平成30年度版

 

第1項 基本手当

序論 基本手当の全体像

基本手当とは、一般被保険者失業した場合に、その失業期間中求職活動中の生活の安定所得保障)を図ること目的とする求職者給付です。

いわゆる失業手当のことです。

 

まず、基本手当の全体像を整理しておきます。

後掲の図の通り、「発生 ➡ 変更 ➡ 消滅」という時系列に分け、それぞれ「要件支給要件)」、「手続」及び「効果」に着目して整理します(他の失業等給付も同様です。なお、「手続」と「効果」のどちらを先に見るかは、給付によって異なります(流れの良い方、あるいは整理・記憶しやすい方から先に見れば足ります))。

 

このうち、「発生」に関する問題がメインです。

「発生」における「要件」(支給要件)の問題は、基本手当の場合は、「受給資格の要件」の問題です。

次に、「手続」に関する問題として、「求職の申込み ➡ 受給資格の決定 ➡ 失業の認定」といった大きな流れをつかんで、その中に細かい知識を落としていきます。

効果」(広義)に関する問題としては、支給額基本手当の日額)、支給期間受給期間)、支給日数所定給付日数)といった事項があります。

 

変更」に関する問題としては、給付制限が重要です。

また、「保険給付の通則」として、未支給給付、不正利得の返還命令等、受給権の保護及び公課禁止の問題がありますが、これらは、便宜上、基本手当の「変更」に関する問題の中で見ることにします。

 

消滅」に関する問題としては、消滅時効(これは、主として雑則で触れます)があるほか、基本手当に特有の消滅事由もあります。

 

基本手当は、かなりボリュームがあり、覚えるべき知識・類似する知識が多数出てきます。

その際、細かい知識を下の図の体系に位置づけて学習して頂きますと、記憶しやすく、知識の混乱も生じにくいです。部分を学習している際に、以下の体系上の位置づけにも配慮して下さい。

 

 

 

第1 発生

基本手当の発生に関する問題から見ます。

 

 

§1 支給要件 = 受給資格の要件

基本手当は、被保険者〔=一般被保険者です〕が失業した場合において、算定対象期間原則として、離職日以前の2年間)に、被保険者期間通算して12箇月以上であったときに、所定の手続を経て支給されるのが原則です(第13条)。

 

基本手当の支給要件としての受給資格の要件(受給資格の決定を受けるための要件)は、具体的には、次の3つとされています(【行政手引50102】参考)。

 

〔1〕離職による資格喪失の確認を受けたこと。

 

〔2〕失業の状態(即ち、労働意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態(第4条第3項))にあること

 

〔3〕原則として、算定対象期間原則として、離職日以前2年間)に被保険者期間通算して12箇月以上あること(第13条第1項)。

 

特例として、特定受給資格者又は特定理由離職者の場合は、離職日以前の1年間に被保険者期間が通算して6箇月以上あれば足ります第13条第2項)。

 

 

なお、「受給資格」とは、基本手当の支給を受けることができる資格をいいます(第14条第2項第1号)。

「受給資格者」とは、受給資格を有する者のことです(第15条第1項)。(【行政手引50101】参考)

 

まず、上記の受給資格の要件をゴロ合わせにより暗記しておきます(このゴロ合わせは出来が悪く、自作ゴロを用意して頂き、受給資格の要件を一発で思い出せるようにして下さい)。

 

※【ゴロ合わせ】

・「資格は、基本が一番理想と確認したが失業、大将、りーぜでツネ

ヒツー、ヒツーの、東海ロッカーの竜(りゅう)

(社労士試験の資格を取るのは、基本が一番肝心と確認はしているのですが、失業ばかりしていて失業大将とまで呼ばれてしまっており、おまけにリーゼ21で髪の毛を細工していることも世間にばれているようで、昔は東海のロッカーの竜と呼ばれバリバリ鳴らしていた私ですが、今はとても悲痛です。)

 

→「資格(=受給「資格」の要件)は、基本(=「基本」手当)が、一番(=「一般」被保険者)、理・想と・確認(=「離」職による資格「喪」失の「確認」を受けたこと)したが、

失業(=「失業」の状態にあること)、大将(=算定「対象」期間)、リー・ゼで・ツネ(=「離」職日以「前」の「2年(ツネ)」間)、

ヒ・ツー(=「被」保険者期間が「通」算して)、ヒツー(=「12」箇月以上)の、

東・海(=「倒」産・「解」雇等離職者=特定受給資格者)、ロッカー(=「6箇」月以上)の、竜(=特定「理由」離職者)」

 

 

以下、上記の受給資格の要件を順に見ます(上記の〔1〕(「離職による資格喪失の確認」)については、すでに学習済みのため、簡単に済ませます)。

 

 

〔1〕離職による資格喪失の確認を受けたこと

一 離職

離職とは、被保険者について、事業主との雇用関係終了することをいいます(第4条第2項)。

 

(一)被保険者

 

◆被保険者とは、適用事業に雇用される労働者であって、適用除外者(第6条各号に掲げる者)以外のものをいいます(第4条第1項)。

基本手当においては、一般被保険者が問題になります(一般被保険者はこちら以下です)。

(一般被保険者以外の被保険者については、高年齢求職者給付金等のそれぞれの求職者給付があります。)

 

 

(二)雇用関係

 

雇用関係とは、民法第623条の規定による雇用関係のみでなく、労働者が事業主の支配を受けて、その規律の下に労働を提供し、その提供した労働の対償として事業主から賃金、給料その他これらに準ずるものの支払を受けている関係をいいます(【行政手引20004】)。

要するに、実質的に、雇用契約関係が存在することと考えればよいです(こちら以下で詳しく見ました)。

 

 

(三)離職

 

◆「離職」とは、「被保険者について、事業主との雇用関係終了すること」をいいますが(第4条第2項)、死亡在籍出向出向元への復帰などは、「離職」には含みません。

 

離職は求職者給付等の支給を基礎づける概念ですから、明らかに求職者給付等の支給の対象とならないような場合は、離職に含まれないことになります。

例えば、被保険者が死亡した場合は、離職には該当しません(死亡した被保険者については、求職活動中の生活の安定を図るために所得保障を行う求職者給付の趣旨が妥当しません)。

離職については、「届出」の「資格の喪失」のこちらで詳しく見ました。

 

 

二 資格喪失の確認

◆厚生労働大臣公共職業安定所長権限委任)が被保険者の資格の喪失確認を行う場合は、次の(a)~(c)3つのいずれかの場合です(第9条第1項

(詳しくは、「確認」の個所(こちら)で見ました。)

 

(a)事業主から被保険者に関する届出(資格取得届又は資格喪失届)が行われた場合

 

(b)被保険者又は被保険者であった者が、確認請求した場合(第8条

 

(c)職権による場合

 

 

以上、「離職による資格喪失の確認を受けたこと」の要件でした。次に「失業の状態にあること」の要件を見ます。 

 

 

〔2〕失業の状態にあること

◆受給資格の要件として、失業の状態(労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態(第4条第3項))にあることが必要です。

 

失業とは、「被保険者が離職し、労働意思及び能力有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあること」をいいます(第4条第3項)。

※【選択式 平成19年度=「労働の意思及び能力」、「職業に就く」】

 

この「失業」の要件についても、ゴロ合わせにより覚えておきます。

 

※【ゴロ合わせ】

・「失業した悲報をリークされた伊能(いのう)さんはついてない

(伊能さんという人が失業したという情報がばらされてしまいました。)

 

→「失業(=「失業」の要件)した、悲報(=「被保」険者)を、リー(=「離」職)・クされた、

伊(=労働の「意」思あり)・能(=労働の「能」力あり)さんは、ついてない(=職業に「就くことができない」)」

  

 

【条文】

第4条(定義)

1.この法律において「被保険者」とは、適用事業に雇用される労働者であつて、第6条各号に掲げる者以外のものをいう。

 

2.この法律において「離職」とは、被保険者について、事業主との雇用関係が終了することをいう。

 

3.この法律において「失業」とは、被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいう。

 

〔第4項以下は、省略(全文は、こちら)。〕

 

 

 

一 労働の意思

◆「労働の意思」とは、就職しようとする積極的な意思をいいます。

即ち、公共職業安定所に出頭して求職の申込みを行うのはもちろんのこと、受給資格者自らも積極的に求職活動を行っている場合に労働の意思があるものとされます(【行政手引51202】参考)。 

 

例えば、定年退職した場合に、しばらく休養してから再就職しようと考えているようなケースは、この時点で求職の申込みをしても、労働の意思が認められず、失業にあたらないため、受給資格の要件を満たさないことになります。

 

二 労働の能力

◆「労働の能力」とは、労働(雇用労働)に従事し、その対価を得て自己の生活に資し得る精神的・肉体的及び環境上の能力をいうとされます。

そして、受給資格者の労働能力は、安定所において本人の体力、知力、技能、経歴、生活環境等を総合してその有無を判断するものとされます(【行政手引51203】参考)。

 

 

例えば、傷病、婚姻、妊娠、出産、育児等により離職しすぐに就職できないような場合には、労働の能力(ないし意思)は認められず、受給資格の要件を満たさないことになります。

 

三 職業に就くことができない状態

◆「職業に就くことができない状態」とは、安定所が受給資格者の求職の申込みに応じて最大の努力をしたが就職させることができず、また、本人の努力によっても就職できない状態をいうとされます(【行政手引51204】参考)。

 

 

ここで、受給資格の要件等に関する行政手引を見ておきます(のちに学習する知識も含まれていますが、ざっと目を通して下さい)。

 

 

・【行政手引50101】

受給資格及び受給資格者の意義

 

「受給資格とは、法第13条第1項の規定により基本手当の支給を受けることができる資格をいい、この受給資格を有する者を受給資格者という。

即ち、一般被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことのできない状態にある場合で、算定対象期間に被保険者期間(50103参照)が通算して12か月以上であったときに基本手当の支給を受けることができる。

この算定対象期間は、原則として、離職の日以前2年間である(50151~50200参照)。

なお、受給資格に係る離職理由特定理由離職者又は特定受給資格者に該当する場合は、離職の日以前の2年間に被保険者期間が12か月以上ないときは、離職の日以前1年間に被保険者期間が6か月以上であれば基本手当の支給を受けることができる(特定理由離職者の範囲については50305-2、特定受給資格者の範囲については50305参照)。

この場合における算定対象期間は、原則として離職の日以前1年間である。

高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者のそれぞれの給付を受けることができる資格を有する者は、受給資格者と呼ばない。

また、基本手当の受給を終了し、支給残日数がなくなった者は、受給資格者ではない。」

 

 

・【行政手引50102】

 受給資格の決定

 

「イ 受給資格の決定とは、安定所長が離職票を提出した者について、基本手当の支給を受けることができる資格を有する者であると認定することをいう。

すなわち、次の3つの要件を満たしている者であると認定することである。

(イ)離職による資格喪失確認を受けたこと

(ロ)労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあること

(ハ)算定対象期間(原則として離職の日以前2年間(受給資格に係る離職理由が特定理由離職者又は特定受給資格者に該当する場合は2年間又は1年間)。疾病、負傷等による受給要件の緩和について、50151~50200参照)に、被保険者期間通算して12か月(受給資格に係る離職理由が特定理由離職者又は特定受給資格者に該当する場合は12か月又は6か月)以上あること

 

なお、2枚以上の離職票を提出すべき者に係るこの要件の判断については、50104を参照すること。〔こちら参考〕

受給資格者が受給資格の決定を受けるには、安定所に出頭し、求職の申込みをしなければならない(法第15条第2項則第19条第1項)。

なお、受給期間(50251参照)を経過した者については、受給資格の決定を行うことはできない(50205参照)。」 

 

続いて、受給資格の要件の3番目に入ります。

 

 

〔3〕算定対象期間と被保険者期間

(Ⅰ)原則

 

◆基本手当は、被保険者が失業した場合において、算定対象期間原則として、離職日以前2年間)に被保険者期間通算して12箇月以上あるときに支給されます(第13条第1項)。

 

 

(Ⅱ)特例

 

◆ただし、特定受給資格者又は特定理由離職者の場合は、上記(Ⅰ)の原則に該当しなくても、離職日以前1年間(原則)に被保険者期間通算して6箇月以上あれば足ります(第13条第2項)。

  

 

特定受給資格者・特定理由離職者:

上記(Ⅱ)の「特定受給資格者」及び「特例理由離職者」とは、大まかには、非自発的な離職者のことです。より正確には、次の通りです。 

 

特定受給資格者とは、倒産・解雇等により離職した者です(倒産・解雇等離職者)。

第23条第2項施行規則第35条第36条

 

倒産・解雇等により、再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた受給資格者であり(いわゆる事業主(会社)都合による離職です)、要保護性が高いことから、本件の受給資格の要件の特例が認められるほか、所定給付日数や受給期間の優遇等が認められています。

詳細は、所定給付日数の個所(こちら)で学習します。

 

 

特定理由離職者とは、離職者のうち特定受給資格者以外の者であって、期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないこと(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限ります)その他のやむを得ない理由により離職したものとして厚生労働省令で定める者をいいます(第13条第3項)。

具体的には、次の2種類があります。

 

(A)希望に反して有期労働契約が更新されなかったことにより離職した者第13条第3項施行規則第19条の2第1号)。

 

(B)正当な理由がある自己都合退職離職(第13条第3項、施行規則第19条の2第2号

 

特定理由離職者については、受給資格の要件の特例が認められます(第13条第2項)。

平成29年度試験 改正事項

その他に、前記の(A)希望に反して有期労働契約が更新されなかったことにより離職した特定理由離職者」であって、離職日が(平成21年3月31日から)平成34年3月31日までの間にある者については、所定給付日数受給期間優遇が認められます(即ち、暫定的に、特定受給資格者の効果と同様になります)。(法附則第4条施行規則附則第18条

 

従来は、(B)「正当な理由がある自己都合退職者」である特定理由離職者についても、限定的ですが、所定給付日数や受給期間の優遇が認められていました。

しかし、平成29年4月1日施行の施行規則の改正により、この取扱いが廃止されました。詳しくは、こちら以下で学習します。 

 

 

上記の算定対象期間における被保険者期間に係る要件の原則と例外のイメージは、次の図の通りです。 

 

次の条文は、熟読して下さい。

 

【条文】

第13条(基本手当の受給資格)

1.基本手当は、被保険者失業した場合において、離職の日以前2年間(当該期間に疾病負傷その他厚生労働省令〔=施行規則第18条〕で定める理由により引き続き30日以上賃金の支払受けることができなかつた被保険者については、当該理由により賃金の支払を受けることができなかつた日数を2年に加算した期間(その期間が4年を超えるときは4年間)。第17条第1項において「算定対象期間」という。)に、次条〔=第14条)の規定による被保険者期間通算して12箇月以上であつたときに、この款〔=第3章第2節第1款の「基本手当」〕の定めるところにより、支給する。

 

2.特定理由離職者及び第23条第2項各号のいずれかに該当する者〔=特定受給資格者〕(前項の規定により基本手当の支給を受けることができる資格を有することとなる者を除く。)に対する前項の規定の適用については、同項中「2年間」とあるのは「1年間」と、「2年に」とあるのは「1年に」と、「12箇月」とあるのは「6箇月」とする。

 

3.前項の特定理由離職者とは、離職した者のうち、第23条第2項各号のいずれかに該当する者〔=特定受給資格者以外の者であつて、期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないこと(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかつた場合に限る。)その他のやむを得ない理由により離職したものとして厚生労働省令〔=施行規則第19条の2〕で定める者をいう。

  

 

 

 ここで、受給資格の要件の体系を図にまとめておきます(まだ学習していない事項が多いので、ざっと眼を通す程度で結構です)。

なお、図中のところどころにある※の部分は、ゴロ合わせです。

 

以下、次のページにおいて、算定対象期間と被保険者期間について、詳しく見ます。

 

 

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