平成29年度版

 

平成29年度版 直前対策講座

平成29年度版の直前対策講座です。

改正事項を中心として、重要知識の再整理や選択式問題の練習等をしていきます。

 

まずは、テキスト作成が直近になりました関係で、労働組合法から開始です。

 

労働組合法 1(条文編)

労働組合法からは、近年、択一式で、数肢程度の出題があります。判例が狙われることが多いです。

労働一般の選択式は、近時、データー関係からの出題が続いていることも考えますと、択一用に労組法の判例をチェックしておくのがよさそうです(なお、労働一般の労組法の選択式の直近の出題は、平成21年度までさかのぼります)。 

 

ただし、判例を紹介する前に、前提知識として、このページでは、労働組合法の重要な条文を選択式の形式で9問掲載しておきます。

労働組合法では、出題対象となりそうな条文は、それほど多くありません。

先に触れましたように、労働一般の選択式の近時の傾向からしますと、労働組合法が選択式の素材として選ばれる可能性は高くはないですが、以下の条文は、労働組合法の基本的知識であり、次のページ以降で見ます判例の理解のためにも必要になります。

 

なお、判例については、択一式の形式で紹介します。難しい内容が多いですが、判旨を一度でもお読み頂くとそこそこ記憶に残るものです。あまり時間をかけず、内容を深く追わずに(さしあたりは当サイトの各設問の解説で十分です)、雰囲気をざっとつかむという軽い気持ちで、取りあげられている判例を読んでいって下さい。

正解できるかどうかは重視していず、試験会場で「この判例は読んだことがある」という状態を作って頂くことを目標としています。

出題されそうな労組法の判例はほぼカバーしています。

 

なお、労働組合法の基本的・体系的な知識・理論についてはサイト本文で詳述していますが、この時期にサイト本文を広くお読み頂く必要がないように、この直前対策講座の中だけで完結できるように配慮しています。

 

 

労働組合法の重要条文 選択式

 

【問1】

 

次の文中の   の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。

 

労働組合法は、労働者が使用者との交渉において  に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の  を行うために  労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する  団体交渉をすること及び  することを目的とする。

 

選択肢:

①平等の立場 ②均等な待遇 ③優位な立場 ④対等の立場 ⑤組合活動 ⑥団体交渉 ⑦ 団体行動 ⑧団体行動その他の活動 ⑨ 自律的に ⑩主体的に ⑪自主的に ⑫自ら

⑬労使協定を締結するための ⑭労働協約を締結するための ⑮団結権の行使を円滑化するために ⑯労働契約の内容を規律するための ⑰その活動を助成 ⑱その活動を促進 ⑲その手続を支援 ⑳その手続を助成

 

※ 解答はこちら 

 

 

【問2】

 

次の文中の   の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。

 

労働組合法で「労働組合」とは、労働者が  となって自主的に労働条件の維持改善その他  を図ることを主たる目的として組織する団体又はその  をいう。但し、左の各号の一に該当するものは、この限りでない。

 

一 役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者 、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者その他  の参加を許すもの

 

二 団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるもの。但し、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、且つ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。

 

三 共済事業その他福利事業のみを目的とするもの

 

四   を目的とするもの

 

 

選択肢:

①中心 ②一体 ③団結し主体 ④主体 ⑤地位の向上 ⑥労働者の福祉の向上 ⑦使用者との対等な立場の確保 ⑧経済的地位の向上 ⑨上部団体 ⑩下部団体 ⑪連合団体 ⑫単位組合 ⑬労働基準法第41条の規定に該当する者 ⑭労働組合の自主性又は独立性を損なうおそれがある者 ⑮使用者の利益を代表する者 ⑯労働者の利益を代表しない者 ⑰暴力的不法行為又は暴力的要求行為 ⑱営利事業その他の経済的活動のみ ⑲主として営利的活動 ⑳主として政治運動又は社会運動

 

※ 解答はこちら 

 

 

【問3】

 

次の文中の  の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。

 

労働組合法で「労働者」とは、職業の種類を問わず、  をいう。

 

 

選択肢:

①事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者 ②使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者 ③使用者に使用される者であって、賃金を支払われる者 ④賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者 ⑤事業組織に組み入れられ、使用者の指揮監督の下に労務を提供し、その対価として賃金を支払われる者

 

※ 解答はこちら 

 

 

【問4】

 

次の文中の   の部分(A及びB)を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。

 

使用者は、  その他の争議行為であって  によって損害を受けたことの故をもって、労働組合又はその組合員に対し賠償を請求することができない。

 

選択肢:

①ピケッティング ②怠業 ③作業所閉鎖 ④同盟罷業 ⑤労働組合法の規定により認められているもの ⑥憲法第28条の精神に照らして相当といえるもの ⑦社会的に相当性が認められるもの ⑧正当なもの

 

 

※ 解答はこちら 

 

 

【問5】

 

次の文中の   の部分(A及びB)を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。

 

労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する  は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによってその効力を生ずる。

 

  に定める労働条件その他の  労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となった部分は、基準の定めるところによる。労働契約に定がない部分についても、同様とする。

 

 

選択肢:

①労使協定 ②合意 ③規約 ④労働協約 ⑤労働者の待遇に関する基準に達しない ⑥基準に反する ⑦規範的効力を定める部分に違反する ⑧労働者の待遇に関する基準に違反する

 

※ 解答はこちら 

 

 

【問6】

 

次の文中の   の部分(A及びB)を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。

 

労働協約には、  をこえる有効期間の定をすることができない。 

  をこえる有効期間の定をした労働協約は、  の有効期間の定をした労働協約とみなす。

有効期間の定がない労働協約は、当事者の一方が、署名し、又は記名押印した文書によって相手方に予告して、解約することができる。

当該予告は、解約しようとする日の少くとも  にしなければならない。

 

選択肢:

①6か月 ②1年 ③3年 ④5年 ⑤2週間前 ⑥30日前 ⑦1か月前 ⑧90日前

 

※ 解答はこちら 

 

 

【問7】

 

次の文中の   の部分(A~C)を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。

 

一の工場事業場に  の数の労働者が一の  の適用を受けるに至ったときは、当該工場事業場に使用される  に関しても、当該  が適用されるものとする。

 

選択肢:

①常時使用される労働者の3分の2以上 ②常時使用される労働者の4分の3以上 ③同種の労働者の3分の2以上 ④使用される労働者の4分の3以上 ⑤常時使用される同種の労働者の4分の3以上 ⑥使用される同種の労働者の4分の3以上 ⑦労使協定 ⑧労働契約 ⑨労働協約 ⑩労働慣行 ⑪他の労働者 ⑫他の組合員 ⑬使用者の利益を代表する者 ⑭他の同種の労働者

 

※ 解答はこちら 

 

 

【問8】

 

次の文中の   の部分(A~C)を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。

 

一の地域において従業する  が一の労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該労働協約の当事者の双方又は一方の申立てに基づき、  の決議により、  は、当該地域において従業する他の同種の労働者及びその使用者も当該労働協約の適用を受けるべきことの決定をすることができる。

 

選択肢:

①常時使用される同種の労働者の4分の3以上 ②同種の労働者の4分の3以上 ③同種の労働者の3分の2以上 ④同種の労働者の大部分 ⑤労使委員会 ⑥厚生労働大臣 ⑦中央労働委員会 ⑧労働委員会 ⑨厚生労働大臣又は都道府県知事 ⑩中央労働委員会の会長 ⑪都道府県知事

 

※ 解答はこちら  

 

 

次は、条文編の最後の設問です。

 

 

【問9】

 

次の文中の   の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。

 

使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。

 

一 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは  の故をもって、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。

ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の  を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。

 

二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。

 

三 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営すること  、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。

ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び  を除くものとする。 

 

四 労働者が  に対し使用者がこの条〔第7条〕の規定に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第27条の12第1項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。

 

 

選択肢:

①労働組合から脱退したこと ②労働争議に参加したこと ③組合活動をしたこと ④労働組合の正当な行為をしたこと ⑤2分の1以上 ⑥過半数 ⑦4分の1以上 ⑧3分の2以上

⑨を妨害し ⑩に介入し ⑪に関与し ⑫を支配し、若しくはこれに介入すること ⑬労働組合の組合員にその業務の専従を認めること ⑭チェック・オフ ⑮最小限の広さの事務所の供与 ⑯掲示板を貸与すること ⑰労働基準監督官 ⑱中央労働委員会 ⑲労働委員会 ⑳都道府県労働委員会

 

 

※ 解答はこちら  

 

 

 

労組法の重要条文の解答

 

【問1】の解答(設問はこちら

 

A=④対等の立場

B=⑦ 団体行動

C=⑪自主的に

D=⑭労働協約を締結するための

E=⑳その手続を助成

 

 

(解説)

労基法の目的条文である第1条第1項からの出題です。

第1条は、次の通りです。次問の第2条とともに、労組法の基本となる重要な規定です。

 

 

第1条(目的)

1.この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために 自主的労働組合組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的とする。

 

2.刑法(明治40年法律第45号)第35条 (労働一般のパスワード)〔=法令又は正当な業務による行為は、罰しない〕の規定は、労働組合の団体交渉その他の行為であって前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない

 

 

第1条の第1項については、平成14年度の選択式(労働一般)において、「自主的」と「労働協約」の2か所が出題されています。

なお、第2項については、平成21年度の選択式(労働一般)において、「労働組合」と「団体交渉」が出題されています。

 

ここでは、第1条第1項について、簡単に解説しておきます(第2項は、のちに民事免責の第8条の個所(【問4】)で解説します)。

 

第1条第1項について: 

 

第1条第1項は、労働組合法(以下、「労組法」といいます)の目的を明らかにしています。

 

労組法は、憲法第28条(労働一般のパスワード)の労働基本権(労働3権)の保障を受けて、労働組合に関する法律関係について定めた法律です。

憲法第28条は、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と規定しています。

これは、労働者の団結権、団体交渉権及び団体行動権という労働基本権の保障を定めたものと解されています(憲法第28条については、本文のこちら以下で詳述しており、非常に重要ですが、この直前の時期の学習としてはカットして頂いて結構です)。

 

即ち、私的自治・契約自由の原則(こちら)のもと、本来は、個々の労働者と使用者は対等な立場に立って労働条件等を決定できる建前なのですが、実際上は労使間には力関係の格差があり、労働者が個別にその利益を確保していくことは困難です。

そこで、労働者が労働組合等の団体を結成し、団体を通じて使用者と対等な交渉をしてその経済的地位の向上を図るために、憲法第28条の労働基本権が保障されたものです。

 

労組法は、このような憲法第28条の労働基本権の保障を具体化したものであり、労働者の(経済的)地位の向上を図るため、労働者が自主的に労働組合を組織し、団結権、団体交渉権及び団体行動権を行使できるように保障することを主たる目的としており、このような観点から、前掲の第1条第1項を押さえることができます。 

 

 

本問の解答の肢について見ますと、A~Dまでは、丸暗記が必要です。

 

Eの「その手続を助成」とは、条文中の直前の個所を受けていますから、「労働協約を締結するための団体交渉の手続を助成する」という意味合いです。

具体的には、例えば、使用者の正当理由がない団体交渉の拒否を「不当労働行為」として禁止し(第7条第2号)、当該不当労働行為がなされた場合に労働委員会による行政的救済の制度を定めていること、また、団体交渉の結果締結されることが多い労働協約に特別の効力(規範的効力、一般的拘束力)を認めていることなどを指しています。

 

 

以上、【問1】の解説でした。

 

 

【問2】の解答(設問はこちら

 

A=④主体

B=⑧経済的地位の向上

C=⑪連合団体

D=⑮使用者の利益を代表する者

E=⑳主として政治運動又は社会運動

 

 

(解説)

 

本問は、労組法第2条の労働組合の要件を定めた定義規定からの出題です。

本条は、平成14年度の選択式(労働一般)において、次の3か所が出題されています。

 

・「自主的」、「経済的地位」、「監督的地位にある労働者」

 

 

労働組合法上の労働組合とは、

(1)労働者主体となって(「主体」の要件 → 設問のA)、

(2)自主的に(「自主性」の要件)、

(3)労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する(「目的」の要件 → 設問のB)、

(4)団体又はその連合団体(「団体性」の要件 → 設問のC)のことです。

 

なお、第2条ただし書において、上記の(2)の「自主性の要件」と(3)の「目的の要件」に関し、労働組合に該当しない場合の消極的要件が定められています。

即ち、第2条ただし書は、設問(こちら)における第1号から第4号までのいずれかに該当するものは労働組合に該当しない旨を定めています。

次の(ⅰ)~(ⅳ)です。

 

(ⅰ)役員、雇入・解雇・昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、その他使用者の利益を代表する者参加を許すもの使用者の利益代表者の参加を許すもの

 

(ⅱ)団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるもの → 設問のD

 

(ⅲ)共済事業その他福利事業のみ目的とするもの

 

(ⅳ)主として政治運動又は社会運動目的とするもの → 設問のE

 

 

(ⅰ)及び(ⅱ)は、前記(2)の「自主性の要件」を徹底したものです(自主性の要件を加重する特別の要件です)。

即ち、使用者の利益代表者が参加したり、使用者からの経費援助を受けるものは、自主性を失い御用組合化する危険があることに鑑み、労働組合の自主性・独立性の確保を徹底する見地から、本来は労働組合が自主的に定めるべき労働組合の内部的事項について特に規定したものです。

対して、(ⅲ)及び(ⅳ)は、前記(3)の第2条本文が定める「目的の要件」から当然に導き出せるものであり、確認的な意味合いです。

 

ちなみに、上記の第2条のすべての要件を満たす労働組合は、法適合組合といわれます(その他、本文では、規約不備組合、自主性不備組合等についても詳しく紹介していますが(こちら以下)、さしあたりは不要です。

 

 

以下、本問の解答の肢について見ます。

 

Bの⑧「経済的地位の向上」は、前問の第1条第1項においては、単に労働者の「地位を向上」させると規定されていることと異なります。

これは、第2条で規定されています労働者の「経済的地位の向上」より、第1条第1項で規定されています労働者の「地位を向上」の方が意味が広い(例えば、後者では、労働者の社会的・政治的地位の向上をも含んでいる)というわけではないと解されます。

前述のように、労組法は、憲法第28条の労働基本権の保障を具体化・実効化する法律であるところ、労働基本権の保障は、もともとは労働者の経済的地位の向上を図ることを主たる趣旨としたものですから、労組法の目的条文である第1条第1項においても、労働者の経済的地位の向上を図ることが主たる目的であると考えられます。

 

次に、Cの⑪「連合団体」とは、構成員が労働組合である労働組合のことです(本文のこちら)。

労組法上は、「連合団体である労働組合」と表現されています(第5条第2項第3号第5号第9号)。

対して、構成員が労働者個人である労働組合を「単位組合」といいます。

 

Dの⑮「使用者の利益を代表する者」(使用者の利益代表者)については、先に少し触れましたが、使用者の利益代表者の参加を許す団体等は、使用者からの影響を受け、労働組合の自主性・独立性を損なうおそれがあることから、労組法上の労働組合(法適合組合)として認められていません。

条文上、「雇入、解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者」などが例示されています。

 

Eの⑳「主として政治運動又は社会運動」については、政治的活動や社会的活動を主たる目的とする団体は労働組合とは認められないということです。

ということは、付随的・副次的に、政治運動又は社会運動を目的としていても、労組法上の労働組合に該当しうることになります。

すると、労働組合は、少なくとも、付随的・副次的に、政治的活動又は社会的活動等を行えることになりますが、具体的に、例えば、政治的な目的等から「団体交渉」や「争議行為」を行うこと(政治的活動等の手段として団体交渉や争議行為を行うこと)が憲法第28条や労組法によって認められるのか、あるいは、政治色のある組合活動はどのような場合に正当な組合活動と認められるのかといった難しい問題が発生します(もっとも、前者については、使用者の対応可能性という見地から、政治的な目的等による団体交渉や争議行為は許容されないというのが一般的な考え方だと思います(いわゆる政治ストは、使用者が対応できない問題を対象とするものですから、労働組合の正当な労働基本権の行使の範囲外と解されます)。

しかし、後者の政治色のある組合活動の正当性の判断については、限界が微妙です。統制権に関する重要な判例がいくつかあり、次のページで紹介します)。

以上の労働組合の政治的活動等の概要については、本文のこちらで掲載しています。

  

以上、【問2】の解説でした。

 

 

【問3】の解答(設問はこちら

 

A=④賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者 

 

 

(解説) 

 

本問は、労組法上の労働者の定義(第3条)についての問題です(本文はこちら以下)。

 

【条文】

第3条(労働者)

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう。

 

 

この第3条の通り、労組法上の労働者とは、賃金等の収入によって生活する者をいいます。  

 

他方、労基法第9条では、労基法上の労働者とは、事業に使用される者で、賃金を支払われる者をいう旨を定めており(選択肢の①です)、また、労契法第2条第1項では、労契法上の労働者とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう旨を定めています(選択肢の②です)。労基法のこちらも参考。

 

これら労基法と労契法における「労働者」は、「事業」に使用されるかどうかという点では異なりますが、「使用される」者であること、及び「賃金を支払われる者」であること、という「使用」性と「賃金」性を基本的要素としている点で共通しているため、両者は基本的には同様の概念と解されます。

他方、労組法の労働者は、上記の通り、賃金等の収入によって生活する者をいうものと定められていますから、前記の労基法や労契法の労働者の定義と異なり、「使用される」者である必要はないこと(従って、失業者含まれます)、また、労働の対償性が厳密には問われていず、賃金・給料等に準ずる収入によって生活する者であれば足りることが異なります。

 

労基法は、主として、労働者の適正な労働条件の確保を目的とするものであり、労契法は労働契約に関する基本的ルールを定めたものであるのに対して、労組法は、憲法28条の労働基本権の保障を受けて、労働者の経済的地位の向上を図ることを目的とするものであることに鑑みますと、労組法上の労働者は、労基法等の労働者と同義と考える必要はないことになります。

 

そして、労働組合法は、既に【問1】の解説等で触れましたように、労使間に力関係の格差があり、労働者が個別にその利益を確保していくことは実際上困難なことに鑑み、憲法第28条の労働基本権の保障を実効化する見地から、労働者が労働組合結成し、労働組合を通じて団体交渉をし、団体行動(争議行為等)を行うこと等を認めることにより、その経済的地位の向上を図ることを可能にさせるものです。

そこで、労組法上の労働者は、このような労働組合法による保護団体交渉など)を認める必要性適切性許容性)を有する者であれば足りると解されます。

 

要するに、一定の自営業者・個人事業主的な者(家内労働者、一定の一人親方等、プロスポーツ選手)などであって、労基法・労働契約法上の労働者には該当しないような者についても、組合を結成して団体交渉等をすることを認めることにより、その経済的地位の向上の実現を認めるのが妥当な場合があるということです。

 

ただし、労組法上の労働者を具体的にどのように判断するかは問題であり、判例は、事業組織への組み入れ、契約内容の一方的・定型的決定、報酬の労務対価性などを考慮して個別に労働者性を判断しています。

詳細は、本文のこちら以下で判例も含め説明していますが、この時期の試験対策としては、当該個所は読まずに、「事業組織への組み入れ」というキーワードを覚えておいて下さい。

 

以上、問3の解説でした。

 

 

【問4】の解答(設問はこちら

 

A=④同盟罷業

B=⑧正当なもの

 

 

(解説)

第8条のいわゆる民事免責の条文からの出題です。

 

第8条(損害賠償)

使用者は、同盟罷業その他の争議行為であって正当なものによって損害を受けたことの故をもって、労働組合又はその組合員に対し賠償を請求することができない

 

 

1 民事免責

 

本来は、争議行為により、例えば、組合員は労働契約上の労働義務に違反することになり、使用者は債務不履行又は不法行為に基づき当該組合員又は労働組合に対して損害賠償請求をすることができるはずです。

しかし、憲法第28条の労働基本権の保障を実効化させるためには、なにより、使用者に対する関係で労働基本権の正当な行使が保護される必要があります(憲法第28条の使用者等との私人間の関係を規律するという私法的性格に基づくものと解されます)。

そこで、憲法第28条は、労働基本権の保障の一環として民事免責を当然予定しているものと解され、かかる憲法の趣旨を受けて、労組法第8条においても民事免責が定められたものと考えられます。

従って、労組法第8条は、憲法第28条が定める労働基本権の保障に含まれる民事免責を確認的に規定したものと解されます(【最大判昭和41.10.26=全逓東京中郵事件】参考。【昭和32.1.14発労第1号】)。

(つまり、仮に労組法第8条が存在しなくても、同規定が定めるような民事免責は、憲法第28条から直接導き出せるということです。)

 

そうしますと、第8条は、民事免責の対象について「労働組合又はその組合員」の「争議行為」と規定していますが、この「労働組合又はその組合員」は憲法第28条の労働基本権の保障の対象となる者は広く含まれるものと解され(即ち、法適合組合以外の労働者の団体・集団(例:争議団)についても民事免責は保障されます)、また、「争議行為以外の労働基本権の行使(団体交渉、組合活動)も第8条により保障されるものと解されます。

 

ただし、労働基本権の行使といっても無制約なものではなく、使用者等の権利・利益を不当に侵害するものは許容されませんから(憲法第13条の公共の福祉)、労働基本権の行使の正当性が要求されます。これが、解答のBの⑧「正当なもの」という意味です。

 

 

2 刑事免責

 

なお、【問1】の解説で紹介しました第1条第2項は、刑事免責を定めています。

即ち、労働組合正当な行為については、刑事上の責任問われません(処罰されません)。

労働組合の正当な行為は、刑法第35条 のいわゆる正当行為に該当し、たとえ犯罪の構成要件に該当しても違法性が阻却されるということです。

 

労働基本権の制約の歴史的沿革に鑑みれば、憲法第28条は、公権力によって労働基本権の正当な行使が制約されてはならないことも当然に定めているものと解されます(労働基本権の自由権的性格。国家(公権力)からの自由)。

そこで、刑事免責についても、憲法第28条により保障されているものと解されますから、労組法第1条第2項の刑事免責は、このような憲法上の要請を確認的に規定したものと解されます(【最大判昭和41.10.26=全逓東京中郵事件】参考。【昭和32.1.14発労第1号】)。

 

このように、憲法第28条の労働基本権の保障は、民事免責及び刑事免責を含むものと解され、さらに労働基本権の行使を理由とする不利益取扱いからの保護等も定めているものと考えられます。

 

 

3 争議行為

 

なお、解答のAの④「同盟罷業」とは、ストライキのことです。

同盟罷業・ストライキは、労務の不提供という態様の「争議行為」です。

 

争議行為の意義については、争いがあります。

労働関係調整法では、争議行為を次のように定義しています(ちなみに、平成21年度の選択式(労働一般)では、この条文のうち、「争議行為」と「作業所閉鎖」が出題されています)。

 

【労働関係調整法】

労働関係調整法第7条

この法律において争議行為とは、同盟罷業怠業作業所閉鎖その他労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行ふ行為及びこれに対抗する行為であって、業務の正常な運営を阻害するものをいふ。

 

 

この労働関係調整法第7条の定義等を考慮して、「争議行為」を「業務を阻害する行為」という点を中心に定義するのが「業務阻害説」です(実際上は、業務阻害説は、業務阻害行為を争議行為と定義することによって、業務を阻害する行為であっても、(争議行為は、本来、使用者の業務を阻害するものであるという性格を重視して)できるだけ正当性を認める余地を広げようとする思考背景があるのではないかと思います)。

 

ただ、この労働関係調整法第7条の趣旨は、業務阻害行為を労働関係調整法の調整手続や制限・禁止の対象に置くことにより、労使関係の安定を図ることにあります。

そこで、同条の争議行為の中には、憲法第28条による団体行動権(争議行為)として保護されない正当性のない行為も含まれています(例えば、労働者集団が使用者の意思に反して企業の管理運営を行うという「生産管理」は、一般に違法とされますが、この労働関係調整法第7条の争議行為には含まれます)。

そうしますと、憲法第28条や労組法が想定する争議行為は、この労働関係調整法第7条が定める争議行為と一致するものではないと考えられます。

 

他方で、争議行為の定義について、労務不提供であるストライキ(同盟罷業)と同様の効果を認めるのが妥当な行為類型にその範囲を限定して解すべきという立場をとるものがあります。労務不提供中心説です。

歴史的沿革的に見て、労務不提供であるストライキが争議行為であることには疑いありませんが、ストライキは使用者の業務を阻害するものであるにもかかわらず基本的に正当化されるものです。

労務不提供中心説は、このように業務を阻害する行為のうち、当然に正当性が認められる類型を限定的に解す立場といえます。

 

以上の両説の間には、業務を阻害しても(あるいは、使用者の財産権等を侵害しても)、できるだけ争議行為として正当性を認める余地を残すべきであると考えるのかどうかという思想・世界観の違いが潜んでおり、その当否の判断は簡単ではありません。

 

判例は、どちらの説に立つのかは不明確ですが、諸々の事案について採用する結論からしますと、争議行為として正当性を認める要件・範囲を限定する例が多く、結果的には、労務不提供中心説に親和的な立場ではないかと思います。

 

ちなみに、ロックアウトに関する【丸島水門事件=最判昭和50.4.25】(労基法の休業手当の個所で紹介(こちら))は、争議行為を次のように定義しています。

 

「争議行為は、主として団体交渉における自己の主張の貫徹のために、現存する一般市民法による法的拘束を離れた立場において、就労の拒否等の手段によって相手方に圧力を加える行為」

 

以上、争議行為の定義についての詳細は、本文のこちら以下で説明していますが、さしあたり試験対策上は不要です。

 

なお、選択肢①の「ピケッティング」とは、一言では、ストライキを実効化するために就労を阻止する等の働きかけを行う争議行為です(詳細は、本文のこちら以下です)。

 

選択肢②の「怠業」(サボタージュ、スローダウン)とは、労務の不完全な提供(労務の一部の不提供)という態様の争議行為です(本文は、こちら以下です)。

 

選択肢③の「作業所閉鎖」とは、使用者の争議行為であるロックアウトの主要な態様です。

 

以上、【問4】の解説でした。

 

 

【問5】の解答(設問はこちら

 

A=④労働協約

B=⑧労働者の待遇に関する基準に違反する

 

 

(解説)

設問の前段は、労働協約の成立要件を定めた第14条です。

このAの「労働協約」というのは、易しかったと思います。

本条については、択一用の知識として、労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することを要件としすることを押さえます。

書面性署名又は記名押印欠く労使合意については、労働協約としての効力は生じません(【過去問 平成23年問5D(こちら)】で出題されています)。

 

第14条(労働協約の効力の発生)

労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによってその効力を生ずる。

  

 

設問の後段は、労働協約の規範的効力を定めた第16条からの出題です。第16条は、非常に重要です。

 

第16条(基準の効力)

労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となった部分は、基準の定めるところによる。労働契約に定がない部分についても、同様とする。

 

 

規範的効力とは、労働協約が組合員労働契約を規律する効力のことです。

規範的効力を生じる労働協約の部分が規範的部分です。

 

より詳しく見ますと、規範的効力は、「労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準」に違反する労働契約の部分無効とする「強行的効力」(第16条前段)と、当該無効となった労働契約の部分(第16条中段)及び労働契約に定めがない部分(第16条後段)を労働協約の基準により直接規律する「直律的効力」からなります。

 

対して、債務的効力は、労働協約の当事者である労働組合使用者(又は使用者団体。以下、「使用者等」ということがあります)との間に生じる労働協約の契約としての効力のことです。

債務的効力(協約当事者間の契約としての効力)は、労働協約の全体に生じますから、規範的部分についても生じます。

債務的効力のみ生じる労働協約の部分債務的部分といいます。

 

労働協約は、「労働組合」と使用者等を当事者として締結される契約(合意)です。

そして、契約の一般原則からは、契約を締結した「当事者」間でのみ効力が生じるはずのところ(これが債務的効力です)、規範的効力は、第三者である「組合員」の労働契約に対して当然に効力が生じるという特別な効力です。

 

以上の規範的効力については、まず、上記第16条の条文を押さえて下さい。細かい問題については、本文のこちら以下で詳述していますが、試験対策としては、次のページで債務的効力も含め判例を見ますので、そちらをチェックすれば足ります。

 

 

【問6】の解答(設問はこちら

 

A=③3年

B=⑧90日前

 

(解説)

本問は、労働協約の期間について定めた第15条に関する問題です。択一式の素材にはなりそうです。

もっぱら記憶して頂く必要がある問題ですので、こちら以下の整理を参考に覚えて下さい(ゴロもあります)。

 

 

【問7】の解答(設問はこちら

 

A=⑤常時使用される同種の労働者の4分の3以上

B=⑨労働協約

C=⑭他の同種の労働者

 

 

(解説) 

本問は、いわゆる事業場単位の一般的拘束力を定めた第17条からの出題です。

 

第17条(一般的拘束力)

一の工場事業場常時使用される同種の労働者の4分の3以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至つたときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されるものとする。

 

 

労働協約の規範的効力は、労働協約を締結した労働組合(締結組合)の組合員にのみ生じ、当該締結組合の組合員以外の労働者には及ばないのが原則ですが、この例外が本条です。

即ち、本条は、労働協約が事業場の大部分に適用された場合には、当該事業場の締結組合の組合員以外の労働者についても当該労働協約の規範的効力を拡張適用する制度です。

(本条については、【平成23年問5E(こちら)】で関連問題が出題されています。)

 

ただし、本条の趣旨を具体的にどのように捉えるかについては争いがあります。

この点、【朝日火災海上(高田)事件=最判平成8.2.26】は、次のように判示しています。赤字のキーワードを押さえて下さい。

 

・「右規定〔=第17条〕の趣旨は、主として一の事業場の4分の3以上の同種労働者に適用される労働協約上の労働条件によって当該事業場の労働条件を統一し、労働組合の団結権の維持強化当該事業場における公正妥当な労働条件の実現を図ることにあると解される」。

 

即ち、第17条の趣旨は、主として、①当該事業場の労働条件の統一、②労働組合の団結権の維持強化及び③当該事業場における公正妥当な労働条件の実現を図ることにあるとされます。

 

①の「当該事業場の労働条件の統一」とは、ある工場事業場の多くの労働者が同一の労働協約の適用を受けたときには、本条により、その規範的効力が当該締結組合の組合員以外の労働者にも及びますから、当該労働協約の定める基準により、当該工場事業場の同種の労働者の労働条件が統一されるということです。

 

②の「労働組合の団結権の維持強化」とは、非組合員による労働力の安売り(それによる労働条件の低下)を防止して多数組合の組織強化を図るということです。

 

③の「当該事業場における公正妥当な労働条件の実現」とは、4分の3以上の多数組合の獲得した労働条件を事業場の公正妥当な労働条件とみなして、当該事業場の労働条件を統一するという考え方といえます。

もっとも、少数労働者の労働条件が多数組合の労働協約のレベルまで引き上げられるため、少数労働者の保護に資するという側面も認められるかもしれません。

 

このように、第17条は、協約締結組合の利益のためだけの制度ではありませんので、当該組合が同条の拡張適用を排除する条項を設けたとしても無効になると解されています(強行規定)。

 

 

設問について見ますと、Aの⑤「常時使用される同種の労働者の4分の3以上」は、暗記して下さい。

「同種の労働者」とは、当該労働協約が適用対象とする労働者のことです。

具体的には、第17条の趣旨(特に、当該事業場における公正妥当な労働条件の実現)を踏まえて判断する必要があります。

例えば、工員(ブルーカラー)と職員(ホワイトカラー)で人事管理や労働条件が異なっている場合は、工員を対象とした労働協約の拡張適用においては、職員は「同種の労働者」に該当しません。

従って、当該職員は、第17条の要件である「同種の労働者の4分の3以上」には含まれませんし、拡張適用される「同種の労働者」(効果の問題。設問のCです)にも含まれません。

その他、細かい知識については、さしあたり不要といえます。

 

なお、第17条については、「未組織労働者(非組合員)に対する拡張適用の効力」という問題に関し、前掲の【朝日火災海上(高田)事件=最判平成8.2.26】が重要な判示をしています。次の次のページの【問17】(こちら)で見ます。

平成28年度の択一式では、労働協約について、不利益変更に関する判例が出題されていますので、同様に労働協約の効力に関する規定である第17条の判例にも注意しておくと良さそうです。

 

以上、【問7】の解説でした。

 

 

【問8】の解答(設問はこちら

 

A=④同種の労働者の大部分

B=⑧労働委員会

C=⑨厚生労働大臣又は都道府県知事

 

 

(解説)

本問は、第18条の地域単位の一般的拘束力(条文の見出しは、「地域的の一般的拘束力」)からの出題です(本文は、こちら)。

設問は、難しかったと思います。

企業別労働協約が主流である日本では、本制度はあまり利用されていませんので、さしあたり、今回の条文を押さえておけば足りそうです。

 

第18条(地域的の一般的拘束力)

1.一の地域において従業する同種の労働者大部分一の労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該労働協約当事者の双方又は一方申立てに基づき、労働委員会の決議により、厚生労働大臣又は都道府県知事は、当該地域において従業する他の同種の労働者及びその使用者も当該労働協約(第2項の規定により修正があったものを含む。)の適用を受けるべきことの決定をすることができる。

 

2.労働委員会は、前項の決議をする場合において、当該労働協約に不適当な部分があると認めたときは、これを正することができる。

 

3.第1項の決定は、公告によってする。

 

 

本条は、一定の地域において大部分の労働者に適用される労働協約を当該地域の非組合員及びその使用者に拡張適用することにより、労働者間及び使用者間の労働条件の切下げ競争を防止しようとする趣旨とされています。

 

ポイントは、以下の3点です。

 

(1)本件の地域単位の一般的拘束力(第18条)は、前問の事業場単位の一般的拘束力(第17条)と異なり、使用者にも及ぶものであること(労働条件の切下げ競争の防止を目的とする制度だからです)。

 

(2)第17条は、所定の要件(実質的要件)を満たせば、当然に効力を生じるものであるのに対して、本件の第18条は、実質的要件の他に手続的要件申立て労働委員会決議厚生労働大臣又は都道府県地祇決定)を満たして効力が生じるものであること。

一定の地域の使用者・労働者に広く拘束力が生じるものであるため、慎重な手続を要することにしたものです。

 

(3)なお、第17条の要件は、「一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の4分の3以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至ったとき」として、「4分の3以上」という明確な比率の基準が規定されていますが、本件の第18条では、「一の地域において従業する同種の労働者の大部分が一の労働協約の適用を受けるに至ったとき」として、「大部分」という基準のみが規定されています。

 

ちなみに、設問のBの⑧「労働委員会」及びCの⑨「厚生労働大臣又は都道府県知事」については、具体的には次の通りです(以下は覚える必要はないでしょう)。

第18条の「労働委員会」の決議及び「厚生労働大臣又は都道府県知事」の決定は、当該拡張適用の地域が一の都道府県の区域内のみにあるときは、当該都道府県労働委員会及び当該都道府県知事が行い、当該地域が二以上の都道府県にわたるとき、又は中央労働委員会において当該事案が全国的に重要な問題に係るものであると認めたときは、中央労働委員会及び厚生労働大臣が行うものとされています(労組法施行令第15条参考)。

 

 

【問9】の解答(設問はこちら

 

A=④労働組合の正当な行為をしたこと

B=⑥過半数

C=⑫を支配し、若しくはこれに介入すること

D=⑮最小限の広さの事務所の供与

E=⑲労働委員会

 

 

(解説)

条文編の最後になります本問は、不当労働行為の要件を定めた第7条からの出題です(本文は、こちら以下です)。

 

1 不当労働行為の類型

 

不当労働行為には、大別して、次の図の通り、「不利益取扱い」(第7条第1号第4号)、「団体交渉拒否」(第2号)及び「支配介入」(第3号)の3つの類型があります(なお、ある行為が複数の類型に該当することもあります)。 

 

 

第7条の第1号本文前段(本設問のこちら)が規定しています「労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたこと(A)の故をもって、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること」が、

上記図の〔1〕「不利益取扱い」のうち、①の「組合員であること等を理由とする不利益取扱い」に該当します。

 

同第1号本文後段(こちら)の「労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること」が、上記図の〔1〕の②の「黄犬契約」です。

 

こちらの第2号の「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと」が、上記図の〔2〕の「団体交渉拒否」です。

 

こちらの第3号の「労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること(C)、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること」が、上記図の〔3〕の「支配介入」です。

 

こちらの第4号は、上記図の〔1〕「不利益取扱い」の③の「報復的不利益取扱い」です。

 

 

不当労働行為に関する基本的な知識として、上記の3つの類型があることを念頭に入れながら、設問の第7条が読み取れるようにして下さい。

 

 

2 不当労働行為の制度の趣旨

 

不当労働行為の制度は、使用者により憲法第28条の労働基本権を侵害する行為がなされた場合に、その行政的救済を図るものです。

 

この点、不当労働行為がなされた場合は、労働者又は労働組合は、裁判所による司法的救済を求めることもできます(例えば、損害賠償請求など)。

ただ、司法的救済の場合は、時間や費用がかかること、また、司法的救済は、法に基づき権利義務関係を確定することを主な目的としますが、継続的な労使関係を取り扱う不当労働行為事件については、将来に向けて円滑な労使関係を迅速に回復・確保することも重要であり、司法的救済では不十分なことがあります。

そこで、労働委員会という労使関係に関する専門的知識経験を有する独立行政機関により、不当労働行為に関する紛争を迅速かつ適切に解決しようとするのが不当労働行為制度です。

 

即ち、不当労働行為の制度は、労働者の労働基本権(憲法第28条により保障される団結権、団体交渉権及び団体行動権)を侵害する使用者の一定の行為を不当労働行為として禁止し、この禁止の違反について、労働委員会による救済・是正を図り、正常な労使関係を迅速に回復・確保することを目的とするものと解されます。

 

不当労働行為制度の趣旨を憲法第28条との関係でどのようにとらえるか等については争いがあり、詳細は本文(こちら以下)で説明しましたが、試験対策上はスルーして下さい。

 

 

不当労働行為に関する近時の出題としては、【平成24年問2E(こちら)】において、使用者の言論が支配介入に該当するかが問題となったプリマハム事件判決が題材とされたことがあります。

出題されそうな判例がいくつかあり、次々ページで見ます。

 

 

3 設問について

 

設問について、若干、解説しますと、Bの⑥「過半数」は、黄犬契約禁止の例外として規定されているものです。

即ち、第7条第1号ただし書では、「労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であること雇用条件とする労働協約を締結すること」は許容しています。

これは、具体的には、次の2つの意味があります。

 

まず、使用者が事業場の過半数労働組合とユニオン・ショップ協定(又はクローズド・ショップ協定。以下、ここではまとめて「ユニオン・ショップ協定」といいます)を締結することは不当労働行為に該当しないということです(ユニオン・ショップ協定については、こちら以下。次のページの【問2】(こちら)でやや詳しく見ます)。

 

即ち、ユニオン・ショップ協定は、労働者に対して特定の労働組合への加入を強制するものであるため、組合に対する介入であるとともに、加入しない場合等に解雇することは不利益取扱いにあたるといえるのですが、一定の要件を備える労働組合との間で締結するユニオン・ショップ協定については、不当労働行為には該当しない(また、かかる協定に基づく解雇も、不当労働行為に該当しない)ことを定めたものと解されます。

そこで、過半数労働組合とユニオン・ショップ協定を締結している場合は、例えば、雇用する労働者に対して、当該労働組合の組合員であることを雇用条件とすることが許容されます。

(もっとも、本規定の沿革等から、本規定は、少数組合とユニオン・ショップ協定を締結すると不当労働行為に該当する、という意味までは持たないと解されています。)

 

次に、ユニオン・ショップ協定は、過半数労働組合と締結することが必要と解されています(こちらを参考)。

 

 

Dの⑮「最小限の広さの事務所の供与」については、使用者の便宜供与のうち一定のもの(労働組合の自主性を侵害するおそれのないようなもの)は、支配介入(経費援助)の不当労働行為に該当しないという趣旨です。

チェック・オフも、単に使用者が組合費を天引きして組合に交付するに過ぎないものですから、組合の自主性が侵害される危険性は乏しいため、支配介入の不当労働行為には該当しません。

 

以上で、条文編を終わります。次のページでは、出題が予想される労組法の主要判例について択一式の形式で網羅します。