更新等のお知らせ 2019年度(最新版)

平成30年12月29日(土曜)

昨日(12月28日)は、「同一労働同一賃金指針」など、大量の改正事項が官報に掲載されてしまいました。

ただ、ご安心下さい。その多くは、来年の試験には関係しません(再来年の試験に関係します)。

もっとも、将来の改正事項であっても、来年の試験対策の研究上、当方は、分析する必要があります。

若干、来年の試験に関係する改正事項があり、厚年法の70歳以上被用者届の省略に関する改正と労働施策総合推進法(旧雇用対策法)に基づく労働施策基本方針の策定です。

また、働き方改革関連法による改正事項である36協定と使用者の年休の時季指定義務に関するリーフレットが公開されました。

これらについては、のちに少しご紹介します。

 

【追記】

 

年明け後に公表されたのですが、12月28日付で、働き方改革関連法による労基法や安衛法の改正に関する通達(Q&A)が発出されました。これは、ボリュームがありますが、目を通して頂く必要があります。

1月10日現在、労基法(フレックスタイム制、36協定、使用者の時季指定義務等)については、サイト中に反映させました。安衛法も、間もなく作業が終わります。

次回のメールにて、ご紹介します。

 

なお、この12月29日付けの更新メールの際は、国年法は、「基準障害による障害基礎年金」まで改訂が終了した旨をお伝えしました。

その後、1月10日時点では、給付は終了し、費用の保険料の免除に入っています。今月中に厚年法に入ります。

 

では、今回から、雇用保険法の解説です。

 

 

〔Ⅰ〕雇用保険法の解説 初回

 

雇用保険法のポイント解説です。本日は、基本手当に入る手前までです。

 

初めに、雇用保険法では、行政手引(業務取扱要領)という内部的な事務手続を定めたものから出題されることが少なくありません(雇用保険法の「目次」の一番下にリンクがあるこちらが行政手引です。改正等がありますと、不定期に更新され、現在は、10月1日以降のものが最新です。次回は、おそらく4月1日以降のバージョンに改められるものと思います)。

 

本試験では行政手引からの出題は多く、行政手引は重要です。

しかし、この手引きでは、実務上の処理に関する記載も多く(全体の半分以上がそのような内容です)、行政手引を冒頭から逐一読んでいくような方法は、効率が悪すぎます。

当サイトでは、最新の行政手引を細かくチェックして掲載しており、また、重要な事項については行政手引の原文も掲載していますので、当サイトを読んで頂ければ、別に行政手引をお読み頂く必要はありません。

 

以下、序論からです。

 

〔1〕序論

 

まず、雇用保険法の全体像は、序論のこちらで記載しています。

 

第1条の目的条文は、平成28年度の選択式で出題されていますので、しばらくは選択式での出題はなさそうです。

 

雇用保険法では、給付(失業等給付といいます)の種類と概要を押さえることが不可欠です。基本的には、学習しているうちに、自然と覚えられますが、就職促進給付あたりは、意識して押さえませんと、覚えられません。しょちゅう忘れるような場合は、ゴロ合わせなど、確実に記憶する方法を検討してみて下さい。

 

 

〔2〕主体

 

一 保険者

 

保険者(こちら(雇用法のパスワード))では、権限の委任・事務の管轄等について説明しています。

「都道府県知事が処理する事務」など、出題が多いものもあります。

ただし、かなり細かいため、雇用保険法の全体を学習してから、再度チェックをしてみて下さい。

こちらの「公共職業安定所の長が行う事務」などは、今後、頻繁に登場し(重要ということになります)、そのたびに、こちらの表をリンクしますので、徐々に押さえて頂ければ足ります。

 

二 被保険者

 

(一)概要

 

「被保険者」が登場するのは、これまでの科目の中では、実は、この雇用保険法が初めてとなります。労災保険法については、被保険者の概念はありませんでした。

 

被保険者が問題となる保険法では、通常、数種類の被保険者が存在するため、それぞれの要件(資格取得の要件)等を押さえる必要があります。

雇用保険法においても同様なのですが、雇用保険法の場合、まず、被保険者の(共通の)定義が定められています。

即ち、雇用保険法における被保険者とは、「適用事業雇用される労働者であって、適用除外者第6条各号に掲げる者)以外のもの」をいいます(第4条第1項)。(こちら以下

まずは、この定義を覚えて下さい。

そして、上記の赤字の部分の「適用事業」(強制適用事業の他、暫定任意適用事業が問題となります)、「雇用」、「労働者」、「適用除外(者)」といった概念を深く学習することになります。

 

他方、この「被保険者」について、雇用保険法では、年齢や雇用形態等により、4種類に分類しています。

一般被保険者、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者です。

これらの被保険者の種類ごとに、「発生(資格の取得)➡ 変更(氏名・住所の変更等)➡ 消滅(資格の喪失)」という時系列に沿って、知識を整理していきます。

 

さしあたり、「発生」の問題である「資格の取得」の要件を押さえることが必要です(資格の取得時期や喪失時期については、雇用保険法では、明文がないこともあり、「届出」の個所で見ています。また、「変更」や「消滅(資格の喪失)」についても、「届出」の個所で見ています)。

この被保険者の種類の概要については、最もシンプルな内容は、こちら以下のページで掲載しています。

より細かい知識については、のちに、こちら以下のページで見ています。

 

雇用保険法の被保険者については、適用除外者が多数あることの他、他の被保険者への切替えの問題があったり、改正により、高年齢被保険者の制度が新設されたこと等もあって、かなり複雑になっています。

雇用保険法が苦手な方は、初めのうちは、「他の被保険者への切替え」といった複雑な問題はそこそこで済ませて頂き、早めに基本手当に取り組んでみて下さい。

 

なお、どの被保険者(正確には、「被保険者又は被保険者であった者」)にどの失業等給付が支給されるかについては、こちらの表で整理しています。

 

 

(二)届出

 

各種の届出が体系的に登場するのは、雇用保険法が初めてとなります。

 

当サイトでは、先に紹介しました「発生(資格の取得)➡ 変更(氏名・住所の変更等)➡ 消滅(資格の喪失)」という時系列に沿って、届出も整理しています。

 

ただし、雇用保険法(をはじめとする被用者保険)の届出は、大きく、「事業主が行う届出」と「被保険者が行う届出(等)」に分かれ、前者の「事業主が行う届出」については、さらに、届出の対象事項・内容により、「事業主に関する届出」(この中で、「事業所に関する届出」と「代理人に関する届出」に分かれます)と「被保険者に関する届出」に分かれます。

このように大きく分類したうえで、それぞれの届出を、「発生 ➡ 変更 ➡ 消滅」の時系列により整理します。

 

結論としては、こちらの図のような枠組みになります。

そして、「事業主が行う届出」のうち、「事業主に関する届出」はこちらの表、「被保険者に関する届出」はこちらの表で整理しています。

 

届出について、最も出題が多いのは、「届出の期限」です。どの科目の届出についても同様です。

労働法に関する届出は、「事実発生日から(の翌日から起算して、という意味です)10日以内」に届け出ることが必要となるのが原則であり、社会保険(健保法、厚年法)に関する届出は、「事実発生日から5日以内」に届け出ることが必要となるのが原則です。この原則から外れた届出の期限になるケースに注目して記憶します。

 

届出についても膨大な情報量がありますが、まずは、過去問で出題された個所とその周辺に力を入れてチェックしてみて下さい(スクロールして頂くと、過去問を掲載している個所は、字下げをしていますので、判明すると思います)。

 

 

(三)被保険者の資格の取得・喪失の事由及び時期

 

1 資格の取得

 

被保険者の資格の取得・喪失の事由及び時期については、他の保険法では、被保険者の個所で学習するのですが、雇用保険法の場合は、資格の得喪の時期について明文がないこと等もあって、便宜上、届出の中で触れています(こちら以下です)。

結構重要です。

 

資格の取得時期については、当日(その日)取得となります(即ち、資格の取得事由が発生した日に、資格を取得します)。

資格の取得事由も含め、こちらの表で整理しています。

 

2 資格の喪失

 

(1)離職

 

資格の喪失事由のうち、とりわけ重要なのは、「離職」です(こちら以下)。

 

「離職」とは、「被保険者について、事業主との雇用関係が終了すること」をいいますが(第4条第2項)、「離職」は、「失業」を保険事故とする保険給付である求職者給付及び就職促進給付における重要な概念となっています。

即ち、求職者給付等の支給を受けうるためには、基本的に、「失業」していることが必要ですが、「失業」とは、「被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあること」をいうため(こちら)、失業の要件として離職していることが必要となるのです。

 

この離職の場合の資格喪失時期も重要です。

即ち、離職した場合は、離職日の翌日に資格を喪失します(【行政手引20601 イ】。雇用保険法上、直接的な明文はありません)。

例えば、退職した場合は、退職日の翌日に、被保険者資格を喪失するということです。

 

 

(2)離職日に新たに被保険者の資格を取得すべき場合

 

なお、離職日に新たに被保険者の資格を取得すべき場合は、資格喪失時期を基準に資格の得喪時期の関係を判断する運用に改められました。少々ややこしいですが、こちら以下をご参照下さい。

 

 

3 離職証明書と離職票

 

次に、離職証明書と離職票です(こちら以下)。出題も多く、非常に重要です

 

事業主は、資格喪失の原因が離職であるときは、原則として、資格喪失届に離職証明書を添付して所轄の公共職業安定所長に提出しなければなりません(施行規則第7条第1項後段)。

例外として、事業主は、当該資格喪失届を提出する際に、当該被保険者が離職票の交付を希望しないときは、離職証明書を添付する必要はありません(施行規則第7条第2項本文)。

ただし、離職の日において59歳以上である被保険者については、本人が離職票の交付を希望しない場合であっても、資格喪失届に離職証明書を添付することが必要です(施行規則第7条第2項ただし書)。

 

以上をまとめますと、こちらの図のようになります。

以上を押さえた上で、細かい知識で肉付けしていって下さい。

 

 

4 確認

 

確認とは、被保険者(日雇労働被保険者を除きます)の資格の取得又は喪失について、厚生労働大臣(当該権限は都道府県労働局長に委任され、さらにその権限は公共職業安定所長に委任されています。以下同様)がその事実関係を確定する行政行為です。

確認により、被保険者の資格の取得又は喪失の事実関係が確定します。(こちら以下

 

◆厚生労働大臣が被保険者の資格の取得又は喪失の確認を行う場合は、次の(A)~(C)の3つのいずれかの場合です(第9条第1項)。

 

(A)事業主から被保険者に関する届出(資格取得届又は資格喪失届の提出)が行われた場合

 

(B)被保険者又は被保険者であった者が、確認を請求した場合

 

(C)職権による場合

 

他の保険法においても、確認の制度があることが多く、上記の3つの場合に確認がなされます。

 

以上、主体に関する問題でした。次に、客体に関する問題です。

 

 

〔3〕賃金

 

客体に関する問題については、賃金について少々触れておきます(こちら以下です)。

 

雇用保険法における賃金の考え方は、基本的には、労基法の賃金の場合と同様です。

ただし、退職手当、祝金、見舞金等の任意的・恩恵的給付等は、たとえ就業規則等により支給条件が明確化されている場合であっても、賃金とは取り扱われない点は、労基法の賃金と異なります。

(これは、雇用保険法の他、徴収法及び社会保険(健保法、厚年法等)の場合にも同様です。)

雇用保険法、徴収法及び社会保険の場合は、賃金(ないし報酬)は、基本的に保険料や保険給付の算定基礎になるものであるため、例えば、退職手当などを賃金(ないし報酬)に含めては保険料や保険給付の額が不当に高額となるおそれなどがあること等を考慮したものといえます。

 

その他、雇用保険法の賃金では、現物給与の範囲及び評価について定めた施行規則第2条を押さえて下さい。こちら以下です。

 

賃金の具体例については、こちら以下で行政手引の例を掲載しています。かなり細かいですが、一度はご覧頂いた方がよいと思います(徴収法で出題対象となることが多いです)。

 

以上、雇用保険法の解説でした。次回のポイント解説は、基本手当に入ります。

 

 

 

〔Ⅱ〕改正

 

次に、改正事項についてご紹介します。

 

〔1〕厚年法の70歳以上被用者該当届の省略

 

まず、昨日(28日金曜)の官報に掲載された改正事項ですが、70歳以上の使用される者の該当の届出(70歳以上被用者該当届)を省略できる場合が認められました(厚年法のこちら以下)。

 

大まかに言いますと、被保険者が70歳に達してその被保険者の資格を喪失した後も引続き当該適用事業所に使用されている場合(即ち、被保険者が在職中70歳に達した場合)は、従前の標準報酬月額と変更がないときは、「70歳以上被用者該当届」及び被保険者の「資格喪失届」の提出が不要とされました(施行規則第15条の2第1項ただし書。資格喪失届の提出も不要なことは、資格喪失届の施行規則第22条第1項第4号で規定されています。平成31年4月1日施行の改正です)。

 

つまり、被保険者が在職中に70歳に達してそのまま使用されている場合には、報酬に変動がないときは、届出は不要ということです。

他方、この場合に、報酬に変動があるときは、平成30年3月5日施行の施行規則の改正により新設されていました「被保険者資格喪失届・70歳以上被用者該当届」を提出することになります。

以上は、試験対策上も重要といえそうです。来年になりますと、機構からリーフレットなどが出されると思いますので、より詳しい解説などがありましたら、サイトに記載し、メールでもご紹介します。

 

 

〔2〕労基法の36協定と使用者の時季指定義務に関するリーフレット

 

働き方改革による36協定に関する改正(時間外労働の上限規制)と使用者の時季指定義務についてのリーフレット(パンフレット)が公表されました(26日に公表されたようです)。

 

・36協定(時間外労働の上限規制)については、こちら

 

・使用者の時季指定義務については、こちら

 

これらは、重要です。実務上の取扱い等に関しても触れられており、やや試験の範囲を超えそうな個所もありますが、年末年始に時間ができた際には、是非一読して下さい。

 

サイト中でも、このリーフレットから、Q&Aにある事項等を追記しています。

36協定については、さほど追記はありませんが、使用者の時季指定義務については、このリーフレットからかなり補充しています。

 

〔追記:その後、前述のQ&A形式の通達が明らかとなり、こちらからの補充の方が多くなっています。これらの補充については、後日、まとめてご紹介します。〕

 

 

 

〔3〕労働施策基本方針

 

働き方改革関連法により、雇用対策法がいわゆる「労働施策総合推進法」に改称され、内容も改められましたが、同法第10条に基づき国に策定が義務づけられていた「労働施策基本方針」が公表されました(これは、28日策定です)。

厚労省のサイトは、こちらです。

概要のpdfはこちら、本体はこちらです。

 

内容的にはそれほど難しいものではありません。基本方針自体が出題対象となるかは微妙ですが、前記の「概要」のパワーポイントのpdfは、現在の労働施策に関する視点・骨組みがコンパクトに整理されており、今後、白書対策講座で取り上げます労働経済白書を分析する際にも、これらの視点を思い出して頂くと、役に立つことがあると思います。

 

なお、労働施策総合推進法については、テキストを作成する予定です。

 

 

〔4〕その他

 

その他、28日に官報に掲載された改正は、同一労働同一賃金関係のものが多いです(また、厚年法・健保法の届出関係の改正もあります。改正される個所については、サイト中に改正の概要を記載しています)。これらは、来年の本試験には関係しませんが、改正される個所が出題テーマとなることも少なくなく、一応、チェックしておかれるとよいです。

 

ちなみに、同一労働同一賃金に関する指針(正式には、 「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」。従来は、「同一労働同一賃金ガイドライン案」でした)は、こちらです。

 

この「指針」は、基本的には、これまでのガイドライン案と同様です。

ガイドライン案については、労働契約法のテキスト中の「 ハマキョウレックス事件及び長澤運輸事件」の中で触れていますが、この「指針」についても、ガイドライン案に追加された部分をサイト中でご紹介しています。

ただし、この指針は、平成32年4月1日施行(原則。中小事業主に関する「短時間・有期雇用労働者」に関する部分は、その1年遅れの施行)ですから、来年の試験対象ではなく、深入りする必要はありません。

 

 

では、今回はこれにてです。

 

本年は、長文にいつもお付き合い頂き、有難うございました。ともかく、必ず来年合格致しましょう! 

 

 

平成30年12月22日(土曜)

サイトの改訂・更新については、現在、国年法の老齢基礎年金の中盤まで進んでいます〔振替加算まで終了しています〕。

日々の更新個所については、サイトの右ページ下のコラムの最下部に記載しておりますので、ご参照下さい。

 

ポイント解説の方は、今回で、労災保険法が終了です。

 

その他、今回ご紹介する事項は、次の通りです。

改正事項としては、延滞金の割合の特例(特例基準割合)があります(前年と同率であるため、楽です)。

また、国年法の産前産後期間の保険料の免除について、通達が発出されています。

また、派遣法の施行規則と職業安定法の施行規則が改正されています(これは、さほど問題ありません)。

さらに、労基法の割増賃金に関する最新判例(【日本ケミカル事件=最判平成30.7.19】)を追加しました。

その他、白書対策講座では、「雇用均等基本調査」と「高年齢者の雇用状況調査」をアップしました。

また、合格者の方の体験談の続きは、明日、メールにてご紹介致します。

 

では、まず、労災保険法の解説からです。

 

 

〔Ⅰ〕労災保険法の解説 その3(最終回)

 

労災保険法は、社会復帰促進等事業から最後までの解説となります。

取り扱いますテーマは、社会復帰促進等事業、特別加入、不服申立て、消滅時効といった事項ですが、非常に出題が多い分野です。

平成29年度の選択式試験は、不服申立てと消滅時効からの出題でしたし、直近の平成30年度の選択式試験は、特別加入からでした。

 

以下、ポイントです。

 

 

〔1〕社会復帰促進等事業

 

1 条文

 

社会復帰促進等事業については、まずは、第29条に注意して下さい。こちらの図を参考にしながら条文をチェックして頂くとよろしいです。

本条は、選択式で出題の可能性がありますので、赤字部分を思い出せるように準備が必要です。択一式の【平成26年問4】(こちら)では、1問(5肢)の出題があります。

 

 

2 主体

 

社会復帰促進等事業の主体(実施者、事務の管掌)は、こちら以下です。

ここでは、サイト中でゴロ合わせを作っているようなポイントとなる個所を中心に押さえて下さい。

例えば、「独法労働者健康安全機構」は、療養施設(労災病院等です)の設置及び運営や未払賃金の立替払事業を行うこと、「独法福祉医療機構」は、年金受給権を担保とする小口資金の貸付業務を行うことなどが最重要ポイントです。

 

独法労働者健康安全機構が行う事業については、【平成29年 問3イ(こちら)】でかなり細かい点が出題されています(本問は、平成28年4月1日施行の改正事項ではあったのですが(前年度の改正事項ということになります)、非常に厳しいです)。

 

 

3 各事業

 

(1)アフターケア(こちら以下

 

平成29年度の択一式では、アフターケアについて、3肢出題されました。

平成23年度の択一式の問5(5肢)において、突然、出題されたのですが、再度、出題してきました。再度の出題については、残念ながら、当サイトでは予想外であり、その間に、改正が行われているなどあたふたしました。

しばらくは出題がないとよいのですが、念のため、アフターケア実施要領は一読して頂き、過去問をチェックしておいて下さい。

 

 

(2)労災就学等援護費(こちら以下

 

労災就学等援護費については、【平成29年問7B(こちら)】において、行政処分に関する判例が出題されました。行政法の知識が必要な厳しい出題ですが、当サイトは得意分野ですので、当サイトの解説をご参照下さい。

労災就学等援護費についても、サイトの赤字の部分はざっとチェックして下さい。

 

 

(3)時間外労働等改善助成金(こちら以下

 

時間外労働等改善助成金は、平成30年4月1日施行の施行規則の改正により、従来の「職場意識改善助成金」から改められたものです。ざっと一読して頂くと安心です。

 

 

(4)受動喫煙防止対策助成金(こちら以下

 

受動喫煙防止対策助成金についても、平成30年4月1日施行の「要綱」の改正により、交付額が改められていますので、サイトを一読して頂く安全です。

 

 

4 特別支給金

 

以上の諸々の事業よりは、特別支給金の方が(細かい知識も多いですが)むしろ学習しやすいかもしれません。

こちらのページで、特別支給金について概要を記載しており、あとは、「一般の特別支給金」と「ボーナス特別支給金」に大別した上で、個々の特別支給金ごとに押さえていきます。

整理の仕方は、保険給付の場合と同様に、一応、「発生 ➡ 変更 ➡ 消滅」という時系列でフレームを作り、それぞれで問題となる事項について、要件と効果(支給額等)を見ていきます。

 

特別支給金は、情報量はかなりありますが、保険給付の総復習という側面もあり、しっかり記憶さえできれば、そう大変ではないと思います。

サイト上で過去問の出題歴を掲載している部分を中心にチェックして下さい。

 

その他、こちらの「ボーナス特別支給金」の「総論」の部分についても、チェックして下さい。

また、特別支給金と保険給付との相違点(こちら以下)も、重要です。ここで記載しています【コック食品事件=最判平成8.2.23】は、【平成29年問6D(こちら)】で出題されました。

 

以上、社会復帰促進等事業でした。

 

 

〔2〕特別加入

 

特別加入については、こちらのページで概観を記載しています。このページに、いくつか図がありますので、覚えやすいものをベースにして、知識を押さえて下さい。

特別加入は、制度が複雑であり、また、細かい知識も多いため、学習がしにくい個所ですが、出題が多いため、十分準備が必要です。

 

当サイトでは、特別加入の要件について、「特別加入者の要件(主体の要件)」と「特別加入の要件(その他の要件)」に大別して整理しています。この両者が異なる条文に規定されていることを考慮したものですが、整理の一つの例であり、覚えやすい方法で押さえて頂いて結構です。

 

なお、要件については、特別加入の3種類で基本的に異なりますが、「効果以下」の問題については、3種類について共通する部分が多いです。

効果に関する一覧表は、こちらです。出題がかなり多い個所です。

 

当サイトでは、中小事業主等の特別加入の「効果以下」の個所で、他の2種類の特別加入についても触れていることが多いです。他の2種類の特別加入の効果以下の問題については、中小事業主等の個所で触れた問題については、カットして頂くことができます。

しかし、このような個所を除いて、特別加入に関する記載では、あまりカットできるような個所はありません。少々時間はかかりますが、一度は、全体をお読み頂いた方がよろしいです。

 

 

〔3〕費用

 

費用については、国庫補助の第32条を押さえます。

即ち、国庫は、予算の範囲内において、労働者災害補償保険事業に要する費用の一部を補助することができます。

 

 

〔4〕不服申立て

 

次に、不服申立てです(こちら以下)。

不服申立ては、平成28年4月1日施行の大改正があり、どの科目についても注意が必要です。

労働法の場合は、労災保険法における不服申立てをベースにし、社会保険の場合は、健康保険法における不服申立てをベースにするとわかりやすいと思います(当サイトでは、更新の順番から、社会保険の不服申立てについては、国民年金法で詳しく説明しています)。

 

労災保険における不服申立ては、(A)「保険給付に関する処分」に対する不服申立て(B)「保険給付以外に関する処分」に対する不服申立てに大別できます。

 

(A)については、労災保険法と「労働保険審査官及び労働保険審査会法」(以下、「労審法」といいます)が主に規定しています。こちらの図がポイントです。

 

(B)については、行政不服審査法が規定しています。

労災保険法では、近時、この(B)についてはあまり出題がありませんが、大まかな仕組みを知っておく必要はあります。徴収法に関する不服申立てでは、この行政不服審査法に基づく不服審査となります。

当サイトでは、行政不服審査法の基本的な知識についても、労災保険法で説明しています(もっとも、細かく見る必要はありません)。

 

以上の(A)と(B)を併せた図がこちらです(クリックすると拡大します)。

基本的には、以上の(A)及び(B)の図が思い浮かぶように学習をして頂ければ、労災保険の不服申立てに関する多くの問題には対応できると思います。

 

なお、平成28年の不服申立ての改正に関するまとめは、こちらです。

 

不服申立ての体系としては、こちらの図のように、時系列によって、「開始(発生)➡ 審理(変更・展開)➡終了(消滅)」という視点で整理できます。民事訴訟法等の訴訟法の関係は、同様に整理できます。

試験対策としては、「審理」に関する問題は出題されていず、「終了」に関する問題も、「審査請求の取消し」については学習しておいた方がよいですが、その他については必要なさそうです。

 

不服申立てについては、過去問を解いていてよくわかりにくい個所について、当サイトを参考にして頂くという利用方法がよろしいかもしれません。

当サイトを通読される場合は、以下が目安になります。

 

1 保険給付に関する処分に対する不服申立て

 

(1)総論と審査請求

 

こちらのページの冒頭から、審査請求の終わりあたりまで(こちらの「審理」の手前まで)をざっとお読み下さい。

 

また、こちらの「終了」の「審査請求の取下げ」については、お読み下さい。

労災保険法等では、審査請求の取下げは出題されていませんが、国年法では、平成28年度の択一式【問4ウ(国年法のこちら)】において、「再審査請求の取下げは文書でしなければならない」旨の出題があります。

 

 

(2)再審査請求

 

こちらのページの冒頭から、こちらの「開始」の手前あたりまでをお読み下さい。

 

さらに、「手続」のこちら以下(「開始の効果」(こちら)の手前まで)もお読み下さい(「不服申立期間」と「決定を経ない再審査請求等」が重要です。後者は、平成29年度の選択式で「3か月」が出題されました。当サイトでは、再審査請求についてのポイントとして強調していました)。

 

 

(3)不服申立て前置主義

 

不服申立て前置主義は重要であり、過去問も多いです。こちら以下をお読み下さい。

 

 

2 保険給付以外に関する処分に対する不服申立て

 

こちらのページの冒頭から、「過去問のリンク」の個所(「開始」の手前)までをお読み下さい。

行政不服審査法の仕組みを掲載しています。実際は、労災保険法ではあまり出題はないのですが、徴収法の不服申立てを学習する際に役立つ知識になります。大まかにざっと読んで頂ければ十分です。

 

以上、不服申立てでした。

 

 

〔5〕消滅時効

 

消滅時効(こちら)については、出題も多く、当サイトをお読み下さい。

労基法では、あまり詳しく記載しませんでしたが、消滅時効の趣旨や起算点の考え方等は、この労災保険法で説明しています。

起算点については、今年度版から、こちらで、判例の立場を補足しています。

 

なお、今年度版では、2020年4月1日施行の改正民法における消滅時効の改正点についても触れています。ただ、かなり内容が難しく、また、来年の本試験には関係しませんので、改正民法について無理にお読みにならなくても結構です。

 

 

〔6〕その他

 

その他については、サイトのこちらのページ以降になります。

 

重要事項としては、次のようなものがあります。

 

1 書類の保存期間(こちら

 

完結日から3年間の保存義務です。

 

 

2 行政庁の命令等

 

行政庁の命令等は、こちら以下ですが、チョロチョロと出題があり、従来から、一読をお勧めしていたのですが、平成30年の択一式(【平成30年問3】)で1問(5肢)出題されました。条文ベースの出題です。

 

似たような制度が多く(他の科目でも、類似の制度があります)、学習しにくいのですが、ページをスクロールして頂いて、過去問を見つけて頂くと、正解の内容が出題されていることが多いことがわかります。そこで、誤りの内容を出題している出題に注目して下さい。どの点を誤りに作って出題しているのかをチェックして頂き、その部分を中心に条文を読んで下さい。

その他、当サイトが赤字で記載している個所に注意が必要です。

 

 

3 罰則

 

罰則(こちら)については、労災保険法ではあまり出題がないのですが、このリンク先に図がありますように、労働法の罰則の基本パターンを押さえて下さい。

 

以上、労災保険法でした。

 

次回からは、雇用保険法の解説になります。

 

 

〔Ⅱ〕サイトの改訂状況

 

前記しましたが、サイトの改訂状況をご紹介します。

 

 

〔1〕徴収法の改訂終了

 

徴収法については、全ての改訂を終了しています。

なお、平成30年12月12日付けの告示により、特例基準割合が判明し、内容を改訂していますが、後述します。

 

 

〔2〕国年法の改訂開始

 

国民年金法の改訂を開始しています。

現在、すでに老齢基礎年金の支給要件の最後(受給資格期間の短縮特例のこちらのページの最後)まで、改訂が終わっています〔その後、振替加算まで終了しました〕。

 

なお、ニュース報道によりますと、平成31年度(2019年度)は、年金額の改訂について、マクロ経済スライドが発動されて、かつ、キャリーオーバーの制度も適用される見通しのようです。詳細は、年明けの1月末に判明します。

 

 

〔Ⅲ〕白書対策講座

 

白書対策講座では、次の2つをアップしました。

 

〔1〕雇用均等基本調査

 

まず、白書対策講座のこちらの次のページの「平成29年度雇用均等基本調査」(平成30年7月30日公表)です。

 

〔2〕高年齢者の雇用状況集計結果

 

また、こちらの次のページの「平成30年高年齢者の雇用状況集計結果」(平成30年11月16日公表)もアップしました。

 

これらの2つは、比較的、ボリュームが少ないです。

 

とはいっても、なかなか細かい個所まで覚えこむことは難しいです。まずは、報道発表用資料(プレスリリース)の部分を冒頭で記載していますので、こちらを押さえることから始めます。

その後、本体に入っていきますが、基本的に、当サイトの太字部分や設問のある個所を中心にチェックして頂くとよいです。

本試験では、面白そうな個所(数字がやや意外だとか、数字の意味が分かりにくいなど)や推移・変化について出題されることが少なくなく、そのような視点からデーターをチェックして頂くと良さそうです。

 

なお、現在、「労働経済白書」を読解中です。私は、書籍で保有しているのですが、平成30年度版は分厚くなっており、平成29年度版が約200頁だったところ、平成30年度版は350頁近くあります。

軌道に乗りましたら、労働経済白書も何回かに分けてご紹介します。さしあたりは、その他のボリュームが少なめのデーターを紹介していきます。

 

厚生労働白書はまだ公表されていませんが、こちらも分厚くなっている嫌な予感がします。。

 

 

〔Ⅳ〕改正

 

〔1〕延滞金の割合の特例(特例基準割合)

 

まず、延滞金の割合の特例による特例基準割合が決まり、平成31年は、平成30年と同じになりました。

即ち、平成31年における特例基準割合は、平成30年と同じく、年1.6パーセントです。

そこで、延滞金の割合は、納期限の翌日から2月社会保険の場合は3月)を経過する日までの期間については(年1パーセントを加算して)、年2.6パーセントとし、納期限の翌日から2月社会保険の場合は3月)を経過する日の翌日以後については(年7.3パーセントを加算して)、年8.9パーセントとなります。

 

前年と同じですから、比較的楽です。さしあたり、徴収法のこちらをご参照下さい。

この延滞金の割合の特例については、初めて改正されました平成27年1月1日施行の直後の平成27年度の選択式において、健保法から2つの空欄が出題されています。

現在の平成31年の数字に置き換えますと、「D=2.6%」/「E=8.9%」が空欄とされました。

再度選択式があるかは微妙ですが、択一式はあり得そうです。

 

 

〔2〕国年法の産前産後期間の保険料の免除に関する通達

 

国年法の産前産後期間の保険料の免除について、通達(【平成30.12.6年管菅発1206第1号】)が発出されました(今月の6日付の通達という意味です)。

産前産後期間の保険料の免除に係る届出に関する内容が多いですが(例えば、こちらや「産前産後期間の保険料の免除に係る届出の期限は設けられていない」など)、その他の細かい事項についても通知があり、国年法の学習の際に、改めて当サイトの「産前産後期間の保険料の免除」のページをお読み頂くとよろしいです。

 

 

〔3〕派遣法施行規則と職安法施行規則の改正

 

労働者派遣法施行規則と職業安定法施行規則が改正されています。主に、就業条件等の明示の方法に関する「書面の交付等」(電子メール等)の定義の整理が行われたものです(今月の19日に官報に掲載され、平成31年4月1日施行です)。

労基法の労働条件の明示についても改正が行われましたが、それと類似の内容になっています。

「改正・最新判例」のこちらでリンク先等を掲載しています。

 

この〔3〕は、かなり細かい個所ですので、さしあたりは後まわしで良さそうです。

 

 

〔4〕労基法の割増賃金に関する最新判例

 

労基法の割増賃金に関する最高裁判例として、【日本ケミカル事件=最判平成30.7.19】をご紹介しています。

本判決は、割増賃金の支払に代えて定額の手当を支給する場合(定額手当制)において、当該定額手当が時間外労働等の対価として支払われる割増賃金に当たる部分であるかどうかが問題となったものです。詳細は、労基法のこちら以下です。

 

近時、 法所定の算定方法に基づかない割増賃金の支払の適法性(割増賃金の定額支給等)に関する最高裁判決が相次いでいますが、それらは、割増賃金込みの賃金を設定するケースでした。この場合は、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができるかどうかがポイントになります。

 

対して、今回のケースは、いわゆる定額手当制の場合であり、割増賃金の支払に代えて定額の手当を支給するケースです。

この場合は、前提として、当該手当が時間外労働等に対する対価として支払われており、割増賃金に当たるものであるかどうかが問題となります。定額手当が時間外労働等に対する対価としての意味を持たないならば、そもそも割増賃金を支払っていることにならないからです。この具体的判断の方法について、今回の最高裁判決が判示しています。

ただ、今回の判決は、原審である東京高裁の判示内容を引用する形で判示している部分があり、少々、選択式では出題しにくいかもしれません。当サイトが太字や色付きにしている個所を押さえておいて下さい。

 

以上、今回の更新メールを終了します。相変わらず超長文、誠に恐縮です。

 

来週、おそらく、同一労働同一賃金に関する指針が公布されます。これは、来年の本試験には直接は関係しません。

来年になると、前述の年金額の改定について公表され、春には、高度プロフェッショナル制度に関する政省令が公布されるのでしょう。来年は、何かと忙しくなりそうです。

 

合格体験談をメールする他に、年内にもう一度、通常の更新メールを送信する予定です。

 

では、よいクリスマスを。

 

 

平成30年12月6日(木曜)

今回は、労災保険法の解説は保険給付です。

また、徴収法の施行規則の改正がありましたので、内容をご紹介します。

その他、白書対策講座として、「働く女性の実情」をアップしました。

 

〔追記:その後、雇用保険法及び徴収法の改訂が終了し、国民年金法の改訂に入っていますが、こちらも、届出の手前まで進んでいます。〕

 

なお、合格者の方の体験談の続きは、明日、送信します

 

まず、労災保険法の解説からです。今回もウルトラ長文となっており、一部、カットしている部分があります。

 

 

〔Ⅰ〕労災保険法の解説その2

 

今回から、保険給付に入ります。

 

〔1〕総論

 

1 事業

 

労災保険の「事業」の全体像は、こちらの図の通りです。

保険給付と社会復帰促進等事業に大別され、前者の保険給付は、業務災害・通勤災害に関する保険給付と二次健康診断等給付からなります。

 

事業が、「保険給付(ないし給付)」と「その他の事業」に大別されるというのは、他の社会保険の科目においても同様です。労災保険の場合は、「社会復帰促進等事業」が「その他の事業」となります。

 

 

2 保険給付の総論

 

保険給付の総論は、こちらのページです。

 

なお、少々注意すべき点は、業務災害に関する保険給付の支給要件は、基本的には、労基法の災害補責任の要件と同様であるということです。こちら以下で記載しています。

 

例えば、障害に関する保険給付として、障害補償給付があります(業務災害のケースです。通勤災害の場合は、障害給付です)。この障害補償給付は、障害等級に応じて、障害補償年金と障害補償一時金に分かれますが、労災保険法では、直接的には、この「障害補償年金・障害補償一時金」の支給要件を定めた規定がありません。

例えば、第15条は、次のように規定しているだけです(次の第2項は、支給額に関するものです)。

 

・第15条

 

1.障害補償給付は、厚生労働省令で定める障害等級に応じ、障害補償年金又は障害補償一時金とする。

 

2.障害補償年金又は障害補償一時金の額は、それぞれ、別表第1又は別表第2に規定する額とする。

 

 

これは、業務災害に関する保険給付の支給要件については、第12条の8第2項が一般的に規定しているためです。

つまり、この規定では、業務災害に関する保険給付は、基本的には、労基法が規定する災害補償の事由(又は船員法が規定する災害補償の事由。以下、船員法については省略します)が生じた場合に行われる旨を定めています。

要するに、業務災害に関する保険給付の支給要件は、基本的には、労基法の災害補償の要件と同様になるということです。

 

これは、労基法の使用者の災害補償の責任を実効化するために保険制度化したものが、労災保険の業務災害に関する保険給付だからです(使用者の責任の軽減や使用者の無資力による被災労働者等の救済を図る見地から、使用者に保険料を拠出させて保険制度化したものがもともとの労災保険の制度趣旨です)。

 

そこで、業務災害に関する保険給付の支給要件を見るためには、前提として、対応する労基法の災害補償の要件を確認する必要があることになります。

この点、障害補償給付に対応する労基法の災害補償責任は、障害補償(労基法第77条)であり、次のように規定されています。

 

・労基法第77条

 

労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり、治った場合において、その身体に障害が存するときは、使用者は、その障害の程度に応じて、平均賃金に別表第2に定める日数を乗じて得た金額の障害補償を行わなければならない。

 

そこで、労基法の障害補償の要件は、「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり、治った場合において、その身体に障害が存するとき」であることであり、これが同時に労災保険法の障害補償給付の支給要件であるということになります。

 

なお、通勤災害に関する保険給付については、労災保険法において直接に支給要件が規定されています(労基法の災害補償責任は通勤災害を対象としていないため、通勤災害については、労災保険法独自に支給要件を規定する必要があるからです)。

そこで、通勤災害に関する保険給付の規定が、業務災害に関する保険給付の支給要件についても参考になります。

 

例えば、通勤災害である障害給付について定める労災保険法第22条の3第1項は、次のように規定しています。

 

・第22条の3

 

1.障害給付は、労働者が通勤により負傷し、又は疾病にかかり、なおったとき身体に障害が存する場合に、当該労働者に対し、その請求に基づいて行なう。

 

そこで、業務災害に関する障害補償給付についても、「労働者が『業務上の事由』により負傷し、又は疾病にかかり、なおったとき身体に障害が存すること」が支給要件であると判明します。上記の労基法の障害補償の要件とパラレルになっています。

 

 

以上、やや詳しくなり過ぎましたが(そして、休業補償給付や遺族補償年金のように、労災保険法の業務災害に関する条文からも、その支給要件がわかりやすい給付もあります)、結論としては、労災保険の業務災害に関する保険給付の支給要件は、基本的には、第12条の8第2項が規定しているのであり、原則として、労基法の災害補償の要件と同様になるということです。

 

なお、この第12条の8第2項は、実際に出題の対象にもなっています。

例えば、労基法に定める災害補償の事由が生じた場合に支給される労災保険法の保険給付の中に「傷病補償年金及び介護補償給付」は含まれないこと、補償を受けるべき労働者若しくは「遺族又は葬祭を行う者」の「請求」に基づいて支給されることなどがあります。詳しくは、前掲のこちら以下の過去問をご参照下さい。

 

 

ところで、保険給付については、今まで更新してきました「主体」や「客体」に関する問題よりは、取り組みやすいものが多いと思います。

さしあたり、「発生➡変更➡消滅」という時系列に沿って問題を振り分けて、各々(の事項)について、要件と効果を見ていくことになります。

このうち、「発生」における「支給要件(要件と同義です)」と「効果(広義)」としての「支給額」が大きなポイントになります。その他に、申請の手続等について、「手続」として整理します。

今後、学習します社会保険(年金2法、健保法、国民健康保険法等)でも、この保険給付の基本的な捉え方は同様です。

この保険給付の体系図は、こちらです。

 

労災保険法の保険給付の出題状況ですが、サイト上の過去問の掲載をご覧頂きますと判明しますように、当サイトで記載しています事項は、広く出題対象となっています。

もっとも、近時は、保険給付についてそう沢山出題されているわけではありませんでした。そして、保険給付が出題対象とされるときは、細かい点を突いてくることが少なくありません。

例えば、ひところは、療養(補償)給付では、手続に関する出題が多かったです。また、平成28年の択一式では、「移送」を中心とする1問が出題されました(昭和40年まで実施されていた「療養補償費」という用語を使用している古い通達からそのまま出題されています)。

他方、今回の平成30年度の択一式では、保険給付に関するオーソドックスな問題が出題されました(内容は、かなり簡単でした)。

 

とにもかくにも、労災保険法の出題については油断できませんので、穴がないように学習します。

 

なお、労災保険法だけでなく、年金2法や健保法等の社会保険でも同様ですが、保険給付については、「支給要件」を正確に記憶していませんと、試験で勝負になりません。保険給付については、支給要件が最重要であり、常に各給付の支給要件がすらすらと頭に浮かぶように反復学習の上記憶して頂く必要があります。

これは、「保険給付」の「支給要件」だけでなく、広く諸制度の「要件」について同様です。例えば、事業主からの費用徴収の制度なら、どのような場合にその費用徴収が行われるのかという「要件」を押さえることが不可欠です。

このように、「要件」に注意して、要件を記憶する学習方法をお取り下さい。

 

 

以下、保険給付についてのごく大まかなポイントです。

 

 

〔2〕療養(補償)給付

 

療養(補償)給付の発生に関する問題の体系図は、こちらです。

 

上述のように、保険給付については、あまり手を抜けるような個所はなく、丹念に学習して頂く必要があります。

療養(補償)給付の場合に難しいのは、手続の問題です(こちら以下)。

最近は出題がないのですが、前記の通り、ひところはよく出題されていました。

 

療養(補償)給付は、業務災害と通勤災害に応じて、それぞれ療養補償給付と療養給付に分かれますが、療養(補償)給付の支給の方法として「療養の給付」(現物給付)と「療養の費用の支給」(現金給付)があり、トータルでは4つの組み合わせが生じます(つまり、業務災害に関する「療養補償給付」として、「療養の給付」又は「療養の費用の支給」が行われる場合があり、通勤災害に関する「療養給付」として、「療養の給付」又は「療養の費用の支給」が行われる場合があるということです)。

この4つについて、請求の手続が微妙に異なるため、手続の問題を押さえるのはかなり厄介です。

 

最も基本的な知識は、「療養の給付」と「療養の費用の支給」の手続の違いです。

即ち、「療養の給付」の場合は、請求書を当該療養の給付を受けようとする「指定病院等」を「経由」して所轄労働基準監督署長に提出しなければならないのに対して、「療養の費用の支給」の場合は、請求書を、直接〔=即ち、経由ではありません〕、所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。

 

その他の出題実績がある知識として、事業主や診療担当者の証明を受けなければならない事項が重要です。

 

4つの組み合わせについて手続に関する細かい事項を広く覚えるのは、事実上無理ですし、その必要もないでしょう。過去問を指標にして頂き、まずは、業務災害の療養補償給付における「療養の給付」と「療養の費用の支給」に関する重要な手続を押さえるといったように、段階を踏んで記憶するのがよろしいと思います。初学者の方は、最初はこまごまとした手続上の知識は、後回しにして下さい。

 

 

〔3〕休業(補償)給付

 

休業(補償)給付は、労働者が業務上の(又は通勤による)負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第4日目から支給されるものです。

そこで、支給要件は、次のようになります。

 

①労働者が業務上の(又は通勤による)負傷又は疾病により療養していること。

 

②当該療養のため労働できないこと。

 

③労働できないために賃金を受けない日であること。

 

④賃金を受けない日の第4日目以後の休業であること = 賃金を受けない休業初日から通算して3日間の待期期間を満たしていること。

 

あとは、これらの要件のそれぞれの文言について問題となる知識を押さえていきます。

 

ややこしいのは、上記の③に関する「一部労働不能の日」の問題です。③の「賃金を受けない日」については、「賃金の全部を受けない日」だけでなく、「賃金の一部を受けない日」も含まれるとされています。

この「賃金の一部を受けない日」がどのような場合に支給要件に該当するのか、次に、支給要件に該当した場合の支給額はどうなるのかが重要です。サイトでは、こちら以下で触れています。

このように、一部労働不能のケースは、支給要件の問題と支給額の問題を区別して考えるのがポイントです。また、労基法の休業手当の一部労働不能の処理と異なる点があることにも注意です。

 

なお、今回の試験では、【平成30年問5E(こちら)】において、一部労働不能のケースが出題され、【平成30年問5B(こちら)】において、全部労働不能のケースが出題されました。

 

 

〔4〕傷病(補償)年金

 

傷病(補償)年金(こちら以下)についても、まずは、支給要件を確実に暗記して下さい。

傷病(補償)年金の大まかなイメージは、労働災害による傷病が長期間治ゆしていず、重度の場合に支給されるというものです。

そして、他の保険給付と異なり、被災労働者の請求は必要がなく、所轄労働基準監督署長は、傷病(補償)年金の支給要件に該当することとなったときは、職権により支給の決定をしなければなりません。

 

なお、療養(補償)給付、休業(補償)給付及び傷病(補償)年金の3者間の関係について、こちらの図のイメージになります。

休業(補償)給付と傷病(補償)年金が併給されることはない点がポイントです(傷病(補償)年金は、休業(補償)給付の請求・支給という手続上の煩雑さを回避することを制度趣旨の一つとしているためです)。

 

傷病(補償)年金も、覚えるべき知識は多いのですが、そう難しくはないと思います。反復学習して頂き、徐々に知識を拡げて下さい。

 

 

〔5〕障害(補償)給付

 

障害に関する保険給付(こちら以下)としては、まず、障害(補償)給付があります。

労働者の業務上の(又は通勤による)傷病が治ゆしたときに障害が残った場合に支給されます。

障害の程度により、障害(補償)年金と障害(補償)一時金に分かれます。

 

さらに、法附則上の障害に関する保険給付として、障害(補償)年金前払一時金と障害(補償)年金差額一時金があります。後者が、平成26年度の選択式で出題されています。

 

障害に関する保険給付の支給要件の特色は、「傷病が治ゆしたこと」が必要であるという点です。この傷病の治ゆの有無によって、「傷病」に関する保険給付(療養(補償)給付、休業(補償)給付及び傷病(補償)年金)と区別されます。  

 

障害(補償)給付については、障害等級表に関する出題がなされることがあり、また、併合・加重という応用的な問題もあって、少々学習しにくいです。過去問を解ける程度に学習して下さい。

 

障害(補償)年金前払一時金は、遺族(補償)年金前払一時金とパラレルな仕組みになっている個所が多く、前者についての知識が後者について利用できます。内容的には、そう難しくありません。

 

他方、障害(補償)年金差額一時金は、障害(補償)年金の受給権者が死亡した場合に、一定の遺族に一定額(差額)を支給するものであり、死亡に関する保険給付という側面もあります。そこで、遺族(補償)給付等の死亡に関する保険給付を学習してからの方が理解しやすいです。初学者の方は、差額一時金は、ざっと流し読んで頂いて、死亡に関する保険給付を学習した後に、再度チェックしてみて下さい。

 

 

〔6〕介護(補償)給付

 

介護(補償)給付(こちら以下)は、平成19年度の選択式で出題されています。

支給額の考え方が少々ややこしいです。こちらの図とその下部の解説を参考にして下さい。

また、介護(補償)給付が支給されない場合(支給対象とならない施設)についても注意です。病院・診療所、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、障害者支援施設などです(こちら以下)。

 

なお、介護(補償)給付の額は、例年、2月頃改正された額が告示されます。その際は、当サイトの額の記載を書き換えます(ただ、試験対策上は、ほぼスルーで問題ないといえます)。

 

 

〔7〕遺族(補償)給付

 

遺族(補償)給付は、遺族(補償)年金と遺族(補償)一時金があります。まず、前者の遺族(補償)年金からです。

 

〈1〉遺族(補償)年金

 

一 発生

 

(一)支給要件

 

支給要件のまとめは、こちらです。最終的には、支給要件の記憶が不可欠です。かなりややこしいです。

 

死亡に関する保険給付については、死亡者の要件と遺族の要件に分けるのが良いです。遺族(補償)年金の場合は、後者の遺族の要件が複雑です。

 

遺族の要件に関するもっとも大枠のポイントは、次の点です。

即ち、遺族(補償)年金を受けることができる遺族(= 受給資格者)は、労働者の「配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹」であって、労働者の「死亡当時」その収入によって「生計を維持」していた者となりますが、「妻以外の者の場合は、労働者の死亡当時に、一定の年齢要件又は障害要件に該当していること」が必要です。

この受給資格者のうち、最先順位の者が受給権者となります。

誰が受給資格者であって、そのうち誰が受給権者となるかは、後述の通り、支給額にも関係します。

後は、これらの要件の細部について、表等を利用して記憶していくことになります。こちらの遺族の表がすらすら出てくる状態なら問題ありません。

 

なお、注意点として意識しておかれるとよいのは、若年支給停止者についてです(こちらで整理しています)。

若年支給停止者とは、労働者の死亡当時、55歳以上60歳未満の「夫、父母、祖父母及び兄弟姉妹」であって、当該労働者の死亡当時障害要件に該当していない者をいいます。

これらの者は、遺族(補償)年金の受給権を取得しても、60歳までは支給停止となるため、「若年支給停止者」といいます。

若年支給停止者は、若年支給停止者以外の他の受給資格者の次順位(後順位)となります。

 

さしあたりは、以上のような個所が支給要件(遺族の要件)に関する基本的な知識です。

先ほど紹介しました支給要件のまとめを記載していますこちらのページは、細かい知識がぎっしり入っていますが、あまり省略できるような事項がありません。

 

 

(二)支給額

 

支給額(こちら以下)も、結構、複雑です。

遺族(補償)年金の額は、「受給権者及び受給権者と生計同一の受給資格者の人数」に応じて決定される点がポイントです。

つまり、遺族(補償)年金の額を計算する場合は、前提として、受給権者の数、さらに、当該受給権者と生計同一の受給資格者の数を把握しておく必要があります。

この点は、先の〔1〕の支給要件の「遺族の要件」において、「受給資格者」と「受給権者」を把握しています。

 

なお、若年支給停止者は、60歳になるまでは、この遺族(補償)年金の額の算定基礎となる遺族の人数には含まれないことにも注意です。

 

 

二 変更

 

遺族(補償)年金の変更に関しては、こちらの事項が問題となります。年金額の改定、1年以上所在不明の場合の支給停止、欠格といった問題です。

これらは、過去問を指標に、過去問を解ける程度に学習して下さい。

 

三 消滅

 

遺族(補償)年金の失権は、こちらのページです。

当サイトでは、この失権のページで、親族関係の基本的な知識を説明しています(民法の親族法の領域になります)。

ボリュームはありますが、一度、じっくり読んで頂くと、今後の学習が楽になります(年金法の支給停止や失権、健保法の被扶養者などにおいて、親族関係の知識が再度必要となります)。

 

以上、遺族(補償)年金でした。

 

 

〈2〉遺族(補償)一時金

 

遺族(補償)一時金は、遺族(補償)年金の受給資格者がない等の場合に、一定の遺族に一時金を支給するものです(こちら以下)。

いわば遺族(補償)年金が十分機能しなかった場合に一時金を支給するものといえ、やや特殊な制度であるため、学習がしにくいです。

支給要件として、次の2つのパターンがあります。

 

①労働者の死亡当時、遺族(補償)年金の受給資格者がない場合(例えば、父の死亡により20歳の子のみが残されたケース)

 

②失権差額一時金の場合 = 遺族(補償)年金の受給権者がすべて失権した場合であって、すでに支給された「遺族(補償)年金 + 遺族(補償)年金前払一時金」の額の合計額が、給付基礎日額の1,000日分に満たないとき。

 

そして、遺族の要件として、こちら以下の図を押さえます。

 

平成28年の択一式で、遺族の要件に関し2肢出題されていますので(【平成28年問6オとエ】)、この遺族の要件も含め、遺族(補償)一時金全般について注意が必要です。

 

 

〔8〕遺族(補償)年金前払一時金

 

遺族(補償)前払一時金(こちら)については、基本的に、障害(補償)年金前払一時金とパラレルな部分が多いため、学習はしやすいと思います。

 

平成26年度の選択式Dでは、支給額が出題されました。

 

 

〔9〕葬祭料又は葬祭給付

 

葬祭料又は葬祭給付(こちら)は、今後、他の法においても、葬祭ないし埋葬に関する保険給付を学習しますので、各法の葬祭等に関する保険給付間で混乱しないように整理する必要があります。こちらで、横断整理をしていますので、参考にして下さい。

 

 

〔10〕通勤災害に関する保険給付

 

通勤災害に関する保険給付(こちら)は、すでに療養(補償)給付の最後の個所でも触れています。こちらでは、新たな過去問も掲載していますので、簡単に再チェックしてみて下さい。

 

以上で、業務災害及び通勤災害に関する保険給付は終了です。

 

 

〔11〕二次健康診断等給付

 

二次健康診断等給付(こちら)も、重要です(そろそろ選択式があり得ると思っていましたが、今回は択一式の問7で1問(5肢)の出題となりました)。

内容自体は難しいわけではありませんので、地道に知識を定着させていくことに尽きます。

 

前提として、安衛法の健康診断の知識が必要となります。

すでに安衛法を学習し終えた方は、この二次健康診断等給付の個所で、記憶の定着具合をチェックしてみて下さい。

まだ、安衛法の健康診断を学習していない方は、まずは、この労災保険法の二次健康診断等給付のページを読み進めてみて下さい。安衛法関係でよくわからない個所は保留して頂き、二次健康診断等給付を一応読み終えてから、安衛法の健康診断(当サイトの安衛法のこちら以下)を確認してみて下さい。

 

 

以上、保険給付の各論(本体)となります。以下は、保険給付の通則です。こちらが、かなり厄介です。

 

 

〔12〕保険給付の通則

 

保険給付の通則で学習する事項は、こちらの通りです。この保険給付の通則は、出題も多く、重要です。また、今後、国年法や厚年法でも、類似の事項を学習しますので、労災保険法で十分学習しておきますと、あとが楽になります。

ただし、労災保険法に特有の難しい問題もあり、前々回の平成29年度の択一式では、判例に関する設問が大量出題され、大変なことになっていました(平成28年の5月に社会保障判例百選の第5版が刊行され、ここから大量に出題されたものです)。

 

以下、保険給付の通則について、特に注意する事項に触れておきます。重要な問題ばかりであり、細かく解説することが難しいため、本文の熟読をお願い致します。

 

一 未支給給付こちら以下

 

未支給給付も、死亡に関する保険給付の問題ですから、支給要件は、死亡者の要件と遺族の要件から成りますが、遺族の要件が中心です。

この遺族の要件について、遺族(補償)年金の受給権者の死亡かどうかにより、まずは2つのパターンに分かれるのが、労災保険法の未支給給付の特徴です。これは、遺族(補償)年金について、転給があることによります(詳しくは、本文をご参照下さい)。

 

その他のパターンもあり、「未支給給付の請求権者がいない場合」や「未支給給付の請求権者が、未支給給付を受ける前に死亡した場合」は、民法の法定相続の問題となります。

全部で4つのパターンがあり、こちらの図でまとめています。

 

 

二 届出

 

届出(こちら以下)については、労災保険法の場合は各種届出が網羅的に登場するわけではなく、本格的な届出の体系については、雇用保険法以下で学習します。

 

労災保険法の届出としては、「年金たる保険給付の受給権者の定期報告」(現況届です)と「年金たる保険給付の受給権者の届出」(こちらは、変更や消滅に関する届出です)が中心です。

その他、傷病(補償)年金・休業(補償)給付に関連する届出があり、「傷病の状態等に関する届書」及び「傷病の状態等に関する報告書の添付」が問題となります。3番目の「傷病の状態等に関する届書」については、【平成29年問2A】で出題されました。

数字関係を中心に当サイトの赤字部分を記憶して下さい。

 

なお、マイナンバー制度の関係の改正点については、こちら以下でまとめています。

今のところ、労災保険法について、マイナンバー制度に関係した手続面の改正事項は出題されていません。

さしあたり、一定の添付書類の添付を省略できる場合として、厚生労働大臣が、「機構保存本人確認情報」の提供を受けることができるときと、「特定個人情報」の提供を受けることができるときがあり、これらの用語を押さえておきます。

 

 

三 支払の調整(内払、充当)

 

支払の調整として、内払と充当があります(こちら以下)。

給付の過誤払(支払過ぎ)の場合に、その超過部分について、その後に支払う給付から控除するという問題です。

国年法や厚年法でも、基本的には共通する問題です。この労災保険法の中で、詳しく記載しています。

 

「内払」については、大枠として、①異なる給付間の場合と②同一給付間の場合に分けて整理しますと便利です。

①の場合の効果は、「内払とみなす」であり、②の場合の効果は、「内払とみなすことができる」です。この「みなす」と「みなすことができる」の違いについては、こちらで説明しています(労災法と国年法・厚年法との間の内払の取扱いについて微妙な違いもあり、政策的要因が加味されているため、これらの違いをすべて理屈的にうまく説明できるわけではありません)。

 

「充当」は、受給権者の死亡後に、遺族に過誤払がなされた場合の支払の調整です。①受給権者の死亡、②遺族に過誤払、③遺族が「死亡に関する保険給付」の受給権を有すること、が内払の要件のポイントになります。

 

 

四 社会保険との調整

 

同一の事由について、労災保険の保険給付と社会保険(国民年金、厚生年金保険)の年金給付の受給権が発生するときは、原則として、「労災保険」の保険給付の支給額が減額されます(こちら以下)。

まずは、社会保険側ではなく、労災保険側が減額される(原則)ことを押さえて下さい。

その他、サイト上で色のついた文字の部分や太字部分に注意して下さい。

 

 

五 支給制限

 

支給制限(こちら以下)については、さしあたり、こちらの表が思い出せる程度に学習して頂くことが最低ラインです。

その他に、「支払の一時差止め」(こちら以下)も重要です。

 

 

六 費用徴収

 

費用徴収については、こちらで記載してますように、次の3種類があります。

 

1 不正受給者からの費用徴収(第12条の3)= 不正利得の徴収

 

2 事業主からの費用徴収(第31条第1項)

 

3 療養給付の一部負担金(第31条第2項、第3項)

 

 

このうち、3については、すでに通勤災害に関する保険給付等の個所で見ています。

 

1の「不正利得の徴収」も重要ですが、そう難しくはないと思います。他の法でも、「不正利得の徴収」が登場してきますので、受験経験者の方は、こちらの横断整理も確認してみて下さい。

 

2の「事業主からの費用徴収」(こちら)は、細かい知識が多く、学習に時間がかかると思います。

平成26年度に選択式で出題されており、平成26年と平成27年に続けて択一式で1問出題されています。かなり細かい出題がなされています。過去問の出題個所を含め、引き続き、十分チェックが必要です。

 

 

七 第三者行為災害等

 

労災保険法で最も難しい問題が、この第三者行為災害等の問題です(こちら以下)。

 

第三者行為災害等の問題として、次の2つがあります。

 

〈1〉第三者行為災害(第12条の4)

 

〈2〉事業主の損害賠償責任との調整(法附則第64条)= 事業主責任災害・使用者行為災害

 

前々回の平成29年度の【択一式問6】では、この第三者行為災害等に関する判例から5肢が出題されました。

当サイトでは、これらの判例をすべて掲載していましたが、やはり、内容がかなり難しい出題でした。

 

以前は、この第三者行為災害等の問題は、さほど出題がなく、出題されても基本的な条文知識程度にとどまっていたため、余り深入りしないことが賢明でした。

しかし、平成24年頃から、本格的な出題が目立つようになり、とうとう、多数の判例が出題されてしまいました。

 

以下、ポイントです。

 

1 第三者行為災害

 

第三者行為災害とは、第三者の行為により労働災害(業務災害又は通勤災害)が発生した場合に、被災労働者等が有する労災保険の保険給付の受給権と第三者に対する損害賠償請求権との調整を図るという問題です。

つまり、第三者の行為により労働災害が発生した場合において、被災労働者等(被災労働者又はその遺族等)が、同一の事由について、第三者に対して損害賠償請求権を取得すると共に労災保険の保険給付の受給権も取得したときに、被災労働者等が二重にてん補を受けることを防止するため、調整を図るものです。

 

大別して、(A)「政府が先に政府が保険給付を行った場合」と、(B)「第三者が先に損害賠償を行った場合」の2つのパターンがあります。

(A)が「代位取得」とか「求償」といわれる場合であり、(B)が「控除」とか「免責」といわれる場合です。

第12条の4の第1項が①であり、第2項が②になります。こちら以下の二つの図でイメージして下さい。

 

 

第三者行為災害に関する問題は、ごく大まかには、次の3パターンに分けられると思います(派生する諸問題が多々ありますが、最も根幹的な問題が次の3パターンといえます)。

次の(1)と(2)は、上記の(A)と(B)に共通します。(3)は、上記の(A)に関する問題です。

 

(1)第三者の問題

 

(2)同一の事由の問題

 

(3)政府が保険給付が行った場合に被災労働者等が第三者(又は事業主)に対して有する損害賠償請求権の減縮の問題

 

以下、順にポイントを見ます。

 

(1)第三者の問題

 

第三者行為災害に関する第12条の4の「第三者」には、「事業主」は含まれないと解されています(こちら以下)。

その理由は、事業主は、保険料を納付して労災保険に加入している者なのであり、政府が被災労働者等に保険給付を行った場合に政府から求償権を行使される(第12条の4第1項)のでは、保険料を納付して労災保険に加入しているメリットが乏しくなるということにあります。

 

この事業主の労災保険の加入の利益を保護するという視点は、のちに見ます法附則第64条の「事業主責任災害」の制度趣旨に関わる問題であり、非常に重要です。

 

 

(2)同一の事由の問題

 

次に、第三者行為災害の第12条の4が適用されるためには、労災保険の保険給付の受給権と第三者に対する損害賠償請求権が「同一の事由」に係るものであることが必要です。

(条文上は、第12条の4第2項の「控除・免責」の場合のみに規定されていますが、同条第1項の「代位取得・求償」の場合も、当然に前提としているものと解されます。同一の事由に係るものでなければ、二重のてん補になるといえないからです。)

 

この「同一の事由」の意義については、判例が次のような基準を示しています。

 

「保険給付と損害賠償とが『同一の事由』の関係にあるとは、保険給付の趣旨目的と民事上の損害賠償のそれとが一致すること、すなわち、保険給付の対象となる損害と民事上の損害賠償の対象となる損害とが同性質であり、保険給付と損害賠償とが相互補完性を有する関係にある場合をいうものと解すべきであって、単に同一の事故から生じた損害であることをいうものではない。」

(【青木鉛鉄事件=最判昭和62.7.10】(こちら))

 

要するに、「同一の事由」とは、保険給付と損害賠償が重複し二重のてん補になると認められる場合ということと解されます。

具体的には、例えば、労働者が労働災害により、「労働ができなくなったため失った賃金の損害」と「精神的損害(慰謝料の対象となります)」を被ったケースにおいて、後に政府が保険給付をした場合は、政府は、当該「慰謝料に係る損害賠償請求権」を代位取得して加害者に求償することは認められない(慰謝料請求権は、労災保険の保険給付と「同一の事由」によるものとは考えられていません)といった問題に関係します。

 

平成29年の択一式問6(こちら以下)の中では、肢Aが「同一の事由」に関する典型的な問題です(また、CやDも「同一の事由」に関する問題です)。

この肢Aも参考に、【青木鉛鉄事件=最判昭和62.7.10】(こちら)を十分チェックして下さい。

 

 

(3)政府が保険給付が行った場合に被災労働者等が第三者に対して有する損害賠償請求権の減縮の問題

 

ところで、政府が保険給付が行った場合に被災労働者等が第三者に対して有する損害賠償請求権がどうなるのかという問題もあります(サイトはこちら以下です)。

第三者行為災害の「効果」の問題の一つとできそうです。なお、加害者が事業主である場合(事業主責任災害)にも同様に問題となり、ここでは、両者について見ておきます。

 

結論として、政府が被災労働者等に対して保険給付を行った場合に、同一の事由については、被災労働者等が「第三者又は事業主」に対して有する損害賠償請求権は、政府の行った保険給付の価額の限度で減縮(消滅)すると解されています。 

この結論には争いがなく、被保険者が2重のてん補を受けることを防止するためや事業主の労災保険加入の利益を保護する観点から、妥当な結論となります。

ただ、この結論を導く法律構成が問題となります。

 

〔以下、中略。〕

 

 

 

この④の損益相殺的な調整は、平成29年の択一式の【問6B】で初めて出題されました。【フォーカスシステムズ事件 = 最大判平成27.3.4】というこれまた難しい判例からの出題でした。

この「損益相殺的な調整」というキーワードは、引き続き、選択式でも要注意です。

 

第三者行為災害については、以上の(1)~(3)の3点が大きなポイントですが、その他に、調整期間(こちら)の「求償=3年、控除=7年」も重要です。

また、【平成29年 問6E】で出題されました「示談」の問題や「過失相殺」の問題といった派生的な重要問題があります。これらについては、当サイトを熟読して下さい。

 

 

2 事業主責任災害

 

次に、加害者(損害賠償の責任者)が事業主である事業主責任災害についてです。サイトではこちらです。

先に少し触れましたが、事業主責任災害については、法附則第64条という規定があります。

本条は、要するに、被災労働者等が労災保険から年金たる保険給付を受けられるなら、将来支給される分も事業主の損賠賠償債務からあらかじめ控除(減縮)すべきではないかという問題意識から定められた規定です。

 

先に、(3)で記載していました「政府が保険給付が行った場合に被災労働者等が第三者に対して有する損害賠償請求権の減縮の問題」は、政府がすでに保険給付を行った場合の問題(支給済みのケース)であるのに対して、本問は、将来支給される分についてもあらかじめ差し引くことができないのかという問題です。

 

学説では、事業主が労災保険に加入している利益を保護する見地から、将来支給予定分についても事業主の損賠賠償の額から差し引くべきという立場が多かったのですが、【三共自動車事件=最判昭和52.10.25】判決がこれを否定しました。

そこで、この判例を尊重しつつ、できるだけ事業主の保護も図るという見地から、前払一時金の制度がある保険給付等については、一定の要件の下、将来支給予定分の保険給付についても、損害賠償の額から差し引くことができる旨を規定したのが法附則第64条です(その他に、事業主が先に損害賠償を行った場合の保険給付の控除の問題についても規定しています)。

 

要点は以上の通りですが、細部は、非常に難しいです。実務上も、制度の難解さから、この法附則第64条はあまり機能していない(利用されていない)といわれています。

さしあたりは、本文をざっと読んで頂き、あまり深く入り込まずに、過去問がある個所をチェックして頂ければよいと思います。

こちらで具体例を挙げていますので、これを参考にイメージして下さい。

 

なお、例えば、こちらに法定利息分の控除の図をいくつか掲載していますが、あくまで参考程度です。このような部分は、試験には出題されませんので、流して下さい。

 

以上、保険給付の通則でした。

非常に長くなりましたの、今回の労災保険法の解説は、ここで終わります。次回、労災保険法の解説の最終回となり、社会復帰促進等事業や特別加入です。

 

 

〔Ⅱ〕徴収法の改正

 

ところで、徴収法については、11月30日に、有期事業の一括の地域要件の廃止と一括有期事業開始届の廃止を中心とした施行規則の改正が公布されました。

厚労省からは、このような資料(こちら)が出ています。

要するに、行政コストの軽減(と事業主の負担軽減)のため、上記の2制度を廃止するというものです(平成31年4月1日施行です)。

 

当サイトで、掲載している個所をリンクします。

 

・有期事業の一括の地域要件の廃止=こちら

 

・一括有期事業開始届の廃止=こちら

 

なお、試験対策上はあまり問題とならないのですが、実は、今回の改正により、届出等の記載事項について、新たに施行規則に明記されました(そのため、かなり多くの改正があります)。

ただ、試験対策上は、ほぼ不要です。

従来、届出等については、施行規則の様式において図が規定されていたのですが、今回の改正により、この図中の届出等の記載事項が、新たに施行規則の本則中に明記されました。従って、届出等の記載事項が、従来と実質的に変更となったわけではありません。

例えば、保険関係成立届の記載事項については、こちらの7~9の3つの事項が新たに施行規則の追加されたのですが、これらの3つは、従来から、施行規則の様式に定められていたものですので、実質的な取扱いの変更はありません。

ただし、代理人選任・解任届において、「代理人が使用すべき認印の印影」の届出が明記されましたので(こちら。これも従来と取扱いはかわりませんが)、一応、押さえておきます。

 

 

〔Ⅲ〕白書対策講座~「働く女性の実情」のアップ

 

最後に、「働く女性の実情」がようやく完成しましたので、アップします(白書対策講座のこちら)。

かなりボリュームがあり、時間がかかりました。

 

「働く女性の実情」については、10年くらい前までには、そこそこ出題がありました(「M字型カーブ」は、平成17年度の選択式で出題されています)。

これらの過去問は、上記の目次のうち、「Ⅰ 働く女性の状況」の部分から出題されていました。

この部分は、最新の「働く女性の実情」では、「平成29年 労働力調査」等のデーターがまとめられているものが多いです(なお、最新の平成30年の労働力調査は、2月頃公表されます)。

 

適宜、過去問や当サイトで作成しました設問を挿入していますので、参考にして下さい。

 

※ その後、「雇用均等基本調査」もアップしました。

 

では、また、次回です。

 

 

平成30年11月30日(金曜)

さてさて、当サイトは、過去、最も改訂作業が早く進んでいます。この数年間で、ほとんどの条文のリンク付けが終わっており、リンク付け作業に要する時間があまりなく、各科目について目標とするレベルにかなり近づいてきています。

今年度、過去最高の内容に仕上げます。

 

では、今回は、労災保険法の解説その1です。その前に、徴収法関係が改正されましたので、お知らせします。

 

 

〔Ⅰ〕徴収法の改正

 

本日、徴収法関係の改正が官報に掲載されました。

以前、お伝えしていましたが、有期事業の一括の要件としての「地域要件」の廃止(徴収法のこちら)と一括有期事業開始届の廃止(こちら)が中心内容です(これらは、平成31年4月1日施行です)。

 

試験対策上は、以上の2点がポイントですが、実は、施行規則の条文が広範囲に改められています。

即ち、従来、施行規則の様式中で掲載されていた届出等の記載事項が、施行規則の本則中で規定されることに改められました(平成30年11月30日施行)。ただし、従来の取扱いの実質的な変更はありません(例えば、保険関係成立届の記載事項の追加については、こちら)。

なお、代理人選任・解任届における「代理人が使用すべき認印の印影」の届出(こちら)など、押さえておくべき事項もあります。

ちょうど、徴収法の改訂に取り掛かる時期ですので、タイミングよく改訂できます。

上記の「地域要件」の改正等の内容については、次回のメールあたりで解説します。

 

 

〔Ⅱ〕労災保険法の解説 その1

 

では、今回から、労災保険法のポイント解説をしていきます。

 

先の本試験では、労災保険法は、比較的得点しやすい内容でした。

択一式は、保険給付に関する割合易しい問題が頻出され、選択式は、特別加入に関する出題でしたが、3点以上の得点を確保しやすいものだったといえます。

 

平成30年度版の労災保険法の直前対策講座では、「過去10年の選択式の出題テーマ」(直前対策講座のパスワード)を挙げ、「業務上の疾病」と「第三者行為災害」に関する出題がそれぞれ2回あり、「類似するテーマ・論点から出題されているケースがある」ことを見ておきました。

今回の特別加入についても、平成27年度に続いて2回目の出題となりました。択一式でも、業務上の疾病が1問出題されていました。

なお、出題されるジャンルは同じといっても、前回出題時と同じ内容が出題されているのではなく、異なる個所が出題されています。

労災保険法の試験対策としては、過去問が出題された個所だけでなく、その周辺部分を広くチェックしておくことがよさそうです。

 

以下、今回は、客体までの解説です。

 

(Ⅰ)序論

 

まず、こちらの序論では、労災保険法の目的や体系について説明しています。

 

1 体系

 

(1)社会保険の体系

 

社会保険(ここでは、労災保険法のほか、今後学習します雇用保険法、国民年金法、厚生年金保険法、健康保険法以降の医療保険法などを広く含めます)の体系については、基本的には、こちらの図のように、以下の流れで整理できます。

 

(ⅰ)主体 ➡ 保険者と被保険者が中心です。

 

(ⅱ)客体 ➡ 当サイトでは、保険事故や報酬の問題を取り扱います。

 

(ⅲ)事業 ➡ 事業は、大別して、保険給付と保険給付以外の事業に分かれます。

 

(ⅳ)費用=財政 ➡ 保険料や国庫負担等に関する問題です。

 

(ⅴ)その他 ➡ 不服申立て、消滅時効、行政庁の監督、罰則等を見ます。

 

 

労災保険法の場合は、(ⅰ)について、被保険者という概念が存在しないこと、また、(ⅳ)について、保険料は、全額、事業主が負担し、労働者は負担しないことが大きな特徴となっています。

これらは、労災保険制度が、元来、労基法の使用者の災害補償責任(無過失責任です)を実効化させるための保険制度であること(事業主は、これにより災害補償責任のリスクを免れます)に起因しているものと解されます。

 

なお、保険料に関する詳細については、徴収法が規定しています。また、上記(ⅰ)で登場します暫定任意適用事業についても、徴収法で学習する事項が多いです。

 

 

(2)保険給付の体系

 

次に、上記(ⅲ)の「事業」のうち、「保険給付」の体系図について、こちらで掲載しています。

今後の各種社会保険法の保険給付についても、この体系図がベースとなります。

保険給付の学習の際は、この体系図を思い浮かべて頂き、あとは、各保険給付に関する知識をこの骨組みに沿って整理していけばよいです(科目や保険給付ごとに、この体系図内の骨組みの内容や配列が若干修正されることはあります)。

 

以上が、社会保険法全体のフレームワーク・プラットフォームとなる部分です。

 

 

2 目的

 

労災保険法の目的等については、前記リンク先の序論のページ(こちら以下)です。

 

目的条文(第1条)については、平成22年度に出題されていますが、時期的には、そろそろ再出題されてもおかしくありません。学習の最終段階では、入念にキーワードをチェックすることが必要ですが、学習の初期段階においてもなじんでおいて下さい。

 

労災保険法は、もともとは、労災保険制度を定めることにより、労基法の使用者の災害補償責任を実効化させようとしたものです。

即ち、労基法の災害補償制度により、業務災害について、使用者には無過失の災害補償責任が生じますが、これにより使用者は重い負担を負うこと(使用者のリスク軽減の必要性)、また、実際は、使用者の無資力等により被災労働者等(被災労働者、その遺族又は葬祭を行う者をいいます)の迅速で充分な救済が図られないおそれもあること(被災労働者等の保護の必要性)等を考慮して、使用者が保険料を拠出し、政府が管掌(運営)する災害保険制度とすることにより、労基法の災害補償責任を実効化させようとしたものが労災保険の制度です。

そして、当初、労災保険制度は、このように労基法の災害補償制度に対応した災害保険制度でしたが、その後、労災保険制度の内容の充実が図られ、現在は、労災保険制度は労基法の災害補償制度を大きく上回る内容の保険制度となっています。

以上が労災保険制度の骨格となります。

 

【学校法人専修大学事件=最判平成27年6月8日】においても、労災保険制度の性格について、ほぼ同様の考え方が示されています(こちら以下)。

 

 

(Ⅱ)主体

 

主体については、大別して、保険者と適用労働者について学習します。

 

1 保険者

 

保険者については、こちらのページです。

「事務の所轄」(こちら以下)は、労災保険法の総まとめ的な事項となります(かなり細かい事項です)。今後、本文の各所においても、このページの「事務の所轄」についてリンクしていますので、学習が進むに連れて、次第に理解・記憶を深めていけると思います。

初学者の方は、ここら辺は余り深入りせずに、ざっと流し読みで結構です。

 

 

2 適用労働者

 

(1)事業

 

労災保険法は、労働者を使用する事業を「適用事業」としており(第3条第1項)、労働者を使用する事業については、原則として、労災保険法が強制適用されます。この例外が、暫定任意適用事業です。

換言しますと、事業は、大別して、強制適用事業(労災保険法が当然に協定適用される事業)と暫定任意適用事業(労働者を使用する事業であっても労災保険法が強制適用されない事業)に分かれます(事業の体系はこちら)。

 

こちら以下で、この「事業」について学習します。主に、暫定任意適用事業に関する知識が多くなっています。

この労災保険の暫定任意適用事業については、条文がわかりにくいため、あまり条文を読まないで結構です。どのような事業が暫定任意適用事業になるのかという「要件」の結論(こちらこちらの図)を押さえて下さい。

 

上記ページの次のページでは、「暫定任意適用事業の保険関係の成立と消滅」についてもまとめています(通常は、徴収法で学習するのですが、まずはこちらで見ています)。

最終的に、こちらの表を覚えることができれば、この問題に関する学習はほぼ完成です。この表の知識を覚えるという観点から、本文をお読み下さい。

手続に関する問題は、徴収法で学習します。

 

 

(2)適用労働者

 

労災保険法の適用の対象となる労働者(適用労働者。こちら以下)は、労働基準法第9条に規定する「労働者」のことと解されています(理屈的には、労基法の労働者と労災保険法の労働者を分けて考えることも可能なのですが、前述の通り、労災保険制度が労基法の災害補償責任を実効化させるものであることが重視されて、「労災保険法の労働者=労基法の労働者」と解されています。最高裁も、直接は明言してませんが、「労災保険法の労働者=労基法の労働者」を前提とした判断をしています)。

そこで、労災保険法の労働者については、基本的に、労基法で学習しました労働者の知識を援用できます。

 

派遣や出向に関する適用関係については、こちらの図を参考にして下さい。

 

上記の図の下に労働者派遣に係る労災保険法の適用関係等に関する重要な通達を掲載していますが(選択式からの出題もあり、頻出です)、かなり長文であり、読むのにとても時間を要しますので、スキマ時間でもご利用下さい。

 

なお、平成28年度の択一式試験では、適用労働者に関して1問出題され、平成29年度は、適用除外について1問出題されました。今回の平成30年度は、適用労働者・適用除外について出題がありませんでしたが、引き続き注意です。

 

以上で、主体について終わります。

 

 

(Ⅲ)客体

 

客体については、業務災害・通勤災害の認定と給付基礎日額が重要です。

 

1 業務災害の認定

 

(1)認定方法

 

業務災害の認定(こちら以下)については、最近の択一式では、1問出題されることが定番だったのですが(通勤災害の認定を含むことがあります)、平成30年度は出題されませんでした(もっとも、業務上の疾病(心理的負荷による精神障害)の問題は出題されましたが)。

 

業務災害の認定については、さすがに、少々、出題しやすい事例が少なくなってきたのかもしれません(実務で問題となった事案を出題しているのが通例です)。

ただ、来年度は、再度、出題されるかもしれませんので、当サイトの業務災害の認定の個所はざっとご覧下さい(当サイトでは、実務書から事案と結論を紹介しています)。

 

なお、業務災害の認定の考え方自体は、非常に難しいため、ほどほどにして頂き、試験対策としては、事案とその事案においてどのような結論が取られたかのかを押さえる程度にして下さい。

事案を学習する場合は、業務起因性(業務災害性)が否定されたケースを押さえておくと効率的です。

 

ここでは、念のため、若干、理屈面に触れておきます(毎年、記載しているのですが、試験対策上は直接関係しませんので、読み流しで結構です)。

 

業務災害、即ち、「労働者の業務上の事由による負傷、疾病、障害又は死亡」に該当するためには、「業務」(を行っている)といえること(業務遂行性)、及び当該業務により傷病等が生じたこと(業務上の事由「による」こと。業務と傷病等との間に因果関係が存在すること。業務起因性)が必要と解されています。 

(これについて、業務起因性だけが要件であるという立場も有力ですが、試験対策上は、業務遂行性と業務起因性が要件であり、業務上の疾病については、業務遂行性が業務起因性の判断の中に解消される程度に押さえれば足ります。)

 

業務起因性は、当該業務と傷病等との間に相当因果関係がある場合に認められるとされており、業務に内在(ないし随伴)する危険が現実化したものと経験則上認められることと言い換えられています。

このような抽象的な考え方自体には問題はないのですが、「因果関係が経験則上認められる」といっても、実際は、判断の基礎となる事情をどのように考えるか等によって結論が異なってくるため、相当因果関係の判断方法は難しい問題です。

 

サイト中でも記載していますが、業務中にハブにかまれたケースでは、業務災害と認定されています。しかし、東京とか北海道でハブにかまれたとしますと、それらの地域にはハブは通常は生息していないため、かかる事情を基礎として経験則上の因果関係を判断するなら、相当因果関係は否定されるということにもなり得ます。通常ではほぼおこらないケースだからです。

 

しかし、実務はそのようには考えていないといえます。おそらく、東京や北海道でハブにかまれたと事案であっても、業務災害性を肯定するでしょう。

実際に、業務中にハブにかまれて負傷しているなら、これを労災保険で保護しないというのは、被災労働者に酷といえる面はあります。

また、例えば、通勤災害の通勤起因性に関する事案ですが、通勤中に、ビルの屋上から落下してきた「人」により負傷した場合についても、通勤災害と認められています(こちら)。

これも、経験則上は、あまり起こり得ないケースであり、「通常起こりうることなのか」、「一般的に予測できることなのか」といったような視点を強調しますと、この事案でも通勤と負傷との間の相当因果関係が否定されてしまいます。

ただ、この事案でも、ビルの屋上から看板等が落ちてくるケースと結論が大きく異なることが妥当なのかという問題があります。

 

結局、当該事案において労災保険の適用を認めることが妥当なのかという配慮が必要となるものといえ、通常起こりうることなのか、予測可能なのかといった点を強調し過ぎますと、実務の結論が説明できなくなります(一方で、「そのような事情が一般にあり得るのか、どの程度あり得るのか」という考慮を全くせずに因果関係を適切に判断できるのかという点については疑問もあり、ここら辺が因果関係の問題の難所となります。理論上は、これらの事業も客観的な事情であり、これらをも判断基礎の一つとして考慮した上で経験則に則り因果関係を判断するという方法はとれるはずです)。

理屈的には、実務の結論をすっきり説明することは困難なケースが少なくないのですが(特に、地震が発生した場合に業務災害・通勤災害を広く認める実務の結論については、その結論自体は妥当としても、理屈的に説明しにくいケースが多いです)、要するに、現状では、説得力ある具体的基準を十分に導き出せていないということだと思います。

 

さしあたり、試験対策上は、シンプルに、次の程度に考えておきます。

即ち、業務遂行性が認められる場合(例えば、作業中のケース)は、業務起因性が肯定されるのが原則であり、ただし、労働者の業務逸脱行為(恣意的行為)や私的行為により災害が発生した場合や特殊・例外的要因により災害が発生した場合(例:天災地変(自然災害)や第三者の異常な行為の関与など)には業務起因性が否定される。

要するに、業務中の事故であるなら、特段の事情がなければ、業務起因性も肯定されるというのが基本的考え方といえます。後は、この業務起因性が否定されるような特段の事情があるケースを個別に吟味するということになるのでしょう。

 

ところで、試験対策とはあまり関係ないのですが、相当因果関係という概念は、刑法上の因果関係についても使用されています。

本来、相当因果関係という考え方は、単に原因と結果との間に条件関係がある場合に広く因果関係を肯定しては不都合がある(刑法の場合は、犯罪が拡大し過ぎる、労災保険法の場合は、労災保険による保護が拡張し過ぎる)ことから、因果関係を適切に調整しようというものです。

この相当因果関係の判断方法としては、わかりやすいのは、一般人が予測可能なような事態・通常起こり得るような結果について因果関係を肯定するという考え方だと思います(刑法の学説では、以前は、このような考え方が多かったです)。

しかし、そのような考え方では、刑法上は、不当に犯罪が不成立になるような場合があること、また、労災保険法では、労災保険による保護に欠ける場合があること、といった実務上の感覚があるのだと思います。

そこで、刑法上、客観的な事情を基礎として相当因果関係を判断するという客観説(いろいろなバリエーションがあります)も有力に主張されましたが、これを徹底すれば、結果が発生した以上、常に因果関係は肯定されるということになりかねません。

このようなことから、刑法上、どのように相当因果関係を判断するのが妥当なのかがはっきりしないという事態になっていました(刑法において、最高裁は、以前、相当因果関係説を採用しているかの判示をしたこともあったのですが、平成2年の最高裁判決前後から、相当因果関係説では説明しにくい裁判所の判断が連発され、現在では、最高裁は相当因果関係説を採用していないという理解が一般的となっています)。

 

そして、近年、刑法学説では、判例の示す考え方を、危険の現実化の法理として説明する立場が有力化しています。

当初の行為に含まれていた危険が結果発生に実現されたのかを実質的・総合的に判断するという考え方です(具体的には、当初の行為の危険性がそのまま実現されたと評価できるのか、当初の行為から誘発された危険により結果が発生したのかなどの諸事情を検討します。その点では、実際は、決め手となる判断基準がないに等しいと批判されていますが)。

 

刑法と労災保険法とでは、法の目的が全く異なりますので、同様には取り扱えませんが、労災保険法の因果関係についても、古くから、「業務に内在(ないし随伴)する危険が現実化したものと経験則上認められること」といった抽象的な判断基準が使用されている点では類似しています。

上記の刑法上の「危険の現実化の法理」中の「行為」とある部分を「業務」に読み替えると、労災保険法における業務起因性に関する判断方法の参考程度にはなります。

いずれにしましても、刑法上も労災保険法上も、因果関係について、上記の「業務に内在(ないし随伴)する危険が現実化したものと経験則上認められること」を具体的にどのように展開するのかという点の説明には成功していないというのが実態だと思います。

従いまして、試験対策上は、理屈面には深入りせずに、事案の概要とその結論を押さえることに絞りましょう。

 

 

(2)歓送迎会終了後の送迎行為の業務遂行性

 

次に、近時の判例として、歓送迎会終了後の送迎行為の業務遂行性について判断しました【最判平成28年7月8日=行橋労基署長事件】があります(こちら)。

事案についての判断が中心の判示であり、抽象的・一般的なルールを示した判示ではなく、その点では、最重要判例とまではいきませんが、択一式で出題される可能性はありえ、一応、判旨の赤字部分を一度チェックしておいて下さい。

 

 

(3)業務上の疾病

 

次の問題は、業務上の疾病です(こちら以下)。ここは、後掲の長文の認定基準が発出されており、かなり学習が大変な個所なのですが、今回の択一式でも1問出題されましたように、頻出個所であり、引き続き注意が必要です。

 

業務上の疾病とは、業務に起因する疾病であり、災害性の疾病と職業性の疾病(職業病)があります。

まず、業務上の疾病の範囲については、労働基準法関係で規定されていることに注意が必要です(こちら以下)。

 

次に、「過重負荷による脳・心臓疾患」及び「心理的負荷による精神障害」については、それぞれ「認定基準」があり、ここからの出題が多いです。

過去問で出題された個所に注意しながら、それぞれの認定基準を読んで頂く必要があります(後掲の認定基準のあとで、過去問を掲載しています)。

かなりボリュームがありますので、スキマ時間などを利用して頂き、ちょろちょろと進めて頂いた方がよさそうです。

この認定基準は、サイト上では、次の個所で掲載しています。

 

・「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準」 【平成13.12.12基発第1063号】=こちら以下

 

・「心理的負荷による精神障害の認定基準」【平成23.12.26基発第1226号第1号】=こちら以下

 

以上、業務災害の認定に関する問題でした。

 

 

2 通勤災害の認定

 

次に、通勤災害です(こちら以下)。

通勤災害の体系は、こちらです。

 

 

(1)通勤災害の要件

 

通勤災害にあたるかどうかも、業務災害の場合とパラレルに考えて、通勤遂行性(「通勤」にあたること。通勤とは、労働者が、就業に関し、一定の移動を、合理的な経路又は方法により行うことです)と通勤起因性(当該通勤と傷病等との間に相当因果関係があること)により判断します。

ここは、第7条第2項をベースにして、知識を整理して下さい。こちらのようになります。

後は、個々の細かい知識をチェックしていきます。ここも情報量が多いですが、出題が多いということです。

 

 

(2)逸脱・中断

 

逸脱・中断(こちら)も、重要です。

大きく、原則と例外に分けて整理しています。

第7条第3項と例外について定めた施行規則第8条をベースに知識を整理して下さい。

 

 

3 給付基礎日額

 

客体の最後は、給付基礎日額です(こちら以下)。

 

給付基礎日額とは、労災保険の現金給付の額の算定基礎となる額のことです。体系図は、こちらです。

 

この給付基礎日額については、効率的に記憶することがメインです。まずは、市販本をベースに学習して頂き、わかりにくいような個所について当サイトを参照して頂く形でも結構です。

 

ただし、平成25年度の選択式において、年齢階層別の最低・最高限度額について、恐ろしい問題が出題されました。受験生サイドのほぼ誰も知らない問題が出題されたといってよく、鉛筆転がしするほかないような出題です。受験生の平均点は1.5点だったそうで、2点の救済措置になりました。しかし、1点救済でも足りないくらいです。平均点が1.5点というのは、その程度知っている知識があったというのではなく、たまたま1か所か2か所偶然に正解したケースが多かったということだと思います。

 

労災保険法では、平成29年度の択一式で判例が多く題材とされましたように、難問が出題されることがあります。

労災保険法は、できるだけ当サイトを読んで頂いた方が安心です。

 

スライド制や年齢階層別の最低・最高限度額については、こちらのまとめの表もご参照下さい。

 

次回は、保険給付のポイント解説に入ります。

 

 

 

〔Ⅲ〕白書対策講座

 

白書対策講座については、「働く女性の実情」がやっと完成しました。まだ目次を作っていず、内容の再チェックも必要なため、次回、公開致します〔追記:公開しました〕。

 

 

では、また次回です。

 

 

平成30年11月22日(木曜)

では、労基法の解説の続きです。就業規則からです。

 

 

〔1〕就業規則

 

就業規則は出題が多く、重要です。労基法か労働一般(一般常識)のどちらか又は両者で出題されることが多いです。出題内容も、簡単ではないことが少なくないです。

 

今回の試験では、労基法では、択一式の問7で1問出題され、また、労働一般の択一式の問3のウ(就業規則の不利益変更における主張立証責任)の出題がありました。

平成29年度は、労基法からは出題されませんでしたが、労働一般の択一式の問1で2肢出題されました(両肢とも、理論的な問題であり、難しいです。一方は、最新の最高裁判例からの出題でした)。

 

就業規則については、以前は、労基法ですべて規定されていました。しかし、労働契約法の施行(平成20年3月1日施行)後は、主に就業規則の「効力」に関する規定が労働契約法で定められたため、現在は、就業規則に関する規定は労基法と労働契約法の両者で規定されているという少しわかりにくい状態になっています。

 

当サイトでは、この就業規則の問題は、労基法で学習します(労働契約法のテキストの中では、就業規則について、労基法における記載内容をまとめた形で掲載しています)。

 

この就業規則の全体像は、こちらの図のようになっています。

大まかには、この図の「1」(四角で囲んだ1です)の「作成」については、労基法で定められており、「2」「効力」の〔Ⅰ〕「就業規則と他の法源との関係」については、労働契約法で定められています。

つまり、ごく大まかには、就業規則の「効力」(効果といっても同義です)の主要問題については、労働契約法で定められています。

労基法では、基本的には、罰則の適用や行政上の監督の対象とするのにふさわしい事項(例えば、就業規則の作成義務、意見聴取・届出・周知義務等)が定められ、そうでない事項が労働契約法で定められているということです。

 

このように、労基法と労働契約法では、主に罰則の適用の有無という大きな違いがあることは押さえたうえで、就業規則の全体を分断せずに学習する必要があります(就業規則の作成面は労基法で学習し、その作成された就業規則の効力面は、あとで労働一般で学習するというのは、作成面(届出義務等)と効力面が関係する問題もあることもあって、あまり効率が良いとはいえません。実務上も、就業規則の問題全体を見通せるようにしておく必要があるでしょう)。

ちなみに、就業規則について難しい問題が多いのは、労働契約法で学習します就業規則の「効力」についてです。

 

以下、就業規則のポイントについて、時系列に沿って順に見ていきます。

 

〈1〉発生

 

まず、就業規則の発生に関する問題として、「作成」について学習します。

大きくは、次の(1)~(3)の3つの事項が問題となります。

 

Ⅰ 作成

 

1 主体=作成義務

 

就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する使用者が作成義務を負います。

 

この作成義務に関する論点として、「常時10人未満」の労働者を使用する使用者(就業規則の作成義務はありません)が就業規則(就業規則に準ずるものと表現されることもあります)を作成した場合に、労基法(及び労働契約法)の就業規則に関するいかなる規定が適用されるのかが問題です(こちらです)。

この点は、それぞれの規定の趣旨、文言等を考慮して規定ごとに検討する必要があると思いますが、結論的には、「常時10人未満」の労働者を使用する使用者に適用されない規定(届出義務、意見聴取義務等)の方が少ないですから、こちらを押さえ、その他の規定は、基本的に、すべての使用者に適用されると押さえておきます。

就業規則の全体を学習してから検討してみて下さい。

なお、この問題(学説でも、適用の有無について、一部、争いがあるものがあります)については、労基法の【平成27年問7A】で出題されています(ちなみに、当サイトでは、このような問題について、従来から、詳しく説明していました)。

 

2 客体=記載事項

 

次に、就業規則の記載事項が問題となります(こちら以下)。

すでに学習しました第15条の労働条件の明示事項と比較しながら覚えます。

 

3 手続

 

手続については、意見聴取(第90条)、届出(第89条)及び周知(第106条第1項)という3つが問題となります(こちら以下)。

 

なお、これらの手続に違反した就業規則の効力についても問題です。

例えば、就業規則を作成したが届出を怠っていた場合は、当該就業規則の効力は発生しないのかです(こちら以下)。

(この点は、「変更」についてですが、平成29年度の労働一般の【問1C】で、就業規則の変更において、届出・周知の義務に違反した場合の当該変更の効力が問われています(こちら以下)。)

 

この問題についても、学説で争いがあるのですが、一般には、実質的な周知があることが就業規則(の作成や変更)の効力発生要件になると解されています。

つまり、労基法の規定する意見聴取(第90条)や届出(第89条)の義務に違反があっても、就業規則の効力は発生するとされています。

ただし、実質的な周知(=労働者が知ろうと思えばいつでも知りうる状態にしておくこと)がなされていない場合は、就業規則の効力は発生しないと解されます(【フジ興産事件=最判平成15.10.10】も同旨です)。

第106条第1項が定める周知(所定の3つの方法による周知に限定されています)までは必要はなく、実質的な周知で足りるということです。

 

これらの理由については、要するに、意見聴取や届出を就業規則の効力発生要件としている規定がないこと、これらを効力発生要件としますと、かえって労働者に不利益になることもあること(例えば、労働者に有利な就業規則の規定が定められている場合に、使用者が届出をしていないからといって当該規定の効力が生じないというのは不都合があります)、他方で、労働者が就業規則の存在すら把握できないような場合にも当該規則に拘束力を認めることは労働者に不測の不利益を及ぼしかねないことなどを挙げることができます。

また、労働契約法の制定の際、当初は、意見聴取、届出、周知を就業規則の効力発生要件と定める方向だったのですが、結局、規定化されなかった(現在の労働契約法第11条の規定に留められた)という沿革も根拠となります。

 

以上が、就業規則の作成に関するポイントです。その他の事項についても出題がありますので、当サイトをご確認下さい。

なお、就業規則の「変更」の場合も、以上の「作成」の場合とほぼ同様に考えることができます。

次に、効力の問題です。

 

 

Ⅱ 効力

 

就業規則の効力については、大別しますと、「就業規則と他の法源との関係の問題」と「減給の制裁の制限」の問題があります。前者は労働契約法で定められ、後者は労基法で定められています。

後者も重要ですが、これはサイト本文を読んで頂くとして、ここでは前者について概要に触れておきます。

 

「就業規則と他の法源との関係の問題」は、大きくは、(Ⅰ)「就業規則の最低基準効」(労働契約法第12条、労基法第93条)の問題と(Ⅱ)「就業規則の労働契約規律効」の問題に分かれます。

 

(Ⅰ)就業規則の最低基準効こちら以下

 

◆就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする〔=規範的効力〕。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による〔=直律的効力〕(労働契約法第12条)。

 

以上の効力を就業規則の最低基準効といいます。就業規則が、当該事業場の労働条件の最低基準を確保するという意味合いです。

(ちなみに、この就業規則の「最低基準効」という表現は、学説で一般に使用されるものですが、【労基法 平成27年問7B】でも使用されています。)

 

内容の詳細については、上記リンク先の本文をご参照下さい(以下の事項についても、同様です)。

 

 

(Ⅱ)就業規則の労働契約規律効

 

また、就業規則が労働契約の内容を規律する効力が認められています(これを、就業規則の労働契約規律効とか契約内容規律効ということがあります)。

この労働契約規律効は、(1)労働契約の締結(成立)段階の問題(労働契約法第7条)と(2)変更段階の問題(労働契約法第8条~第11条。中心は第10条)に分かれます。

 

労働契約法の制定前は、この労働契約規律効について規定がなかったため、使用者が一方的に定める就業規則がなぜ労働者を拘束するのか、大きな問題でした。

【秋北バス事件=最大判昭和43.12.25】判決以後、判例法理が形成されていき(判例は、民法第92条のいわゆる事実たる慣習を一応の根拠としており、内容の合理性と周知を要件として就業規則の拘束力を認める立場をとりました)、この判例法理を整理したのが、上記(2)の変更段階の諸規定です。

 

1 労働契約の締結(成立)段階の問題 ➡ 労働契約法第7条

 

まず、労働契約の締結段階における就業規則の労働契約規律効を定めた労働契約法第7条の概要です。

同条は、労働契約を締結する場合において、就業規則が合理的な労働条件を定めており(合理性)、かつ、労働者に周知されていた場合(周知性)には、労働契約の内容は、原則として、当該就業規則で定める労働条件によるとするものです。

つまり、労働契約の締結段階において、就業規則で定める労働条件が労働契約の内容となる(従って、当該労働者を拘束する)ためには、①労働条件の合理性(内容の合理性)と②就業規則の周知性が要件となるということです。

例えば、新入社員が入社してくる際に、個別の新入社員と詳細な労働契約の内容について取り決めをしていなくても、就業規則において、①合理的な労働条件が定められており、かつ、②当該就業規則が周知されている場合(知ろうと思えばいつでも知りうる状態にしておくことで足ります)は、その新入社員の労働契約の内容は、原則として、当該就業規則の規定により決定されます。

 

 

2 労働契約の変更段階における就業規則の労働契約規律効 ➡ 中心は、労働契約法第9条及び第10条

 

次に、就業規則を労働者に不利益に変更する場合が問題となります。

前提として、次の1及び2の合意の原則が定められています。

 

(1)労働契約法第8条こちら

 

◆労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を「変更」することができます(労働契約法第8条)。

 

 

(2)労働契約法第9条こちら

 

◆「就業規則」による労働条件の「不利益変更」は、労働者との合意がない限り、原則として、認められません(労働契約法第9条)。

 

以上の労働契約法第8条及び第9条(直接的には第9条です)の例外として、労働者との合意なく就業規則を不利益変更する場合の要件・効果について定めた規定が、後述の労働契約法第10条です。

 

ちなみに、平成29年度の労働一般の択一式【問1B】において、この労働契約法第8条、第9条が問題となった【山梨県民信用組合事件=最判平成28.2.19】が出題されました。

労使の合意により、就業規則により定められている労働条件を労働者の不利益に変更することが認められるのかが争われたものです(こちら以下)。

 

学説上は、労働条件の不利益変更(就業規則による不利益変更も含みます)に労働者が同意した場合(労働者との合意があった場合)であっても、なおも次に見ます労働契約法第10条(就業規則の不利益変更)における変更の合理性が必要となると解する立場も有力でした。使用者との力関係に格差のある労働者の保護を重視したものです。

 

ただ、労働契約法第8条からは、労働者及び使用者は、合意により労働契約の内容である労働条件を変更することができ、同条が労働条件を労働者の不利益に変更することを除外していない以上、労働者との合意(労働者の同意)があれば労働者に不利益な労働条件の変更も可能であると解されます。

また、労働契約法第9条を反対解釈するなら、「就業規則」による労働条件の不利益変更は、労働者との合意があれば許容されると解するのが自然です。

 

前記最高裁も、労働者との合意による就業規則の不利益変更自体は認めた上で、当該合意(同意)が、「労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点」からも判断すべきとし、合意(同意)を慎重に認定するという立場を採ったものと解されます。

 

 

(3)労働契約法第10条こちら

 

さらに、労働者の同意のない就業規則の不利益変更の要件と効果について定めたものが、次の労働契約法第10条です。

 

◆使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が合理的なものであるときは、原則として(変更されない旨の合意がない限り)、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとします。

 

つまり、就業規則の不利益変更の合理性と変更後の就業規則の周知性を要件として、労働者の同意のない就業規則の不利益変更も、原則として、その効力(労働者に対する拘束力)が認められるということです。

 

 

以上、就業規則の効力に関する労働契約法の一連の規定の概要でした。

 

なお、前記の2「労働契約の『変更』段階における就業規則の労働契約規律効」(労働契約法第9条、第10条等)は、体系上は、就業規則の「変更」に関する問題ですが、1「労働契約の『締結(成立)』段階の問題」(労働契約法第7条)と併せて一連のものとして押さえた方がわかりやすいため、本件の「発生」に関する問題の中で整理しています。

 

就業規則については、やや理屈っぽい出題がなされることがあるため、以上の概要と各条文を押さえておかれると安心です。

詳しくは、当サイトの本文をお読み頂くとよろしいですが、ただ、就業規則の個所は、年休等のようには、細かく当サイトをお読み頂かなくても大丈夫だと思います。

 

以上、就業規則でした。

 

 

〔6〕その他

 

就業規則以外は、労基法の雑則となります。ただ、重要な規定・制度が多いです。

 

1 寄宿舎

 

寄宿舎は、出題が少ないのですが、平成21年に1問(5肢)が出題されており、結構、出題対象とできる事項がありますので、要所は押さえる必要があります。

サイトの赤字や太字部分をチェックして下さい。

 

寄宿舎に関する規定の全体は、こちらです。

このうち、〔2〕の「寄宿舎生活の秩序」として、「寄宿舎規則の作成等」の問題があります。

この寄宿舎規則の全体像はこちらになり、先ほどの就業規則の全体像と枠組みはほぼパラレルです。

上記のリンク先の図の下に「寄宿舎規則の記載事項」のゴロ合わせがありますので、ご利用下さい。

 

 

2 法令等の周知義務

 

法令等の周知義務(こちら)は、各所からリンクしていることが多い規定ですが(先程の就業規則でも関係しました)、出題も多く、過去問に対応できるようにする必要があります。

 

 

3 労働者名簿、賃金台帳

 

労働者名簿、賃金台帳(こちら以下)は、平成29年1月策定の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の末尾の方(こちら)でも言及されていますので、過去問で出題された個所に注意して、当サイトを十分読んで下さい。

 

 

4 記録の保存

 

記録の保存(こちら)も、重要です。保存期間と起算日がポイントです。

記録の保存については、今後、各科目でも登場してきます。前記リンク先の下部に横断整理の表があります。

 

 

5 付加金

 

付加金(こちら)も、重要です。付加金の趣旨について触れた【最決平成27.5.19】の判示を掲載していますので、チェックが必要です。

 

なお、この判決の前年に【甲野堂薬局事件=最判平成26.3.6】という付加金に関する判決もあり、今年度版からは、一応、掲載しています(こちらです)。ざっとチェックして下さい。

 

 

6 消滅時効

 

消滅時効(こちら)も、重要です。これも、今後、各法で登場してきます。

 

なお、消滅時効の制度の趣旨等、前提知識については、労災保険法の消滅時効の個所で紹介します(若干、追記等をしています)。また、2020年施行の民法改正についても、労災保険法の当該個所で触れています。

 

 

7 罰則

 

罰則(こちら)については、さしあたり、当サイトのゴロ合わせ程度は押さえておいて下さい。

 

 

8 災害補償

 

災害補償(こちら以下)は、基本的に、労災保険法の学習でカバーされますので、読まないで結構です(労災保険法の学習の際に労基法の災害補償の該当個所をリンクします)。

ただし、災害補償のページの冒頭から「療養補償(第75条)」の手前あたりまで(図が3つ掲載されています)までは、災害補償制度の趣旨等を記載していますので、一応、お読み頂いた方がよろしいです。

 

以上で、労基法を終了します。

 

次回からは、労災保険法のポイントの解説に入ります。

 

なお、白書対策講座については、現在、「働く女性の実情」を作成中です〔追記:平成30年12月3日にアップしました。なお、同日現在、すでに、労災保険法及び雇用保険法の改訂は終了し、徴収法の労災保険率まで改訂が進んでいます〕。

 

 

2019年11月21日(水曜)

今回は、労基法の第41条以下、労基法の最後までの解説です。あまりにも長いため、適宜、カットしてあります。

 

〔1〕第41条

 

1 第41条と高プロ

 

働き方改革関連法による改正によって、第41条の次に、高度プロフェッショナル制度(第41条の2)が新設されました。

この第41条と第41条の2が、「労働時間等に関する規定の適用除外」というタイトルでまとめられました(従来は、第41条の見出し(タイトル)として、この「労働時間等に関する規定の適用除外」が付されていたのですが、今回の改正により、この第41条の見出しが外され、第41条の前に付されて、第41条と第41条の2の共通の見出しとなりました。もっとも、当サイトでは、第41条の見出しとして、そのまま「(労働時間等に関する規定の適用除外)」を付しています)。

 

このように、「労働時間等に関する規定の適用除外」として、第41条と第41条の2(高度プロフェッショナル制度。以下、「高プロ」といいます)が位置づけられていることに注意です(即ち、高プロは、「変形労働時間制」とか「みなし労働時間制(裁量労働制)」の問題ではありません)。

 

2 第41条

 

第41条は、「労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用除外」です(こちら以下)。

具体的には、次の3種類の者が対象です。

 

➀ 農業、水産業、畜産業、養蚕業の従事者(林業は含まないことに注意です)(第41条第1号)

 

② 管理監督者又は機密事務取扱者(第41条第2号)

 

③ 監視断続的労働従事者(ただし、行政官庁〔=所轄労働基準監督署長〕の許可を受けることが必要です)

 

 

適用除外とされた趣旨については、労働時間等に関する規定を適用除外とする必要性と許容性という視点から考えてみて下さい。

例えば、上記➀の農業、水産業等については、天候、季節等の自然的条件に左右され繁閑の差も大きいため、労働時間等を画一的・厳格に規制することになじまないという適用除外とする必要性があり、また、自然的条件に応じて休日等の労働条件も確保でき、労働者保護にも欠けないということが適用除外とする許容性となります。

 

第41条については、出題が多く、平成26年度の選択式では、チェーン店の店長等についての管理監督者性に関する通達が出題されています(平成20年発出の通達ですが、いつかは出題されるものとして、予備校のテキスト等では掲載していたはずです。市販の1冊本では、ボリュームの関係から、掲載できなかったでしょう)。

また、平成23年度(ことぶき事件判決。第41条の効果)と平成24年度(管理監督者)においても選択式の出題があります。

 

まずは、前記の通り、第41条の趣旨を理解した後、条文の内容とキーワードを押さえるところから始めて下さい。

 

 

〔2〕高度プロフェッショナル制度(特定高度専門業務・成果型労働制。第41条の2)

 

高度プロフェッショナル制度(こちら以下)は、高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性通常高くないと認められる一定の業務に就く労働者について、長時間労働を防止するための措置を講じつつ、労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定の適用を除外する制度です。

 

高プロについては、現在、労働政策審議会において、対象業務や対象労働者の年収要件等について詰めが行われており、政省令の制定によって詳細が確定するのは来年ということになります。

政省令の制定によって全体が確定してから学習したほうが効率的といえますので、解説の方も、その際に行うこととします。

さしあたり、当サイトの法律部分(働き方改革関連法による労基法の改正(新設)部分)について、ざっと一読して頂くとよいです。

 

ちなみに、労基法自体の改正ですが、前回は、平成20年に大きな改正がありました(平成22年4月1日施行)。

「1箇月60時間を超える時間外労働における5割以上の割増賃金率」の新設(第37条第1項ただし書こちら以下)、及び当該割増賃金の代替休暇(第37条第3項こちら以下)、並びに時間単位年休の創設(第39条第4項こちら以下)などを内容とするものでした。

このうち、「1箇月60時間を超える時間外労働」に関する前2者については、なぜか今のことろ出題がないのですが、時間単位年休については(選択式こそ出題はないですが)択一式で頻出です。

高プロ(だけでなく、その他の今回の改正)についても、択一式はもちろん、選択式を視野に入れて準備をしておく必要があります。

 

 

〔3〕年次有給休暇

 

次に、労基法で最も厄介な問題の一つである年次有給休暇(以下、「年休」といいます)です(こちら以下)。

今回は、使用者による時季指定義務(第39条第7項、第8項)が新設されており、一層、ややこしくなっています。

 

年休は、選択式で非常に出題率が高いです。平成20年度以後の11回の選択式試験の内、5回も年休の出題があります。

平成22年度、23年度、26年度、27年度、29年度です。

とりわけ、平成26年度以後に出題率が高く、来年度も引き続き危険です。使用者による時季指定義務についても、警戒です。

 

なお、上記の5回の出題は、すべて判例からです。

そこで、年休は、判例のチェックも不可欠です(時期指定に関する判例が多いです)。年休については、当サイトをすべてお読み頂くことがお勧めです。

 

なお、最新の「平成30年就労条件総合調査」によりますと、年次有給休暇の取得率は、51.1%です。

年次有給休暇の取得率が50%を超えたのは、平成11年以来のこと(18年ぶり)ですので、これらの数字は記憶が必要です(詳細は、白書対策講座のこちら)。

 

以下、年休のポイントです。

 

 

1 年休の法的性質

 

年休についても、「発生 ➡ 変更 ➡ 消滅」という時系列により整理しますが、まず、「発生」において、大きく、「年休権の発生」と「年休の時季の特定(年休権の行使等)」という2つの問題に分けて考えるのがポイントです。

 

まず、年休権(=年次有給休暇を取得する権利のことです)は、法定の要件(一定期間の継続勤務と一定以上の出勤率)を満たした場合に当然に発生する権利であると解されています(労働者が請求することや使用者が承認することは、年休権の発生の要件ではありません)=「年休権の発生」の問題。

要するに、法定の要件を満たしますと、例えば、10日などの一定日数の年休を取得できる権利が当然に発生するということです。

 

次に、発生した年休権について、具体的に年休を取得する時季を決定するのが「年休の時季の特定(年休権の行使等)」の問題です。

つまり、年休権が発生しても、そのままでは取得する年休の時季が決定されたわけでなく(従って、労働義務の消滅は生じません)、さらに年休の取得時季を特定する必要があるということです。

この「年休の時季の特定」については、従来、労働者の時季指定権の行使による場合と、労使協定に基づく計画的付与による場合がありましたが、さらに、働き方改革関連法によって、使用者の時季指定による場合が追加されました。

以上は、サイトではこちら以下で詳しく説明しています。

 

このように、年休の発生に関する問題は、大きく、「年休権の発生」と「年休の時季の特定」という2つの問題に分けて整理できます。

 

2 年休権の発生に関する問題

 

(1)要件

 

年休権の発生に関する問題については、まず、年休権の発生の「要件」を押さえます。

年休権が発生するためには、次の①及び②のいずれの要件も満たすことが必要です。

 

①一定期間、継続勤務したこと。

 

②算定対象期間における全労働日の8割以上出勤したこと(出勤率)。

 

これらについて、かなり多くの論点があります。

このうち、上記②の「全労働日」や「出勤(日)」の意義について、近時の最高裁判決(【八千代交通事件=最判平成25年6月6日】)が重要な判示をしています。

この判決により、「全労働日に算入しない日」(こちら)や「出勤日に算入する日」(こちら)が、それぞれのリンク先の図のように整理されることになりました。

 

ただし、ここは、全体を理屈的にすっきり説明することがなかなか難しい問題です(学者も苦労しています)。そこで、当サイトを参考にして頂き、あまり理屈面を掘り下げずに、ほどほどの理解ができましたら、試験対策用にこの現在の実務上の取扱いを覚えることに重点を置いて下さい。

 

 

(2)効果

 

以上の年休権の発生の要件を満たしますと、一定の日数(付与日数)の年休権が発生する等の効果が生じます(サイトはこちら以下です)。

 

なお、年休権は、基準日に発生するのですが、今回の改正により、この基準日についての定義が第39条第7項(使用者の時季指定義務)中に規定されました(従来は、労基法では定義がありませんでしたが、年休権が発生する日として、一般に「基準日」という用語が使用されていました)。

即ち、基準日とは、「継続勤務した期間を6箇月経過日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日」のことです(第39条第7項本文かっこ書)。

換言しますと、6箇月経過日ないし6箇月経過日から1年ごとに経過した日のことです。

 

 

(3)時間単位年休、比例付与

 

他方、通常の年休の例外的制度に当たるものとして、時間単位年休や比例付与の制度があります。

時間単位年休については、こちらで見ています。時間単位年休も、出題が多く、十分チェックする必要があります。比例付与は、こちらです。

 

 

3 年休の時季の特定の問題

 

年休権が発生した場合、次に、年休の時季の特定が問題となります。

前述の通り、年休の時季の特定方法は、時季指定権(及び時季変更権)、計画的付与及び使用者の時季指定義務の3種類があります。こちら以下です。

 

「時季指定権及び時季変更権」について多くの判例があり、年休に関する選択式の主な出題対象となっています。

当サイトでも、かなり判例を掲載しており、お読み頂くのに時間がかかると思いますが、内容的には似通ったものが多く、そう難しくはないと思います。

サイト中の判旨の太字部分のキーワードをチェックして下さい。

 

以下では、新設されました使用者の時季指定義務について、ポイントを見ます。

 

(A) 使用者の時季指定義務

 

(1)趣旨

 

◆使用者は、10労働日以上の年休権が発生した労働者に対し、5日については、年休権が発生した日(基準日)から1年以内に、労働者ごとに時季を指定して付与しければなりません(第39条第7項参考)。

ただし、労働者による時季指定や計画的付与により取得された年次有給休暇の日数分については、使用者は時季指定の必要はありません(第39条第8項)。

 

年5日以上の年休の取得を確実化させる趣旨です。

 

以上が、使用者の時季指定義務の基本的な知識です。

 

 

(2)要件

 

要件は、年次有給休暇の日数が10労働日以上である労働者であることです(第39条第7項本文)。

 

比例付与の対象労働者であって、年休の日数が10労働日未満の者については、使用者の時季指定義務は及びません。

 

※ なお、前年度からの繰越し分を含めて10労働日以上となる場合(年休は、翌年への繰越しが認められます。消滅の個所で学習します)は、使用者の時季指定義務の対象とならないとされます。

即ち、当該年度分の年次有給休暇のみで10労働日以上である労働者について、時季指定義務の対象となります。

(そのうち、Q&Aとか、リーフレットなどの行政資料が公表されると思います。)

 

(3)効果

 

効果としては、前述の通り、使用者は、年次有給休暇の日数のうち5日については、基準日(年休権発生日)から1年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない(労働者による時季指定や計画的付与により取得された年次有給休暇の日数分は除きます)ということです。

 

関連する知識として、以下があります。

 

(ⅰ)使用者の時季指定の際の労働者の意見聴取義務

 

◆使用者は、時季指定に当たっては、あらかじめ、時季指定に係る年次有給休暇を与えることを当該労働者に明らかにした上で、その時季について当該労働者の意見を聴かなければなりません施行規則第24条の6第1項)。

そして、使用者は、当該聴取した意見を尊重するよう努めなければなりません(同条第2項)。

 

事前の意見聴取が義務である点は、注意です(その意見を尊重することは、努力義務に過ぎません)。

 

 

(ⅱ)年次有給休暇管理簿

 

今回の時季指定義務の新設に伴い、年次有給休暇管理簿の作成及び保存が義務化されました。

即ち、使用者は、第39条第5項から第7項まで〔=労働者による時季指定、計画的付与、使用者による時季指定〕の規定により有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日(第1基準日及び第2基準日を含みます)を労働者ごとに明らかにした書類(「年次有給休暇管理簿」といいます)を作成し、当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後3年間保存しなければなりません(施行規則第24条の7)。本文は、こちらです。

 

年休の取得状況を明確化する趣旨です。使用者による時季指定だけでなく、労働者による時季指定及び計画的付与を含む「年休の時季指定」について問題となる制度です。

 

例えば、常時10人以上の労働者を使用する使用者についてのみ、年次有給休暇管理簿の作成及び保存が義務化されているのではありません。年休の取得は、事業所の規模には関係しませんから、就業規則のように、「常時10人以上の労働者を使用」という問題は登場しません。

 

 

(Ⅲ)半日単位、時間単位の年次有給休暇の取扱い

 

より細かい知識として、半日単位、時間単位の年次有給休暇の取扱いがあります。使用者の時季指定義務の全体を把握した後は、このような事項まで押さえておいて下さい。本文は、こちら以下です。

 

 

(4)年休を前倒しで付与した場合の時季指定義務の特例

 

少々ややこしい問題として、年休を前倒しで付与した場合の特例があります。

こちら以下で、特例A~Dの4つのパターンを見ています。

ポイントは、「使用者は、10労働日の年休が発生した基準日から1年以内5日の年休を時季指定しなければならない」ということです。これを視点にして、4つのパターンを考えて頂くと、わかりやすいと思います。

どの程度出題できるかは微妙ですが、当サイトのA~Dの図により、施行規則第24条の5の各項で規定されている意味が理解できる程度に学習して頂ければ大丈夫でしょう。

具体的な内容については、前掲のリンク先の本文をご参照下さい。

 

以上、使用者の時季指定義務の問題でした。新たな行政資料が公表されましたら、その際にも解説を致します。

 

 

(B)年休の時季の特定の効果

 

なお、年休の時季が特定されますと、年休の本来の効果である当該特定された日(時間)における有給での労働義務の消滅といった効果が発生します。

年休中の賃金の問題は、こちらです。

 

 

4 年休の自由利用の原則

 

時季指定の問題以外で判例が多い個所として、年休の自由利用の原則があります。こちら以下です。ここも、判例をチェックして下さい。

 

 

5 不利益取扱いの禁止

 

なお、年休の取得について、不利益取扱いの禁止が規定されています(こちら以下)。

即ち、使用者は、年休を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければなりません(法附則第136条)。

 

ただ、本条は、訓示的規定努力義務規定と解されています(【沼津交通事件=最判平成5.6.25】)。

この判決は理由を明記していませんが、本条の違反について罰則が定められていないこと、不利益取扱いを禁止する場合の通常の文言である「不利益取扱いをしてはならない」旨の規定ではなく、「しないようにしなければならない」という規定であること、本則でなく附則に定められていること等が理由として考えられるでしょう。

 

ただ、年休の取得に関するどのような不利益取扱いも許容されるとはできませんから、上記判例は、いわゆる「権利行使抑制法理」を採用しています。

即ち、当該不利益取扱いの趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、年次有給休暇の取得に対する事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合して、年次有給休暇を取得する権利の行使を抑制し、ひいては同法が労働者に右権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められるものである場合は、当該不利益取扱いは、公序に反して無効となる(民法第90条)とします。

 

このように、不利益取扱いの禁止の規定が努力義務規定である場合や、不利益取扱いの禁止の規定が存在しないような場合は、民法第90条の問題として、この判例の権利行使抑制法理を適用すればよいのでしょう。

他方、不利益取扱いの禁止の明文が存在する場合(例えば、男女雇用機会均等法第9条第3項の「雇用する女性労働者の妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止」)には、上記の権利行使抑制法理がどのように関係するのか、いわゆるマタハラ判決が出たこともあって、問題が大きいです。

 

〔以下、中略。〕 

 

 

長くなりましたが、年休については、これで終わります。次に、特殊な主体です。

 

 

〔4〕特殊な主体

 

特殊な主体については、年少者、妊産婦等及び技能者を学習します。ここでは、年少者と妊産婦等について、若干触れておきます。

 

1 年少者

 

年少者(こちら以下)は、労基法のこれまでの学習の応用問題という側面があるため、慣れるまで、結構ややこしく、学習しにくいです。

つまり、年少者については、これまで学習してきました労基法のルール(原則的なものと例外的なものがあります)のどれが適用されて、どれが適用されない(あるいは修正されて適用される)のかという点が問題となります。

年少者を学習していてつまずくような場合は、まずは、今までの労基法のルールを復習してみて下さい。

 

年少者について、当サイトでは、「労働契約」と「労働条件」に大別して整理しています(こちらの図を参考)。

 

ある程度、年少者の内容について理解された後は、要領よく暗記する作業が中心になります。例えば、最低年齢のこちらの表などを記憶する必要があります。

 

年少者の「労働条件」(こちら以下)は、結構、ややこしいです。

ポイントは、年少者については、「労働時間、休憩及び休日」に関する「原則的な規制」が厳格に適用されるということです。

例えば、1週間40時間、1日8時間の法定労働時間の制度(第32条)が厳格に適用され、36協定による時間外・休日労働(例外的な規制です)は認められません。また、新設の「高プロ」も適用されません(第60条第1項)。

 

ただし、年少者にも、労働時間、休憩及び休日に関する「例外的な規制」が適用される場合があり、例えば、臨時の必要がある場合の時間外・休日労働(第33条)は認められます。

特に出題が多いのが、年少者についても、「労使協定の締結による休憩の一斉付与の原則の例外」の規定(第34条第2項)が適用されること、第41条の「労働時間、休憩及び休日の規定の適用除外者(管理監督者など)」の規定も適用されることです。

過去問の検討が必要になります。

 

その他、年少者については、原則として、深夜労働が禁止されており、例外として深夜労働が認められる場合があります。この年少者の深夜労働の問題も重要です(こちら以下)。

 

 

2 妊産婦等

 

妊産婦等(こちら以下)についても、最近では、平成27年度と29年度の選択式で出題されています(どちらもやさしい問題でしたが)。

ここは、年少者のようには複雑ではないので、当サイトを読んで頂いてわかりにくい個所も少ないと思います。

 

なお、横断整理として、「産前産後休業の関連制度」についてはこちら、 「妊産婦の保護」についてはこちらで記載しています。学習経験者の方は、これらの関連知識についてもチェックしてみて下さい。

 

今回は、ここまでです。 

 

 

2019年11月3日(土曜)

今回から、労災保険法に入ります。

また、白書対策講座の実施を開始しました。今回は、雇用動向調査と派遣労働者実態調査からです。また、先月30日に、労働時間等設定改善指針が改正されましたので、こちらもアップしました。 

 

では、労基法の更新のお知らせと解説からです。

 

 

〔Ⅰ〕労基法の第4回目(最終回)の更新

 

前回、高度プロフェッショナル制度まで更新していますので、今回は、年次有給休暇以後、労基法の最後までの更新です。

 

・更新開始ページ=年次有給休暇のこちらのページから。

 

・更新終了ページ=労基法の最後までです。

 

なお、派遣労働者についての通達を掲載しているこちらのページも改訂しています。こちらで、安衛法の改正に関係した派遣労働者に関する責任分担について触れています。

 

更新自体は、このように労基法が終わり、労災保険法の保険給付に入っていますが、解説の方は、前回、賃金までになっていましたので、以下、労働時間から開始します。今回も、改正が多いため、一度では完結せず、2回に分けて解説します。

 

 

〔1〕労働時間、休憩、休日

 

労働時間、休憩、休日については、こちらの図で体系化しています。大まかな枠としてご利用下さい。

 

一 労働時間

 

労働時間については、原則として、法定労働時間(第32条)があり、例外として、変形労働時間制やみなし労働時間制があると大まかにとられておきます。

 

(一)労働時間の意義

 

労働時間の意義(定義)については(こちら以下)、試験対策上は、「使用者の指揮命令の下に置かれているものと客観的に評価できる時間」を労働時間と考える判例の立場(指揮命令下説)を採用します。

 

実際は、諸事情(使用者の関与の程度・態様や業務(職務)との関連性の程度、拘束性(義務性)の有無・程度など)を考慮しないと判断しにくいケースがありますが、これらの事情は、さしあたりは、使用者の指揮命令の下に置かれているものと客観的に「評価できる」かどうかという判断に際して考慮すればよいでしょう。

 

サイトの労働時間の個所では、長い判決文を掲載しているものが多く、読むのに時間がかかると思いますが、一度だけはお読み頂いた方が良いです(何度も読まれる必要はありません)。

ただ、余り深入りはせずに、判旨のキーワードをチェックして下さい。

 

 

(二)変形労働時間制

 

変形労働時間制は、一定の単位期間(広義の変形期間)中の週平均の(所定)労働時間が、週の法定労働時間を超えない範囲内において、特定の週又は日に法定労働時間を超えて労働させられる制度のことです。

 

ここでは、平成31年4月1日施行の改正により改められましたフレックスタイム制のポイントについて触れておきます。

同改正により、フレックスタイム制は、こちら(労基法のパスワード)の表のように変わりました。

文字にしますと、以下のような内容です(本文は、こちら以下)。

 

(ⅰ)清算期間の上限が従来の「1箇月」から「3箇月」に延長されたました(清算期間が「1箇月以内」から「3箇月以内」に改められたということです)。

 

(ⅱ)この清算期間の延長に伴い、清算期間が1箇月を超える場合は、短期間に長時間労働者が集中するといった弊害があるため、主に過重労働を防止するため、以下の改正が行われました。

 

➀清算期間が1箇月を超える場合は、清算期間の1箇月ごと週平均50時間を超える労働時間に係る割増賃金の支払義務

 

②清算期間が1箇月を超えるフレックスタイム制に係る労使協定の届出義務及び有効期間の定めの設定義務

 

③清算期間が1箇月を超えるフレックスタイム制に係る清算期間の一部についてのみ労働した労働者(労働期間が清算期間より短い労働者)に関する特則

 

④清算期間が1箇月を超えるフレックスタイム制に係る特例事業の例外(週44時間)の不適用

 

(ⅲ)その他、完全週休2日制の場合のフレックスタイム制の適用に関して修正が行われています。

 

以下、ポイントです。

 

1 労使協定の届出等

 

まず、上記のうち、出題しやすそうであって、かつ、学習も容易なものとして、清算期間が1箇月を超えるフレックスタイム制における②の労使協定の届出と有効期間の定めが挙げられます。④の週44時間の特例が適用されないという点についても、同様です。

これらを記憶するところから始めます。

例えば、単純化しますと、「フレックスタイム制を採用するためには、労使協定の届出が必要である」といったような出題があり得ます。清算期間が1箇月を超えるフレックスタイム制に限定されることに注意です。

 

次に、上記の③「清算期間の一部についてのみ労働した労働者に関する特則」については、学習経験のある方にとっては、すでに、1年単位の変形制で同様の制度を学習していますので(こちら)、そちらとパラレルに考えて頂ければよいです。

清算期間ではなく、「実際に労働させた期間」を単位として割増賃金を算定するという点がポイントです。

 

 

2 週平均50時間の基準

 

やや問題があるのが、上記の➀の清算期間の1箇月ごとに週平均50時間を超える労働時間に係る割増賃金の支払義務の新設です。

フレックスタイム制は、労働者が1日の始業及び終業の時刻を定められる制度であり、労働者が1日(従って、1週間等)の労働時間を自由に設定できるものです。

従って、フレックスタイム制では、1日や1週間等についての時間外労働は問題とならず、基本的には、清算期間について割増賃金を計算します(清算期間における実労働時間数のうち、法定労働時間の総枠を超えた時間が時間外労働となります)。

例えば、清算期間を3か月と定めたケースでは、3か月全体の実労働時間が、法定労働時間の総枠である「40時間(※1)×(清算期間の暦日数(例:92日)÷7日)」(≒合計525.7時間)を超えなければよいことになります。

 

(※1 なお、清算期間が1箇月を超えるフレックスタイム制の場合は、前記④の通り、週44時間の特例事業の適用はありません。)

 

しかし、これだけでは、例えば、各月の労働時間について、「6月=100時間」、「7月=100時間」、「8月=320時間」といったように、特定の期間(月)に大量の長時間労働が可能となってしまいます(この場合も、清算期間である3か月を単位としてみるなら、(3か月の労働時間の合計は520時間ですから)前述の525.7時間の法定労働時間の総枠を超えていません)。

これを防止するために、清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制の場合は、1か月単位でも時間外労働を算定しようとするのが、この週平均50時間の割増賃金の趣旨です。

例えば、上記の例の6月について、週平均50時間による法定労働時間の総枠は、「50時間×(30日÷7)」≒214.2時間となります。

従って、6月に214.2時間を超えて労働した場合は、この6月分の賃金について、割増賃金の支払義務が発生します(6月分の賃金の支払日にその割増賃金の支払義務を負うということです)。

 

なお、清算期間とした定めた3か月(例)を単位とした労働時間の合計が3か月の法定労働時間の総枠(例:525.7時間)を超えている場合は、この総枠を超えて労働させた時間が時間外労働となりますが、これは、前記の例では、清算期間が終了した8月の賃金の支払日に支払えば足りることになります(前記の週平均50時間の基準により算定した割増賃金分は、控除します)。

 

以上の清算期間が1箇月を超える場合の割増賃金について、条文上の表現をベースに整理しますと、次の通りです(第32条の3第2項)。

 

清算期間が1箇月を超えるものである場合において、使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者については、労使協定により、所定の事項を定めたときは、その協定で清算期間として定められた期間を平均し1週間当たりの労働時間が1週間の法定労働時間〔=40時間〕を超えず、かつ、清算期間をその開始の日以後1箇月ごとに区分した各期間(最後に1箇月未満の期間を生じたときは、当該期間)ごとに当該各期間を平均し1週間当たりの労働時間50時間を超えない範囲内において」、法定労働時間を超えて労働させることができます。

 

(最後に1か月未満の端数の期間が生じた場合は、その期間についても、週平均50時間を超えないことが必要です。)

 

 

3 完全週休2日制の場合のフレックスタイム制の適用

 

前記の(ⅲ)の完全週休2日制の場合のフレックスタイム制の適用の問題については、改正前から問題となっていたフレックスタイム制の不備を修正する改正です(こちら以下)。

このリンク先の本文をお読み頂くと、問題点等の内容については把握頂けると思います。

要するに、フレックスタイム制が適用される1週間の所定労働日数が5日(完全週休2日制)の労働者について、労使協定により、清算期間における法定労働時間の総枠を、当該清算期間における所定労働日数8時間を乗じて得た時間数と定めることができるということです。

 

条文をベースしますと、わかりにくいですが、次の通りです。

 

1週間の所定労働日数が5日〔=完全週休2日制ということ〕の労働者についてフレックスタイム制により労働させる場合については、使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者については、労使協定により、所定の事項を定めたときは、その協定で清算期間として定められた期間を平均し1週間当たりの労働時間が「第32条第1項〔=1週間の法定労働時間〕の労働時間(労使協定により、労働時間の限度について、当該清算期間における所定労働日数を1日の法定労働時間〔8時間〕に乗じて得た時間とする旨を定めたときは、当該清算期間における日数をで除して得た数をもってその時間〔=「清算期間における所定労働日数 × 8時間」〕を除して得た時間)」を超えない範囲内において、法定労働時間を超えて、労働させることができます。

 

つまり、〔「清算期間における所定労働日数」×「8時間」〕÷〔「清算期間における日数」÷7日〕を、「清算期間中の週平均の所定労働時間」の代わりに使用できるということです。

結局、清算期間における法定労働時間の総枠を、当該清算期間における所定労働日数に8時間を乗じて得た時間数に修正できるということです。

 

試験では、少々、出題しにくいかもしれません。さしあたり、「労使協定」で定めることが必要であること、「1週間の所定労働日数が5日」の労働者であること、「当該清算期間における日数をで除して得た数」の「7」という数字、あたりをチェックすれば良さそうです。

 

 

以上、フレックスタイム制の改正事項でした。

 

 

(三)みなし労働時間制

 

みなし労働時間制は、労働時間の算定方法の例外であり、労働時間を実労働時間で算定するのでなく、一定の時間(=みなし労働時間)を労働時間とみなすものです。

事業場外労働と裁量労働制に大別され、後者は、専門業務型と企画業務型に分かれます。こちらの図の通りです。

 

みなし労働時間制については、高度プロフェッショナル制度(以下、「高プロ」といいます)が新設された関係で、専門業務型・企画専門型と高プロを比較するという視点も必要となりました(例えば、対象業務の比較等)。

政省令が制定されて「高プロ」の内容がより具体的に確定した段階で、これらを比較した表を作成する予定です。

さしあたり、以下の点が必須です。

 

まず、「効果」として、みなし労働時間制は、労働時間をみなす制度であり、具体的には、「休憩、休日、深夜労働に関する規定」等は適用されます。

対して、「高プロ」は、「労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定」の適用を除外する制度です。みなし労働時間制については、深夜の割増賃金の規定が適用されます。

なお、以上いずれについても、年次有給休暇に関する規定は適用されます。

 

また、「高プロ」は、年少者(満18才に満たない者)については適用されません(年少者に適用されない労働時間及び休日に関する規定を定める第60条第1項において「高プロ」が追加されました)。

 

他方、「高プロ」が妊産婦について適用されないという規定はありません。また、妊産婦が請求した場合は、変形労働時間制(フレックスタイム制を除く3つ)の適用の制限、時間外労働・休日労働の禁止及び深夜労働が禁止されますが(第66条)、この第66条が「高プロ」に適用されないという規定もありません。

そこで、「高プロ」の対象労働者である妊産婦が請求した場合は、時間外労働、休日労働、深夜労働が禁止されることになります。この意味で、「高プロ」については、「深夜労働」に関する規定がすべて適用されないのではありません。「深夜の割増賃金に関する規定」が適用されないということです。

 

次に、時間外・休日労働を見ます。

 

 

〔2〕時間外・休日労働

 

時間外・休日労働の問題は、「労働時間・(休憩)・休日」の原則の例外という大きな位置づけができます(こちらの図を参考)。

 

使用者は、原則として、法定労働時間(もしくは変形労働時間制における一定の労働時間)を超えて、又は法定休日に、労働者を使用することはできませんが(第32条以下、第35条)、例外が次の1及び2です。

 

1.臨時の必要がある場合(第33条

 

(ⅰ)災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合(第33条第1項、2項)= 災害等により臨時の必要がある場合

 

(ⅱ)公務のため臨時の必要がある場合(第33条第3項)

 

2.36協定による場合(第36条

 

ここでは、改正された36協定について見ます(こちら以下)。

 

一 体系

 

まず、36協定の全体の体系図は、こちらです。少し細かすぎる図になっており、わかりにくいかもしれませんが、最小限度の骨格は、次の通りです。

 

発生の段階として、36協定の要件と効果が問題となります(なお、変更や消滅については、ひとまず、大きな問題はありません)。

「要件」は、➀労使協定の締結と②労使協定の届出です。

➀の労使協定の締結について、主体(労使協定の当事者に関する問題)や客体(労使協定で定める事項など)が問題となります。

②については、労使協定の届出が要件(36協定の効力発生要件)である点で、他の労使協定のケースと異なります。

 

36協定締結の「効果」の問題については、労使協定の一般的な効果と同様です。つまり、労使協定の締結(及び届出)により、労基法の規制を免れます(免罰的効果)。

ただし、労働者に対する拘束力は、労使協定の締結・届出をしても発生せず、就業規則等の正当な労働契約上の根拠が存在することが必要です(なぜなら、労働協約に関する労組法第16条や就業規則に関する労働契約法第12条の規範的効力あるいは同法第7条等と異なり、労使協定については労働者に対する直接の拘束力を認めた規定が原則として存在しないからです)。

 

以上が大枠です。

 

二 時間外労働の上限規制

 

問題は、改正により新設されました限度時間等の関係です。これについてのフレームは、こちらの図です。

 

(一)限度時間

 

今回の改正により、時間外労働の上限について、1箇月45時間及び1年360時間(3箇月を超える1年単位の変形労働時間制の場合は、1箇月42時間及び1年320時間。以下、この変形制のケースは省略します)という「限度時間」が労基法に定められました(第36条第3項、第4項)。

 

従来は、告示(限度基準)で定められていたものが(単に行政指導の基準でした)、今回の改正により、労基法で定められました。

そこで、36協定を締結し、届け出ていても、それが特別条項付き協定でなければ、限度時間を超えて時間外労働をさせた場合は、法定労働時間(第32条)違反として、罰則が適用されます(第119条第1号により、6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金)。(なお、罰則を定める規定(前記の第119条等)において、限度時間を定める第36条第3項及び第4項は掲げられていませんので、特別条項なしでこの第36条第3項及び第4項の限度時間に違反した場合は、法定労働時間(第32条)違反として罰則が適用されます。)

 

しかし、次の特別条項付き労使協定を締結し届け出ていた場合は、単に限度時間を超えただけでは(後述の時間外労働の上限規制に違反しなければ)、労基法違反ではなく、罰則の適用もありません。

 

 

(二)特別条項付き労使協定

 

「当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合」には、特別条項付き労使協定を締結し届け出ていれば、限度時間を超える時間外労働を行わせることができます。

 

この特別条項付き協定を締結し届け出た場合においても、次の時間外労働の上限規制があります。

 

➀1箇月についての時間外労働及び休日労働の時間 ➡ 100時間未満第36条第5項前段、なお、同条第6項第2号も同内容です)。

 

②1年についての時間外労働の時間(休日労働の時間は含みません)➡ 720時間以内(第36条第5項後段)。

 

③2箇月ないし6箇月における1箇月平均(複数月平均)の時間外労働及び休日労働の時間 ➡ 80時間以内(第36条第6項第3号)。

 

④特別条項付き協定を利用できる回数 ➡ 1年のうち6回まで(第36条第5項後段)。

 

※ 上記のうち、➀と③については、特別条項付きでない通常の36協定の場合にも適用されます。

 

※ 以上の➀~④のいずれの上限規制に違反した場合においても、罰則が適用されます(根拠条文等の細部については、本文をご覧下さい)。

  

 

三 その他

 

その他、36協定に関するやや細かい知識について、ポイントに触れておきます。

 

(一)36協定で定める事項

 

36協定で定める事項として、「対象期間における1日、1箇月及び1年についての時間外労働の上限又は休日労働の日数の上限」があります(第36条第2項第4号)。(こちら以下

 

改正前は、限度基準において、時間外・休日労働の上限として、「(ⅰ)1日、(ⅱ)1日を超え3箇月以内の期間及び(ⅲ)1年間」について、それぞれ協定することが必要とされていたものが、(ⅱ)について、改められたものです。つまり、(ⅱ)が「1箇月」に限定されました。

 

従来の定め方ですと、例えば、3箇月について100時間を時間外労働の上限と定めた場合は、ある1月のみで100時間の残業をさせることも可能であり、このような時間外労働の集中を防止するため、1箇月ごとに上限を定めさせることとしたものです。

 

 

(二)単月100時間未満、複数月80時間以内の要件を満たすことの記載

 

改正後は、労使協定において、第36条第6項第2号〔=1箇月100時間未満の時間外労働及び休日労働の上限規制〕及び第3号〔=複数月平均(2箇月ないし6箇月における1箇月平均)80時間以内の時間外労働及び休日労働の上限規制〕に定める要件を満たすことを記載する必要があります(施行規則第17条第1項第3号)。

 

具体的には、こちらの様式中のチェックボックス内をチェックします(このリンク先の様式の「表面(1頁目)」の枠内の最下部の右の方にチェックボックスがあります)。

 

この第36条第6項第2号〔=1箇月100時間未満の時間外労働及び休日労働の上限規制〕は、前記の「特別条項付き労使協定」の個所で説明しました①のことであり、同条同項第3号〔=複数月平均80時間以内の時間外労働及び休日労働の上限規制〕は、③のことです。

前述の通り、この、➀と③については、特別条項付きでない通常の36協定(一般条項)の場合にも適用されることに注意です。

 

ちなみに、この③の意味は、次の通りです。

例えば、4月が90時間、5月が80時間の時間外・休日労働の場合(これは、上記➀の単月100時間未満の規制には違反していません)は、この2箇月の時間外・休日労働の1箇月平均が「(90+80)÷2=85時間」であり、80時間を超えるため、 この③第36条第6項第3号に違反するということです。

4月に90時間の時間外・休日労働をした場合は、5月は、70時間までしか時間外・休日労働をできないことになります(「(90+X)÷2=80」のため、Xは70です)。

 

このように、2箇月、3箇月、・・・と、6箇月までの月平均をそれぞれ計算して、これらがいずれも80時間を超えてはならないという規制です。

 

 

(三)特別条項付き協定

 

1 概要

 

特別条項付き協定については、先に上限規制について触れましたが、その他の事項を含む詳細については、本文のこちら以下で説明しています。

 

今回の改正により、時間外労働の上限規制については、色々と数字が入り乱れ、かつ、「休日労働」かどうかで別れ、「以下」と「未満」が異なるものもあるなど、かなり覚えにくくなっています。

上限規制の数字だけをまとめた表を、こちらに掲載しています。

さしあたりは、この表でイメージして頂くと、数字関係は大丈夫でしょう。

 

選択式対策として、第36条の条文は非常に重要です。とりわけ、特別条項付き協定について定めています第36条第5項については、要注意です。

通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第3項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合」という特別条項付き協定を締結することが必要となる要件に関するキーワードや数字関係について、最終的には、記憶しなければなりません(第36条の他の項についても、出題対象となりそうなものが目白押しです。直前対策講座で取り上げます)。

 

 

2 割増賃金

 

特別条項付き協定においては、「限度時間を超えた労働に係る割増賃金の率」を定めることが必要です(施行規則第17条第1項第6号)。

この割増賃金の率を定めるに当たっては、当該割増賃金の率を、時間外労働について第37条第1項の政令で定める率(即ち、法定の時間外労働の割増賃金の率である2割5分以上)を超える率とするように努めなければならないことが、指針で規定されています。努力義務に過ぎません(改正前も、同様の内容が限度基準で定められていました)。

こちらに図もありますので、ご参照下さい。

 

 

(四)適用除外・適用猶予

 

以上の36協定に関する規制が適用されない事業・業務(適用除外)とその適用が一定期間猶予される事業・業務(適用猶予)があります(こちら以下)。

前者の適用除外は、「新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務」(第36条第11項)です。

この「新技術等の研究開発業務」については、安衛法の面接指導の特例が新設されており(他に、高プロの対象労働者に対する面接指導が新設されています)、この面からも注意が必要です(安衛法のこちら以下)。

 

労基法上のポイントは、「新技術等の研究開発業務」については、原則として、36協定における時間外労働の上限の規制は適用されないが、「坑内労働その他特に有害な業務に係る2時間の限度」は適用されるという点です。

 

適用猶予される事業・業務としては、「工作物の建設の事業等」、「自動車の運転の業務」、「医師の業務」及び「鹿児島県・沖縄における砂糖製造事業」の4つです。

これらは、基本的には、改正法の施行日(平成31年4月1日)から5年間は、改正後の上限規制の適用が猶予され、5年後からは改正された上限規制が適用されます(この改正後の上限規制が修正されて適用されるものがあります。例えば、自動車の運転業務の場合は、1年の時間外労働の上限について、原則である「720時間を超えない範囲内」(前述の②)が修正されて、「960時間を超えない範囲内」に緩和されています)。

 

ただ、この4つは、少々出題しにくいかもしれません(例えば、「医師の業務」については、5年後の修正内容の検討自体がまだ始まっていません)。

さしあたりは、適用除外である「新技術等の研究開発業務」には注意し、適用猶予である4つについては、まずは、その種類を押さえておくあたりから始めて下さい(サイト中にゴロ合わせもあります)。

 

36協定については、まだまだ多くの押さえるべき事項がありますが、さしあたり以上です。

なお、今後、36協定に関するリーフレット等の行政資料の公表が予定されているようです。これらが公表されましたら、ご紹介します。

 

 

〔3〕割増賃金

 

次に、割増賃金です(こちら以下)。

 

一 要件

 

使用者が、労働者に時間外労働、休日労働又は深夜労働をさせた場合には、割増賃金を支払わなければなりません(第37条)。

そこで、まず、時間外労働、休日労働及び深夜労働の意義が問題となります。いわば、割増賃金に関する要件の問題です。

これについては、本文のこちら以下です。

 

二 効果

 

(一)割増賃金の支払義務

 

割増賃金の額は、「割増率」に「算定の基礎となる賃金(算定基礎賃金。通常の賃金)」を乗じて算定します(第37条第1項参考)。

そこで、「割増率」と「算定基礎賃金」に関する知識を整理することになります。

 

1 割増率

 

割増率については、こちら以下に3つの図がありますので、ご参照下さい。

 

割増率に関する問題は、今回の択一式の問3でも出題されていました。

 

なお、時間外労働が1箇月について60時間を超えた場合は、当該超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません(こちら以下)。

 

 

2 算定基礎賃金

 

割増賃金の算定の基礎となる賃金(通常の賃金)については、すっきりしない問題が少なくないのですが、さしあたり、「算定基礎から除外される賃金」(こちら以下)は比較的押さえやすいところですので、ここらあたりから知識を固めていって下さい。

 

 

3 割増賃金の定額支給等

 

なお、「割増賃金の定額支給等 = 法所定の算定方法に基づかない割増賃金」という問題があり、近時、最高最判決が頻出しています(こちら以下)。

そこで、平成29年度と今回の30年度の選択式では、これらの判例について要注意だったのですが、択一式ですら出題されませんでした。しかし、平成31年度の試験でも、引き続き警戒が必要です。

 

これら一覧の最高裁の判決の考え方自体は、比較的、わかりやすいです。

即ち、割増賃金の定額支給等により、法所定の算定方法に基づかない割増賃金の額が算定された場合であっても、法所定の割増賃金の額以上の額が支払われるなら、労働者に不利益はありません。

ただし、法所定の割増賃金の額が支払われているかどうかを判断できなければなりませんから、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができること(判別の明確性)など、割増賃金の制度の趣旨に反しないものであれば、割増賃金の定額支給等も許容されるということになります。

最高裁の考え方は、おおむね上記の通りです。

 

あとは、次の近時の2つの判決文中の太字(及び下線部分)のキーワードをチェックして下さい(内容的に難しいため、学習が深まった段階で、じっくり検討して下さい)。

 

➀【国際自動車事件=最判平成29.2.28】=こちら

 

②【最判平成29.7.7=医療法人康心会事件(外科医残業代等請求事件)】=こちら

 

 

(二)1箇月について60時間を超える時間外労働がなされた場合の割増賃金の代替休暇

 

割増賃金の代替休暇の制度(こちら以下)は、平成22年から施行されているのですが、まだ一度も出題されていません。

先に触れましたが、1箇月60時間を超えて時間外労働がなされた場合は、当該超えた部分の割増賃金については、原則の割増率である25%以上が50%以上に引き上げられます。

ただし、労使協定により定めることによって、この引き上げられた25%以上にあたる部分について代替休暇を付与することができるという制度です。

実務上、あまり利用されていず、普及を図るため、働き方改革関連法による改正により、「労働時間等設定改善企業委員会」の決議によって当該労使協定に代替できることになりました(こちら以下)。

 

この企業委員会により代替可能な労基法上の労使協定は、本件の他は、「年休の計画的付与」と「時間単位年休」です。これら3つは、休暇に関する制度という点で共通します。

詳細は労働時間等設定改善法で触れていますが(労働一般のこちら以下)、要するに、新設された企業委員会の制度は、休暇の制度のうち、普及が進んでいないものについて、企業全体で普及の取組みを促進させるという趣旨となります。

この3つが企業委員会により代替可能となったことは、記憶する必要があります。

 

非常に長くなりましたので、今回は、労基法はここまでにします。次回は、第41条該当者・高プロ以下労基法の最後までの解説です。

 

 

〔Ⅱ〕労災保険法の更新の開始

 

労災保険法の更新を開始しました。改正の多い労基法とは対照的に、スムーズに改訂が進行しており、すでに、介護(補償)給付まで改訂が終わっています。

 

・更新開始ページ=労災保険法の冒頭からです。

 

・更新終了ページ=介護(補償)給付のこちらのページの最後までです。遺族(補償)給付の手前までの更新です。

 

解説の方は、労基法の解説の終了後、引き続き行います。

 

続いて、白書対策講座の開始のお知らせです。

 

 

〔Ⅲ〕白書対策講座の開始

 

労働経済のデーター関係も、最新データーが色々と公表されてきました。

直近ですと、10月23日に「平成30年就労条件総合調査」が公表され(こちらは、現在、更新作業中です)、30日に「労時間等設定改善指針」が(こちらは、今回、アップしました)、同じく30日に「平成30年版過労死等防止対策白書」が公表されました(こちらは、時期を見まして更新作業をします)。

 

まずは、今回、以下の3つをアップします。

 

1 労働時間等設定改善指針

 

労基法の改正に伴い、労働時間等設定改善指針が改正されました(平成31年4月1日施行)。

白書対策講座の方ではなく、労働一般のこちらでアップしています。

 

この指針が出題対象となるかについては微妙ですが、労基法の36協定の改正と関連していますので、時間のあるときに、一度は読んでおいて頂いた方が安心です。

重要な個所について、太字や色付きにしていますので、そちらを中心にチェックして下さい。

 

 

2 派遣労働者実態調査

 

次に、「平成29年派遣労働者実態調査」をアップしました(白書対策講座のこちら以下)。10月17日に公表されました最新のデーターです。

この派遣労働者実態調査は、4~5年おきに不定期に実施されている調査であり、前回は平成24年です。

平成16年の調査について、平成18年の労働一般の択一式で3肢出題されており、チェックしておいた方がよさそうです。

報道発表用資料(プレスリリース)により、調査結果のポイント(こちら以下)が整理されていますので、まずは、この部分を押さえるようにします。

今回の調査では、派遣労働者が高齢化している点と「派遣労働者以外の就業形態で働きたい」が50%近くある点が、最も重要といえます。

 

この派遣労働者実態調査は、労働一般の労働者派遣法を学習してからの方がわかりやすい個所もありますが、同法の学習前でも取り組むことは可能です。

スキマ時間にでも、その他のデーターについて、おいおいと目を通して下さい。

 

 

3 雇用動向調査

 

最後に、最新の雇用動向調査もアップしました(こちら以下)。本年の8月9日に公表された最新のものです。

雇用動向調査は、データーを記憶しにくいです。ただ、平成27年度の労働一般の選択式で2つの空欄が出題されるなど、周期的に出題されています。

こちらも、まずは、報道発表用資料を押さえておきます。 

 

次回は、就労条件総合調査をアップする予定です。

 

 

2019年10月19日(金曜)

この間まで猛暑でしたが、なんか寒くなってきましたね。本試験日からも2箇月近く経とうとしており、今年もいつの間にか終わりそうになっています。。

 

と、感傷に浸った後、労基法の第3回目の更新です。今回は、非常にボリュームがあり、解説は2回(か3回)に分けます。今回は、その1です。その他、判例や改正に関するお知らせもあります。

 

毎度のことですが、今回分も超長文になっておりますので、ご了承下さい。

 

 

〔Ⅰ〕労基法の第3回目の更新

 

まず、労基法の更新からです。前回は、労働契約の変更に関する問題まで終わりましたので、今回は、労働契約の終了からです。一気に高度プロフェッショナル制度の終わりまで進みます。

 

・更新開始ページ = 労働契約の消滅(終了)のこちらのページから。

 

・更新終了ページ = 高度プロフェッショナル制度のこちらのページの最後まで。「年次有給休暇」の手前までの更新です。

 

 

今回の主な項目ですが、まず、労働契約の終了については、解雇と期間の満了が重要です。この2つの問題は、内容的にも難しく、理解や整理に時間がかかります。

 

なお、当サイトでは、主に期間の満了の有期労働契約に関連して、労働契約法の問題(期間の定めのあることによる不合理な労働条件の相違の禁止、無期転換ルール、雇止め法理等)についても触れています。

この労働契約法上の問題も、かなり難しいです。初学者の方は、この労働契約法の問題については、さしあたり、内容をざっと把握して頂く程度で結構です。主要科目を学習し終えて、労働一般を学習する際に、再度、チェックしてみて下さい。

ちなみに、今回の更新分までで、労働契約法の諸問題についても、就業規則の関係を除き、ほぼ網羅しています。

 

労働契約の終了の問題のあとは、「労働憲章(労働者の人権保障)」(均等待遇等)の一連の問題を学習した後、労働条件に入ります。

今回は、年次有給休暇を除く労働条件について更新しています。「賃金」、「労働時間」、「休憩・休日」、「時間外・休日労働」、「割増賃金」です。その他に、第41条と高度プロフェッショナル制度があります。

 

賃金については、休業手当の関係が難しく、また、賃金全額払の原則も相殺に関連する難しい問題があります。労働時間については、フレックスタイム制が大きく改正されています。

「時間外・休日労働」については、36協定が大改正です。「割増賃金」についても、近時、最高裁判例が頻出しています。

高度プロフェッショナル制度については、現在、労働政策審議会において、政省令で定める事項の細部について検討中です。従って、高プロについて、現在は、法律で定まっている個所しか学習できない状態です。

 

以上、今回の更新内容においては、厄介な問題がかなり含まれています。初学者の方が、初めから完全に理解しようとしますと、なかなか先に進めないことになりますので、わかりにくい点等をメモ書きでもして残しておき、先に進んでみて下さい。労基法の全体を学習し終えますと、より理解しやすくなることが少なくないです。

学習経験者の方は、当サイトの記載順に学習して頂いて結構ですが、少々ボリュームがあるため、一定の単元ごとに、例えば、市販の1冊本あたり(そろそろ発売されています)もご利用頂き、知識を再チェックして頂くと、知識の記憶に役立つと思います。

 

※ ちなみに、最近発売された市販書については、働き方改革関連法に関する9月7日公布の省令や指針が掲載されていません。

例えば、安衛法の一般の労働者に対する面接指導の要件について、改正前の1月「100時間」のままになっているものもありましたので(改正により、「80時間」に改められています)、ご注意下さい。

改正による補正情報がすでにサイト上で掲載されているものもあるようですので、ご確認下さい。

 

 

以下、重要なポイントについて、ごく簡単ですが触れていきます。今回は、「賃金」までの解説とし、「労働時間」以下は、次回、解説致します。

 

 

〔1〕労働契約の終了

 

労働契約の終了の全体構造は、こちらの図の通りです。このうち、特に重要なのは、先に触れました通り、解雇と期間満了です。

 

一 解雇

 

解雇については、こちら以下です。

 

解雇とは、使用者が一方的に労働契約を解約する意思表示です。

 

(一)解雇の要件

 

解雇の要件については(これ自体が難しいため、ざっとで結構です。本文はこちら以下)、「期間の定めのない労働契約(雇用契約)」と「期間の定めるのある労働契約」でやや異なります。

大まかには、次の①と②の考え方になります。

 

➀「期間の定めのない労働契約」➡ 各当事者は、いつでも解約の申入れができるため(民法第627条第1項)、使用者は、本来、解雇権を有することになる。

 

②「期間の定めのある労働契約」➡ 使用者は、「やむを得ない事由」がなければ、期間満了前に解雇できない(労働契約法第17条第1項)。➡ 従って、使用者は、「やむを得ない事由」が存在する場合に解雇権を有する。

 

このように使用者が解雇権を有する場合であっても、解雇権の行使が濫用でない(解雇権濫用法理。労働契約法第16条)など、解雇権の行使は適法になされる必要があります。 

この解雇権濫用法理は、特に上記の➀「期間の定めのない労働契約」の場合に重要になります(「期間の定めのない労働契約」では、使用者は、本来は、自由に解雇ができる場合であるため、解雇権濫用法理により不当な解雇権の行使を規制する必要があります)。

厳密には、上記②の場合にも、「解雇権濫用法理」が問題となることはあるのですが、「やむを得ない事由」の判断と重なるため、実際は、②について「解雇権濫用法理」の問題を考える必要は少ないです。

 

次に、解雇に関する制限・規制の概要については、こちら以下です(解雇権の行使の適法性の問題といえます)。

当サイトでは、便宜上、解雇の実体的要件のうち、解雇期間制限から見ています。

 

 

(二)解雇制限の期間(解雇時期の制限(第19条)

 

◆使用者は、労働者が業務上の傷病による療養のため休業する期間及びその後30日間、並びに産前産後の休業期間及びその後30日間は、原則として、解雇できません(第19条)。

 

再就職が困難なような期間(労働能力の喪失期間及びその回復期間)における解雇を制限することにより、労働者の生活の安定を図る趣旨です。

 

このように、まずは、条文・制度の内容とその条文・制度の目的・趣旨を確認します。

その後、本文(ないし市販書)を読み進めて頂きますが、学習経験者の方は、最終的には、第19条の条文により知識を整理して頂くとよいです(解雇制限期間以外の事項についても、条文をベースに知識を整理するのが良いことは、同じです)。

 

この第19条第1項からは、まず、原則と例外があることがわかります。同条第1項の本文が原則の個所であり、ただし書が例外の個所です。

このそれぞれについて、要件と効果を考えます(例えば、原則の場合の要件は、「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間」であること、並びに「産前産後の女性が産前産後休業する期間及びその後30日間」であることです。効果は、使用者は、当該期間について解雇することができないということです)。

そして、これらの条文の文言から、どのような論点があったかを思い出します(例えば、30日間は、どの時点から起算するのか等)。

このような作業を、当サイトの本文や市販書を読んで頂いてから、最後に行って頂くと、知識の整理と記憶に役にたち、また、選択式と択一式の両者に対応できる学習方法となります(市販書では、条文を掲載していなものが多いですから、当サイトの条文をご利用下さい)。

もちろん、記憶の強化のため、図表による視覚の利用や、ゴロ合わせなども併用して行って下さい。

 

この解雇制限期間については、重要な問題が多々あり(短いスペースでは書ききれません)、当サイトをじっくりご覧下さい。

 

 

(三)解雇予告の制度(第20条、21条)

 

次に、解雇予告の制度です(こちら以下)。

 

ここも、重要かつ難しい問題が多く、詳細は、当サイトをお読み下さい。

ここでは、今回の本試験で問われました次の肢を見ておきます。

 

➀【過去問 平成30年問2オ(こちら)】

設問: 

労働基準法第20条に定める解雇予告手当は、解雇の意思表示に際して支払わなければ解雇の効力を生じないものと解されており、一般には解雇予告手当については時効の問題は生じないとされている。

 

解説:

設問は、【昭和27.5.17基収第1906号】の立場です。

内容としては、前段が、解雇予告手当の支払時期に関する問題となっており、その結論から、後段の解雇予告手当についての消滅時効の問題と結びつけています。

 

一般には、30日前までの解雇予告をしないで解雇する場合は、「解雇予告手当の全額(解雇予告と併用する場合は残額)を支払ったときに解雇の効力が生じる」と解されています(こちらを参考)。

このように考えるなら、労働者には解雇予告手当の請求権は発生しません(また、30日前に解雇予告をした場合も、当然、解雇予告手当請求権は発生しません)。

従って、解雇予告手当については、消滅時効の問題は生じないということになり、設問は、正しいことになります。

 

本問については、試験対策上は、以上で足りるのですが、厳密には、解雇予告手当の法的性質の問題が影響します。

つまり、「所定の解雇予告手当を支払わなくても解雇自体は有効であり、労働者は解雇予告手当の請求権を有する」と解することも可能であり(有効説)、この場合は、解雇予告手当請求権の消滅時効も問題となるからです。

また、学説上多数説とも思われる選択権説は、解雇予告制度に違反した解雇(即ち、解雇の予告をせず、又は解雇予告手当の支払をせずにしたような解雇)がなされた場合について、解雇の無効を主張するか、それとも、解雇の有効を前提として解雇予告手当の請求をするか、労働者に選択権を認める立場です。

この選択権説からも、解雇予告手当請求権の消滅時効が問題となることになります(野川「労働法」371頁注67においても、選択権説からは、解雇予告手当について消滅時効が問題となる旨が記載されています)。

 

しかし、判例・通達は、相対的無効説を採用しています(もともと、通達が相対的無効説を採用しており、最高裁も、【細谷服装事件=最判昭和35.3.11】でこれと同じ立場を採用したものです)。

相対的無効説は、解雇予告制度に違反する解雇について、即時解雇としては無効としつつ、使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り、解雇の通知後、30日を経過するか、通知後に解雇予告手当の支払をした場合に、その時から解雇の効力が生じるものと解しています。

この立場からは、使用者が即時解雇に固執する場合には、当該解雇は無効となりますから、労働者に解雇予告手当の支払を請求する権利は発生しないことになりますし、使用者が即時解雇に固執しない場合には、30日経過後又は解雇予告手当を支払った時点で初めて解雇の効力が生じることになるため、結局、労働者に解雇予告手当の支払請求権が発生することはないことになります。従って、判例・通達の立場からは、解雇予告手当について、消滅時効の問題は生じないことになります。

設問は、この立場を前提としていることになります。

 

出題者は、解雇予告手当の性質について関心があるようでして、【平成30年問5A(こちら)】においても、同様の論点が関係する問題を出題しています。

 

解雇に関する問題は、このように難しいものが多く、さしあたりは、概要を理解して結論部分を押さえて頂ければよいでしょう。

 

 

二 辞職、合意解約

 

解雇の次に、辞職や合意解約の問題に触れています(こちら以下)。ここは、本文をざっと一読して頂ければよいです。

 

※ なお、当サイトでは、今年度版から、労働法に関連する事項に限ってですが、民法改正について触れています。

しかし、改正民法の施行は、2020年4月1日であり、今回の試験には関係しませんので、読まずにスルーして頂いて結構です(お仕事の関係等から、民法改正の知識が必要な方はご覧下さい)。

 

上記の辞職のページでも、心裡留保や錯誤の問題を掲載していますが、特に後者は難しいため、スルーして頂いて結構です。

 

ちなみに、この民法改正に伴い、労働法に最も影響がありそうなものの一つは、消滅時効といえます。消滅時効については、すでに2020年施行の労働法の改正が決まっている事項もあります。

即ち、民法改正により、時効についてかなり大きな見直しがなされています。消滅時効の期間や起算点が改められたほか、時効の中断と停止(時効障害といいます)が見直され、時効障害が時効の「完成猶予」と「更新」に再構成されました。

そこで、労働法や社会保険法上、従来、「中断」とあった個所は、「完成猶予及び更新」に改められている個所が多いです(労災保険法から、健保法、国年法、厚年法といった広い範囲で改められています)。

この消滅時効の改正については、詳しくは、労災保険法の消滅時効の個所(労災保険法のこちら以下)で記載していますが、前記の通り、2020年施行の改正であり、かつ、内容も結構難しいため、お読み頂く必要はありません(なお、現在、労働法・社会保険法上の消滅時効の期間を伸長するかどうか検討が行われており、それによっては、さらに社労士試験関係の消滅時効の改正が追加されることになります)。

 

次に、期間の満了の問題です。

 

 

三 期間の満了

 

労働契約の期間については、すでにこちら以下で触れています。

対して、こちらのページ以下では、より総合的な問題と労働契約法上の問題を取り扱っています。

 

ここでは、労働契約法の期間(有期労働契約)に関連する問題について少し触れておきます。

 

(一)期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違の禁止(労働契約法第20条)

 

◆同一の使用者に使用されている有期契約労働者と無期契約労働者との間において、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違は禁止されます(労働契約法第20条)。(こちら以下

 

条文に即して表現しますと、次の通りです。

 

「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下、「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」

 

 

この労働契約法第20条については、平成30年6月1日の同日に、ハマキョウレックス事件と長澤運輸事件という重要な2つの最高裁判決が出されました。

ハマキョウレックス事件は、正社員と異ならない運転業務を行っている契約社員(有期契約労働者)のドライバーが、正社員にのみ諸手当等が支給されることの労働契約法第20条違反を主張して差額の支払や損害賠償等を請求した事案です。

長澤運輸事件は、定年退職後に有期労働契約により再雇用された者が、無期契約労働者と職務内容(トラックによるセメントの運搬等)等が同一であるにもかかわらず賃金に格差があったことが労働契約法第20条に違反するとして、差額の支払や損害賠償等を請求した事案です。

 

なお、労働契約法第20条は、平成32年4月1日施行の改正により廃止され、「短時間・有期雇用労働法」第8条(労働一般のこちら)に統合されます(ただし、中小事業主については、平成33年4月1日の施行となり、同年3月31日までは、労働契約法第20条が適用されます)。

そこで、基本的には、労働契約法第20条は、今回の平成31年度の試験でないと出題しにくいということになり、今回の労働一般の試験では、労働契約法第20条及び前掲の2判決に関連する出題は必至と思われます(現在の労働一般の選択式の出題傾向からは、これらの判決が選択式に出題されるかは微妙ですが、出題傾向が変わる可能性がないとはいえませんから、キーワードにも注意しておいた方が安心です)。

 

この労働契約法第20条の趣旨について、【ハマキョウレックス事件=最判平成30.6.1】は次のように判示しました。

 

「同条は、有期契約労働者については、無期労働契約を締結している労働者(以下「無期契約労働者」という。)と比較して合理的な労働条件の決定が行われにくく、両者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ、有期契約労働者の公正な処遇を図るため、その労働条件につき、期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したものである。 

そして、同条は、有期契約労働者と無期契約労働者との間で労働条件に相違があり得ることを前提に、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情(以下「職務の内容等」という。)を考慮して、その相違が不合理と認められるものであってはならないとするものであり、職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であると解される。」

 

格差防止、公正な処遇の確保、均等待遇(均等処遇)といったキーワードがポイントです。

 

以下、この両判決から、重要な判示を指摘しておきます。

 

1 その他の事情

 

労働契約法第20条の「その他の事情」について、【長澤運輸事件=平成30.6.1】は、定年退職後に有期労働契約により再雇用された者であるという事情も、「その他の事情」に含まれると判示されました。こちら以下です。

 

定年退職後に有期労働契約により再雇用された者について、正社員との間に、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲(以下、「職務内容及び変更範囲」といいます)の違いがある場合は、一般的に、その違いに応じた賃金差(基本給の額の相違)は許容されやすいといえます(問題となる待遇の性質・目的にもよりますが)。

対して、正社員と職務内容及び変更範囲が同一である場合においても、定年退職後に有期労働契約により再雇用された者であるとして待遇に相違を設けることが認められるのかが問題となったのが長澤運輸事件の事案でした。

 

この点は、問題となった待遇(労働条件)の性質・目的や当該事案の諸事情を考慮する必要がありますが、長澤運輸事件判決の事案では、正社員と定年退職後の再雇用有期労働契約者との基本給の額の相違について、その相違の額の程度が著しくないこと、当該者が定年退職後に再雇用された者であり、一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることができること、労働組合との団体交渉を経て、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給が開始されるまでの間、調整給を支給していることという事情を「総合考慮」して、不合理性が否定されました(他方、精勤手当等については、不合理性が認められています)。 

 

なお、長澤運輸事件判決の詳細は、労働一般のこちら以下でご紹介しています。

 

2 不合理性の判断

 

不合理性の判断については、こちら以下です。

労働契約法第20条の文言上、「不合理と認められるものであってはならない」であり、「合理的と認められるものでなければならない」のではありません。不合理でなければよいのです。

 

3 不合理と認められた場合の効果

 

不合理と認められた場合の効果については、【ハマキョウレックス事件=最判平成30.6.1】は、労働契約法第20条は、「私法上の効力を有する」としたうえで(従って、同条に違反する労働条件の相違を設ける部分は無効となり、また、当該相違を設けた措置が不法行為に該当することがあります)、同条の文言及び趣旨から、労働条件の相違が同条に違反する場合であっても、同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件同一のものとなるものではないとしました。

即ち、労働契約法第20条に有期契約労働者の労働条件を直接規律する効力(直律的効力・補充的効力)までは認められないという立場です。判示は、こちら以下です。

 

その他、両判決の詳細については、労働一般のこちらで記載していますが、さしあたりは、労基法で記載していますこちら以下で記載がある事項をチェックして頂ければ良さそうです。労働一般の記載については、後回しにして頂いて結構です。

 

 

(二)無期転換ルール(労働契約法第18条)

 

次に、無期転換ルールです(こちら以下)。

同一の使用者との間で締結された有期労働契約が5年(原則)を超えて反復更新された場合に、有期契約労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換させる制度です。

 

この無期転換ルール(平成24年の労働契約法の改正により新設され、平成25年4月1日施行)について、今回、初めて出題されました。労働一般の出題であり、【平成30年問3オ(こちら)】です。

 

 

平成24年の労働契約法の改正により新設された規定については、前述の労働契約法第20条(「不合理な労働条件の相違の禁止」)は、労働一般の【平成25年問1E(こちら)】で出題され、前回は、労働契約法第19条の「雇止め法理」が出題され(【平成29年問1E(こちら) 】)、今回は、「無期転換ルール」でした。

これにより、平成24年の改正により新設された3つの制度(労働一般のこちら)が全部出題されたことになります。

これらは、基本的に、条文と通達をベースとした出題内容でした。

今後も、労働契約法については、まずは、内容を大まかに理解した後は、条文通達をチェックして下さい。

 

労働契約の終了については、ひとまず以上です。次に、労働憲章です。

 

 

〔2〕労働憲章

 

労働憲章については、こちらの青の点線枠の事項を学習します。

直近3年の出題状況がこちらです。

このように、労働憲章からは、毎年度、数肢の出題があるため、じっくりとした学習が必要です。

当サイトでは、重要事項をほぼ網羅しているため、当サイトをお読み頂くのが良いと思います。内容的には、さほど難しい問題はありませんので、概要を理解した後、ポイントの記憶に努めます。

 

次に、労働条件に入り、まず、賃金です。

 

 

〔3〕賃金

 

賃金については、大まかには、次の4つの項目が問題となります(こちらの図を参考)。

 

1 賃金の要件(定義)

2 賃金支払の5原則

3 休業手当

4 平均賃金

 

いずれも、かなり難しく、厄介です。

 

一 賃金の要件(定義)

 

賃金とは、「労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」をいいます(第11条)。(こちら以下

従って、賃金に該当するかどうかは、➀労働の対象であること、及び②使用者が支払うものといえるかどうかです。

ただ、➀の判断が難しいことが多く、実際は、パターン化して整理します。

 

大まかには、次の(A)~(C)の3類型は、賃金に該当せず、ただ、「就業規則等により予め支給条件が明確化されており、使用者がその支払義務を負うもの」は、賃金に該当する、という考え方になります。

 

(A)任意的・恩恵的給付(例:祝金、見舞金、死亡弔慰金、賞与、退職手当など)

 

(B)福利厚生給付(例:資金の貸付、住宅の貸与、食事の供与、企業のレクリエーション施設の提供など)

 

(C)企業設備・業務費(実費弁償的なもの。例:制服・作業衣、出張旅費、交際費など)

 

以上の考え方を目安にして、本文を読み進めてみて下さい。

 

なお、【平成30年問4オ】で出題されましたストックオプション制度から得られる利益の賃金性については、類問が【平成14年問3A】に出題されています。

ちなみに、自社株式(自己株式)の譲渡の場合は、一定の要件の下、賃金に該当するとするのが下級審の動向です。

そこで、自社株式の譲渡は賃金に該当しうるのに、なぜストックオプション制度から得られる利益(これも自社株式の取得です)の場合は賃金に該当しないのかという視点から考察してみるのも有益です。

 

 

二 賃金支払の5原則(第24条)

 

賃金支払の5原則とは、賃金は、原則として、(1)通貨で(= 通貨払の原則)、(2)直接労働者に(= 直接払の原則)、(3)全額を(= 全額払の原則)、(4)毎月一回以上(= 毎月一回以上払の原則)、(5)一定期日を定めて(= 一定期日払の原則)、支払うことが必要であるというものです(第24条)。(こちら以下

 

こちらの図がまとめになります。

通貨払の原則」の例外については「労働協約」が問題となり、「全額払の原則」の例外については「労使協定」が問題となることに注意です。

 

5原則のうち、全額払の原則の相殺関係が難しいです(こちら以下)。

この相殺に関する一連の問題を、理屈としてうまく説明するのは、なかなか困難です。

本来、全額払の原則に賃金債権との相殺の禁止も含まれると解するなら、賃金債権との相殺に該当する場合はすべて否定するのが理屈的には一貫し簡単なのですが、調整的相殺などを否定するわけにいかないという実務上の要請があります。

そこで、判例・通達は、実務上の要請を重視した結論を採用しているのですが、全体として、理屈的に整合しているのかは問題です。

このように、相殺関係の問題は、厄介であるため、さしあたりは判例・通達の立場を押さえて頂き、過度に深入りしないことが得策です。

 

 

三 休業手当

 

休業手当についても、難しい問題が多いです(こちら以下)。

休業手当を考える前提として、厳密には、民法の危険負担の知識が必要となります。この危険負担も、厳密には難しいのですが、社労士試験に関係する事項としては、次の点を押さえて下さい。

 

(一)危険負担

 

危険負担とは、双務契約の成立後に、債務者(例:労働者)の帰責事由によらずにその債務の履行が不能となった場合に、そのリスクを債権者と債務者のどちらが負うのか(例:債権者である使用者の賃金支払義務が消滅するのかどうか)という問題です。

債務者がリスクを負うものを債務者主義といい、債務者の債権者に対する債権が消滅します(簡単に言えば、債務者主義とは、債務者が損をする場合です)。逆に、債権者がリスクを負うものを債権者主義といいます。

民法上は、債務者主義を原則としています(民法第536条第1項)。

 

危険負担について、最低限、必要な知識は以上です。

サイトの方では、民法改正に触れている関係から、危険負担についての記載が多くなっていますが、現段階では、ほぼ不要です。さしあたり、以上の知識を確認して頂いたら、休業手当に入って大丈夫です。

 

 

(二)休業手当

 

使用者の帰責事由(責めに帰すべき事由)による休業(労働不能)の場合は、使用者は、休業期間中、当該労働者に対して、平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければなりません(第26条)。この手当を、休業手当といいます。

 

1 趣旨

 

使用者の帰責事由による休業の場合は、民法の危険負担からは、使用者の賃金全額の支払義務は存続しますから(債権者主義)、平均賃金の60%以上の支払を義務づけているに過ぎない休業手当の趣旨が問題となります(こちら以下)。

 

これについて、休業手当は、次のような点で民法の危険負担と異なります。

 

(ⅰ)民法の危険負担は、特約によりその適用を排除できるとされていますが(任意規定)、当該特約が存在する場合であっても、使用者は、平均賃金の60%について休業手当の支払を強制されます。

 

(ⅱ)また、休業手当における使用者の帰責事由は、民法の危険負担の債権者(使用者)の帰責事由よりも拡張されて解されています。即ち、休業手当の使用者の帰責事由には、不可抗力は含みませんが、使用者側に起因する経営上・管理上の障害が広く含まれると解されています。

 

2 要件

 

休業手当の要件は、次の2つです。

 

➀使用者の責めに帰すべき事由によること

 

②休業であること

 

それぞれについて、多くの論点があり、具体的には、当サイトをご覧下さい。以下、若干の問題を見ます。

 

主に➀の問題として、「争議行為と休業手当」という難しい問題があります(こちら以下)。

【ノース・ウエスト航空事件=最判昭和62.7.17】は、選択式で出題される可能性がありますので、概要を把握しておいて下さい。

 

「ロックアウトと休業手当」(こちら以下)についても、【丸島水門事件=最判昭和50.4.25】が選択式で出題される可能性があります。キーワードはチェックして下さい。

 

また、派遣中の労働者(派遣労働者)の休業手当について、使用者の責めに帰すべき事由があるかどうかの判断は、派遣の使用者についてなされることも記憶します(こちら以下)。

 

 

3 効果

 

休業手当の効果については、一部労働不能の問題(こちら)と中間収入の控除の問題(こちら)が出題されています。

後者は、非常に難しいため、当サイトを参考に、ひとまずの理解で足りると思います。

 

以上、休業手当でした。

 

 

四 平均賃金

 

平均賃金(こちら以下)についても、細かい知識が多いのですが、休業手当等のようには難しくはないです。

こちらの体系図をベースに、知識をうまく整理して記憶して下さい。

 

次回は、労働時間以後の解説をします。36協定は、改正により、覚え直す事項が増えています。今回の改訂でも、色々追記しています。

更新については、年次有給休暇からです。この年休と就業規則が労基法の終盤のヤマです。

 

 

〔Ⅱ〕最新判例

 

次に、最新の最高裁判例を2つご紹介しておきます。

 

1【日本郵便事件 = 最判平成30.9.14】(こちら。なお、リンク元は、労基法の目次の最下部の「労基法(労働法)の最新判例」をクリックして下さい)

 

先月に出た最高裁判決ですが、労働契約法の「就業規則の不利益変更」、「労働契約の締結段階における就業規則の労働契約規律効(労働契約法第7条)」及び「雇止め法理」が問題となっています。

ただ、あまり出題しやすい判示がなく、さほど重要というわけでもないと思います。労働契約法の就業規則(当サイトでは、労基法の就業規則の個所で学習します)が終わりましたら、参考知識としてチェックしてみて下さい。

 

2【最判平成30.9.27】

 

これも先月の最高裁判例です。労災保険法の第三者行為災害(自動車の衝突事故において自賠責保険が関係する問題です)において、政府が代位取得した支払請求権と被害者の支払請求権との関係について判示したものです(労災保険法のこちら)。

こちらは、重要であり、択一式で出題されそうな気配があります。選択式については、あまりよいキーワードがなく、微妙です。

 

受験経験のある方で、労災保険法の第三者行為災害について一通りの知識をお持ちの場合は、さほど難しくない内容だと思います。しかし、初学者の方にとっては、かなり難しい内容のため、労災保険法の第三者行為災害を学習してから、この判例をチェックしてみて下さい。

 

※ なお、現時点で判明しています主な改正事項については、こちらのページでまとめています。

 

 

〔Ⅲ〕白書対策講座

 

今年度は、少し早く白書対策講座を開始します。

 

まず、過労死等防止対策推進法について、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」が改定されましたので、掲載しました(労働一般のこちら以下で「はじめに」の部分を取り上げ、こちらのページで、大綱の本文の途中まで掲載しています)。

出題されるかどうか微妙ですが、データー関係の重要個所について太字にしていますので、参考程度にご覧下さい。

 

この後、おととい公表されました「派遣労働者実態調査」についてまとめます(次回の更新の際にご案内できそうです)。

 

現在、雇用動向調査、働く女性の実情、医療費の動向、労働経済白書あたりが公表されており、順次、ご紹介していきます。

厚生労働白書が来月公表されますが、白書対策講座は、この厚生労働白書をメインとして、そこから、細かい分野のデーター(各論的データー)につなげていく形にします(厚生労働白書が全分野を網羅しているのです)。

労働経済白書も重要ですが、まずは、厚生労働白書をご紹介し、その後、労働経済白書の順とします(そこで、労働経済白書は、来年の公開となりそうです)。

厚生労働白書の前に、まずは、上記の雇用動向調査等の各論的データーをご紹介する予定です。

 

では、次回、残りの解説をメールします。

 

 

2019年10月5日(金曜)

今回は、労基法の第2回目の更新と国年法のインデックスのご紹介です。さっそく開始です。

 

 

〔1〕労基法の第2回目の更新

 

今回の労基法の更新は、労働契約の発生と変更に関する部分です。

 

・更新開始ページ=「労働契約」の冒頭のこちら

 

・更新終了ページ=「懲戒処分」のこちらのページの最後まで。

 

 

労働契約の全体図は、こちらです。参考程度です。

 

 

一 労働契約の成立(発生)

 

(一)要件

 

1 労働契約の成立要件

 

労働契約が成立するためには、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことを合意することが必要です。

労基法上はこの点の明文はありませんが(労働契約の定義規定がありません)、労働者について定めた第9条、労働契約法上の労働契約の成立について定めた労働契約法第6条及び民法上の雇用契約について定めた民法第623条等を参考に、上記の通り解されています。

 

この労働契約の成立要件については、労働一般の択一式において、ちらほら出題されています(こちら以下)。

 

この労働契約の成立要件に関連し、労働契約法第3条について見ていますが(こちら以下)、のちに、労働一般の労働契約法のこちら以下(労働一般のパスワード)においても詳しく見ますので、ここではざっと一読で結構です。

なお、労働契約法の同法第3条の個所では、通達や過去問を掲載し、より詳しい内容になっています(就業規則の諸問題等では、逆に労基法における記載の方が詳しくなっています)。

 

 

2 有効要件

 

有効要件(こちら以下)については、基本的には、民法の問題ですので、カットして頂いて結構です。

 

ただし、こちらで「社会的妥当性」と表現していますが、民法第90条(「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする」)については、今後もあちこちで登場しますので、記憶の片隅に留めておいて下さい。

要するに、社会的妥当性に欠ける行為(公序良俗に反する行為)は無効とされるということです。この公序良俗に反するかどうかは、諸事情を考慮して総合判断します。

 

 

(二)効果

 

1 基本的効果

 

次に、労働契約が成立した場合の効果(権利義務の発生)に関する問題です(こちら以下)。

労働契約成立の基本的な効果は、労働者の労働義務と使用者の賃金支払義務の発生です。

そして、労働者の労働義務を使用者の側(使用者の権利)から見れば、使用者の指揮命令権・業務命令権ということになります。

 

ところで、債務の履行は、債務の本旨(債務の本来の趣旨・目的ということです)に従って行わなければなりません(民法第493条、第415条。こちら)。

そこで、労働者も、債務の本旨に従って労働義務を履行することが必要です。この場合の債務の本旨については、具体的には、労働契約の解釈によって決定されます。

この債務の本旨が問題となる判例がいくつかあります(こちら以下)。

受験経験者の方は、このページに記載されている判例については、お読み下さい(事案と結論だけで足りる旨の記載がある判例については、その程度で結構です)。

初学者の方にとっては、これらの事項は難しいです。最終的に内容に慣れて頂ければ結構ですので、初期の段階では、あまりこのような難しい事項に時間をかけずに、先に進むことを優先して下さい。

 

 

2 付随的効果

 

以上は、主に労働契約の基本的な効果ですが、付随的な効果もあります。

特に出題が多いのは、労働一般の労働契約法での出題対象ですが、安全配慮義務の問題です(こちら)。

今回の【労働一般 平成30年問3イ(こちら)】でも出題されました。

その他の問題は、流し読みで結構です。

 

 

(三)労働契約の期間

 

次に、労働契約の期間に関する問題です。

こちらのページで労働契約の期間について前提となる知識に触れています。かなり細かく、複雑ですが、大まかに把握して下さい。

初学者の方は、ざっとで結構です。また、初学者の方は、「有期労働契約の全体構造」という個所(こちら以下)は、さしあたり読まずにスルーして頂いても結構です(これから学習する内容が多いです)。

 

以上までは、どちらかといいますと、労基法より民法や労働契約法の情報が多くなっています。

次の「労働契約の期間(第14条等)」になりますと、ようやく労基法で規定されている問題になります。

 

 

〇労働契約の期間 = 第14条等

 

労働契約に期間を定める場合は、原則として、3年が上限であるなど、労働契約の期間について、労基法上、ルールが定められています。全体像は、こちらの図です。

この労働契約の期間については、細かいですが、それほど難解ではありません。上記の図を参考に、知識を念入りに整理してみて下さい。出題が多いため、当サイトを熟読して頂く必要があります(初学者の方は、まずは、ざっと読んで頂き、イメージをつかんで下さい)。

 

 

二 労働契約の成立過程の問題

 

次に、労働契約が成立する前の一連の問題があります(こちら以下)。全体像は、こちらの図の通りです。

労基法以外の問題も多いですが、労基法と労働契約法で出題対象となるような問題は、採用の自由、内定、試用期間の他、労働条件の明示(労基法第15条)となります。

いずれも重要です。

例えば、採用の内定については、今回の【労働一般 平成30年問3ア(こちら)】で出題されており、試用期間については、【神戸広陵学園事件=最判平2.6.5】に関し平成22年度の選択式で出題されています。

受験経験者の方は、内定・試用期間についてのこちらのページは熟読して下さい。

 

ここでは、改正がある労働条件の明示について特に触れておきます。

 

〇労働条件の明示

 

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して労働条件を明示しなければなりません(第15条第1項)。(こちら以下

労働条件をめぐる紛争を防止し、労働者の保護を図る趣旨です。

 

(一)改正事項

 

今回の改正事項(平成31年4月1日施行の施行規則の改正)は、こちらです。次の①と②です。

 

➀明示事項の事実との一致

 

使用者は、第15条第1項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならないとされました(施行規則第5条第2項)。

 

②書面の交付等による明示

 

従来は、「厚生労働省令(施行規則第5条第3項)で定める事項」については、「書面の交付」による労働条件の明示が必要でした。

しかし、利便性等の見地から、今回の改正により、書面の交付による労働条件の明示を原則としつつ、労働者が希望した場合は、ファクシミリを利用してする送信の方法、又は電子メールその他の電子的方法による送信の方法により明示することが可能となりました(施行規則第5条第4項)。

当サイトでは、書面の交付を含むこれらの労働条件の明示の方法について、「書面の交付等」ということがあります。

 

(二)明示事項

 

次に、労働条件の明示事項ですが、就業規則の記載事項と対比した表がこちらです。

これらについては、チョロチョロ出題があり、ある程度、覚えておかれると役に立つことがあります。

 

なお、パートタイム労働法と職業安定法における明示事項も併せて対比した表がこちらです。学習の最終段階では、このような図の大まかなイメージが作られている必要があります。

職業安定法における明示事項は、平成30年1月1日施行の改正事項がありますので、注意が必要です(今回の労働一般の試験では、出題されませんでした。こちら以下)。ただし、労働一般を学習する際に、本腰を入れて記憶して頂ければ大丈夫です。

 

以上、労働契約の発生とその前段階における問題でした。次は、変更に関する問題です。

 

 

三 労働契約の変更

 

労働契約の変更(展開)についての全体像は、こちらの図の通りです。

サイトでは、配転、出向と懲戒処分について見ています。ただ、特に懲戒処分ですが、総合的なレベルの高い問題が多く(労働組合法を深く学習しませんと理解できないような判例もあります)、初学者の方は、余り深入りせずに、先に進んで下さい。

受験経験者の方は、時間を要する判例の読み込みなどは、この時期にして頂いた方がよさそうです。

 

懲戒処分(こちら以下)については、今回の労働一般の【問3エ(こちら)】で出題されています。

就業規則が労働者に拘束力を生ずるためには、その内容について、適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するとする【フジ興産事件=最判平成15.10.10】からの出題でした。とても重要な判例です。

のちに就業規則の個所でも、詳しく見ます。

 

以上、ざっとでしたが、今回の更新内容でした。次回は、労働契約の消滅(終了)として、解雇の問題等に入ります。

 

 

〔2〕国年法のインデックス

 

国年法の本試験問題のインデックスが完成しました。こちらです。

 

今回の国年法は、選択式は、厳しい内容でした。選択式の問1の現況届は、例えば、市販書ではほとんど詳しい掲載がないと思います。

問2の指定全額免除申請事務取扱者に関する納付猶予要件該当被保険者等についても、簡単な問題とはいえません。

問3は、内容的には簡単なのですが、DとEを逆にしやすいという罠があります。

 

これらの今回の選択式のうち、問1、問2は、平成28年度、29年度の改正事項を含んでいます。

 

他方、択一式の場合は、さほど難しくはありません。長文で解くのに時間がかかるような事例問題は出題されませんでした。

もっとも、国年法と厚年法は、比較的簡単な問題だとはいっても、やはり、そうそう楽に解けるわけではなく、基礎から積み上げていませんと厳しいです。

この基礎から積み上げていくという点について、実例をみてみます。

 

今回の国年法の【平成30年問6D】は、次の通りです。

 

・【平成30年問6D】

設問:

65歳に達したときに、保険料納付済期間と保険料免除期間(学生納付特例期間及び納付猶予期間を除く。)とを合算した期間を7年有している者は、合算対象期間を5年有している場合でも、老齢基礎年金の受給権は発生しない。

 

国年法や厚年法が苦手な方は、このような問題の場合には、まず、支給要件を思い出してみて下さい(もちろん、支給要件と関連しない出題も多数あり、設問に応じて対応する必要があります)。

本問では、「老齢基礎年金の受給権は発生しない」かどうかが問題となっていますから、老齢基礎年金の支給要件を満たしているかを検討します。

ここで次の3つの支給要件がすらすら出てくるのが基礎があるということになります。

 

➀保険料納付済期間又は保険料免除期間(学生納付特例及び納付猶予に係る保険料免除期間除きます)を有すること。

 

②65歳に達したこと 。

 

10年以上の受給資格期間を満たすこと。

 

そして、上記の➀と③の太字部分の意味を理解していることも必要です。①については省略しますが、③については、「原則として、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が10年以上であることが必要であるが(第26条ただし書)、特例として、保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合算した期間が10年以上であるときは、受給資格期間を満たす(法附則第9条第1項)」ということです。

 

本問を見ましたら、以上の知識が頭におおよそ浮かんでくるのが基礎知識があるということになります。このような基礎知識を積み上げる訓練を経て、本番では、本問を見たら、すぐに③の合算対象期間との合算に関する問題であると気がつくことになります。

まずは、学習段階では、以上のように、前提となる知識・土台から考えるという癖をつけて頂くとよいと思います。

この前提となる知識・土台とは、多くの場合は、「要件」あるいは「効果」に関する知識です。つまり、日常の学習では、特に「要件」をきちんと押さえ、記憶しておくという学習が重要です。

この基礎知識を蓄える学習は、やはり、結構、時間がかかりますし、覚えるという作業もありますので、あまり面白くもありません。ただ、この段階を省略して、例えば問題ばかり解いていますと、点数が伸び悩むといった原因にもなりますので、注意が必要です。

 

ついでですが、当サイトでは、今回の国年法の出題について、一応、すべてテキストで記載していました(択一式の事例問題の場合は、それを解くのに必要な知識を記載していたということですが)。

 

 

少々、長文になりましたので、今回のこの程度にします。

 

次回は、労基法の第3回目の更新と厚年法のインデックスのご紹介です(厚年法は、ほぼ終わりかけています)。

 

 

※ 追伸:

 

労働経済白書が公表されました。インデックス等の作成作業が終わりましたら、徐々に白書対策講座に取り掛かります。

 

 

では、また次回です。

 

 

・2019年9月23日(日曜)

 

2019年度版の更新を開始致します。

 

 

〔1〕労基法の初回の更新

 

まず、労基法の初回の更新です。

今回は、労基法の冒頭から労働契約の手前までですが、労使協定に関して、いきなり改正事項があります。

まず、更新の範囲からです。

 

・更新開始ページ=労基法の冒頭です。

 

・更新終了ページ=「労働条件の決定の基本原則(第1条、第2条)のこちらのページの最後までです。

 

 

1 労基法の目的・体系

 

労基法の冒頭のこちらのページについては、参考程度に流し読みして頂く程度で足ります。

 

なお、こちらの「労働時間、休憩、休日の体系図」については、下部の方で、「高度プロフェッショナル制度」が追加されています。

この制度(以下、「高プロ」といいます)は、条文上、管理監督者等の第41条(労基法のパスワード)の次に第41条の2として追加されています。

裁量労働制(専門業務型や企画業務型)の条文中に規定されているわけではないことには、一応、注意です。

つまり、高プロは、裁量労働制(これは、労働時間を一定時間とみなす制度です)ではなく、適用除外の一種として規定されています。高プロは、「労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定」の適用を除外する制度であるためです。

(もっとも、高プロの要件については、裁量労働制の要件と共通する点があります。)

 

高プロについては、現在、働き方改革関連法によって、基本的事項は明かになっており、サイト上でも、この法改正による改正事項は改訂済みです。

しかし、年収の要件等の細かい事項については、この秋に労働政策審議会で検討されてから決定されるため、まだ、確定していません。そこで、高プロについては、全容が判明してからじっくり学習すれば足りるでしょう。

 

 

2 主体

 

主体については、主に、労働者と使用者を見ます。

 

(1)労働者

 

(ア)労働者性の判断

 

労働者(本文はこちら以下)とは、「事業に使用される者で、賃金を支払われる者」です。

ただ、本文でも触れていますように、実際は、労働者性の判断は難しいことが少なくありません。

 

以前は、この労働者について、それほど出題はなかったのですが、近時、「事業」に使用される者かどうかという問題(こちらの【過去問 平成29年問2ア】)やこちら以下の細かい問題も出題されてきています。

 

さしあたりは、当サイトをざっと読んで頂ければ大丈夫でしょう。初学者の方は、余り深入りせずに、一読して次に進んで下さい。

 

 

(イ)適用除外

 

適用除外(こちら)については、最終的には、こちらの図に掲載されている知識をベースとして、本文全体を把握して頂く必要があります。

ただし、公務員の関係については、上記の図の程度の知識で足りそうです。

 

 

(2)使用者

 

使用者(こちら以下)については、要件(定義。第10条)を記憶した上で、最終的には、当サイトの使用者の全体をお読み下さい(初学者の方は、細かい個所は流し読みで結構です)。

労働者派遣や出向の関係が重要ですが、過去問を解ける程度が目標です。

 

 

3 労働条件の決定(規制)システム(労働契約等)

 

(1)全体像

 

労働条件の決定システムの全体像(こちら)は、非常に重要です。

ただし、労基法(及び労働組合法)の全体を学習してから、理解が深まるような事項も少なくないです。

受験経験者の方は、リンク先の条文の内容も含め、十分、チェックして下さい。

初学者の方にとっては、難しい内容が多いため、流し読みで結構です。

 

 

(2)労使協定等

 

労使協定等(こちら)については、改正があります。

 

まず、初学者の方は、労使協定の意義、要件、効果についての当サイトを熟読してみて下さい。細部については、今後、例えば、36協定の個所で学習しますと理解が容易になるようなものもありますので、まずは、大まかな内容を把握します。

 

さて、改正事項ですが、次の通りです(ここは、受験経験者向けです)。

 

➀フレックスタイム制

 

フレックスタイム制とは、労働者が始業及び終業の時刻を決定できる制度(労働者が1日の労働時間を決定できるもの)であり、就業規則及び労使協定により定めます。

 

従来は、フレックスタイム制を定める労使協定について、届出及び有効期間の定めは不要でした(基本的に労働者に有利な制度であったためです)。

しかし、働き方改革関連法による改正(平成31年4月1日施行)に伴い、清算期間の上限が従来の「1箇月」から「3箇月」に延長されました(清算期間が「1箇月以内」から「3箇月以内」に改められたということです)。

これにより、清算期間が1箇月を超える場合は、短期間に長時間労働者が集中するといった弊害があるため、過重労働を防止するため等の改正が行われました。

その一つとして、清算期間が1箇月を超えるフレックスタイム制に係る労使協定については、届出(第32条の3第4項)と有効期間の定め(施行規則第12条の3第1項第4号)が必要となりました。

こちらの表の④をご参照下さい。また、フレックスタイム制の観点からは、こちらの表で整理しています。

 

※ ちなみに、上記の「届出」については、働き方改革関連法(平成30年7月6日に公布)により定められたものです。

従って、2019年度版のこれから発売されるテキストでも、この届出については(掲載する時間的余裕があったことから)、通常、掲載されます。

しかし、上記の「有効期間」については、今月7日の整備省令(【平成30.9.7厚生労働省令第112号】)により定められたものです。

そこで、この有効期間については、10月に発売される市販書では、記載されていない可能性もありますので、ご利用の際は注意が必要です。

 

この7日公布の整備省令は、労基法、安衛法をはじめとする各法の省令(施行規則等)について、重要な事項を多数規定しており(雇用保険法施行規則(特定受給資格者)や厚年法・健保法施行規則(短時間労働者)等の改正まで含んでいます)、当然、試験対策上も重要です。

例えば、安衛法の面接指導は、働き方改革関連法による改正伴い、➀従来の面接指導(一般の労働者に対する面接指導)の他、労基法の改正に併せて、②新技術等の研究開発業務に従事する労働者に対する面接指導と③高プロの対象労働者に対する面接指導が新設されました。

しかし、①の従来の面接指導の要件として、「休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たり80時間〔従来の100時間から短縮されました〕を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者であること」という「80時間」の改正について定めているのは、先の今月7日公布の整備省令です。

 

このように、重要な事項が、10月発売の市販書では、掲載されていないおそれがあり(11月以降発売でしたら、掲載されているかもしれません)、この点に注意して頂くことが必要です。

このような今月7日公布の改正事項も含め、働き方改革関連法による改正事項の全体の反映については、当サイトが一番早いはずです。

 

元に戻りますが、要するに、「清算期間が1箇月を超えるフレックスタイム制に係る労使協定については、届出と有効期間の定めが必要となった」ことを記憶します。

そこで、例えば、「フレックスタイムを定める労使協定については、平成31年4月1日からは、有効期間を定めた上で、行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出ることが必要となった」といった設例は、誤りとなります(清算期間が1箇月を超えるもののみです)。

 

なお、フレックスタイム制に係る労使協定については、もう少々改正があり、例えば、完全週休2日制の場合のフレックスタイム制の適用に関する規定が新設されました。

長文となるため、ここでは詳細は省略しますが(本文はこちら以下です)、フレックスタイム制が適用される完全週休2日制(1週間の所定労働日数が5日)の労働者については(曜日の巡りによって、1日8時間の労働であっても、法定労働時間の総枠を超えてしまうことがありました)、労使協定により、清算期間における法定労働時間の総枠を、当該清算期間における所定労働日数に8時間を乗じて得た時間数と定めることができることとなりました。

 

これらフレックスタイム制の詳細については、のちにフレックスタイム制をみる際に詳しく触れます。

 

 

②労働時間等設定改善企業委員会の新設

 

労使委員会又は労働時間等設定改善委員会の決議は、一定の事項について、労使協定に代えることができます(協定代替決議といいます)。

 

「労使委員会」とは、労基法では、企画業務型裁量労働制で登場するのですが、「賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)」のことです(第38条の4第1項柱書)。

 

〔なお、「柱書」とは、条文中の「各号列記以外の部分」のことです。第1号とか第2号等でない、本文の個所です。ちなみに、法律上(条文上)は、「柱書」とは表現せず、「各号列記以外の部分」と表現します。つまり、柱書とは、慣用表現です。〕

 

他方、「労働時間等設定改善委員会」とは、労働時間等設定改善法で規定されているものであり、この委員会の決議が、労基法の一定の事項に関する労使協定に代わりとなることも、労働時間等設定改善法で定められています(同法第7条(労働一般のパスワード)。2019年度版では、新たに、この労働時間等設定改善法のテキストも作成し、すでに改正事項も反映しています。労働一般のこちら以下です)。

 

以上が従来の仕組みですが、働き方改革関連法により、新たに、「労働時間等設定改善企業委員会」が創設され(労働時間等設定改善法第7条の2)、この企業委員会の決議によっても、次の労基法の3つの事項については、労使協定の代わりになることとなりました。

 

(ⅰ)年休の計画的付与(労基法第39条第6項)

 

(ⅱ)時間単位の年休付与(同法第39条第4項)

 

(ⅲ)1箇月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金の代替休暇(同法第37条第3項)

 

この「労働時間等設定改善企業委員会」は、企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組みを促進しようとする趣旨です。

そこで、上記の(ⅰ)~(ⅲ)も、休暇の制度のうち、普及が進んでいないものについて、企業全体で普及の取組みを促進させるという趣旨なのでしょう。

 

従来、労基法の労使協定に関する出題では、「労働時間等設定改善委員会」による労使協定の代替決議の問題は、あまり出題がなかったようですが、今後は、企業委員会も含め、一応、チェックしておきます(労働一般の択一式として出題可能性もあります)。

 

以上、労使協定関係の改正事項でした。

 

 

4 労働条件の決定の基本原則(第1条、第2条)

 

「労働条件の決定の基本原則」(第1条、第2条。こちら以下)については、当サイトをお読み頂ければ大丈夫でしょう。

 

 

以上、今回の更新範囲のポイントでした。

 

※ なお、2019年度版の労働法関係では、野川忍先生のテキスト(本年(メールでは、昨年と誤記しました)の4月刊行)からも、参考となる内容をご紹介していきます。

近時の労働法のテキストの中では、川口美貴先生のテキストが優れていますが(頭脳明晰であることがよくわかるテキストです)、多数説と異なる結論を採用することが多いです(ちなみに、このテキストは、平成27年の冬に刊行され本文が900頁を超える大作なのですが、もう第2版が発売されました)。

他方、野川先生のテキストは、割と穏便な結論になっているものが多く、参考になります(こちらは、1050頁くらいあります)。

いずれのテキストについても、社労士受験用としてはお読みになってはいけません(大部であり、試験と関係ない事項の記載が多く、合格には直接役立ちません。合格後にお読み下さい)。当サイトが、試験に役立ちそうな個所をご紹介していきます。

 

ちなみに、労働法のテキストとしては、やはり、菅野先生の労働法をまず参考にします。しかし、こちらも、合格後にご利用下さい。

 

そういえば、労働法のテキストは、近年、ますますページ数が多くなっています。

菅野先生のテキストが、平成22年の第9版と現在の第11版(補正版)を比べますと、350ページくらい増えています。通常の本1冊分(というか2冊分)です。

改正が多すぎるということなのでしょう。著者のかたも大変ですが、読者も大変です。。

 

 

〔2〕徴収法のインデックスの完成

 

徴収法の今回の本試験のインデックスが完成しました。こちらです。

今回の徴収法は、正確な知識や細かい知識が必要となる難しい問題が多かったです。

全6問中、半分解ければよいというレベルではないでしょうか。

徴収法が苦手な方は、少し早めに学習を開始し、まずは、基礎的な考え方を身に着け、しっかり記憶して下さい。

 

なお、有期事業の一括について、改正が予定されています。地域要件が廃止され、また、一括有期事業開始届も廃止される予定です。

徴収法を早めに学習される場合は、この2点については、余り深入りせずに進めて下さい。

 

 

〔3〕健保法の高額療養費等の改正

 

かなり大変だったのが、健保法の高額療養費の改正です。

今回、健保法(国民健康保険法及び高齢者医療確保法も同様です)の高額療養費算定基準額と介護合算算定基準額(高額介護合算療養費)が改正され、すでに、本年8月1日から施行されています。

 

前者については、「70歳以上」の「一定以上所得者(現役並み所得者)」及び「一般所得者」の「個人単位の外来療養」に係る高額療養費算定基準額が改正されました(健保法のこちらの表の黄色い個所です。その少し下部に、改正の前後の対象図があります)。

単に高額療養費算定基準額の改正だけでも、施行令の膨大な修正が必要であるため、大変なのですが、実は、今回の改正は、高額療養費の骨格に少し影響する改正となっています。 

 

この高額療養費及び介護合算算定基準額の改正については、ほぼ改訂は終わりましたが、もう少し詳しい解説は、また後日に致します。

 

 

〔4〕白書対策

 

なお、すでに、2019年度用の一般常識のデーター関係(以下、白書関係といいます)がちらほら出ています。

例えば、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(7月24日公表)、「平成29年雇用動向調査」(8月9日公表)、「働く女性の実情」(9月18日公表)などです。

改正改訂作業が一息つきましたら、これらについても、さっそく白書対策講座で取り上げる予定です。

 

 

〔5〕その他

 

就業規則の不利益変更等に関する最高最判決が出ました。【日本郵便事件=最判平成30.9.14】です。労働契約法の問題となります。こちらも、改正改訂作業が終わりましたら、取り上げます。

 

 

以上、労基法の初回の更新等でした。次回は、労基法の2回目の更新、健保法のインデックスのご紹介、改正事項のご紹介を予定しています。

 

 

2019年(平成30年)9月19日(水曜)

「更新のお知らせ」のページが、新ページになりました。

 

さて、ここまで、本試験問題のインデックスのご紹介や働き方改革関連法に関する諸改正についてお知らせしてきましたが、いよいよ2019年度版の開始です。

 

近日中に、労基法の初回の更新、徴収法のインデックスのご紹介、諸改正等についてお知らせします。 

 

 

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