降っている場合は別として、晴れの中、試験会場に行く際に、突然、ゲリラ豪雨が降るようなこともあるかもしれません。当日の天気によっては、折りたたみ傘があると便利かもしれません。
④その他
財布もお忘れなく。筆記用具は、鉛筆等を数本、消しゴムも数個の用意が必要です。
なお、昼食は、事前に用意されるのがベストです。受験経験者の方は心得ておられると思いますが、試験会場の周辺のコンビニ等は、昼食時、受験生でごった返し、時間がかかったり、品切れになっていたりする危険があります。
前日(明日)あたりに、菓子パンやお茶などを買っておかれるとよいでしょう。
夏ですので、傷みやすいものは不可です。
2 最後に
さしあたりは、受験票とお金を忘れなければ、なんとかなります。
あとは、本番で、現在の力をすべて発揮するだけです。
色々と細かい心配も募ってくると思いますが、忘れましょう。後先は考えずに、その一瞬に集中します。
なお、例えば、本試験で臨席の人が風邪をひいていたり、貧乏ゆすりをするなど、周囲の環境によって集中できないようなこともあるかもしれません。
しかし、これは視点を変えて考えた方が良いです。
つまり、種々の障害がある環境の中にあっても、集中して最後まで全力投球することができるのか、ここまで見るのが本試験であるということです。
単純な知識力だけが問われるのではなく、それぞれの環境の中でベストを尽くせる方が合格することになります。
しかし、皆様は、もうすでに、それぞれの環境の中で、精一杯のことを黙々と継続されてきました。
これだけで、合格に値するものと考えます。ただし、実際にも、合格証の紙を入手して頂くことは必要です。
これまで何回か触れていますが、東日本大震災によって、受験することがかなわなかった社労士受験生がおられたことを忘れないで下さい。天国から、皆様の本試験の様子をのぞき見されていることでしょう。
本試験を受けられるということこそ、最大の幸運です。
あとは、最後のピースを埋めて頂くだけです。
皆様にとって、素晴らしい1日であることを、心よりお祈り申し上げます。
この1年、有難うございました。
God bless you!
令和元年7月24日(水曜)
今回が、健保法のポイント解説の最終回です。
今年度の通常のメール送信は、今回でいったん終了となりますが、この後も不定期に、テキスト作成のお知らせ等につきまして、メール致します。
次回は、選択式の過去の出題内容や基準点の状況などをまとめました表等をご紹介する予定です(当サイトでは、資料の提供等についてご協力頂いている方がおられるのですが、その方からご提供された資料をベースにしたものです)。
〇 健保法の第6回目(最終回)のポイント解説:
では、健保法の最終回(第6回目)のポイント解説です。費用以降について見ていきます。
費用(財政)については、次の事項が問題となります。
・国庫負担、国庫補助
・保険料(日雇特例被保険者の保険料を含みます)
・強制徴収の手続
その他として、不服申立て、消滅時効、罰則等の問題があります。
まず、費用からです。
〔1〕費用(財政)
一 国庫負担、国庫補助
国庫負担、国庫補助は、出題も多く、重要です。
全国健康保険協会に対する国庫補助については、平成29年に改正がありました。
こちらの図の中央部分の(B)について、従来、「介護納付金」に係る国庫補助が行われていましたが、平成29年7月1日施行の改正の改正により、この国庫補助が基本的に廃止されました(詳しくは、こちら)。
従来、医療保険者は、介護保険第2号被保険者の数に応じて介護納付金を負担していましたが(加入者割)、負担の公平化のため(加入者の標準報酬総額の低い協会管掌健保等について、負担が重くなっていました)、平成29年8月から、段階的に総報酬割(被用者保険等保険者間で標準報酬総額に応じた負担とします)が導入され、平成32(令和2)年度から全面的な総報酬割に移行します。
これに伴い、協会管掌健保の介護納付金の納付の負担が軽減されるため、協会管掌健保に対する国庫補助が基本的に廃止されたものです(もっとも、激変緩和措置として、平成31年度までは、一定額の国庫補助が行われます)。
なお、日雇特例被保険者に関する介護納付金に係る国庫補助については、廃止されていません。
ちなみに、前掲のリンク先の図の(B)の部分について、「後期高齢者支援金」及び「前期高齢者納付金のうち給付費以外の部分」に係る国庫補助については、すでに平成29年度から廃止されています。同年度から総報酬割へ全面的に移行したことに伴うものです(こちら以下)。
以上に関する第153条は、選択式で出題可能ですので注意が必要です。今回の直前対策講座では、「その2」の【問12(こちら)】で出題していますので、そちらをチェックして下さい。
二 保険料
保険料について、まず、一般の被保険者に関する保険料から見ます。
(Ⅰ)一般の被保険者に関する保険料
出題が多く、全般的に注意です。
1 概要
まず、保険料についての概要は、こちらのページでまとめています。
保険料の取扱いについてのまとめは、こちらの表です。
2 主体
(1)徴収権者
徴収権者の関係(こちら)は、従来、あまり出題がありませんでしたが、平成29年度の択一式の【問1C(こちら)】において、「協会が管掌する健康保険の任意継続被保険者に関する保険料は協会が徴収する」点が出題されました。
(2)保険料の納付義務者、負担義務者
保険料の納付義務者、負担義務者(こちら)については、次に注意です。
➀任意継続被保険者及び特例退職被保険者について、当該被保険者が保険料の全額の負担義務を負い、かつ、その保険料の納付義務も負うこと。
②健康保険組合が管掌する健康保険の場合は、規約で定めるところにより、事業主の負担すべき一般保険料額又は介護保険料額の負担の割合を増加することができること。直近の【平成30年問5オ(こちら)】でも出題されています。
(3)保険料の免除
保険料の免除については、こちらの3種類がありますが、いずれも出題が多いです。
ただ、「育児休業等期間中の保険料の免除」と「産前産後休業期間中の保険料の免除」については、すでに厚年法で学習したものとほぼ同じですから、復習程度のチェックとなります。前記リンク先の赤字を含む太字部分をチェックして下さい。
3 客体 = 保険料
(1)保険料の種類
健保法の保険料については、色々種類がありますが、こちらの表を参考に改めてご確認下さい。
(2)保険料額
保険料額については、こちらの図が一覧です。
この図の下の「特定被保険者に関する保険料額」は、特に出題が多いです。直近の平成30年度は、社会一般の【問9D(こちら)】で出題されています。
(3)保険料率
(ⅰ)保険料率
保険料率については、こちらの図でまとめています。まずは、この図の赤字部分の知識のチェックが必要です。
本文は、協会管掌健保についてはこちら以下、組合管掌健保についてはこちら以下であり、万遍なく出題されています。
選択式でも出題が多く、第160条は長い条文ですが、出題の宝庫であり、改めて確認しておいて下さい。
平成29年度の選択式(こちら)では、第160条第4項から空欄2つが出題され、あらかじめ意識してキーワードをチェックしていませんと正解が難しい問題でした。
その前は、平成24年度の選択式で出題されています(上記平成29年度のリンク先の直前で掲載)。
(ⅱ)報奨金(インセンティブ)制度
なお、協会管掌健保において、加入者や事業主の取組みに応じて、報奨金(インセンティブ)が付与され、それが都道府県単位保険料率に反映される仕組みが創設されました(平成31年4月1日施行ですが、実際に保険料率に反映されるのは平成32(令和2)年度からです)。本文は、こちら以下です。
最終的には、都道府県単位保険料率を0.01%引き上げて、評価指標に基づき全支部をランキングづけし、ランキングで上位の支部について報奨金を付与することによって保険料率を引き下げるものとされます。
以上の太字部分の4か所を押さえておけば、良さそうです。
4 手続
保険料に係る手続(こちら以下)に関しては、厚年法の場合と同様のものが多く、チェックも割合楽です。
次に、その他の被保険者です。
(Ⅱ)任意継続被保険者
任意継続被保険者(特例退職被保険者)に関する保険料の問題は、こちらのページでまとめて整理しています。ざっとチェックして頂くとよいです。
直近では、【平成30年問5エ(こちら)】で納期限について出題されています。
(Ⅲ)日雇特例被保険者に関する保険料
日雇特例被保険者に関する保険料(こちら以下)については、出題個所が割と特定・限定されています(こちらの過去問が参考になります)。
例えば、「1日において2以上の事業所に使用される場合においては、初めにその者を使用する事業主が保険料納付義務を負うこと」は頻出であり必須知識です。また、数字関係が狙われることが多いです。
以下、ポイントです(近時は、さほど出題されていませんので、あまり時間をかけずにチェックするのが得策です)。
1 客体
保険料の額に関する知識は、必須です。こちらの図をご参照下さい。
保険料額は、標準賃金日額に係る保険料額と賞与額に係る保険料額に分かれます。
標準賃金日額に係る保険料額について、「平均保険料率」や「100分の31」といったキーワード・数字は、選択式で出題される可能性があります。
また、賞与額に係る保険料額について、千円未満の端数は切り捨て、また、上限が40万円であることも、選択式の出題対象となり得ます。
2 主体
納付義務者は、事業主です。具体的には、次の通りです。
(1)標準賃金日額に係る保険料の場合
事業主(日雇特例被保険者が1日において2以上の事業所に使用される場合においては、初めにその者を使用する事業主)は、日雇特例被保険者を使用する日ごとに、その者及び自己の負担すべきその日の標準賃金日額に係る保険料を納付する義務を負います。
この標準賃金日額に係る保険料の納付は、日雇特例被保険者が提出する日雇特例被保険者手帳に健康保険印紙をはり、これに消印して行わなければなりません。
※ 対して、徴収法における印紙保険料の納付の場合は、日雇労働被保険者を使用する事業主は、当該日雇労働被保険者に「賃金を支払うつど」、日雇労働被保険者手帳に雇用保険印紙をはり、消印をすることにより印紙保険料を納付します。
(2)賞与額に係る保険料
事業主は、日雇特例被保険者に対して賞与を支払った日の属する月の翌月末日までに、その者及び自己の負担すべきその日の賞与額に係る保険料を納付する義務を負います。
こちらは、健康保険印紙による納付ではなく、現金による納付(例外として、口座振替による納付)です。
3 手続
(1)標準賃金日額に係る保険料の納付方法
前記の通り、標準賃金日額に係る保険料は、事業主(日雇特例被保険者が1日において2以上の事業所に使用される場合においては、初めにその者を使用する事業主)は、日雇特例被保険者を使用する日ごとに、その者及び自己の負担すべきその日の標準賃金日額に係る保険料を納付する義務を負います。
この標準賃金日額に係る保険料の納付は、日雇特例被保険者が提出する日雇特例被保険者手帳に健康保険印紙をはり、これに消印して行わなければなりません。
(2)賞与額に係る保険料の納付方法
事業主は、日雇特例被保険者に対して賞与を支払った日の属する月の翌月末日までに、その者及び自己の負担すべきその日の賞与額に係る保険料を納付する義務を負います。
(3)健康保険印紙
健康保険印紙については、あまり出題がありません。こちらの買戻しの表をチェックして頂くとよろしいです。その他は、大まかには、雇用保険法の雇用保険印紙の知識を思い出すとよいでしょう。
4 日雇特例被保険者に関する認定決定と追徴金
事業主が、日雇特例被保険者の標準賃金日額に係る保険料の納付を怠った場合には、納付すべき保険料額が認定決定され、事業主に告知され、また、正当な理由がない納付の懈怠の場合には、追徴金が徴収されます。
追徴金については、出題が多いです(こちら以下)。
追徴金の額が、認定決定された保険料額の100分の25相当額であること、決定された保険料額〔=即ち、納付怠った保険料の額〕が1,000円未満であるときは、追徴金が徴収されないことは、徴収法の追徴金のゴロ合わせから導くことができます。
ただし、納期限は異なりますので注意です。即ち、追徴金は、その決定された日から14日以内に、厚生労働大臣(機構)に納付しなければなりません。
対して、徴収法の印紙保険料に係る追徴金の納期限は、通知を発する日から起算して30日を経過した日です。
5 日雇拠出金
日雇拠出金は、日雇特例被保険者を使用する事業主の設立する健康保険組合(「日雇関係組合」といいます)が、日雇特例被保険者に係る健康保険事業に要する費用に充てるために、日雇特例被保険者の保険の保険者である協会に拠出するものです(厚生労働大臣(機構)が徴収します)。(こちら以下)
ポイントは、日雇特例被保険者を使用する事業主の設立する健康保険組合で問題になること、日雇拠出金の納期は、9月30日及び3月31日であることです。
以上、日雇特例関係でした。
三 強制徴収の手続
強制徴収の手続(こちら以下)については、厚年法で学習しました内容とほぼ同様です。
「保険料の繰上徴収」と「延滞金」が重要ですが、ゴロ合わせを覚えているか、チェックして下さい。
以上、費用に関する問題でした。
〔2〕その他 = 不服申立て、消滅時効、罰則等
(一)不服申立て
不服申立て(こちら)については、サイトの方も、それほどはボリュームはありません。
本試験では、この健保法の不服申立ての個所で、社審法についての細かい知識が出題されることが少なくありません。
国年法及び厚年法で社審法は網羅していますので、健保法の過去問でよくわからないものは、当該個所のリンク先を参考にして下さい。
なお、平成28年の改正後、健保法では不服申立てについて出題がありません。そろそろ出題されてよいころです。
選択式もありえますので、条文のキーワード・数字には注意です。
(二)消滅時効
消滅時効の期間(こちら)や起算点(起算日。こちら)は、頻出ですので、再チェックして下さい。
直近の平成30年度の択一式(【問7D(こちら)】では、コルセット装着に係る療養費についての起算点が出題されています。
(三)罰則
罰則(こちら以下)については、さしあたり、「秘密保持義務違反に関する罰則」が健保法を含む医療保険法上最も重い罰則であり、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が適用されることを記憶して下さい。
以上、健保法のポイント解説でした。
これにて、今年度のポイント解説は終了となります。
さしあたりは、今年度の当サイトの通常の更新は終了となります。
この後も、テキストの作成は継続し、また不定期ですがメールも致します。
前記の通り、数日中に、選択式の出題傾向がわかる表等をご紹介します。
なお、テキスト作成については、まず、「最低賃金法」のテキストが完成しました(労働一般のこちらです)。
模試などで出題された場合に、簡単にチェックして頂ければ結構です。
ただし、この時期は、労働一般の特定の科目のみに集中するのは得策でありません。社労士試験の対象科目全体を軽めに回して頂いた方がよいです。そこで、今後完成しますテキストにつきましては、「付録」程度にお考え下さい。
また、「次世代法」のテキストがほぼ完成しました。明日アップします。
次世代法は、前回の選択式において、法律の名称と「101人」が出題されており、今回の選択式では出題されないでしょうが、類似する制度が多い「女性活躍推進法」については注意です(直前対策講座のこちら(直前対策講座のパスワード)でも取り上げています)。
この「女性活躍推進法」のチェックの際にでも、混乱する場合は、「次世代法」のテキストをご参照頂くとよいかもしれません。
この後、労働一般のいくつかのテキストを作成します(障害者雇用促進法、労働関係調整法、個別労働紛争解決法あたりです)。同時に、安衛法の総則と安全衛生管理体制あたりまでのテキストも作成する予定です。
さて、本年度の講座の終了のご挨拶につきましては、直前対策講座の労災保険法の最後のこちらでも記載申し上げましたが、主要7科目セットのみにご入会の方もおられますので、改めてこちらでも掲載させて頂きます。
ご挨拶
これにて2019年度版(平成31年度版)の当サイトをひとまず終了させて頂きます。
毎年、同じ感想なのですが、1年はあっという間に過ぎて行ってしまいます。
先日、2019年度版を開始したかと思ったら、いつの間にか元号が変わり、すでに真夏の季節になっております。
今年度は、これまでの作業の積み重ねがどうやら実を結んできたらしく、過去、最も早くサイトの改訂が終わりました。
内容的にも、毎年度、向上には努めており、5年前に当サイトを開始したときに比べればレベルは格段に上がっています。
この間、会員の皆様には、励ましを頂くことのほか、誤字を色々と教えて頂いたり、内容的な間違い等についてご教示を頂くなど、現在の当サイトは、とても一人で作成した内容とはいえないものとなっています。
つまり、当サイトの作成名義は、「講義社労士合格ゼミナールとその会員の方たち」となります。
ただし、まだまだ向上の余地が残っていると感じており、今後も、内容的な改善に努めます。
この1年、お仕事や家事・雑用等で学習が順調に進まなかった会員の皆様も少なくなかったと思います。
ただ、ともかく、無事、試験日を迎えられることがなによりです。
いつも触れることなのですが、私が社労士試験に合格して事務指定講習を受けた際に、東日本大震災で被災された仙台の方とお知り合いになりました。
この震災によって亡くなられた社労士試験の受験生の方がおられたそうです。
亡くなられて社労士試験を受けることができなくなった方達の代わりに、是非とも皆様が合格して下さい!
どうぞ当日は、悔いのないよう、力を出し切られることをお祈り申し上げます。
皆様のご苦労が実を結びますように。 God bless you!
有難うございました。
令和元年7月21日(日曜)
さてさて、今日は、投票日でもありますし、何かと慌ただしいです。
何やら、梅雨もあけたのかなんなのか、晴れたり曇ったりの中、ひたすら蒸し暑い陽気になってきました。社労士試験の季節の蒸し暑さがやってきたという感じはしますが。
試験日まであと1箇月程度。現在は、ストレスが非常に多いことかと思います。
このストレスは、受験経験があり、実力が高い方ほど、強く感じられるものかもしれません(初受験の方は、「当たって砕けろ」の精神でパワフルに突き進んで下さい)。
ただ、残念ながら、夏の蒸し暑い陽気を我々が変えることができないのと同様に、社労士試験の試験委員が選択式で我々があまり学習していない「変な問題」を出題することを止めることもできません。
妙な例えではありますが。。
結局、「人事を尽くして天命を待つ」、「ベストを尽くす」、あとはどうにかなるだろう、という積極的開き直りが一番良さそうです。
我々が社労士試験に合格しても、合格できなくても、社会が1日で変わることはないでしょう。
しかし、合格すれば、我々は社労士として名のり活動をすることができるようになり(要会費納入)、新たなスタートラインに立つことができます。
例えば、昔と異なり現在では、SNS等を通じて、専門的知識を披露して、影響力を行使することが可能になっています。
こういったスタートラインに立つことができるのかどうかという点は、合格前との決定的な違いです。
皆様には、まずは、この新たな見晴らしの良いポジションを奪取して頂かなければなりません。
ただし、私個人の経験では、社労士試験の合格より、健康や家族の方にプライオリティーがあると考えています。
従いまして、心身の調子等に十分気遣いながら、問題のない範囲内でベストを尽くして下さい。
来月の本試験日が終わったら、お好きなものを食べるとか、旅行にいくとか、読みたかった本を読むとか、ご褒美をたっぷり注入して下さい。
否、現在でも、このご褒美の供給は不可欠です。ある程度学習したら、リラックスして大福を食べるとかです😚
では、ゴタクはこの程度にし、今回のお知らせです。
〔Ⅰ〕直前対策講座
直前対策講座は、最後の科目の「労災保険法」(こちら)もアップしました。
これにて、本年度の当サイトの講座自体は、さしあたり終了となります。まだ引き続きメールやテキストの作成をアップを行っていきます。
次に、健保法のポイント解説です。
〔Ⅱ〕健保法の解説第5回目
健保法の第5回目の解説は、日雇特例被保険者です。
〇 日雇特例被保険者の保険
日雇特例被保険者の保険については、雇用保険法の日雇労働被保険者のようには出題は多くなく、また、さほど細かい知識が問われているわけでもありません(こちらの過去問から判明します) 。
前回の平成30年度の択一式では、【問6E(こちら)】で、出産育児一時金の保険料納付要件が出題されましたが、過去何度も出題されている典型問題でした。
【平成29年問1E(こちら)】の方が、やりにくかったといえますが、それほど難しくはありません。
そこで、日雇特例被保険者の保険については、基本的知識をチェックするのがよいでしょう。当サイトが赤字にしている個所、ゴロ合わせを作っている個所、図表がある個所を再度チェックして頂ければ結構です。
ちなみに、大まかな構造は、こちらの図の通りです(これまでの「一般の被保険者」との場合と同様の体系に沿って整理できます)。
以下、チェックポイントを見ます。
〔1〕主体
1 保険者
保険者については、こちらのページで、厚生労働大臣が行う業務、その委任・委託の問題、指定市町村長又は指定市町村が行う事務の問題に関して、細かい知識があるのですが、今まではほとんど出題されていませんでした。
ただし、前掲の【平成29年 問1E(こちら)】では、協会から市町村への事務の委託のケースが出題されており、今後、これらの事務に関する問題も、たまに出題されてくるかもしれません。
概要は、こちらの図ですが、あまり細かく押さえなくてもよいでしょう。
ただし、こちらの「厚生労働大臣が行う業務」については記憶しておかれた方がよいです。
2 日雇特例被保険者
日雇特例被保険者については、こちらの(資格取得の)要件をチェックして下さい。このリンク先の下部に「日雇労働者」の要件や適用除外についても記載しています。こちらのページは、全面的にチェックして頂いた方がよいです。
3 日雇特例被保険者手帳
日雇特例被保険者手帳は、重要なはずですが、あまり出題がありません。こちらのページの色がついた個所をチェックしてみて下さい。
出題される場合は、「返納」(こちら)の可能性が高いと思われますので、「返納」は少々じっくり確認してみて下さい。前記リンク先の少し下部に表がありますので、この赤字部分を記憶して頂ければ結構です。
4 被扶養者
被扶養者(こちら)については、届出について、赤字部分をチェックして下さい。
〔2〕客体
賃金の関係(こちら)については、これまで出題はあまりありませんが、出題しやすい個所ではあります。
賃金の定義(「臨時に受けるもの」も、賃金に含まれます)や賞与額の決定方法(千円未満の端数は切り捨て、上限は40万円)といった知識は必須です。
前記リンク先のページの赤字分をざっとチェックして下さい。
〔3〕保険給付
保険給付については、療養の給付のこちら以下で、「保険料納付要件」や「受給資格者票」といった重要知識を掲載しています。
保険料納付要件については、こちらの図の数字関係を記憶すれば大丈夫でしょう。
次に、日雇特例被保険者に関する保険給付の重要知識(保険料納付要件については、前記リンクを参照)を列挙します。赤字・太字の個所を記憶しているか、チェックして下さい。
1 療養の給付
(1)支給期間
日雇特例被保険者に係る療養の給付の支給期間は、同一の傷病については、療養の給付等の開始の日から1年間(厚生労働大臣が指定する疾病(結核性疾病)については、5年間)です。
(2)手続
日雇特例被保険者が保険給付を受けるためには、受給資格者票を保険医療機関等に提出することが必要です。被保険者証ではないことに注意です。
即ち、保険者(具体的には、協会又は委託市町村)は、日雇特例被保険者が、保険料納付要件を満たしていることを日雇特例被保険者手帳によって証明して申請したときは、これを確認したことを表示した受給資格者票を発行し、又は既に発行した受給資格者票にこれを確認したことを表示しなければなりません
そして、日雇特例被保険者が療養の給付を受けようとするときは、受給資格者票を保険医療機関等(第63条第3項第3号の健康保険組合開設病院等は除きます)に掲げるもののうち自己の選定するものに提出して、そのものから受けるものとされます。
2 高額療養費、高額介護合算療養費
高額療養費及び高額介護合算療養費療養については、療養の給付等の他、後記の「特別療養費」も対象となります(こちら以下)。
3 移送費
移送費については、療養の給付の他、保険外併用療養費に係る療養及び特別療養費に係る療養を受けるために移送された場合も含みます (こちら以下)。
4 傷病手当金
日雇特例被保険者に係る傷病手当金は、日雇特例被保険者が療養の給付等を受けている場合に、その療養のため労務に服することができず、継続する3日間の待期期間を満たしたときに、その労務に服することができない期間(支給開始日から起算して6月(結核性疾病は1年6月)を限度とします)、1日につき支給されるものです(こちら以下)。
ポイントは、次の通りです。
(1)支給要件
療養の給付等を受けている場合にその療養のために労務不能であることが必要であると解されています。
従って、例えば、日雇特例被保険者が、病院等において一度も診療を受けず、自宅で静養していた場合は、傷病手当金は支給されません。
ただし、労務不能となった際にその原因となった傷病について療養の給付等を受けていれば足り、労務不能期間のすべてにおいて療養の給付等を受けていることは要しないとされます。
なお、保険料納付要件は原則通りです。
即ち、療養の給付等を受ける日の属する月の前2月間に通算して26日分以上又は当該月の前6月間に通算して78日分以上の保険料が、その日雇特例被保険者について、納付されていなければなりません。
(2)効果
(ⅰ)支給額
傷病手当金の額は、前2月間又は前6月間のうち、最も標準賃金日額の合算額が多かった月の当該合算額の45分の1が1日につき支給されます
(ⅱ)支給期間
支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から起算して6月(厚生労働大臣が指定する疾病〔=結核性疾病〕に関しては、1年6月)が限度です。
5 出産育児一時金
出産に関する保険給付については、保険料納付要件がポイントです。
出産育児一時金は、日雇特例被保険者が出産した場合において、その出産の日の属する月の前4月間に通算して26日分以上の保険料がその者について納付されているときは、一般の被保険者に係る出産育児一時金の額〔=原則として、1児につき40万4千円。ただし、産科医療補償制度に加入する病院等による医学的管理の下における出産の場合は、1児につき、3万円を超えない範囲内で保険者が定める額(1万6千円)を加算した金額。合計で42万円〕が支給されます(こちら以下)。
なお、日雇特例被保険者本人ではなく、その被扶養者が出産した場合の「家族出産育児一時金」の支給要件については、保険料納付要件は緩和されず(被扶養者が出産直前であっても、必ずしも日雇特例被保険者が就労困難となるわけではないからです)、原則の保険料納付要件を満たすことが必要です。
6 出産手当金
出産育児一時金の支給を受けることができる日雇特例被保険者には、出産の日(出産の日が出産の予定日後であるときは、出産の予定日)以前42日(多胎妊娠の場合においては、98日)から出産の日後56日までの間において労務に服さなかった期間、出産手当金が支給されます (こちら以下)。
保険料納付要件は、出産育児一時金の場合と同様に緩和されており、その出産日の属する月の前4月間に通算して26日分以上の保険料が納付されていれば足ります。
出産手当金の額は、1日につき、出産日の属する月の前4月間の保険料が納付された日に係る当該日雇特例被保険者の標準賃金日額の各月ごとの合算額のうち最大のものの45分の1に相当する金額です。
7 特別療養費
特別療養費は、初めて日雇特例被保険者となった場合などに、保険料納付要件を満たすまでの間に保険給付を受けられるように支給されるものです(こちら以下)。
(1)支給要件
支給要件については、今までほとんど出題されていませんが、数字関係が出題されましたら、「1年」を覚えておくと良さそうです。
(2)効果
支給期間の出題が多いです。
即ち、特別療養費の支給期間は、日雇特例被保険者手帳の交付を受けた日の属する月の初日から起算して3月(月の初日に日雇特例被保険者手帳の交付を受けた者については、2月)です(こちらの表を参考)。
(3)手続
特別療養費の支給を受けることができる日雇特例被保険者が申請をすることにより、保険者が特別療養費受給票を交付します。
※ 日雇特例被保険者は、特別療養費受給票の交付を申請しようとするときは、協会又は委託市町村に日雇特例被保険者手帳を提出しなければなりません。
特別療養費の支給を受けようとする日雇特例被保険者又はその被扶養者は、特別療養費受給票を、保険医療機関等(健康保険組合開設病院等を除きます)又は指定訪問看護事業者に提出しなければなりません。
特別療養費受給票の有効期間が経過したとき、又は受給資格者票の交付を受けたときは、日雇特例被保険者は、速やかに、特別療養費受給票を協会又は委託市町村に返納しなければなりません。
8 併給の調整
日雇特例被保険者に係る保険給付と他の制度による保険給付が競合する場合は、次のように押さえておきます(こちら以下)。
(1)原則
「他の制度による保険給付」が優先されます。
(2)例外
「日雇特例被保険者の本人給付」と「他の制度による家族給付」が競合する場合は、いずれか一方の保険給付を受けたときは、その限度において、他の保険給付は行われません。
以上、今回の解説でした。次回は、健保法の最終回として費用以降について見ます。
令和元年7月19日(金曜)
直前対策講座と健保法のポイント解説のお知らせです。
〔Ⅰ〕直前対策講座
直前対策講座については、「労働一般」の「その4」が完成しました。こちら以下です(直前対策講座のパスワード)。
今回の「その4」では、「労働組合法」、「障害者雇用促進法」、「職業安定法」、「最低賃金法」及び「女性活躍推進法」の5科目を取り扱っています。
法令知識とデーターをミックスした設問が多いです。
なお、「障害者雇用促進法」及び「最低賃金法」については、テキストを作成する予定があり(今回の試験に間に合うかどうか微妙なのですが)、この直前対策講座における解説においても、わりと広い範囲をカバーしていますので、これらの科目について十分学習されていない方は、今回の設問と解説をチェックしてみて下さい。
ちなみに、労働一般の直前対策講座において取り上げている科目の目次は、こちらです。
直前対策講座は、次回の労災保険法が最終回となります。
〔Ⅱ〕健保法の第4回目の解説
次に、健保法の解説です。今回は、保険給付の後半です。
〔1〕高額療養費
高額療養費は、厄介です。
ただ、「高額療養費算定基準額」の表(こちら)を覚えてしまえば、かなりの見通しはつきます。この表を覚えられるかどうかがカギです。
近時の出題は、次の通りです。
まず、平成28年度の選択式では、「70歳未満の者」に係る高額療養費算定基準額(以下、「算定基準額」といいます)に関する問題が出題されました。これは、平成27年1月1日施行の改正を受けた出題であり、平成27年度の試験では出題されずに、翌年度に出題されたものです。
平成29年度の選択式では、高額療養費は出題されませんでしたが、択一式で2肢出題され、そのうち1肢(【平成29年 問3D(こちら)】は、翌年度(平成30年度)の試験における改正事項(平成29年8月1日施行)についての「70歳以上の者の外来療養」に係る高額療養費(一般所得者の区分)のケースでした(つまり、試験当日にはすでに改正されている事項について、改正前の内容を問うという出題でした)。
平成30年度は、択一式の1肢のみの出題でした(【平成30年問2B(こちら)】)。さほど難しくなく、また、近時の改正事項も問われませんでした。
そして、今回の試験では、平成30年8月1日施行の改正事項(70歳以上の「一定以上所得者」の区分と70歳以上の「一般所得者」の外来療養に係る場合の算定基準額が改正されました)が含まれます。従って、70歳以上の者に係る算定基準額について、要注意です。
一 概要
まず、高額療養費の制度の概要については、こちらのページ1枚を使って、かなり細部まで触れています。このページとその次のページを再チェックして頂くと、全体像の記憶を喚起できると思います。
二 改正事項
高額療養費に関する今回の改正事項は、こちらの表の黄色の部分です。これらの金額は、記憶する必要があります。
練習問題として、直前対策講座のこちら(直前対策講座のパスワード)の【問5】で5肢作成していますので、ご利用下さい。
改正事項以外については、これまでの過去問で問われた知識を確認すれば足りそうです。
高額療養費は、学習自体は大変なのですが、実際は、細かい計算問題などが出題されますと、多くの受験生は正答できませんから、あまり問題ないことになります(過去、平成16年度の選択式で事例による本格的な計算問題を出題したところ、ほとんどの受験生ができず、基準点が1点となってしまい、えらいことになったという話です)。
算定基準額の金額を覚えていれば解けるといったような単純な計算問題は出題される可能性はあります。しかし、金額を記憶していればクリアーできると思います。
〔2〕高額介護合算療養費
高額介護合算療養費(こちら)についても、70歳以上の一定以上所得者の介護合算算定基準額が改正され、今回から出題対象に入りました。
やはり、介護合算算定基準額を記憶しているか、チェックして頂く必要があります。
これについては、平成25年度の選択式で出題されているのですが、やや時が経ちましたし、今回の改正もありますので、再度の選択式もあり得ます。介護合算算定基準額といったキーワードについてもチェックして下さい。
直前対策講座の【問6(こちら)】で取り上げていますので、ご参照下さい。
〔3〕移送費、家族移送費
移送費(家族移送費)についても、注意です。択一式では、【平成29年問5D(こちら)】(支給要件)に引き続き、【平成30年問7C(こちら)】でも出題されています。選択式も視野に入れておく必要があります。
支給要件については、こちら以下の2つの条文のキーワード(色付き文字の部分の「保険外併用療養費」と「保険者が必要」に注意です)を記憶して頂き、支給額については、こちらの施行規則第80条の赤字のキーワードを記憶して下さい。
後者の「最も経済的な通常の経路及び方法により移送」という部分は、丸暗記が必要です(本文中でも触れていますが、労災保険法の通勤災害における「通勤」の要件とやや表現が異なる個所がありますので、注意です)。
手続についても、申請書に「医師又は歯科医師の意見書」の添付が必要となる点に注意です。この医師等の意見書の添付は、他に、家族移送費、傷病手当金及び出産手当金で登場します(各リンクは、こちらです)。
直前対策講座の【問7(こちら)】で取り上げています。
〔4〕傷病手当金
傷病手当金は、最重要個所の一つです。そろそろ選択式の出題対象となってもおかしくないです。
一 発生
傷病手当金については、平成28年4月1日施行の改正により、支給額関係(こちら以下)と支給調整の関係(こちら以下)が改められました。
いずれについても改正直後の平成28年度の試験では出題されず、平成29年度は、択一式の【問3A(こちら)】で、「傷病手当金の支給額の算定基礎である標準報酬月額の算定方法」(任意継続被保険者の期間のケース)が出題されました。
なお、支給額については、同様の改正が行われた出産手当金について、改正直後の平成28年度の択一式で出題されました。
前回の平成30年度(【問9E(こちら)】は、出産手当金と傷病手当金との支給調整に関する出題がなされましたが、改正事項については直接は論点となっていません。
傷病手当金や出産手当金については、手続の問題(医師、事業主の証明書の添付等。こちら以下)も、注意です。サイト上の過去問が出題されている個所の記載を参考に、出題個所を中心に再チェックして下さい。
二 変更
傷病手当金の支給調整については、複雑なことから、まず、こちらのページで基本的事項を記載し、より細かい事項も含めた全体は、次のこちらのページで記載しています。
最終的には、こちらの第108条の第1項から第5項の条文自体もチェックしておいて下さい(あまり細かい部分は出題されないでしょうが、選択式の出題対象となります)。
傷病手当金については、直前対策講座の【問8(こちら)】と【問9】で取り上げています。
〔5〕死亡に関する保険給付
死亡に関する保険給付として、「埋葬料(又は埋葬費)」及び「家族埋葬料」があります(こちら以下)。
当サイトのゴロ合わせで、かなりの範囲の知識をカバーできます。
〔6〕出産に関する保険給付
出産に関する保険給付も重要です。
一 出産育児一時金
出産育児一時金については、こちらの◆の部分の知識がコアの部分であり(支給額が中心です)、まずは、ここを記憶しているか確認して下さい。
二 出産手当金
出産手当金(こちら以下)も、こちらの◆の部分を暗記していることが必要です。前回の選択式で出題されていますから、重複するような個所の出題はないでしょう。
サイトをざっとスクロールして頂き、赤字部分を覚えているか確認してみて下さい。
〔7〕資格喪失後の保険給付
資格喪失後の保険給付(こちら以下)も、重要です。ポイントは、次の通りです。
一 傷病手当金又は出産手当金の継続給付
資格喪失後の傷病手当金又は出産手当金の継続給付(こちら)は、支給要件、支給額とも、割と記憶しやすいです。
なお、「資格喪失後の傷病手当金又は出産手当金と任意継続被保険者又は特例退職被保険者との関係」(こちら)について、注意です。
二 資格喪失後の死亡に関する給付 = 資格喪失後の埋葬料(埋葬費)の給付
資格喪失後の死亡に関する給付に関する給付については、支給要件が面倒ですが、ポイントは、「3か月以内」に死亡という点です(この点を押さえておけば、支給要件を厳密に覚えなくても、かなり通用しそうですが)。
三 資格喪失後の出産育児一時金の給付
資格喪失後の出産育児一時金の給付については、「1年以上被保険者であった者(被保険者の資格喪失日の前日まで引き続き1年以上被保険者(任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除きます)であった者)が、被保険者の資格喪失日後6月以内に出産したとき」という支給要件のうち、「1年以上」・「6か月以内に出産」という数字関係を中心に押さえて下さい。
〔8〕保険給付の通則
保険給付の通則(こちら以下)は、第三者行為災害や受給権の保護等など、他法で学習しました知識をベースにできるものが少なくないです。
健保法で特有な事項としては、まず、併給の調整があります(こちら)。過去問では、公費負担医療との調整について、細かい難しい出題がなされていることがありますが、出題は多くはなく、余り深入りしない方がよいです。
次に、給付制限(こちら以下)は、押さえる必要があります。あまり出来が良くないですが、当サイトのゴロ合わせのように、一括して重要知識を記憶しておきますと、本試験に対応しやすいです。
〔9〕保健事業及び福祉事業
保健事業及び福祉事業(こちら)は、一応、注意が必要です。平成29年度のように、選択式において短文で色々なテーマが素材とされる場合は、入り込んでくる可能性があります。
第150条は、平成28年制定の医療保険制度改革法により改正されており、択一式の他、選択式でも出題しやすく、条文の赤字部分を記憶して下さい。とりわけ、改正により新設された個所である第1項の「健康管理」、「疾病の予防」、「自助努力についての支援」というキーワードについては暗記が必要です。
直前対策講座の【問10(こちら)】で取り上げています。
次回は、日雇特例被保険者の保険について見ます。あと2回で健保法の解説は終了します(来週中に終わる予定です)。
令和元年7月17日(水曜)
今回も、直前対策講座のお知らせと健保法の解説です。また、最後に、先日公表されました「高度プロフェッショナル制度」に関するQ&Aの概要についてお知らせ致します。
〔Ⅰ〕直前対策講座
直前対策講座については、現在、労働一般の「その3」の「育児介護休業法・パートタイム労働法・労働者派遣法」までアップが終わっています。この後、労働一般の最後として「その4」(労働組合法、障害者雇用促進法、職業安定法等)が続きます(現在、障害者雇用促進法までは完了しました)。
その後は、「労災保険法」にて、直前対策講座は終了の予定です。
〔Ⅱ〕健保法の第3回目の解説
次に、健保法の解説です。今回は、保険給付の前半です。近時の改正事項を中心にポイントを見ます。
〔1〕療養の給付
まず、療養の給付(こちら以下)の全体の体系図は、こちらです。
第63条については、食事療養以下、選定療養までの定義も規定されており、再チェックをして下さい。太字部分に注意です。
一部負担金については、こちらの図により記憶が喚起できれば大丈夫です。一部負担金の額の特例の概要については、こちらです。
手続については、こちら以下で概要を記載しています。太字部分をざっと流して下さい。
〔2〕入院時食事療養費
次に、入院時食事療養費は、平成30年4月1日施行の改正(前年度分の改正事項)により、食事療養標準負担額が引き上げられています。選択式で出題することが可能であり、注意が必要です。
一 支給額
まず、入院時食事療養費の支給額のこちら以下の第85条第2項について、平成28年4月1日施行の改正により、「特定介護保険施設等」が追加されている点に注意です。このキーワードを含めた第85条第2項は、選択式の有力な出題対象です。
直前対策講座の「その2」の【問1】(こちら。直前対策講座のパスワード)で取り上げていますので、確認してみて下さい。
二 食事療養標準負担額
食事療養標準負担額については、平成28年4月1日施行の改正により、従来の(1食あたり)260円から360円に引き上げられ、さらに、平成30年4月1日施行の改正により、460円に引き上げました。
こちらの表の食事療養標準負担額を記憶する必要があります(後述の入院時生活療養費の生活療養標準負担額の際にも役立ちます)。サイト上でも、いまいちですが、ゴロッています。
三 食事療養標準負担額の改定
なお、食事療養標準負担額の改定に関する第85条第4項も、平成28年4月1日施行の改正により改められていますので、一応、確認して下さい(こちら)。
〔3〕入院時生活療養費
入院時生活療養費については、生活療養標準負担額が大きく改められており、こちらも注意です。
ただし、入院時生活療養費は、平成26年度の選択式で、3つの空欄が出題されています(その前は、平成19年に出題です)。
再度、選択式で出題されるか判断が難しいところですが(前記の入院時食事療養費については、まだ選択式の出題がありません)、前回出題後に大きく改正されていますから、用心しておくのがよさそうです。
一 支給額
まず、こちらの支給額の第85条の2第2項については、十分、キーワードのチェックが必要です。こちらも、選択式の素材の候補となります。
直前対策講座の「その2」の【問2】(こちら)で取り上げています。
二 生活療養標準負担額
生活療養標準負担額については、平成29年10月1日及び平成30年4月1日施行の改正により、覚えるのがかなり厳しくなりました。こちらの表ですが、これを細かく覚えるのはきつく、部分的に押さえた方がよいでしょう。
まず、前掲のリンク先の表の上から2番目の「(二)入院医療の必要性の高い者」については、その食費分は、基本的に、入院時食事療養費の食事療養標準負担額と同様ですから、食事療養標準負担額のゴロ合わせから記憶を喚起します。
そのうえで、サイト上で掲載しています生活療養標準負担額のゴロ合わせなども利用して、居住費分が原則として370円であることを思い出します( 平成29年10月1日施行の改正により、従来の無料から200円に引き上げられ、平成30年4月1日施行の改正により、さらに370円に引き上げられました)。
前記リンク先の表の(四)「境界層該当者」(生活保護法の要保護者であって、標準負担額の所定の減額措置を受ければ生活保護を要しなくなる者です)については、「1食100円、居住費0円」であることを丸暗記します。
(三)「指定難病患者」については、「低所得者」又は「境界層該当者」に当たらない場合は、「1食260円、居住費分0円」であることを丸暗記します。
「難病は、つらいぜ」(つら(26)い、ぜ(ゼロ))、とでも覚えておきましょう。
「入院医療の必要性の低い者」についても、基本的には、上記の「入院医療の必要性の高い者」の知識から導きます。
〔4〕保険外併用療養費
一 患者申出療養
保険外併用療養費については、平成28年4月1日施行の改正により、新たに患者申出療養が対象となりました。
第63条第2項第4号の文言が、【平成28年問3D(こちら)】で出題されましたが、引き続き、選択式対策としてもチェックして下さい。
二 選定療養
病床数が200以上の病院について受けた初診及び再診について、他の病院等からの文書による紹介がない場合等においては、当該病院は選定療養として特別の料金を徴収できます。
この点、平成28年4月1日施行の改正により、地域医療支援病院及び特定機能病院については、当該療養に要する費用の範囲内において厚生労働大臣の定める金額〔=例えば、保険医による初診の場合5千円以上とされます〕以上の金額の支払を求めること(即ち、特別の料金を徴収すること)が原則として義務づけられました(保険医療機関及び保険医療担当規則(療担規則)第5条第3項)。(これについては、【平成28年 社会一般 問10B(こちら)】で出題されています。)
この対象となる「地域医療支援病院」については、従来は、一般病床の数が500以上のものでしたが、平成30年4月1日施行の改正(前年度分の改正事項です)により、400以上に引き下げられましたので、注意です(こちら以下)。
以上は、直前対策講座の「その2」の【問3】(こちら)で取り上げています。
〔5〕療養費
療養費についても、(改正事項ではないですが)その支給額に関する第87条第2項、第3項のキーワードに注意です。
なお、海外療養費の支給の申請については、平成28年4月1日施行の施行規則の改正により、「保険者が海外療養の内容について当該海外療養を担当した者に照会することに関する当該海外療養を受けた者の同意書」の添付が要求されていますので(こちら)、択一式知識としてチェックしておきます。
〔6〕訪問看護療養費
一 訪問看護(事業)
訪問看護療養費については、平成30年4月1日施行の介護保険法の改正による介護医療院の創設に伴う見直しがありますので、注意です(前年度分の改正事項です)。
即ち、訪問看護事業とは、疾病又は負傷により、居宅において継続して療養を受ける状態にある者(主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生労働省令で定める基準に適合していると認めたものに限ります)に対し、その者の居宅において看護師その他厚生労働省令で定める者が行う療養上の世話又は必要な診療の補助(保険医療機関等又は介護保険法に規定する介護老人保健施設若しくは介護医療院によるものを除きます。「訪問看護」といいます)を行う事業をいいます(第88条第1項)。
つまり、介護老人保健施設に加えて介護医療院により行われる訪問看護に相当する看護についても、健康保険法の訪問看護療養費の支給対象となる「訪問看護」には該当しません(介護保険法でカバーされるということです)。
直前対策講座の「その2」の【問4】(こちら)で取り上げています。
二 支給額
支給額の第88条第4項、第5項のキーワードについても、要注意です。「平均的な費用の額」、「厚生労働大臣が定めるところにより算定した費用の額」、「厚生労働大臣は、当該定めをしようとするときは、中央社会保険医療協議会に諮問する」あたりを記憶します。こちらの図をご参照下さい。
次回は、保険給付の後半です。
〔Ⅲ〕「高度プロフェッショナル制度」に関するQ&A
先週の12日(金曜日)付けで、「高度プロフェッショナル制度」(以下、「高プロ」ということがあります)に関するQ&Aが通知されました。
直接、今回の試験対象となるわけではありませんので、チェックする必要はありません。ただし、既存の高プロの知識の整理とうのため、役立つ事項もいくらかありますので、若干ご紹介します。
なお、サイト上では、一応、このQ&Aも掲載はしていますが、サイト上で「Q&A」による旨がある記載については、読まなくて結構です。
〔以下、ここでは省略します。〕
次回は、金曜日にメールします。
令和元年7月11日(木曜)
〔Ⅰ〕直前対策講座
直前対策講座は、まず、健康保険法の全体をアップしました。こちら以下です。
健康保険法も、かなりきつい問題があります。特に、高額療養費あたりです。高額療養費算定基準額を記憶しているか、再度、チェックをして下さい。
さらに、直前対策講座の社会一般も完成しました。こちら以下の3ページにわたります。
テキストが完成しています「国民健康保険法」、「高齢者医療確保法」、「介護保険法」、「確定給付企業年金法」及び「確定拠出年金法」の5つの科目を取り上げています。
このほか、選択式において、児童手当法の出題頻度が非常に高く(平成27年度から4年度連続して出題中です)、こちらも再チェックが不可欠です。児童手当法については、恐縮ですが、市販書を十分ご確認下さい。
現在は、労働一般の直前対策講座を作成しており、まずは、労働契約法が完成しました。労働時間等設定改善法と併せ、近日、公開します。
〔Ⅱ〕健保法の第2回目の解説
健保法の解説は、第2回目です。被保険者以降の主体と客体となります。
〔1〕被保険者等
被保険者等では、適用事業所、被保険者及び被扶養者を見ます。
一 適用事業所
適用事業所については、基本的には、厚年法で学習しました内容と同様です(船舶は、適用事業所に含まれません)。
任意適用事業所の手続面の問題(こちらやこちら)は、厚年法と異なりますので、ざっとチェックして下さい。
即ち、申請書は、機構(協会管掌健保の場合)又は地方厚生局長等(組合管掌健保の場合)に提出します。
二 被保険者
1 当然被保険者
健保法の当然被保険者については、70歳未満という要件はないですが、その他は、基本的に厚年法の当然被保険者と同様になるものが多いです。
「使用される者」にあたるかどうかについて、通達の関係が頻出です(こちら以下)。
2 適用除外者
適用除外者(こちら以下)も、出題が多いです。厚年法の適用除外者の知識も併せて、こちらの表などにより再チェックして下さい。
短時間労働者「以外」の適用除外者については、これまでの過去問程度の知識で足ります。
他方、短時間労働者の適用除外の問題(こちら以下)については、健保法の択一式では、改正直後の平成29年度から連続して出題されており、定番化されてきています。
この短時間労働者については、厚年法の直前対策講座(こちら以下の問2と問3)と健保法の直前対策講座(こちら以下の問5と問6)で取り上げていますので、そちらをご参照下さい。
健保法の短時間労働者の場合も、内容的には、厚年法の場合とほぼパラレルですが、条文では、第3条第1項第9号と年金機能強化法附則第46条が中心です。色がついているキーワードに注意です。
なお、この年金機能強化法附則第46条については、定義を定めた部分等は、厚年法の短時間労働者に関する規定である年金機能強化法附則第17条(厚年法のパスワード)で規定されています。
例えば、特定適用事業所の定義は、年金機能強化法附則第17条第12項で定められており、健保法に関する年金機能強化法附則第46条第12項は、この定義を前提としています。
また、健保法で登場します「4分の3以上同意対象者」についても、「当該事業主の1又は2以上の適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者及び70歳以上の使用される者」である旨が定義されており(年金機能強化法附則第17条第2項第1号)、基本的に、厚年法における定義がベースとなっています。
短時間労働者に関する択一式用の細かい知識については、厚年法(こちら等)で記載しています。
択一用知識として、【平成29年問9(健保法のこちら)】及び【平成30年問8(こちら)】も再度チェックしてみて下さい。
3 任意継続被保険者、特例退職被保険者
任意継続被保険者及び特例退職被保険者についても、頻出です。
まずは、資格取得の要件と資格喪失の要件を中心にチェックして下さい。
その後、当サイトでは、例えば、任意継続被保険者に関する全般的な問題について、こちら以下で掲載していますので、ざっと確認して頂くとよいです。
特例退職被保険者についても、この制度の趣旨をとらえた後、資格取得の要件と資格喪失の要件を中心にチェックして下さい。
特例退職被保険者は、健康保険法の規定の適用については、原則として、任意継続被保険者とみなされますので(法附則第3条第6項)(また、施行規則第170条において、任意継続被保険者に係る施行規則の多くの規定が準用されています)、基本的には、任意継続被保険者と同様に取り扱われます(任意継続被保険者も特例退職被保険者も、被保険者の資格を喪失した者が、従来の保険者の被保険者として任意に資格を継続するものである点で共通するためです)。
特例退職被保険者に関する全般的な問題は、こちら以下です。
三 被扶養者
被扶養者(こちら以下)については、平成28年10月1日施行の改正により、「弟妹」が「兄弟姉妹」と改められる改正があり、直後の平成29年度の【問2D(こちら)】で出題されました。
また、改正された短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大との関係については、【平成29年問9イ(こちら)】 で出題されました。本文は、こちらです。
被扶養者については、従来から出題が多く、被扶養者全体について、十分なチェックが必要です。
出発点は、「被扶養者の要件」(「生計維持の要件(生計維持関係)」のみで足りる者と「生計維持の要件」と「同一世帯の要件」の両者を必要とする者)であり(こちらの図)、この「被扶養者の要件」に結び付けて細かい知識をチェックしていきます。
このうち、生計維持の要件については、こちらの図をチェックして下さい。
なお、来年4月からは、この被扶養者について、新たに国内居住の要件が追加されるという大きな改正が行われます(今回の試験対象ではありません)。
外国人労働者の受け入れ拡大に関する出入国管理法の改正を主な背景とした見直しです。
参考程度ですが、被扶養者の定義を定めた現行の第3条第7項が、次のように改められます。
この法律において「被扶養者」とは、次に掲げる者で、日本国内に住所を有するもの又は外国において留学をする学生その他の日本国内に住所を有しないが渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められるものとして厚生労働省令で定めるものをいう。ただし、後期高齢者医療の被保険者等である者その他この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者は、この限りでない。〔以下、省略。〕
下線部分が、追加された個所です。上記の「厚生労働省令」は、まだ制定されていません(8月中旬公布の予定です)。
例えば、外国への留学生や外国に赴任する被保険者に同行する者などが、国内に生活の基礎があると認められる者として、国内居住でなくても被扶養者となることができる例外とされるようです。
また、上記ただし書のの「その他この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者については、いわゆる「医療滞在ビザ」等で来日して国内に居住する者が想定されています。
なお、この被扶養者の要件の変更に伴い、国民年金法の第3号被保険者の要件も、同様に改正されます。のみならず、第1号被保険者の要件についても多少改正されます(適用除外者でないことが追加されます)。
このような改正がある関係上、現行の被扶養者の知識についても、再度チェックしておいて下さい。
〔2〕届出
次に、届出です。
近時、社労士試験の対象科目の届出については、個人番号に関連した改正が続いています。
一 届出の期限
届出については、どの科目においても、「届出の期限」が最も出題されやすいです。
こちらの表で届出の期限について整理しています。
社会保険の届出の期限の原則は、「事実発生日から5日以内」です。そこで、この原則と異なる点に重点をおいてチェックします。健保法の届出は、国年法・厚年法に比べますと、ボリュームが少ないため、大部分を覚えることが可能です。
なお、健保法の届出は、保険者が2種類ある関係で、届出先に特徴があります。
即ち、健保法の届出の届出先は、基本的には、「保険者等」であり、原則として、協会管掌健保の場合は厚生労働大臣(具体的には、機構)であり、組合管掌健保の場合は健康保険組合となります。こちら以下で触れています。
以下、近時の改正事項を中心に触れておきます。
二 特定適用事業所の該当の届出
特定適用事業所の該当の届出は、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大の改正に伴い、施行規則に新設された届出です(施行規則第23条の2)。こちら以下です。
まだ出題されていません。「当該事実があった日から5日以内」に届け出るという届出の期限が最大のポイントになりそうです。念のため、施行規則第23条の2は、一読しておいて下さい。
三 氏名・住所変更の届出
健保法の被保険者の氏名・住所変更の届出(こちら以下) は、近時、改正が多く、注意です。
改正後の最終的な形は、被保険者の氏名変更の届出が、こちらの図の通りであり、被保険者の住所変更の届出は、こちらの図の通りです。
詳細は、健保法の直前対策講座の【問7】(こちら)で見ています。
四 被保険者に係る区別変更の届出(被保険者区分変更届)
被保険者に係る区別変更の届出(以下、「被保険者区分変更届」といいます。こちら以下)も、短時間労働者に関する改正に伴い新設された届出です(平成28年10月1日施行。なお、条文上は、「区別」の変更ですが、実務上は、「区分」の変更とされています。どちらでも問題はないです)。
厚年法でも同様の届出が新設されています。
この健保法の区別変更の届出が、健保法の【平成29年問4エ(こちら)】で出題されました。
条文としては、次のように規定されています(要旨)。
◆事業主は、被保険者に係る健保法施行規則第26条の2第5号の区別の変更があったときは、当該事実があった日から5日以内に、所定の事項を記載した届書を厚生労働大臣又は健康保険組合に提出しなければならない(施行規則第28条の3)。
上記の「被保険者に係る健保法施行規則第26条の2第5号」の区別の変更という部分は、要するに、「被保険者に係る特定4分の3未満短時間労働者であるかないかの区別」という意味と考えてよいです。
細かい点については、前記リンク先で記載していますが、さしあたり、届出の期限を押さえておけばよいでしょう。
以上、届出でした。
〔3〕確認
確認は、各法とも、確認の方法については共通します。
健保法では、確認が不要な場合として、こちらをチェックして下さい。
要するに、「当然被保険者」の場合は、「任意適用事業所の任意適用の取消しの認可による資格の喪失」の場合のみ、確認が不要となり、「当然被保険者以外」の被保険者の「資格の取得及び喪失」の場合には、常に確認は不要であるということがポイントです。
ちなみに、厚年法の確認が不要な場合は、厚年法のこちらです。
厚年法の場合は、ややこしくなりますが、「当然被保険者」の場合に「任意適用事業所の任意適用の取消しの認可による資格の喪失」については確認が不要となるなど、健保法と共通する部分もあります。
〔4〕被保険者証、高齢受給者証
被保険者証や高齢受給者証も、重要です。
こちら以下で過去問を掲載していますので、これらの過去問をざっとチェックして頂いても結構です。解けなかった点は、リンク先の本文に戻って確認して下さい。
被保険者証については、任意継続被保険者や特例退職被保険者について出題してくることが少なくありません。平成22年度の選択式は、任意継続被保険者の被保険者証の返納先の問題でした(【平成16年問5E】の択一式が類問でした)。
また、平成27年度の択一式では、被保険者資格証明書について2肢出題されています。
なお、被保険者証に関する手続の期限についてのまとめは、こちらです。
〔5〕書類の保存義務、通知
書類の保存義務(こちら)も、重要です。「誰が、何を、いつまで」保存しなければならないのか、チェックして下さい。
通知(こちら)についても、太字個所をざっとチェックして下さい。
〔6〕給付担当機関
給付担当機関は、出題も多く、重要です。選択式についても、注意する必要があります。直前対策講座でも、1問取り上げています。こちらの【問8】です。
概要は、こちらのページです。
一 全体像
保険医療機関及び保険薬局(以下、「保健医療機関等」といいます)についても、大きくは、時系列に沿って、「発生 ➡ 変更 ➡ 消滅」のフレームで整理しています。
保険医療機関等については、「発生(指定)」➡「変更(指定の有効期間と更新等)」➡「消滅(指定の取消し)」といった整理になります。
「保険医及び保険薬剤師」については、「発生(登録)」 ➡ 「変更(保険医の異動等)」 ➡ 「消滅(登録の取消し)」となります。
二 チェック個所
以下、チェックの際に参考となる図表等を紹介します。
(一)全体事項
まず、給付担当機関の全体的な事項については、こちらの表でチェックして下さい。
(二)諮問等
中央(地方)社会保険医療協議会に諮問が必要な場合や地方社会保険医療協議会の議を経ることが必要な場合がありますが、これらのまとめは、こちら以下です。
中央社会保険医療協議会の諮問は量が多いため、先にこちら以下の「地方社会保険医療協議会」の諮問と議の方を押さえるとよろしいです。
(三)細部の知識
給付担当機関については、細かな知識が出題されています。以上の大枠を確認した後に、もう一度、当サイトなりご使用のテキストの給付担当機関の個所を再チェックして頂くのが良いです。
また、過去問(こちら)を再チェックして頂くことで、知識を確認することもできます。
〔7〕報酬関係
報酬関係については、基本的には、厚年法の解説メール中で触れています。健保法では、厚年法と異なる点をチェックします。
健保法に特有の事項は、こちら以下で概要を説明しています。
近時の改正を中心に、いくつかポイントを見ます。
一 等級表
健保法の等級表は、平成28年4月1日施行の改正により、47等級から50等級の区分に増加されています。
この点は、翌年度の 【平成29年問2B(厚年法のこちら)】において出題されました。
二 等級区分の上限(最高等級)の改定
等級区分の上限の改定については、平成28年4月1日施行の改正が行われ、 改正直後の健保法において、「100分の0.5」が出題されています(【平成28年問2C(厚年法のこちら)】) 。
三 短時間労働者に関する改正
厚年法で紹介しましたが、報酬支払基礎日数について、被保険者である(特定)4分の3未満短時間労働者は、11日を基準とすることに改められましたが(こちら以下です)、平成29年度の健保法の択一式(【平成29年問9エ(こちら)】)で出題されました。
同問では定時決定のケースで出題されましたが、この11日を基準とする―ルは、随時改定、育児休業等終了時改定及び産前産後休業終了時改定においても同様ですので、引き続き注意です。
なお、こちらの 「例外その2=4分の3以上短時間労働者」についても注意です。
四 随時改定
随時改定の「1等級の差が生じた場合であっても随時改定の対象となるもの」の問題(こちら)も、要注意です。前記リンク先の色のついた部分の金額を記憶しているかどうか、チェックして下さい。
なお、今回の改正事項である「随時改定に係る年間平均の保険者算定」の問題(こちら)については、直前対策講座の健保法のこちらの【問9】で見ています。
五 育児休業等終了時改定
育児休業関係は、近時、連続して、育児介護休業法が改正されていますので、どの法においても、注意が必要です。健保法では、この育児休業終了時改定と保険料の免除です。これらの基本的知識をチェックして下さい。
育児休業等期間中の保険料の免除については、直前対策講座の厚年法のこちらの【問14】で取り上げています。
六 任意継続被保険者と特例退職被保険者
任意継続被保険者と特例退職被保険者の標準報酬月額(こちら以下)は、健保法に特有の問題です。
【平成29年問10B】では、任意継続被保険者の標準報酬月額について出題されました。
なお、任意継続被保険者の標準報酬月額の決定方法に関係する平成30年9月30日時点における協会管掌健保における標準報酬月額の平均額を基礎とした標準報酬月額は、30万円となりました。従来の28万円から引き上げられましたので注意です。
直前対策講座でも取り上げています。こちらの【問10B】です。
特例退職被保険者の標準報酬月額の決定方法について、平成28年4月1日施行の改正がありますので、注意が必要です(ちなみに、平成26年度の選択式で、「9月30日」と「合算額の2分の1」が問われています。改正により、「合算額の2分の1」はなくなりました)。
七 標準賞与額
標準賞与額の算定方法(こちら以下)についても、 資格喪失月に支払われた賞与など、よく出題されている問題についてチェックして下さい。
以上、健保法の解説でした。次回からは、保険給付に入ります。
令和元年7月4日(木曜)
今回からは、健保法の解説メールを送信致します。全部で、6回から7回になる予定です。
まずは、直前対策講座のお知らせです。
〔Ⅰ〕直前対策講座
厚生年金保険法の直前対策講座のその2をアップしました。こちらです。
その1の冒頭で追記したのですが、このその2は、かなりヘビーです。
厚年法が苦手な方は、全てを理解しようとされる必要はなく、「どこかで見た記憶がある」といったレベルで結構です。
そして、設問の解説中の赤字や太字になっている部分に注意して頂き、忘れている用語や数字は丸暗記して下さい。
次回は、明日、健保法の直前対策講座のその1をアップする予定です。こちらも、かなり圧迫感がある内容ですが、1日に数問程度、スキマ時間にでもお取り組み下さい。
〔Ⅱ〕健康保険法の解説の初回
今回から健保法の解説です。
今回は、主体の全国健康保険協会(以下、「協会」といいます)と健康保険組合(以下、「健保組合」といいます)を中心にポイントを見ます。
〔1〕保険事故
序論のこちら以下では、保険事故について説明しています。
平成25年の改正により、第1条(目的条文)が改正されました。改正後の第1条は次の通りです(多少アレンジしています)。
「健康保険法は、労働者又はその被扶養者の業務災害(労働者災害補償保険法第7条第1項第1号に規定する業務災害をいう。)以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。」
同改正により、健康保険の被保険者の業務上の傷病等であっても労災保険の保険給付が受けられない場合には健康保険の対象となることに改められました。
従来は、健康保険の被保険者の業務上の災害の場合は、労災保険の保険給付が受けられないときであっても、健康保険の対象となりませんでした。健康保険の被保険者が副業で行った請負の業務で負傷した場合などにおいて、労災保険、健康保険、国民健康保険のいずれからも給付を受けられないという不都合がありました。
【平成28年問5D(こちら)】で出題されています。
なお、少し前に会員の方から質問があったのですが、この問題は、例えば、請負人が請負業務に従事中に負傷した場合に広く健康保険法が適用される、ということではありません(この場合は、国民健康保険法が適用されます)。
本問は、健康保険の被保険者が、例えば、副業として行った請負業務の際に負傷したようなケース(その他、健康保険の被扶養者がインターンシップ中に負傷したようなケース)を想定しています。この場合、副業として行った請負業務については、当該者は労働者ではありませんから、労災保険法による保護は受けられません。
そして、改正前のように、健康保険の適用を業務外の災害に限定しますと、このケースは請負業務であっても「業務」ですから、健康保険法による保護が受けられなくなります。そして、当該者は、健保法の被保険者である以上、国民健康保険法による保護も受けられません。
このような不都合があることから、健康保険法の保険事故について、業務外という限定をなくし、労災保険法の業務災害以外の傷病等と拡大したものです。
本文の方でも、以上の旨の追記をしています(こちら)。
なお、本問に関連し、法人の役員である被保険者又はその被扶養者に係る保険給付の特例の問題もあり、択一式で出題が結構ありますので、チェックが必要です(こちら以下)。直前対策講座でも取り上げています。
〔2〕主体
次に、主体に入り、保険者です。
一 保険者
健康保険の保険者は、全国健康保険協会(以下、「協会」といいます)と健康保険組合(以下、「健保組合」といいます)です。
日雇特例被保険者の保険の保険者は、全国健康保険協会のみです。
このように健康保険の保険者は、協会と健保組合ですが、前者の協会の一定の業務は厚生労働大臣が行う場合があるため (第5条第2項。 こちらをチェックして下さい。【平成29年問1C(こちら)】では、任意継続被保険者のケースが出題されています)、「保険者等」という表現も使用されます(「確認」に関する 第39条第1項で定義されています)。
即ち、「保険者等」とは、原則として、被保険者が協会が管掌する健康保険〔=協会管掌健康保険〕の被保険者である場合にあっては厚生労働大臣、被保険者が健康保険組合が管掌する健康保険〔=組合管掌健康保険〕の被保険者である場合にあっては当該健康保険組合をいいます。
なお、「同時に2以上の事業所に使用される者の保険者等」(こちら以下)についても、チェックが必要です。この点は、直前対策講座のその1の【問2】で出題しています(明日、アップします)。
以上が、保険者に関する前提知識です。
以下、協会と組合のやや細部に入ります。
二 全国健康保険協会と健康保険組合
健保法は、被保険者や保険給付に入るまでにすでにかなりのボリュームがあります(厚年法も同様です)。
そして、健保法の協会と健保組合については、細かい知識まで出題されますので、十分なチェックが必要です。
ただし、厚年法の場合と異なり、内容的には難しいというわけではなく、要領よく整理して記憶し、それをまめに再チェックすれば足りるものです。
当サイトでは、協会も健保組合も、基本的には、こちらの「団体等の体系」のフレームワークにより知識を整理しています。
協会と健保組合の主な違いについては、こちらの図で整理しています。このリンク先の上部では、健保組合の各種要件を整理しており、前記リンク先の下部では、健保法における健保組合の登場場面についてもまとめています。
これらによって、あまり記憶が喚起できない場合は、該当個所についての記載を再チェックして頂く必要があります。
以下、協会と組合についてのポイントです。
(一)機関(組織)
まず、協会や健保組合の機関(組織)についての全体構造のチェックが必要です。
協会については、こちらの図です。健保組合については、こちらの図です。
例えば、協会には、役員として、理事長1人、理事6人以内及び監事2人が置かれるといった員数についても記憶する必要があります。当サイトで掲載していますゴロ合わせもご利用下さい。
(二)設立
協会の設立についてはあまり問題はないですが、健保組合の設立は重要です。こちらの表とゴロ合わせをベースにチェックします。
この健保組合の設立の数字については、選択式の平成14年度に、「3,000人」が出題されていたのですが、平成29年度の選択式でも同じ数字が出題されました。
このように、「過去に出題されたか又はその周辺」の「数字(生年月日等も含みます)やキーワード」を再チェックすることは有用です。
なお、当サイトでは、便宜上、定款(協会の場合。こちら)と規約(健保組合の場合。こちら)の「変更」についても、設立の個所で掲載しています。
この定款・規約の変更の要件も、選択式の出題対象となり、①認可と②最高意思決定機関による議決の2点に注意して整理が必要です。
①認可については、定款又は規約の変更の場合、「原則として厚生労働大臣の認可を受けることが要件であり、例外として一定の事項の変更(軽微な変更)については遅滞なく届け出れば足りる」とする取り扱いになるのが基本です。
これは、協会と健保組合に共通するほか、国民年金基金などでも同様です。
②議決(決議)については、健保組合の規約の変更の場合は、原則として、組合会議員の定数の3分の2以上の多数による組合会の議決を経ることが必要です(ただし、「規約の変更につき厚生労働大臣の認可が不要な事項」に係る規約の変更の議事は、原則の表決数であり、出席した組合会議員の過半数で決します)。
対して、協会の定款の変更の場合は、理事長は、あらかじめ、運営委員会の議を経なければならないという違いがあることに注意です。
なお、国民年金基金の規約の変更に係る議決についても、原則として、代議員の定数の3分の2以上の多数による代議員会の決議を経ることが必要です(例外も、上記の健保組合のケースとパラレルです。国年法のこちら以下)。
(三)役員等の任期
役員等の任期については、こちらで横断整理しています。この図の上部にゴロ合わせがあります。
健保法の他、国年法の基金についても、併せて押さえます。
(四)費用(財政)
費用(財政)については、非常に出題が多いです。ここは、1冊本等よりも、当サイトをチェックして頂いた方が、ボリューム及び横断整理の両面から良さそうです。
協会はこちら以下、健保組合はこちら以下です。これらのページ全般の事項について、記憶が必要となります。
(五)変更
健保組合の合併、分割及び設立事業所の増減の要件のチェックが必要です(こちら以下)。
例えば、合併と分割の場合は、4分の3以上の議決と厚生労働大臣の認可が要件です。こちらの表も参考です。
(六)解散等
健保組合の解散の要件も記憶が必要です(こちら)。決議要件は、上記の合併等と同様に4分の3です。
解散した場合の効果(権利義務の協会への承継)について、【平成29年 問1D(こちら)】で問われています。
(七)特殊な健保組合
特殊な健保組合として、指定健康保険組合(第28条)、特定健康保険組合(法附則第3条)、地域型健康保険組合(法附則第3条の2)及び承認健康保険組合(法附則第8条)があります。
これらについては、こちらで整理しています。
地域型については、平成28年と29年に連続して択一式で出題されています。
(八)健康保険組合連合会
健康保険組合連合会(以下、「連合会」といいいます。こちら以下)は、悩ましい個所でして、量は多くないのですが、チョロチョロと出題があります。平成28年度も択一式で1肢出題されました。その程度なら無視してもよいのですが、平成20年度には、選択式で1問(5空欄)も出題されたことがあります。難問でした。
ただ、この選択式も含め、これまで出題された個所をチェックすれば足りるでしょう。
以上、初回の解説を終わります。次回は、被保険者・被扶養者についてです。
令和元年7月1日(月曜)
〔Ⅰ〕直前対策講座
直前対策講座は、国民年金法の後半(その2。こちら)と厚生年金保険法の前半(その1。こちら)を公開しました。
どちらも、ほぼ選択式の出題形式としていますが、広い範囲をカバーしています。
〔Ⅱ〕厚年法の第6回目(最終回)の解説
厚年法の解説は、今回で終了です。費用以降です。
〔1〕費用(財政)
まず、費用については、次の項目があります。
1 総論
2 国庫負担
3 積立金
4 交付金及び拠出金
5 保険料
6 強制徴収の手続
国庫負担や積立金等の関係は、国年法も含め、周期的に選択式で出題されています。
上記の1~4については、一元化法による改正も多く、注意が必要です。
基本的には、これらの1~4は、条文をベースに学習して頂き(この点で、あまり条文を重視しない厚年法の他の個所の学習方法と異なります)、条文中のキーワードを押さえて下さい。
以下、順に見ます。
一 総論
総論のこちらのページは、内容的には、すでに国年法の費用の総論の個所で触れた事項が多いです。ページの上部から条文の個所だけ追ってキーワードをチェックして下さい。各条文中の赤字のキーワードを思い出せるか、確認してみて下さい。
上記ページにおいて特に注意すべき条文は、次の2つです。
・第2条の2(年金額の改定)
年金額の改定の際に考慮する事情として「賃金」が明示されていることに注意です。国年法の年金額の改定の規定と異なります。
ただし、本条は、直近の【平成30年問7B(こちら)】で出題されましたので、同様の規定である国年法第4条(国年法のパスワード)の方を注意しておいた方がよさそうです。
・第34条(調整期間)
この第34条も、選択式にいつ出題されてもおかしくありません。
サイト中で赤字にしています「年金特別会計の厚生年金勘定の積立金」及び「実施機関積立金」、さらに、「政府等」という3つのキーワードに注意して下さい。
後2者は、被用者年金一元化法により改正・追加されたキーワードです。
後に「積立金」の個所でも登場しますが、「実施機関積立金」と「特別会計積立金」という2種類の積立金の用語は、記憶必須です。
なお、「年金特別会計」については、積立金に関する別の条文に関して、平成13年度の記述式で出題されています。
二 国庫負担
国庫負担(こちら以下)については、まず、第80条を押さえますが、「基礎年金拠出金の額の2分の1」という点は、平成29年度の選択式で空欄とされています。その他の条文中の赤・紫の色付きや太字のキーワードに注意です。
厚生年金保険の保険給付費に対しては、原則として、国庫負担は行われません。
しかし、例外があり、「昭和36年4月1日前の第3種被保険者であった期間」については、2度、択一式で問われていますので、一応、チェックして下さい。
三 積立金
積立金(こちら)も、重要です。
昨年度版の更新メールでは、費用関係から選択式が選ばれるとするなら、このページの条文が危ないと記載していたのですが、直近の平成30年度の選択式は、第79条の2が出題されました。
しかし、一元化法による改正部分でない個所が空欄とされました。
引き続き、このページのその他の条文について注意が必要です。
前記リンク先のページにいくつか条文を掲載していますので、この条文(字下げしている条文や色付き文字がない条文を除くすべての条文)をざっとチェックして下さい。ここでも、キーワードに色がついていますので、この部分を押さえます。
あまり深い理解は必要なく、選択式用にはキーワードを押さえて、択一式用には当該条文の概要・雰囲気を思い出すというチェック方法となります。
なお、積立金の全体構造については、こちらとこちらの2つの図を参考にして下さい(これらの図の細部を押さえる必要はなく、大まかなイメージをチェックします)。
前記リンク先のページの条文のうち、とくに注意が必要な条文を掲載しておきます。
・第79条の2(運用の目的)
前記のように、前回、選択式に出題されましたから、今後は、択一式対策となります。
被用者年金一元化法の施行に伴い、積立金は、厚生労働大臣が管理運用を行う「特別会計積立金」と厚生労働大臣以外の実施機関(共済組合等に係る実施機関)が管理運用を行う「実施機関積立金」に区分され、これらの積立金の定義等が前記第79条の2で規定されています。
・第79条の3(積立金の運用)
この条文は、平成26年度の選択式で出題されていますが、その後の一元化法の施行により、「特別会計積立金」、「実施機関積立金」という新用語が登場していますので、引き続き注意です。
・第79条の4(積立金基本指針)
この条文は、第1項と第2項第3号に色付き文字があります。ここを押さえて下さい。
以下の条文については、選択式では、やや出題可能性が低そうです。択一式用のチェックになります。
・第79条の5(積立金の資産の構成の目標)
・79条の6(管理運用の方針)
四 交付金及び拠出金
交付金及び拠出金(こちら)も、注意が必要です。
一元化法による改正後、まったく出題がありませんが、準備していた方が安全です。
交付金及び拠出金は、「厚生労働大臣以外の実施機関」(共済組合等に係る実施機関)が負担する「厚生年金保険給付費等」を賄うための仕組みです(つまり、共済組合側の費用負担の問題です)。
具体的には、「厚生労働大臣以外の実施機関」は、毎年度、「拠出金」を「年金特別会計の厚生年金勘定」に「納付」することにより、「厚生年金保険給付費等」を分担します。
政府は、この「年金特別会計の厚生年金勘定」から、「厚生労働大臣以外の実施機関」に対して、「交付金」を「交付」し、この交付金がその実施機関(共済組合等)が支給する厚生年金保険給付費等に充てられます。
この交付金及び拠出金については、択一式の方が出題しやすそうな条文が多いですが、次の条文は、色付き部分をチェックして下さい。
・第84条の3(交付金)
「交付金として交付」などの赤字部分をチェックです。
・第84条の5(拠出金及び政府の負担)
本条も、色付き文字を一応チェックして下さい。
この条文は、第1項の「実施機関」とあるのを「実施機関(厚生労働大臣を除く。)」と読み替えなければなりません(第84条の3かっこ書でその旨が規定されています)。
以下、第84条の6など、拠出金の額の算定方法についての規定が続くのですが、これらの条文の選択式における出題可能性については微妙です。
以前は、例えば、国年法における「基礎年金拠出金」の額の算定方法に関する細かい規定については、選択式のみならず、択一式でも問われてきませんでした。
ただし、国年法の【平成28年問7B】(国年法のこちら)では、一元化法により改正された個所に関するかなり細かい事項が出題されています。
ただ、この問題は、あまり細かい知識がなくても、基礎年金拠出金の基本的な仕組みを知っていれば推測できる問題でした。
このように一元化法による改正に関連した費用に関する細かい事項が出題されましたので、厚年法の拠出金の額の算定方法についても、択一式では出題される可能性はあるかもしれません。
ただ、選択式については、今まで見てきましたように、この拠出金の額の算定方法より出題しやすい条文が多々ありますので、さしあたりはマークしなくてもよいのではないかと考えています。
五 保険料
(一)概要
保険料についての概要は、こちらのページです。こちらの表もチェックしてみて下さい。
(二)主体
1 徴収権者
こちらのページでは、保険料の徴収権者に関する問題を掲載しています。
徴収権者に関連する問題として「機構が行う収納」があるのですが(こちら以下。基本的に、国年法の場合とパラレルです)、平成28年に若干改正された事項があります。
即ち、厚生労働大臣が収納を機構に行わせることができる保険料等については、厚生労働省令で規定されているのですが、こちらのように、その保険料等について、利息が含まれることが明示されました。
民法では、法律上の原因がないことを知って(「知っていること」を、法律上、「悪意」といいます。反対に、「知らないこと」は、「善意」です。)利得をした受益者については、受けた利益に利息を付して返還しなければならない旨が規定されています(民法第704条。換言しますと、不当利得の返還義務について、悪意の受益者は、利息(遅延利息)の返還義務も負うということです)。
そこで、保険料等に関し不当利得を得た悪意の受益者について、その返還すべき遅延利息を機構(年金事務所)で現金収納できる旨が施行規則の改正により明示されたものです。本文中の下線部分が追加されています。
試験対策上は、「機構が行う収納に係る保険料等に利息も含まれることになった」点を押さえておけば足りそうです。
2 保険料の免除
育児休業等期間中の保険料の免除(こちら以下)と産前産後休業期間中の保険料の免除(こちら以下)は、重要です(後者は、前者と基本的にはパラレルな仕組みになっています)。
どのような場合に保険料が免除されるのか(要件)、どの期間免除されるのか(効果)がポイントです。
例えば、育児休業等期間中の保険料の免除の場合は、事業主が、実施機関に申出をしたときに(以上、要件です。被保険者が申し出るのではありません。※1)、当該被保険者に係る保険料〔=被保険者本人及び事業主の負担する保険料〕であってその育児休業等を開始した日の属する月からその育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間に係るものの徴収が行われません。
以上の赤字に注意です。
※1 第2号厚生年金被保険者又は第3号厚生年金被保険者に係る育児休業等期間中の保険料の免除については、事業主が申し出るのではなく、被保険者が実施機関に申出をします。
【平成29年 問3イ(こちら)】では、産前産後休業期間中の保険料の免除について、この点が問われました。
3 客体
(1)保険料率
平成29年9月以後の保険料率は、第1号厚生年金被保険者については、1,000分の183.00(=18.3%)で固定されました(保険料水準固定方式)。
第2号~第4号までの厚生年金被保険者に係る保険料率についても、順次統一され、公務員(第2号及び第3号厚生年金被保険者)についても、すでに平成30年9月から統一され、残りは、私学教職員(第4号厚生年金被保険者)のみです(本則では、平成39年4月から18.3%(1,000分の183)となることになっています(こちら以下))。
(2)免除保険料率等
こちらでは、存続厚生年金基金の加入員である被保険者の保険料率を見ています。
基金については、以前触れましたように、出題が激減しましたので、細かい知識は不要であり、本問も不要でしょう。
もっとも、ここでの免除保険料率等は基金の制度の中心部分ですので、一応、概要を説明しておきます。
財政状況の悪い基金の増加等を背景として、平成25年の改正により、厚年法の第9章「厚生年金基金及び企業年金連合会」が削除されるなど、同改正法の施行日(原則平成26年4月1日)以後は、厚生年金基金の新設は認められないものとされました。
同改正法の施行日に現存する厚生年金基金等については、「存続厚生年金基金」として例外的に存続が認められますが(存続厚生年金基金については、平成25年改正前の厚年法の規定が原則として適用されます)、他方で、特例解散の制度が創設され(この特例解散の制度も、平成31年3月31日をもって終了しました)、厚生年金基金の解散や代行返上を促進するとともに、他の企業年金制度への移行を支援するための措置等が定められました。
存続厚生年金基金(以下、「基金」といいます)は、老齢厚生年金の一部を政府に代わって支給する(代行給付を行う)とともに、基金独自の上乗せ給付を行うものです。
即ち、基金の主要な業務は、加入員(なお、加入員は、第1号厚生年金被保険者に限られます)又は加入員であった者の老齢に関し、年金たる給付(老齢年金給付)の支給を行うことです。
この老齢年金給付は、前記の通り、基金が政府に代わって老齢厚生年金の一部(再評価率の部分等を除いた部分)を支給する代行部分と基金独自の上乗せ部分から構成されます。
そして、基金の加入員である被保険者(を使用する設立事業所の事業主)は、代行部分の支給を行うために必要な費用を賄う分については、政府に対する厚生年金保険の保険料の納付を免除され、当該免除された分は(他に上乗せ部分に係る費用を賄う部分も併せて)基金に掛金として納付します。この基金が代行部分の支給を行うのに必要な保険料率が免除保険料率であり、代行部分の支給を行うのに必要な保険料額を免除保険料額といいます。
そこで、存続厚生年基金の加入員である被保険者については、原則の保険料率から免除保険料率を控除して得た率を保険料率とします(これが政府に納付する分です)。
つまり、加入員である被保険者(を使用する事業主)は、厚生年金保険の保険者である政府に対しては、原則の保険料率から免除保険料率を控除して得た率に係る保険料のみを納付すればよく、免除保険料率に係る保険料(免除保険料額です)は、存続厚生年金基金に対して掛金として納付することが必要ということです。
以上が、基金のエッセンスです。こちらの図も参考にして下さい。免除保険料率と免除保険料額については、以上程度を押さえれば足りるでしょう(といいますか、以上を押さえなくても大丈夫な状況といえます。
4 手続
保険料の手続に関する問題(こちら以下。例えば、納期限など)は、さほど問題ありません。サイトの赤字をチェックして頂ければよいです。
5 強制徴収の手続
強制徴収の手続(こちら以下)については、基本的には、国年法で学習した事項をベースにできます。
ただし、保険料の繰上徴収(こちら)は、国年法にはない制度ですので(出題も多いです)、十分チェックして下さい。繰上徴収の事由を記憶しますと、かなりの部分、試験には対応できます。
以上、費用に関する問題でした。以下、雑則です。
〔2〕その他(不服申立て等)
ポイントとなる事項を挙げます。
一 不服申立て
厚生年金保険に関する不服申立て(こちら以下)は、「一元化法の改正+行政不服審査法の改正」により、かなり複雑化しました(学習の順番としては、シンプルな健保法の不服申立てから学習した方がわかりやすいです)。
厚生年金保険に関する不服申立てについては、大別しますと、(A)厚生労働大臣による特定の処分(即ち、第1号厚生年金被保険者(第1号厚生年金被保険者であった者も含みます。以下の第2号等についても同様です)に係る特定の処分)に対する不服申立てと(B)厚生労働大臣以外の実施機関(共済組合等に係る実施機関)による一定の処分(即ち、第2号から第4号までの厚生年金被保険者(公務員等である厚生年金保険の被保険者)に係る一定の処分)に対する不服申立てに分けられます。
厚年法や社会一般における出題対象は、主に(A)になります。
(B)についても、審査機関(こちら以下)については、厚年法で規定されていますから、押さえる必要がありますが(この審査機関の名称は、選択式の素材にもなりますので、記憶して下さい)、その他については不要です。
以下は、(A)の「厚生労働大臣による特定の処分」に対する不服申立てについて、ポイントを挙げます。
厚年法の不服申立ての対策としては、全体像の図を押さえて、条文をチェックすれば、終了といえます。
社会一般では、社審法について細かい知識が出題されることがありますが、基本的には、国年法で学習しています。
全体像の図としては、こちらがありますが、小さくて見にくく、全体像の図の左側を大きくしたものがこちらで、右側を大きくしたものがこちらになります。
これらの図の次のポイントを押さえて下さい。
1 基本的な構造
(1)不服申立て事由等
左側の図(以下、「左側」といいます)は、厚生労働大臣による「被保険者の資格、標準報酬又は保険給付」に関する処分に対する不服申立てです。
右側の図(以下、「右側」といいます)は、厚生労働大臣による「保険料等」又は「脱退一時金」に関する処分に対する不服申立てです。
左側は2審制となり、右側は1審制となります。
即ち、左側は、審査請求は「社会保険審査官」に対して行い、再審査請求は「社会保険審査会」に対して行います。
右側は、「社会保険審査会」に対して審査請求を行います。
「保険料等」と「脱退一時金」に関する処分に対する不服申立てについて、【平成29年問2C(こちら)】で出題されています。
(2)不服申立て前置主義の採用の有無
左側の場合は、基本的に、審査請求前置主義が採用されており、(裁判所に対する)処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する社会保険審査官の決定を経た後でなければ提起できません。
ただし、再審査請求に対する社会保険審議会の裁決は経なくても、審査請求に対する社会保険審査官の決定を経れば、裁判所に対して処分取消しの訴えを提起できます(平成28年4月1日施行の改正前は、再審査請求に対する社会保険審議会の裁決は経なければ、裁判所に出訴できませんでした)。
対して、右側の場合(「保険料等」又は「脱退一時金」に関する処分)は、「保険料その他徴収金等に関する処分」については、審査請求前置主義が採用されていず、直ちに、裁判所に対して当該処分取消しの訴えを提起できます(これも、平成28年の改正により改められました)。
他方、「脱退一時金に関する処分」については、審査請求前置主義(不服申立て前置主義)が維持されており、まず、社会保険審査会に対して審査請求をすることが必要であり、その裁決を経た後でなければ処分取消しの訴えは提起できません。
以上が、厚生年金保険に関する不服申立ての基本的な構造であり、次の数字関係も含め、図等により暗記することが必要です。
直前対策講座でも取りあげます。
2 数字関係
次に、数字関係を押さえます。
(1)審査請求
(ⅰ)審査請求は、社会保険審査官に対して、原則として、審査請求人が処分があったことを知った日の翌日から起算して3月以内に、文書又は口頭で行います。
(ⅱ)また、被保険者の資格、標準報酬に関する処分に対する審査請求は、原処分があった日の翌日から起算して2年を経過したときは、することができません(この(ⅱ)の期間制限は、労働保険に関する不服申立てでは存在しません)。
(2)再審査請求
再審査請求は、原則として、審査請求に係る決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2月以内に、文書又は口頭で行います。
(3)決定を経ない再審査請求等
審査官に対して審査請求をしている者は、審査請求日から2月以内に審査請求についての決定がないときは、社会保険審査官が審査請求を棄却したものとみなすことができます。
従って、この場合は、当該審査請求に係る処分について、決定を経ないで、社会保険審査会に対して再審査請求をすることができますし(=決定を経ない再審査請求)(これが、【平成28年問7イ】で問われました)、または、再審査請求をせずに、直接、裁判所に対して、当該処分の取消しの訴えを提起することもできます。
以上を押さえれば、厚年法の不服申立ての出題についてはほぼカバーできるでしょう。
二 消滅時効
消滅時効(こちら)の出題も多いですが、第92条と前記リンク先の表あたりまでをチェックします。
なお、国年法の消滅時効の際にも触れましたが、近時の最高裁の判決(【最判平成29.10.17】)において、障害年金(旧厚年法)の支分権の消滅時効の起算点について、裁定時ではなく、支払期が到来した時と判示されました(こちら以下)。
旧法を内容としていることなどから、選択式では出題しにくそうですが、択一式では、例えば次のように出題できます。
設問:
最高裁の判例の趣旨からは、年金たる保険給付の受給権者が裁定の請求を受けていないことは、その年金たる保険給付の支分権の消滅時効の進行を妨げるものではなく、支分権の消滅時効は、当該保険給付に係る裁定を受ける前であっても、厚生年金保険法36条所定の支払期が到来した時から進行する。
解答:
正しいです。
年金たる保険給付を受ける権利の消滅時効は、裁定請求をしていない場合においても、所定の支払期月が到来すれば進行するという結論です。
年金たる保険給付の受給権は、その支給要件に該当したときに発生しているのであり、裁定は、その発生した受給権を確認する処分に過ぎず、受給権者は、裁定請求をしさえすれば裁定を受けて保険給付を受給することができるのだから、支分権の支払期月の到来時に法律上権利行使が可能な状態にあるとする考え方といえます。
最後に基金です。
三 存続厚生年金基金等
先にも触れましたが、厚生年金基金及び企業年金連合会については、平成25年に大改正が行われました。
同改正後は、厚生年金基金の新設は認められないことになり、同改正法の施行日に現存する厚生年金基金等については、「存続厚生年金基金」として例外的に存続が認められますが、存続基金の解散(特例解散の制度は、平成31年3月31日をもって終了)や代行返上を促進する制度等も定められました。
企業年金連合会についても、平成25年改正法の施行日に現存する企業年金連合会は存続連合会として存続が認められますが、確定給付企業年金法に基づく新たな企業年金連合会(以下、「新企業年金連合会」といいます)の成立時に存続連合会は解散するものとされ、経過的制度となりました(業務についても、新企業年金連合会へのスムーズな移行の見地から、存続基金の代行部分(責任準備金相当額)を新たに引き受けることは認められなくなりました。ただし、この新企業年金連合会は、いつ設立されるのか、見通しが立っていないようです。事実上、現在の存続連合会が長期間存続するのでしょう)。
この平成25年の改正前の本試験においては、基金は出題が多く、かなり細かい知識も出題され、厚年法のうち嫌な分野でした(基金は情報量が多く、学習に非常に時間がかかったのです)。
しかし、同改正後、基金関係の出題が激減し、現在では、基金関係の学習はほぼ不要となっています。
一応、押さえておかれると安心な知識のみをこちらで掲載しています。
このうち、「(1)概要、制度趣旨、改正の目的等」については、このメール中でも触れていますので、その程度で足りそうです。
「(3)基金間の移行等」において、合併、分割、解散等の代議員会における議決の要件は、4分の3ではなく、「3分の2」であること(対して、健康保険組合の組合会議決による合併、分割、解散等の要件は、組合会議員の定数の「4分の3」以上の多数による議決です。合併等の組織変動については、4分の3が原則であり、存続基金の3分の2は、解散を促進するために例外的に要件を緩和したものです)は注意です。
「(4)存続厚生年金基金の加入員である被保険者の保険料率」は、このメール中で触れました。
あとは、給付について、存続厚生年金基金は、老齢年金給付及び脱退一時金の支給は行わなければならず(法定給付)、障害給付金や遺族給付金の支給は行うことができること(任意業務)であることを押さえます。
以上の程度で足りそうです。
では、これにて厚年法の解説を終わります。
毎年度、健康保険法までメールによる解説を行っており、今回も健康保険法の解説をフィナーレとさせて頂き、次回から開始します。
令和元年6月29日(土曜)
もう少しで7月です。
何かと落ち着かない時期になってきましたが、あまり細かく考えても、切りがありません。
スケジュールを立てて、なんとかそれに従って進めていくという姿勢は必要ですが、綿密にスケジュールを立てても、実際は、その通りに進まないことが多いですね。
子供がしばしば泣き出す、介護している爺さんが暴れ出す、上司が何かとつまらない仕事を増やしてくる等々。。忙しい時期になると、不慮の用事が多くなるような気もします。
我々は、多くの偶然の中、たまたま生きていられるのですから、そもそも我々などの計画通りに物事がすべてうまく進むと考えること自体が間違っているのかもしれません。
切羽詰まってきているときほど、前向きに「開き直る」とよいかもしれません。その時々のベストを尽くすだけで、十分でしょう。
では、今回も、厚年法の解説と直前対策講座のアップのお知らせです。
〔Ⅰ〕直前対策講座
まず、雇用保険法の直前対策講座は、その2(こちら)とその3をアップし完了しました。そこそこ広範囲をカバーしていますので、チェックして下さい。
さらに、国年法の直前対策講座の前半であるその1(こちら)をアップしました。老齢基礎年金の終わりまでです。
後半のその2も、ほぼ完成しました。明日、アップの予定です。
次に、厚年法の解説です。
〔Ⅱ〕厚年法の第5回目の解説
今回は、障害厚生年金以下の保険給付と離婚時の年金分割についてです。
〔1〕障害厚生年金
障害厚生年金については、障害基礎年金の知識がベースとなりますので、障害基礎年金も適時チェックしながら確認して下さい。
ここでは、障害基礎年金と異なる点について触れておきます。
障害厚生年金と障害基礎年金の違いは、こちら(厚年法のパスワード)の図の赤字の部分となります。
以下、障害基礎年金と異なる主な点です。
(Ⅰ)発生
(A)本来の障害厚生年金
1 支給要件
(1)初診日の要件 ➡ 初診日に厚生年金保険の被保険者であることが必要です。
(2)障害認定日の要件 ➡ 障害等級3級も対象となります。
2 効果
(1)基本年金額 ➡ 報酬比例となります。
障害厚生年金の基本年金額は、原則として、老齢厚生年金(報酬比例部分)の基本年金額の例により計算した額となります。
ただ、これが修正される部分が重要であり、主にこちらの図の(一)~(三)が修正される部分です。
(2)加算額 ➡ 配偶者の加給年金額のみとなります。
(B)特殊な障害厚生年金
〇事後重症
・障害等級3級も対象となります。
・実施機関に請求します。
(Ⅱ)変更
1 併合認定
・要件について、併合認定の対象となる複数の障害厚生年金は、当該権利を取得した当時から引き続き障害等級2級以上に該当しない程度の障害状態にあるものは含まれません(当初から引き続き障害等級3級に該当するものが除外されるということです)。
・効果について、従前額の保障があります(こちら)。
2 年金額の改定
(1)実施機関の診査による年金額の改定(職権改定等)(こちら)
障害基礎年金の場合は、厚生労働大臣の診査による年金額の改定です。
(2)障害基礎年金等との併合(こちら)
(Ⅲ)2以上期間者に係る障害厚生年金(こちら以下)
2以上期間者に係る障害厚生年金については、改正直後の平成28年度の択一式【問6D(こちら)】において、支給に関する事務を行う実施機関について、障害認定日と初診日のどちらを基準にするのかが問われました。
2以上期間者に係る保険給付の支給事務を行う実施機関については、出題者にとって出題しやすいところです。
また、平成29年度の【問9イ(こちら)】では、支給額における期間合算の問題が出題されました。
そろそろ2以上期間者に関する問題が選択式に出題されておかしくない状況といえます。
2以上期間者に係る障害厚生年金のポイントは、次の通りです。
①受給権
2以上の種別の被保険者であった期間を有する者(2以上期間者)に係る障害厚生年金においては、各号の厚生年金被保険者期間を合算して処理し、1つの受給権が発生するものと取り扱います。
②支給額
支給額(基本年金額)については、各号の厚生年金被保険者期間ごとに計算した額を合算します。
合算した期間が300月未満の場合は、300月とみなす最低保障が行われます。
③実施機関
そして、初診日における種別に応じて、当該種別に係る実施機関が支給に関する事務を行います。
即ち、初診日における種別に係る実施機関が、他の期間に係る分(額)も含めて、当該障害厚生年金の年金額を裁定し、支給するということです。
次に、障害手当金です。
〔2〕障害手当金
障害手当金(こちら以下)は、毎年度、択一式で1肢程度は出題されています。
平成27年度は2肢、平成28年度は1肢、平成29年度は2肢(1肢は、消滅時効の問題)、直近の平成30年度は1肢の択一式の出題でした。
また、障害手当金は、平成26年度の選択式において、支給要件と支給額から空欄が一つずつ出題されていますが、周期的には、そろそろ再出題の可能性もあります。
ここでは、発生に関する問題と2以上期間者の問題に触れておきます。
(Ⅰ)発生
一 支給要件
(一)原則
障害手当金の基本的な支給要件は、次の4つです。赤字をチェックです。
①傷病に係る初診日において被保険者であること = 初診日の要件
②当該初診日から起算して5年を経過する日までの間に、その傷病が治ったこと
③当該傷病が治った日において、その傷病により政令で定める程度の障害状態にあること = 障害認定日の要件
④初診日の前日における保険料納付要件を満たすこと = 保険料納付要件
(二)障害手当金が支給されない場合(併給の調整)
障害手当金が支給されない場合として、「1 国年法又は厚年法の年金給付の受給権者である場合」と「2 災害補償制度による給付の受給権者の場合」があります。
1 国年法又は厚年法の年金給付の受給権者である場合
(1)原則
◆障害の程度を定めるべき日において、国年法又は厚年法の年金給付の受給権者については、障害手当金は支給されません。
(2)例外
◆ただし、最後に障害等級(3級以上)に該当する程度の障害の状態に該当しなくなった日から起算して障害状態に該当することなく3年を経過した障害厚生年金又は障害基礎年金の受給権者(現に障害状態に該当しない者に限ります)は、除きます。
つまり、最後に障害等級3級以上に該当しなくなって3年を経過した障害年金給付の受給権者については、障害手当金も併給されます。
2 災害補償制度による給付の受給権者
労災保険法による障害(補償)給付と障害手当金との併給の調整については、障害手当金が支給されなくなる点に注意です。
二 効果
〇支給額
◆障害手当金の額は、障害厚生年金の(2級・3級の)基本年金額の例により計算した額の100分の200に相当する額です。
※ 従って、給付乗率は定率であり、300月の最低保障があります。
※ 傷病の治った日(障害の程度を定めるべき日)の属する月後における被保険者であった期間は、その計算の基礎としません。
※ また、障害厚生年金の最低保障額に2を乗じて得た額が最低保障額とされます。
即ち、障害手当金の額が、「障害基礎年金を受けることができない場合の障害厚生年金の最低保障額(=2級の障害基礎年金の基本年金額に4分の3を乗じて得た額。 こちら 」に2を乗じて得た額に満たないときは、当該額とされます。
この支給額と最低保障額については、【平成29年 問3ウ(こちら)】で出題されています。また、最低保障額の「2」については、平成26年度の選択式で出題されています。
(Ⅱ)2以上期間者に係る障害手当金
2以上期間者に係る障害手当金については、基本的に、「2以上期間者に係る障害厚生年金」の取扱いと同様になります。
そこで、1つの受給権が発生し、支給額は、各号の厚生年金被保険者期間ごとに第50条第1項〔=障害厚生年金(2級・3級)の基本年金額〕の規定の例により計算した額を合算して得た額の100分の200に相当する額とします(300月の最低保障もあり)。
そして、初診日における種別に応じて、当該種別に係る実施機関が支給に関する事務を行います(初診日における種別に係る実施機関が、他の期間に係る分(額)も含めて、当該障害手当金の額を裁定し、支給するということです)。
平成29年度の択一式(【平成29年 問8A(こちら)】)では、2以上期間者に係る脱退一時金が出題されており 、その他の保険給付についても出題可能性があります。
以上、障害手当金でした。
〔3〕遺族厚生年金
遺族厚生年金は、支給要件も年金額も、少々、ややっこしく、記憶の再チェックが必要です。
支給要件については、常時、労災保険法の遺族(補償)年金の支給要件との違いに注意して頂くと、混乱が生じません。
(Ⅰ)発生
Ⅰ 支給要件
支給要件の概観は、こちら以下です。
遺族厚生年金では、まずは、この概観の部分の知識をきちんと記憶しているかどうかがカギになります。
1 死亡者の要件
死亡者の要件については、上記リンク先の概観で記載しています一~四の4つあり(以下、一~四は、上記リンク先の支給要件における数字です)、一~三が短期要件、四が長期要件となること、保険料納付要件が必要となるものは一及び二のみであること(こちらの表を参考)、さらに、平成29年8月1日施行の改正により、長期要件の文言が変わったことがポイントになります。
長期要件とは、25年以上の受給資格期間を満たした者が死亡した場合であり、短期要件とは、25年以上の受給資格期間を満たしていない者が死亡した場合です。 短期要件と長期要件の違い等については、こちらです。
三の「障害等級2級以上の障害厚生年金の受給権者の死亡」については、当該障害厚生年金の受給権の取得の際に保険料納付要件が問われているため、遺族厚生年金の支給要件の段階では、保険料納付要件は問われていません。
二の「被保険者であった者が、被保険者の資格を喪失した後に、被保険者であった間に初診日がある傷病により当該初診日から起算して5年を経過する日前に死亡したとき」のパターンが出題されることも多いです。こちらの図で記憶を喚起して下さい。
四の長期要件ですが、平成29年8月1日施行の改正により、次の規定に改められました。
◆老齢厚生年金の受給権者(保険料納付済期間と保険料免除期間〔ただし、特例により、合算対象期間も含みます。以下同様です〕とを合算した期間が25年以上である者に限る。)又は保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者が、死亡したとき。
改正前は、「老齢厚生年金の受給権者又は第42条第2号〔=老齢厚生年金の受給資格期間を満たす者です〕に該当する者が、死亡したとき」と規定されていました。
しかし、同改正により、老齢厚生(基礎)年金の受給資格期間については、25年から10年に短縮されましたが、遺族厚生(基礎)年金の長期要件については従来のまま25年の受給資格期間が必要とするものとされました(これは、主に、短期要件の場合の保険料納付要件(3分の2要件)とのバランスを考慮したものです。即ち、例えば、10年間だけ保険料を納付し、残りの30年間納付しなかった者(つまり、被保険者期間の4分の1(12分の3)しか保険料納付済期間等を有しない者)に遺族厚生年金を支給することは、遺族厚生年金の短期要件(被保険者が死亡した場合等)において3分の2(12分の8)以上の保険料納付要件が要求されるのと不均衡になることが考慮されたものです)。
このように、長期要件においては、引き続き25年の受給資格期間が必要であるため、従来の長期要件の規定である「老齢厚生年金の受給権者〔=改正後は、10年の受給資格期間で足ります〕又は第42条第2号〔=老齢厚生年金の受給資格期間(改正後は10年です)を満たす者です〕に該当する者が、死亡したとき」という文言が使用できなくなったことから、上記の◆のように改正されたものです。
そして、改正前は、遺族厚生年金自体では直接問題とならなかった受給資格期間の短縮特例の適用も問題となります。この点は、国民年金法の遺族基礎年金の直前対策講座で取り上げました。
長期要件に関する改正については、遺族厚生年金では出題されませんでしたが、国年法の遺族基礎年金では出題されました。【平成30年問8A(こちら。国年法のパスワード)】です。難しいわけではなく、要するに、遺族基礎年金の「死亡者の要件」を記憶しているかどうかにかかります。
2 遺族の要件
遺族の要件については、こちらとこちらの2つの表を参考に記憶を喚起して下さい。確実に記憶していることが必要であり、表を丸暗記するか、ゴロ合わせを使用して下さい。
夫、父母及び祖父母に共通する問題があり、こちらです。
なお、遺族の順位については、配偶者と子は同順位です(遺族基礎年金と同様です)。
対して、労災保険法の遺族(補償)年金の場合は、配偶者が第1順位、子が第2順位であり、異なることに注意です。
Ⅱ 効果(広義)
年金額については複雑ですが、概要はこちらです。
1 基本年金額
(1)原則
基本年金額については、こちら以下で詳述しています。
短期要件の場合は、障害厚生年金の基本年金額の計算方法と基本的に同様となり、長期要件の場合は、老齢厚生年金の基本年金額の計算方法と基本的に同様となるというイメージです。
(2)例外
65歳以上の者が老齢厚生年金と遺族厚生年金の受給権を有する場合の遺族厚生年金の基本年金額については、上記の原則が修正され、こちら以下になります。
65歳以上の「配偶者」かどうかにより異なりますので、注意です。
2 加算額
加算額については、次の(1)~(3)の3種類があります。
(1)中高齢寡婦加算額(こちら以下)
(2)経過的寡婦加算額(こちら以下)
(3)配偶者又は子が遺族基礎年金の受給権を有しない場合の加算額=遺族厚生年金の加算の特例(こちら以下)
(1)が、よく出題されます。平成29年度の選択式(こちらの2)では、支給額が出題されましたが、これはやさしい問題でした。
(1)の中高齢寡婦加算額とは、遺族厚生年金の受給権者である中高齢(40歳以上65歳未満)の寡婦が、遺族基礎年金の支給を受けられない場合に加算されるものです。
(2)の経過的寡婦加算額は、遺族厚生年金の受給権者である寡婦が65歳以上の場合に加算されるものです。
中高齢寡婦加算額が加算されなくなる65歳以後の年金額の低下を防止しようとする趣旨です。
(1)の中高齢寡婦加算額については、加算の要件が少しわかりにくいかもしれませんが、こちら以下でいくつか図を掲載していますので、これらの図をベースにイメージしてみて下さい。試験対策上は、あまり細かく知識は把握しないでも大丈夫です。
中高齢寡婦加算の額は、遺族基礎年金の額(基本年金額)に4分の3を乗じて得た額(100円未満の端数は四捨五入)であり、これが平成29年度の選択式で出題されました。
なお、中高齢寡婦加算額は、妻が夫の死亡について遺族基礎年金の支給を受けることができるときは、その間、支給停止となります。
(2)経過的寡婦加算額についても、少し覚えにくいかもしれません。
加算の要件についてのポイントは、以下の通りです。
(ⅰ)昭和31年4月1日以前に生まれた遺族厚生年金の受給権者である妻が対象になること。
(ⅱ)遺族厚生年金の受給権を取得した当時に65歳以上であったもよいこと(つまり、この(ⅱ)は、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算額(寡婦が65歳未満であることが必要です)が加算されていないケースです)、そして、この(ⅱ)の場合は、当該遺族厚生年金が長期要件のときは、その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240以上(原則)であることが必要であること。
なお、経過的寡婦加算額は、妻が障害基礎年金や遺族基礎年金の支給を受けられる間は、支給停止となることにも注意です。
(3)の「配偶者又は子が遺族基礎年金の受給権を有しない場合の加算額=遺族厚生年金の加算の特例」については、出題はあまりありません。ただ、条文が色々と書いてあるため、サイトの記載内容が多くなっています。
サイトの書き出しの部分の次の点を押さえれば足りそうです。
配偶者又は子が支給を受ける遺族厚生年金の額は、厚生年金保険の被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時、遺族厚生年金の遺族の要件に該当する子と生計を同じくしていた配偶者又は子が当該被保険者等の死亡について遺族基礎年金の受給権を取得しないときは、遺族基礎年金相当額及び子の加算額相当額が加算される。
(Ⅱ)変更
変更について、支給停止に関する問題が頻出です。当サイトのこちら以下であり、ここは十分なチェックが必要です
配偶者と子の支給停止の関係がややこしいと思いますが、基本は、配偶者と子の両者が遺族厚生年金の受給権を有するときは、配偶者が優先するということです。
この子と配偶者の優先関係については、こちら以下(特に、青の点線枠の部分)をご参照下さい。
遺族厚生年金の子と配偶者の支給停止の優先関係については、直近の【平成30年問1E(こちら)】で出題されています。国年法の遺族基礎年金に関する【平成30年問8E(国年法のこちら)】においても遺族厚生年金が関係しており(類問を平成30年度の直前対策講座で出題していました)、遺族基礎年金・遺族厚生年金の支給停止の問題については、今後も要注意です。
さしあたり、これらの2問が処理できるか、チェックしてみて下さい。
(Ⅲ)消滅
失権については、まずは、失権事由(こちら以下)を記憶することが必要です。
養子関係の「直系血族及び直系姻族以外の者の養子となったとき」の十分なチェックが必要です。上記本文中で、遺族基礎年金の失権事由のゴロ合わせとの関連に触れていますが、遺族基礎年金の失権事由についても再チェックして下さい。
(Ⅳ)2以上期間者に係る遺族厚生年金
2以上期間者に係る遺族厚生年金については、基本的考え方は、短期要件に該当する場合は、2以上期間者に係る障害厚生年金の取扱いと同様になり、長期要件に該当する場合は、2以上期間者に係る老齢厚生年金の取扱いと類似(異なる部分があります)になるということです。
支給要件や基本年金額については、複雑だったりする関係で、試験には出題しにくそうです(こちら以下のように、条文中、「合算」や「按分」というキーワードがある点は、注意して下さい。「合算遺族按分率」も押さえておくと良さそうです)。
出題しやすいのは、加算額(こちら)や、支給に関する事務の問題です。後者は、こちらの表を暗記して下さい。
平成28年度の択一式では、長期要件のケースについて、「それぞれの被保険者期間に応じてそれぞれの実施機関から支給される」点が問われました(【平成28年問9A(こちら)】)。
その後は出題されていませんが、短期要件について注意する必要があります。短期要件の3つのうち、後2者は「初診日」における実施機関が支給に関する事務を行います。
例えば、2以上期間者である障害厚生年金(2級以上)の受給権者が死亡した場合は、「死亡日」や「障害認定日」における種別に係る実施機関が遺族厚生年金の支給事務を行うのではありません。
以上、遺族厚生年金でした。
〔Ⅳ〕特例遺族年金
特例遺族年金(こちら)については、近年では、平成21年に出題されています。あまり出題はありませんが、受給資格期間の短縮に関する改正との関係で、支給要件(死亡者の要件)について、次の点はチェックして下さい。
◆被保険者期間が1年以上であり、かつ、保険料納付済期間と保険料免除期間(特例により、合算対象期間も含みます)とを合算した期間が25年に満たない者で、被保険者期間と旧共済組合員期間とを合算した期間が20年以上であるものが死亡したこと。
なお、支給額は、定額部分が加算された特別支給の老齢厚生年金の基本年金額の規定の例により計算した額の100分の50に相当する額となります。
〔Ⅴ〕その他の保険給付
その他の保険給付については、脱退一時金が非常に重要です。ただ、すでに国年法の脱退一時金を学習していますので、それをベースに学習できます。異なる点(特に支給額)を中心にチェックして下さい。
脱退手当金(こちら)は、出題が少なくなってきています。支給要件については、チェックしておいて下さい。
〔Ⅵ〕離婚時の年金分割
離婚時の年金分割には、離婚分割(合意分割と表現されることの方が多いです)と3号分割があります。
概要は、こちらのページで記載しており、その下部のこちらにまとめの表があります。
平成29年度、ついに、離婚分割・3号分割が選択式で出題されました。また、択一式の出題も多かったです。
直近の平成30年度も、択一式で1肢出題されました(結構細かい知識です。【平成30年問5B(こちら)】)。
今回も、択一式は出題されそうです。
ただ、離婚分割・3号分割は、過去問がかなり蓄積されてきています。平成29年度の出題の際も、過去問で問われた論点を問題としているものがありました。
そこで、基本的には、過去問に関する知識をチェックして頂ければよいでしょう。あまり細部を追っていると切りがない個所です。
まずは、前掲のまとめの表の知識を確実にして頂き、その後、出題の多い「離婚時みなし被保険者期間・被扶養配偶者みなし被保険者期間」(こちら以下)の取扱いについての知識をチェックして頂下さい。
以上、厚年法の第5回目の解説でした。次回は、費用以下、厚年法の最終回の予定です。
令和元年6月25日(火曜)
〔Ⅰ〕雇用保険法の直前対策講座の開始
まず、雇用保険法の直前対策講座のその1をアップしましたので、お知らせします。
今回は、平成31年度分の改正事項に関する出題です(こちら)。
平成31年度分の改正事項は、さほどありません。しかし、長期専門実践教育訓練に係る上限額の制度が新設され、専門実践教育訓練の支給額が非常に厄介なことになっています。
今回の直前対策講座では、【問2】において、少々くどいほど(長いです)、解説しています。
次回は、雇用保険法のその2として、ここ数年の改正事項を中心に取り上げます。雇用保険法は、全部で3頁くらいになりそうです。
次に、厚年法の第4回目の解説として、特別支給の老齢厚生年金を見ます。
〔Ⅱ〕厚年法の第4回目の解説
特別支給の老齢厚生年金の概要については、こちらのページです。
〔1〕発生
一 支給要件
支給要件の骨組みは、「65歳からの本来支給の老齢厚生年金」と基本的には同様ですが、「1年以上の厚生年金保険の被保険者期間」が必要であること、65歳未満の者が対象となることが異なります。
後は、支給開始年齢の原則と特例(障害者、長期加入者、第3種被保険者)を押さえます。
(一)支給開始年齢の原則
特別支給の老齢厚生年金は、将来的に廃止される経過的制度であり、その支給開始年齢が引き上げられています。
この支給開始年齢の(引上げの)パターンは、次の(ⅰ)~(ⅴ)の5つです。
(ⅰ)60歳から定額部分が加算された特別支給の老齢厚生年金の支給を受けられる者
(ⅱ)定額部分の支給開始年齢が引き上げられる段階にある者
(ⅲ)60歳から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金の支給を受けられる者
(ⅳ)報酬比例部分の支給開始年齢が引き上げられる段階にある者
(ⅴ)60歳台前半の特別支給の老齢厚生年金の支給を受けられない者
(ⅰ)は、「昭和16年4月1日以前に生まれた男性若しくは女性(女性の場合は、第2号厚生年金被保険者等に限ります)」、又は「昭和21年4月1日以前に生まれた第1号厚生年金被保険者等である女性」等が対象となります(平成6年改正法附則第18条)。(本文は、こちらです。)
「第2号厚生年金被保険者等」(当サイトの用法)とは、「第2号厚生年金被保険者であり、若しくは第2号厚生年金被保険者期間を有する者、第3号厚生年金被保険者であり、若しくは第3号厚生年金被保険者期間を有する者又は第4号厚生年金被保険者であり、若しくは第4号厚生年金被保険者期間を有する者」のことです。
「第1号厚生年金被保険者等」とは、「第1号厚生年金被保険者であり、又は第1号厚生年金被保険者期間を有する者」のことです。
「第1号厚生年金被保険者等である女性」は、男性等の「5年遅れ」の生年月日となります。
「特定警察職員等」は、「6年遅れ」の生年月日となります(以下、特定警察職員等は省略しますが、試験では、その生年月日等について出題される可能性があり、生年月日についてはチェックして下さい)。
前記の(ⅱ)は、「昭和16年4月2日から昭和24年4月1日までの間に生まれた男性若しくは女性(女性の場合は、第2号厚生年金被保険者等に限ります)」、又は「昭和21年4月2日から昭和29年4月1日までの間に生まれた第1号厚生年金被保険者等である女性」等が対象となります(平成6年改正法附則第19条、第20条、第20条の2)。(サイトは、こちらです。)
(ⅲ)は、「昭和24年4月2日から昭和28年4月1日までの間に生まれた男性若しくは女性(女性の場合は、第2号厚生年金被保険者等に限ります)」、又は「昭和29年4月2日から昭和33年4月1日までの間に生まれた第1号厚生年金被保険者等である女性」等が対象となります(法附則第8条)。(サイトは、こちらです。)
(ⅳ)は、「昭和28年4月2日から昭和36年4月1日までの間に生まれた男性若しくは女性(女性の場合は、第2号厚生年金被保険者等に限ります)」、又は「昭和33年4月2日から昭和41年4月1日までの間に生まれた第1号厚生年金被保険者等である女性」等が対象となります(法附則第8条の2)。(サイトは、こちらです。)
(ⅴ)は、「昭和36年4月2日以後に生まれた男性又は女性(女性の場合は、第2号厚生年金被保険者等に限ります)」、又は「昭和41年4月2日以後に生まれた第1号厚生年金被保険者等である女性」等が対象となります(法附則第8条柱書かっこ書 → 法附則第7条の3第1項各号)。(サイトは、こちらです。)
以上の支給開始年齢の引上げの骨組みと赤字の生年月日を覚えれば、特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢の原則に関する多くの問題には対応できます(なお、前記の通り、「第1号厚生年金被保険者等である女性」は、「5年遅れ」の生年月日となり、「特定警察職員等」は、「6年遅れ」の生年月日となることも覚えなければなりません)。
なお、実際は、現在は、上記の(ⅳ)の段階に入っており、その前の段階が実務上問題となることは少ないといえますが、(ⅰ)~(ⅲ)も含む全体の構造を押さえておいた方が記憶しやすいです。
細かい問題は多々あるのですが、まずは、以上を覚えているかチェックして下さい。
(二)支給開始年齢の特例 = 障害者、長期加入者又は第3種被保険者の特例
障害者、長期加入者又は第3種被保険者の特例も重要です(こちら以下)。
ただし、平成27年度の選択式(こちら)において、この3つの特例すべてを含む総合問題が出題されていますので、もうしばらくは、選択式はないかもしれません。
この3つの特例は、要するに、上記「 (一)支給開始年齢の原則」 によるなら定額部分が加算された特別支給の老齢厚生年金の支給を受けられない場合(年齢)において、報酬比例部分の支給開始年齢から、定額部分も併せて支給されるというものです。
障害者等の保護を趣旨とします。
あとは、3つの特例ごとに支給要件の特徴的部分をチェックします。次の通りです。
・障害者の特例の場合は、被保険者でないこと、障害等級3級以上であること、請求が要件であることがポイントです。
・長期加入者の特例の場合は、被保険者でないこと、被保険者期間が44年以上であることがポイントです(この44年には、2以上の期間を合算できません。平成28年度の択一式で出題されました)。
・第3種被保険者の特例の場合は、坑内員たる被保険者であった期間と船員たる被保険者であった期間とを合算した期間(第1号厚生年金被保険者期間に限ります)が15年(基本的に実期間です)以上であることがポイントです。
なお、効果に関する問題ですが、どの生年月日から定額部分が加算されるのかという点は覚えて下さい(障害者・長期加入者の特例については、こちらの表。第3種被保険者の特例については、こちらの表)。
以上について、当サイトではゴロ合わせにより記憶しています(上記表の下部にゴロあり)。
二 効果
特別支給の老齢厚生年金の支給額については、定額部分の額があることが特徴です。
定額部分の額の概要は、こちらの図です。
特に出題が多いのは、「被保険者期間の月数の上限(定額部分の頭打ち)」の問題です(こちら)。当サイトでも、ゴロ合わせを作っていますので(前記リンク先のかなり下部)、ご参照下さい。
加給年金額については、基本的には、「65歳からの本来支給の老齢厚生年金」に係る加給年金額の場合と同様です。前回の「65歳からの本来支給の老齢厚生年金」の個所をご参照下さい。
加給年金額は、「報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金」の支給を受ける段階では加算されず、「定額部分が加算される特別支給の老齢厚生年金」に加算され、原則として、「定額部分の支給開始年齢に達した当時、生計を維持している一定の配偶者又は子があること」が必要であることには注意です(こちら以下)。
次に、「変更」に関する問題です。
〔2〕変更
〇 特別支給の老齢厚生年金の変更に関する問題
特別支給の老齢厚生年金の「変更」に関する問題として、大まかには、次の事項があります。
一 年金額の改定
二 支給停止
(一)雇用保険との調整
1 基本手当との調整
2 高年齢雇用継続給付との調整
(二)繰上げ支給の老齢基礎年金と特別支給の老齢厚生年金との調整
以下、ポイントを見ます。
一 年金額の改定
年金額の改定(こちら)は、特別支給の老齢厚生年金(以下、「特老厚」といいます)の支給開始年齢に関する復習的な部分です。スルーでも結構です。
二 支給停止
1 雇用保険との調整
雇用保険との調整(こちら以下)は、重要です。
高年齢雇用継続給付との調整については、平成22年度の選択式で出題されています。
択一式でも、雇用保険との調整については出題が多く、平成27年度に数肢ずつ出題されており、平成28年度には出題がありませんでしたが、【平成29年 問10C(こちら)】で出題があり、直近でも【平成30年問9E(基本手当との調整。こちら)】と【平成30年問4ア(高年齢雇用継続給付との調整。こちら)】の出題がありました。
今回も、択一式では出題されるでしょうが、周期的には、そろそろ選択式にも警戒が必要です。
この雇用保険との調整では、前提として、雇用保険法の基本手当や高年齢雇用継続給付の知識を思い出して頂く必要があります。この厚年法のチェックの際に、併せて雇用保険法のこれらの個所もざっと確認して下さい。
(1)基本手当との調整
基本手当の調整については、選択式で出題するためには、条文を少々いじらなければならない都合があり、そのためか、選択式の対象となっていません。
ただし、平成10年度の記述式で出題されているように、出題しようと思えばできる個所であるため、やはり、注意です。
なお、事後清算の問題(こちら)は、簡単な事例問題が出題しやすく、こちらにも注意が必要です。
条文としては、こちらの繰上げ支給の老齢厚生年金に関する法附則第7条の4が基本条文となっており(この条文を特別支給の老齢厚生年金でも準用しています)、この法附則第7条の4(繰上げ支給の個所は、特別支給の老齢厚生年金に読み替えて)の色のついたキーワードに注意が必要ですが、読みにくいことから、本文のこちら以下の赤字部分をチェックして下さい。
(2)高年齢雇用継続給付との調整
高年齢雇用継続給付との調整(こちら)は、少々、ややっこしいのですが、雇用保険法の高年齢雇用継続給付の知識を思い出しますと、そう問題はありません。
「標準報酬月額の6%」とか、「6分の15」などの数字関係が登場し、これらの数字には意味があるのですが(サイト本文では記載)、最終的には、単純にこれらの数字の暗記が必要です。
大まかな仕組みを思い出した後で、上記の数字関係を再チェックして下さい。前掲の【平成30年問4ア(こちら)】も、数字関係を狙った出題です。
2 繰上げ支給の老齢基礎年金と特別支給の老齢厚生年金との調整
この「繰上げ支給の老齢基礎年金と特別支給の老齢厚生年金との調整」(こちら以下)は、厚年法でも、最も難しい問題が含まれている個所です。
難しすぎて細かな出題ができない事項が多く、過去問もほとんどありません。以下のメールで記載されている事項を押さえれば足りそうです。
まずは、復習となりますが、特別支給の老齢厚生年金(「特老厚」)の支給開始年齢の原則のパターン(こちらの図)と例外のパターン(こちら以下)を覚えているかについては、チェックが必要です。これらを押さえておけば、もう少々の知識を追加する程度で終了です。
「繰上げ支給の老齢基礎年金と特別支給の老齢厚生年金との調整」のパターンは、こちら以下の図のようになります。
細かな知識は不要であり、このパターンのうち、ごく大まかなポイント(流れ)を挙げておきます。
(1)60歳から定額部分が加算された特老厚の支給を受けられる者(昭和16年4月1日以前に生まれた者等)については、繰上げ支給の老齢基礎年金を受ける間は、特老厚(定額部分及び報酬比例部分)は支給停止となります。
60歳から特老厚(定額部分及び報酬比例部分)と繰上げ支給の老齢基礎年金の全ての支給を認めるのは給付が過剰になりすぎるという判断です。
(2)定額部分の支給開始年齢が引き上げられる段階にある者(昭和16年4月2日から昭和24年4月1日までの間に生まれた者等)については、基本的には、老齢基礎年金の全部の支給繰上げ(全部繰上げ)か、又はその一部の支給繰上げ(一部繰上げ)を行うことが可能です。
老齢基礎年金の全部の支給繰上げを行った場合は、特別支給の老齢厚生年金の定額部分(経過的加算相当額は除きます)が支給停止となります(報酬比例部分は支給停止となりません)。繰上げ支給の老齢基礎年金と定額部分が、実質的に重複する(2重年金となる)ということです。
なお、定額部分のうち、経過的加算相当額は支給停止となりません。経過的加算額は、「定額部分の額 ー 老齢基礎年金の額」のことであるため、繰上げ支給の老齢基礎年金と重複しないからです。
一部繰上げ(こちら以下)は、計算関係など、細かすぎて(あるいは難しすぎて)、試験では出題できない事項が多いです。断片的な知識の記憶で足り、さしあたり次のような点を記憶しておいて下さい。
(a)要件について
・老齢基礎年金の一部の支給繰上げは、定額部分の支給開始年齢が引き上げられる段階にある者が行えます。
例えば、男性の場合は、昭和16年4月2日~昭和24年4月1日までの間に生まれた者です。その他、障害者・長期加入者・第3種被保険者の特例に該当する者であって、定額部分及び報酬比例部分が61歳から一体的に引き上げられる段階にある者についても、一部繰上げを行えます(が、この障害者等のケースは、かなり難しいため、カットで足ります)。
・すでに老齢基礎年金の全部の支給繰上げの請求をしている者は、一部の支給繰上げの請求をすることはできません(逆に、一部の支給繰上げを請求した者は、全部の支給繰上げの請求はできません)。事務処理の煩雑化を防止する趣旨です。
(b)効果(年金額)について
・老齢基礎年金の一部が繰り上げられるとともに、特老厚の定額部分も繰上げられ、この繰り上げた定額部分を「繰上げ調整額」といいます(報酬比例部分も支給されます)。
なお、「老齢厚生年金の支給の繰下げ」において、「繰下げ加算額」という「繰上げ調整額」と少々紛らわしい用語が登場しますので、ご注意下さい。「繰下げ加算額」の方は、高在老の基本月額に含まれないといった問題でも登場します(こちら以下)。
一部繰上げにおける年金額についての細かい計算等は、試験対策上は不要といえます。
以上、「繰上げ支給の老齢基礎年金と特別支給の老齢厚生年金との調整」のパターンの2番目でした。以下、3番目からです。
(3)60歳から報酬比例部分のみの特老厚の支給を受けられる者(昭和24年4月2日から昭和28年4月1日までの間に生まれた者等)については、繰上げ支給の老齢基礎年金と特老厚に係る報酬比例部分の併給が認められます。
定額部分がないため、繰上げ支給の老齢基礎年金と特老厚が重複しないためです。
(4)報酬比例部分の支給開始年齢が引き上げられる段階にある者(昭和28年4月2日から昭和36年4月1日までの間に生まれた者等)については、老齢厚生年金の支給の繰上げ(いわゆる「経過的な繰上げ支給の老齢厚生年金」です)が可能となり、老齢基礎年金の支給の繰上げとの同時請求が必要となります。
(5)特別支給の老齢厚生年金の支給を受けられない者(昭和36年4月2日以後に生まれた者等)については、老齢厚生年金の支給の繰上げ(いわゆる「本来の繰上げ支給の老齢厚生年金」です)が可能となり、老齢基礎年金の支給の繰上げとの同時請求が必要となります。
以上、老齢厚生年金でした。次回は、障害厚生年金からです。
令和元年6月24日(月曜)
今回は、厚年法の第3回目の解説として、老齢厚生年金に入ります。その他、直前対策講座の安衛法完成のお知らせです。
〔Ⅰ〕直前対策講座の安衛法のアップ
安衛法の直前対策講座をアップしました。こちら以下(直前対策講座のパスワード)です。
全部で2ページになっており、1ページ目が面接指導に関する直近の改正、2頁目が産業医に関する近時の改正と、その他近時の改正事項をまとめています(解説中では、関連する改正事項以外の知識もちりばめています)。
面接指導は、今回の改正により、かなり細部がややこしくなっています。新たに表を作りましたので(こちら)、まずは、この表の知識をチェックしてみて下さい。
安衛法の直前対策は、合計で、選択式が16問、択一式が6肢あります。本番の選択式でも、今回の直前対策で取り上げました中から出題されそうな気がしますが、果たしてどうでしょうか?
なお、直前対策講座は、引き続き、雇用保険法に入っています。前半の平成31年度分の改正事項についてはほぼ完成しました。後半では、その他の近時の改正事項の他、出題されそうな個所を取り上げます。前半については、次回の更新メールでアップをお知らせできそうです。
〔Ⅱ〕厚年法の第3回目の解説
今回は、「65歳からの本来支給の老齢厚生年金」についてです。
ここらあたりから、厚年法の学習・復習は、かなり大変になります。内容が難しいものが増えるため、この時期は、深入りし過ぎず、少々考えても不明確な個所は、数字等の選択式で出題されやすい個所だけを丸暗記しておきます。
〔1〕発生
「発生」に関する問題の骨組みとしては、基本形は、「支給要件」と「効果(広義)」の問題に大別でき、後者は、基本年金額と加算額に大別されます。
さらに、いわば応用問題として、「2以上期間者に係る老齢厚生年金」と「支給の繰上げ、繰下げ」の問題があります。
体系図として、こちらをご参照下さい。
一 支給要件
(一)3つの支給要件
支給要件については、基本的に、老齢基礎年金の支給要件における考え方を援用できます。次の3つが支給要件です。
①厚生年金保険の被保険者期間を有すること(1月以上有すれば足ります。対して、60歳台前半の特別支給の老齢厚生年金は、「1年」以上です)。
②65歳以上であること。
③老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていること。
即ち、原則として、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が10年以上であることが必要ですが(第42条第2号)、特例(法附則第14条第1項)がありますので、結局、保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合算した期間が10年以上であるときに、受給資格期間を満たします。
平成29年8月1日施行の改正(前回の平成30年度の試験から出題対象)により、上記③の受給資格期間が25年から10年に短縮されました(国年法の老齢基礎年金と同様です)。
平成30年度の試験では、この受給資格期間の改正については、厚年法では出題がなく、国年法の【平成30年問8A(国年法のこちら)】で、「遺族基礎年金」の死亡者の要件に関する出題がありました。
厚年法の場合も、遺族厚生年金の長期要件については25年のままで変わりないことに注意です。そして、この長期要件がすらすら出てくるか、ご確認下さい。選択式で出題される可能性もあるため、条文の文言が思い浮かぶ必要があります(詳細は、遺族厚生年金の解説の際に触れます)。
この受給資格期間の10年への短縮が適用されるもの(10年となるもの)については、国年法の老齢基礎年金のこちら以下で整理しています。
この10年となるものについては、以下の(ⅰ)~(ⅲ)に注意です。
基本的に、国年法の給付を押さえますと、厚年法の保険給付についても想像がつきます。以下、国年法の給付をベースに説明します。
(ⅰ)寡婦年金
➡ 死亡日の前日において、死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が「10年」以上である夫が死亡したことが支給要件です。
(ⅱ)脱退一時金(国年法も厚年法も同様です)
➡ 脱退一時金は、老齢基礎年金(国年法の脱退一時金の場合)又は老齢厚生年金(厚年法の脱退一時金の場合)の受給資格期間を満たしていないことが支給要件の一つですから(条文上は、例えば、厚年法の脱退一時金の場合は、 「第42条第2号に該当しないもの」を支給要件と規定しています。特例により、合算対象期間も10年に含まれます)、老齢基礎(厚生)年金の受給資格期間の10年への短縮がそのまま及びます。
脱退一時金は、短期在留外国人のための給付ですから、25年から10年への受給資格期間の短縮の改正が及ぶであろうことは想像もつきます。
(ⅲ)特例老齢年金
マイナーな給付ですが、国年法の特例老齢年金(旧令共済組合の特例による老齢年金)についても、25年の要件が10年に短縮されています。
即ち、国年法の特例老齢年金の支給要件は、次の通りです(詳しくは、国年法のこちら以下)。
①第1号被保険者としての被保険者期間(任意加入被保険者としての被保険者期間、旧法の国民年金の被保険者期間も含みます)に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が1年以上であること。
②65歳以上であること。
③老齢基礎年金の受給資格期間を満たさないこと。
④第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間、保険料免除期間及び旧陸軍共済組合その他政令で定める共済組合の組合員であった期間であって政令で定める期間〔=「旧令共済組合の組合員期間」〕を合算した期間が10年以上であること。
この④の「10年」が、従来の「25年」から短縮されたものです。(なお、③の老齢基礎年金の受給資格期間も、当然、10年に短縮されます。)
以上、10年に短縮される例でした。
なお、10年に短縮されないものは、前記の通り、「遺族基礎年金及び遺族厚生年金」の「長期要件」の場合ですが、その他に、厚年法の場合、特例遺族年金についても、10年に短縮されないことは押さえておきます。
支給要件については、さしあたり以上です。
二 効果(広義)
(一)基本年金額
1 基本年金額
老齢厚生年金の基本年金額については、こちら以下になります。
このリンク先のいくつかの図をチェックして頂くと、基本年金額の算定方法を思い出すことができると思います。
平成15年4月1日以後の被保険者であった期間かどうかで区別され、1,000分の5.481といった給付乗率が登場します。この「5.481」は、平成23年度の選択式で出題されています。
2 従前額保障
従前額保障(こちら)については、以前は、細かい知識も出題されていたのですが、最近はあまり出題されなくなっています。制度の概要をチェックして頂く程度で良さそうです。
3 存続厚生年金基金等の加入員の特例
存続厚生年金基金等の加入員の特例(こちら)について、以前は、基金は非常に重要だったのですが、現在は、深入りする必要はなさそうです。
平成25年に基金関係が大改正され、平成25年改正法の施行日(基金関係の規定は、平成26年4月1日)以後は、厚生年金基金の新設は認められなくなり、施行日に現存する厚生年金基金等については、「存続厚生年金基金」として例外的に存続が認められるに過ぎなくなりました(実際にも、改正以後、基金の解散等が相次いでおり、将来的に存続基金はなくなると言われています)。
厚生年金基金は、もともと、老齢厚生年金の一部を政府に代わって支給する(代行給付を行う)とともに、基金独自の上乗せ給付を行うものです。
しかし、財政状況の悪い基金が増加し、基金が代行給付を行うのに必要な資産に不足を生じるいわゆる代行割れの基金が多数存在することが明らかとなったことから、上記の改正が行われたものです。
(二)加算額
次に、加算額です。加算額(とりわけ加給年金額)は、試験対策上、非常に重要です。
加給年金額と経過的加算額があります。
加給年金額が加算されるかどうかで年金額が大きく変わりますので、実務上も大変重要です。
1 加給年金額
加給年金額(こちら以下)は、難しい問題が多いです。国年法の振替加算よりはましですが。
加給年金額についても、「発生(加算の開始) ➡ 変更(改定支給停止等) ➡ 消滅(加算の終了)」という時系列に沿って知識を整理できます。
(1)発生
加算の「発生」に関する問題については、加算の要件と加算額の問題に分けられます。
まずは、加算の要件を記憶しているかチェックして下さい。
老齢厚生年金(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240(原則)以上であるものに限ります)の受給権者が、その権利(受給権)を取得した当時に生計を維持していたその者の65歳未満の配偶者又は子(18歳の年度末までにある子及び20歳未満の障害等級2級以上に該当する障害状態にある子に限ります)があるときに、老齢厚生年金の基本年金額に加給年金額が加算されるというのが基本的知識です。
この加算の要件の各要素(太字部分)に結び付けて細かい知識が整理されているか、チェックしてみて下さい。
加算額については、特別加算額の問題もあります(こちら以下)。
特別加算額については、当サイトのゴロ合わせを覚えて頂ければ、多くの問題に対応できます。
【平成30年問1C(こちら)】でも出題されていましたが、典型論点であり、ゴロで処理できました。
(2)変更
「変更」に関する問題としては、減額改定が重要です。減額改定事由を記憶する必要があり、こちらの表(ゴロ合わせ)などもご参照下さい。
さらに、「変更」に関する問題として、加給年金額の支給停止もあります。これも、非常に重要です。
「配偶者の加給年金額の支給停止」と「子の加給年金額の支給停止」に分かれますが、前者については、その支給停止の要件をチェックします。
即ち、加給年金額が加算された老齢厚生年金について、加算が行われている配偶者が、老齢厚生年金(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240(原則)以上であるものに限ります)、障害厚生年金、障害基礎年金その他の年金たる給付のうち、老齢若しくは退職又は障害を支給事由とする給付であって政令で定めるもの〔=要するに、「被用者老齢(退職)年金給付」(月数が240(原則)以上であるもの)及び「障害年金給付」ということです〕の支給を受けることができるときは、その間、当該配偶者について加算する額に相当する部分の支給が停止されます。
(3)2以上期間者に係る加給年金額
以上の他、応用問題として、2以上期間者に係る加給年金額の問題があります(こちら以下)。
最大のポイントは、①「240月」に2以上の期間を合算すること、また、②2以上のいずれの老齢厚生年金に加給年金額が加算されるのかの基準が問題となることです。
後者については、平成28年の択一式【年問5C(こちら)】で出題があります。
当サイトでは、かなり細かく個所まで記載していますが、あまり、細かな問題に深入りせずに、上記の①と②を中心にチェックして下さい。
なお、「2以上期間者に係る老齢厚生年金の特例」については、のちにこちらで整理しています(あとで触れます)。
2 経過的加算額
経過的加算額(こちら)については、「特別支給の老齢厚生年金における定額部分の額」と「65歳からの老齢基礎年金の基本年金額」との差額を支給するという枠組みがポイントです。
最近は、さほど出題は多くありませんが、65歳からの老齢厚生年金の様々な個所で登場してきます。
3 保険給付の通則(その1)
次に、サイト本文では、保険給付の通則として、端数処理、支給期間、支給停止期間、支払期月及び裁定について触れています。国年法の保険給付の通則と基本的には共通する事項が多いです。
端数処理については、一元化法により改正されており、国年法の【平成28年問10】では、1問出題されました。
厚年法のこちらの表で知識をチェックしてみて下さい。
以上、65歳からの本来支給の老齢厚生年金の「基本型」でした。以下は、「応用問題」としての2以上期間者の問題です。
三 2以上期間者に係る老齢厚生年金の特例
2以上期間者に係る老齢厚生年金の特例は、こちら以下です。
2以上期間者に係る保険給付については、大きくは、老齢厚生年金のパターン(各号の期間ごとに受給権が発生します)と障害厚生年金のパターン(各号の期間を合算し、1つの受給権が発生します)があります。
遺族厚生年金の場合は、長期要件については、前者の老齢厚生年金のパターンに近くなり、短期要件については、後者の障害厚生年金のパターンに近くなるというイメージです。
本試験では、2以上期間者の問題について、「期間合算ができるのかどうか」という点と「支給に関する事務をどの実施機関が行うのか」という点が問われています。
前者の期間合算の可否の問題については、こちらの表でまとめています。
後者の支給に関する事務を行う実施機関の問題については、2以上期間者に係る老齢厚生年金の場合は、各号の期間に基づく老齢厚生年金ごとに、当該種別に係る実施機関が行います。
障害厚生年金の場合は、初診日における種別に係る実施機関が行います。
遺族厚生年金の場合は、場合分けされ、こちらの表の通りです。
これらの2以上期間者については、そろそろ選択式で出題されてもよい時期です(択一式としては、そこそこ出題されてきています)。この点は、直前対策講座で取りあげます。
さしあたり、2以上期間者に係る老齢厚生年金については、以上の2点について知識を確認して下さい。
四 老齢厚生年金の支給の繰上げ及び支給の繰下げ
支給の繰上げと繰下げも、非常に重要です。ただ、老齢基礎年金の支給の繰上げ・繰下げをベースにできますので、国年法の支給の繰上げ・繰下げをそこそこ学習していれば、厚年法は楽になります。
1 老齢厚生年金の支給の繰上げ
老齢厚生年金の支給の繰上げ(こちら以下)については、次の2タイプあります。
(1)老齢厚生年金の支給の繰上げ(法附則第7条の3)=本来の老齢厚生年金の支給の繰上げ
(2)経過的な繰上げ支給の老齢厚生年金(法附則第13条の4)=老齢厚生年金の経過的な支給の繰上げ
支給要件についての最大のポイントは、(1)は、60歳台前半の「特別支給の老齢厚生年金の支給を受けられない者」が行える支給の繰上げであり、(2)は、「特別支給の老齢厚生年金に係る報酬比例部分の支給開始年齢が引き上げられる段階にある者」が行える支給の繰上げであるということです。
この大きな枠をつかんでいれば、支給開始年齢等に関する細かい知識は思い出せます。
平成22年度の選択式(こちら)では、(1)についての「昭和36年4月2日以後」が空欄とされました。この生年月日が何を意味するか、ぱっと出てくる必要があります。60歳台前半の特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)が支給されなくなる男性の最初の生年月日ですね。
そのほか、試験では、当サイトの「変更」に関する問題になりますが、支給繰上げの請求以後の被保険者期間の増加について出題が多いため(こちら以下)、どの時点で年金額の改定が可能になるのか、結論を記憶しておいて下さい。【平成30年問4オ(こちら)】でも出題されましたが、基本的な問題でした。
2 老齢厚生年金の支給の繰下げ
老齢厚生年金の支給の繰下げ(こちら以下)は、基本的には、老齢基礎年金の支給の繰下げとパラレルな部分が多いです。
異なる主な点は、要件について、受給権取得から1年間に有していると支給の繰下げが行えない「他の年金たる給付」に「障害基礎年金」が含まれないこと、効果(加算額)について、高在老の制度の適用が加味されて「繰下げ加算額」が加算されることです。繰下げ加算額に関する細かい知識は不要といえます。
老齢基礎年金も含めてですが、支給の繰下げについては、近時、改正が検討されていますので、要件と効果については、復習しておいていただいた方が良いです。
次に、変更に関する問題です。
〔2〕変更
変更に関する問題(こちら以下)としては、大別して、年金額の改定と支給停止があります。
(一)年金額の改定
年金額の改定については、再評価率の改定と改定率の改定が問題となります(こちら以下)。
報酬比例部分については再評価率の改定となり、報酬比例部分以外については改定率の改定となります(改定率の改定については、国年法のそれと同様です)。
再評価率の改定も、基本的には、国年法で学習しました改定率の改定の考え方と共通する部分が多いです。
選択式に平成18年度と23年度に出題されており、周期的に狙われています。
今回は、改定率・再評価率について、「マクロ経済スライド発動+キャリーオーバー適用」というイベントがありますので、国年法の改定率も含め、要注意です。
この点は、直前対策講座でも設問化して取り上げますが(国年法で出題します)、例えば、キャリーオーバー制度について細かい事項を出題することは(条文が複雑なため)、難しいと思います。出題されるとすると、「特別調整率」とか、「算出率」といった単純なキーワードや数字関係になりそうです。
また、改正事項とともに、既存の知識も問われる可能性がありますので、過去の選択式の出題個所(こちら以下)を参考にして頂き(前記の2回の選択式では、同じような個所が出題されています)、さらに、マクロ経済スライド関係のキーワードにも注意を払って下さい(例えば、調整率は、「公的年金被保険者総数の変動率 × 0.997」になるなど)。
(二)退職時改定
退職時改定(こちら)も、非常に重要です。
前回の試験から出題対象となったのですが、最高裁判例(【最判平成29.4.21 】)があるため(特別支給の老齢厚生年金のケースです)、注意が必要です(出題されるなら、択一式かもしれません。のちに触れます)。
退職時改定に関する一元化法による改正事項については、平成28年の択一式で出題されましたが、何度でも出題されることでしょう。この一元化法による改正事項については、選択式についても注意です。
以下、ポイントです。
1 要件・効果
まずは、 こちら以下で、退職時改定の要件と効果を説明していますので、チェックしてみて下さい。
第43条第3項は、選択式や択一式の格好の素材になりますので、熟読が必要です。
退職時改定とは、次の仕組みです。
◆被保険者である老齢厚生年金の受給権者がその被保険者の資格を喪失し、かつ、被保険者となることなくして当該資格喪失日から起算して1月を経過したときは〔以上が「要件」の部分です〕、
その被保険者の(受給権取得月以後で)資格喪失月前における被保険者であった期間を老齢厚生年金の額の計算の基礎とするものとし、資格喪失日(「死亡及び70歳到達」以外の資格喪失事由の場合は、「資格喪失日の前日」。例えば、使用されなくなった場合(退職した場合)は、使用されなくなった日(退職日))から起算して1月を経過した日の属する月から、年金額を改定します(第43条第3項)。
上記の下線部分が、平成27年10月1日施行の被用者年金一元化法による改正に伴い追加された個所です。この部分に関して、先に触れました【平成28年問8A(こちら)】で出題されています。
要するに、この改正は、「死亡及び70歳到達」以外の事由による資格喪失の場合、例えば、使用されなくなった場合(退職した場合)は、退職日(退職月)の翌月(分)から退職時改定が行われることになったということであり、(従来は、常に、資格喪失日の翌月(分)から退職時改定が行われました)、月末退職のケースについて妥当な処理を行おうとするものです。
つまり、月末退職の場合、従来は、退職月の翌々月から退職時改定が行われ、年金額が増額されたのですが、この改正により、退職月の翌月分から退職時改定が行われることとして、1か月分早く年金額を増額させたものです(国民からのクレームが多かったため、改正したそうです)。
要件・効果の細部については、サイト本文で触れていますが、上記を押さえておけばよいでしょう。
選択式でどのような個所が狙われるかについては、直前対策講座でご紹介します。
2 2以上期間者に係る退職時改定
こちら以下の2以上期間者に係る退職時改定についても、念のため、一読して頂いた方が良いかもしれません(あまり細かい知識は不要ですが、大まかな内容を知らないと問題を解けない可能性があります)。
もっとも、選択式では出題されないと思います。
3 最高裁判例
先に触れましたように、特別支給の老齢厚生年金についてですが、退職時改定に関する最高裁判決が出されました(【最判平成29.4.21】)。こちら以下です。前回は出題されず、今回はマークしていた方が良いでしょう(おそらく、択一式でしょうが)。
詳細は、上記リンク先をご覧頂きたいのですが、厚生年金保険の被保険者である特別支給の老齢厚生年金の受給権者が、勤務先を退職し、資格喪失日から1月を経過した日(以下、「1月経過日」ということがあります)の前に65歳に達した場合において(65歳到達日に特別支給の老齢厚生年金の受給権が消滅します)、退職時改定を行うためには、「1月経過日」において、その対象となる老齢厚生年金の受給権が存在することが必要なのかが問題となりました。
結論として、判決は、この「1月経過日」において対象となる特別支給の老齢厚生年金の受給権が存在しなければ退職時改定は行えないとしたものです。
主な理由としては、退職時改定を定める第43条第3項が、退職時改定の対象となる者を「被保険者である受給権者」と規定している点を挙げています(この文言からは、確かに、被保険者である間に受給権者でなければならないと読むことが一応自然です)。
いずれの結論が妥当か、なかなか判断しにくい問題であり(最高裁に決めてもらうのが妥当といえる問題です)、文言が主な根拠となったというケースです。
判決文では、次の通りです。
「特別支給の老齢厚生年金について退職改定がされるためには、被保険者である当該年金の受給権者が、その被保険者の資格を喪失し、かつ、被保険者となることなくして待期期間を経過した時点においても、当該年金の受給権者であることを要すると解するのが相当である。」
※ この判決のいう「待期期間」とは、「被保険者である受給権者がその被保険者の資格を喪失し、かつ、被保険者となることなくして被保険者の資格を喪失した日から起算して1月」の期間のことです。
以上のような、判旨の概要を知っていれば大丈夫でしょう。
(三)在職老齢年金
在職老齢年金は、平成28年度の選択式で出題されました(用語関係です)。そこで、しばらくは、選択式はないと思います。ただ、択一式では出題されると思いますので、計算できるようにしておく必要はあります(将来、廃止の方向だそうですし)。
在職老齢年金は面倒ですが、考え方は割とシンプルであり、こちらのページの全体を一読して頂ければ概要は把握頂けます。
後は、細かい知識をチェックして頂くことになります。なお、近時、いくつかの改正事項もあります。以下、概要です。
在職老齢年金の制度は、大別しますと、「65歳以後の在職老齢年金」(高在老)の制度と「60歳台前半(65歳未満)の在職老齢年金」(低在老)の制度があります。
1 要件
在職老齢年金の制度の要件は、基本的には、次の通りです。
①老齢厚生年金の受給権者が、被保険者等である日が属する月であること(「等」とは、「国会議員等」及び「70歳以上の使用される者」のことです)。
②当該月において、その者の総報酬月額相当額と基本月額との合計額が一定額を超えること。
後は、以上の①②の各文言に関する論点を整理することになります。いくつかの例を挙げます。
(1)月末退職
①の「被保険者等である日が属する月」については、月末退職のケースに注意です。
即ち、資格喪失日が月の初日となる場合(=月末退職の場合)は、当該資格喪失月については在職老齢年金の制度は適用されず、当該資格喪失月の前月(退職月)まで適用されます(これも、先に触れました退職時改定に関する改正と同様に、一元化法により改正された個所です)。
「月末退職の場合は、退職月まで在職老齢年金の制度が適用される」がポイントです(改正前は、月末退職の場合、退職月の翌月まで適用されました。こちらも、国民から色々とクレームが結構あり、そのため改正されたそうです)。
前述の「退職時改定」の「月末退職」のケースと併せますと次のようになります。
月末退職の場合において、退職時改定は、「退職日から起算」して1月を経過した日から行われ、従って、「退職月の翌月から」年金額が増額改定されます。
一方、在職老齢年金の制度は、「退職月までの適用」にとどまります。
いずれも、改正前より、受給権者に有利な取扱いに改められました。
(2)基本月額
上記要件の②の基本月額とは、老齢厚生年金の「基本年金額」の月額のことであり、加算額(加給年金額、繰下げ加算額、経過的加算額)は含まれません。(なお、加給年金額については、こちらに注意です。)
2 効果等
高在老の支給停止調整額(低在老の支給停止調整開始額)は、平成31年度より、46万円から47万円に引き上げられています。
なお、こちらの表の低在老の「支給停止調整開始額」(28万円)の改定の仕組みが改正されています(前回から試験対象に入っています。こちら以下で細かな説明をしていますが、あまり細かい知識は必要がなく、以下の程度で足りそうです)。
基本的には、名目手取り賃金変動率を基準として改定するのですが、調整期間中は、原則として、算出率を基準として改定することに改められました(従って、現在は、原則として、算出率を基準として改定します)。
これは、平成30年4月1日施行の改正により、キャリーオーバーの制度が新設されたことに伴う改正です (施行令第6条の7第2項本文)。
ここでの「算出率」とは、「名目手取り賃金変動率 × 調整率 × 前年度の特別調整率」のことです。
以上、変更に関する問題でした。消滅については、特段の問題はなく、省略します。
以上、65歳からの本来支給の老齢厚生年金のポイントでした。
次回は、60歳台前半の特別支給の老齢厚生年金に入ります。
令和元年6月21日(金曜)
今回は、まず、労基法の直前対策講座のお知らせです。その後、厚年法の解説の第2回目です。
〔Ⅰ〕労基法の直前対策講座の完了
前回のメールでは、直前対策講座の「労働基準法 その3」の高度プロフェッショナル制度までのアップをお知らせしました。
今回は、その後の「その4 使用者の時季指定義務」(こちら(直前対策講座のパスワード))と「その5 最高裁判例等」をアップしました。これにて、労基法の直前対策講座は完結です。
その後、安衛法の直前対策講座の作成に入っています。安衛法は、2頁の構成となっており、改正事項を中心にまとめています。1頁目の面接指導の関係については作成がほぼ終了しました。ここ数日中にアップします。
〔Ⅱ〕厚年法の第2回目の解説
次に、厚年法の第2回目の解説です。今回は、「客体」に入り、保険事故については省略し、報酬関係のポイントを見ます。
今回は、珍しく短めのメールになりそうです。
〔1〕全体構造
報酬関係の問題の全体構造は、こちらの図です。
大きくは、「報酬及び賞与の要件」に関する問題と「標準報酬(標準報酬月額及び標準賞与額)の決定」についての問題に分かれます。
なお、当サイトでは、健保法より先に厚年法を更新していました関係で、報酬関係の細かい知識は、基本的に厚年法で説明し、健保法では、詳しい説明は省略していることがあります(健保法では、厚年法の掲載個所をリンクしていることがあります)。また、健保法の過去問についても、可能な限り、厚年法で掲載しています。
〔2〕報酬及び賞与の要件
一 労基法の賃金との異同
報酬及び賞与の要件に関する問題(こちら以下)は、労基法の賃金に関する知識をベースにできます。労基法の賃金の場合と異なる点に注意して下さい。サイト上の太字部分や赤字の部分を追って頂くと、効率的です。
二 現物給与
平成29年度の健保法の選択式では、現物給与である食事の利益について、代金を徴収する場合の報酬としての取扱い方法の問題が出題されました(健保法の過去問インデックスのこちらの1)。
厚年法のこちらで取り上げています。かなり厳しい問題でした。
現物給与関係は、こちらの表をチェックして下さい。
三 賞与に係る報酬の問題 = 賞与と称されるものが報酬にあたる場合
報酬に関するページで、出題が多いのは、この「賞与に係る報酬」の問題です(こちら以下)。今回は、通達が少し改正されています。
まず、賞与として支給されていても、①賞与の支給が、給与規定、賃金協約等の諸規定によって年間を通じ4回以上の支給につき客観的に定められているとき、又は②賞与の支給が7月1日前の1年間を通じ4回以上行われているときは、当該賞与は「報酬」として取り扱います(こちら以下)。
次に、今回の通達の改正は、次の2点です。
(1)「通常の報酬」、「賞与に係る報酬」及び「賞与」は、名称の如何にかかわらず、2以上の異なる性質を有するものであることが諸規定又は賃金台帳等から明らかな場合には、同一の性質を有すると認められるもの毎に判別するものであることとされました(こちら)。
【参考1】の個所で具体例を掲載していますが、試験としては、この具体例はあまり出題しやすいものではありません。
(2)「賞与」について、7月2日以降新たにその支給が諸規定に定められた場合には、年間を通じ4回以上の支給につき客観的に定められているときであっても、次期標準報酬月額の定時決定(7月、8月又は9月の随時改定を含みます)による標準報酬月額が適用されるまでの間は、賞与に係る報酬に該当しないものとするとされます。
これは、上記の②で以前から想定されていましたが、今回、より詳しく明記されたものです(こちら)。
直近の厚年法の【問8D(こちら)】で出題されています。健保法の【平成27年問3A(こちら)】でも出題されています。
〔3〕標準報酬月額の決定
一 全体構造
標準報酬月額の決定の全体構造は、こちら以下です。
二 標準報酬月額等級表
(一)等級表の改正
等級表については、厚生年金保険法について、平成28年10月1日施行の改正により、下限が1等級追加され(標準報酬月額の下限の引き下げ)、従来の30等級から31等級の区分に増加されました。短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大に係る改正を背景としたものです。
健康保険法についても、平成28年4月1日施行の改正により、従来の47等級から50等級の区分に増加されました。
この健保法の改正については、1年遅れで、平成29年度の択一式に出題されました(【健保法 平成29年問2B(厚年法のこちら)】)。
第1級、第31級といった区切りのよい個所の金額(標準報酬月額。また、大まかな報酬月額)は覚えておきます。
なお、より面倒なのは、随時改定のこちらの「1等級の差が生じた場合であっても随時改定の対象となるもの」が出題されるケースです。
過去問が多いのですが、直近の平成30年度でも、健保法の【問2Ⅾ】で出題されました(厚年法のこちら)。
過去問を見て頂くと、覚えるべき金額が判明しますので(サイト本文上でも、覚えるべき金額について記載しています)、この金額をチェックしておいて下さい。
(二)等級区分の上限(最高等級)の改定
等級区分の上限(最高等級)の改定(こちら)についても出題が多いです。健保法においては、平成28年4月1日施行の改正により、「100分の1」が「100分の0.5」に改められましたが、さっそく、【平成28年問2C】で出題されています。引き続き注意です。
こちらの表のように、厚年法と健保法を併せて覚えておいて下さい。
三 定時決定等
標準報酬月額の具体的な決定については、資格取得時決定、定時決定等が問題となります。
これらの各々について、主な要件と効果を押さえているかが最重要です。この点を記憶しているかチェックして下さい。
以下では、その他のポイントについて見ます。
(一)短時間労働者
短時間労働者の報酬支払基礎日数に関する改正については、改正直後の健保法で出題されました。【平成29年問9エ(健保法のこちら(健保法のパスワード))】です。
即ち、定時決定等の算定対象月については、報酬支払基礎日数が17日未満の月は除外されますが、「厚生労働省令で定める者」については、この17日は11日となりました(第21条第1項等)。(こちら以下)
この「厚生労働省令で定める者」については、施行規則第9条の6が定めています。
要するに、被保険者(厚年法の場合は、70歳以上の使用される者も対象となります)である4分の3基準を満たさない短時間労働者について、報酬支払基礎日数が11日以上である月を算定対象月とするということです。
ここら辺の設問については、直前対策講座で取り上げます。
(二)前年7月からの1年間に受けた報酬の月平均額を用いる場合
定時決定に係る保険者算定のうち、「前年7月からの1年間に受けた報酬の月平均額を用いる場合」という問題があります(こちら)。
さらに、随時改定に係る保険者算定においても類似の制度ができました。こちらです。
随時改定の方がややこしいですが、前記リンク先の図をご覧頂けると、概要は把握頂けると思います。
健保法あたりで出題される可能性がありそうです。
(三)その他
3歳未満の子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例(従前標準報酬月額のみなし措置。こちら以下)について、近時、チョロチョロと出題されていたのですが、直近の平成30年度には、選択式で出題されました(空欄2つで、そのうち1つはかなり細かい知識でした)。
さらに、択一式まで出題されました(【平成30年問8A(こちら)】)。
今後も一通りの知識が必要です。
〔4〕標準賞与額
標準賞与額(こちら以下)についても、ざっと知識を再チェックして下さい。
平成29年度に厚年法の【問4C(こちら)】において、2以上事業所に使用されるケースについて出題されています。
今回は、以上です。次回からは、老齢厚生年金に入ります。
令和元年6月16日(日曜)
何やら、老後の資金に2千万円足りないとかで、「マクロ経済スライド」というキーワードを世間でもよく見かけるようになりました。選択式の空欄となる可能性が減ったでしょうか???
ところで、厚生労働白書(平成30年度版)ですが、来月公表されるそうです。もはや今回の試験では出題可能性はないですが、来年度は厄介です。通常通り11月頃に平成31年度版が公表されるとしますと、平成30年度版も併せてチェックしなければならないということに。。
(ただでさえ、来年度の改正事項はかなり沢山あるのですが。)
是非とも、今年度合格です!
では、今回は、労基法の直前対策講座の36協定編と高プロ編のアップのお知らせと厚年法の解説の初回です。
まず、直前対策講座からです。
〔Ⅰ〕労基法の直前対策講座
今回は、まず、36協定の直前対策講座をアップしました。こちらです。
選択式が4問、択一式が10肢あります。かなり濃厚になっていますが、通達やQ&Aに基づき、本文を加筆した個所があり、これも含め、今回の直前対策講座でご紹介しています。
近時の労基法の選択式は、空欄が3つで、それぞれ違うテーマとなっており、そのうち1問は最高裁判例から出題されています。
今回もこれを踏襲するとしますと、最高裁判例の他、空欄2つのどちらか又は両者とも改正事項からの出題となるかもしれません。36協定は、この空欄に選ばれる最有力候補といえそうです。
「45時間・360時間」(3箇月を超える1年単位の変形制の場合は、「42時間・320時間」)といった基本的な数字やキーワードに要注意です。あまり細かすぎる個所より、基本的な個所が狙われる可能性があります。
なお、最高裁判例として何が選ばれるかも問題ですが、「割増賃金の定額支給等」に関する近時の一連の最高裁判例は注意が必要です。
平成29年の2月に【国際自動車事件=最判平成29.2.28】判決が出され、平成29年度版の直前対策講座以来毎年度取り上げているのですが、まだ出題されません。その後、【最判平成29.7.7=医療法人康心会事件(外科医残業代等請求事件)】、【日本ケミカル事件=最判平成30.7.19】と続いており、このいずれかから出題される可能性は大いにあります。
この点は、改正関係が終了したのちに労基法の直前対策講座で取り上げます。
また、高度プロフェッショナル制度の直前対策も、ぎりぎりアップできました(このメールの送信までには、間に合わないかと思いましたが)。こちらです。
さしあたりは、この直前対策講座で掲載されている知識(解説も含みます)をマスターして頂くと、高プロに関して、本試験でも問題ないのではないかと思います。
次に、厚年法の解説の初回です。
〔Ⅱ〕厚年法の解説の初回
厚年法は、今回は、序論と主体についての解説です。例によって少々ボリュームがあり、スキマ時間にでもご覧下さい。
〔1〕序論 厚生年金保険法の目的、体系、沿革等
1 概要
トップページのこちらは、概要ですので、この時期としては不要です。
2 目的条文
次に、第1条(目的条文)ですが、直近の択一式【平成30年問7D(こちら)】 では、国年法の目的条文と入れ替えた出題がなされています。
国年法の目的条文は、平成28年度の選択式で出題されていますが、厚年法の目的条文は出題されたことがありません。
目的条文は、いつなんどき出題されるかわかりませんので、常に注意が必要です。
この 第1条については、リンク先の赤字のキーワードを押さえれば大丈夫です。
3 保険給付の概要
こちら以下では、保険給付の概要について触れています。老齢厚生年金が苦手な方は、一読して頂くと、頭の中が整理されると思います。
4 旧法と新法の適用関係等
旧法と新法の適用関係等の大枠は、こちら以下で記載しています。
平成27年10月1日の被用者年金一元化法(以下、「一元化法」ということがあります)の施行に伴い、一元化法の施行日前に支給要件に該当した(給付事由が生じた)厚生年金保険の保険給付や共済各法の長期給付(共済年金)については、原則として、一元化前の規定が適用されます。
これまで出題もなく、一般常識程度の知識で足りそうです。
5 厚生年金保険制度の沿革
こちら以下の厚生年金保険制度の沿革については、〔ⅰ〕労働者年金保険法の制定の部分と、〔2〕旧法の部分(昭和29年に全面改正された厚生年金保険法のこと。同法が昭和60年に全面改正され(昭和61年4月1日施行)、これが新法です)については、知っておくとよいです。
6 被用者年金一元化法による改正の特徴
こちらのページでは、被用者年金一元化法の概要について触れています。このページでは、重要な知識がいくつかあります。
ただし、「2以上の種別の被保険者であった期間を有する者の特例」という応用問題が中心となるため、厚年法が苦手な方や受験経験の浅い方などは、こちらのページは飛ばして、保険給付が終わったあたりでまとめ的に確認して頂いた方が良いです。
さしあたり、重要な個所を指摘しておきます。
(1)基本的な考え方
「2以上の種別の被保険者であった期間を有する者の特例」(以下、「2以上期間者」の特例といいます)の基本的な考え方については、こちら以下で説明しています。
大別しますと、「老齢厚生年金型」と「障害厚生年金型」があります。
「要件 ➡ 効果(受給権の発生、支給額等)」という視点で考えますが、2以上期間者に関する問題では、いくつの受給権が発生するかが重要であり、前提としてその問題を見ておくとわかりやすいです。
まず、2以上期間者に係る「老齢厚生年金」においては、第1号から第4号までの各号の厚生年金被保険者期間(以下、「各号の期間」ということがあります)ごとに受給権が発生し(複数の受給権が発生します)、基本的には、各号の期間ごとに、支給要件や支給額等について処理します。
そして、発生した複数の老齢厚生年金については、その期間の被保険者の種別に応じた実施機関(厚生労働大臣又は共済組合等)が支給に関する事務を行います。
他方、2以上期間者に係る「障害厚生年金」においては、各号の厚生年金被保険者期間を合算して処理し、1つの受給権が発生するものと取り扱います。
支給額(基本年金額)については、各号の厚生年金被保険者期間ごとに計算した額を合算します。
そして、初診日における種別に応じて、当該種別に係る実施機関が支給に関する事務を行います。
遺族厚生年金の場合は、「短期要件の場合 ➡ 障害厚生年金型」、「長期要件の場合 ➡ 老齢厚生年金型と類似になる(異なる部分があります)」というイメージです。
なお、前回の【平成30年問10A(こちら)】では、初めて2以上期間者に係る遺族厚生年金の効果(支給額等)に関する問題が出題されました。
より詳しい内容については、それぞれの保険給付の2以上期間者の個所で見ます。
(2)2以上期間者に係る期間合算の可否
2以上期間者について最も出題頻度が多いのは、期間合算の可否の問題です。
結論は、こちらの表の通りです。これを押さえれば、ほぼカバーできるでしょう。
次に、主体の問題に入ります。
〔2〕主体
一 保険者
(一)実施機関と被保険者の種別
被保険者の種別と実施機関については、こちらの青の点線枠内が要点です。
実施機関について、選択式で出題されると嫌なのは、第2条の5です。
この条文を題材として、一元化法の施行後の平成28年度の直前対策講座から毎年度選択式問題を作成しているのですが、未だに出題されません。しかし、いずれ出題されます。今回の直前対策講座でも出題しますので、その際にチェックして下さい。
「厚生労働大臣の権限の委任」、「機構への事務の委託」及び「地方厚生局長等への厚生労働大臣の権限の委任」の問題は、さしあたりスルーしておきます。
(二)財務大臣への権限の委任
財務大臣への権限の委任(こちら)は重要ですが、国年法における知識をベースにできます。国年法と異なる個所に注意してチェックして下さい。こちらの下部にゴロ合わせがあり、これにより基本的な数字を記憶すればほぼカバーできます。
厚年法では、平成26年の択一式で1問出題されています。
二 被保険者
(一)適用事業所
厚年法では、適用事業所に使用される70歳未満の者が、原則として、被保険者となります。
そこで、まずは、適用事業所の意義等が問題となります。
適用事業所の全体像は、こちら以下の2つの図です。船舶を除き、健保法の適用事業所と同様になります。
任意適用事業所の学習が中心ですが、前掲のリンク先の2番目の図がポイントであり、これを覚えておきます。
(二)被保険者
被保険者についての概要は、こちらのページです。
被保険者については、「発生(資格の取得)➡ 変更(氏名・住所の変更等)➡ 消滅(資格の喪失)」という時系列に沿ってチェックします。
このうち、例えば、「発生(資格の取得)」に関する問題では、「要件(資格取得の要件)」➡「資格の取得時期」➡「効果(資格取得の効果)」という流れで知識を整理しています。国年法の被保険者の場合と同様です。
(三)適用除外者
平成29年度の試験から、適用除外者のうち、短時間労働者に関する改正が入り込んできたため、かなり厄介になっています。
本試験でも、健保法からですが、平成29年度と30年度の択一式で、いずれも1問(5肢)出題されており(平成30年度は厚年法からも1肢出題)、重要度が高いです。
ただし、まずは、短時間労働者以外の適用除外者について、知識を確実にチェックして下さい。こちらも従来から出題が多く、得点源となる個所です。こちらの表の下部のゴロ合わせでも押さえて頂き、同表を思い出すことができれば、基本的にカバーできます。
問題は、短時間労働者です(こちら以下)。
コアとなる知識は、次の通りです。
◆1週間の所定労働時間又は1月間の所定労働日数が、同一の事業所に使用される通常の労働者の4分の3未満である短時間労働者(以上を、ここでは「4分の3基準を満たさない短時間労働者」といいます。ただし、本試験では、以上を単に「短時間労働者」ということが多いです。定義については後述します)は、次の①~⑤のすべての要件を満たす場合に、被保険者となります。
①1週間の所定労働時間が20時間以上であること。
②当該事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれること。=継続1年以上の使用見込み
③月額報酬が8万8千円以上であること。
④学生等でないこと。
⑤次の(ⅰ)又は(ⅱ)のいずれかの要件を満たすこと(この⑤は、当分の間の措置であり、法本則ではなく、改正法の附則に規定されています)。
(ⅰ)特定適用事業所に使用されること(又は国若しくは地方公共団体に使用されること)。
※ 特定適用事業所とは、事業主が同一人である1又は2以上の適用事業所であって、特定労働者(=70歳未満の適用除外者以外の労働者)の総数が常時500人を超えるものの各適用事業所のことです。
(ⅱ)特定適用事業所・以外の適用事業所に使用される場合において、労使合意に基づく事業主の(適用拡大の)申出(=任意特定適用事業所の申出)があること。
※ なお、「4分の3基準を満たす短時間労働者」(4分の3以上短時間労働者)は、当然に被保険者となります(第12条第5号の反対解釈からです)。
※ 4分の3基準を満たさない短時間労働者であって、法本則の適用除外事由(第12条各号)に該当しない者を「特定4分の3未満短時間労働者」といいます(年金機能強化法附則第17条第1項柱書かっこ書)。
即ち、4分の3基準を満たさない短時間労働者であって、前記の①~④のすべてに該当する者(その他の法本則の適用除外事由にも該当しないことが必要です)が、「特定4分の3未満短時間労働者」です。(前記の①~④は、法本則の適用除外事由(第12条各号)に該当しないという意味になるのです。)
ちなみに、この短時間労働者に関する改正については、まずは平成24年公布の年金機能強化法で定められ、平成28年10月1日に施行されました。この改正により、短時間労働者に係る適用除外事由が明確化されるとともに、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大が実施されました(主に、上記の◆以下、①~④までの部分と⑤の(ⅰ)が定められました)。
しかし、さらに平成28年の12月に成立したいわゆる「持続可能性向上法」(平成28年改正法)により、追加の改正が行われました(平成29年4月1日施行)。上記の⑤の(ⅱ)が定められ、また、「特定4分の3未満短時間労働者」・「特定労働者」といった新たな概念が規定されたほか、細かな知識が追加されました。
以下、やや細かく見ます。
前記の通り、平成28年10月1日施行の改正(年金機能強化法によるもの)により、短時間労働者に係る適用除外事由が明確化されるとともに、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大が実施されました。
1 適用除外
まず、前者の短時間労働者が適用除外となる要件(適用除外事由)からです。
なお、短時間労働者とは、パートタイム労働法が規定する短時間労働者のことです(第12条第5号柱書)。
つまり、1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短い労働者をいいます(ちなみに、来年4月1日に「パートタイム労働法」が「短時間・有期雇用労働法」(「パート・有期雇用労働法」と略されることも多いです)に改正されますと、上記の短時間労働者の定義も、「短時間・有期雇用労働法」を媒介せずに、直接、厚年法(及び健保法)の中で規定されます(内容的には、現在とほぼ同じです))。
短時間労働者が被用者保険(厚生年金保険、健康保険等)の適用除外者となるのは ➡
(1)「4分の3基準」を満たさない短時間労働者(※1)であって、
(2)次の(ア)~(オ)のいずれかに該当する場合です。
(ア)週の所定労働時間が20時間未満であること
(イ)継続1年以上使用が見込まれないこと
(ウ)月額報酬8万8千円未満であること
(エ)学生であること
(オ)特定適用事業所〔=特定労働者の総数が常時500人を超える同一事業主に係る各適用事業所〕以外の適用事業所に使用されること(この(オ)は、当分の間の要件です)
※1「4分の3基準」:
「4分の3基準」とは、1週間の所定労働時間及び1月間の所定労働日数が、同一の事業所で使用される通常の労働者の4分の3「以上」であることです。
「4分の3基準を満たさない短時間労働者」といわれることが多いです(当サイトでは、「4分の3未満短時間労働者」と表現しているのですが、本試験では、これを別の意味で使用していることがあり、現在は試験直前期に入ってきているため、余計な混乱を招かないように、ここでは、「4分の3未満短時間労働者」という表現は使用しません)。
なお、注意は、本試験では、以上の「4分の3基準を満たさない短時間労働者」のことを、単に「短時間労働者」ということが多いという点です。健保法のこちら(健保法のパスワード)の【平成29年問9】の冒頭をご参照下さい。
このようは用法は、本来は、厚年法・健保法の「短時間労働者」の定義(上述しました)と異なる用法であるため、芳しくはないのですが、ともかく、このように、本試験では、「短時間労働者」が通常と異なる意味で定義されることがありますので、一応、注意です。
なお、前述(後にも触れます)の「特定4分の3未満短時間労働者」は、法律に規定されている表現です。従って、「特定4分の3未満短時間労働者」は、選択式で問われる可能性があります(しかし、「4分の3未満短時間労働者」は出題対象とはなりません。本試験問題では、この「4分の3未満短時間労働者」という語句も、独特の定義づけがされて登場したことがありますが、法令上の用語ではないため、この語句が選択式で空欄になるようなことはありません)。
2 被保険者
他方、短時間労働者が被保険者となるのは、次の(A)又は(B)のいずれかです(合計3パターンがあります)。
(A)4分の3基準を満たす短時間労働者(=4分の3「以上」短時間労働者)
(B)4分の3基準を満たさない短時間労働者であって、次の(a)又は(b)のいずれかの場合
(a)前記の(ア)~(オ)のいずれにも該当しないもの
(b)前記の(オ)に該当するが(即ち、特定適用事業所以外の適用事業所に使用されている場合)、労使合意に基づく事業主の適用拡大の申出(任意特定適用事業所の申出)がある場合
この(b)は、前記の(オ)に該当する短時間労働者(即ち、特定適用事業所・以外の適用事業所に使用される4分の3基準を満たさない短時間労働者)についても、労使合意に基づく事業主の適用拡大の申出を要件として、被保険者の資格を取得できることに改められたものです。その際、上記の(ア)~(エ)のいずれにも該当しないこと等、(オ)以外の適用除外事由に該当しないことが必要です。
この(ⅰ)「4分の3基準を満たさない短時間労働者」であって、(ⅱ)「(ア)~(エ)のいずれにも該当しないこと等、(オ)以外の適用除外事由に該当しない」者〔=後者の(ⅱ)は、「法本則の適用除外事由(厚年法なら、同法第12条各号)に該当しない者」ということです〕を「特定4分の3未満短時間労働者」というのです(年金機能強化法附則第17条第1項)。
要するに、中小企業(特定適用事業所以外の適用事業所)に使用される4分の3基準を満たさない短時間労働者は、基本的には、被保険者となりませんが(上記の(a))、労使の合意の下、事業主が適用拡大の申出をすれば、被保険者となれるということです(上記の(b))。
※ ちなみに、上記の(ア)~(オ)ですが、(ア)~(エ)については、厚年法第12条第5号(イ~二まで)で規定されています(厚年法のこちら)。つまり、厚年法の「本則」による適用除外事由です。
他方、(オ)は、年金機能強化法附則第17条第1項〔=平成24年改正法附則〕で規定されており、「当分の間」の経過措置(特例)です(つまり、将来的には、中小企業(特定適用事業所以外の適用事業所)に使用される特定4分の3未満短時間労働者についても、「本則」により被保険者として認める趣旨です)。
以上が、短時間労働者に関する適用拡大の改正に関するポイントです。その他にも細かい知識が多数ありますが、まずは、以上の基本的知識をチェックして頂くとよいです。
また、こちら以下で通達を掲載していますが、ここからの出題が多く、これも再チェックして下さい。
その後は、これまでの過去問をチェックします。これまで、健保法・厚年法を併せて11肢の出題があります。
健保法からの出題が多いですが、【平成29年問4B(こちら)】では、厚年法から出題されています(4分の3「以上」短時間労働者の問題です)。健保法からの出題は、前掲しましたが、健保法のこちら以下で掲載しています。
なお、今年度の改正事項として、同意対象者の過半数代表者について、「事業主の意向に基づき選出されたものでないこと」や「同意に関する事務を円滑に遂行させる配慮義務」の規定が新設されました(「2分の1以上同意対象者」について、こちら以下。「4分の3以上同意対象者」について、こちら以下。これらのリンク先の下部の【2019年度試験 改正事項】とある個所です)。
ただ、この改正は、労基法の労使協定における「過半数代表者」の要件に関する改正(労基法のこちら以下(労基法のパスワード))と同様です(その内容については、今回の「36協定」の直前対策講座の中でも解説しています)。
さしあたり、改正があった個所を知っておけば足りそうです。
以上で、短時間労働者を終わります。
次に、任意単独被保険者以下の被保険者です。
(四)当然被保険者以外の被保険者=任意単独被保険者等
当然被保険者(適用事業所に使用される70歳未満の者)以外の被保険者として、任意単独被保険者、高齢任意加入被保険者及び第4種被保険者があります。
こちらも、「発生(資格の取得)➡ 変更(氏名・住所の変更等)➡ 消滅(資格の喪失)」という時系列により整理します。
1 資格取得の要件
まずは、「発生」について、資格取得の要件が重要です。それぞれの被保険者について、この資格取得の要件を覚えているかチェックして下さい。任意継続被保険者などは、この要件を押さえているだけで、かなりの部分をカバーできます。
前記の3つの被保険者の中では、高齢任意加入被保険者の学習がかなり大変です。
イメージとしては、こちらの図のように、「当然被保険者」が70歳に達して(受給資格期間を満たせないため)任意加入した場合が「適用事業所に使用される高齢任意加入被保険者」であり、「任意単独被保険者」が70歳に達して(受給資格期間を満たさないため)任意加入したケースが「適用事業所以外の事業所に使用される高齢任意加入被保険者」となります。
後者の「適用事業所以外の事業所に使用される高齢任意加入被保険者」については、任意単独被保険者の資格取得の要件と共通するものが多くなります。
高齢任意加入被保険者については、こちらの表をチェックして頂き、この表中の知識を覚えているか確認して下さい(覚えていない場合は、本文の再読が必要です)。
2 第4種被保険者
第4種被保険者については、現在、該当する者がほとんど存在しないため、出題が乏しくなってきています。ただし、保険料の納期限、前納といった横断整理的事項の一環として出題される可能性はあります。サイトの赤字部分等の最低限の知識だけあれば足りそうです。
以上、被保険者でした。
三 被保険者期間(こちら以下)
(一)計算方法
被保険者期間の計算方法(こちら以下)は、基本的に、国年法の場合と同様です。
(二)同月得喪
一元化法による改正個所である「同月得喪の例外」のケース(こちら以下の二)について、平成28年度の択一式で出題がありました。引き続き注意が必要です。
(三)存続厚生年金基金
なお、こちらでは、存続厚生年金基金の加入員期間の計算について触れています。
(存続)厚生年金基金については、以前は、細かい問題も含め出題が頻出でした。
しかし、平成25年の大改正(基本的に平成26年4月1日施行)以後、5回の本試験がありましたが、厚年法では出題されなくなりました。
もっとも、一般常識(社会一般)の択一式においては、若干、出題されました。
即ち、平成29年度に、基本的な知識(新たな基金の設立が原則として出来なくなったこと)について1肢(【問9A(こちら)】)出題され、また、確定給付企業年金法で規定されているいわゆる「新企業年金連合会」について、平成28年度の社会一般の【問8E(こちら)】で出題されています(これも基本的知識の出題でした)。
なお、平成30年度は、厚年法の【問6E(こちら)】において、基金の加入員に係る厚生年金保険原簿の訂正の請求の問題が出題されました。ただ、これは、基金に特有な知識というより、厚生年金保険原簿の訂正の請求の学習でカバーできた内容といえます。
そして、基金の改正後に最も出題可能性が高いはずであった「特例解散の制度」(「自主解散型基金」及び「清算型基金」)が平成31年3月31日までの時限措置であったため、今回の試験から出題対象より外れました。
そこで、もやは存続厚生年金基金については、基本的には、あまり学習する必要がないといえます。のちに存続基金の個所で、一応知っておいて頂いた方が良い知識をご紹介しますが、その程度で足りるでしょう(仮に細かい知識が出題されたとしても、多くの受験生は正答不能となりますから、問題ありません)。
(四)第3種被保険者の被保険者期間の特例
第3種被保険者の被保険者期間の特例については、国年法でも見ましたが、こちら以下で詳しく掲載しています。
第3種被保険者も、実際上は、あまり問題となることがないのですが、試験対策上は知っておく必要があります。
次に、届出です。
四 届出
届出は、平成29年度には短時間労働者に関する改正が関係する個所があり、また、前回平成30年度は、マイナンバーに関する改正があり、少々、学習がしずらくなりました(来年も、大企業に電子申請を義務化する改正があります)。
今回は、「70歳以上の使用される者に関する届出」において、「70歳以上被用者該当届」及び「被保険者資格喪失届」(この両者の様式は一体化されており、実務上、「70歳到達届」といいます)の提出を省略できる改正が新設されました。これは出題される可能性があります。
以下、届出の概要を見ます。
(一)体系
まず、届出を行うべき者を基準にしますと、届出の体系は次の通りです。
(ⅱ)被保険者等が行う届出(第98条第2項)
(ⅲ)受給権者等が行う届出(第98条第3項)
(ⅳ)その他の者が行う届出(受給権者が死亡した場合の戸籍法による死亡の届出義務者が行う死亡の届出等。第98条第4項等)
届出の体系についてはこちらのページを、また、事業主が行う届出の体系についてはこちらのページで掲載しています。
届出についても、今まで学習しました他法における届出の問題と同様に、「発生 ➡ 変更 ➡ 消滅」の時系列により整理します。
(二)事業主が行う届出
事業主が行う届出については、「事業主に関する届出」、「被保険者に関する届出」及び「70歳以上の使用される者に関する届出」があります。
試験対策としては、こちらの届出の期限の表をチェックして頂くことがもっとも重要です。
届出については、基本的に、「届出の期限」についての出題が多いです。まずは、「届出の期限」をチェックして下さい。
「事業主が行う届出」の期限については、原則として、一般の事業主(が行う届出)の場合は「5日以内」であり、船舶所有者(が行う届出)の場合は「10日以内」となります。あとは、この例外にあたるケースを押さえます。
以下、注意すべき届出について見ていきます。
(A)事業主に関する届出
1 特定適用事業所の該当の届出
平成28年10月1日施行の短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大に係る改正に伴い、「特定適用事業所の該当の届出」(施行規則第14条の3)が新設されました(こちら)。
初めて特定適用事業所となった適用事業所の事業主が届出義務を負うこと、届出の期限は5日以内であることを押さえます。ここは、そう面倒ではありません。出題はしやすそうです。
2 事業主の変更の届出
事業主の変更の届出(こちら)は、平成27年に改正されました。以前は、事業主に変更があったときに、前事業主と新事業主の連署をもって届出を行わせていましたが、変更後の新事業主による届出に手続が緩和されました。
健保法では、改正直後の【平成28年問6E】でさっそく出題されましたが、厚年法でも一応チェックします。
次に、被保険者に関する届出です。「発生 ➡ 変更 ➡ 消滅」の順にポイントを見ておきます。
(B)被保険者に関する届出
1 発生=資格取得の届出
(1)個人番号の記載等の改正
平成30年3月5日施行の施行規則の改正により、年金関係の各種申請・届出等に個人番号の記載が可能となる等の見直しが行われました。詳しくは、こちら以下でまとめていますので、一読して下さい。
(2)様式の一体化
平成30年3月5日施行の施行規則の改正により、従来の「厚生年金保険被保険者資格取得届」(健康保険の被保険者資格取得届と一体化しています)と「70歳以上被用者該当届」が一体化され、また、「被保険者資格喪失届」と「70歳以上被用者該当届」も一体化されています(後者は、実務上、「70歳到達届」といいます)。
これに伴い、「70歳以上の使用される者」に係る届出についても、基本的には、従来認められていなかった光ディスクによる届出が認められることに改められました。
また、上記の「70歳到達届」については、今回、改正されましたので、のちに触れます。
次に、事業主が行う被保険者に関する「変更」に係る届出です。
2 変更
(1)被保険者の氏名・住所の変更の届出
被保険者の氏名・住所の変更の届出については、平成30年3月5日施行の施行規則の改正により、届出の省略について定められています(こちら以下)。
即ち、厚生労働大臣が住民基本台帳法の規定により機構保存本人確認情報の提供を受けることができる者については、被保険者の氏名・住所の変更の届出は省略できることになりました。
まずは、これらの届出の概要をチェックして頂き(氏名変更の届出は、こちら以下。住所変更の届出はこちら以下)、このリンク先の図によりイメージを作って下さい。
そして、健康保険法の被保険者の氏名・住所の変更の届出との違いが紛らわしいため、比較をして下さい(こちら以下)。
(2)被保険者等区分変更届
短時間労働者に対する適用拡大の改正(平成28年10月1日施行)により、「被保険者等に係る区別変更の届出=被保険者等区分変更届」(施行規則第21条の3)が新設されています(こちら)。健保法の【平成29年問4エ(健保法のこちら)】で出題されました。
事業主(船舶所有者を除きます)は、被保険者又は70歳以上の使用される者(以下、「被保険者等」ということがあります)に係る区別の変更があったときは、当該事実があった日から5日以内に、所定の事項を記載した届書〔=実務上、「被保険者区分変更届」又は「70歳以上被用者区分変更届」といいます。条文上は「区別」の届出ですが、基金について「区別変更の届出」というのがありますので、ここでは「区分」変更届と称しているのではないかと思います)を提出しなければなりません。
この「被保険者等に係る区別」とは、被保険者等に係る「その1週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の1週間の所定労働時間の4分の3未満である短時間労働者又はその1月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の1月間の所定労働日数の4分の3未満である短時間労働者であって、法第12条第5号イからニまで〔=4分の3基準を満たさない短時間労働者に係る法本則の適用除外事由。つまり、4要件(※1)です〕のいずれの要件にも該当しないものであるかないかの区別」(施行規則第21条の3第1項 → 施行規則第19条の2第1項第5号)のことです。
つまり、「被保険者等に係る区別」とは、被保険者等に係る「4分の3基準を満たさない短時間労働者であって、4要件を満たすものであるかどうかの区別」となります。
結論としては、「被保険者等に係る区別の変更」とは、「被保険者等に係る特定4分の3未満短時間労働者であるかないかの区別の変更」と押さえることができます。
※1 4要件とは、①1週間の所定労働時間が20時間以上であること、②当該事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれること、③月額報酬が8万8千円以上であること、及び④学生等でないことです。
(3)報酬関係の届出
報酬関係の届出については、こちらのページで説明しています。
必須知識は、報酬月額変更の届出(随時改定、育児休業等終了時改定及び産前産後休業終了時改定に係る届出です)は、一般の事業主が行う場合は「速やかに」、船舶所有者が行う届出の場合は「10日以内に」届け出るということです。
また、賞与額の届出は、賞与を支払った日から5日以内(船員被保険者に係る場合は10日以内)であることも押さえて下さい(これは、一般の届出の期限のパターンです)。
続いて、消滅に関する届出です。
3 消滅=資格喪失の届出
資格喪失の届出は、原則通り、5日以内(船舶所有者は10日以内)の届出の期限となります。
また、資格喪失の届出が不要な場合がありますので(こちら)、チェックして下さい。
以上が、事業主が行う届出の一般のケースです。次に、「70歳以上の使用される者に関する届出」です。
(C)70歳以上の使用される者に関する届出
1 要件
まず、「70歳以上の使用される者」の要件(定義)をチェックです。
「70歳以上の使用される者」とは、(ⅰ)厚生年金保険の被保険者であった、(ⅱ)70歳以上の者であって、(ⅲ)適用事業所に使用され、(ⅳ)適用除外事由(第12条各号)に該当しないものをいいます(こちら)。(他にも若干要件がありますが。)
一元化法の施行により、「昭和12年4月1日以前に生まれた者」も「70歳以上の使用される者」に該当することになりました。
なお、70歳以上の「短時間労働者」が「70歳以上の使用される者」に該当するかは、基本的には、70歳未満の短時間労働者の取扱いとパラレルになります(加えて、「70歳以上の使用される者」の一般的な要件も満たすことが必要であり、例えば、上記の(C)の(1)の(ⅰ)の要件を満たすことが必要です)。詳しくは、前記のリンク先で記載していますが、結論を見ますと、70歳以上の短時間労働者は、次の場合に「70歳以上の使用される者」に該当します。
(イ)4分の3基準を「満たす」短時間労働者。
(ロ)4分の3基準を「満たさない」短時間労働者の場合は、次の(a)又は(b)のいずれか。
(a)特定適用事業所に使用される「特定4分の3未満短時間労働者」。
(b)特定適用事業所以外の適用事業所に使用される「特定4分の3未満短時間労働者」であって、労使合意に基づく事業主の適用拡大の申出(=任意適用事業所の申出)がなされたもの。
70歳以上の短時間労働者については、以上がポイントになります。
2 届出の種類と届出の期限
70歳以上の使用される者に関する届出の種類と届出の期限については、こちら以下の2つの図表を参考にして下さい。
さて、先ほどから触れています改正事項ですが、70歳到達届の提出を省略できる場合が認められました。
まず、被保険者が70歳に達した後も引き続き適用事業所に使用されることにより「70歳以上の使用される者」の要件に該当した場合は、事業主は、当該事実があった日から5日以内に、「被保険者資格喪失届・70歳以上被用者該当届」を提出します(この両者の届書は、平成30年3月5日施行の改正により一体化されました。実務上、「70歳到達届」といいます)。
しかし、平成31年4月1日施行の改正により、この70歳到達届の提出を省略できる場合が認められました。
即ち、「70歳以上の使用される者」の要件に該当するに至った日の前日において適用事業所に使用されていた被保険者が、引き続き当該適用事業所に使用されることにより「70歳以上の使用される者」の要件に該当するに至ったときであって、当該者の標準報酬月額に相当する額が「70歳以上の使用される者」の要件に該当するに至った日の前日における標準報酬月額と同額である場合は、「70歳到達届」の提出は不要とされました。
つまり、被保険者が在職中に70歳に達した場合は、従前の標準報酬月額に変更がない限り、70歳到達届の提出は不要ということです。本文は、こちら以下です。
以上、事業主が行う届出でした。次に、被保険者等が行う届出です。
(三)被保険者等が行う届出
1 被保険者等が行う届出については、こちら以下の2つの図表をチェックして下さい。
このうち、「同時に2以上の事業所に使用された場合」の届出として、「所属選択の届出」と「2以上事業所の届出」があります。
いずれも10日以内の届出の期限となります。これらは、過去にも出題されていますので、ざっと本文(こちら以下)をチェックして頂くとよいです。
2 基金関係の基金選択届は、カットでよいでしょう。
3「適用事業所に使用される高齢任意加入被保険者の氏名又は住所の変更の届出」や「第4種被保険者の氏名又は住所の変更の届出」については、本人が10日以内に届出ることが必要である点は、注意です(こちら以下)。
次に、受給権者等が行う届出です。
(四)受給権者等が行う届出
1 受給権者等が行う届出は、ボリュームは多い反面で、出題は少ないことから、学習の仕方が難しいです。
さしあたり、こちらのページをざっとチェックして頂くとよいです。
2 以下の点がポイントです。
(1)現況届(広義)
まず、こちらの現況届(広義)については、ざっと復習して頂いた方が良いです。
こちらの施行規則第35条は、選択式の出題対象にもなり、重要です(なお、この施行規則第35条は、老齢厚生年金の受給権者について規定していますが、障害厚生年金等の受給権者についても、それぞれ規定があります)。
次の赤字部分については、注意して下さい。
「厚生労働大臣は、毎月、住民基本台帳法の規定による老齢厚生年金の受給権者に係る機構保存本人確認情報の提供を受け、必要な事項について確認を行うものとする。」(第1項)
この第1項については、同様の規定がある国年法の前回の選択式で出題されました。「毎月」が空欄とされました。
「厚生労働大臣は、前項の規定により機構保存本人確認情報の提供を受けるために必要と認める場合は、老齢厚生年金の受給権者に対し、当該受給権者に係る個人番号の報告を求めることができる。」(この「個人番号」は、平成29年1月16日施行の改正事項です。従来は、「住民票コード」でした。)
(2)期限が10日以内となる届出
次に、こちらの「届出の期限が10日以内となるもの」の青の点線枠内をご覧頂き、これらの届出の期限が10日以内であることはチェックして下さい(なお、よく内容が思い出せないような届出については、条文のリンクをクリックして下さい。ただ、あまり内容を深く詰める必要はないです。)
なお、重要なのは、受給権者の氏名変更・住所変更の届出です(こちら以下)。
届出の省略が問題となり、結論としては、前記の被保険者の氏名・住所の変更の届出の場合と同様に、厚生労働大臣が、住民基本台帳法の規定により当該受給権者に係る機構保存本人確認情報の提供を受けることができる者については省略できます。
従来は、「受給権者の住所変更の届出」の場合は、「機構保存本人確認情報の提供を受けることができる者に係る届出の省略」が認められ、「受給権者の氏名変更の届出」の場合は、振込先口座の氏名との相違による振込不能となる危険性を考慮して、当該省略は認められませんでした。
しかし、平成30年3月5日施行の施行規則の改正により、「受給権者の氏名変更の届出」の場合も、同様に省略できることに改められました。そして、払渡希望金融機関の預金口座の名義が変更した場合に、新たに「払渡希望金融機関等の変更の届出」を提出させることとしています(こちら)。
なお、遺族厚生年金の受給権者の氏名変更の場合は、新たに「氏名変更の理由の届出」が新設され、氏名変更の届出を省略できるときは、氏名変更の理由等を記載した届書を提出しなければならないものとされました(施行規則第70条の2)。(こちらも参考)
氏名の変更がある場合は、婚姻、養子縁組等、遺族厚生年金の失権事由に該当する可能性があることから、氏名変更の理由を確認する趣旨です。
この「氏名変更の理由の届出」が新設された点は、国年法の「遺族基礎年金」及び「寡婦年金」の場合も同様です(国年法のこちら)。
(3)国会議員等に関する届出
届出の期限が「速やかに」となる受給権者等が行う届出のうち、「国会議員等に関する届出」は、一元化法により新設されたものです(こちら以下)。
「速やかに」届け出ること、届出の省略が認められたことを押さえておきます。
※ ちなみに、この「速やかに」となる受給権者等が行う届出については、「支給停止事由該当の届出」(雇用保険の給付との調整に関する届出です)が、平成22年度の選択式に出題されました。「速やかに、支給停止事由該当届を日本年金機構に」という1か所が空欄になった問題です。届出の期限、届出の名称、届出先が問われていることになります。
ただ、このような届出は、届出の個所でチェックしていなくても、雇用保険の給付との調整の個所でチェックするものです。
「受給権者等が行う届出」は、ボリュームがかなりありますので、冒頭から最後まで読んでチェックして頂くのはあまりお勧めできず、保険給付をチェックしている際にリンクがあったらその届出に戻るという方法の方がよいでしょう。
(五)その他の者が行う届出
届出の最後です。死亡の届出(こちら)については、赤字部分等をチェックして下さい。
以上、届出でした。次に、確認です。
五 確認
確認(こちら)は、重要です。以下の点がポイントです。
(一)確認が不要な場合
確認が不要な場合(こちら以下)を覚えることが、もっとも重要です。
(二)確認の方法
確認の方法には、こちらの3種類があります。健保法においても同様です。
被保険者等による確認の請求については、いつでも確認請求ができること、口頭でもよいことがポイントです。
六 年金手帳
年金手帳(こちら以下)については、例えば、「厚生労働大臣は、当該被保険者を使用する事業主を通じて年金手帳を交付することができる」など、サイト上で若干赤字(又は紫の字)にしている個所がありますので、そちらをチェックしてみて下さい。
なお、年金手帳の再交付について、平成30年3月5日施行の施行規則の改正があります(こちら以下)。
従来は、年金手帳の再交付は、年金手帳の滅失又は毀損の場合のみに認められていましたが、当該改正により、氏名に変更があるときにも年金手帳の再交付の申請を行うことができることと改められました。
これは、前述の通り、平成30年3月5日施行の施行規則の改正により、被保険者及び受給権者の氏名変更届、住所変更届等を省略できる場合が認められたところ、氏名に変更がある場合に、年金手帳に記載されている氏名を変更する契機がなくなる場合があることを考慮したものです(以上、こちらを参考)。
七 事業主の書類の保存義務
事業主の書類の保存義務(こちら)については、「完結の日から2年間保存」がポイントです。
八 記録(原簿)
記録(原簿。こちら)については、第28条と施行規則第89条については目を通して下さい(第28条の太字部分は、選択式の出題対象になり得ます)。
九 訂正の請求(特定厚生年金保険原簿記録の訂正請求の制度)
訂正の請求(こちら)については、国年法でも同様の制度を学習しました。国年法の平成27年度の選択式で3問出題されました。さしあたりは、択一式用の知識は習得する必要があり、国年法の復習も兼ねて、厚年法の前記リンク先を一読して下さい。
十 通知
通知(こちら)については、あまり出題はないのですが、3号分割について、【平成27年問10A】で出題されていますので、ある程度知識があった方がよいです。本文を一読して下さい。
事業主について、被保険者等への通知義務違反が罰則の対象となっていることに注意です(こちら)。
十一 被保険者に対する情報の提供
被保険者に対する情報の提供(こちら)については、第31条の2は、選択式で出題可能ですので、熟読して下さい。
あとは、「ねんきん定期便」の節目の年齢を押さえます(こちら以下)。
以上、大変長くなりましたが、厚年法の初回の主体に関する解説でした。
次回は、客体として、報酬関係をチェックします。また、直前対策講座を引き続きアップしま
す。
令和元年6月9日(日曜)
今回は、国年法の解説の最終回(第5回目)です。
また、直前対策講座を開始しました。初回は、労基法のフレックスタイム制です。重要な改正事項が多く、今回の労基法は数回に分けてアップします。
〔Ⅰ〕国年法の解説最終回(第5回目)
国年法の最終回は、国民年金基金からです。
〔1〕国民年金基金
国民年金基金(以下、「基金」といいます)については、「全国国民年金基金」が発足したことには注意しておきます。
全国国民年金基金とは、地区が全国である地域型国民年金基金です。
こちら以下で説明していますが、全国47都道府県の地域型国民年金基金(つまりすべての地域型基金)と22の職能型国民年金基金が統合されて、本年4月1日から「全国国民年金基金」が発足しました。
職能型国民年金基金のうち、日本弁護士国民年金基金、司法書士国民年金基金及び歯科医師国民年金基金の3つのみが、全国国民年金基金に参加せず、従来通り、独立の職能型国民年金基金として存続します。
従って、現在は、国民年金基金は、「全国国民年金基金」と3つの「職能型国民年金基金」から構成されていることになります。
「全国国民年金基金」(以下、「全国基金」ということがあります)は、地域型基金と職能型基金が合併して、その地区が全国である地域型基金が吸収合併存続基金となったものです。
平成28年の改正(平成29年1月1日施行)により、基金の合併及び分割に関する規定が新設されましたが、これは、今回の「全国国民年金基金」の創設を可能とさせるものでした。
即ち、第137条の3第1項に次の規定(要旨)が新設されていました。
基金は、厚生労働大臣の認可を受けて、他の基金と吸収合併(基金が他の基金とする合併であって、合併により消滅する基金の権利義務の全部を合併後存続する基金に承継させるものをいう。)をすることができる。
ただし、地域型基金と職能型基金との吸収合併については、その地区が全国である地域型基金が吸収合併存続基金となる場合を除き、これをすることができない。
このただし書の「その地区が全国である地域型基金」が「全国国民年金基金」です。
従って、「全国国民年金基金」は、「地域型基金」ということになります。
ちなみに、吸収分割の方にも、次のような規定(要旨)があります。
職能型基金が、その事業に関して有する権利義務であって吸収分割承継基金〔=吸収分割後に存続する基金です〕となる地域型基金の地区に係るものを当該地域型基金に承継させる場合に限り、厚生労働大臣の認可を受けて、吸収分割をすることができる(第137条の3の7第2項)。
つまり、基金の分割の制度が新設されていたのですが、これは、職能型基金が地域型基金に吸収されてしまう形態のみしか認められていません。
いずれにしましても、「全国国民年金基金」が発足したこと、既存の全ての地域型基金と3つ(弁護士、司法書士及び歯科医師の職能型)を除く職能型基金が合併したことあたりを押さえておくと良さそうです(一般常識あたりで出題されるかもしれません)。
なお、直近の平成30年度の択一式では、基金については、3肢出題されました。出題が多かったほうです。
次の3肢です。
➀【問1B(こちら)】(中途脱退者の定義に関する出題)
②【問7A(こちら)】(地区が全国である地域型国民年金基金にする吸収合併存続基金となる合併に関する出題)
③【問7B(こちら)】(基金が解散したときの責任準備金相当額の徴収に関する出題)
上記②が、前述の第137条の3第1項に関する出題です。前記の平成29年1月1日施行の改正により新設された規定であり、今回の全国基金に関連する条文でした。本規定は、改正直後の平成29年度の試験では出題されずに、翌年度出題されたことになります。
この平成29年1月施行の改正では、合併及び分割に関する多くの改正事項がありました。
ただ、この合併規定が新設された最大の理由である「全国国民年金基金」が発足してしまいましたので、今回の試験では、合併・分割に関する出題は、やや時期遅れとなってしまった感があります。
また、全国を地区とする「全国国民年金基金」が発足した以上、今後、都道府県ごとの地域型基金の設立は、事実上は問題とならないことになります(各都道府県の基金を1つに統一した以上、今後、都道府県に新たに地域型基金を設立する必要性は乏しいからです)。
従って、こちら以下のページの「設立」の問題は、実務上は、重要性が乏しくなったといえます。
もっとも、試験の場合は、従来通り、「地域型基金は、1,000人以上の加入員がなければ設立することができない」とか、「職能型基金を設立するには、その加入員となろうとする15人以上の者が発起人とならなければならない」といった数字関係の論点が出題される可能性はなくはないです。
ただ、従来よりかなり重要度が低下したといえ、基金については「設立」以外の部分にウエイトを置いた方がよいでしょう。
以下、基金について、やや詳しく見ます。
一 体系
基金の体系等、大枠については、こちらのページで掲載しています。
二 主体
(一)基金の定義
基金の定義です(第118条の2)。
基金には、地域型基金と職能型基金があります。
地域型基金は、第1号被保険者(後述のように、一定の任意加入被保険者も含みます)であって、基金の地区内に住所を有する者をもって組織されます。
基金の地区は、地域型基金にあっては、一(前述の第137条の3〔=基金の吸収合併〕の規定による吸収合併後存続する地域型基金にあっては、一以上)の都道府県の区域の全部とし、職能型基金にあっては、全国とします。
上記のかっこ書の部分は、平成29年1月1日施行の改正により追加されています。
地域型基金の地区は、原則として、一つの都道府県の区域の全部ですが、吸収合併後存続する地域型基金については、一つ以上の都道府県の区域を地区とします。「全国国民年金基金」のケースです。
(二)加入員
1 加入員となれない者
基金の加入員となれない者についても、平成28年の改正(平成29年1月1日施行)により、任意加入被保険者に関して見直しが行われました(こちら以下)。
即ち、同改正により、こちらの図のCの任意加入被保険者が新たに基金の加入員となることができるようになりました。従いまして、B及びCの任意加入被保険者が基金の加入員となることができます。
その他、保険料の免除を受けているもの(保険料免除者)と農業者年金の被保険者が基金に加入できないことも、チェックが必要です。
2 加入員の資格の取得・喪失
加入員については、資格の喪失の関係(資格喪失事由と資格喪失時期。こちら以下)につき、出題が多いため、チェックしておいて下さい(ゴロがあります)。
3 届出
届出については、こちらのページで記載していますが、出題はあまりありません。ほぼスルーで結構ですが、赤字や紫の字の個所(14日以内の届出など)については若干注意して下さい。
三 設立
設立については、前記の通り、重要性が乏しくなりました。一応、安全のため、こちらの表の赤字部分は覚えておいた方がよいですが(ゴロあり)、その他は不要でしょう。
四 機関(管理)
(一)機関の構造
機関(代議員会や役員等)については、あまり出題がなく、色のついた字だけ追って頂ければ良さそうです。
機関の構造(こちらの図)については、出題が多い健保法の全国健康保険協会(以下、「協会」といいます)や健保組合の構造を押さえ、そこから類推する形の方がよさそうです。
(二)任期
なお、役員の任期については、原則として、「3年を超えない範囲内で規約で定める期間」となります。代議員の任期も同じです。
他方、連合会の役員の任期は、原則として、「2年」となります。
ただ、基本的には、まず、「健保法」の協会及び健保組合の役員等の任期を覚えて下さい。
協会の役員等の任期は、原則として「3年」であり、健保組合の役員等の任期は、原則として「3年を超えない範囲内で規約で定める期間」です。
これをベースに、余力がある場合は、国民年金の基金の役員等の任期を押さえることになります。
任期については、健保法のこちら(健保法のパスワード)の表をご参照下さい。
(三)理事
なお、機関(理事)について、こちらの部分が平成29年1月1日施行の改正事項です。
即ち、理事の選任について、理事の定数の3分の1(吸収合併によりその地区を全国とした地域型基金にあっては、2分の1)を超えない範囲内については、代議員会において、基金の業務の適正な運営に必要な学識経験者のうちから選挙することができます。
上記のかっこ書の吸収合併の部分も改正事項なのですが(つまり、全国基金の場合は、2分の1以上です)、もう1か所、「基金の業務の適正な運営に必要な学識経験者」という点も改正点です(以前は、「年金に関する学識経験者」と規定されていました)。
全国基金の場合が2分の1以上であることは、知っておいてもよさそうです。
(四)監事
監事については、理事又は基金の職員と兼ねることができないこと(監事の兼任禁止。こちら)は、押さえます。基本的に、どの科目の監事でも同様です。
(五)みなし公務員
みなし公務員(こちら)については、10年ほど前に出題があります。みなし公務員は、他の科目の団体等でも同様のことが多いです。
五 運営
(一)業務
業務(こちらのページ)については、ざっと、本文をチェックして下さい(色のついた文字を追って頂ければよいです)。
(二)給付
給付(こちら)については、出題が多いため、チェックして下さい。色のついた部分を追って下さい。
六 財政(費用)
財政(費用)についても、色のついた部分を追って下さい(こちらのページ)。冒頭少し下部の「必須知識」という個所が最重要個所です。
なお、予算については、平成29年度から改正されています。
従来は、作成(又は重要な変更)に係る予算について、厚生労働大臣の「認可」を受けることが必要でしたが、「届出」で足りることに改められました(こちら)。一応、頭の片隅に入れて下さい。
七 変更
(一)規約の変更
変更に関する問題として、まず、規約の変更の問題があります(こちら)。
規約の変更の要件の基本的な枠組みは、健保法の協会の定款の変更(健保法のこちら)や健保組合の規約の変更(こちら)の場合と類似します。
即ち、厚生労働大臣の認可と特別決議(数字は3分の2以上です)が要件となります。
(二)合併・分割
合併及び分割(こちら以下)は、前述の通り、今回は、あまりウェイトを置かないで大丈夫ではないかと思います。
以下、要点を掲載しておきます(色のついた部分だけチェックして頂ければ良さそうです)。
〔ここでは、省略します。〕
八 消滅
消滅については、解散と清算の問題があります。
解散の要件は押さえます(こちら)。
ポイントは、代議員会の議決による解散の場合は、代議員の定数の4分の3以上の多数による議決の要件であり、また、代議員会の議決又は事業継続不能による解散については、厚生労働大臣の認可を受けることが必要であるということです(健保法の協会や組合の解散の場合もパラレルです)。
以上、基金の概要でした。
〔2〕国民年金基金連合会
国民年金基金連合会(以下、「連合会」といいます)は、出題は少なめです。
連合会は、複数の国民年金基金により設立される法人であり、国民年金基金の中途脱退者と解散基金加入員に係る年金及び一時金の支給を共同して行うことを目的としています(全国基金の成立により、基金は、全国基金と3つの職能型基金しか存在しないことになりましたが、上記の中途脱退者に関する事務等について、引き続き、連合会が行うことになります)。
中途脱退者と解散基金加入員の定義が重要であり(こちら)、中途脱退者とは、当該基金の加入員の資格喪失者であって、加入員期間が15年未満である者をいうのですが、この点は、前述のように、【平成30年問1B(こちら)】で出題されました。
ちなみに、厚年法の「存続連合会」の中途脱退者は、加入期間が20年未満です。
また、確定給付企業年金の中途脱退者については、平成31年4月1日施行の改正(今回の試験から出題対象です)により、「加入者であった期間が20年未満であること」という要件がなくなり、加入者であった期間は問われなくなったことも注意です(社会一般のこちら)。
確定給付企業年金を中途で脱退した場合において、確定拠出年金などへの脱退一時金の移換を従来より広く認めようとする趣旨です。
以上、基金・連合会でした。
次に、その他の事項として、不服申立て、消滅時効及び罰則について取り上げます。
〔3〕不服申立て
不服申立てについては(こちら以下)、依然として、平成28年4月1日施行の行審法等の改正事項が重要です。
平成27年度以降は、毎年度1肢程度の出題があります。直近の平成30年度の試験でも、【平成30年問4A(こちら)】の出題がありました。決定を経ない再審査請求等の問題であり、平成28年の改正事項でした。
改正後の平成29年度、30年度と連続して、改正事項から出題されています。
当サイトの国年法の不服申立ては、社会一般の択一式の知識も含めて記載しているため、非常に細かくなっています。
ただ、さしあたりは、次の部分をチェックして頂ければ、基本的な知識の確認はできます。
(1)まず、冒頭から、審査請求のここらあたりまでをざっと一読して下さい。
(2)次に、再審査請求のこちらのページの冒頭から、こちらの第101条の条文の手前までを一読して下さい。
(3)また、不服申立て前置主義のこちら以下をお読み下さい。
(4)最後に、脱退一時金に関する処分についての審査会に対する審査請求(こちら以下)についても、ざっと一読して下さい。
以上を押さえますと、国年法で出題される不服申立てには対応できると思います。
あとは、社会一般の択一式で出題される知識についてカバーすることになります。
こちら以下で、国年法と社会一般に分けて過去問を掲載しています。社会一般で出題された過去問をざっとチェックして頂き、リンクされている本文の記載個所を確認して頂くとよろしいです。
〔4〕消滅時効
消滅時効(こちら以下)については、基本的な考え方は、労災保険法以下で学習済みです。
1 消滅時効期間
試験対策上実際に必要な事項は、その次のページであるこちらで掲載しています。
まずは、このページ最上段右の表の消滅時効期間の関係を記憶しているかチェックして下さい。
2 中断
次に、来年4月からは、民法の改正により、時効障害といわれる「時効の中断」と「時効の停止」の制度が改められます(後者の「時効の停止」は、試験対策上はさしあたり不要です)。
今回の試験には関係ありませんので、覚える必要はないのですが、「中断」(正確には、法定中断)の制度が廃止され、時効の「完成猶予」と「更新」の2つに再構成されました。また、時効の「停止」は、改正後は「完成猶予」の中に含められ、「停止」の制度は廃止されました。
これらの改正(国年法などの社労士試験の対象科目における中断等についても改正されます)との関係で、今回は、いずれかの科目において、「中断」あたりに関する出題があるかもしれません。
ただ、特段、難しくはありません。中断に関する国年法の規定は、次の2つ程度です(こちら以下)。
(1)保険料等の督促の中断効
◆保険料その他国年法の徴収金についての督促は、民法第153条〔=催告〕の規定にかかわらず、時効中断の効力を有する(第102条第5項)。
(2)審査請求等の中断効
◆審査請求及び再審査請求は、時効の中断に関しては、裁判上の請求とみなされて、時効中断の効力を生じる(第101条第3項)。
3 消滅時効の起算点
(1)来年の改正
また、民法の消滅時効の起算点に関する改正のついでに、年金法における支分権(支払期月ごとに支払われる各月分の年金の支給を受ける権利のこと)の消滅時効の起算点について明文が設けられました。
従来から、支分権の消滅時効の起算点は、実務上、各支払期月に係る月分について「各支払期月の翌月の初日」とされていたのですが(明文もなく、根拠が希薄でした)、これと同様の内容が既存の条文上に追記されました。これも、今回の試験範囲の改正事項ではありませんが、上記太字部分は押さえておくと良さそうです。
(2)最高裁判決
なお、上記(1)の消滅時効の起算点の問題とは別の問題なのですが、【最判平成29.10.17=障害年金請求事件】において、障害年金(旧厚年法)の支分権の消滅時効の起算点について最高裁判決が出されています(詳しくは、厚年法のこちらで掲載しています)。
これは、障害年金の受給権が発生して、裁定請求はしていない場合に、支分権の消滅時効は、①裁定請求の時から進行するのか、それとも、②支払期が到来したときから進行するのかが問題となったものです。
(なお、②の支払期とは、上記(1)のように、「各支払期月の翌月の初日」のことですが、その点は、この裁判では問題となっていず、単に「支払期」と表現されています。)
①と解しますと、受給権者が裁定請求するまでは支分権の消滅時効が進行しないのですから、受給権者にとっては有利となります。
最高裁は、②の立場を採り、裁定請求時ではなく、支払期が到来したときに消滅時効が進行するとしました。
判決は、裁定を受けていないことは、支分権の消滅時効の進行を妨げるものではないとして、「支分権の消滅時効は、当該障害年金に係る裁定を受ける前であっても、厚生年金保険法36条所定の支払期が到来した時から進行する」としました。
年金給付の受給権は、その支給要件に該当したときに発生しているのであり、裁定は、その発生した受給権を確認する処分に過ぎず、受給権者は、裁定請求をしさえすれば裁定を受けて給付を受給することができるのだから、支分権の支払期の到来時に法律上権利行使が可能な状態にあるとする考え方といえます。
実質的には、このように考えませんと、裁定請求がなされないうちは、いつまでも支分権は時効消滅しないことになり、年金制度において消滅時効の制度が定められた目的を実現できないおそれがあるのでしょう。
本問は、選択式で出題される類の問題ではなさそうですので、択一用に上記太字の結論だけ記憶していれば足りるでしょう。
〔5〕年金記録問題への対応(年金時効特例法等)
消滅時効の次には、年金記録問題への対応として、年金時効特例法等を掲載しています(こちら以下)。
年金時効特例法等は、時々選択式で出題されるため、侮れません。概要とキーワードの把握が必要です。
が、出題は社会一般になると思いますので、さしあたり、余裕があるときにでも、ある程度の記憶を喚起させておいて下さい。
〔6〕罰則
罰則については、最低限、不正受給罪(こちら)を記憶しておけばよいでしょう。
即ち、偽りその他不正な手段により給付を受けた者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。
不正受給罪が定められているのは、社労士試験の対象科目ですと、国年法程度ですので、記憶必須です。
以上で、国年法の解説は終了です。次回からは、厚年法の解説となります。
〔Ⅱ〕直前対策講座アップ開始のお知らせ
直前対策講座のアップを開始しました(こちら。直前対策講座のパスワードをご使用下さい)。
と申しましても、前記の通り、今回は、労基法の初回として「フレックスタイム制」だけのアップです。労基法だけで4回程度のアップを予定しています。
なお、今回のフレックスタイム制は、全部で10問、うち選択式1問、択一式9肢なのですが、最初の【問1】で選択式を掲載しています。実は、この【問1】の解説(今回の改正のまとめ的な内容になっています)を読んでしまいますと、その後のかなりの択一式の解答がバレてしまいます。
そこで、受験経験をお持ちで、択一式の合格レベルにあるような方は、【問1】の選択式を解いて頂いた後、すぐには解説を見ずに、そのまま【問2】~【問10】までの残り択一式9肢を解いて頂き、全部終了後に【問1】からの解説を見て頂くと、今現在の実力を確認して頂くことができ、復習に役立てて頂けそうです。
現在、まだ実力発展段階にあるような方は、以上のような配慮は不要です。最初からどんどん解説を見て頂き、覚えていないことは記憶して下さい。
なお、以上の「作り方」は、この後公開します労基法についても同様です(その他の科目については、このような配慮は不要です)。
この後、完成しました直前対策講座をアップする際は、まずは、サイトの右側の毎日の更新状況の中でお知らせします。
では、次回は、厚年法の解説に入り、また、直前対策講座も先に進めます。
令和元年6月4日(火曜)
6月に入りました。
学習の進捗具合は、いかかでしょうか。
全科目のカバーが終わっていない方は、早めに残りに目を通して「既視感」(どこかで見たことがあるという感覚です)を作って下さい。
この場合、特に一般常識の法令科目については、市販のいわゆる1冊本が有効です。
例えば、「国民健康保険法」をざっと読む程度なら、1時間程度で終わるかと思います。その後、すかさず過去問を解いて下さい。解く時点では、ほとんど正解できないと思いますが、問題ありません。テキストを一度読む程度では、正確な記憶はできないからです。
過去問を解いたら、テキストの該当箇所に戻って下さい(その際、市販書で分かりにくい個所は、当サイトをご利用下さい)。このような作業をして国民健康保険法をなんとか終わらせます。
そして、このあとが重要です。過去問で問われた個所やその周辺部分(出題されそうな個所)を記憶する必要があります。数字やキーワードが中心となります。その際は、当サイトの該当箇所の周辺をご覧になって下さい。ゴロ合わせが作ってあるかもしれません。そこが、最重要個所です。
一方で、受験経験のある方は、この時期は、市販の模擬試験を利用して、出題予想問題を把握するとともに、出題された問題及びその周辺知識をテキストに戻って再チェックするという作業が有用です。
毎年触れているのですが、受験経験のある方で、本番でのペース配分等のイメージのあるような方は、模擬試験を時間通りに解く必要はありません(1度くらいは、本番と同様の条件で利用することもよいでしょうが)。
模擬試験を通常の問題集と思って、例えば、1日に択一式を1問と選択式を1問解き、その復習は十分やるといった方法で足ります。
模擬試験は、択一式だけでも、70問(350肢)もあるため、復習にかなり時間がかかります。これをいっぺんに解いて、復習していくというより、本来やりたい学習もしつつ、そのスキマ時間を利用して、模擬試験も少しずつ解いていくという方が有用であることが多いと思います。
ここら辺は、ご自分に合った模擬試験の利用の仕方を検討して頂き、ご活用下さい。
なお、初学者の方などで、全体的に時間的余裕がないような方も、例えば、模擬試験の「選択式」は解いてみて下さい。
内容面については、当サイトの該当箇所も参照してください。
その後は、余裕があれば、一般常識の択一式をやるとか、手薄な個所から徐々に拡大していくとよろしいかと思います。
より直前期には、これらの問題の答えを覚えてしまう意気込みで取り組みます。
ちなみに、市販の模擬試験は、価格もそう高くないですし、できるだけ多くの素材に取り組んで頂いた方が良いです。
他方、受験予備校で実施します模擬試験の方は、価格も高いですし、あまり沢山受けても、復習が大変になるという問題があります。
この時期にご自分が最優先で取り組まなければならない学習内容を検討して頂き、その本来の学習ペースにあまり障害にならない程度にご利用頂くのがよろしいかと思います(もっとも、過去、当サイトの会員の方で、受験予備校の模擬試験を多数受けて合格された方や、受験予備校の模擬試験を利用して一般常識の選択式をクリアされた方などもおられます。それぞれの状況に応じてうまくスケジュールを立てて下さい)。
また、適切な時期を見て、これまで学習してこられたテキスト(当サイトも含みます)を総チェックする時間を設けて頂くのがよいです。
重点は、テキストのキーワードと数字です。これに特に注意しながら、また、これまで記憶されていた知識が思い出せるかを確認しつつ、ざっと全科目について目を通して頂けると安心です(結構時間がかかります。1箇月程度見て頂いた方がよいです)。
模擬試験等の問題練習ばかりですと、どうしてもアナができます。模擬試験の取組みと同時に、これまで学習されてきた素材を地道に確認して頂くことよろしいです。
では、ゴタク並べはおわりとし、国年法の解説の続きです。
なお、白書対策講座が、一応、完了しました。のちにお知らせします。
まずは、国年法の解説の続きからです。
〔Ⅰ〕国年法の解説 第4回目
今回は、費用以降の解説となります。
〔1〕費用(財政)
(Ⅰ)費用に関する予備知識
「費用」については、国庫負担、基礎年金拠出金及び積立金を学習しますが、いずれも選択式で出題されやすく、条文(附則や政省令はカバーする必要がなく、主に国年法の本則の条文)をベースに学習して下さい。
前提として、こちら以下の「費用に関する予備知識」の中でも、いくつかの条文があります。以下に掲げました条文については、再度、チェックをして下さい。
この第4条の2からは、例えば、次のような選択式を作成できます。
設問:
国民年金事業の財政は、 A その均衡が保たれたものでなければならず、著しくその均衡を失すると見込まれる場合には、 B 所要の措置が講ぜられなければならない。
選択肢:
A ➀給付と負担の公平に照らして ②費用と負担の適正化の見地から ③長期的に ④財政均衡期間において
B ➀直ちに ②速やかに ③遅滞なく ④可及的速やかに
このような「簡単なはず」の条文でも、実際に空欄が作られ語句を抜かれますと、厳しい問題に早変わりします。
条文を日頃から目にしていませんと、このような選択式でつまずきやすいのです。当サイトが、条文ふんだんの構成になっている理由です。
このような選択式の対策ですが、国年法・厚年法の場合は、難解な条文が多いため、他の科目の学習方法とは少々異なり、あまり広く条文に手を広げるべきではありません。
選択式に出題できそうな条文をマークして(当サイトにおいて、重要な条文かどうかをできる限り指摘しています)、まずは、それを熟読する必要があります。
その後、例えば、当サイトに掲載されている当該条文をコピペして頂き、ワード等に貼り付けて、間違えそうなキーワードは、ご自分で空欄を作成して時々確認する、といったような対策が可能です(ただし、時期が時期ですから、目的条文などに限定されます)。
以下、先の「費用に関する予備知識」の中から、その他のチェックすべき条文を挙げます。リンク先の条文の特に赤字部分を正答できそうか、チェックして下さい。
・第4条(年金額の改定)
・第4条の3(財政の現況及び見通しの作成)
※ この第4条の3は、平成26年度の選択式で3つの空欄が出題されていますので、再出題はもう少し先になりそうですが、前回、出題されたキーワード以外は押さえておいて下さい。
・第16条の2(調整期間)
※ この第16条の2からは、平成16年度の選択式で、5つの空欄が出題されています。
特に、「年金特別会計の国民年金勘定」、「『付加年金』を除く」といったキーワードには注意です。
(Ⅱ)国庫負担
次に、国庫負担です。
国庫負担は、最初は、とっつきにくいかと思いますが、全体像は、こちらの図でイメージして下さい。
具体的な国庫負担の仕組みについては、こちらの図を覚えておけば、基本的にはカバーできます。あとは、択一用に細かい知識をチェックします。次のようなものです(サイト上で、ゴロ合わせがあるものもありますので、ご参照下さい)。
・「20歳前傷病による障害基礎年金」の給付に要する費用について、100分の20(合計では100分の60)の国庫負担が行われること(こちら)。
・「付加年金」及び「死亡一時金に係る加算額(8,500円)」の給付費について、4分の1の国庫負担が行われること(こちら)。
・「障害福祉年金から裁定替えされた障害基礎年金」及び「母子福祉年金又は準母子福祉年金から裁定替えされた遺族基礎年金」の給付費について、100分の20の国庫負担が行われること(こちら)。
また、事務費の国庫負担を定めた第85条第2項については、選択式も視野に入れて、暗記が必要です。
「国庫は、毎年度、予算の範囲内で、国民年金事業の事務の執行に要する費用を負担する。」です
(Ⅲ)基礎年金拠出金
基礎年金拠出金も、非常に重要です。
第94条の2は、平成17年度の選択式において、5つの空欄が出題されていますが、今回の試験でも注意が必要です。
次の第1項~第3項の太字部分が空欄とされたときにも解答ができるように、条文を読み込んで下さい。
1.厚生年金保険の実施者たる政府は、毎年度、基礎年金の給付に要する費用に充てるため、基礎年金拠出金を負担する。
2.実施機関たる共済組合等は、毎年度、基礎年金の給付に要する費用に充てるため、基礎年金拠出金を納付する。
3.財政の現況及び見通しが作成されるときは、厚生労働大臣は、厚生年金保険の実施者たる政府が負担し、又は実施機関たる共済組合等が納付すべき基礎年金拠出金について、その将来にわたる予想額を算定するものとする。
なお、基礎年金拠出金の額(こちら以下)ですが、近時、特に、拠出金按分率における国民年金の「被保険者の総数」について、択一式でチョロチョロと出題されています(【平成30年問1D】にも出題があります)。
「第1号被保険者 ➡ 保険料納付者」、「第2号被保険者 ➡ 20歳以上60歳未満の者」、「第3号被保険者 ➡ すべての者(第3号被保険者)」という点を押さえておきます。
前記のリンク先以後の当サイトをざっと読んで下さい。【過去問 平成28年問7B】で出題があります。
(Ⅳ)積立金
積立金も、注意です。
厚年法では、平成27年の被用者年金一元化法の施行により積立金の条文が色々と改正され、これまでの更新メールや直前対策講座においても、毎年度、要注意との警戒をしていたのですが、前回平成30年度に出題されました。
厚年法第79条の2(厚年法のパスワード)からでしたが、しかし、実は、一元化法の改正部分からの出題ではありませんでした。
従って、厚年法も、一元化法により改正された積立金関係のいくつかの条文については、引き続き注意が必要です。
国年法の積立金の条文は、一元化法による改正はありません。また、平成20年度の選択式において、第75条と第76条から合計5つの空欄が出題されています。この2つの条文の太字部分をチェックしておけば大丈夫でしょう。
(Ⅴ)保険料
次に、保険料です。
保険料については、大別しますと、次の内容を含みます。
一 保険料
二 保険料の免除
三 強制徴収の手続
いずれも試験で頻出の事項が多く、かつ、学習が大変な個所です。
一 保険料
保険料については、概要は、こちらのページで確認して下さい。
保険料関係は、当サイトでは、「主体 ➡ 客体(保険料)➡ 手続」という大きな流れで整理しています(国民健康保険法などを含む他の保険法でも同様です)。
(一)主体
主体の徴収権者に関する問題は、ほぼ「機構が行う収納」(こちら)に関するものです。
今のところ、あまり出題はなく、また、平成28年7月25日施行の施行規則の改正はあるのですが(機構が収納することができる保険料等に利息(返還が遅滞したことによるいわゆる遅延利息です)が含まれることが明示されたました)、少々出題しにくそうです。
ただ、第109条の11は、選択式で出題可能ですので、赤字の個所は注意して下さい。
(二)客体
客体の問題については、今年度から基本額が改正されていますので、注意です。
100円プラスの17,000円ですから、覚えやすいです。
この17,000円に「保険料改定率」を乗じて得た額が、保険料額です。
平成31年度は、16,410円であり、これも暗記して下さい。下三桁の「410円」だけ覚えていても、思い出せるでしょう(例えば、「死闘(410)の末、保険料を取られた」とでも覚えます)。
端数処理は、10円未満の端数の四捨五入となることにも注意です(これも毎年度ふれるのですが、その年度の保険料額(今回は「16,410円」)を覚えていれば、10円未満の端数を四捨五入していることは思い出しやすいです)。
これらの基本額と保険料額は、前回の【平成30年問3C】で出題されました。今回は、金額以外の個所にも注意が必要かもしれません。
例えば、保険料改定率に関するこちら以下の赤字部分に注意です。
即ち、「名目賃金変動率」(年金額の改定において用いられる「名目手取り賃金変動率」ではないことにくれぐれも注意です)、名目賃金変動率の定義における「『当該年度の初日の属する年の前々年(2年前)の物価変動率』×『当該年度の初日の属する年の4年前の年度の実質賃金変動率(5年前の年度から3年前の年度までの3年平均)』」あたりはチェックします。
(三)手続
手続に関する問題として、大別しますと、納期限とその他の問題(納付の方法等)がありますが、この後者の「納付の方法等」の全体の項目はこちらです。
途中の「前納」あたりからややこしくなり、最後の「特定事由に係る保険料の納付等の特例」は大変ややこしいです。
1 口座振替
口座振替による納付が認められるためには、被保険者が申出書を提出することが必要ですが、平成30年4月1日施行の施行規則の改正(前回からの試験対象です)により、この例外が定められました。択一式程度で出題されるかもしれませんので、一応、こちら以下を眺めて下さい。
2 保険料の納付委託
保険料の納付委託については、注意が必要です(【平成30年問1E(こちら)】でも出題されています)。
条文をチェックする前に、こちら以下の本文全体を読んで頂き、赤字部部分をチェックして頂いた方が良いでしょう(条文が数条にわかれているため)。
3 保険料納付確認団体
保険料納付確認団体(こちら以下)については、今まで、あまり出題がなかったのですが、直近の【平成30年問1C(こちら)】で問われました。今回も、本文をざっと読んで頂いた方が良いでしょう。
4 前納
前納(こちら以下)については、近時、毎年のように択一式で出題があります。
直近の【平成30年問3D(こちら)】でも出題されました(前納された保険料が納付されたとみなされる時期はいつかという典型論点です)。
本文を、少し入念にチェックして下さい。
なお、前納については、2年前の改正ですが、2年前納の制度が改正され、平成29年4月から、口座振替納付の他に、現金納付(納付書による納付)やクレジットカード納付による2年前納も認められることになりました。
また、今回の改正事項として、「前納後に産前産後期間の保険料の免除を受けた場合」に還付が認められることも記憶が必要です(こちら)。
5 特定事由に係る保険料の納付等の特例
「特定事由に係る保険料の納付等の特例」は、平成28年4月1日施行の新制度ですが、改正の翌年の【平成29年問7C(こちら)】)で出題されました。
内容が難しい制度なのですが、大きくは、次の(A)(B)の2つの問題からなります(通常は、(A)から(B)に移行します)。
(A)特定事由に係る申出等の特例
(B)特定事由に係る保険料の納付等の特例
それぞれに多くのキーワードが登場し、最終的には、このキーワードを記憶することが目標です。ただ、ある程度内容を理解しませんと、なかなかキーワードも覚えにくい個所です。
あまり深い理解をする必要はないのですが、例えば、次の設問1及び2のA、Bの空欄を埋められる程度には、本文をお読み下さい。
〇設問1:
被保険者又は被保険者であった者は、 A (国民年金法その他の政令で定める法令の規定に基づいて行われるべき事務の処理が行われなかったこと又はその処理が著しく不当であることをいう。)により B をすることができなくなったとき、又は A により B を遅滞したときは、厚生労働大臣にその旨の申出をすることができる。
解答:
A=特定事由
B=特定手続
本文は、こちら以下。法附則第9条の4の7第1項からの出題です。
〇設問2:
老齢基礎年金の受給権者が A の納付を行ったときは、対象期間を有する旨の申出のあった日の B から、年金額を改定する。
解答:
A=特例保険料
B=属する月の翌月
本文は、こちら以下。法附則第9条の4の9第7項からです。
本問は、前掲の【平成29年問7C(こちら)】とは異なり、前記(B)「特定事由に係る保険料の納付等の特例」に関する問題であり、老齢厚生年金の受給権者が特例保険料を納付した場合です。
ここら辺の両者の違い等が、少し理解に時間がかかる個所です。この時期は、余り深入りせずに、結論を押さえて頂くのが良いです。
二 保険料の免除
続いて、保険料の免除です。保険料の免除は、情報量が非常に多くかなりやっかいな個所です。
こちらのページで概要を掲載していますので、大枠を再チェックしてみて下さい。
のちに見ますが、平成31年4月1日施行の改正により、「産前産後期間の保険料の免除」の制度が新設されました。
ただ、これは、その他の保険料の免除(ここでは、「一般の保険料の免除」と表現しておきます。法定免除及び申請免除(学生納付特例及び納付猶予も含む広義です)のことです)とは、少し別物と整理した方が良いです。
「産前産後期間の保険料の免除」も、「一般の保険料の免除」と同様に保険料が免除されるのですが、その他の効果が大きく異なります。
即ち、産前産後の保険料免除期間(以下、「産前産後保険料免除期間」といいます)は「保険料納付済期間」となります。
これは、「次世代育成支援」という趣旨に基づくものです(要するに、十分な少子化対策(安心できる出産・育児環境の形成)のために、産前産後保険料免除期間を保険料免除期間ではなく保険料納付済期間としたものであり、その財源とするために、国民年金の保険料を月額100円値上したということです)。
そこで、要件についても、一般の保険料の免除の場合は、低所得等であることを要件として免除が認められているのですが、産前産後期間の保険料の免除の場合は、低所得等であるかどうかは問われないといった特徴があります。
以上のような違いがあるため、ひとまず、一般の保険料の免除と産前産後期間の保険料の免除は区別しておきます。
以下、一般の保険料の免除からです。
重要個所がかなり多く、メールだけではポイントを書き尽くせないのですが(サイト本文で網羅しています)、ここでは、近時の改正事項を中心に触れておきます。
(一)法定免除
1 要件
保険料の免除においても、まず、免除の要件を思い出すことが必要です。
保険料の免除の要件と効果の概要については、こちらです。
法定免除の要件については、こちら以下です。
2 手続
法定免除については、手続面(届出)の改正があります(こちら以下)。
即ち、第1号被保険者は、法定免除の事由のいずれかに該当したとき(又は該当しなくなったとき)は、原則として、当該事実があった日から14日以内に、所定の事項を記載した届書を市町村長に提出しなければなりません。
国民年金保険料免除事由「該当」届と国民年金保険料免除事由「消滅」届です。
この届出先について、従来は、「機構」だったのが、平成31年4月1日施行の改正により、「市町村長」に改めらました。
産前産後期間の保険料の免除に関する届出の新設に伴い、本件の届出についても、届出先が改められたものです(当該届出に係る事務は、市町村の第1号法定受託事務とされます)。
上記の色のついた2か所を暗記しておきます。
なお、厚生労働大臣(実際は機構)が、当該事由を確認したときはこの届出は不要ですが、国民年金保険料免除事由「消滅」届の場合は、その他にも届出不要な場合があり、【過去問 平成21年問4D(後掲)】で問われています。こちら以下の「二 例外」をチェックして下さい。
3 効果
(1)免除期間
法定免除の要件に該当した日の属する月の前月から、当該要件に該当しなくなる日の属する月までの期間に係る保険料が、既に納付されたものを除き、免除されます(こちら)。
法定免除の要件に該当した月の「前月」から免除される理由は、法定免除の要件に該当した月からは保険料を支払わなくて済むようにするためです(法定免除の要件に該当した月の末日に前月の保険料の納期限が到来しますから、この前月分の保険料の支払から免除しようとするものです。こちら)
(2)法定免除期間に係る保険料の納付
法定免除の要件に該当した場合は、当然に保険料の納付が免除され、法律上、保険料納付義務が発生しないことになるため、保険料を納付できないのが原則となります。
ただし、平成26年4月1日施行の改正により、この例外が定められました。
即ち、法定免除の要件に該当する場合であっても、当該法定免除に係る期間について、本人の申出により、申出のあった期間に係る保険料を納付すること(前納することも含みます)ができるようになりました(こちら)。
4 近時の改正
法定免除等については、平成26年4月1日施行(年金機能強化法)の次の3つの改正事項があります(こちら以下)。
(ⅰ)前納後に免除の要件に該当した場合の還付
(ⅱ)法定免除の要件に該当した者の保険料の納付(前納)
(ⅲ)法定免除が遡及適用される場合の保険料の取扱い
(ⅰ)はすべての免除に共通しますが、(ⅱ)及び(ⅲ)は法定免除にのみ適用されるものです。
(ⅱ)は、【平成26年問5D】で出題され、さらに、【平成29年問4B(こちら)】でも出題されました。
(ⅰ)は、改正後は出題されていませんが、改正直前に【平成25年問1A】の出題があります。
これらの3つについては、引き続き注意が必要です。前掲の本文のリンク先をチェックしてみて下さい。
(二)申請免除
1 要件
申請免除(広義)の要件については、申請全額免除のこちらをベースにします。
要件のうち、「所得の要件」が最頻出です。こちらの表を覚えればよいです。
近年は、平成29年度の選択式(半額免除のケース)において2つの空欄が出題され(こちら)、【平成30年問6C(こちら)】(申請全額免除のケース)にも出題されています。
2 免除委託制度
申請全額免除について、「全額免除申請の事務手続に関する特例(第109条の2等)=免除委託制度」(こちら)が平成27年に新設されました。
改正後最初の出題機会である平成28年度の試験では出題されませんでしたが、その後、平成29年の択一式(【平成29年問4D(こちら)】で出題され、さらに、直近の平成30年度は、選択式が来ました。空欄1つです(前年度分の追加改正がありました。こちらの2)。
今回は、択一式対策として、念のため、前記リンク先の本文の赤字や色のついた個所はチェックして下さい。
(三)納付猶予
納付猶予(こちら以下)については、平成28年7月1日施行の改正により、30歳以上50歳未満の者の納付猶予の制度が新設されました。「中年者納付猶予」と表現することもあるようです。まだ直接的な出題はありません。
納付猶予の制度のポイントは、要件については、(20歳以上)50歳未満の者を対象としていること、平成37年6月までの時限措置であること、本人及び配偶者の所得等の要件が要求されること(世帯主の所得等の要件は不要であること)、また、効果については、基本的に学生納付特例と同様の取扱いがなされるということです。
なお、「平成37年6月」については、平成20年の択一式では、「3月」までとする出題がありました。
(四)追納
追納も、出題が多いです。
まずは、要件(こちら)を確認して下さい。
即ち、被保険者又は被保険者であった者(老齢基礎年金の受給権者を除きます)は、厚生労働大臣の承認を受け、免除を受けた保険料(承認の日の属する月前10年以内の期間に係るものに限ります)の全部又は一部につき追納をすることができます。
【平成30年問3B(こちら)】も、この要件を中心とする出題でした。
その他にも、追納では重要な知識が多く、前記リンク先の当サイトをチェックして下さい。
(五)産前産後期間の保険料の免除
次に、直近の改正事項である「産前産後期間の保険料の免除」です(こちら以下)。
今回の本試験では、必ず出題されるといえます。選択式の有力な候補でもあります。
1 要件
まずは、要件を含む第88条の2に要注意です。例えば、次のような選択式の出題が可能です。A~Cの空欄を埋めて下さい。
設問:
被保険者は、出産の予定日(厚生労働省令で定める場合にあっては、出産の日。)の属する月(以下「出産予定月」という。)の A (多胎妊娠の場合においては、 B )から出産予定月の C までの期間に係る保険料は、納付することを要しない。
選択肢:
A ➀3月前 ②2月前 ③前月 ④翌月
B ➀6月前 ②4月前 ③3月前 ④2月前
C ➀翌月 ②翌々月 ③3か月を経過した月 ④4か月を経過した月
解答:
A=③前月
B=③3月前
C=②翌々月
この第88条の2は、選択式で空欄にできる個所は限定されますので(おいしい個所は沢山はありません)、上記の設問が正答できれば大丈夫でしょう。
まずは、こちらの図でイメージしますと、記憶を喚起しやすいと思います。
以上を前提として、この産前産後期間の保険料の免除では、多岐にわたる論点があります。
そのいくつかについて、以下、設問形式で列挙します。以下の➀~⑧について、正誤を判断して下さい(一部、選択式あり)。解答は、⑧の後にあります。
【設問】
➀産前産後期間の保険料の免除は、第2号被保険者についても適用される。
②産前産後期間の保険料の免除は、任意加入被保険者(特例による任意加入被保険者は除く)についても適用される。
③保険料免除期間について付加保険料を納付することができないのと同様に、産前産後保険料免除期間についても、付加保険料を納付することができない。
④産前産後期間の保険料の免除の適用を受けている被保険者が、法定免除の要件に該当した場合は、法定免除が優先される。
⑤産前産後期間の保険料の免除を受けている者は、国民年金基金の加入員となることはできない。
⑥選択式:
次の A の空欄を選択肢の中から適切な語句により埋めよ。
厚生労働大臣は、必要があると認めるときは、被保険者の資格又は保険料に関する処分に関し、被保険者に対し、国民年金手帳、 A 、被保険者若しくは被保険者の配偶者若しくは世帯主若しくはこれらの者であった者の資産若しくは収入の状況に関する書類その他の物件の提出を命じ、又は当該職員をして被保険者に質問させることができる。
選択肢:
A ➀個人番号に関する書類 ②出産に関する書類 ③出産予定日に関する書類 ④婚姻に関する書類
⑦産前産後期間の保険料の免除を受けるには、所定の事項を記載した届書を市町村長に提出しなければならず、当該届出は出産予定日の3月前から行うことができる。
⑧第1号被保険者が、保険料を前納した後、前納に係る期間の経過前において、産前産後期間の保険料の免除により前納に係る期間の保険料につきその全部又は一部を納付することを要しないものとされた場合は、その者の請求に基づき、前納した保険料のうち産前産後保険料免除期間に係るものが還付される。
【解答】(設問も再掲します。)
➀産前産後期間の保険料の免除は、第2号被保険者についても適用される。
➡ 誤り。
第2号(第3号)被保険者は、国民年金の保険料の納付義務がない以上、保険料の免除も問題となりません(こちら)。
②産前産後期間の保険料の免除は、任意加入被保険者(特例による任意加入被保険者は除く)についても適用される。
➡ 誤り。
任意加入被保険者については、適用されません(こちら)。強制加入被保険者以外の者が、保険料を納付せずに被保険者の資格を継続することは認められないという考え方です。
③保険料免除期間について付加保険料を納付することができないのと同様に、産前産後保険料免除期間についても、付加保険料を納付することができない。
➡ 誤り。
前段の「保険料免除期間について付加保険料を納付することができない」は正しいです。
国民年金の本来の保険料を納付していないのに、その上乗せ給付に係る付加保険料のみ納付して年金額の上乗せを図ることは妥当でないためです。
しかし、産前産後保険料免除期間については、付加保険料を納付することができるとされます。
産前産後期間の保険料の免除の場合は、一般の保険料の免除とは異なり、保険料の負担能力に乏しい(低所得である)ために保険料が免除されるのではないという違いがあり(次世代育成支援・少子化対策という政策的趣旨です)、付加保険料による上乗せが当然に否定されるべきとはならないという理由でしょう(こちら)。
④産前産後期間の保険料の免除の適用を受けている被保険者が、法定免除の要件に該当した場合は、法定免除が優先される。
➡ 誤り。
法定免除や申請免除(一般の保険料の免除)より、産前産後期間の保険料の免除の適用が優先されます。
前者の期間は保険料免除期間であるのに対して、後者の期間は保険料納付済期間ですから、後者の方が被保険者にとって有利なためです(こちら)。
⑤産前産後期間の保険料の免除を受けている者は、国民年金基金の加入員となることはできない。
➡ 誤り。
産前産後期間の保険料の免除を受けている者も、国民年金基金の加入員となることができます。前記③の付加保険料のケースと同様の理由でしょう(こちら)。
⑥選択式:
次の A の空欄を選択肢の中から適切な語句により埋めよ。
厚生労働大臣は、必要があると認めるときは、被保険者の資格又は保険料に関する処分に関し、被保険者に対し、国民年金手帳、 A 、被保険者若しくは被保険者の配偶者若しくは世帯主若しくはこれらの者であった者の資産若しくは収入の状況に関する書類その他の物件の提出を命じ、又は当該職員をして被保険者に質問させることができる。
選択肢:
A ➀個人番号に関する書類 ②出生に関する書類 ③出産予定日に関する書類 ④婚姻に関する書類
(解答)
A=③出産予定日に関する書類
第106条第1項に、「出産予定日に関する書類」が追加されました(こちら以下の(ア)のリンク先を参照)。
出産予定日によって産前産後保険料免除期間が決定されるため、出産予定日に関する証明書を確認する必要な場合がありうるということでしょう。
⑦産前産後期間の保険料の免除を受けるには、所定の事項を記載した届書を市町村長に提出しなければならず、当該届出は出産予定日の3月前から行うことができる。
➡ 誤り。
当該届出は出産予定日の「6月前」から行うことができます(こちら以下)。
なお、届出は、日本年金機構(厚生労働大臣)ではなく、市町村長に行うこともチェックしておいて下さい(前述の法定免除に係る届出の改正のケース(こちら)と同様です)。
⑧第1号被保険者が、保険料を前納した後、前納に係る期間の経過前において、産前産後期間の保険料の免除により前納に係る期間の保険料につきその全部又は一部を納付することを要しないものとされた場合は、その者の請求に基づき、前納した保険料のうち産前産後保険料免除期間に係るものが還付される。
➡ 正しいです(こちら)。
以上、保険料の免除関係でした。
三 強制徴収の手続
強制徴収の手続(こちら以下)は、徴収法と共通する事項が多く、チェックもしやすいと思います。
徴収法と異なる部分に重点をおきます。例えば、こちら以下で、「滞納処分の委任」について整理していますが、「滞納処分の市町村への委任」と「機構への委任」は注意です。サイトの赤字部分をチェックして下さい(財務大臣への委任は、すでに見ました)。
なお、延滞金に関する平成31年における特例基準割合は1.6パーセントです(こちら以下)。
納期限の翌日から3月(徴収法の場合は2月。以下同様)を経過する日までの期間については、年2.6パーセントとし、納期限の翌日から3月を経過する日の翌日以後については、年8.9パーセントとなります。
「延滞したら、風呂(2.6)で焼く(8.9)ぞ」と脅されている恐ろしいイメージを焼き付けて下さい。
以上、今回の国年法の解説を終わります。次回は、基金以降となり、国年法の最終回です。
〔Ⅱ〕白書対策講座の完了
白書対策講座は、昨年の早い時期から開始していましたが、この度、なんとか終了しました。
労働一般のテキスト等も含め、近時アップしたものを掲載しておきます。
1 女性活躍推進法
女性活躍推進法(労働一般のこちら(労働一般のパスワード))は、今国会で改正法が成立しました(令和元年5月29日成立。間もなく公布されます)。この改正は、今回の試験対象ではありませんが、改正される個所については注意が必要です。
主な改正内容は、こちらです。特に、数字関係(現行法の「300人を超える」)は注意です。
2 毎月勤労統計 平成30年分結果確報
疑惑の毎月勤労統計です(こちら(白書対策講座のパスワード)の次のページ)。おそらく、毎月勤労統計からは出題しにくいでしょう。
常用労働者の定義が変わっていること(こちら。次の「賃金構造基本統計調査」も同じです)をチェックしておきます。
3 平成30年 賃金構造基本統計調査
この賃金構造基本統計調査も、疑惑があり、出題対象となるかは微妙です。
さしあたりは、こちらのポイントを流し読みして下さい。
4 平成30年版過労死等防止対策白書
過労死等防止対策白書は、注意が必要です(労働一般のこちら。労働一般のパスワード)。
前回の労働一般の選択式は、少子高齢化をテーマとしていましたが、択一式の【問4】のCでは、過労死等防止対策推進法から初出題されています。
スキマ時間にでも、当サイトの「設問」を解いて頂くとよろしいです。
5 平成30年版労働経済白書
数回にわたり、労働経済白書をアップしてきましたが、今回が最終回です。今回は、こちらのページ以下をアップしています。
ほぼ「設問」を作成し、設問から入っていますので、これを解いて頂くとよろしいです。
ボリュームがあり、少々、時間を要しますので、他の科目との進捗状況の兼ね合いを見てお取り組み下さい。
6 外国人雇用状況の届出状況
外国人雇用状況の届出状況は、今年度から作成しました。こちら以下です。
平成29年度の選択式で出題されていますが、改正された「労働施策総合推進法」に基づくものですので、「労働施策総合推進法」ともども、チェックして下さい。
7「平成30年労働組合基礎調査」と「平成29年労使間の交渉等に関する実態調査」
労働組合法関係のデータです。「平成30年労働組合基礎調査」はこちら、「平成29年労使間の交渉等に関する実態調査」はこちらです。
平成28年度の選択式で、推定組織率について問われています。平成30年の推定組織率は17.0%であり、過去最低であることといった最低限の数字は押さえておきます。当サイトの設問をご利用下さい。
8 社会保障統計
今年度から、社会一般の白書関係についてもアップしました。
(1)社会保障総論
まず、前提として、社会保障の総論的事項について掲載しています(こちら以下)。
3頁に渡り、特に2頁目の社会保障制度の歴史(変遷)についてボリュームがありますが(かなり「リキ」をいれています)、出題も多く重要ですので、ご一読下さい(過去問は、ページの最下部に掲載しています)。
以下は、社会一般のデーター関係です(やや、設問形式が少なくなっています)。
(2)社会保障費用統計
(3)人口動態統計
こちら以下。前回の労働一般の選択式で、合計特殊出生率に関して出題されています。
(4)医療
「平成28年度国民医療費の概況」は、こちら以下です。
(5)年金
「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」は、こちら以下です。
(6)介護
「平成28年度介護保険事業状況報告」は、こちら以下です。
以上、白書対策講座でした。
なお、現在、労働組合法の改訂も行っています(団結権に入ったあたりです)。
近年の文献からの情報を入れていますが、平成30年度版とあまり変わりません。すでにお読みになった方は、再読は不要です。
次回は、いよいよ直前対策講座の労基法をアップできると思います。アップしましたら、まずは、サイトの右側のコラム欄でお知らせ致します。
令和元年5月24日(金)
早いもので、大連休が終わったかと思ったら、いよいよえらい暑さになってきました。
本試験日も、そろそろ近づいてきています。
しかし、6月、7月、8月中旬。まだ、これだけあります。あきらめずに黙々と学習を継続していきましょう。
社労士試験は、「努力」が合格レベルへの到達に比較的結びつきやすい試験といえます。
逆に言いますと、合格のために、特別の才能が必要であるわけではありませんが、継続して努力することは不可欠です。
もっとも、努力の先に、運にも大きく左右される選択式という最終関門が待ち構えてはいるのですが、そのような合格レベルに達してしまえば、順番待ちの状態であり、いずれ合格される可能性が高いといえます。
合格するために、たんたんと地味に小さな努力を継続していくことにしましょう。
ゴタクはほどほどにし、さっそく本論です。
介護保険法のテキスト作成に時間がかかったのですが、その後は、残っていた白書関係が次々に完成しており、スピーディー化しています(労働関係の白書は、ほぼ終了しました)。近時アップしました白書関係は、のちにご案内します。まずは、国年法の解説の続きです。
〔Ⅰ〕国年法の解説 第3回目
今回は、第1号被保険者の独自給付からです。
〔1〕第1号被保険者の独自給付
独自給付として、付加年金、寡婦年金及び死亡一時金を学習します。
独自給付は、出題が多いです。毎年度、ほぼ必ず択一式で出題されます。
基本的な体系は、今までの基礎年金と同様です。
即ち、「発生(受給権の発生)➡ 変更(受給権の内容の変更)➡消滅(受給権の消滅)」という時系列に沿って、それぞれ要件と効果を整理していきます。
一 付加年金
(一)付加年金
付加年金自体は、そう難しくはないと思います。大まかなイメージは、こちらで見ています。
ところで、給付について簡単に復習するためには、まず、「支給要件」を思い出せるか試して下さい。次に、支給額も思い出してみます。
これらがすぐ浮かんでこない場合は、十分な復習が必要です。
その際、まず、当サイトで「支給要件」がまとめて記載されている個所を確認して下さい(付加年金の場合は、こちらの青の点線枠です)。
その後、細かい内容をチェックするためには、当サイトをスクロールして頂き、赤字と太字だけ追って頂くと、手早くキーワードをチェックすることができます。
あるキーワードに当たった場合、それに関連する知識をいくつか思い出してみて下さい。さっと思い出せれば問題ないです。思い出せないときは、当該個所をじっくりお読み下さい。
また、例えば、【過去問 平成16年問7B(後掲)】/【平成30年問2D(後掲)】といったように過去問の出題歴を記載していますので、このような過去問の出題歴を掲載している前後の文章については少し読んでみて下さい。出題されていたといった記憶がないようなときは、もう少し本文をじっくり読んで頂いたり、出題されている過去問に当たって頂く必要があります。
(二)付加保険料
1 概要
当サイトでは、付加年金の個所で付加保険料についても説明しています(こちら)。
なお、平成28年の改正により「付加保険料の納付等の特例=特定付加保険料の制度」が新設され、これがかなり厄介でした。
しかし、特定付加保険料を納付できるのは平成31年3月31日までだったため、今回からは、基本的には試験対象から外れました(この間、結局、出題されたことはありませんでした。今後、一般常識などで、概要等について問われないとは限りませんが、ほとんどの受験生は学習していないでしょうから、正答できなくても合否には影響しないでしょう。こちら以下で、趣旨程度は記載しています)。
付加保険料も保険料ですので、保険料の体系(こちら以下で見ています。このリンク先の下部に図があります)に沿って整理しています。
付加保険料についても、こちら以下の本文をざっと眺めて頂き、太字と赤字などの色のついた部分をチェックして下さい。
以下、ポイントを見ます。
2 付加保険料を納付できる者
まずは、付加保険料を納付できる者と納付できない者をチェックします。
例えば、保険料の免除を受けている者は、付加保険料を納付することはできません。
国民年金の本来の保険料を納付していないのに、その上乗せ給付に係る付加保険料のみ納付して年金額の上乗せを図ることを認めるというのは妥当といえないということです。
では、産前差後期間の保険料の免除を受けている者は付加保険料を納付することができるでしょうか(つまり、産前産後保険料免除期間についても、付加保険料を納付することができるのかです)。
この点は、通達により、付加保険料を納付することができると通知されています。
産前産後期間の保険料の免除の制度は、少子化対策のために重要な施策であるという位置づけがなされています(だからこそ、第1号被保険者が皆で100円ずつ負担することによって、産前産後保険料免除期間を保険料免除期間ではなく保険料納付済期間としたのです)。
そこで、少子化対策という観点からは、産前産後期間について付加保険料の納付は認められないというマイナスの効果は望ましくないことになります。
もう少し詳しい理由づけは、こちら以下で記載していますが、この時期は、「産前産後保険料免除期間についても付加保険料を納付できる」という結論を押さえることが重要です。知識について、理解だけでなく、記憶として完結させているかを確認して下さい。記憶していないと、試験で点が取れません。逆に、記憶していれば、理解していなくても点を取ることができます。
徐々に、記憶を重視する学習に切り替えていきます(ちなみに、直前期は、覚えている知識を整理するとともに、覚えていない知識は「丸暗記する」・「ひたすら記憶する」という作業の連続になります)。
なお、産前産後保険料免除期間は、保険料の納付をしていませんから、こちらの「付加保険料の納付は、本来の国民年金の保険料の納付が行われた月についてのみ行うことができる」というルールとの関係からも問題となります。
しかし、産前産後保険料免除期間は、保険料納付済期間となりますから、通常の保険料の納付が行われた月と同様に、産前産後保険料免除期間についても付加保険料を納付することができます。
3 付加保険料の納付の中止(辞退)
【平成30年問6E(こちら)】では、「付加保険料を納付する者」でなくなる旨の申出をした場合に、いつから「付加保険料を納付する者」でなくなるのかが問われています。
これは、近時は出題がありませんでしたが、平成10年度の記述式で問われており、当サイトでも詳しく触れていました(こちら)。
このように、「いつから」・「いつまで」が問題となるようなケースは出題対象となることが少なくないです(例えば、保険料の免除期間などでも問題となります)。
次に、寡婦年金です。
二 寡婦年金
寡婦年金は、死亡した夫の国民年金の保険料の掛け捨てを防止するとともに、65歳となって老齢基礎年金の支給を受けられるようになるまでの高齢の寡婦の生活保障を図るものです。
寡婦年金は、前々回(平成29年度)の選択式で、支給要件と効果(広義)について2つの空欄が問われました。今後も、要注意です。
(一)発生
1 支給要件
まず、支給要件が思い出せるか、確認して下さい。こちらの青の点線枠内です。
「死亡に関する給付」ですので、「死亡者(夫)の要件」と「遺族(妻)の要件」に分けます。
要件が沢山ありますが、全部覚えている必要があります。思い出せるかどうか、チェックしてみて下さい。もし覚えていなければ、即時に暗記です。
支給要件において、特に注意すべき点に触れておきます。
(1)夫の保険料納付済期間等
死亡日の前日において、死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が10年以上である夫が死亡したことが必要です。
(ア)受給資格期間の短縮の改正
夫の保険料納付済期間等ですが、平成29年8月1日施行の改正により、老齢基礎年金の受給資格期間と同様に、従来の25年から10年に短縮されたことには注意です。
寡婦年金は、死亡した夫の納付した保険料の掛け捨ての防止を趣旨の一つとしており、夫の保険料納付済期間等(受給資格期間)に応じた額を寡婦に支給するものですので、老齢基礎年金の受給資格期間の短縮と同様に取り扱っています。
なお、上記の「前日」・「前月」ある点にも注意です。記憶や理解があいまいな場合は、こちら以下を一読してみて下さい。
(イ)保険料全額免除期間
なお、この10年以上の期間には、保険料全額免除期間も算入されます。
「死亡一時金や脱退一時金の支給要件における保険料免除期間には、全額免除期間は含まれない」(一部免除期間のみ含まれます)ことと異なり、注意が必要です。
これは、死亡一時金や脱退一時金の場合は、もっぱら保険料の掛け捨ての防止を趣旨としているため、保険料を全く納付していない全額免除期間は支給要件において反映させる必要がないことによります。
他方、寡婦年金の場合は、保険料の掛け捨て防止の他に、高齢の寡婦の保護という趣旨もあり(なぜなら、寡婦年金は、死亡した夫の妻に対して、原則として、60歳から65歳到達月までの間支給されるものだからです)、高齢の寡婦の保護という見地から、全額免除期間についても10年への算入を認めているのでしょう。
(ウ)任意加入被保険者
なお、寡婦年金、死亡一時金及び脱退一時金についての任意加入被保険者の取扱いについては、こちらで暗記して下さい。
(2)給付の受給等の有無
当該夫が、老齢基礎年金の支給を受けていないこと、障害基礎年金等の受給権者であったことがないことが必要です。
条文上は、「ただし、その夫が障害基礎年金の受給権者であったことがあるとき、又は老齢基礎年金の支給を受けていたときは、この限りでない。」と規定されています。
両者の文言の違いから、老齢基礎年金の場合は、その受給権を取得していても、実際に支給を受けていなければ寡婦年金の支給要件を満たし得るのですが、障害基礎年金の場合は、実際に支給を受けていなくても、受給権を取得していれば、寡婦年金の支給対象となりません。
これは、例えば、夫が65歳に達して老齢基礎年金の受給権を取得したところ、老齢基礎年金の支給の繰下げを受けるために裁定請求をしないうちに死亡したようなケースにおいても、「当該夫が老齢基礎年金の支給を受けていない」にあたるとして、妻に寡婦年金の支給を認めようとしたもの、といったイメージで押さえておいて下さい。
(3)妻の年齢要件
寡婦年金の支給要件としては、条文上、妻が夫の死亡当時に65歳未満であればよいことになっています(第49条第1項本文が、「65歳未満の妻があるとき」に寡婦年金が支給されるとしています)。
従って、妻が60歳未満であっても寡婦年金の受給権が発生することには要注意です(第49条第3項参考)。
妻が60歳未満であっても寡婦年金の受給権は発生しますが、寡婦年金の支給は原則として60歳から行われる(60歳到達月の翌月分から支給される)という変則的な形となっています。
2 効果
支給期間については、上記の(3)が関係しますが、こちら以下に注意です。
支給額については、死亡した夫の第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間及び保険料免除期間を基礎として計算した老齢基礎年金の基本年金額の4分の3となります。
※ なお、他に「4分の3」が登場する重要なケースとしては、厚生年金保険において、遺族厚生年金の基本年金額及び遺族厚生年金の加算額である中高齢寡婦加算額があります。
いずれも「死亡」の関係で登場します。
(二)変更
1 支給停止
寡婦年金は、当該夫の死亡について労働基準法の規定による遺族補償が行われるべきものであるときは、死亡日から6年間、その支給が停止されます。
わりと忘れやすい個所かと思われるのですが、【平成30年問6B】で出題されました。
2 併給の調整
寡婦年金と他の給付の併給関係は、重要です。こちら以下をチェックして下さい。
(三)消滅
寡婦年金の失権事由が思い出せるか、確認してみて下さい。こちら以下です。
三 死亡一時金
次に、死亡一時金です。
1 支給要件
ここでも、まずは、支給要件を思い出せるか確認して下さい(こちら以下)。
「死亡者の要件」のポイントとしては、保険料の掛け捨て防止の趣旨より、①36月以上の期間について全額免除期間は含められないこと、②当該死亡者が老齢基礎年金及び障害基礎年金の支給を受けたことがないことが必要であることがポイントです。
②については、こちらの横断整理の表をご参照下さい。直近の【平成30年問10B(こちら)】では、脱退一時金について出題されています。
「遺族の要件」のポイントとしては、当該死亡により、遺族基礎年金の支給を受けられる者がある場合は、死亡一時金は支給されないこと、事実上、遺族基礎年金の支給を受けられる者がない場合は支給されることです。
後者については、こちら以下の「2 例外」の3つのパターンがあります。
2 支給額
支給額については、当サイトのゴロでも利用して覚えて下さい。
加算額(付加保険料に係る保険料納付済期間が3年以上である者が死亡した場合は、8,500円増し)も記憶が必要であり、これもゴロに入っています。
以上、独自給付でした。
〔2〕その他の給付(法附則上の給付)➡ 脱退一時金
その他の給付については、脱退一時金が重要です(こちら以下)。厚年法の脱退一時金(厚年法のこちら以下)と比較しながら学習を進めてみて下さい。
1 支給要件
脱退一時金の支給要件は、こちら以下です。
ここでも、長々と支給要件がありますが、忘れやすい場合は、当サイトのように、一括してゴロでも作って記憶してみて下さい。
2 支給額
脱退一時金の支給額は、納付した保険料額の半分が支給される(戻される)という考え方に基づいています(こちら以下)。
次は、給付の通則です。
〔3〕給付の通則(その2)
給付の通則については、労災保険法等、これまでの保険法の中で学習しました事項と重なるものが多いため、労災保険法等で学習した知識を利用します。
以下、年金法に特有の部分を中心に見ます。
なお、この給付の通則においては、条文もチェックして下さい。選択式で出題される可能性があります。
一 受給権者の申出による支給停止
受給権者の申出による支給停止の問題として、「併給の調整の場合の取扱い」(こちら以下)がありますが、これは、他の法の制度との関係が問題となりますので、総合問題です。最近では、【平成29年問8A(こちら)】で出題されています。
前記の「併給の調整の場合の取扱い」のリンク先では、厚年法や健保法の制度についてリンクしてありますので、リンク先の知識も思い出して下さい。
二 未支給給付
以下、未支給給付の注意ポイントを箇条書きしていきます。
・未支給給付(こちら以下)の要件については、遺族の要件(請求権者)について、労災保険法等の未支給給付の場合と異なり、「これらの者以外の3親等内の親族」が追加されていることに注意です。
・遺族基礎年金や遺族厚生年金の未支給給付では、「遺族基礎(厚生)年金の受給権者が死亡した場合の子の取扱い」という問題があります(こちら以下)。
まずは具体例を思い出して頂き、その後、要件に結びつけるとわかりやすいと思います。
・未支給給付の支給を受ける場合は、裁定が必要と解されていることに注意です(こちら以下)。
・未支給未支給給付の消滅時効の起算点については、実務上、「死亡者(受給権者)の給付の支払期月の翌月の初日」と解されています。
これまでは、明文がなく、根拠がはっきりしなかったのですが、民法改正に関連して、国年法等における支分権の消滅時効の起算点が「支払期月の翌月の初日」と明記されます(今回の試験対象ではなく、来年4月1日の施行です)。
これにより、未支給給付(これも支分権です)の消滅時効の起算点についても、根拠が明確化することになります。
三 内払・充当
内払・充当 の基本的な考え方は、労災保険法と同様です。
内払の場合は、やや複雑ですが、こちら以下の通り、一定のパターンになっていますので、具体例を念頭にパターンを覚えて下さい。
充当の場合は、➀年金給付の受給権者が死亡したこと、②その遺族が遺族基礎年金の受給権を有することが要件です。
四 併給の調整
年金法における難所の一つが、併給の調整です(こちら以下)。
当サイトでは、厚年法が関係する併給の調整についても、可能な限り、この国年法で紹介しています。
サイト上でも紹介していますが、【補説1】~【補説4】の部分は、厚年法の知識がないと、理解できない個所です。厚年法の知識も併せて確認してみて下さい。
併給の調整については、こちらの図に関する知識は多くの受験者もマスターしていますから、まずは、ここの部分は落とさないようにします。
その他に、旧法(こちら以下)や共済年金が絡んできますと、かなりややこしいのですが、ここら辺は、あまり深入りせずに、わかりやすい知識だけ記憶しておき、複雑な個所はスルーしておくことがよさそうです(被用者年金一元化法による改正後は、ここら辺の出題がなくなっています)。
前記の基本図を押さえましたら、こちら以下で掲載しています過去問をチェックして頂き、過去問から、リンクされた本文の該当個所に戻ってその関連部分をざっと読んで頂くとよいです。
なお、【補説4】の厚年法の「2以上期間者に関する併給の調整」の問題(こちら)は、厚年法で改めて学習した方が分かりやすいかと思いますので、ここでは、余り深入りしないで結構です。
なお、併給の調整の条文(国年法第20条、厚年法第38条)は、あまり細かくチェックする必要はありません(サイトでは、念のため、詳しく解説していますが)。
五 給付制限
給付制限については、こちらの表と条文を中心に学習してみて下さい。
平成26年度の選択式で、第70条から2つの空欄が出題されていますように、条文のチェックが必要です。
六 不正利得の徴収
国年法では、不正受給罪が規定されていることに要注意です(他の法では、基本的には、不正受給罪は規定されていません。こちらの表を参考)。
即ち、偽りその他不正の手段により給付を受けた者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます(第111条)。「3年以下の懲役又は100万円以下の罰金」という点も、暗記して下さい。
七 第三者行為災害
第三者行為災害(こちら以下)の「先に政府が給付を行った場合」(代位取得・求償の問題)と「先に第3者が損害賠償を行った場合」(免責・控除の問題)の基本的な考え方は、労災保険法の場合と同様です。
なお、免責(控除)について、給付の返還請求権の消滅時効の起算点に関する運用が改正されました(厚年法の場合も、同様に改正されています)。
受給権者が第三者から損害賠償を受けた場合に、すでに給付を行った政府が受給権者に対して返還請求をする際の消滅時効の起算点は、「損害賠償を受けた日の翌日」に改められたという結論を記憶しておけば足りるでしょう(従来は、「損害賠償を受けたことを知った日(損害賠償の受領日が分かる書類等を受け付けた日等)の翌日」とされていました )。
細かく学習しますと、こちら以下のように大変なことになりますので、上記の結論だけ把握しておいて下さい。
以上、保険給付でした。
〔4〕その他の事業
その他の事業(こちら以下)については、時々、選択式で出題されます。
国年法では平成23年度に、厚年法では平成28年度に出題されています。厚年法では、当分、選択式の出題はないでしょうが、国年法の場合は微妙です。
いずれにしましても、上記リンク先で掲載していますゴロ合わせを覚えておけば足りるでしょう。
では、次回は、国年法の最終回として、費用以下を見ます。
〔Ⅱ〕白書対策講座等
次に、近時アップしました白書対策講座や労働一般の関係について、お知らせします。
以下に掲載しましたものをアップしました。
1 女性活躍推進法
女性活躍推進法については、間もなく改正法が成立します。この改正法は、もちろん、今回の試験対象ではありませんが、改正される個所が狙われることがあり、改正法の概要について記載しておきました(労働一般のこちら)。
特に次の点をチェックです。
➀一般事業主行動計画の策定義務の対象が、現在の常用労働者301人以上から101人以上の事業主に拡大されます。
従って、現行の301人という数字を覚えます。
つまり、常時雇用する労働者の数が300人を超えるもの〔=301人以上のもの〕は、事業主行動計画策定指針に即して、一般事業主行動計画(一般事業主が実施する女性の職業生活における活躍の推進に関する取組に関する計画)を定め、厚生労働大臣に届け出なければなりません。
前回平成30年度の労働一般の試験では、選択式において、「次世代育成支援対策推進法」(以下、「次世代法」といいます)の「101人」が狙われ、また、択一式(【問4C】では、「過労死等防止対策推進法」における「100人を超える」という誤りの設問が出題されました。
前者の「次世代法」の101人は、平成26年度の労働一般の選択式でも出題されていました。
当サイトの昨年度の白書対策講座においても、「平成29年厚生労働白書」の中で、女性活躍推進法と次世代法を比較する形で、解説の中で数字や平成26年度の選択式を取り上げていましたので(白書対策講座のこちら)、出題対象の射程に入っていました。
このような事情もあり、一応、女性活躍推進法の「301人」もチェックしておきます。
②その他の改正として、認定制度について、新たに「プラチナえるぼし」が新設されます。
現在の「えるぼし」認定について、一応、チェックしておいて下さい(こちら)。
以下、4までは「白書対策講座」です。
2 毎月勤労統計調査
おなじみの不正統計です。多分、データー自体からは、出題されないと思います。
出題されるとしたら、こちらの常用労働者の定義が変わったことあたりかもしれません(この変更は、前回の試験対象でした)。
賃金構造基本統計調査の方でも、同じく変更されており、こちらでやや詳しく掲載しています。
ざっと眺めておいて下さい。
※ 追記:
本日付けの報道によりますと、毎月勤労統計について、また何かやらかしていたそうです。さらに追加給付が必要となるような重大なミスではないようですが、毎月勤労統計からは一層出題しにくくなったとはいえます。
3 賃金構造基本統計調査
賃金構造基本統計調査の方も、不正がありましたが、上記2よりはましです。
こちらのポイント程度を見ておかれるとよいでしょう(もちろん、余裕のある方は、一応、全体に目を通して下さい。ここでは、設問化はしていませんが、過去問は現在のデーターに補正して掲載しています)。
4 労働経済白書
労働経済白書は、第Ⅱ部の第1章までアップしていましたが、今回は、残り全部(第Ⅱ部の第2章~第4章)をアップします。
目次のこちらの下部に【以下NEW】と記載しており、この「第2章 働き方や企業を取り巻く環境変化に応じた人材育成の課題について」以降が、今回、アップした個所です。
今回の労働経済白書は、前回の平成29年版より130ページほど増えており、全体で300頁を超えているため、非常にボリュームがあります。
当サイトでも、昨年の12月からアップを開始したのですが、全体の完成まで5箇月もかかりました(もっとも、他の科目の改訂の合間に作っていましたので、そう時間をかけていたわけではありませんが)。
設問形式になっていますので、いきなり文字ばかり読むタイプの白書対策よりは、とっつきやすいと思います。
設問は、正解する必要は全くなく、設問を手掛かりに記憶に留めて頂くことが狙いです。スキマ時間などにご利用下さい。
今回は、厚生労働白書の最新版が出題される可能性はなくなりましたので、労働経済白書は、少し注意しておかれると安心です。
5 過労死防止対策推進法
過労死防止対策推進法(こちら以下。労働一般のパスワード)については、「過労死等防止対策白書」(目次は、こちら)を最新版にしました。この白書以外は、これまでと変わりません(「大綱」は、最新のものに変えていますが、すでにアップしていました)。
前回の労働一般の択一式問1では、「労働災害発生状況の分析等」から出題されていましたし、前述の通り、【問4C】において「過労死等防止対策推進法」が出題されました。
引き続き、労働災害や過労死等はマークしておく必要があり、「過労死等防止対策白書」も目を通しておかれると安心です。
当サイトでは、ここでも設問から始める形式を採っています。
ちなみに、「過労死等防止対策白書」も、本来は、非常にボリュームがあるのですが、出題対象となりそうな個所は、それほど多くなく、労働経済白書のようには膨大な白書対策策講座にはなりません。
6 外国人雇用状況の届出状況
今回から、白書対策講座に「外国人雇用状況の届出状況」を追加しました(こちら以下)。
平成29年度の選択式で出題されていますが、根拠法が雇用対策法から労働施策総合推進法に改正されたこと、外国人の在留資格として特定技能が新設されたこともあって、一応注意です。
なお、根拠法である労働施策総合推進法中のこちらのページも併せてチェックして下さい(「外国人雇用管理指針」の改正を追記しています)。
7 障害者雇用状況の集計結果
民間企業における「障害者雇用状況の集計結果」は、先月の9日に公表されましたから、直近のデーターです(白書対策講座のこちら以下(このリンク先の次のページです))。
今回は、障害者雇用関係は、注意が必要です。
「障害者雇用促進法」及び「障害者雇用状況の集計結果」からは、平成25年度の選択式で出題されています(こちら)。
このときは、法定雇用率が平成25年4月1日施行の改正により改められた直後の出題でした。
今回は、平成30年4月1日施行の改正により改められ、前回の平成30年度の試験対象に入りましたが、出題されませんでした(障害者雇用促進法自体も出題されていません)。
加えて、国の機関等における障害者雇用数の水増し問題もあります。
従って、今回は、注意しておいた方が良いでしょう。
特に注意すべき数字・傾向は、次の点です。
➀民間企業における障害者の実雇用率は、2.05%です。実雇用率が初めて2%を超えました。ただし、法定雇用率(2.2%)は超えていません。
②法定雇用率を達成している企業は、50%弱です(50%を超えていません。正確には、45.9%です)。
今回は、法定雇用率達成企業の割合について、全ての規模の区分で前年より減少しました。
例えば、「1,000人以上」の規模企業では、平成29年が62.0%だったのが、今回の平成30年は47.8%と大幅に減少しています。
これは、平成30年4月施行の法定雇用率の引上げの改正によって、引き上げられた法定雇用率を達成できなかった企業が増加したということになります。
なお、法定雇用率達成企業の割合が50%を超えている規模区分は、「100~300人未満」規模の企業だけであることも押さえて下さい(例年は、「1000人以上」規模の企業だけなのですが、今回は、法定雇用率の引き上げの影響があるようです)。
③今回も、民間企業における障害者の雇用者のうち、精神障害者の伸び率が最も大きく、前年度比34.7%増と大幅に伸びています(前回も、対前年比19.1%の伸びでしたが、さらにアップしています)。
今回は、以上です。
次回は、国年法の解説の最終回です。
なお、直前対策講座作成の下準備をしており、まずは、今回の改正事項の全般を整理中です(やはり、労基法と安衛法がすごいことになっています。細かな知識より、改正された基本的な知識を確実に記憶する方が優先といえます)。
また、近日、社会保障関係のデーターを作成します。
では、また次回です。
令和元年5月14日(火曜)
さて、大連休の中、レイワになったり慌ただしかったですが、学習の進捗状況はいかかでしょうか。
過ぎ去ったことは忘れ、この後も引き続きマイペースで学習を継続していきましょう。
当方は、この間、介護保険法のテキスト作成にかかりっきりでした。ようやく、数日前に完成し、介護保険法の冒頭の体系あたりの3頁分は、連休に間に合うように、連休前に公開していました。後ほど、若干、ご利用方法を説明致します。
では、今回は、国年法の続きの老齢基礎年金の解説からです。とりわけ長文となっており、恐縮です〔ここでは、一部、省略します〕。
〔Ⅰ〕国年法の解説 第2回目
〔1〕老齢基礎年金
老齢基礎年金以降の給付の問題については、こちらの図の体系により見ていきます。厚生年金保険の保険給付についても、同様です。
老齢基礎年金の体系は、こちらの図の通りです。
(Ⅰ)発生
一 支給要件
(一)支給要件
老齢基礎年金の支給要件は、次の3つです(こちら以下)。
①保険料納付済期間又は保険料免除期間(学生納付特例及び納付猶予に係る保険料免除期間は除きます)を有すること。
②65歳に達したこと = 支給開始年齢。
③10年以上の受給資格期間を満たすこと。
(二)受給資格期間
上記③の受給資格期間は、平成29年8月1日施行の改正により、従来の25年から短縮されました。
この受給資格期間の10年への短縮が適用されるものと適用されないものについて、押さえます(こちら以下)。
この改正事項は、前回(平成30年度)の試験から出題対象となり、遺族基礎年金の長期要件について、【平成30年問8A(こちら)】で出題されています。
今後も、遺族基礎(厚生)年金の長期要件については、受給資格期間の短縮との関係が出題されるでしょう。
その際、受給資格期間の短縮特例にも注意です。
老齢基礎(厚生)年金の場合は、前記の③について、「受給資格期間の短縮特例」はほぼ問題とならなくなりました。試験対策上は、主に遺族基礎(厚生)年金との関係で、短縮特例を押さえておきます。
もっとも、振替加算(における加給年金額の要件)においても受給資格期間の短縮特例が問題になりますので、当サイトでは、一応、老齢基礎年金の中でこの短縮特例を説明しています(遺族基礎年金の個所でも掲載しています)。
(三)保険料納付済期間、保険料免除期間
上記の支給要件の①や③において、保険料納付済期間や保険料免除期間が問題となります。
特に、保険料納付済期間は重要です(こちら以下)。要点は、こちらの図です。
なお、平成31年4月1日施行の改正(平成28年のいわゆる持続可能性向上法(【平成28.12.26法律第114号】)による改正です)により、第1号被保険者の産前産後期間の保険料の免除の制度(第88条の2)が新設されたことに伴い、産前産後の保険料の免除に係る期間(産前産後保険料免除期間)も保険料納付済期間に算入されることになりました。
この産前産後期間の保険料の免除は、今回の試験では、出題必至といえます。こちら以下で記載しています。いろいろな論点が問題となりますので、少々レベルが高いのですが、このページの知識は最終的には十分チェックして下さい。
なお、保険料免除期間のこちらのページで、大まかですが、保険料の免除の全体像についても説明しています。
(四)合算対象期間
上記支給要件の③では、合算対象期間が問題となります(こちら以下)。
合算対象期間は、細かい知識が多く、学習しにくい個所ですが、出題も多いです。
こちらの図のように、時系列としては、「昭和36年4月1日」と「昭和61年4月1日」の2つの時点で区別し、内容としては、被用者年金制度の加入期間かどうかにより区別して、大きな枠組みをつかんで下さい。
本番まであまり時間が多くはありませんから、これからの学習では、合格に直結した学習が重要です。まだカバーしていない科目等がある方は、残っている部分を早めに仕上げて頂く必要がありますが、それとともに、これまで学習した事項のチェックが必要です。1日10分程度でも、これまでの科目についての復習時間を設けて下さい。どの程度記憶できているかを確認します。これからは、正確な記憶を心掛けて頂く必要があります。曖昧な記憶ですと、なかなか試験で得点することが難しいです。
合算対象期間についても、当サイトの記載等を参考に、さしあたりの理解はしつつも、数字関係等を記憶することにウェイトを置いて下さい。
テキスト等の読み込みも、今後は、選択式を意識して、キーワードに敏感に反応すること、数字関係で出題されやすそうな個所を記憶すること(数字の裸の丸暗記は、もっと直前になってからの方が良いです。今のうちは、可能なら、ゴロ合わせを作って覚えて下さい)がポイントです。
二 効果(広義)
老齢基礎年金の効果(広義)の問題として、受給権の発生、年金額、支給期間等が問題となります。ここでは、年金額について触れておきます。
(一)基本年金額
一般に、年金額は、基本年金額と加算額に区別できます(ちなみに、基本年金額という用法は、旧法(昭和60年改正前)の厚生年金保険法で用いられていたものです。例えば、旧厚年法の第43条第1項では、「老齢年金の額は、基本年金額に加給年金額を加算した額とする。」と規定され、基本年金額については、別途(第34条)、定義されていました。現在も、このように基本年金額という表現を使用するのが便利なのですが、現行法の条文上はこのような表現はなくなりました)。
基本年金額は、こちらの図のようになります。
より細かくは、基本年金額は、「平成21年3月以前の期間」に係る保険料免除期間か、「平成21年4月以後の期間」に係る保険料免除期間かによって異なり、また、「保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した月数」が480月(又は加入可能月数)を超えた場合の保険料免除期間かどうかによっても異なります。
詳しくは、こちら以下で説明しています。かなり細かく、また、ややこしいのですが、一度、眼を通して頂くと、全体的な仕組みはイメージして頂けるのではないかと思います。
そして、学習の目標は、【択一式 平成27年問10(こちら)】のような問題を、なんとか解ける程度に理解することにおきます。
あまり複雑な事例に取り組む必要はなく、この過去問のように、そこそこシンプルなケースを解ける程度で大丈夫だと思います。
(二)振替加算
老齢基礎年金の加算額として、振替加算が問題となります(こちら以下)。
直近の平成30年度の試験では、択一式で4肢出題されています(内3肢は、やさしめの内容でした)。
振替加算は、非常に複雑ですので(要件の主要パターンだけでも、4つあります)、試験対策上は、あまり深く追求せずに、典型的なパターンのイメージを持ったうえで、基本的な知識を確実に記憶するくらいの心づもりが良いと思います。
他の受験生が記憶していそうな個所を押さえるという守りの学習で十分であり、選択式で出題された場合に大きなミスをしないようにキーワードや数字関係を把握すれば足ります。
振替加算や加給年金額があまり得意でない方は、さしあたり、当サイトのそれらの個所を読んでみて下さい。そして、振替加算の最後のこちらで過去問を掲載していますので、理解度をチェックしてみて下さい。
(三)給付の通則(その1)
この老齢基礎年金の効果の個所で、よく問題となる「支給期間」等について見ておきます。給付の通則の体系は、こちらです。
1 端数処理
端数処理については、平成27年10月1日施行の被用者年金一元化法による改正により改められており、直後の平成28年度の択一式で2肢出題されました。その後は、鳴りを潜めていますが、厚年法も含め、出題しやすい個所ですので、チェックが必要です。
「裁定・額の改定における端数処理」(第17条第1項)については、サイトで掲載しているような目安によって覚えて下さい。
結論的には、厚年法のこちら以下の表で整理しています。
2 支給期間、支給停止期間、支払期月
支給期間、支給停止期間及び支払期月(こちら以下)については、年金法の中では数少ない単純知識の個所ですので、確実に記憶して下さい。
3 裁定
裁定(こちら以下)については、理屈は難しいのですが、あまり出題がありません(直近では、【過去問 平成22年問8E】です)。
三 老齢基礎年金の支給の繰上げ、支給の繰下げ
次に、支給の繰上げと繰下げです。ここも、ヘビーな個所です。
(一)支給の繰上げ
老齢基礎年金の支給の繰上げについては、支給の「全部繰上げ」と「一部繰上げ」の2種類がありますが、後者は、主に厚年法で学習し、ここでは、「全部繰上げ」について説明します。
1 支給要件
老齢基礎年金の(全部の)支給繰上げの要件は、こちらの通りです。
任意加入被保険者が老齢基礎年金の支給繰上げは請求できないことは、必須知識です。
2 効果
(1)基本年金額
老齢基礎年金の支給繰上げによる基本年金額は、昭和16年4月2日以後に生まれた者かどうかにより異なりますが、 昭和16年4月2日以後に生まれた者については、こちらの図の通りです。繰上げ1月当たり、0.5%の減額となります。
(2)その他の効果
支給の繰上げのその他の効果については、全体像はこちらの通りです。
ここは出題が多く、十分なチェックが必要です。直近では、平成29年度の試験で3肢出題されています。
内容的には、それほど難しくはありませんので、一つ一つの論点をつぶしていきます。
(二)支給の繰下げ
1 支給要件
支給の繰下げの支給要件は、こちらです。
特にポイントとなる点は、次の2つです。
➀66歳に達する前に老齢基礎年金を請求していなかったこと。
なお、65歳到達日後に老齢基礎年金の受給資格期間を満たして受給権を取得した場合には、「当該受給権を取得した日から起算して1年を経過した日(以下、「1年を経過した日」ということがあります)前に、老齢基礎年金を請求していなかったこと」に代わります。以下では、この65歳到達日後に受給権を取得した場合については、かっこ書で記載します。
ちなみに、65歳到達日後に老齢基礎年金の受給権を取得した場合の支給の繰下げの可否については、【平成30年問4C】で出題されています。
②65歳に達したとき、又は65歳に達した日から66歳に達した日までの間(受給権を取得したとき、又は受給権取得日から起算して1年を経過した日までの間)において、「他の年金たる給付」の受給権を有しないこと。
この「他の年金たる給付」とは、次の(a)又は(b)の年金たる給付です。
(a)付加年金を除く国民年金の他の年金給付(即ち、「老齢基礎年金及び付加年金」以外の国民年金の年金給付(=障害基礎年金、遺族基礎年金(旧法上の年金給付も含みます))。
(b)老齢を支給事由とするものを除く厚生年金保険法による年金たる保険給付(即ち、老齢年金給付以外の厚生年金保険法による年金たる保険給付(旧法上の年金たる保険給付も含みます))。
要するに、65歳から66歳までの間に(より一般化して表現しますと、受給権取得日から、受給権取得日から起算して1年を経過した日までの間に)、老齢年金給付(付加年金も含みます)以外の年金給付(=これが「他の年金たる給付」です)の受給権を有していないことが必要となります(その理由については、本文で記載しています)。
2 効果
支給繰下げの効果としては、「支給の繰下げの申出日と支給の開始」の問題と「支給額(増額率)」の問題が重要です。
「支給の繰下げの申出日と支給の開始」については、結論をこちらで記載しています。少々ややこしいです。
〔以下、中略〕
以上、老齢基礎年金の「発生」に関する問題でした。
(Ⅱ)変更
老齢基礎年金の変更については、年金額の改定(改定率)の問題があります(こちら以下)。
1 改正
平成30年4月1日施行の改正により、マクロ経済スライドにキャリーオーバーの制度が追加されました。
昨年度の直前対策講座や更新メールにおいて、キャリーオーバーの制度は、内容が難しいため、どのように出題されるか悩ましい(条文からそのままの出題や社会一般の択一式からの出題もある)旨を記載していたのですが、社会一般から概要的な出題がされました(【社会一般 平成30年問10C(こちら)】)。
対応しやすい内容だったと思います。
今回は、マクロ経済スライドが実施され(平成16年の改正による同制度の創設後、2回目の実施です)、かつ、キャリーオーバーが適用されましたから、ここら辺は、選択式も視野に入れて最大級の警戒が必要です(もともと、年金額の改定の関係は、選択式における出題が多いです)。
さしあたり、こちら以下で概要を把握して頂き、その後、第27条の4及び第27条の5の条文中の赤字になっているキーワードを押さえて下さい。
「名目手取り賃金変動率」、「物価変動率」、「調整率」といった従来からのキーワード共に、新設された「特別調整率」(「基準年度以後特別調整率」)を押さえます。
細かな計算式などの技術的な要素は出題できませんから、上記のキーワードを押さえ、かつ、こちら以下の数字関係を押さえておきます。
次の数字関係がポイントです。
➀調整率 = ▲0.2%(= 0.998)
②(基準年度以後)特別調整率(前年度までのマクロ経済スライドの未調整分であり、今回、キャリーオーバーされた分です)= ▲0.3%(= 0.997)
③改定率=0.999
改定率は、具体的には、「前年度の改定率(▲0.2%(=0.998))」×「名目手取り賃金変動率を基準として算定した率 0.1%(1.001)=算出率」ですが、ここは覚える必要はないでしょう。
直前期には、上記の数字を丸暗記して下さい。
続いて、障害基礎年金です。
〔2〕障害基礎年金
障害基礎年金の概要については、こちらのページで記載しています。
障害基礎年金は、意外に、引っかかることがあります(細かく学習しますと、例えば、複数の給付間の関係といった難しい問題が浮上してきます)。
しかし、そのような問題は、試験対策上は無用です。シンプルに出題されやすい個所を押さえます。
(Ⅰ)概要
障害基礎年金も遺族基礎年金も、老齢基礎年金と同様に、時系列に沿って、「発生 ➡ 変更 ➡消滅」という視点から大きく俯瞰しますとわかりやすいです。老齢基礎年金と比べ、「変更」や「消滅」に関する問題が多くなります。
障害基礎年金の場合は、「発生」に関するフレームの中で、「本来の障害基礎年金」と「特殊な障害基礎年金」に大別して整理しています。
後者の「特殊な障害基礎年金」は、「事後重症」による障害基礎年金、「基準障害」による障害基礎年金及び「20歳前傷病による障害基礎年金」が典型ですが、広くは、「併合認定」や「その他障害」による年金額の改定の問題なども含まれます。
(Ⅱ)発生
一 支給要件
支給要件については、「初診日の要件」、「障害認定日の要件」及び「保険料納付要件」という「3つの支給要件」がポイントになります。
こちらの青の点線枠内の「3つの支給要件」に関する知識が不可欠です。ここの部分は、十分な理解も必要です。例えば、「保険料納付済期間」のイメージが瞬時に思い浮かびませんと、短時間に事例問題に対応することできません。
年金法は、あまり細部を追求しない方が良いのですが、この「保険料納付済期間」や「保険料免除期間」といった様々な制度の土台となるような知識については、十分な理解と記憶が不可欠です。
ひところ、国年法の択一式の出題では、終わりの方の3問くらいで、長文の事例問題が出題されることがあり(ここ2年ばかりは、このような出題傾向はやや緩和されてきました)、その際に、遺族基礎年金も含めて、保険料納付要件についての出題が見かけられました。
これらの事例問題についても、「保険料納付済期間」といった基本的な概念を理解・記憶しているかがポイントとなる例が少なくなかったです。
特殊な障害基礎年金については、「事後重症」、「基準障害」、「20歳前傷病」のそれぞれの障害基礎年金の支給要件を確認して下さい。その際、前記の「本来の障害基礎年金」の支給要件との違いに焦点を当てることがポイントです。即ち、特殊な障害基礎年金では、「3つの支給要件」が修正されますので、どこが修正されるのかをチェックしてみて下さい。
二 効果(広義)
支給額については、基本年金額と子の加算額が問題となります。
子の加算額については、加算の要件について、「生計維持」の要件(年収850万円未満等)を押さえます(こちら)。
生計維持の要件については、年金法の様々な個所で登場してきますが、基本的な考え方は、「子の加算額」で記載しています内容と同様です。
子の加算額の「変更」に関する問題ですが、減額改定はややこしいので、少々注意です(こちら以下)。
理解自体についてはそれほど問題ないと思うのですが、記憶が結構大変です。当サイトのように、ゴロ合わせにより記憶すべき事項を記憶してしまうことことが得点力につながります。
遺族基礎年金の「配偶者が支給を受ける場合における子の加算額に係る年金額の(減額)改定」や「失権」の問題についても同様であり、覚えにくいような個所や混乱しそうな個所は、記憶方法を検討してみて下さい。先ほども触れましたが、この時期は、まだ丸暗記ではなく、ゴロ合わせを作る時間的余裕はあると思います。
(Ⅲ)変更
障害基礎年金の変更については、併合認定、年金額の改定及び支給停止といった問題があります。
1 併合認定
旧法の障害年金と障害基礎年金の併合認定(こちら)は、かなり厄介です。
しかし、難しい問題は出題されていませんので、過去に出題された問題を押さえておく程度とし、余り深入りしない方が良いです。
2 支給停止
支給停止のうち、「20歳前傷病による障害基礎年金に特有の支給停止事由」(こちら)は出題が多く、力を入れて学習して下さい。
この支給停止事由のうち、「受給権者の前年の所得が政令で定める額を超えるとき」というのがあります(こちら以下)。
従来は、これについて、細かい金額などが出題されることはなかったのですが、【平成30年問4E(こちら)】では出題されました。
ゴロ合わせを追加しておきましたので、ご参照下さい。
(Ⅳ)消滅
「障害等級の3級に該当しなくなった場合」の失権事由については、65歳到達時又は当該障害等級に該当しなくなった日から起算して3年経過時の「いずれか遅い方に失権する」ことがポイントです。
以上、障害基礎年金の概要でした。
〔3〕遺族基礎年金
遺族基礎年金の概要は、こちらのページです。
遺族基礎年金も、覚えることは多いです。近時は、支給停止に関する出題が多く、やや複雑です。
遺族基礎年金の場合も、まずは、支給要件の把握が重要です。
(Ⅰ)発生
一 支給要件
支給要件は、こちらの青枠内でまとめています。
大きく、「死亡者の要件」と「遺族の要件」に分かれます。労災保険法の遺族(補償)給付等と同様であり、厚年法の遺族厚生年金等でも同様です。
遺族基礎年金の場合は、「遺族の要件」として、「一定の子を有する配偶者」又は「子」のみが問題となることが特徴です。
「死亡者の要件」のうち、「長期要件」については注意です。
長期要件とは、一定期間の受給資格期間を満たす者が死亡した場合であり、具体的には、25年(原則)以上の受給資格期間を満たしている者が死亡した場合です。
老齢基礎年金等の受給資格期間は10年に短縮されましたが、遺族基礎年金(遺族厚生年金)の長期要件については、従来通り、25年(原則)の受給資格期間を満たすことが必要であり、10年に短縮されていません。
受給資格期間の短縮特例は、この遺族基礎年金(遺族厚生年金)において出題されることになります。
前述のように、遺族基礎年金における長期要件に関する改正事項は、【平成30年問8A】で出題されました。
他方、遺族の要件については、遺族基礎年金の場合、配偶者と子しか問題になりませんので、割とシンプルです。所定の子がいなければ、配偶者は遺族基礎年金を受給できないことが特徴です。
注意点は、配偶者と子は、ともに受給権者となりえ、同順位となること、ただし、支給停止の問題があり、両者がともに受給権者であるときは、原則として、配偶者に支給され、子は支給停止となることです。
二 効果
支給額については、「配偶者が支給を受ける場合」(配偶者に支給する場合)と「子が支給を受ける場合」(子に支給する場合)を分ける必要があります。
前者の「配偶者が支給を受ける場合における子の加算額に係る年金額の減額改定」の問題(こちら)はややこしいのですが、「失権」の知識をリンクさせて学習して下さい。当サイトでは、失権事由から記憶を喚起する方法を採っています。
(Ⅱ)変更
変更については、前述の年金額の改定の問題のほかに、支給停止の問題が重要です(こちら以下)。
支給停止事由のうち、特に、「配偶者が受給権を有する場合、又は生計同一の父若しくは母がある場合」の子の支給停止を十分理解・記憶しておきます。
直近の平成30年度の試験では、支給停止の関係が【平成30年問8B】以下、4肢出題されています(こちら)。【平成30年問8D(こちら)】のように、遺族厚生年金も絡んできますと、少々ややこしくなります。遺族厚生年金の支給停止の知識についても十分チェックして下さい。
これらの支給停止に関する問題は、基本的には、支給停止事由をしっかり記憶しておけば対応できます。この種の問題が苦手な方は、遺族基礎年金と遺族厚生年金の支給停止事由を記憶しているか、確認して下さい。そのうえで、過去問を再チェックして、出題されやすいパターンを押さえておけば大丈夫です。
(Ⅲ)消滅
失権事由については、当サイトのようなゴロ合わせでも利用して覚えて下さい。先ほどの「配偶者が支給を受ける場合における子の加算額に係る年金額の減額改定」事由も覚えられる仕組みになっています。
以上、遺族基礎年金まで終わります。次回は、第1号被保険者の独自給付からです。
〔2〕介護保険法のテキスト
冒頭で触れましたが、やっと介護保険法のテキストが完成しました(こちら)。
以下、ご使用の目安