労基法 3

このページでは、「就業規則」から掲載しています。

 

 

 

〔5〕就業規則

1⃣ 就業規則の効力

92【秋北バス事件=最大判昭和43.12.25】(就業規則の労働契約規律効)

〇バス会社が、就業規則を変更し、これまでの定年制度を改正して、主任以上の職にある者の定年を55歳に定めた(一般従業員については50歳)。

このためそれまで定年制の適用のなかった従業員が定年制の対象となり、解雇通知を受けたことから、当該就業規則の変更に同意していないとして当該規定の効力は及ばないと争った事案。

 

➡ 労基法のこちら以下 

 

 

・【過去問 労基法 平成17年問6C】/【労基法 平成17年問6B】

 

 

 

93【電電公社帯広局事件=最判昭和61.3.13】(就業規則の労働契約規律効)

〇頸肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん。首筋から肩・腕にかけての異常を主訴とする症候群)に長期罹患している労働者に対して、会社(旧電電公社)が就業規則に基づく指定病院での精密健診(労働安全衛生法上の法定健康診断ではない法定外のもの)の受診を命令したところ、労働者が拒否したこと等を理由として懲戒戒告処分をした事案。

本件法定外の受診命令が正当な業務命令といえるか等が問題となった。

(業務命令については、こちらの6でご紹介済みです。)

 

➡ 労基法のこちら以下 

 

 

・【過去問 平成17年問6E(こちら)】

 

 

 

94【日立製作所武蔵工場事件=最判平成3.11.28】(就業規則の労働契約規律効)

〇従業員が時間外労働の命令を拒否したところ、懲戒解雇されたためその効力を争ったケース。当該工場の就業規則には、業務上の都合によりやむを得ない場合には、当該従業員の加入する労働組合との協定により時間外労働をさせることがある旨が定められ、当該組合との間で36協定が締結され届け出られていた。

(36協定の問題については、こちらの67でご紹介済みです。) 

 

➡ 労基法のこちら以下 

 

 

 

95【フジ興産事件=最判平成15.10.10】(就業規則が拘束力を生じる要件としての周知性)

〇A興産の従業員のBは、得意先とのトラブルや上司に対する暴言等により職場の秩序を乱したことを理由として、就業規則の懲戒解雇に関する規定に該当するとして懲戒解雇された。

しかし、この懲戒解雇の当時は、懲戒解雇を規定した就業規則(旧就業規則)は事業場には備え付けられていず、 その後、旧就業規則を変更した新就業規則が定める懲戒解雇に関する規定を適用して懲戒解雇されたため、Bが当該懲戒解雇の無効等を主張した事案。

(懲戒処分の適法性については、こちらの21でご紹介済みです。)

 

➡ 労基法のこちら以下 

 

 

・【過去問 平成17年問6A(こちら)】

 

 

 

96【日本郵便事件=最判平成30.9.14】(就業規則の労働契約規律効、雇止め法理の適用の可否)

〇平成19年10月1日施行の郵政民営化の前に郵政事業を行っていた特殊法人である日本郵政公社(「旧公社」)の非常勤職員であったXらは、民営化により旧公社の業務を承継した日本郵便株式会社との間で同年10月1日に有期労働契約を締結して、従前と同様の業務に従事し、当該契約を7回から9回程度更新した。 

旧公社の非常勤職員については、関係法令等において、一定の年齢に達した場合に以後の任用を行わない旨の定めはなかったが、日本郵便株式会社は、平成19年10月1日、期間雇用社員就業規則を制定し、当該規則中には、「会社の都合による特別な場合のほかは、満65歳に達した日以後における最初の雇用契約期間の満了の日が到来したときは、それ以後、雇用契約を更新しない。」と定めた。

この就業規則の規定に基づき、雇用契約期間が満了したとして雇止めをされたXらが当該雇止めは無効であると主張して、労働契約上の地位の確認及び雇止め後の賃金の支払等を求めた事案。

 

 

➡ 労基法のこちら以下

 

 

 

97【山梨県民信用組合事件=最判平成28.2.19】(就業規則の不利益変更と労働者の同意)

〇山梨県民信用組合に吸収合併された旧峡南信用組合出身の元職員数名が、就業規則の変更により退職金が大幅に減額されたことを不服として、合併前の基準による支払いを求めた事案。

労働条件の変更について同意があったのか、労働協約の締結権限の有無等について争われた。

 

➡ 労基法のこちら以下(合意による不利益変更の解説は、こちら以下

 

 

・【過去問 労働一般 平成29年問1B(こちら)】

 

 

 

98【第四銀行事件=最判平成9.2.28】(就業規則の不利益変更)

〇A銀行では、従来、定年は55歳となっていたが、健康に支障のない男性行員は定例給与はそのままで58歳まで在職できることとなっていた。その後、従業員の約90%で組織される労働組合の同意を得て、就業規則が変更され、定年を60歳に延長する一方で、55歳以降の賃金を引き下げた結果、Bの賃金は54歳時の約3分の2となったため、Bが当該就業規則の変更の無効として、変更前の賃金との差額を請求した事案

 

➡ 労基法のこちら以下

 

 

・【過去問 労働一般 平成25年問1D(こちら)】

 

 

 

99【みちのく銀行事件=最判平成12.9.7】(就業規則の不利益変更)

〇A銀行は、従来から60歳定年制を採用し、年功序列型賃金体系をとっていたが、行員の高齢化、経営の低迷等の事情から、専任職制度を導入することとし、従業員の73%を組織する労働組合との合意を経て、就業規則を変更して、55歳以上の管理職労働者らの標準賃金額を33~46%引き下げたところ、当該変更により賃金等が減額された工員Bが変更の無効を主張した事案

 

➡ 労基法のこちら以下

 

 

 

 

〔6〕その他

1⃣ 付加金

100【最決平成27.5.19】(付加金制度の趣旨等)

〇原告が雇用契約上の地位の確認等を求める訴訟を提起後に、休業手当の請求及びこれに係る付加金の請求を追加する請求の変更をした際に、請求の変更に係る手数料の額の算出の基礎となる訴額について、付加金の請求の価額も算入するのかどうかが争われた事案(付加金制度の趣旨について言及されています)。

 

➡ 労基法のこちら以下 

 

 

 

101【細谷服装事件=最判昭和35.3.11】(事後的に違法状態が解消された場合)

〇使用者が第20条所定の予告期間をおかず、または予告手当の支払をしないで労働者に解雇の通知をした場合の当該解雇の効力が問題となった事案(これについては、こちらの31で掲載)。

また、付加金支払の訴え提起後に使用者が解雇予告手当を支払った場合にも、裁判所はなお付加金のみの支払を命じることができるのか問題となった。

 

➡ 労基法のこちら以下 

 

 

・【過去問 平成18年問2D(こちら以下) 】

 

 

 

102【甲野堂薬局事件=最判平成26.3.6】(事後的に違法状態が解消された場合)

〇BがAに対して、未払賃金の支払等を求めるとともに、割増賃金の未払金に係る付加金の支払も求めたところ、第2審(原審)において、Aは、原審の口頭弁論終結前に、Bに対し、本件割増賃金請求につき第1審判決が認容した金額の全額を支払い、Bはこれを受領した。これを受けて、Bは、本件割増賃金請求に係る訴えを取り下げ、Aはこれに同意した。

しかし、原審は、付加金の請求を認容したため、Aが上告を申立てた事案。

 

➡ 労基法のこちら以下 

 

 

 

以上で、労基法の「最高裁判例インデックス」を終わります。

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