平成29年度版

 

労働組合法 2(判例編その1)

このページと次のページでは、労組法の判例を択一式の形式で紹介します。全部で24問です。

前ページの条文より、こちらの判例の方が出題可能性が高そうです。

判例は、一度お読み頂くと、結構、記憶に残るものですので、ざっと目を通して頂くだけでも有用です。

 

なお、出題された判例の内容にピンとこない場合は、リンク先の本文の当該判例の上部にその判例を理解するのに必要な前提知識を体系的に説明していますので、参考にして頂くことができます。

 

出題は、基本的に、テキストの掲載順にしてありますが、要注意判例を先に6つ指摘しておきます。

 

 

※ 要注意判例:

 

①【問3】(こちら)= 労組法上の使用者の意義に関する【朝日放送事件=最判平成7.2.28】

 

②【問4】(こちら)= 使用者への帰責の問題(使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にある者の行為)に関する【JR東海事件=最判平成18.12.8】

 

③【問15】(こちら)= 労働協約の締結権限に関する【山梨県民信用組合事件=最判平成28.2.19】

 

④【問17】(こちら)= 第17条(労働協約の一般的拘束力)の未組織労働者に対する拡張適用の可否に関する【朝日火災海上(高田)事件=最判平成8.2.26】

 

⑤【問20】(こちら)= 組合員であることを理由とする採用の拒否が不当労働行為に該当するかが問題となった【JR北海道・JR貨物採用拒否事件=最判平成15.12.22】

 

⑥【問24】(こちら)= バックペイと中間収入の控除に関する【第二鳩タクシー事件=最大判昭和52.2.23】

 

 

 

労働組合法の重要判例 択一式

 

【問1】

 

労働組合は、組合員に対する統制権の保持を法律上認められ、組合員はこれに服し、組合の決定した活動に加わり、組合費を納付するなどの義務を免れない立場に置かれるものであるが、それは、組合からの脱退の自由を前提として初めて容認されることである。

従って、脱退について届出を要するものとする組合規約は、公序良俗に反し、無効であるとするのが、最高裁判所の判例である。

 

 

※ 解答はこちら 

 

 

【問2】

 

ユニオン・ショップ協定は、労働者が労働組合の組合員たる資格を取得せず又はこれを失った場合に、使用者をして当該労働者との雇用関係を終了させることにより間接的に労働組合の組織の拡大強化を図ろうとするものであるが、他方、労働者には、自らの団結権を行使するため労働組合を選択する自由があり、また、ユニオン・ショップ協定を締結している労働組合の団結権と同様、同協定を締結していない他の労働組合の団結権も等しく尊重されるべきであるから、ユニオン・ショップ協定によって、労働者に対し、解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、それが労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権を侵害する場合には許されないものというべきであるとするのが、最高裁判所の判例である。

 

 

※ 解答はこちら  

 

 

【問3】

 

一般に使用者とは労働契約上の雇用主をいうものであるが、不当労働行為を定めた第7条が団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為として排除、是正して正常な労使関係を回復することを目的としていることにかんがみると、雇用主以外の事業主であっても、雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、右事業主は同条の使用者に当たるものと解するのが相当であるとするのが、最高裁判所の判例である。 

 

※ 解答はこちら 

 

 

【問4】

 

労働組合法2条1号所定の使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にある者が使用者の意を体して労働組合に対する支配介入を行った場合には、使用者との間で具体的な意思の連絡がなくとも、当該支配介入をもって使用者の不当労働行為と評価することができるとするのが、最高裁判所の判例である。

 

※ 解答はこちら 

 

 

【問5】

 

およそ、組織的団体においては、一般に、その構成員に対し、その目的に即して合理的な範囲内での統制権を有するのが通例であるが、憲法上、団結権を保障されている労働組合においては、その組合員に対する組合の統制権は、一般の組織的団体のそれと異なり、労働組合の団結権を確保するために必要であり、かつ、合理的な範囲内においては、労働者の団結権保障の一環として、憲法28条の精神に由来するものということができる。この意味において、憲法28条による労働者の団結権保障の効果として、労働組合は、その目的を達成するために必要であり、かつ、合理的な範囲内において、その組合員に対する統制権を有するものと解すべきであるとするのが、最高裁判所の判例である。

 

※ 解答はこちら 

 

 

【問6】

 

労働組合は、その目的を達成するために必要な政治活動等を行なうことを妨げられるわけではなく、地方議会議員の選挙にあたり統一候補を決定し、組合を挙げて選挙運動を推進することとし、統一候補以外の組合員で立候補しようとする組合員に対し、立候補を思いとどまるように勧告または説得することも、組合の政治活動の一環として許される。

しかし、当該組合員に対し、勧告または説得の域を超え、立候補を取りやめることを要求し、これに従わないことを理由に当該組合員を統制違反者として処分するがごときは、組合の統制権の限界を超えるものとして違法となるとするのが、最高裁判所の判例である。

 

※ 解答はこちら 

 

 

【問7】

 

労働組合の組合員は、組合の構成員として留まる限り、組合が正規の手続に従って決定した活動に参加し、また、組合の活動を妨害するような行為を避止する義務を負うとともに、右活動の経済的基礎をなす組合費を納付する義務とを負うものであるが、これらの義務(以下「協力義務」という。)は、もとより無制限のものではない。

問題とされている具体的な組合活動の内容・性質、これについて組合員に求められる協力の内容・程度・態様等を比較考量し、多数決原理に基づく組合活動の実効性と組合員個人の基本的利益の調和という観点から、組合の統制力とその反面としての組合員の協力義務の範囲に合理的な限定を加えることが必要であるとするのが、最高裁判所の判例である。

 

※ 解答はこちら 

 

 

【問8】

 

他の労働組合の闘争を支援するために臨時組合費を徴収することの可否については、労働組合ないし労働者間における連帯と相互協力の関係からすれば、労働組合の目的とする組合員の経済的地位の向上は、当該組合かぎりの活動のみによってではなく、広く他組合との連帯行動によってこれを実現することが予定されているのであるから、それらの支援活動は当然に右の目的と関連性をもつものと考えるべきであり、また、労働組合においてそれをすることがなんら組合員の一般的利益に反するものでもないのであるとして、当該臨時組合費の納付義務を肯定するのが、最高裁判所の判例である。

 

※ 解答はこちら 

 

 

【問9】

 

労働組合が労働者の生活利益の擁護と向上のために、経済的活動のほかに政治的活動をも行うことは認められ、そのための費用を組合基金のうちから支出すること自体は、法的には許されたものというべきであるが、これに対する組合員の協力義務をどこまで認めうるかについては、更に別個に考慮することを要する。

すなわち、一般的にいえば、政治的活動は一定の政治的思想、見解、判断等に結びついて行われるものであり、労働組合の政治的活動の基礎にある政治的思想、見解、判断等は、必ずしも個々の組合員のそれと一致するものではないから、もともと団体構成員の多数決に従って政治的行動をすることを予定して結成された政治団体とは異なる労働組合としては、その多数決による政治的活動に対してこれと異なる政治的思想、見解、判断等をもつ個々の組合員の協力を義務づけることは、原則として許されないと考えるべきである。かかる義務を一般的に認めることは、組合員の個人としての政治的自由、特に自己の意に反して一定の政治的態度や行動をとることを強制されない自由を侵害することになるからである。

しかしながら、労働組合の政治的活動とそれ以外の活動とは実際上しかく截然と区別できるものではなく、一定の行動が政治的活動であると同時に経済的活動としての性質をもつことは稀ではないし、また、それが政治的思想、見解、判断等と関係する度合いも必ずしも一様ではない。したがって、労働組合の活動がいささかでも政治的性質を帯びるものであれば、常にこれに対する組合員の協力を強制することができないと解することは、妥当な解釈とはいいがたい。例えば、労働者の権利利益に直接関係する立法や行政措置の促進又は反対のためにする活動のごときは、政治的活動としての一面をもち、そのかぎりにおいて組合員の政治的思想、見解、判断等と全く無関係ではありえないけれども、それとの関連性は稀薄であり、むしろ組合員個人の政治的立場の相違を超えて労働組合本来の目的を達成するための広い意味における経済的活動ないしはこれに付随する活動であるともみられるものであって、このような活動について組合員の協力を要求しても、その政治的自由に対する制約の程度は極めて軽微なものということができる。それゆえ、このような活動については、労働組合の自主的な政策決定を優先させ、組合員の費用負担を含む協力義務を肯定すべきであるとするのが、最高裁判所の判例である。

 

※ 解答はこちら  

 

 

 

労組法の重要判例の解答

 

【問1】の解答(設問はこちら

 

設問は、誤りです。

 

本問は、【東芝労働組合小向支部・東芝事件=最判平成19.2.2】(本文のこちら)を題材とするものです。

 

本問の前段部分は、【平成24年問2C(こちら)】 で出題されていますから、本問をどこかで見た記憶があると思われた方は多いかと思います。

 

組合員が労働組合から脱退する自由を有するという結論には争いがありませんが、脱退の自由をどのように根拠づけるかについては争いがあります(本文のこちら以下で説明していますが、さしあたりスルーして下さい)。

上記の判例(以下、「東芝事件」判決といいます)は、脱退の自由の直接の保障根拠については触れていませんが、脱退の自由の重要性を労働組合の統制権との関係で根拠づけているものと解されます。

次のように判示しています。

 

「一般に、労働組合の組合員は、脱退の自由、すなわち、その意思により組合員としての地位を離れる自由を有するものと解される・・・。そうすると、前記事実関係によれば、本件付随合意は、上記の脱退の自由を制限し、上告人が被上告人Y1から脱退する権利をおよそ行使しないことを、被上告人Y2に対して約したものであることとなる。〔中略〕

 

労働組合は、組合員に対する統制権の保持を法律上認められ、組合員はこれに服し、組合の決定した活動に加わり、組合費を納付するなどの義務を免れない立場に置かれるものであるが、それは、組合からの脱退の自由前提として初めて容認されることである。そうすると、本件付随合意のうち、被上告人Y1から脱退する権利をおよそ行使しないことを上告人に義務付けて、脱退の効力そのものを生じさせないとする部分は、脱退の自由という重要な権利を奪い、組合の統制への永続的な服従を強いるものであるから、公序良俗に反し無効であるというべきである。」

 

 

統制権とは、労働組合が、その組織を維持しその活動を実効化するために、構成員である組合員に対して行使する権限であり、制裁を含みます。

統制権の保障根拠については争いがありますが、判例(三井美唄(びばい)炭鉱労組事件=最大判昭和43.12.4】)は、憲法第28条による労働者の団結権保障の効果として労働組合は統制権を有する旨を判示していますので、憲法第28条の団結権の保障を根拠と解する立場といえます(統制権の判例については、のちに【問5】以下で出題します)。

 

本問の「東芝事件」判決は、この憲法第28条の団結権保障の一環である統制権が認められる前提として、組合員の脱退の自由が保障されることが必要であるという考え方ですので、脱退の自由の重要性を憲法上の権利(団結権及びその一環である統制権)との関連で根拠づけていることになります。

そこで、このような重要な権利である脱退の自由を不当に制約することは認められないということになります(具体的には、脱退の自由の制約の目的、態様、制約の程度等を考慮して個別に判断することになるのでしょう)。

 

この点、「東芝事件」判決の事案のように、「脱退する権利をおよそ行使しないこと」を約束させるようなことは、脱退の自由に対する制約程度が強すぎ、公序良俗に反し、無効となることになります(民法第90条)。

 

対して、設問のように、組合規約において「脱退について届出を要するもの」と定めるような場合は、制約の目的として、労働組合が組合員の資格の得喪等の状況について明確化しようとすることは正当といえ、制約の程度・態様として、脱退の自由に対する抑制が弱い単なる届出程度の手続に留まるものなら、右目的に照らして合理性が認められると思います。

そこで、脱退について届出を要求することは、直ちには公序良俗に反するものではないと解されます。

 

いずれにしましても、設問については、「脱退について届出を要するものとする組合規約は、公序良俗に反し、無効である」と判示している最高裁判所の判例はありませんので、誤りとなります。

 

 

【問2】の解答(設問はこちら

 

設問は、正しいです。

 

本問は、【三井倉庫港運事件=最判平成元.12.14】からの出題です。

本設問の直後に続く判示の部分については、【平成24年問2A】(こちら)で出題されています。

 

 

1 ユニオン・ショップ

 

ユニオン・ショップ(協定)の意義については、設問の判例が判示していますが、ユニオン・ショップは、(ⅰ)雇用する者は非組合員でもよいですが、雇用後は組合に加入することが必要であり、かつ、(ⅱ)組合員でない者は解雇するというものです。

 

この(ⅰ)と(ⅱ)の2つの要素を有するのが原則です=完全ユニオンといいます(実際は、(ⅱ)の要素を緩和した不完全ユニオン、尻抜けユニオンの例が多いです)。

 

対して、クローズド・ショップは、(ⅰ)組合員でない者は雇用せず、かつ、(ⅱ)組合員でなくなった者は解雇するというものです(従って、クローズド・ショップの方が、より強い組織強制となります)。

 

この2つのショップ制は、上記の(ⅱ)の組合員でない者(組合員でなくなった者)について使用者が解雇義務を負う点では共通しますが、(ⅰ)の労働契約を締結する相手が組合員であることが必要かどうかが異なる点です。 

 

ユニオン・ショップを定めた労働協約がユニオン・ショップ協定です。

 

 

2 ユニオン・ショップ協定の有効性

 

ユニオン・ショップ協定は、労働組合の組織の拡大・強化に資するものですが、他方で、解雇の威嚇のもとで労働者に特定の組合への加入を強制するものですから、労働者が組合に加入しない自由や加入する労働組合を選択する自由(組合選択の自由。積極的団結権)などを制約します。

そこで、ユニオン・ショップ協定が有効といえるのか問題になります(学説では、近時、無効説が有力です)。

 

この点、判例は、基本的には、ユニオン・ショップ協定を有効としつつ、労働者の労働組合の選択の自由や他の労働組合の団結権も保障される必要があることを考慮して、労働組合の選択の自由や他の労働組合の団結権を侵害しない限度でユニオン・ショップ協定の有効性を認めています。

これが、設問の判示の部分にあたります。

 

具体的には、ユニオン・ショップ協定の解雇義務を定めた部分は、他の労働組合に加入している組合員(組合を脱退等して加入した者も含みます)については無効とされます(民法第90条。憲法第28条参考)。

どの組合にも加入していない労働者(未組織労働者)については、ユニオン・ショップ協定に基づく解雇義務が適用されることになります。

 

 

判決文を掲載しておきます。

 

「ユニオン・ショップ協定は、労働者が労働組合の組合員たる資格を取得せず又はこれを失った場合に、使用者をして当該労働者との雇用関係を終了させることにより間接的に労働組合の組織の拡大強化を図ろうとするものであるが、他方、労働者には、自らの団結権を行使するため労働組合選択する自由があり、また、ユニオン・ショップ協定を締結している労働組合(以下「締結組合」という。)の団結権と同様、同協定を締結していない他の労働組合団結権も等しく尊重されるべきであるから、ユニオン・ショップ協定によって、労働者に対し、解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、それが労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権侵害する場合には許されないものというべきである。

 

〔※ 次の前段部分が、【平成24年問2A】で出題された個所です。〕

 

したがって、ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが、他の労働組合に加入又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、右の観点からして、民法90条の規定により、これを無効と解すべきである(憲法28条参照)。そうすると、使用者が、ユニオン・ショップ協定に基づき、このような労働者に対してした解雇は、同協定に基づく解雇義務が生じていないのにされたものであるから、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当なものとして是認することはできず、他に解雇の合理性を裏付ける特段の事由がない限り解雇権の濫用として無効であるといわざるを得ない」。

 

 

3 除名が無効な場合のユニオン・ショップ協定の効力

 

なお、労働組合による除名(懲戒処分)が無効である場合に、ユニオン・ショップ協定に基づく解雇が有効性なのかも問題になります。

例えば、労働組合が統制違反を理由としてある組合員を除名し、当該者が他の労働組合にも入ろうとしないことから、使用者がユニオン・ショップ協定に基づき当該者を解雇したところ(上記の判例の立場では、この場合は当該者が非組合員であるため、ユニオン・ショップ協定に基づく解雇も有効ということになります)、のちに裁判で当該除名処分の無効が確定したような場合に、当該解雇も無効となるのかです。

 

使用者の関知しない労働組合による除名の効力によって、自己の解雇の効力が影響されるとしては、使用者に不測の不利益が生じるおそれはありますが(例えば、後任者を雇入れてしまったケースなど)、労働者にとっては、無効な除名処分がなされたうえ、解雇までされてしまうのは過酷といえます。

 

この点、【日本食塩製造事件=最判昭和50.4.25】は、除名が無効な場合は、使用者は、ユニオン・ショップ協定に基づく解雇義務は負わないことから、かかる場合の解雇は、特段の事由がない限り、解雇権の濫用として無効になるとします。

次のように判示しています。ざっと一読して下さい。

 

「ユニオン・ショップ協定は、労働者が労働組合の組合員たる資格を取得せず又はこれを失った場合に、使用者をして当該労働者との雇用関係を終了させることにより間接的に労働組合の組織の拡大強化をはかろうとする制度であり、このような制度としての正当な機能を果たすものと認められるかぎりにおいてのみその効力を承認することができるものであるから、ユニオン・ショップ協定に基づき使用者が労働組合に対し解雇義務を負うのは、当該労働者が正当な理由がないのに労働組合に加入しないために組合員たる資格を取得せず又は労働組合から有効に脱退し若しくは除名されて組合員たる資格を喪失した場合に限定され、除名無効な場合には、使用者は解雇義務を負わないものと解すべきである。

そして、労働組合から除名された労働者に対しユニオン・ショップ協定に基づく労働組合に対する義務の履行として使用者が行う解雇は、ユニオン・ショップ協定によって使用者に解雇義務が発生している場合にかぎり、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当なものとして是認することができるのであり、右除名が無効な場合には、前記のように使用者に解雇義務が生じないから、かかる場合には、客観的に合理的な理由を欠き社会的に相当なものとして是認することはできず、他に解雇の合理性を裏づける特段の事由がないかぎり解雇権の濫用として無効であるといわなければならない。」

 

(ちなみに、この判決は、解雇権濫用法理(労基法のこちら)を始めて採用した最高裁判例でした。)

 

ユニオン・ショップ協定については、さしあたり以上です。 

 

 

【問3】の解答(設問はこちら

 

設問は、正しいです。

 

本問は、労組法上の使用者の意義に関する重要判例である【朝日放送事件=最判平成7.2.28】からの出題です(本文は、こちら以下)。 

 

この朝日放送事件の事案は、放送会社が請負契約を締結して、番組制作業務を行う会社からその従業員を受け入れていたところ、その従業員が加入する労働組合が放送会社に対して、賃上げ等の労働条件の改善等を議題として団体交渉を申し入れたが、放送会社は、使用者でないことを理由として拒否したため、団体交渉拒否の不当労働行為に該当するかが問題となったものです。

 

なお、この判決は、労働者派遣法の施行(昭和60年制定、昭和61年7月1日施行)前の事案であり、設問中に「派遣」とありますが、これは労働者派遣法に基づく労働者派遣のことではありません。

本件では、番組制作会社と放送会社との間には請負契約が締結されているケースです。

 

このような事案において、当該従業員の雇用主ではない放送会社が、「使用者」として団体交渉義務を負うのか(使用者は、使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むことは禁止されており、この違反は不当労働行為に該当します(第7条第2号))。

労組法では、使用者について定義規定がないため問題となります。

 

この点、仮に労組法上の「使用者」を雇用主(労働契約の一方当事者)と同義と解しますと、例えば、解雇された労働者が加入する労働組合が、解雇の撤回や退職条件等について団体交渉を申し入れた場合に、従前の使用者は、(現在は当該労働者と労働契約関係にはありませんから)「労組法上の使用者」には該当しないことになります。

しかし、このような場合の団体交渉の拒否が不当労働行為(第7条第2号)に該当しないとするのは、当該者の保護に欠けます。

そこで、労組法上の使用者は、労働契約関係の一方当事者である使用者のみに限定すべきではないことになります。

 

ただ、不当労働行為の救済命令の違反に対しては、一定の場合に制裁(行政罰、刑罰)の適用が予定されています(第32条第28条)。

従って、制裁の適用対象となり得る労組法上の「使用者」の範囲が不当に拡大することは防止する必要があります。

また、当該者が対応可能でない事項について団体交渉等を強いることは妥当でありませんから、使用者は、労働条件の変更等を決定等できる地位にある者であることが必要と解されます。

以上より、使用者は、基本的には、労働契約関係の一方当事者と解する必要はあり、その上で適正な範囲で拡大すべきと解されます。

 

本設問の判例は、このように雇用主でない者を使用者と認めることができる一つの基準について示したものといえます。 

具体的には、雇用主以外の事業主であっても、労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度現実的かつ具体的に支配・決定できる地位にある者について、労組法上の使用者に該当すると認めたものです(本件の事案の結論として、放送会社は労組法上の使用者に該当すると認められました)。

 

上記の赤字のキーワードを中心に設問のこちらの判決文を押さえておいて下さい。 

 

 

【問4】の解答(設問はこちら

 

設問は、正しいです。

 

本問は、いわゆる「使用者への帰責の問題」に関する【JR東海事件=最判平成18.12.8】からの出題です。

 

前問の労組法上の使用者の問題(雇用主以外の者についてどの範囲まで使用者と認められるのかの問題)とは別に、使用者以外の者の行為がどのような場合に使用者の行為として使用者に帰責することができるのかという問題もあります。

例えば、会社の管理監督者や一般の従業員が、労働組合の組合員に対して、当該労働組合からの脱退を勧奨したような場合に、これが使用者の不当労働行為(支配介入)に該当するかです(本文は、こちら以下)。

 

経営主体(独立の権利義務の主体。即ち、法人や個人事業主)だけが「使用者」になると解されているため、どのような範囲の「自然人」の行為が「使用者」の行為とみなされるのかが問題になるのです。 

 

この点は、結局は、使用者性が問題になる不当労働行為制度の趣旨等も踏まえながら、当該「使用者以外の者」の行為が「使用者」の行為と評価でき、その行為について使用者に帰責することが妥当といえるのかどうかを判断することになると思われます。

具体的には、使用者(会社上層部)の関与の有無、使用者の組合に対する日頃の態度、行為者の会社組織内での地位等を考慮して判断すべきとされます。

 

本問の事案は、組合員である上司が、別の組合の組合員である部下に対して、当該組合からの脱退勧奨等を行ったというものです。

当該上司は組合員になることが認められており、使用者の利益代表者ではありませんでした。

 

この点、代表取締役、取締役、理事等の役員としての行為は、一般に、使用者の行為と評価されます(これらの者は、実際の経営者であり、その行為は経営主体(例:法人である企業)そのものによる行為であると評価できるからです) 。

「役員」を除く「使用者の利益代表者」の行為についても、一般的には、使用者の行為と評価されるものと解されます(使用者の利益代表者については、前ページの【問2】の解説のこちら以下を参考)。

問題は、本問の事案のように、使用者の利益代表者ではないが、それに近接する職制上の地位にある者が行った行為の場合です。

 

本判決は、このように「使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にある者が使用者の意を体して労働組合に対する支配介入を行った場合には、使用者との間で具体的な意思の連絡がなくとも、当該支配介入をもって使用者の不当労働行為と評価することができる」としました。

つまり、使用者との間で具体的な意思の連絡使用者の直接の関与)がなくても、当該者が「使用者の意を体して」労働組合に対する支配介入を行った場合には、使用者の不当労働行為と評価することができるとしたものです。

 

そして、本件の事案については、会社の「意向に沿って上司としての立場からされた発言と見ざるを得ないものが含まれている」ことから、本件上司の「組合員としての発言」であるとか〔この場合は、当該者の組合員としての組合活動に対する保護の妥当性を考慮する必要があります〕、「相手方との個人的な関係からの発言」であることが「明らかであるなどの特段の事情のない限り」、使用者の意を体した行為と認められると判断されました。

 

この判例からは、例えば、「使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にある者が労働組合に対する支配介入を行った場合には、使用者との間で具体的な意思の連絡が認められる場合に限り、当該支配介入をもって使用者の不当労働行為と評価することができる」といった設問は誤りとなります(太字部分が誤りです)。

 

以上、【問4】の解説でした。前問と併せて、使用者に関する問題は終わりです。

 

 

【問5】の解答(設問はこちら

 

設問は、正しいです。

 

本問は、労働組合の統制権に関する 【三井美唄(びばい)炭鉱労組事件=最大判昭和43.12.4】からの出題です(本文は、こちら以下です)。

 

この判決の事案は、北海道美唄市の市議会選挙に際し、労働組合が特定の候補者の支持決議を行い統一候補を立てたところ、候補者の選出から漏れた組合員が独自に立候補し、当選したため、1年間の権利停止処分をしたことから、当該統制処分の適法性が争われたものです。

 

統制権については、【問1】の解説中(こちら以下)でも少し触れましたが、統制権の根拠や統制権の行使の適法性は問題です。

 

設問の判示では、「組合員に対する組合の統制権は、一般の組織的団体のそれと異なり、労働組合の団結権を確保するために必要であり、かつ、合理的な範囲内においては、労働者の団結権保障の一環として、憲法28条の精神に由来するものということができる。この意味において、憲法28条による労働者の団結権保障の効果として、労働組合は、その目的を達成するために必要であり、かつ、合理的な範囲内において、その組合員に対する統制権を有する」としています。

従って、統制権の根拠憲法第28条団結権であり、統制権の行使適法性の判断基準(統制権行使の限界)は、抽象的には、労働組合の団結権を確保するために必要であり、かつ、合理的な範囲内かどうかということになります。

 

統制権の保障根拠については争いもありますが、試験対策上は、まずは、上記の【三井美唄炭鉱労組事件】の判示を押さえておいて下さい。

 

以上のように、一般的には、統制権の行使(以下、「統制処分」ということがあります)は、労働組合の目的を達成するために必要であり、かつ、合理的な範囲内において認められると解されますが、具体的には、労働組合の統制権の保障と組合員の権利・利益の保障との適正な調和が図られる必要があります。

 

その際は、両者の権利・利益の性質、重要性、制約の目的、程度・態様、当該法律関係の性質(私的・個人的関係か、社会的権力関係か、制約される者に選択の自由がどの程度あるのか等々)などを考慮して判断することになるのでしょう。

 

本事案のように、組合員の立候補の自由との衝突が問題になる場合に、どのように調整するかについては、次の【問6】で見ます。

 

 

【問6】の解答(設問はこちら

 

設問は、正しいです。

 

本問は、前問の【三井美唄炭鉱労組事件=最大判昭和43.12.4】が、労働組合の統制権の保障と組合員の立候補の自由の保障とを具体的にどのように調整したのかの結論にあたる部分です。

 

前提として、本判決の事案では、労働組合が地方議会議員の選挙にあたり、その利益代表を議会に送り込むための選挙活動をし、統一候補を決定し、組合を挙げてその選挙運動を推進しており、労働組合がそもそもこのような政治的活動を行うことが認められるのかは問題です。

即ち、憲法第28条の団体行動権として争議行為以外の活動を行う権利(組合活動権)も保障されていると解されますが(文言上、争議行為権のみに限定されているわけでないです)、組合活動として政治的活動を行えるのかです(組合活動については、こちら以下で詳述しています)。

 

この点、第2条本文は、労働組合は労働者の経済的地位の向上を図ることを「主たる目的」とすることを要求するものであって、付随的・副次的に、政治的活動等を目的とすることは否定していないといえます(第2条ただし書第3号、第4号)。

また、労働組合が労働者の経済的地位の向上を図るためには、政治家や市民に働きかけるなど、様々な政治的、社会的な活動等を行う必要もあります。

そこで、労働組合がその目的(労働者の経済的地位の向上を図ることが主目的です)を実現するために必要な組合活動(経済的活動の他、政治的・社会的・文化的活動等含みます)を行うことは許容されると解されます。

従って、一般的には、労働組合が組合員の経済的地位の向上等を図るために、統一候補を決定し、選挙活動をすることも認められるものと考えられます。(以上、結論は本件の【三井美唄炭鉱労組事件】も同旨といえます。ただし、かかる政治的活動等が憲法第28条により保障されるのか、それとも、憲法第21条第1項(表現の自由の一環としての政治的活動の自由)として保障されるにとどまるのかについては不明です(こちらで少し触れました)。例えば、公権力が労働組合の政治的活動を不当に制限した場合に、憲法第28条違反の問題になることがあるのかといった違いが生じます。)

 

以上のように、労働組合が一般的には選挙活動等の政治的活動を行えるとしても、労働組合の決議に違反して独自に立候補した組合員に対して、制裁として統制処分を行うような場合には、当該組合員の権利・利益との調整を図る必要があります。 

 

立候補の自由については、憲法上の明文はないのですが、本判決では、立候補の自由は、憲法第15条第1項(「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」)が保障する選挙権の自由な行使と表裏の関係にあり、自由かつ公正な選挙を維持するうえできわめて重要であるものとして、同条同項により保障される旨を判示しています。

 

そして、「立候補の自由は、憲法15条1項の趣旨に照らし、基本的人権の一つとして、憲法の保障する重要な権利であるから、これに対する制約は、特に慎重でなければならず、組合の団結を維持するための統制権の行使に基づく制約であっても、その必要性と立候補の自由の重要性とを比較衡量して、その許否を決すべきであ」るとし、結論として、立候補を思いとどまらせる「勧告または説得の域」を超えるものかどうかを目安にしています。

即ち、組合の決議に反して立候補しようとする者に対し、組合が、立候補を思いとどまるよう、勧告又は説得をすることは許容されますが、これを超えて、立候補を取りやめることを要求し、これに従わないことを理由に当該組合員を統制処分することは、組合の統制権の限界を超えるものとして、違法とされます。

 

団結権(その一環としての統制権)も立候補の自由も、ともに憲法上の権利ですが、後者の立候補の自由は、民主政治の前提として不可欠な権利であるといえること、さらに、本件事案では、組合員の立候補の自由(政治的活動の自由)そのものが直接的に制約されていることを考慮する必要があります。

そして、労働組合は憲法及び労働組合法により特別の権能(刑事免責・民事免責、労働協約による労働条件の規律、不当労働行為制度の適用等)を認められており、単なる私的任意団体とは異なること、組合員が組合の方針に反対であっても、ユニオンショップ協定が締結されているような場合は、組合からの脱退は解雇に直結し、組合からの脱退が事実上制約されるおそれもあることを考えますと、立候補の自由に重きを置いて調整を図ることは妥当と考えられます。 

 

以上は、統制権と立候補の自由との調整の問題でした。次問では、統制権の続きとして、より難しい問題なのですが、組合費納付義務との関係を見ます。スーパーヘビー級の判例が登場します。 

 

 

【問7】の解答(設問はこちら

 

設問は、正しいです。

 

設問は、【国労広島地本事件=昭和50.11.28】(組合上告の「昭和48年(オ)499号」)からの出題です。

(なお、同事件については、同日付の労働者上告の「昭和48年(オ)498号」もありますが、以下は組合上告の判決からの紹介となります。)

 

本判決では、種々の論点が問題となっていますが、基本的には、組合員の組合費納付義務の有無が争われており、例えば、労働組合の政治的活動や社会的活動等の目的であっても組合費(臨時組合費)の納付を義務づけることができるのかが争点です。

本設問は、いわば総論にあたる部分の判示になります。

 

本判決では、設問の通り、組合員の組合費納付義務などの労働組合に対する義務を「協力義務」と表現していますが、「組合の統制力とその反面としての組合員の協力義務」といったように判示しています。

労働組合の統制権の行使について、組合員の方から見ますと、組合員に協力義務が発生するという関係にあるということでしょう。

  

そして、労働組合の統制権(組合員の協力義務)も無制約ではなく、「問題とされている具体的な組合活動の内容・性質、これについて組合員に求められる協力の内容・程度・態様等を比較考量し、多数決原理に基づく組合活動の実効性組合員個人の基本的利益調和という観点から、組合の統制力とその反面としての組合員の協力義務の範囲に合理的な限定を加えることが必要」であるとするのが、本判決による統制権と組合員個人の権利・利益との調整(協力義務の限界)に関する一般的な基準です。

 

具体的な判断については、次問以下で見ます。

 

 

【問8】の解答(設問はこちら

 

設問は、正しいです。

 

本問も、前問の【国労広島地本事件=昭和50.11.28】からの出題です。

他の労働組合の闘争(団体行動等)を支援するために、臨時に組合費を徴収することができるか(組合員が当該臨時組合費の納付義務を負うのか)が問題となりました。

これについての判示の要旨が設問です。

 

要するに、他の組合の闘争の支援は、支援する側の労働組合の目的(組合員の経済的地位の向上の実現)と関連性が強いものであり、他方で、当該支援により、特段、当該組合員の権利・利益が制約されるわけでもないことを考慮して、この問題については、統制権(その反面としての組合員の協力義務)を重視し、臨時組合費の納付義務を肯定したものです。

労働組合にとっての当該活動の必要性と組合員の権利制約の有無・程度が考慮されていることになります。

 

続いて、本判決から、政治的活動のための臨時組合費の徴収の可否という重要な問題を見ます。

 

 

【問9】の解答(設問はこちら

 

設問は、正しいです。

 

本問も、【問7】・【問8】と同様に、【国労広島地本事件=昭和50.11.28】からの出題です。

少々長すぎる設問です(内容を正確に読み取る必要上、あまりカットできる個所がありません)。そこで、択一式というよりは選択式の出題対象といえますが、内容の重要性に鑑み、紹介しておきます。

 

本問では、いわゆる日米安保反対闘争に参加して処分を受けた組合員を救援するための資金を賄うために、臨時組合費の徴収を決議して、臨時組合費の納付を義務づけることの適法性が問題となりました。

 

本設問における判示のポイントとして、以下の2点が挙げられます。

 

1 労働組合の政治的活動等の可否となしうる支出の範囲

 

まず、設問の冒頭では、要旨、労働組合が労働者の生活利益の擁護と向上のために、経済的活動のほかに政治的活動をも行うことは認められ、そのための費用を組合基金のうちから支出すること自体は、法的には許されたものというべきであるとされます。

正確には、次のように判示されています。

 

「既に述べたとおり、労働組合が労働者の生活利益の擁護と向上のために、経済的活動のほかに政治的活動をも行うことは、今日のように経済的活動と政治的活動との間に密接ないし表裏の関係のある時代においてはある程度まで必然的であり、これを組合の目的と関係のない行為としてその活動領域から排除することは、実際的でなく、また当を得たものでもない。それゆえ、労働組合がかかる政治的活動をし、あるいは、そのための費用を組合基金のうちから支出すること自体は、法的には許されたものというべきであるが、これに対する組合員の協力義務をどこまで認めうるかについては、更に別個に考慮することを要する。」

 

ここでは、まず、(ⅰ)労働組合が労働者の生活利益の擁護と向上のために、経済的活動のほかに政治的活動をも行うこと認められるとされます(同様の判示は、すでに【問6】で紹介しました【三井美唄炭鉱労組事件=最大判昭和43.12.4】(こちら)でも示されていました。そして、この三井美唄炭鉱労組事件判決では、労働組合が、政治的活動の最たるものといえる選挙活動をすることが許容されているのです)。

 

さらに、(ⅱ)上記(ⅰ)のような政治的活動を行うための「費用組合基金のうちから支出すること自体は、法的には許されたもの」とされます。

即ち、労働組合がその目的のため政治的活動を行う際に、そのための費用を組合基金(当該目的のために特に集めたものではなく、既存の組合費等の積み立てられたもの)から支出することは許容されるとしています。

(ただし、この組合基金からの支出を認める結論については、組合員の政治的自由を尊重する見地から、反対する学説が少なくありません。)

 

 

2 臨時組合費の納付義務等の協力義務の有無

 

次に、労働組合の政治的活動のための臨時組合費の納付を義務づける等協力義務の有無については、設問で引用していますように、「かかる義務を一般的に認めることは組合員の個人としての政治的自由、特に自己の意に反して一定の政治的態度や行動をとることを強制されない自由を侵害することになるから」、「多数決による政治的活動に対してこれと異なる政治的思想、見解、判断等をもつ個々の組合員の協力を義務づけることは、原則として許されない」とします。

ただし、「例えば労働者の権利利益に直接関係する立法行政措置促進又は反対のためにする活動のごときは、政治的活動としての一面をもち、そのかぎりにおいて組合員の政治的思想、見解、判断等と全く無関係ではありえないけれども、それとの関連性は稀薄であり、むしろ組合員個人の政治的立場の相違を超えて労働組合本来の目的を達成するための広い意味における経済的活動ないしはこれに付随する活動であるともみられるものであって、このような活動について組合員の協力を要求しても、その政治的自由に対する制約の程度は極めて軽微なものということができる。それゆえ、このような活動については、労働組合の自主的な政策決定を優先させ、組合員の費用負担を含む協力義務を肯定すべきである」とします。

 

「これに対し、いわゆる安保反対闘争のような活動は、究極的にはなんらかの意味において労働者の生活利益の維持向上と無縁ではないとしても、直接的には国の安全や外交等の国民的関心事に関する政策上の問題を対象とする活動であり、このような政治的要求に賛成するか反対するかは、本来、各人が国民の一人としての立場において自己の個人的かつ自主的な思想、見解、判断等に基づいて決定すべきことであるから、それについて組合の多数決をもって組合員を拘束し、その協力を強制することを認めるべきではない」とされます。

 

 

ここでは、政治的活動のための臨時組合費の徴収について、原則として、組合員に協力義務がないとしつつ、政治的活動ではあっても、政治的色彩が弱く、組合員の政治的自由に対する制約の程度が極めて軽微なものについては、組合員の費用負担を含む協力義務を肯定する立場がとられていることになります。

いわば「純粋な政治的活動」と「経済的な政治的活動」が区別され、前者には統制権は及ばず後者には及ぶという考え方です。

 

具体的には、「労働者の権利利益に直接関係する立法行政措置促進又は反対のためにする活動」のための臨時組合費の徴収は認められ、「安保反対闘争のような活動」のための臨時組合費の徴収は認められないとします。

前者の例として、例えば、労基法の改正を主張するデモ活動等のための臨時組合費の徴収は適法ということになります(また、組合員に対して、かかる組合活動に対する参加協力を要請することも許容されるということでしょう)。

 

ただし、上記の1の(ⅰ)及び(ⅱ)の部分の判示(こちら以下)からしますと、例えば、「安保反対闘争のような活動」自体を労働組合が(労働者の生活利益の擁護と向上のために)行うことは認められ、かつ、そのための費用を組合基金のうちから支出すること自体は、法的には許されていると考えているのでしょう。

なかなか微妙であり、ここが労働組合の政治的活動等の法律構成(さらには労組法)の難しいところです。

 

いずれにしましても、試験対策としては、上記の赤字部分を中心に全体の雰囲気を押さえておけば足りるでしょう。

 

 

なお、本判決は、選挙に際し特定の立候補者支援のためにその所属政党に寄付するための組合費徴収(政治意識昂揚資金の徴収)については、

「政党や選挙による議員の活動は、各種の政治的課題の解決のために労働者の生活利益とは関係のない広範な領域にも及ぶものであるから、選挙においてどの政党又はどの候補者を支持するかは、投票の自由と表裏をなすものとして、組合員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断ないしは感情等に基づいて自主的に決定すべき事柄である。したがって、労働組合が組織として支持政党又はいわゆる統一候補決定し、その選挙運動を推進すること自体は自由であるが〔前掲の三井美唄炭鉱労組事件判決を参照しています〕、組合員に対してこれへの協力を強制することは許されないというべきであり、その費用の負担についても同様に解すべき」としています。

 

これについては、参照判例の通り、三井美唄炭鉱労組事件判決(こちら)の内容と整合しているといえます。

 

なお、この判示部分は、【平成25年問2D(こちら)】で出題されています。

 

 

以上、判例編のその1を終わります。次ページでは、判例編のその2です。