2021年度版

 

4 就業形態の多様化と就職氷河期世代の課題

前ページの「第3節 労働力と働き方の動向」の続きです。

 

設問12

 

次の文中の   の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。

 

男女ともに短時間の就業形態の増加等により、非正規雇用の労働者が大きく増加している。1989(平成元)年から2019(令和元)年にかけて、男性では229万人から691万人へ、女性では588万人から1,475万人へ大きく増加し、総数では817万人から2,165万人へと約2.6倍に増えている。

男性は「パート・アルバイト」に次いで「契約社員」「嘱託」が比較的多く、女性は「パート・アルバイト」が多い。

雇用者(役員を除く)に占める割合については、男性では8.7%から22.9%へ、女性では36.0%から56.0%へ上昇している。

年齢別に見ると男女ともに  の増加幅が大きい。

 

 

選択肢:

①25~34歳 ②35~44歳 ③55~64歳 ④65歳以上

 

 

解答:

 

A=④65歳以上

 

解説:

 

非正規雇用労働者の数・割合の増加に関する記載からの出題です(「令和2年版 厚生労働白書」(こちら)の36頁~38頁)。

 

非正規雇用労働者は、近年、雇用者(役員を除きます)の約4割弱となっています(より正確には、38%前後です)。

非正規雇用労働者は、近年、概ね増加を続けており、設問の通り、1989(平成元)年から2019(令和元)年にかけては、総数について約2.6倍も増加しています。

次の図表を参考です。 

 

 【「令和2年版 厚生労働白書」の37頁から転載 】

 

 

なお、択一用知識ですが、非正規雇用労働者の男女比は、女性のほうが多いです(常識から判断がつきますが)。

例えば、本問について、択一式で、「1989(平成元)年から2019(令和元)年にかけて、男性では588万人から1,475万人へ、女性では229万人から691万人へ大きく増加している」との設問が出題された場合は、誤りです(男女の数字が逆になっています)。

 

 【「令和2年版 厚生労働白書」の37頁から転載 】

 

空欄Aについては、難しくなかったと思います。

高齢者の就労は、主に非正規雇用の形態によって実現されています。

 

ちなみに、2019年において、非正規雇用労働者の割合が多い年齢階級から並べますと、次のとおりです。

 

○男性

 

65歳以上=73.3%

②55~64歳=28.4%

③15~24歳(在学者除く)=21.5%

④25~34歳=14.6%

⑤35~44歳=9.3%

⑥45~54歳=8.7%

 

 

○女性

 

65歳以上=82.0%

②55~64歳=67.7%

③45~54歳=57.7%

④35~44歳=51.5%

⑤25~34歳=37.0%

⑥15~24歳(在学者除く)=29.8%

 

次の図表を参考です。 

 

【「令和2年版 厚生労働白書」の38頁から転載 】

 

 

設問13

 

次の文中の   の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。

 

労働者が非正規雇用に就いた理由については、従来より自発的なものと非自発的なものがあることが指摘されているが、こうした構造は2019年においても変わっていない。

男性の25~34歳、35~44歳、45~54歳では「正規の職員・従業員の仕事がないから」が、65歳以上では「  」が多い。

女性についてはどの年齢階級においても「  」の割合が比較的高く、35~44歳においては「家事・育児・介護等と両立しやすいから」、45~54歳においては「家計の補助・学費等を得たいから」も多くなっている。

非正規雇用の拡大の背景には、こうした働く人の意識とともに、雇用者側において、人件費の抑制や業務の繁閑への対応が必要となっているという事情も存在してきた。加えて、人手不足の中で、人材確保のために本人の希望に合わせて短時間労働者として活用するという動きも見られるようになっている。

 

選択肢:

①専門的な技能等をいかせるから ②通勤時間が短いから ③他に就きたい職がなかったから ④自分の都合のよい時間に働きたいから

 

 

解答:

 

A=④自分の都合のよい時間に働きたいから

 

解説:

 

非正規雇用の増加の背景について、働く側の意識と雇用者側の事情について記載された部分からの出題です(「令和2年版 厚生労働白書」(こちら)の38頁)。

 

本問のように「順番に関する問題」は、択一式でしばしば出題されます。

本問を利用して、「非正規雇用に就いた理由」の順番が択一式で出題された場合に大まかにイメージできるようにしておきます。

 

空欄のAは、「非正規雇用に就いた理由」のうち、①65歳以上の男性最も多く、かつ、②女性についてはどの年齢階級においてもその割合が比較的高いものです。

選択肢を見れば、④「自分の都合のよい時間に働きたいから」を選ぶことは難しくないでしょう。

 

ちなみに、この「自分の都合のよい時間に働きたいから」は、男性と女性の両者について、「15~24歳」と「65歳以上」について高い割合となっています(次の【図表1-3-21】及び【図表1-3-22】を参考です)。

 

【「令和2年版 厚生労働白書」の39頁から転載 】

 

 

設問14

 

非正規雇用労働者と正規雇用労働者の待遇の格差に関する次の記述は正しいか。

 

正規雇用労働者と非正規雇用労働者の賃金カーブを比較すると、「一般労働者(正社員・正職員)」は年齢を重ねると賃金額が上昇していくのに対し、「短時間労働者(正社員・正職員以外)」や「一般労働者(正社員・正職員以外)」は横ばいのままとなる形状の違いが存在している。この形状の違いは、ここ10年間でほとんど変化がみられない。

 

一方で、非正規雇用労働者の待遇の改善に向けては、最低賃金の引上げや同一労働同一賃金(不合理な待遇差の解消)の実現等の取組みが進められており、2010(平成22)年と2019年で賃金を比較すると、「一般労働者(正社員・正職員)」の方が「短時間労働者(正社員・正職員以外)」や「一般労働者(正社員・正職員以外)」よりも伸びが大きいが、「一般労働者(正社員・正職員以外)」も1.03倍と伸びている。

 

また、教育訓練についても、正社員以外に実施する事業所は正社員に実施する事業所の約半数であるなど、正規雇用との間で格差が見られる。

 

 

解答:

 

設問の2段落目に誤りがあります。

即ち、2010(平成22)年と2019年で賃金を比較した箇所について、”「一般労働者(正社員・正職員)」の方が「短時間労働者(正社員・正職員以外)」や「一般労働者(正社員・正職員以外)」よりも伸びが大きい” とある部分が誤りです。

正しくは、”「一般労働者(正社員・正職員)」に比べて「短時間労働者(正社員・正職員以外)」や「一般労働者(正社員・正職員以外)」の伸びの方が大きくなっている” です。

後掲の2番目の【図表1-3-24】で示されていますが、2010年と2019年の賃金(時給の実質ベース)を比較しますと、次の通りです。

 

・「一般労働者(正社員・正職員)」=1.00倍

 

・「短時間労働者(正社員・正職員)」=1.21倍

 

・「一般労働者(正社員・正職員以外)」=1.03倍

 

・「短時間労働者(正社員・正職員以外)」=1.06倍

 

 

なお、設問の3段落目の「教育訓練」について、「正社員以外に実施する事業所は正社員に実施する事業所の約半数」という点も、択一式用に押さえておきます。「約2割」といった程度に少ないわけではありません。

 

以上、「令和2年版 厚生労働白書」(こちら)の40頁~41頁です。

 

 

【「令和2年版 厚生労働白書」の40頁から転載 】

 

【「令和2年版 厚生労働白書」の41頁から転載 】

 

 

設問15

 

次の文中の   の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。

 

バブル経済の崩壊の影響は、1993(平成5)~2004(平成16)年のいわゆる「  」という形で現れ、その時期に就職活動を行った世代(いわゆる「  」世代)の働き方に長期にわたって影響を与えている。

この「  」世代は、現在、30歳代半ばから40歳代半ばとなっているが、こうした人々の中には、希望する就職ができず、現在も不本意ながら不安定な仕事に就いている、無業の状態にあるなど様々な課題に直面している人がいる。

この背景には、就職活動を行った時期の雇用情勢が厳しかったことや、企業側の人事・採用慣行等により、安定した職業に転職する機会が制約されてきたこと等が指摘されている。

このように社会に出る時期の経済状況が長期間にわたって「  」世代の働き方に影響を与え続けている状況に対し、社会全体で支援を行っていくことが求められている。 

 

選択肢:

①就職困難期 ②就職難民 ③就職氷河期 ④ロストジェネレーション

 

 

解答:

 

A=③就職氷河期

 

解説:

 

「令和2年版 厚生労働白書」(こちら)の41頁からです。

空欄の「就職氷河期」は、馴染みのある用語であり、難しくなかったと思います(当サイトのこのページの冒頭のタイトルでも「4 就業形態の多様化と就職氷河期世代の課題」と記載しています)。

 

「就職氷河期世代」とは、バブル経済の崩壊後の平成5年(1993年)から平成16年(2004年)の時期(就職氷河期)に就職活動を行った世代です(平成5年から平成17年卒業の世代といわれることも多いです)。

 

「就職氷河期」世代の課題として、以下のような点が指摘されています(「令和2年版 厚生労働白書」(こちら)の42頁~43頁)。

 

(ⅰ)まず、学卒直後の状況について、卒業時に進学も就職もしない割合を見ると、「就職氷河期」世代はその前の世代に比べて高いとされます(後掲の【図表1-3-25】)

 

(ⅱ)また、「就職氷河期」世代は、就職した後もその賃金が前後の世代と比べて低くなっているとされます。

 

即ち、後掲の【図表1-3-26】では、2009(平成21)年、2014(平成26)年、2019年の3時点で、各年齢階級の所定内給与額を5年前の同一年齢階級と比較して増減率を示していますが、3時点ともに、「就職氷河期」世代を含む年齢階級は、その前の世代よりも所定内給与額がほぼ減少しています。 

 

【「令和2年版 厚生労働白書」の42頁から転載 】

 

(ⅲ)「就職氷河期」世代については、フリーター・ニート等を対象とした再チャレンジ施策など累次の若者雇用対策が講じられたことにより、経済環境の好転とともに、就職や正規雇用への移行が進んできたとされます。

しかし、就職氷河期世代の中心層となる2019年段階で35~44歳の人の雇用形態等を見ると、非正規雇用の労働者である359万人の中には男性を中心に不本意非正規の者がいるほか、無業者は39万人と10年前から横ばいとなっているなど、依然として、様々な課題に直面しているとされます。

 

【「令和2年版 厚生労働白書」の43頁から転載 】

 

就職氷河期世代の課題について、さらに次の設問でみます。

 

 

設問16

 

次の文中の   の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。

 

いわゆる就職氷河期世代は、雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った世代であり、現在も、不本意ながら不安定な仕事に就いている、無業の状態にある、社会参加に向けた支援を必要としているなど、様々な課題に直面している。

 

2019(令和元)年6月に「経済財政運営と改革の基本方針2019」(2019年6月21日閣議決定)においてとりまとめられた「  」では、就職氷河期の抱える固有の課題や今後の人材ニーズを踏まえつつ、個々人の状況に応じた支援により、就職氷河期世代の活躍の場を更に広げられるよう、2020(令和2)年度からの3年間で集中的に取り組むという政府全体の方針が示された。

 

なお、不安定な就労状態にある者(不本意非正規)等の安定就職に向けた支援について、企業に対する就職氷河期世代の正社員雇用化の働きかけとして、ハローワーク等の紹介により、正社員経験が無い者や正社員経験が少ない者等を、正社員として雇い入れる事業主に対する「  」の支給等が実施されている。

 

選択肢:

①地域若者サポートステーション促進方針 ②就職氷河期世代支援プログラム ③就職氷河期アウトリーチ対策方針 ④就職氷河期活躍促進支援プログラム

⑤特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース) ⑥トライアル雇用助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース) ⑦人材開発支援助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース) ⑧キャリアアップ助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)

 

 

 

解答:

 

A=②就職氷河期世代支援プログラム

 

B=⑤特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)

 

解説:

 

本問は、就職氷河期世代に対する支援等に関する出題です。

「令和2年版 厚生労働白書」(こちら)では、139頁、259頁以下などで取り上げられており、本問はこれらの複数のページの記載をまとめて設問化しています(のちに、「その7」のこちら以下でも触れます)。

 

空欄のAについては、出題対象とはしにくそうですが、就職氷河期世代に対する支援の基本的枠組みがとりまとめられたものです。

即ち、2019年6月に、「経済財政運営と改革の基本方針2019」(2019年6月21日閣議決定)において「就職氷河期世代支援プログラム」が盛り込まれ、政府として3年間の集中的な支援に取り組むこととされました。

加えて、同年12月には、同プログラムに基づく個別の取組みについて具体的に明らかにすると同時に施策の成果目標を定める「就職氷河期世代支援に関する行動計画2019」(2019年12月23日就職氷河期世代支援の推進に関する関係府省会議決定)がとりまとめられ、今後の進捗状況を確認していくこととされました(以上、「令和2年版 厚生労働白書」(こちら)の139頁)。

(なお、令和2年12月28日の就職氷河期世代支援の推進に関する関係府省会議において、前記の「就職氷河期世代支援に関する行動計画2019」を改定した「就職氷河期世代支援に関する行動計画2020」が決定されました(参考程度ですが、こちらです。厚労省のサイトは、こちらです)。)

 

しかし、本問で注意は、空欄Bです。労働一般の選択式で注意というより、雇用保険法の雇用保険二事業に関する出題(択一式対策)としてチェックしておかれるとよいと思います。

雇用保険法で触れましたように(雇用保険法のこちら以下(雇用保険法のパスワード))、近時、雇用保険法において雇用保険二事業に関する出題が多く、直近の2年度(令和元年度、2年度)においても1問(5肢)出題されています。

助成金の出題も多く、改正された助成金が出題されることも少なくないです。

 

この点、空欄Bの「就職氷河期世代安定雇用実現コース(助成金)」は、令和2年2月14日公布・施行の施行規則の改正により、「特定求職者雇用開発助成金」のうち、従来、「安定雇用実現コース助成金」であったのが変更されたものです(前年度の改正事項です)。

具体的には、就職氷河期世代安定雇用実現コース助成金は、「雇入れの日において、35歳以上55歳未満の者」であり、「雇入れの日の前日から起算して過去5年間に通常の労働者として雇用された期間を通算した期間が1年以下であり、かつ雇入れの日の前日から起算して過去1年間に通常の労働者として雇用されたことがない者」等の要件を満たす者を通常の労働者として雇い入れる事業主に対して支給されます(雇用保険法のこちら以下)。

以上の太字部分を押さえておかれると安心です。

 

なお、設問の空欄Bを含む「就職氷河期世代安定雇用実現コース助成金」に関する説明は、「令和2年版 厚生労働白書」(こちら)の260頁(同白書の「第2部 現下の政策課題への対応』の中で記載されています)をベースにしています。

 

 

ちなみに、選択肢中の⑥「トライアル雇用助成金」、⑦「人材開発支援助成金」及び⑧「キャリアアップ助成金」についても、就職氷河期世代に対応した仕組みがありますので、簡単にご紹介しておきます。

 

(ⅰ)トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

 

トライアル雇用助成金のうち一般トライアルコース助成金は、安定した職業に就くことが困難な求職者(フリーター・ニートなどの若年者、中高年齢者、母子家庭の母など)を、公共職業安定所又は職業紹介事業者等紹介により、いわゆる正社員として雇い入れることを目的に、原則として3箇月以内期間を定めて試行的に雇用した場合に支給されます。

この前記の「中高年齢者」については、従来は45歳未満の者が対象でしたが、令和2年2月14日公布・施行の雇用保険法施行規則の改正により、55歳未満の者に改められています。これは、就職氷河期世代の雇用の安定を促進しようとする趣旨による改正です。

 

(この改正箇所自体は出題されませんでしたが、一般トライアルコース助成金については、雇用保険法の【令和元年問7D(こちら(雇用保険法のパスワード))】で出題されました。) 

 

以上、トライアル雇用助成金については、雇用保険法のこちら以下です。

 

 

(ⅱ)人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)

 

人材開発支援助成金のうち特別育成訓練コース助成金は、企業内での実習(OJT)と教育訓練機関等での座学(OFF-JT)を組み合わせた就職氷河期世代を含む幅広い世代の従業員を対象にした雇用型訓練(有期実習型訓練)に対して訓練経費や訓練時間中の賃金の一部を助成するものです。

そして、令和2年2月14日公布・施行の施行規則の改正により、事業主がより柔軟に対応できる短期間の雇用型訓練の実施を促進する観点から、助成金の支給対象となる訓練期間の下限を、従来の3か月以上から2か月以上に緩和される等の見直しが行われています。

(この改正箇所自体は出題されませんでしたが、人材開発支援助成金については、雇用保険法の【令和2年問7D(こちら雇用保険法のパスワード)】において、また、障害者職業能力開発コース助成金について、【令和2年問7A(こちら)】において出題されています。)

 

 

(ⅲ)キャリアアップ助成金(正社員化コース)

 

キャリアアップ助成金のうち正社員化コース助成金は、就職氷河期世代を含め、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用労働者について、正規雇用労働者等に転換又は直接雇用した事業主に対して助成されるものです。

雇用保険法のこちら以下を参考です。 

 

 

最後に、参考程度ですが、就職氷河期世代への支援の全体像は、次の図のとおりです(冒頭から3つ目の③の「助成金による支援」というのが、「就職氷河期世代安定雇用実現コース助成金」です)。

 

【「令和2年版 厚生労働白書」の139頁から転載 】

 

 

5 企業の雇用管理の変化と足元の雇用情勢

設問17

 

次の文中の   の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。

 

就業形態の多様化の背景には、働く側の意識の変化とともに、育児・介護等をしながら働く人、高齢期の人、心身の不調を抱えながら働く人など、働き方(時間、場所、ライフステージ等)に制約がある人が増加していることがある。

 

一方、企業の雇用管理も変化してきており、基幹労働力としての「男性正社員の長期勤続」を前提として設計されていた賃金体系や福利厚生等の見直しが行われてきており、働き方・職場を巡る長期的な変化が生じている。

 

賃金カーブの変化を見ると、産業別に形状のばらつきがあるものの、2002(平成14)年以降、労働者の年齢の上昇に伴うカーブは緩やかになってきている。その背景には、基本給の決定要素として「  」の割合が2000年代初めまでと比較して近年低い水準で推移していること、賃金体系では「  」の割合が高まっていること等がある。

 

福利厚生については、企業における  は1996(平成8)年度をピークに減少傾向にあったが、2018(平成30)年には増加している。  の内訳では独身寮や社宅の管理・運営費用である「住宅関連」が約半分を占めているが、2000年代に入り減少した。一方、この間、「  」が増加してきている。

 

選択肢:

①職務・職種など仕事の内容 ②職務遂行能力 ③業績・成果 ④学歴、年齢、勤続年数など

⑤役割・職務給 ⑥職能給 ⑦年齢・勤続給 ⑧歩合給

⑨労働費用 ⑩法定福利費 ⑪法定外福利費 ⑫労務管理費用

⑬文化・体育・レク ⑭慶弔関係 ⑮医療・健康 ⑯ライフサポート

 

 

解答:

 

A=学歴、年齢、勤続年数など

 

B=役割・職務給

 

C=法定外福利費

 

D=医療・健康

 

 

解説:

企業の雇用管理の変化についての出題です。「令和2年版 厚生労働白書」(こちら)の43

頁~46頁です。

 

(Ⅰ)空欄のA・B

 

空欄のA及びB(こちら以下)は、2002(平成14)年以降、労働者の年齢の上昇に伴う賃金カーブ(賃金の推移を時系列で示したグラフです)が緩やかになってきている背景についてです。

いわゆる日本型雇用システムの3大特徴として、一般に、㋐長期雇用制度、㋑年功序列型賃金制度及び㋒企業別労働組合が挙げられますが、空欄A・Bは、㋑の年功序列型賃金制度の変化・見直しという側面に関する問題です。

そこで、空欄Aの「基本給の決定要素」の変化については、年功序列型賃金制度における基本給の決定要素の中核である「学歴、年齢、勤続年数など」の割合が低下してきたことが挙げられることになります。

 

一般に、基本給の決定要素としては(以下の④等の番号は、上記選択肢のものです)、(1)属人給型(④「学歴、年齢、勤続年数など」、労働者の属人的要素によって決定されるもの。⑦「年齢・勤続給」など)、(2)仕事給型(①「職務・職種など仕事の内容」により決定される⑤「役割・職務給」や、②「職務遂行能力」により決定される⑥「職能給」)、及び(3)総合給型(上記(1)の属人的要素と(2)の仕事的要素を総合的に勘案して決定されるもの。日本で最も多いタイプです)に分かれます。

 

空欄Bについては、労働者の年齢の上昇に伴う賃金カーブが緩やかになってきている背景として、賃金体系において割合が高まっているものであり、⑤「役割・職務給」です。

 

近時、「ジョブ型雇用」が話題となっていますが、これは基本的には、労働契約において職務の内容が特定されているシステムのことです。

このジョブ型雇用では、賃金についても、職務(仕事の内容)により決定されることになります。

他方、「ジョブ型雇用」と対比される「メンバーシップ型雇用」は、労働契約において職務の内容が特定されていないシステムであり、賃金についても、「学歴、年齢、勤続年数など」が重視されやすいことになります)。

 

なお(一般に非正規雇用労働者について問題となる)「同一労働同一賃金」のルールは、広くは雇用形態に関わりない公正な処遇の確保を目的とするものですが、賃金については、職務(仕事の内容)により決定される仕組みであることになります。

 

なお、後掲の【図表1ー3-29】が参考となりますが、③「業績・成果」を重視して賃金を決定するいわゆる「成果型賃金制度・成果主義賃金制度」は、2001年(平成13年)頃は賃金の決定要素とする企業が多かったのですが(約6割とされています)、その後、低下していきます(2012年(平成24年)には、約4割の採用とされます)。

成果型は、成果の適切な判断が難しいという問題があり(一般に、目標管理制度により成果達成を測ります)、従業員の納得感が弱くなる、従業員が達成しやすい目標を掲げるため企業の活力が低下する、目標が技術の変化に対応しなくなるといったような様々な問題を発生させ、「業績・成果」を過度に重視して賃金を決定する方法は失敗に終わったとされています。

(もっとも、近時、前記の「ジョブ型雇用」を成果主義という観点から活用しようとする企業の動きもあるようです(職務に応じて賃金を決定するという「ジョブ型雇用」の考え方は、本来は、成果主義と関係するわけではないのですが)。)

 

 

【「令和2年版 厚生労働白書」の44頁から転載 】

 

【「令和2年版 厚生労働白書」の45頁から転載 】

 

(Ⅱ)空欄のC・D

 

空欄のC及びD(こちら以下)は、「労働費用」のうちの「法定福利費」の内訳の変化についてです。

 

労働費用」とは、使用者が労働者を雇用することによって生じる一切の費用(企業負担分)をいいます。

「現金給与額」、「法定福利費」、「法定外福利費」、「現物給与の費用」、「退職給付等の費用」等です。

 

法定福利費」とは、法律で義務づけられている社会保障制度の費用(企業負担分)をいいます。

「健康保険料」、「介護保険料」、「厚生年金保険料」、「労働保険料」等です。

 

法定外福利費」とは、法律で義務づけられていない福利厚生関係の費用です。

「住居に関する費用」、「医療保健に関する費用」、「食事に関する費用」、「慶弔見舞い等の費用」等です。

 

企業における「法定外福利費」は、後掲の【図表1ー3ー31】の通り、1996(平成8)年度をピークに長期的には緩やかに減少傾向にあります。

「法定外福利費」 の内訳としては、独身寮や社宅の管理・運営費用である「住宅関連」が約半分を占め、「ライフサポート」も25%弱を占めていますが、「医療・健康」が増加してきているとされます(以上、「令和2年版 厚生労働白書」(こちら)の46頁)。

 

 

【「令和2年版 厚生労働白書」の46頁から転載 】

 

なお、近時の労働費用のデーターについては、「平成28年 就労条件総合調査」のこちら以下を参考です。

 

 

設問18

 

有効求人倍率と完全失業率に関する次の記述は正しいか。

 

新型コロナウイルス感染症の影響が出る前の雇用情勢を見ると、近年では2008(平成20)年9月のリーマンショックの後、2009(平成21)年夏には過去最低の有効求人倍率(2009年8月で0.42倍)、過去最高に並ぶ完全失業率(2009年7月で5.5%)となったが、その後、経済の回復が見られ、有効求人倍率、雇用人員判断DIのいずれも1990年代初めのバブル経済の頃に匹敵するほど人手不足が深刻化していた。

 

 

解答:

 

正しい内容です (「令和2年版 厚生労働白書」(こちら)の46頁)。

本問を正確に解答することは難しかったと思いますが、有効求人倍率・完全失業率といった労働経済上の用語の定義を押さえ、また、これまでの特徴的な数字や傾向は押さえておきます。

以下の解説をチェックして下さい。

 

(1)有効求人倍率

 

有効求人倍率とは、大まかには、3か月有効な求人数を、3か月有効な求職者数で除して得た率です。

新規求人倍率は、「先行指標」(景気の動向に先行して動く指標)であり、景気の先行きに対する予測を行うときに利用されます。

対して、有効求人倍率は、「一致指標」(景気の動向にほぼ一致して動く指標)です。  

(以上、詳しくは、「労働経済の基礎知識」のこちら以下を参考です。)

 

近年の有効求人倍率の推移については、設問の通り、平成20年(2008年)9月のリーマンショックの後、平成21年(2009年)夏には過去最低の有効求人倍率(平成21年8月で0.42倍)となりました。

なお、年平均のデーターでは、平成21年0.47倍(年度平均では0.45倍)が過去最低となっています。

その後は、上昇を続け、令和元(2019)年平均のデーターでは、1.60倍となっていました。

しかし、令和2年のコロナ禍によって、同年4月(1.32倍)、6月(1.11倍)と大きく低下しています(後掲の【図表1-3-22】を参考です。なお、令和2年平均のデーターは、令和3年1月末に公表予定です)。

 

有効求人倍率や次の完全失業率については、年平均のデーターを把握しておけばよいでしょう。過去最も悪いデーターと直近のデーターを把握します。

有効求人倍率の場合は、上記の通り、平成21年の0.47倍が過去最低であり、あとは、直近の令和2年平均のデーターを押さえます。

仮に本問のように、「月」のデーターの出題がなされた場合も、年のデーターから推測するようにします。

 

 

(2)完全失業率

 

完全失業率は、「労働力人口」(就業者+完全失業者)に占める「完全失業者」の割合です(こちら)。

 

近年の完全失業率の推移については、設問の通り、リーマンショック後の平成21年(2009年)夏には、過去最高に並ぶ完全失業率(平成21年7月で5.5%)となりました。

年平均では、平成14年(2002年)の5.4%が過去最高です。

平成12年(2000年)末から平成14年(2002年)初頭あたりまで、ITバブルの崩壊により景気が低迷しました(IT不況などといいます)。

リーマンショック後の平成21年及び平成22年の年平均が5.1%でした。。

 

その後の完全失業率は減少を続け、平成30年及び令和元年は「2.4%」となり、平成4年(1992年)の2.2%以来、26年ぶりの低水準となっていました(「令和元年 労働力調査」のこちら以下を参考)。

しかし、令和2年のコロナ禍によって、完全失業率は緩やかですが上昇しており、同年4月(2.6%)、6月(2.8%)となっています(後掲の【図表1-3-22】を参考です。なお、「令和2年 労働力調査」は、令和3年1月末に公表予定です)。

 

 

【「令和2年版 厚生労働白書」の47頁から転載 】

 

 

6 働き方の見直しの必要性

ここまで見てきたように、働き方を巡っては、労働力人口・就業者数の将来的な減少見通しを踏まえた労働参加、女性のライフコースにかかる意識の変化と共働きの増加への対応、足元の雇用情勢を踏まえた人手不足への対応等の必要性が高まっており、仕事と生活の調和のとれた働き方を実現していくことが重要な課題となっている。

 

2007(平成19)年の「仕事と生活の調和ワーク・ライフ・バランス憲章」策定以降のワーク・ライフ・バランスにかかる希望と現実の推移を見ると、12年を経過してなお希望と現実は乖離している。

「仕事を優先したい」との希望が少ないのに対し、現実には「仕事を優先」しているとの回答が多い状況は変わっておらず、特に20~29歳男性、20~29歳、30~39歳、40~49歳女性において乖離の幅が大きい。

 

また、男女とも約2~3割の人は、「仕事」と「家庭生活」だけでなく、「地域・個人の生活」も優先したいとする希望がある。

また、福利厚生について、労働者側が特に必要性が高いと考える項目としては、労働時間・休暇、両立支援に関連するものが多い (以上、「令和2年版 厚生労働白書」(こちら)の47頁~49頁)。

 

 

 

第4節 技術と暮らし・仕事

「令和2年版 厚生労働白書」の第1部の第4節(こちらの50頁以下)では、平成の時代から新型コロナウイルス感染症の感染拡大に直面した今日までの間、情報通信技術を始めとする技術が暮らしや仕事にもたらしてきた変化について分析されています。

ただし、試験対策上は、余り出題しやすい個所はありません。次の1問のみ作成しておきます。

 

 

設問19

 

テレワーカーに関する次の記述は正しいか。

 

2010年代に入り、モバイルネットワークの進化や家庭のインターネット環境の向上などにより、仕事内容によっては、物理的に特定の職場とは異なる場所でも仕事をすることができるようにもなるなど、これまでの場所・時間の制約が緩和され、より自由度の高い働き方が可能となってきた。

2019(令和元)年度におけるテレワーカーの割合は、雇用型就業者が20.5%、自営型就業者が4.8%となっている。

 

 

解答:

誤りです。雇用型就業者の割合(20.5%)と自営型就業者の割合(4.8%)が逆になっています。

即ち、正しくは、次の通りです。

 

2019(令和元)年度におけるテレワーカーの割合は、雇用型就業者4.8%自営型就業者20.5%となっている。

 

テレワーカーのうち、雇用型就業者(民間会社、官公庁、その他の法人・団体の従業員等を本業としていると回答した者のうちテレワークを実施しているもののこと)より、自営型就業者(自営業・自由業、及び家庭での内職を本業としていると回答した者のうちテレワークを実

施しているもの)の方が5倍弱も多いことは注意です。

 

なお、テレワークに関するガイドライン(労基法の事業場外労働のこちら以下(労基法のパスワード))も参考ですが、このガイドラインは、近時、改められる予定です。

 

 

【「令和2年版 厚生労働白書」の55頁から転載 】

 

 

次のページでは、同白書の65頁の「第5節 縮小する地域社会」から見ます。