平成30年度版

 

第1節 労働条件の決定システムの全体像

労働者と使用者の間の労働をめぐる法律関係は、大きくは、強行法規(その中心が労働基準法です)、労働協約就業規則及び労働契約という4つ(の法源)によって決定・規律されます。

 

※ 第2条第2項において、「労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。」と定められていることが参考になります。

 

まず、労働基準法を除くこれらの法源の概観を見ます。

 

※ 法源とは、法の存在形式のことであり、ここでは、労働関係を規律する法規範として裁判官が裁判において根拠とできるもののことです。

 

※ なお、過去問は、このページの最後(こちら以下)に掲載しています。

 

 

〔1〕労働契約

労働契約とは、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことを合意する契約とできます(下記の民法第623条の雇用契約や労働契約法第6条を参考)。

 

民法の雇用契約と基本的には同義と解されています(争いはあり、後に「労働契約」の個所で簡単に触れます)。

 

 

【民法第623条】

民法第623条(雇用)

雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

 

 

【労働契約法第6条】

労働契約法第6条(労働契約の成立)

労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

 

 

 ※ 既述しましたが、私的自治の原則(個人は、自己の意思により自由にその法律関係を形成できるという原則(民法第91条参考)。個人の尊厳の理念憲法第13条に基づいています。私的自治の原則によって契約自由の原則等が導かれます)からは、本来、使用者と労働者はその合意により自由に労働契約(雇用契約)を締結し、又は変更できるのが基本です。

 

このような合意の原則は、労働契約法第1条第3条第1項第6条及び第8条等で示されています(のちに「労働契約」の個所(こちら以下)で学習します)。

 

 

〔2〕労働協約

労働協約とは、労働組合使用者(又は使用者の団体。以下、このページにおいて、まとめて「使用者等」といいます)との間の労働条件その他に関する書面による合意です(労働組合法第14条)。

 

 

【労働組合法第14条】

労働組合法第14条(労働協約の効力の発生)

労働組合使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによってその効力を生ずる。

 

 

※ 本来、労働者は使用者と合意することによって自由に労働契約を締結し変更できるはずなのですが、実際は、労使は対等な力関係にはないため、個々の労働者が使用者と交渉して労働条件の向上等を実現することは困難です。

そこで、憲法上、労働者には、その経済的地位の向上を図るため、労働組合を結成して(団結権)、使用者と団体交渉を行い(団体交渉権)、その他の団体行動をする権利(団体行動権。具体的には争議行為権や組合活動権)が保障されており(憲法第28条)、これを受けて労働組合法が具体的な規定を定めています(なお、憲法第28条については、労働組合法のこちら以下(労働一般のパスワード)で詳しく学習します)。

この団体交渉等の結果、一般に労働協約が締結されます。

そして、労働協約には、労働者(組合員)の保護の見地等から、労働契約の内容を規律する規範的効力などの特殊の効力が認められています(労組法第16条など。後述)。

 

※ なお、労働協約の効力は、労働協約の締結当事者(労働組合と使用者等)及びその労働組合の「組合員」にのみ及ぶのが原則です(即ち、当該組合員でない労働者にまでは及びません)。

なぜなら、労働協約の効力が当該協約の締結組合の組合員以外の労働者にも拡張して適用される場合については特に規定(一般的拘束力。労組法第17条(労働一般のパスワード)第18条)があるため、それ以外の場合には拡張適用はないと解されるからです。

 

 

【憲法】

憲法第28条  

勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

  

【選択式 労働一般 平成21年度=「団体交渉」、「団体行動」】

 

 

※ 労働協約については、労働組合法のこちら以下(労働一般のパスワード)で詳しく学習します。

 

 

〔3〕就業規則

就業規則とは、使用者作成する職場規律や労働条件等を定めた規則です(第89条以下)。

 

就業規則は使用者が一方的に作成するものですが、その内容の合理性周知を要件として、その就業規則で定めた労働条件労働契約の内容になるという効力(規範的効力労働契約法第7条)等が認められています。

 

 

【労働契約法第7条】

労働契約法第7条

労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。

 

 

上記労働契約法第7条のただし書きの意味は、次の通りです。

即ち、労働契約において、当事者が就業規則の内容と異なる合意をしていた場合は、その異なる合意が優先適用されますが、その異なる合意が就業規則で定める基準に達しないため無効になる場合(=後述の労働契約法第12条に該当する場合)は別であり、その異なる合意は優先適用されないということです(詳細は、後に学習します)。

 

以上で、労働契約、労働協約及び就業規則という労働法における3つの法源の概観について学習しました。 

 

 

第2節 効力関係

次に、労基法を含む4つの法源の効力関係(優先関係)を見ます。ここも、とても重要です。

 

【効力関係の図】

 

※ この4つの法源の効力関係(例えば、労働協約と就業規則はどちらがどのように優先するのかという問題)については、結構、混乱しやすいです。そこで、上の図の形矢印の位置も含めをそのまま頭に焼き付けるのが有用です。

 

なお、条文の番号は、忘れても大丈夫です。以下の記述を参考にして、上記の条文の内容を大まかに記憶することが必要です。もっとも、そのうち、重要な条文はその条文番号も自然に覚えてしまいますが。

 

以下、上記図の(A)~(D)の条文について、順番に見ます。

 

 

(A)労働基準法第13条

労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約の部分は無効となり(第13条前段強行的効力といいます)、当該無効部分労基法で定める基準によります(同条後段。直律的効力といいます)。

 

※ この強行的効力と直律的効力の2つをあわせて、規範的効力といいます。

 

 

【条文】

労働基準法第13条(この法律違反の契約)

この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。

 

※【選択式 平成19年度=「に達しない」】

【択一式 平成21年問2A(後掲)】/【平成25年問6A(後掲)】/【平成27年問3A(後掲)】

 

※ この条文は、覚えます。上記の太字部分をキーワードとして下さい。

 

○趣旨

労働基準法で定める最低基準(第1条第2項)に達しない労働条件を定める労働契約の部分を無効とし(労基法の強行法規としての効力です=強行的効力)、その無効部分は労基法で定める基準に引き上げることで労働契約の内容を補充・明確化して(直律的効力)、労働者の保護を図った規定です。

 

この労基法第13条について、要件と効果の視点で整理しておきます。 

 

一 要件

◆労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約であること。

 

二 効果

(一)強行的効力

 

◆当該労働契約の部分は、無効となります(第13条前段)。

 

 

(二)直律的効力

 

そして、当該無効部分は、労基法で定める基準によります(労基法で定める基準により規律されるということです。同条後段)。

 

1 従って、労働基準法の定める基準に「達しない」労働契約の部分のみ無効となるのであり(一部無効)、一部に無効部分があっても労働契約の全部が無効となるのではありません(全部無効となるとしますと、かえって労働者に不利益になることがあるためです)。

労基法の基準を超えている労働契約の部分は、有効なのです(文言上、基準に「達しない」となっており、基準に「違反する」とはなっていないことに注目です)。

 

2 この第13条により、労基法が労働契約より優先する効力関係にあることがわかります(ただし、両者の優先関係については、(法律(強行法規)と契約との関係ですから)規定がなくても明らかなことですが)。

 

※ なお、この第13条とパラレルな規定が、後述(C)の労働契約法第12条(就業規則と労働契約の関係について定めたもの)です。

 

また、最低賃金法の第4条第2項も、労基法第13条と類似する考え方の規定です。

 

・参考:最低賃金法第4条第2項

「最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。」

 

 

以上で、労働基準法第13条について終わります。

 

 

(B)労働組合法第16条

労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準違反する労働契約部分無効となります(=強行的効力)。

当該無効部分及び労働契約に定めがない部分は、労働協約に定める基準によります(=直律的効力)。(労組法第16条

以上の2つの効力を、規範的効力といいます。

 

 

【条文】

労働組合法第16条(基準の効力)

労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となった部分は、基準の定めるところによる。労働契約に定がない部分についても、同様とする。

 

※ この条文も、覚えます。「労働者の待遇に関する基準」と「違反する」というキーワードが最重要です。【過去問 平成27年問3A参考(後掲)】

 

○趣旨

労働組合と使用者等との間の契約である労働協約により定めた労働者の待遇に関する基準(=規範的部分といいます)に、組合員の労働契約の内容を規律する効力(規範的効力)を認めることで、組合員の保護及び労働組合の団結権等の保護等を図った規定です。

 

即ち、労働協約は、労働組合と使用者等との間の契約ですから、契約の一般原則(私的自治の原則)からは、かかる契約の当事者(労働組合と使用者等)の間でのみ労働協約の効力が生じるはずなのですが、労組法第16条(規範的効力)は、第三者である「組合員」の労働契約についてまで効力を生じさせています。

これは、契約の一般原則の例外(契約当事者以外の第三者に効力を生じさせること)を認めることで、労働協約の実効性を確保し、労働組合及び組合員の労働基本権を実質的に保障するとともに労使関係の安定を図ろうとした趣旨と解されます(より詳しくは、労組法のこちら以下で見ます)。

 

 

 以下、要件と効果の視点で整理しておきます。

 

一 要件

◆労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準違反する労働契約の部分であること(又は、労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準について、労働契約に定めがないこと)。

 

※ この労働協約の規範的効力が生じる「労働条件その他の労働者の待遇に関する基準」(規範的部分)が具体的に何を意味するかについては、争いがあります。

 

例えば、労働協約において、解雇、懲戒、配転等の人事権の行使について、労働組合との協議やその同意を必要とする旨を定めていたところ、これに違反してなされた人事権の行使が無効になるのかです(いわゆる人事協議・同意条項の問題です)。

 

詳しくは、労働組合法(こちら以下)で学習しますが、争いがある個所のため、試験対策上は深入りしなくて大丈夫でしょう。

なお、関連問題は、賃金の全額払の原則の例外におけるチェック・オフの個所(こちら)や就業規則の個所(こちら以下)でも登場します。 

 

二 効果

(一)強行的効力

 

◆労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効となります(労組法第16条前段)。

 

 

(二)直律的効力

 

◆当該無効部分及び労働契約に定めがない部分は、労働協約で定める基準によります。

 

 

1 この労組法第16条により、労働協約(の規範的部分)が労働契約より優先することがわかります。

 

2 なお、労働協約で定める労働条件等の基準を「上回る」労働契約(や就業規則)の部分も、原則としては無効になると解されます(このことを、「有利性の原則(有利原則)を否定する」といいます)。

なぜなら、労組法第16条の文言は、基準に「違反する」とあって、基準に「達しないとはなっていないこと、また、労働協約の基準を上回る労働契約等の規定の優先を認めますと、使用者による労働組合の切り崩しを招く危険性があること(使用者が、組合員と個別に労働協約の基準を上回る労働契約と締結することで、労働組合の統制権を低下させることが可能になります)からです。

 

さらに、日本で主流の企業別団体交渉の場合、労働組合が交渉し協約化するのは、通常は、当該企業・事業所における組合員の標準的な労働条件(現実の労働条件)であり、最低基準を定めるものではないことも挙げられます。

 

ただし、労働組合が労働協約において最低基準を定めることは許容されるべきですから、労働協約の趣旨等から当該基準を上回る(労働者にとって有利な)労働契約を有効とするものと解される場合は、有利性の原則肯定できます。

(以上、より詳しくは、労組法のこちら以下で解説します。)

 

 

※ なお、前記の効力関係の図(こちら)をご覧になるとわかるのですが、法令(労基法等の強行法規)と労働協約との効力関係については、明文がありません。

これは、労基法等の強行法規が当事者間の契約である労働協約に優先するのは当然のことと解されているためです。

 

以上で、労働組合法第16条について終わります。

 

 

(C)労働契約法第12条(労基法第93条)

 ◆就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約の部分は無効となり(=強行的効力)、当該無効部分は就業規則で定める基準によります(=直律的効力)。(労働契約法第12条

 

以上の2つの効力を規範的効力といいます。ただし、就業規則の最低基準効といわれることが多いです。※1

 

 

【労働契約法】

労働契約法第12条(就業規則違反の労働契約)

就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

 

※ この条文も、必須です。条文の構造自体は、上記(A)の労基法第13条こちら)とパラレルになっています。

 

○趣旨

使用者が一方的に定める就業規則の基準にすら達しない労働条件を定める労働契約の部分を無効とし(強行的効力)、その無効部分は就業規則で定める基準に引き上げることで労働契約の内容を補充・明確化して(直律的効力)、当該事業場の労働条件の最低基準を確保することにより、労働者の保護を図った規定です。

 

※ なお、本条は、もともとは労働基準法旧第93条として定められていましたが、平成19年の労働契約法の創設(平成20年3月1日施行)により、当該労基法旧第93条は労働契約法にそのまま移行されました。そこで、現在の労基法第93条は次のように規定されていま

す。

 

労基法第93条(労働契約との関係)

労働契約と就業規則との関係については、労働契約法(平成19年法律第128号)第12条の定めるところによる。

 

 

以下、要件と効果の視点で整理しておきます。 

 

一 要件

◆就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約であること。

 

二 効果

(一)強行的効力

 

◆当該労働契約の部分は無効になります(労契法第12条前段)。

 

 

(二)直律的効力

 

◆当該無効部分は、就業規則で定める基準によります(同条後段)。

 

※ 本条により、就業規則が労働契約より優先することがわかります。

 

 

※1 最低基準効:

 

上述のように、労働契約法第12条が定める就業規則が有する効力(上記二の(一)強行的効力及び(二)直律的効力のことです)を「最低基準効」と表現することがあります。

平成27年度の択一式問7Bにおいても、「最低基準効」という表現が使用されていますから(設問はこちらで掲載しています。ただし、初学者の方は、就業規則を学習してからリンク先をお読み下さい)、その意味は知っておく必要があります。

 

 

以上で、労働契約法第12条について終わります(この労契法第12条に関するより細かい知識は、就業規則の効力のこちら以下で学習します)。 

 

 

(D)労働基準法第92条

 ◆労働基準法第92条は、就業規則法令又は労働協約との効力関係を定めています。

 

即ち、就業規則は、法令又は労働協約違反してはなりません労基法第92条第1項)。

行政官庁(所轄労働基準監督署長)は、法令又は労働協約に抵触する就業規則の変更を命ずることができます(同条第2項)。

 

 

【条文】

労働基準法第92条(法令及び労働協約との関係)

1.就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約反してはならない

 

2.行政官庁〔=所轄労働基準監督署長(施行規則第50条)〕は、法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更命ずることができる

 

※ この条文も、必須です。労働協約との関係も定めていることを忘れやすく、注意です。また、第2項にも特色があります。

 

 

○趣旨

就業規則が法令(強行法規)に違反できないことは当然です。

また、使用者が一方的に定める就業規則よりも、労使の合意によって締結された労働協約の効力を優先させています。

そして、行政官庁に変更命令権を認めることで、法令等に違反した就業規則が事実上適用されてしまう危険を防止して、労働者の保護を強化しようとしたものです。

 

以下、要件と効果の視点から整理します。 

 

一 要件

就業規則と、法令又は当該事業場について適用される労働協約についての関係です。

 

二 効果

(一)就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはなりません(第92条第1項)。

 

(二)行政官庁〔=所轄労働基準監督署長施行規則第50条)〕は、法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更を命ずることができます(第92条第2項)。

【過去問 平成25年問1E(後掲)】/類問【平成21年問7ア】

 

※ 第92条において就業規則が「労働協約に反してはならない」というのは、労働協約の「労働条件その他の労働者の待遇に関する基準」(=規範的部分)に反してはならないことと解されています(【昭和24.1.7基収第4078号】参考)。

 

既述の(B)労働組合法第16条こちら)が、この「労働者の待遇に関する基準=規範的部分」に労働契約に対する拘束力を認めていることとのバランスからといえます。

 

そこで、就業規則が労働協約の「規範的部分以外の部分」に違反しても、上記労基法第92条違反にはなりません。

 

 

※ なお、前記第92条の第2項については、就業規則の変更命令が発せられても、就業規則が直ちに変更されたことになるわけではなく、使用者により就業規則の変更手続がとられて初めて変更されるものです。【過去問 平成28年問5E(後掲)】

 

なぜなら、文言上も、「変更を命ずることができる」とするのみですし、また、どのような内容等の就業規則に変更するかについては使用者の裁量も認める必要があるからです。

 

 

※ なお、労基法における「行政官庁」(第92条第2項など)の意義については、こちら(「監督機関」)をご覧下さい。

 

 

以上で、労基法第92条について終わります(より詳しくは、就業規則のこちら以下で学習します)。

 

 

以上で4つの法源の効力関係について終わります。既述の効力関係の図を覚え、矢印に当たる条文の内容を思い出せるようになれば、合格レベルです。

次の過去問で、学習の成果を確かめてみて下さい。

 

 

○過去問:

 

・【平成25年問6A】

設問:

労働基準法は、同法の定める基準に達しない労働条件を定める労働契約について、その部分を無効とするだけでなく、無効となった部分を同法所定の基準で補充することも定めている。 

 

解答:

労基法第13条こちら以下)は、「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。」と規定しており、設問は、この第13条を言い換えたものになっています。即ち、強行的効力と直律的効力の説明です。よって、設問は正しいです。

 

 

・【平成21年問2A】

設問:

労働基準法で定める基準に違反する労働条件を定める労働契約の部分は、労働基準法で定める基準より労働者に有利なものも含めて、無効になる。 

 

解答:

「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。・・・」(第13条)であり、「達しない」ことが要件です。

従って、労基法で定める基準より労働者に有利な部分は、そのまま有効となります。よって、設問は誤りです。

 

 

・【平成25年問1E】/類問【平成21年問7ア】

設問:

行政官庁は、就業規則が当該事業場について適用される労働協約に牴触する場合は、当該就業規則の変更を命ずることができる。 

 

解答:

第92条第2項(こちら以下)の通り、正しい内容です。

 

 

・【平成27年問3A】

設問:

労働協約に定める基準に違反する労働契約の部分を無効とする労働組合法第16条とは異なり、労働基準法第13条は、労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とすると定めている。 

 

解答:

労組法第16条こちら以下)は「労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする」と規定しており、労基法第13条こちら以下のように「基準に達しない」労働契約の部分が無効とするとは規定していないことは重要です(本文でも触れましたように、この労組法第16条の文言も1つの理由となって、労働協約で定める労働条件等の基準を「上回る」労働契約(や就業規則)の部分も、原則としては、無効となる(「有利性の原則が」否定される」)ものと解されます)。

以上より、設問は正しいです。

本問は、今まで出題されていた効力関係の問題よりやや難しく、しっかり理解した上で記憶していないと解きにくい問題だったといえます。

 

 

・【平成28年問5E】

設問:

行政官庁が、法令又は労働協約に抵触する就業規則の変更を命じても、それだけで就業規則が変更されたこととはならず、使用者によって所要の変更手続がとられてはじめて就業規則が変更されたこととなる。 

 

解答:

正しいです。

上記本文記載の通り、文言上も、「変更を命ずることができる」とするのみですし、また、どのような内容等の就業規則に変更するかについては使用者の裁量も認める必要があるためです。

そこで、就業規則の変更命令の発令された場合は、使用者が当該終業規則を変更し、さらに、意見聴取の手続をとって、届け出をし、周知させることが必要になります。詳しくは、就業規則の個所で学習します。

 

  

 次のページでは、労使協定について概観を見ます。