【2021年度版】
令和元年 就業形態の多様化に関する総合実態調査
令和元年の就業形態の多様化に関する総合実態調査は、令和3年2月12日に公表されました。
前回は平成26年に実施されています。
今回の調査は、5人以上の常用労働者を雇用する約17,000事業所と、そこで働く労働者約37,000人を対象として令和元年10月1日現在の状況について実施されたものです。
有効回答率は事業所調査で43.4%、個人調査で64.4%でした。
※ 令和元年のデーターに基づいていますので、昨年からのコロナ禍の影響が反映されていず、出題対象としにくい面もあります。
ただ、久しぶりの調査であるため、一応、注意しておきます。
設問を4問(うち1問は選択式)作成していますので、この設問を中心にざっとチェックしてみて下さい。
・報道発表用資料 = こちら
・概況 = こちら
・厚労省サイト = こちら
まず、前掲の「報道発表用資料」の中で、調査結果のポイントとして記載されている事項を掲げておきます。
※ 調査結果のポイント
1 事業所調査
(1)3年前と比べて正社員以外の労働者比率が「上昇した」事業所は16.2%、「低下した」事業所は14.6%。
正社員以外の労働者比率が上昇した事業所について、比率が上昇した就業形態(複数回答)をみると、「パートタイム労働者」が63.0%、次いで「嘱託社員(再雇用者)」が22.8%。
(2)正社員以外の労働者を活用する理由(複数回答)をみると、次の順。
①「正社員を確保できないため」とする事業所割合=38.1%(前回27.2%)
※ この①の理由の事業所割合は、前回に比べ上昇しています。
②「1日、週の中の仕事の繁閑に対応するため」=31.7%(前回32.9%
③「賃金の節約のため」=31.1%(前回38.6%)
※ ②及び③の理由の事業所割合は、前回に比べて低下しています。
2 個人調査
(1)現在の就業形態を選んだ理由(複数回答3つまで)としては、契約社員(専門職)、嘱託社員(再雇用者)では「専門的な資格・技能を活かせるから」が、それぞれ49.9%、45.6%、パートタイム労働者、臨時労働者では「自分の都合のよい時間に働けるから」が、それぞれ45.4%、39.5%、派遣労働者では「正社員として働ける会社がなかったから」が31.1%と最も高くなっている。
(2)現在の職場での満足度D.I.(注)について、「正社員」は「雇用の安定性」が61.4 ポイント、「正社員以外の労働者」は「仕事の内容・やりがい」が57.5ポイントと高くなっている。
(注)「満足度D.I.」とは、現在の職場での満足度について、「満足」又は「やや満足」と回答した労働者の割合から「不満」又は「やや不満」と回答した労働者の割合を差し引いた値をいう。
以下、本文です。事業所調査からです。
〔Ⅰ〕事業所調査
〔1〕就業形態別労働者がいる事業所の割合
1 令和元年10月1日現在で、就業形態別に当該就業形態の労働者がいる事業所の割合(以下「就業形態別事業所割合」という。)(複数回答)をみると、次の順。
①「正社員がいる事業所」=94.5%
②「正社員以外の労働者がいる事業所」=84.1%
③「正社員のみの事業所(正社員以外の労働者がいない)」=15.9%
※「正社員以外の労働者がいる事業所」は前回の80.1%と比べて上昇している。
【過去問 令和3年問2A(こちら)】
2 正社員以外の就業形態別事業所割合をみると、「パートタイム労働者がいる」が65.9%と最も高くなっている。【過去問 令和3年問2B(こちら)】
3 正社員以外の就業形態別に、当該就業形態の労働者のいる事業所割合が最も高い産業をみると、次の通り。
・「パートタイム労働者がいる」=「宿泊業、飲食サービス業」で87.6%、
・「嘱託社員(再雇用者)がいる」=「電気・ガス・熱供給・水道業」で55.4%
・「派遣労働者(受け入れ)がいる」=「情報通信業」で24.5%
・「契約社員(専門職)がいる」=「教育、学習支援業」で21.9%
【令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の6頁より転載(次の図も同じ)】
〔2〕3年前と比べた正社員数及び正社員以外の労働者比率の変化
1 正社員数の変化
(1)正社員数の変化
3年前(平成28年)と比べた正社員数の変化をみると、次の通り。
①「変わらない」とする事業所割合=48.9%
②正社員数が「減った」とする事業所割合=26.5%
③「増えた」とする事業所割合=23.6%
(2)産業別
産業別にみると、正社員数が「減った」とする事業所割合の方が「増えた」とする事業所割合よりも高い産業が多い中で、「不動産業、物品賃貸業」、「情報通信業」、「医療、福祉」などでは正社員数が「増えた」とする事業所割合(それぞれ35.3%、35.1%、35.0%)が「減った」とする事業所割合(それぞれ21.1%、28.4%、14.6%)をそれぞれ上回っている。
(3)事業所規模別
事業所規模別にみると、次の通り。
(ⅰ)30人以上の各事業所規模では、正社員数が「増えた」とする事業所割合が「1,000 人以上」55.8%、「300~999人」50.0%、「100~299人」39.5%、「30~99人」33.1%で、「減った」とする事業所割合(それぞれ25.1%、29.1%、31.7%、29.6%)をそれぞれ上回っている。
(ⅱ)「5~29人」の事業所規模では、正社員数が「増えた」とする事業所割合(21.5%)が「減った」とする事業所割合(25.8%)を下回っている。
※ つまり、「5~29人」の小規模の事業所では、正社員数が「減った」事業所の割合の方が多くなっています。
【令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の8頁より転載】
2 正社員以外の労働者比率の変化
(1)正社員以外の労働者比率の変化
3年前(平成28年)と比べた正社員以外の労働者比率の変化をみると、次の通り。
①「ほとんど変わらない」とする事業所割合=64.6%
②「上昇した」とする事業所割合=16.2%
③「低下した」とする事業所割合=14.6%
(2)産業別
産業別にみると、正社員以外の労働者比率が「上昇した」とする事業所割合は「教育、学習支援業」、「サービス業(他に分類されないもの)」でそれぞれ24.9%、21.8%と高い。
「低下した」とする事業所割合は、「金融業、保険業」、「宿泊業、飲食サービス業」でそれぞれ18.0%、17.1%と高くなっている。
(3)今後の変化予測
今後の変化予測をみると、次の通り。
(ⅰ)正社員以外の労働者比率
①「ほとんど変わらない」とする事業所割合=57.6%
②「上昇する」とする事業所割合=14.9%
③「低下する」とする事業所割合=7.0%
(ⅱ)産業別
正社員以外の労働者比率が「上昇する」とする事業所割合は、「運輸業、郵便業」で19.2%と、「低下する」とする事業所割合は、「不動産業、物品賃貸業」で!2.3%とそれぞれ他の産業に比べて高くなっている。
(4)事業所規模別
事業所規模別にみると、事業所規模が大きいほど、3年前(平成28年)と比べた正社員以外の労働者比率は「上昇した」とする事業所割合が高く、今後の変化予測についても「上昇する」とする事業所割合が概ね高くなっている。
(5)正社員数の変化の状況別
3年前(平成28年)と比べた正社員数の変化の状況別にみると、次の通り。
(ⅰ)正社員数が「増えた」事業所では、3年前と比べた正社員以外の労働者比率は次の順。
①「ほとんど変わらない」とする事業所割合=52.5%
②「上昇した」とする事業所割合=23.1%
③「低下した」とする事業所割合=20.6%
※ 次の正社員数が「減った」事業所においても、正社員以外の労働者比率は、次の通り、上記の①~③と同じ順番です。
(ⅱ)正社員数が「減った」事業所では、3年前と比べた正社員以外の労働者比率は次の順。
①「ほとんど変わらない」とする事業所割合=47.6%
②「上昇した」とする事業所割合=26.1%
③「低下した」とする事業所割合=21.3%
【令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の9頁より転載】
3 3年前と比べて労働者比率が上昇した正社員以外の就業形態及び今後比率が上昇すると思われる正社員以外の就業形態
【設問1】
次の文中の の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。
「令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査」(厚生労働省)によると、3年前(平成28年)と比べて正社員以外の労働者比率が上昇した事業所について、比率が上昇した正社員以外の就業形態(複数回答)をみると、「 A 」が最も多い(63.0%)。
産業別にみると、多くの産業で「 A 」と回答した事業所割合が最も高い中で、「情報通信業」、「不動産業、物品賃貸業」では、「 B 」がそれぞれ42.0%、41.7%と最も高くなっている。
選択肢:
①パートタイム労働者 ②嘱託社員(再雇用者) ③派遣労働者(受け入れ) ④臨時労働者
解答:
少々難しい内容ですが、解答は次のとおりです。
A=①パートタイム労働者
B=③派遣労働者(受け入れ)
ところで、全労働者数に対する派遣労働者の割合は、ここ10年程、おおむね2%~3%程度を推移しており、派遣労働者の数は少ないです(派遣労働者は、パートタイム労働者の10分の1程度)。(「平成29年派遣労働者実態調査」のこちらや労働者派遣法のこちら(労働一般のパスワード)で言及しています。)
そこで、本問の空欄の A (正社員以外の労働者比率が上昇した事業所における、比率が上昇した正社員以外の就業形態として最も多いもの)については、「派遣労働者」は入りにくいのではないかと想像することが可能です。
そして、本問の空欄の B は、「情報通信業」と「不動産業、物品賃貸業」を問題にしているところ、「情報通信業」では派遣労働者の就業数が多いこと(「平成29年派遣労働者実態調査」のこちら以下の(1))のイメージがあれば、 B を派遣労働者と推測することが可能です。
以下、本問を含む詳細を掲載します。
(1)3年前と比べて労働者比率が上昇した正社員以外の就業形態
3年前(平成28年)と比べて正社員以外の労働者比率が上昇した事業所について、比率が上昇した正社員以外の就業形態(複数回答)をみると、次の順。
①「パートタイム労働者」=63.0%
②「嘱託社員(再雇用者)」=22.8%
③「派遣労働者(受け入れ)」=12.5%
(2)3年前と比べて労働者比率が上昇した正社員以外の就業形態の産業別
産業別にみると、多くの産業で「パートタイム労働者」と回答した事業所割合が最も高い中で、「電気・ガス・熱供給・水道業」、「建設業」、「鉱業、採石業、砂利採取業」、「学術研究、専門・技術サービス業」では、「嘱託社員(再雇用者)」がそれぞれ55.9%、52.7%、51.7%、39.4%と最も高くなっている。
「情報通信業」、「不動産業、物品賃貸業」では、「派遣労働者(受け入れ)」がそれぞれ42.0%、41.7%と最も高くなっている。
(3)今後比率が上昇すると思われる正社員以外の就業形態
今後正社員以外の労働者比率が上昇すると回答した事業所について、比率が上昇すると思われる正社員以外の就業形態をみると、次の順。
①「パートタイム労働者」=62.4%
②「嘱託社員(再雇用者)」=24.2%
③「契約社員(専門職)」=13.6%
【令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の10頁より転載】
〔3〕正社員以外の労働者の活用
【設問2】
「令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査」(厚生労働省)による正社員以外の労働者を活用する理由に関する次の記述は、正しいか。
正社員以外の労働者がいる事業所について、正社員以外の労働者を活用する理由(複数回答)をみると、「賃金の節約のため」とする事業所割合が38.1%(前回の平成28年調査では27.2%)と最も多く、次いで「1日、週の中の仕事の繁閑に対応するため」が31.7%(前回32.9%)、「正社員を確保できないため」が31.1%(前回38.6%)となっている。
正社員以外の就業形態別に、正社員以外の労働者を活用する理由をみると、「嘱託社員」については、「高年齢者の再雇用対策のため」が80.0%(前回77.1%)と最も多く、次いで「即戦力・能力のある人材を確保するため」が44.3%(前回37.8%)となっている。
解答:
設問の前段の「正社員以外の労働者を活用する理由」について、「賃金の節約のため」と「正社員を確保できないため」を入れ替えると正しい内容となります。
正しい内容にして設問を再掲しますと、次のとおりです。
◆正社員以外の労働者がいる事業所について、正社員以外の労働者を活用する理由(複数回答)をみると、「正社員を確保できないため」とする事業所割合が38.1%(前回の平成28年調査では27.2%)と最も多く、次いで「1日、週の中の仕事の繁閑に対応するため」が31.7%(前回32.9%)、「賃金の節約のため」が31.1%(前回38.6%)となっている。【過去問 令和3年問2C(こちら)】
正社員以外の就業形態別に、正社員以外の労働者を活用する理由みると、「嘱託社員」については、「高年齢者の再雇用対策のため」が80.0%(前回77.1%)と最も多く、次いで「即戦力・能力のある人材を確保するため」が44.3%(前回37.8%)となっている。
以下、詳しく見ます。
1 正社員以外の労働者を活用する理由
(1)正社員以外の労働者を活用する理由
正社員以外の労働者がいる事業所について、正社員以外の労働者を活用する理由(複数回答)をみると、次の順。
①「正社員を確保できないため」とする事業所割合=38.1%(前回の平成28年調査では27.2%)。【過去問 前掲の令和3年問2C(こちら)】
※ この①の理由の事業所割合は、前回に比べて上昇しています。
②「1日、週の中の仕事の繁閑に対応するため」とする事業所割合=31.7%(前回32.9%)
③「賃金の節約のため」とする事業所割合=31.1%(前回38.6%)
※ ②及び③の理由の事業所割合は、前回に比べて低下しています。
(2)就業形態別に見た正社員以外の労働者を活用する理由
主な正社員以外の就業形態別に、正社員以外の労働者を活用する理由みると、次の通り。
(ⅰ)「契約社員」では、次の順。
①「専門的業務に対応するため」=54.4%(前回49.3%)
②「即戦力・能力のある人材を確保するため」=35.8%(前回36.0%)
(ⅱ)「嘱託社員」では、次の順。
①「高年齢者の再雇用対策のため」=80.0%(前回77.1%)
②「即戦力・能力のある人材を確保するため」=44.3%(前回37.8%)
(ⅲ)「パートタイム労働者」では、次の順。
①「1日、週の中の仕事の繁閑に対応するため」=37.4%(前回39.2%)
②「賃金の節約のため」=34.8%(前回41.1%)
(ⅳ)「派遣労働者」では、次の順。
①「正社員を確保できないため」=47.8%(前回32.5%)
②「即戦力・能力のある人材を確保するため」=33.3%(前回33.9%)
【令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の11頁より転載】
2 正社員以外の労働者を活用する上での問題点
(1)正社員以外の労働者を活用する上での問題点
正社員以外の労働者がいる事業所について、正社員以外の労働者を活用する上での問題点(複数回答)をみると、次の順。【過去問 令和3年問2D(こちら)】
①「良質な人材の確保」=56.8%
②「定着性」=52.5%
③「仕事に対する責任感」=46.0%
(2)就業形態別の正社員以外の労働者を活用する上での問題点
就業形態別にみると、「出向社員」、「契約社員」、「派遣労働者」、「パートタイム労働者」、「臨時労働者」では、「良質な人材の確保」がそれぞれ41.5%、59.2%、55.6%、55.1%、49.3%と最も高く、「嘱託社員」では「仕事に対する責任感」が36.8%と最も高くなっている。
【令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の14頁より転載】
続いて、個人調査です。
〔Ⅱ〕個人調査
〔1〕就業の実態
1 職種
(1)正社員と正社員以外の職種別の割合
正社員と正社員以外のそれぞれの職種別の割合について、「正社員」では次の順。
①「事務的な仕事」=36.0%
②「管理的な仕事」=21.0%
③「専門的・技術的な仕事」=19.7%
「正社員以外の労働者」では、次の順。
①「事務的な仕事」=27.8%
②「専門的・技術的な仕事」=18.2%
③「サービスの仕事」=17.4%
(2)正社員以外の就業形態別の職種
正社員以外の就業形態別にみると、「契約社員(専門職)」、「臨時労働者」では「専門的・技術的な仕事」がそれぞれ40.5%、30.5%、「出向社員」、「嘱託社員(再雇用者)」、「パートタイム労働者」、「派遣労働者」では「事務的な仕事」がそれぞれ28.8%、26.3%、26.9%、38.7%と最も高い割合となっている。
(3)正社員以外の男女別の就業形態における職種
男女別にみると、男については、就業形態別においてそれぞれ以下の仕事が最も多くなっている。
・「契約社員(専門職)」及び「臨時労働者」=「専門的・技術的な仕事」がそれぞれ41.2%、36.8%
・「派遣労働者」=「生産工程の仕事」が31.8%
・「出向社員」=「管理的な仕事」が30.2%
・「嘱託社員(再雇用者)」=「事務的な仕事」が24.6%
・「パートタイム労働者」=「サービスの仕事」が22.9%
女については、次の通り。
・「契約社員(専門職)」及び「嘱託社員(再雇用者)」=「専門的・技術的な仕事」がそれぞれ39.8%、33.7%
・「出向社員」、「パートタイム労働者」及び「派遣労働者」=「事務的な仕事」がそれぞれ38.1%、32.3%、61.8%
・「臨時労働者」=「サービスの仕事」が34.8%
(4)職種ごとの労働者割合
職種ごとに、正社員、正社員以外の労働者別の労働者割合をみると、「保安の仕事」、「運搬・清掃・包装等の仕事」、「サービスの仕事」、「販売の仕事」などでは、正社員以外の労働者が過半数を超えている。
【令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の15頁より転載】
2 9月の平均的な1週間の実労働時間数
(1)令和元年9月の平均的な1週間の実労働時間数階級別労働者割合
令和元年9月の平均的な1週間の実労働時間数階級別労働者割合をみると、「正社員」では、次の順。
①「40~45時間未満」=36.6%
②「45~50時間未満」=19.7%
③「35~40時間未満」=19.2%
正社員以外の就業形態別に労働者割合が最も高い実労働時間数階級をみると、次の通り。
・「出向社員」、「契約社員(専門職)」及び「派遣労働者」=「40~45時間未満」でそれぞれ37.6%、29.1%、28.6%
・「嘱託社員(再雇用者)」=「35~40時間未満」で30.5%
・「パートタイム労働者」及び「臨時労働者」=「20時間未満」でそれぞれ20.6%、24.4%
(2)現在の実労働時間数についての考え
現在の実労働時間数についての考えをみると、正社員、正社員以外の労働者ともに「今のままでよい」がそれぞれ66.6%、70.1%と最も高くなっている。
就業形態別にみても同様に「今のままでよい」がおおむね7割前後を占めているが、「正社員」、「出向社員」、「契約社員(専門職)」、「嘱託社員(再雇用者)」では、「減らしたい」が「増やしたい」を上回っており、「臨時労働者」、「派遣労働者」では、逆に「増やしたい」が「減らしたい」を上回っている。
【令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の18頁より転載】
【令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の19頁より転載】
3 9月の賃金総額(税込)
就業形態別に令和元年9月の1か月間に支払われた賃金総額(税込)階級別労働者割合をみる
と、「正社員」では次の順。
①「20~30万円未満」=33.0%
②「20~40万円未満」=25.4%
③「40~50万円未満」=15.6%
正社員以外では、次の通り。
・「パートタイム労働者」、「派遣労働者」及び「契約社員(専門職)」=「10~20万円未満」がそれぞれ43.5%、40.9%、37.7%
・「臨時労働者」=「10万円未満」が41.9%
・「嘱託社員(再雇用者)」=「20~30万円未満」が40.0%
・「出向社員」=「30~40万円未満」が22.9%
【令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の20頁より転載】
4 雇用契約期間及び現在の会社における在籍期間
【設問3】
「令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査」(厚生労働省)による雇用契約期間等に関する次の記述は、正しいか。
「令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査」(厚生労働省)によると、正社員以外の労働者について、現在の労働契約における雇用期間の定めの有無をみると、「雇用期間の定めがある」が58.0%、「雇用期間の定めがない」が40.8%となっている。
「出向社員」及び「パートタイム労働者」では「雇用期間の定めがない」が「雇用期間の定めがある」よりも高くなっている。
雇用期間の定めのある正社員以外の労働者について、期間を定めない雇用契約への変更希望の有無をみると、「希望する」が47.1%、「希望しない」が35.0%となっている。
就業形態別にみると、「派遣労働者」では、「希望しない」が46.0%と、5割近くとなっている。
解答:
設問の前段(現在の労働契約における雇用期間の定めの有無の部分)については、正しいです。
しかし、後段は誤りです。正誤は次のとおりです。太字の部分が正誤の箇所です。「希望する」と「希望しない」が逆になる等の誤りがあります。
【過去問 令和3年問2E(こちら)】
・誤り(設問):
雇用期間の定めのある正社員以外の労働者について、期間を定めない雇用契約への変更希望の有無をみると、「希望する」が47.1%、「希望しない」が35.0%となっている。
就業形態別にみると、「派遣労働者」では、「希望しない」が46.0%と、5割近くとなっている。
・正しい内容:
雇用期間の定めのある正社員以外の労働者について、期間を定めない雇用契約への変更希望の有無をみると、「希望しない」が47.1%、「希望する」が35.0%となっている。
就業形態別にみると、「派遣労働者」では、「希望する」が46.0%と、5割近くとなっている。
即ち、期間の定めのある正社員以外の労働者は、期間を定めない雇用契約への変更を希望しない者が5割近くいます。
以下、詳しく見ます(設問の後段の部分は、のちに「5 期間を定めない雇用契約への変更希望」の個所(こちら )でみます)。
正社員以外の労働者について、現在の労働契約における雇用期間の定めの有無をみると、「雇用期間の定めがある」が58.0%、「雇用期間の定めがない」が40.8%となっている。
雇用契約期間階級別では、「1年~2年未満」が31.5%と最も高く、次いで「6か月~1年未満」が10.9%となっている。
「雇用期間の定めがある」が「雇用期間の定めがない」より高い割合の就業形態別にみると、「契約社員(専門職)」、「嘱託社員(再雇用者)」では「1年~2年未満」が、「派遣労働者」では「3か月~6か月未満」が最も高くなっている。
また、「出向社員」、「パートタイム労働者」では「雇用期間の定めがない」が「雇用期間の定めがある」よりも高くなっている。
また、正社員以外の労働者について、現在の会社における在籍期間をみると、「5年~10年未満」が20.2%と最も高く、次いで「10年~20年未満」が20.1%、「3年~5年未満」が15.9%などとなっている。
【令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の21頁より転載】
5 期間を定めない雇用契約への変更希望
雇用期間の定めのある正社員以外の労働者について、期間を定めない雇用契約への変更希望の
有無をみると、「希望しない」が47.1%、「希望する」が35.0%となっている。
【過去問 前掲の令和3年問2E(こちら)】
就業形態別にみると、「派遣労働者」では、「希望する」が46.0%と、5割近くとなっている。
【令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の22頁より転載】
6 各種制度等の適用状況
各種制度等の適用状況について。
「正社員」について、前回に比べて上昇しているものは、次の通り。
・「雇用保険」(92.7%、前回92.5%)
・「賞与支給制度」(86.8%、前回86.2%)
・「福利厚生施設等の利用」(55.8%、前回54.5%)
「正社員以外の労働者」については、全ての項目において前回に比べて上昇している。
例えば、次の通り。
・「雇用保険」(71.2%、前回67.8%)
・「健康保険」(62.7%、前回54.8%)
・「厚生年金」(58.1%、前回52.2%)
・「賞与支給制度」(35.6%、前回31.2%)
・「福利厚生施設等の利用」(25.3%、前回23.9%)
・「退職金制度」(13.4%、前回9.6%)
正社員以外の就業形態別にみると、「契約社員(専門職)」、「嘱託社員(再雇用者)」、「パートタイム労働者」、「臨時労働者」、「派遣労働者」では、「雇用保険」、「健康保険」、「厚生年金」、「退職金制度」、「賞与支給制度」のいずれもが前回に比べて上昇している。
〔2〕正社員以外の労働者の仕事に対する意識
1 現在の就業形態を選んだ理由
【設問4】
「令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査」(厚生労働省)による現在の就業形態を選んだ理由に関する次の記述は、正しいか。
正社員以外の労働者(出向社員を除く)について、現在の就業形態を選んだ理由(複数回答3つまで)をみると、契約社員(専門職)、嘱託社員(再雇用者)では「専門的な資格・技能を活かせるから」が、それぞれ49.9%、45.6%、派遣労働者では「自分の都合のよい時間に働けるから」が、それぞれ45.4%、39.5%、パートタイム労働者、臨時労働者では「正社員として働ける会社がなかったから」が31.1%と最も高くなっている。
解答:
誤りです。「派遣労働者」と「パートタイム労働者、臨時労働者」を入れ替えると、正しい内容になります。
即ち、現在の就業形態を選んだ理由として、「パートタイム労働者、臨時労働者」では、「自分の都合のよい時間に働けるから」が最も高く、「派遣労働者」では、「正社員として働ける会社がなかったから」が最も高くなっています。
正誤を比較すると、次のとおりです。次の太字の部分が正誤の箇所です。
・誤りの内容(設問):
正社員以外の労働者(出向社員を除く)について、現在の就業形態を選んだ理由(複数回答3つまで)をみると、契約社員(専門職)、嘱託社員(再雇用者)では「専門的な資格・技能を活かせるから」が、それぞれ49.9%、45.6%、派遣労働者では「自分の都合のよい時間に働けるから」が、それぞれ45.4%、39.5%、パートタイム労働者、臨時労働者では「正社員として働ける会社がなかったから」が31.1%と最も高くなっている。
・正しい内容:
正社員以外の労働者(出向社員を除く)について、現在の就業形態を選んだ理由(複数回答3つまで)をみると、契約社員(専門職)、嘱託社員(再雇用者)では「専門的な資格・技能を活かせるから」が、それぞれ49.9%、45.6%、パートタイム労働者、臨時労働者では「自分の都合のよい時間に働けるから」が、それぞれ45.4%、39.5%、派遣労働者では「正社員として働ける会社がなかったから」が31.1%と最も高くなっている。
本問は、冒頭の「調査結果のポイント」の個人調査のこちらの(1)で掲載したものであり、次の(2)の箇所でも見ています。
以下、詳しく見ます。
(1)現在の就業形態を選んだ理由
正社員以外の労働者(出向社員を除く)について、現在の就業形態を選んだ理由(複数回答3つまで)をみると、次の順。
①「自分の都合のよい時間に働けるから」=36.1%
②「家庭の事情(家事・育児・介護等)と両立しやすいから」=29.2%
③「家計の補助、学費等を得たいから」=27.5%
このうち、「家庭の事情(家事・育児・介護等)と両立しやすいから」、「専門的な資格・技能を活かせるから」などが前回より上昇している。
(2)就業形態別
就業形態別に現在の就業形態を選んだ理由をみると、次の通り。
(ⅰ)「契約社員(専門職)」
①「専門的な資格・技能を活かせるから」=49.9%
②「正社員として働ける会社がなかったから」=23.9%
(ⅱ)「嘱託社員(再雇用者))」
①「専門的な資格・技能を活かせるから」=45.6%
②「家計の補助、学費等を得たいから」=24.6%
(ⅲ)「パートタイム労働者」
①「自分の都合のよい時間に働けるから」=45.4%
②「家庭の事情(家事・育児・介護等)と両立しやすいから」=36.7%
(ⅳ)「臨時労働者」
①「自分の都合のよい時間に働けるから」=39.5%
②「専門的な資格・技能を活かせるから」=29.5%
(ⅴ)「派遣労働者」
①「正社員として働ける会社がなかったから」=31.1%
②「自分の都合のよい時間に働けるから」=20.9%
(3)男女別
男女別に、正社員以外の労働者(出向社員を除く)について、現在の就業形態を選んだ理由(複数回答3つまで)をみる。
男では次の順。
①「専門的な資格・技能を活かせるから」=34.1%
②「自分の都合のよい時間に働けるから」=31.7%
③「勤務時間や労働日数が短いから」=21.2%
女では、次の順。
①「家庭の事情(家事・育児・介護等)と両立しやすいから」=40.5%
②「自分の都合のよい時間に働けるから」=38.4%
③「家計の補助、学費等を得たいから」=34.8%
【令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の24頁より転載】
【令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の25頁より転載】
2 今後の就業に対する希望
正社員以外の労働者について、今後の就業に対する希望をみると、「現在の会社で働きたい」が72.8%(前回71.8%)、「別の会社で働きたい」が12.8%(前回14.2%)などとなっている。
就業形態別にみると、「現在の会社で働きたい」は「嘱託社員(再雇用者)」での77.5%、「出向社員」での75.9%などが、「別の会社で働きたい」は「派遣労働者」での22.9%が高くなっている。
また、「今後も会社で働きたい」と回答した正社員以外の労働者について、今後の働き方に対する希望をみると、「現在の就業形態を続けたい」が64.9%、「他の就業形態に変わりたい」が34.5%となっており、「他の就業形態に変わりたい」とする正社員以外の労働者の希望する就業形態の内訳は、「正社員に変わりたい」が26.7%、「正社員以外の他の就業形態に変わりたい」が7.8%となっている。
就業形態別にみると、「現在の就業形態を続けたい」は、「パートタイム労働者」、「嘱託社員(再雇用者)」、「出向社員」でそれぞれ72.6%、71.2%、70.8%と高くなっている。
一方、「契約社員(専門職)」、「派遣労働者」では「他の就業形態に変わりたい」と回答した割合が、それぞれ52.4%、50.6%と高くなっており、その希望する就業形態の内訳は、「正社員に変わりたい」がそれぞれ45.7%、42.4%、「正社員以外の他の就業形態に変わりたい」がそれぞれ6.7%、8.2%となっている。
【令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の26頁より転載】
【令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の27頁より転載】
3 正社員になりたい理由
正社員に変わりたいと回答した正社員以外の労働者について、正社員になりたい理由(複数回答3つまで)をみると、次の順。
①「正社員の方が雇用が安定しているから」=73.6%(前回76.7%)
②「より多くの収入を得たいから」=71.8%(前回78.0%)
なお、いずれの就業形態でもこれらの理由が高くなっている。
【令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の28頁より転載】
〔3〕現在の職場での満足度
仕事の内容・やりがいや賃金など11の項目と職業生活全体について、「満足」又は「やや満足」とする労働者割合から「不満」又は「やや不満」とする労働者割合を差し引いた満足度D.I.を正社員と正社員以外の労働者で比較してみると、例えば、次の通り。
・「雇用の安定性」(正社員61.4ポイント、正社員以外の労働者33.1ポイント)、
・「仕事の内容・やりがい」(正社員58.8ポイント、正社員以外の労働者57.5ポイント)
・「正社員以外の労働者との人間関係、コミュニケーション」(同50.5ポイント、同50.7ポイント)となっている。
「雇用の安定性」は、正社員の満足度D.I.が最も高いが、正社員以外の労働者では低い。「賃金」(同21.7ポイント、同6.7ポイント)、「教育訓練・能力開発のあり方」(同19.1ポイント、同4.2ポイント)、「人事評価・処遇のあり方」(同16.2ポイント、同16.5ポイント)などは両者ともに低い。
就業形態別にみると、「契約社員(専門職)」、「嘱託社員(再雇用者)」、「派遣労働者」で「賃金」が、「派遣労働者」で「教育訓練・能力開発のあり方」が、それぞれマイナスポイントとなっている。
【令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の29頁より転載】
○過去問:
・【令和3年問2】
設問:
我が国の労働者の就業形態の多様化に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
なお、本間は、「令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況(厚生労働省)」を参照しており、当該調査による用語及び統計等を利用している。
〔以下、肢ごとに見ます。〕
A 令和元年10月1日現在で、就業形態別に当該就業形態の労働者がいる事業所の割合(複数回答)をみると、「正社員以外の労働者がいる事業所」は前回調査(平成26年)と比べて低下している。
解答:
誤りです。
「正社員以外の労働者がいる事業所」の割合は84.1%であり、前回調査(平成26年)の80.1%と比べて上昇しています。
こちらです。
本肢については、「低下している」という点に疑問を感じることは可能です。
「令和元年 就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況」(以下、本解説において「令和元年 就業形態の多様化」といいます)のこちらの6ページです。
B 正社員以外の就業形態別事業所割合をみると、「派遣労働者(受け入れ)がいる」が最も高くなっている。
解答:
誤りです。
正社員以外の就業形態別事業所割合をみると、「パートタイム労働者がいる」が65.9%と最も高くなっています。本文のこちらです。
「令和元年 就業形態の多様化」のこちらの6ページです。
なお、若干異なる論点ですが関連問題について、【設問1(こちら)】で設問化しており、その解説において、「全労働者数に対する派遣労働者の割合は、ここ10年程、おおむね2%~3%程度を推移しており、派遣労働者の数は少ないです(派遣労働者は、パートタイム労働者の10分の1程度)。」と記載している点も参考にできたと思います。
C 正社員以外の労働者がいる事業所について、正社員以外の労働者を活用する理由(複数回答)をみると、「正社員を確保できないため」とする事業所割合が最も高くなっている。
解答:
正しいです。
本肢については、【設問2(こちら)】で取り上げており、論点が的中しました。このCが正解肢であったため、正解肢を当てたことになります。
「令和元年 就業形態の多様化」のこちらの11ページです。
D 正社員以外の労働者がいる事業所について、正社員以外の労働者を活用する上での問題点(複数回答)をみると、「仕事に対する責任感」が最も高くなっている。
解答:
誤りです。
正社員以外の労働者がいる事業所について、正社員以外の労働者を活用する上での問題点(複数回答)については、次の順番です。
①「良質な人材の確保」=56.8%
②「定着性」=52.5%
③「仕事に対する責任感」=46.0%
従って、「良質な人材の確保」が最も高くなっていました。
本文のこちら以下です。
「令和元年 就業形態の多様化」のこちらの14ページです。
E 雇用期間の定めのある正社員以外の労働者について、期間を定めない雇用契約への変更希望の有無をみると、「希望する」が「希望しない」を上回っている。
解答:
誤りです。
本肢についても、【設問3(こちら)】で論点を当てていました。
雇用期間の定めのある正社員以外の労働者について、期間を定めない雇用契約への変更希望の
有無をみますと、「希望しない」が47.1%、「希望する」が35.0%となっています。
一見、「希望する」の方が多いようにも思えますが、このように「違和感あるような個所」などが出題されることが少なくなく、データを見る際のポイントとなります。
「令和元年 就業形態の多様化」のこちらの22ページです。
以上で、「令和元年 就業形態の多様化に関する総合実態調査」を終わります。
次のページでは、「外国人雇用状況の届出状況」を見ます。