【2020年度版】
〔Ⅰ〕令和年労働組合基礎調査
令和元年労働組合基礎調査は、令和元年12月19日に公表されました。
まず、プレスリリース(報道発表用資料)で、調査結果のポイントとして記載されている事項から見ます。
・プレスリリース = こちら
・概況 = こちら
・厚労省のサイト = こちら
※ 調査結果のポイント
1 労働組合員数
◆労働組合員数は1,008万8千人〔=約1千万人〕で、前年の1,007万人より1万8千人(0.1%)増加。
2 推定組織率
◆推定組織率(こちら)は16.7%で、前年の17.0%より0.3ポイント低下し、過去最低。
※ 推定組織率 = 「労働組合員数(約1,000万人)/ 雇用者数(約6,000万人)」として、約16.6%と手計算できます。
※【ゴロ合わせ】
・「推定組織率の低さには、異論な(=16.7)し」
3 女性
◆女性の労働組合員数は338万5千人〔=約340万人〕で、前年の335万7千人より2万8千人(0.8%)増加。
推定組織率は12.4%で、前年の12.6%より 0.2ポイント低下。
※ 全体の労働組合員数(約1千万人)の35%程度が女性の労働組合員数であるというイメージです。
4 パートタイム労働者
◆パートタイム労働者の労働組合員数は133万3千人〔=約130万人〕で、前年の129万6千人より3万7千人(2.8%)増加し、過去最高のパートタイム労働者の労働組合員数となった。
全体の労働組合員数に占める割合は13.3%で、前年の13.0%より0.3ポイント上昇。
推定組織率は8.1%〔=約8%〕で、前年と同じ。
以上のパートタイム労働者のデーターは、いずれも過去最高(推定組織率は、前年と並び、過去最高)。
以下、本文です。
〔1〕労働組合及び労働組合員の状況
【設問1】
令和元年労働組合基礎調査によると、労働組合員数は1,008万8千人である。
近年の労働組合員数は、平成6年調査時の約1,300万人をピークとして概ね減少傾向にある。過去5年についてみても、連続して対前年比でマイナスとなっている。
解答:
設問の第3文目が誤りです。
過去5年の「労働組合員数」については、平成27年~令和元年の調査において、いずれも若干ですが、前年比でプラスとなっています(こちらの「第1表」を参考)。
女性やパートタイム労働者の加入の増加が影響しているのでしょう。
労働組合員数については、「調査結果のポイント」(こちら)の1で見ました。
なお、「労働組合数」は、平成27年~令和元年の調査において、いずれも減少しています。
【設問2】
令和元年労働組合基礎調査によると、推定組織率は16.7%であり、前年より0.2ポイント増加した。
解答:
令和元年の調査では、推定組織率(こちら)は設問の通り16.7%ですが、これは前年(17.0%)より0.3ポイントの「低下」となります(こちら)。推定組織率は、過去最低を更新中です。よって、設問は誤りです。
※ なお、推定組織率とは、雇用者数に占める労働組合員数の割合のことですが、雇用者数は、「令和元年労働力調査」のこちら(【図1】の上部の文字の部分と【図2】)でみましたように、約6,000万人です(「雇用者は、過・労(60)だ」)。
そこで、労働組合員数(約1千万人)÷ 約6000万人 = 約16.6%と手計算でもおおまかに計算できます。
推定組織率の推移について、簡単に見ておきます。推定組織率も、長期的に低下傾向にあります。
最も高かったのは、昭和24年の55.8%です。
その後、昭和30年代、40年代は、おおむね35%弱程度です。
昭和50年の調査時に34.4%でしたが、以後、次第に低下幅が大きくなり、昭和55年には30.8%となり、昭和58年には29.7%と30%を割りました。
平成に入ってからのデーターは、こちらのグラフの通りです。
平成元年の調査時に25.9%であり、平成15年には、ついに19.6%と10%台までに下がってきました。
平成21年調査時にはわずかに上昇したものの(平成21年と22年は、同じく18.5%でした)、平成22年の調査以降は、連続して低下し、目下、毎回、過去最低を更新中です。
・【参考過去問:平成23年問2A】
設問:
日本の労働組合の推定組織率は、昭和50年以降低下傾向にあったが、平成20年に前年比で横ばいになり、平成21年にわずかに上昇に転じ、平成22年も前年と同じ水準になった。低下傾向に歯止めがかかったことには、パートタイム労働者の組織化が進んだことも寄与している。
解答:
正しいです(「平成22年労働組合基礎調査 付表1」を参考)。
なお、設問後段の「低下傾向に歯止めがかかったことには、パートタイム労働者の組織化が進んだことも寄与している。」というのは、出題者の分析のようですが、正しい内容といえます。
ただし、設問の出題後は、前述の通り、再び、推定組織率は緩やかに低下しており、低下傾向に歯止めがかかっているとはいえません。
また、パートタイム労働者の組織化という点ですが、後に見ます「平成30年労働組合活動等に関する実態調査」における「組織拡大の取組対象として最も重視している労働者の種類」というデーター(こちら)では、最も多いのが「新卒・中途採用の正社員」(=37.0%。なお、前回の平成28年の調査では、47.1%)であり、次に、「在籍する組合未加入の正社員」(18.7%。同13.7%)、3番目が「パートタイム労働者」は(13.4%。同17.8%)となっています。
このデーターからは、現在の労働組合がパートタイム労働者の組織化に力を入れているとはあまり読み取れません。このあたりも、現在の労働組合が十分機能していないように見える理由の一つといえます。
(もっとも、近年は、非正規雇用労働者の組織化を目標として取り組む労働組合も多くなっているとされます。UAゼンセン同盟のように、組合員の過半数が非正規雇用労働者である産業別労働組合もあります。)
のちに関連過去問を見ます。
【設問3】
令和元年労働組合基礎調査によると、女性の労働組合員数は338万5千人であり、前年より0.8%増加した。推定組織率は12.4%であり、前年より 0.2ポイント低下した。
他方、同調査によると、パートタイム労働者の労働組合員数は、133万3千人であり、前年より2.8%増加した。全体の労働組合員数に占める割合は13.3%であり、前年より0.3ポイント上昇している。推定組織率は8.1%であり、前年と同じである。
これらのパートタイム労働者のデーターは、いずれも過去最高(推定組織率は前年と同じ)となっている。
解答:
正しいです。「労働者全体」の労働組合員数や推定組織率は低下傾向にありますが(労働組合員数については、【設問1】(こちら)でみましたように、近時、わずかにプラスが続いていますが、長期的な傾向としてはマイナスの方向です)、「パートタイム労働者」のそれらについては、調査開始の平成2年以降、おおむね連続して増加しています。
ただし、今回は、推定組織率は、前年と同じとなりました。
なお、「パートタイム労働者の状況」については、すぐ後の〔2〕(こちら以下)で詳述しています。
また、「女性」については、労働組合員数としては、平成24年以降は、連続して増加しています。
ただし、女性の推定組織率は、平成20年以降は、おおむね前年とほぼ同じ(12.5%前後)であることが多く(女性の労働組合員数は増加していても、女性の雇用者数も増加していることになります)、今回は、前年より若干低下しました。
以上の【設問1】~【設問3】に関連するデーターを2つ掲載しておきます。
【令和元年労働組合基礎調査 3頁より転載(次の図も同じ)】
次に、パートタイム労働者の状況について見ます。
〔2〕パートタイム労働者の状況
1 労働組合数、労働組合員数
労働組合員数(単位労働組合〔こちら〕におけるものです)のうち、パートタイム労働者についてみると133万3千人〔=約130万人〕となっており、前年に比べて3万7千人(2.8%)の増、全労働組合員数に占める割合は13.3%で、前年より0.3ポイント上昇となっている。
※ 全労働組合員は、前述の通り、約1千万人です。
そこで、パートタイム労働者の全労働組合員数に占める割合は、「130万人 ÷ 1千万人 = 約13%」と手計算できます。
【令和元年労働組合基礎調査 4頁より転載】
2 推定組織率
パートタイム労働者の推定組織率(パートタイム労働者の雇用者数に占めるパートタイム労働者の労働組合員数の割合)は8.1%〔=約8%〕で、前年と同じである。
※【ゴロ合わせ】
・「パ(=8%)ートの組織率」
※ パートタイム労働者の雇用者数は、前掲(こちら)の「第2表」の注1)のように算出されており、約1,600万人です。
そこで、パートタイム労働者の推定組織率は、「約130万人 ÷ 1600万人 = 約8%」となります。
※ 「パートタイム労働者」の推定組織率は、調査開始の平成2年以降、連続して増加していました。しかし、今回の推定組織率は、前年と同じとなりました。
(なお、パートタイム労働者の労働組合員数も、おおむね連続して増加していますが、常に増加しているわけではありません(若干、前年比マイナスの例がありました)。)
以上の推定組織率等についての過去問を見ます。
・【参考過去問:平成20年問1B】
設問:
「平成19年労働組合基礎調査結果の概要」によれば、平成19年6月30日現在における労働組合の推定組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)は、18.1%と初めて20%を下回った。一方、単位労働組合のパートタイム労働者の労働組合員数は、対前年比で14.2%と増加する傾向にあるが、その推定組織率(パートタイム労働者の労働組合員数を短時間雇用者数で除して得られた数値)は4.8%と低下する傾向にある。
解答:
設問は、誤りです。
まず、労働組合の推定組織率が初めて20%を下回ったのは、前述(こちら以下)の通り、平成15年(19.6%)です。(その後、平成19年まで5年連続で前年比でマイナスとなる状態が続きました。このリンク先の下部の設問(【参考過去問:平成23年問2A】)の通り、平成20年には前年比で横ばいになりました。)
また、パートタイム労働者の推定組織率については、前述の通り、推定組織率は一貫して増加しており(ただし、今回令和元年の推定組織率は、前年と同じ)、この点でも設問は誤りです。
・【参考過去問:平成18年問3E】
設問:
厚生労働省「平成17年労働組合基礎調査」によると、平成17年6月30日現在の労働組合数や労働組合員数はともに前年に比べて減少し、推定組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)は低下したものの20%にとどまった。
解答:
設問の前段の「平成17年6月30日現在の労働組合数や労働組合員数はともに前年に比べて減少し」という点は、正しいです。
しかし、後段の「推定組織率は低下したものの20%にとどまった」という点は誤りです。当時の平成17年の推定組織率は、すでに20%を下回り、18.7%でした。
・【参考過去問:平成15年問3E】
設問:
厚生労働省「平成14年労働組合基礎調査」によると、労働組合数も労働組合員数も前年に比べ減少し、労働組合の推定組織率は20.2%と前年に比べてわずかに低下し、推定組織率の低下傾向が続いている。なお、こうした中で、パートタイム労働者の組合員数は前年より増加しているが、パートタイム労働者にかかる推定組織率は3%を下回る状況である。
解答:
正しいです。出題当時の平成14年調査におけるパートタイム労働者に係る推定組織率は、2.7%でした。その後、推定組織率は一貫して上昇し、現在は、約8%です。
以下、その他のデーターを見ていきます。ざっとで良さそうです。赤字の部分は、チェックして下さい。
〔3〕産業別の状況
1 産業別の労働組合員数
労働組合員数(単位労働組合)を産業別にみると、「製造業」が266万1千人(全体の26.6%)と最も多く、次いで、「卸売業、小売業」が146万5千人(同14.6%)、「運輸業、郵便業」が84万7千人(同8.5%)などとなっている。
2 対前年差
対前年差をみると、増加幅が大きかった産業は、「製造業」が3万4千人(1.3%増)、「宿泊業、飲食サービス業」が1万7千人(5.7%増)などであり、減少幅が大きかった産業は、「公務(他に分類されるものを除く)」1万9千人(2.2%減)、「情報通信業」1 万4千人(4.0%減)、などとなっている。
3 産業別の推定組織率
推定組織率を産業別にみると、「電気・ガス・熱供給・水道業」が59.3%と高く、「農業、林業、漁業」1.4%、「不動産業、物品賃貸業」2.6%で低くなっている。
【令和元年労働組合基礎調査 5頁より転載】
〔4〕企業規模別(民営企業)の状況
【設問4】
民営企業の労働組合員数(単位労働組合におけるもの。)は870万4千人で、前年に比べて5万1千人(0.6%)の増となっている。
これを企業規模別にみると、1,000人以上規模が115万9千人(全体の13.3%)、300~999人規模が568万4千人(同65.3%)、100~299人規模が59万5千人(同6.8%)などとなっている。
解答:
「1,000人以上規模」と「300~999人規模」の労働組合員数が逆になっており、設問は誤りです。
即ち、正しくは、「1,000人以上規模が568万4千人(全体の65.3%)」と6割以上を占め、「300~999人規模が115万9千人(同13.3%)」、100~299人規模が59万5千人(同6.8%)となります。
なお、100人未満の規模の場合、全体の2.4%です(以上、こちらの6頁の本文及び後掲のこちらの「第4表」を参考)。
要するに、大まかなイメージとしては、中小企業では、労働組合員はほとんどいないのであり、さらに言いますと、日本の企業の98%が中小企業であることから、日本の多くの企業では、労働組合員はいないのが一般ということです。
設問の前段の「民営企業の労働組合員数(単位労働組合)は870万4千人で、前年に比べて5万1千人(0.6%)の増となっている。」という点は、正しいです。
・【参考過去問:平成23年問2B】
設問:
日本の労働組合の推定組織率を企業規模別にみると、1000人以上の大企業では5割近い値になっているが、100人未満の企業では1%程度にとどまっている。
解答:
正しいです(平成22年労働組合基礎調査の5頁)。
なお、令和元年の調査では(後掲の「第4表」を参考)、1000人以上の大企業の推定組織率〔前掲の【設問4】の場合は、「労働組合員数」である点が異なります〕は、約41%であり、設問の平成22年の調査時(46.6%)より、減少しています。
100人未満の企業では、令和元年の調査では、0.8%であり、平成22年の調査(1.1%)より、やや減少しています。
ここでも、中小企業においては、ほとんど労働組合員は存在しないという状態が定着している状況が読み取れます。
【令和元年労働組合基礎調査 6頁より転載】
〔5〕主要団体への加盟状況
主要団体別に、産業別組織を通じて加盟している労働組合員数(単一労働組合〔こちらの(2)〕)をみると、次の通り。
・連合(日本労働組合総連合会)=686万4千人(前年に比べて3千人増)、全労働組合員数に占める割合は68.0%
〔※ 全労働組合員数が、約1千万人であるため、労働組合員数の数字が、そのままパーセントに近い値になります。以下においても同様です。〕
・全労連(全国労働組合総連合)=52万4千人(同1万1千人減)、5.2%
・全労協(全国労働組合連絡協議会)=9万4千人(同3千人減)、0.9%
・金属労協(全日本金属産業労働組合協議会)=202万人、20.0%
・インダストリオール・JAF(インダストリオール日本化学エネルギー労働組合協議会)=44万5千人、4.4%
・交運労協(全日本交通運輸産業労働組合協議会)=60万6千人、6.0%
・公務労協(公務公共サービス労働組合協議会)=111万2千人、11.0%
また、都道府県単位の地方組織のみに加盟している、いわゆる地方直加盟の労働組合員数を合わせて集計した労働組合員数は、次の通り。
・連合=699万1千人(前年に比べて1千人減)
・全労連=75万5千人(同9千人減)
・全労協=10万5千人(同3千人減)
・【参考過去問:平成20年問1C】
設問:
「平成19年労働組合基礎調査結果の概要」によれば、産業別組織を通じて加盟している労働組合員数(単一労働組合)を、主要団体別に全労働組合員数に占める割合でみると、連合(日本労働組合総連合会)が65.7%、全労連(全国労働組合総連合)が6.8%、全労協(全国労働組合連絡協議会)が1.3%となっている。
解答:
正しい内容でした。
現在は、上記の通り、連合は、68.0%(出題当時の平成19年調査時は65.7%)、全労連は5.2%(同6.8%)、全労協は0.9%(同1.3%)です。
平成19年調査時より連合は増加し、その他の2つは減少しています。
以上、「令和元年労働組合基礎調査」でした。次に、「平成30年労働組合活動等に関する実態調査」です。
〔Ⅱ〕平成30年労働組合活動等に関する実態調査
平成30年「労使間の交渉等に関する実態調査」は、令和元年6月27日に公表されています(現在、最新の調査です)。
ちなみに、「労使間の交渉等に関する実態調査」と1年おきに調査されることが多いのですが、前回の「平成29年労使間の交渉等に関する実態調査」については、【令和元年問2(こちら。本文は、こちら以下)】で1問出題されました。
本調査は、労働環境が変化する中での労働組合と使用者の間で行われる団体交渉、労働争議及び労働協約の締結等の実態を明らかにすることを目的としています。
対象は、民営事業所における労働組合員30人以上の労働組合です。
平成30年6月30日現在の状況等について同年7月に調査を行い、一定の方法により抽出した5,093労働組合のうち3,199労働組合から有効回答を得ました。
まず、プレスリリースで掲載されています調査結果のポイントからです。
・プレスリリース = こちら
・概況 = こちら
・厚労省のサイト = こちら
※ 調査結果のポイント
1 労使関係についての認識(本部組合及び単位労働組合)
労使関係が「安定的」(注1)と認識している労働組合は、91.3%(前回(注2)89.1%)。
※ 約90%強もあります。
大規模な労使対立や争議行為が減少し、労使関係が安定的であることはプラスに評価できるのでしょうが、反面、使用者と労働組合の緊密化が進行したものともいえ、労働組合が本来の機能を果たしているのかという問題もあります。
これまで長時間労働・過労死問題が長らく放置されたり、非正規雇用労働者の不合理な待遇や雇用の不安定さが是正されないといった問題について、労働組合が十分な活動をしてきたのか検討する必要がありそうです。
注1:労使関係の維持についての認識は5段階の選択肢であり、「安定的」は「安定的に維持されている」と「おおむね安定的に維持されている」の合計
注2:「前回」とは平成29年「労使間の交渉等に関する実態調査」(こちら以下)を指す。
2 労働組合員数の変化に関する状況(単位労働組合)
3年前(平成27年6月)と比べた組合員数の変化をみると、「増加した」33.5%(前回(注3)34.1%)、「変わらない」24.1%(前回(注3)22.2%)、「減少した」42.2%(前回(注3)41.7%)。
注3:「前回」とは平成28年「労働組合活動等に関する実態調査」(こちら以下)を指す。
3 労働組合の組織拡大に関する状況(単位労働組合)
組織拡大を重点課題として取り組んでいる労働組合は29.8%〔=約30%〕(前回(注3)31.9%)、産業別にみると、「医療、福祉」が最も高く59.0%〔=約60%〕(前回70.0%)
【選択式 平成28年度 E(こちら)】
取組対象として最も重視している労働者の種類についてみると、「新卒・中途採用の正社員」37.0%(同47.1%)、次いで「在籍する組合未加入の正社員」18.7%(同13.7%)
※ ちなみに、「パートタイム労働者」については、3番目であり、13.4%です(前回は17.8%、前々回は13.2%)。
4 正社員以外の労働者に関する状況(本部組合及び単位労働組合)
(1)正社員以外の労働者の種類別に「組合加入資格がある」をみると、「有期契約労働者」39.9%(注2)(前回36.5%)、「パートタイム労働者」35.6%(同34.3%)、「嘱託労働者」35.6%(同38.0%)、「派遣労働者」5.2%(同7.2%)。
※「派遣労働者」について組合加入資格を認めていない労働組合が多い点は、日本の労働組合が企業別組合である特徴を示しています(派遣労働者は、派遣元に雇用される労働者であり、派遣先の企業をベースに組織されている労働組合の組合員の資格は取得できないことが多いということです)。
(2)正社員以外の労働者に係る労働協約の規定の状況をみると、「労働協約の規定がある」39.1%(前回(注2)27.2%)。
労働協約の規定がある事項をみると、「正社員以外の労働者(派遣労働者を除く)の労働条件」30.6%(同20.4%)、「パートタイム労働者の雇入れに関する事項」27.0%(同17.6%)、「有期契約労働者の雇入れに関する事項」25.2%(同25.7%)
※ 上記(2)の正社員以外の労働者に係る労働協約の規定がある労働組合が。前回の平成29年の調査時より約12ポイント増加しています。
非正規雇用労働者の労働条件や雇入れに関する事項を規定しているものが多くなっています。
平成30年に成立した「働き方改革関連法」に基づく「雇用形態ないし就業形態に関わりない公正な処遇の確保」(均等・均衡待遇の確保等。大企業では、令和2年4月1日施行)に向けた企業の動きといえそうです(例えば、「短時間・有期雇用労働法」のこちら(労働一般のパスワード)を参考)。
以下、本文です。
〔1〕労使関係についての認識(本部組合及び単位労働組合)
使用者側との労使関係の維持についての認識をみると、次の通り。
➀「安定的に維持されている」=53.1%(平成29年「労使間の交渉等に関する実態調査」42.7%)
②「おおむね安定的に維持されている」=38.2%(同46.4%)
③「どちらともいえない」=5.2%(同6.2%)
④「やや不安定である」=1.4%(同2.8%)
⑤「不安定である」=1.6%(同0.9%)
※「安定的」と「おおむね安定的」を合計しますと、91.3%(前回89.1%)もあります。
日本の近年の集団的労働関係の大きな特徴としては、労働組合の組織率が著しく低下したこと(すでに見ましたように、現在、推定組織率は16.7%であり、20%に達していません)、大規模な労使対立やストライキ等の争議行為が減少したこと、これらに伴い、集団的労働関係自体に対する注目が薄れていることなどが挙げられます。
【平成30年労働組合活動等に関する実態調査 4頁より転載】
〔2〕労働組合員数の変化に関する状況(単位労働組合)
1 組合員数の変化
3年前(平成27年6月)と比べた組合員数の変化をみると、次の通り。
➀組合員数が「減少した」42.2%(平成28年調査41.7%)
②組合員数が「増加した」33.5%(同34.1%)
③組合員数が「変わらない」24.1%(同22.2%)
【平成30年労働組合活動等に関する実態調査 5頁より転載】
2 組合員数が増加した理由
3年前(平成27年6月)と比べて組合員数が増加した理由(複数回答)をみると、次の通り。
➀「新卒・中途採用の正社員の組合加入」=81.8%(平成28年調査82.7%)
②「正社員以外の労働者の組合加入」=16.9%(同18.7%)
③「在籍する正社員の組合加入」=15.3%(同11.7%)
【平成30年労働組合活動等に関する実態調査 6頁より転載】
3 組合員数が減少した理由
3年前(平成27年6月)と比べて組合員数が減少した理由(複数回答)をみると、次の通り。
➀「定年退職」=67.8%(平成28年調査68.1%)
②「自己都合退職」=65.4%(同55.2%)
③「正社員の採用の手控え」=33.7%(同33.8%)
【平成30年労働組合活動等に関する実態調査 6頁より転載】
〔3〕労働組合の組織拡大に関する状況(単位労働組合)
1 組織拡大を重点課題として取り組んでいる労働組合の有無
(ア)組織拡大を重点課題として取り組んでいる労働組合の有無をみると、次の通り。
【平成28年度 選択式 E(こちら)】
➀「取り組んでいない」=70.0%(平成28年調査66.0%)
②「取り組んでいる」=29.8%(同31.9%)
・【選択式 平成28年度】
労働組合の組織及び活動の実態等を明らかにするために実施されている「平成25年労働組合活動等に関する実態調査(厚生労働省)」によると、組合活動の重点課題として、組織拡大に「取り組んでいる」と回答した単位組合の割合は、 E になっている。
選択肢:
➀約4分の1 ②約3分の1 ③約半数 ④約3分の2
解答:
E=②約3分の1
平成25年の調査時は、組織拡大に「取り組んでいる」と回答した単位組合の割合は、「34.1%」でした。
現在の平成30年の調査時は、さらに低下し、「29.8%」です。
【平成30年労働組合活動等に関する実態調査 7頁より転載】
(イ)産業別に「取り組んでいる」ものをみると、次の通り。
➀「医療、福祉」=59.0%(平成28年調査70.0%)
②「教育、学習支援業」=52.9%(同56.3%)
③「複合サービス事業」=52.4%(同47.2%)
(ちなみに、前回平成28年調査時は、3番目は、「運輸業、郵便業」(54.5%)でした。今回は、47.0%であり、「情報通信業」(51.5%)に続く5番目でした。)
(ウ)取り組まない理由(複数回答)としては、次の通り。
➀「ほぼ十分な組織化が行われているため」=50.7%(平成28年調査50.8%)
②「組織が拡大する見込みが少ないため」=21.1%(同27.4%)
③「他に取り組むべき重要課題があるため」=19.0%(同19.2%)
【平成30年労働組合活動等に関する実態調査 7頁より転載】
2 組織拡大の取組対象として最も重視している労働者の種類
組織拡大の取組対象として最も重視している労働者の種類についてみると、次の通り。
➀「新卒・中途採用の正社員」=37.0%(平成28年調査47.1%)
②「在籍する組合未加入の正社員」=18.7%(同13.7%)
③「パートタイム労働者」=13.4%(同17.8%)
④「有期契約労働者」=10.8%(同14.4%)
※ 前回の平成28年の調査では、2番目以下は、②「パートタイム労働者」、③「有期契約労働者」、④「在籍する組合未加入の正社員」の順番でしたが、今回は、④「在籍する組合未加入の正社員」が2番目に上昇しました。
【平成30年労働組合活動等に関する実態調査 8頁より転載】
3 組織化を進めていく上での取組内容
組織拡大の取組対象としている労働者の種類ごとにその取組内容(複数回答)をみると、次の通り。
(ⅰ)「組合加入の勧誘活動」
➡「在籍する組合未加入の正社員」で79.6%(平成28年調査78.3%)、「新卒・中途採用の正社員」で76.1%(同76.1%)と高い。
(ⅱ)「労働条件及び処遇の改善要求」
➡「有期契約労働者」で48.1%(同46.2%)、「パートタイム労働者」で47.9%(同49.3%)と高い。
(ⅲ)「相談窓口の設置、アンケート等での実態把握」
➡「パートタイム労働者」で36.7%(同25.1%)、「有期契約労働者」26.6%(同26.7%)と高い。
【平成30年労働組合活動等に関する実態調査 8頁より転載】
4 組織化を進めていく上での問題点
【設問3】
「平成30年労働組合活動等に関する実態調査」によれば、労働組合が組織拡大の取組対象としている労働者の種類ごとに組織化を進めていく上での問題点(複数回答)として、「新卒・中途採用の正社員」については、「組織化対象者の組合への関心が薄い」が最も多くなっているが、「パートタイム労働者」については、「組織化対象側に時間的余裕が少なく、組織活動が実施しにくい」が最も多くなっている。
解答:
誤りです。
「いずれの種類の労働者」においても、組織化を進めていく上での問題点として、「組織化対象者の組合への関心が薄い」が最も多くなっています。
割合が多い方から順に、「パートタイム労働者」64.7%(平成28年調査55.9%)、「在籍する組合未加入の正社員」63.5%(同61.0%)、「新卒・中途採用の正社員」47.1%(同38.7%)となっています。
【平成30年労働組合活動等に関する実態調査 9頁より転載】
〔4〕正社員以外の労働者に関する状況(本部組合及び単位労働組合)
1 正社員以外の労働者の組合加入資格、組合員の有無
(1)組合加入資格がある労働者の種類別
事業所に正社員以外の労働者がいる労働組合について、労働者の種類別に「組合加入資格がある」ものをみると、次の通り。
➀「有期契約労働者」=39.9%(平成29年調査36.5%)
②「パートタイム労働者」=35.6%(同34.3%)
③「嘱託労働者」=35.6%(同38.0%)
④「派遣労働者」=5.2%(同7.2%)
(2)組合員がいる労働者の種類別
「労働者の種類別の組合員がいる」ものについてみると、次の通り。
➀「有期契約労働者」=31.1%(同30.4%)
②「嘱託労働者」29.2%(同29.2%)
③「パートタイム労働者」=28.6%(同26.0%)
④「派遣労働者」=1.3%(同1.4%)
【平成30年労働組合活動等に関する実態調査 10頁より転載】
2 正社員以外の労働者に関する事項別話合いの状況
過去1年間(平成29年7月1日から平成30年6月30日の期間)に、正社員以外の労働者に関して使用者側と話合いが持たれた事項(複数回答)をみると、次の通り。
➀「正社員以外の労働者(派遣労働者を除く)の労働条件」=38.9%(平成29年調査32.8%)
②「正社員以外の労働者(派遣労働者を含む)の正社員への登用制度」=24.4%(同26.3%)
③「有期契約労働者の雇入れに関する事項」21.0%(同17.9%)
上記➀の「正社員以外の労働者(派遣労働者を除く)の労働条件」を事項別にみると、「賃金に関する事項」30.2%(同27.1%)が最も高くなっており、うち、「正社員との同一労働同一賃金に関する事項」は15.4%(同12.8%)となっている。
【平成30年労働組合活動等に関する実態調査 11頁より転載】
3 正社員以外の労働者に関する労働協約の規定の状況
【設問4】
次の文中の A の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。
「平成30年労働組合活動等に関する実態調査」によれば、正社員以外の労働者に関する事項について労働協約の規定の状況をみると、「労働協約の規定がある」は39.1%(平成29年調査27.2%)となっている。
労働協約の規定がある事項をみると、「正社員以外の労働者(派遣労働者を除く)の労働条件」30.6%(同20.4%)、「パートタイム労働者の雇入れに関する事項」27.0%(同17.6%)、「有期契約労働者の雇入れに関する事項」25.2%(同15.7%)などとなっている。
「正社員以外の労働者(派遣労働者を除く)の労働条件」を事項別にみると、「賃金に関する事項」25.9%(同14.9%)が最も高くなっており、うち、 A は12.4%(同7.0%)となっている。
選択肢:
①「割増賃金に関する事項」 ②「疾病手当に関する事項」 ③「正社員との同一労働同一賃金に関する事項」 ④「住宅手当等の各種手当に関する事項」
解答:
A=③「正社員との同一労働同一賃金に関する事項」
以下、本問の出題個所である「平成30年労働組合活動等に関する実態調査」の12頁を整理します。
(ⅰ)正社員以外の労働者に関する事項について労働協約の規定の状況をみると、「労働協約の規定がある」は39.1%(平成29年調査27.2%)となっている。
(ⅱ)労働協約の規定がある事項をみると、次の順番。
①「正社員以外の労働者(派遣労働者を除く)の労働条件」30.6%(同20.4%)
②「パートタイム労働者の雇入れに関する事項」27.0%(同17.6%)、
③「有期契約労働者の雇入れに関する事項」25.2%(同15.7%)
(ⅲ)「正社員以外の労働者(派遣労働者を除く)の労働条件」を事項別にみると、「賃金に関する事項」25.9%(同14.9%)が最も高くなっており、うち、「正社員との同一労働同一賃金に関する事項」は12.4%(同7.0%)となっている。
【平成30年労働組合活動等に関する実態調査 12頁より転載】
〔5〕労働組合活動の重点事項
【設問5】
「平成30年労働組合活動等に関する実態調査」によれば、労働組合活動において、これまで重点をおいてきた事項(複数回答主なもの5つまで)をみると、①「組合員の雇用の維持」
90.6%(平成28年調査91.5%)、②「労働時間(労働時間の適正把握を含む)・休日・休暇」=79.4% (同78.3% )③「職場の安全衛生(メンタルヘルスを含む)」39.3%(同37.3%)の順である。
今後重点をおく事項(複数回答主なもの5つまで)については、①職場の安全衛生(メンタルヘルスを含む)」、②「組合員の雇用の維持」、③「セクハラ対策、パワハラ対策」の順となっている。
解答:
誤りです。設問の前段の「これまで重点をおいてきた事項」についても、後段の「今後重点をおく事項」についても誤りがあり、正しくは、すぐあとの本文で詳しく見ますが、さしあたり、次の点がポイントです。
まず、設問の前段の「これまで重点をおいてきた事項」については、トップは、「賃金・賞与・一時金」に関する事項です(90.6%)。
「組合員の雇用の維持」に関する事項は、4番目です。
また、設問の後段の「今後重点をおく事項」についても、「賃金・賞与・一時金」に関する事項がトップであり、「セクハラ対策、パワハラ対策」に関する事項は、現時点では、優先度は低めです(ただし、今回の調査では19.3%であり、平成28年の調査時(14.4%)より増加しています)。
詳しくは、以下をご参照下さい。
1 これまで重点をおいてきた事項
労働組合活動において、これまで重点をおいてきた事項(複数回答主なもの5つまで)をみると、次の通り。
➀「賃金・賞与・一時金」=90.6%(平成28年調査91.5%)
②「労働時間(労働時間の適正把握を含む)・休日・休暇」=79.4% (同78.3% )
③「職場の安全衛生(メンタルヘルスを含む)」=39.3%(同37.3%)
※ ちなみに、前回の平成28年の調査では、「組合員の雇用の維持」が③番目でしたが(43.2%)、今回は、④番目となりました(36.4%)。
2 今後重点をおく事項
今後重点をおく事項(複数回答主なもの5つまで)については、次の通り。〔順番は、上記(1)と同様です。〕
➀「賃金・賞与・一時金」=76.2%(同80.3%)
②「労働時間(労働時間の適正把握を含む)・休日・休暇」=67.3%(同68.3%)
③「職場の安全衛生(メンタルヘルスを含む)」=38.9%(同40.5%)
※「組合員の雇用の維持」については、ここでも、前回の③番目(41.3%)から今回は④番目(30.9%)に下がっています。
※ ちなみに、「セクハラ対策、パワハラ対策」については、「これまで重点をおいてきた事項」としては、13.8%ですが、「今後重点を置く事項」としては19.3%であり、平成28年の調査時(14.4%)より増加しています。
【平成30年労働組合活動等に関する実態調査 13頁より転載】
〔6〕メンタルヘルスに関する取組状況(単位労働組合)
(1)メンタルヘルスに関する取組状況をみると、これまで取組を「行ってきた」とする労働組合は64.4%(平成28年調査62.0%)となっている。
(2)取組事項(複数回答)別にみると、次の順番。
①「安全衛生委員会(衛生委員会も含む)の調査審議への参加」=62.0%(同62.9%)
②「組合員を対象としたアンケート・面談等による実態把握」=54.1%(同48.3%)
(3)今後取組を「行う」とする労働組合についても、同様に次の順番。
①「安全衛生委員会(衛生委員会も含む)の調査審議への参加」=55.7%(同53.5%)
②「組合員を対象としたアンケート・面談等による実態把握」=49.8%(同47.3%)
【平成30年労働組合活動等に関する実態調査 14頁より転載】
〔7〕個別労働問題への取組状況(本部組合及び単位労働組合)
【設問6】
「平成30年労働組合活動等に関する実態調査」によれば、労働者の個別の労働問題に「取り組んでいる」労働組合は93.0%(平成28年調査93.0%)となっている。
取組の方法(複数回答)をみると、「団体交渉を通じて関与」61.4%(同60.5%)が最も多く、次いで「各職場毎に職場委員等を設置」57.2%(同54.6%)、「労使協議制度を通じて関与」38.0%(同36.5%)の順となっている。
解答:
誤りです。
「団体交渉を通じて関与」と「労使協議制度を通じて関与」を入れ替えると、正しい内容となります。
即ち、以下の通りです。
(ⅰ)まず、労働者の個別の労働問題に「取り組んでいる」労働組合は93.0%(平成28年調査93.0%)であり、設問は正しいです。
(ⅱ)取組の方法(複数回答)をみると、次の順番となります。
①「労使協議制度を通じて関与」=61.4%(同60.5%)
②「各職場毎に職場委員等を設置」=57.2%(同54.6%)
③「団体交渉を通じて関与」=38.0%(同36.5%)
つまり、労働者の個別の労働問題に「取り組んでいる」労働組合は多いのですが(93.0%)、その取組の方法としては、憲法や労働組合法に基づくいわば本来法が予定している「団体交渉」の利用より、「労使協議制度」や「職場委員等」という法に規定がない任意の制度が実際は重要な機能を果たしていることに注意です(「労働組合法」のこちら(労働一般のパスワード)を参考です)。
次に見ます〔8〕も参考です。
【平成30年労働組合活動等に関する実態調査 15頁より転載】
〔8〕賃金・退職給付制度の改定に関する状況(単位組織組合及び本部組合)
1 正社員について
(1)正社員の賃金・退職給付制度について、過去1年間に組合員が所属する事業所において改定又は導入が「実施された」事項をみると、次の通り。
①「賃金制度の改定」56.9%
②「退職給付算定方法の見直し」24.6%
(2)各事項ごとに改定又は導入が「実施された」と回答した労働組合について、改定又は導入にあたって「労働組合が関与」した割合をみると、次の通り。
①「賃金制度の改定」91.8%
②「退職給付算定方法の見直し」77.4%となっている。
(3)また、労働組合の関与の仕方をみると、すべての事項において「労使協議機関で協議した」が多くなっている。
2 正社員以外の労働者(派遣労働者を除く)について
(1)正社員以外の労働者(派遣労働者を除く)について、過去1年間に組合員が所属する事業所において「賃金制度の改定」が「実施された」は34.2%、「退職給付制度の導入」が「実施された」は19.0%となっている。
(2)各事項ごとに改定又は導入において「労働組合が関与」した割合をみると、「賃金制度の改定」54.5%、「退職給付制度の導入」24.2%となっている。
(3)また、労働組合の関与の仕方をみると、すべての事項において「労使協議機関で協議した」が多くなっている。
【平成30年労働組合活動等に関する実態調査 16頁より転載】
〔9〕労働組合費に関する状況(本部組合及び単位労働組合)
1人平均月間組合費は、3,707円(平成28年調査3,574円)となっており、1人平均月間組合費を企業規模別にみると、企業規模が大きくなるほど組合費はおおむね高くなっている。
また、1人平均月間組合費階級別にみると、「4,000円以上5,000円未満」が最も高く17.6%(同18.5%)となっている。
【平成30年労働組合活動等に関する実態調査 17頁より転載】
以上で、「平成30年労働組合活動等に関する実態調査」は終了です。
最後に、「平成30年労働争議統計調査」を見ます。
〔Ⅲ〕平成30年労働争議統計調査
平成30年労働争議統計調査は、令和元年8月8日に公表されました(現在、最新です)。
・プレスリリース = こちら
・概況 = こちら
・厚労省のサイト = こちら
以下、まず設問です。その後、プレスリリースと概況を併せて見ていきます。
【設問7】
「平成30年労働争議統計調査(厚生労働省)」によると、平成30年の総争議の件数は、320件であった。これは、9年連続の減少であり、比較可能な昭和32年以降、最も少なかった。
同年の民営企業における「争議行為を伴う争議」を企業規模別にみると、企業数(延べ数)は「1,000人以上」、行為参加人員及び労働損失日数は「100~299人」で最も多くなっている。
解答:
設問の前段は、正しいです。しかし、後段については、「1,000人以上」とあるのは、「100~299人」が正しく、「100~299人」とあるのは、「1,000人以上」が正しいです。
要点は、総争議(調査の対象となるすべての労働争議)の件数は記録上最小であること、争議行為を行う争議の企業規模別は、大企業が最も多いわけではないことです。
以上のより細かい点は、以下の本文で見ます。
なお、設問中の用語の定義については、こちら以下でまとめています。
〔1〕総争議
【平成30年労働争議統計調査の5頁から転載】
【平成30年労働争議統計調査の5頁から転載】
〔2〕争議行為を伴う争議
1 行為形態別の状況
(1)全体では前年と比べて件数、総参加人員及び行為参加人員が減少した。
・件数58件(68件)
・総参加人員 51,038人(72,637人)
・行為参加人員 10,059人(17,612人)
※ ちなみに、平成9(1997)年における争議行為を伴う争議の件数は782件、行為参加人員は213,000人であり、現在の件数は10分の1以下までに激減しています。
(2)半日以上の同盟罷業についても、前年と比べて件数、行為参加人員及び労働損失日数が減少した。
・件数26件(38件)
・行為参加人員 955人(7,953人)
・労働損失日数 1,477日(14,741日)
(3)半日未満の同盟罷業では、前年に比べて件数及び行為参加人員が減少した。
・件数42件(46件)
・行為参加人員 9,260人(9,917人)
【平成30年労働争議統計調査の6頁から転載】
2 産業別の状況
平成30年の「争議行為を伴う争議」の件数等を産業別にみると、次の通り。
※ 基本的には、「製造業」、「運輸業、郵便業」、「医療、福祉」がトップ3を占めることが多いです。
(1)件数
➀「製造業」15件
②「医療、福祉」14件
③「運輸業、郵便業」13件
(平成29年の調査では、①「運輸業、郵便業」、②「医療、福祉」、③「製造業」の順でしたが、トップ3の産業は今回も同じです。)
(2)行為参加人員
➀「医療、福祉」7,170人
②「製造業」1,043人
③「卸売業、小売業」811人
(3)労働損失日数
➀「運輸業、郵便業」662日
②「製造業」415日
③「医療、 福祉」365日
3 企業規模別(民営企業)の状況
平成30年の民営企業における「争議行為を伴う争議」をみると、争議行為を伴う争議のあった企業数(延べ数)は187企業、行為参加人員は10,059人、労働損失日数は1,477日であった。
企業規模別にみると、企業数(延べ数)は「100~299人」、行為参加人員及び労働損失日数は「1,000人以上」で最も多くなっている。
(行為参加人員については、労働組合員数が多い大企業の方が多くなることが想定されます。また、中小企業よりは大企業のほうが、争議行為による損失が少ないといえ、その点で、大企業について労働損失日数が多くなっているのかもしれません。
争議行為を行う企業の数については、中小企業のほうが、労働条件、労働環境等において問題が発生しやすいといえるかもしれません。)
【平成30年労働争議統計調査の8頁から転載】
〔3〕労働争議の主要要求事項
争議の際の主な要求事項(複数回答。主要要求事項を2つまで集計)は、多い順に次の通り。
➀「賃金」に関するもの 162件(181件)
②「経営・雇用・人事」に関するもの 117件(122件)
③「組合保障及び労働協約」に関するもの 88件(117件)
〔4〕労働争議の解決状況
平成30年中に解決した労働争議(解決扱い(注1)を含む)は、255件(298件)で、総争議件数の79.7%であった。
そのうち「労使直接交渉による解決」は34件(42件)、「第三者関与による解決」は83件(101件)であった。
注1 不当労働行為事件として労働委員会に救済申立てがなされた労働争議、労働争議の当事者である労使間では解決の方法がないような労働争議(支援スト、政治スト等)及び解決の事情が明らかでない労働争議等は「解決扱い」として集計している。
※【争議行為を伴う争議の推移について】
争議行為を伴う争議(以下、単に「争議行為」といいます)は、第1次石油ショックの翌年である昭和49(1974)年をピークとして(1万件近くありました)、徐々に減少し、平成21(2009)年以後は、100件を下回っています。次の附表をご参照下さい。
【平成30年労働争議統計調査の11頁から転載】
先進諸国では、一般に、争議行為が減少する傾向にあるとされますが、その中でも特に日本の減少傾向は際立っているとされます(以下、野川「労働法」934頁以下に基づきます)。
この理由の一つとして、日本の労働組合の組織形態が企業別であるのが通常であるため、企業と労働組合との運命共同体的な意識が存在しており、これが長い不況や大規模な企業変動の状況を前にして一層強まったことが挙げられるとされます。
労使間において鋭い対立が発生しても、争議行為という手段によっては解決しないという意識が定着したということになります。
また、戦後日本の労働運動が公共部門を中心として展開されてきたという事情も見逃せないとされます。
公共部門において、争議行為が禁止されているにも関わらず、大規模なストライキが繰り返し行われるという事態が、結果として、国民の間に争議行為それ自体のマイナスイメージが定着した可能性があるとされます。
以上の点に加えて、何よりも、労働組合が全体として長期的衰退にあり、使用者との間の力関係の不均衡が著しく拡大している実態があり、すでに争議行為に打って出る力を失いつつあるという点も指摘されています。
以上で、平成30年労働争議統計調査を終わります。
次のページでは、平成30年労働組合基礎調査等を掲載していますが、読まなくて結構です。