平成30年度版

 

序論 労災保険法の目的、体系

§1 労災保険法の目的、趣旨

1 労働者災害補償保険法(以下、「労災保険法」ないし「労災法」といいます)は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷疾病障害死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて社会復帰促進等事業を実施するものです(第1条参照)。

 

労災保険法は、昭和22年4月7日に労基法とともに制定され、同年9月1日からともに施行されました。

 

2 労災保険法は、元来、労災保険制度を定めることにより、労基法使用者の災害補償責任を実効化させようとしたものです。

即ち、労災保険制度は、労基法の使用者の災害補償責任を実効化させるために保険制度化されたものです。

 

このことは、第12条の8第2項(後にこちら学習します)が、業務災害に関する保険給付は労基法に規定する災害補償の事由が生じた場合に行うことを原則とする旨を定めていること、また、労基法第84条第1項労基法のパスワード。労基法のこちら以下が、労基法の災害補償の事由について、労災保険法に基づいて災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合は、使用者は災害補償責任を免除されるとしていることなどからもうかがえます)。

 

つまり、労基法の災害補償制度労基法第75条~第88条)により、業務災害について、使用者には無過失の災害補償責任が生じますが、これにより使用者は重い負担を負うこと(使用者のリスク軽減の必要性)、また、実際は、使用者の無資力等により被災労働者等(被災労働者、その遺族又は葬祭を行う者をいいます)の迅速で充分な救済が図られないおそれもあること(被災労働者等の保護の必要性)等を考慮して、使用者保険料を拠出し、政府管掌運営)する災害保険制度とすることにより、労基法の災害補償責任を実効化させようとしたものが労災保険の制度です。

 

そして、当初、労災保険制度は、このように労基法の災害補償制度に対応した災害保険制度でしたが、その後、労災保険制度の内容の充実が図られ、現在は、労災保険制度は労基法の災害補償制度を大きく上回る内容の保険制度となっています。

 

労基法の災害補償制度と労災保険法の労災保険制度の細かな違いについては、後述します。

 

※ 以上の労災保険制度の趣旨(労基法の災害補償責任との関係)については、【学校法人専修大学事件=最判平成27年6月8日】判決においても、次のように判示されています。(詳細は、労基法の解雇制限期間のこちらをご覧下さい。)

 

「労災保険法は、業務上の疾病などの業務災害に対し迅速かつ公正な保護をするための労働者災害補償保険制度(以下『労災保険制度』という。)の創設等を目的として制定され、業務上の疾病などに対する使用者の補償義務を定める労働基準法と同日に公布、施行されている。業務災害に対する補償及び労災保険制度については、労働基準法第8章が使用者の災害補償義務を規定する一方、労災保険法12条の8第1項が同法に基づく保険給付を規定しており、これらの関係につき、同条〔=労災保険法第12条の82項が、療養補償給付を始めとする同条1項1号から5号までに定める各保険給付〔=業務災害に関する労災保険法の保険給付〕は労働基準法75条から77条まで〔労基法のパスワード〕第79条及び第80条において使用者が災害補償を行うべきものとされている事由が生じた場合に行われるものである旨を規定し、同法84条1項が、労災保険法に基づいて上記各保険給付が行われるべき場合には使用者はその給付の範囲内において災害補償の義務を免れる旨を規定するなどしている。また、労災保険法12条の8第1項1号から5号までに定める上記各保険給付の内容は、労働基準法75条から77条まで、79条及び80条の各規定に定められた使用者による災害補償の内容にそれぞれ対応するものとなっている。

上記のような労災保険法の制定の目的並びに業務災害に対する補償に係る労働基準法及び労災保険法の規定の内容等に鑑みると、業務災害に関する労災保険制度は、労働基準法により使用者が負う災害補償義務の存在を前提として、その補償負担の緩和を図りつつ被災した労働者の迅速かつ公正な保護を確保するため、使用者による災害補償に代わる保険給付を行う制度であるということができ、このような労災保険法に基づく保険給付の実質は、使用者の労働基準法上の災害補償義務政府が保険給付の形式で行うものであると解するのが相当である(最高裁昭和50年(オ)第621号同52年10月25日第3小法廷判決・民集31巻6号836頁参照)。このように、労災保険法12条の8第1項1号から5号までに定める各保険給付は、これらに対応する労働基準法上の災害補償に代わるものということができる。」 

 

 

§2 労災保険法の体系・全体構造

まず、労災保険法の体系・全体構造について、下の図でざっと見てみます。

細かな内容はまだ不要ですが、「主体」、「客体」、「事業」(そして、「事業」として「保険給付」と「社会復帰促進等事業」があること)、「費用(財政)」及び「その他」という大きな視点で整理できることを押さえておかれると、頭の整理に役立ちます。

この「主体」、「客体」、「事業(保険給付等)」等による整理は、その他の保険法の科目でも基本的に共通します。

また、そのあとに掲載しています「保険給付の体系」の図(こちら)も、他の保険法の科目でも基本的に共通します。

 

 

 

○ 保険給付については、各保険給付ごとに、次の体系に沿って考えていきます。

 

○ 以下、主体、客体、事業及び費用(財政)について、ごく大まかな概観だけ見ておきます。

 

〔Ⅰ〕 主体

労災保険制度は、労基法の使用者の災害補償責任を実効化するために保険制度化されたものであり、政府保険者となり、事業主保険料拠出して、被災労働者(ないしその遺族又は葬祭を行う者)が保護の対象となります。

 

そして、労災保険制度においては、被保険者という概念はないことに注意です(この点で、他の保険制度と異なります)。

被災労働者等が保険給付を受けて保護されるのですが、事業主(保険加入者です)も、保険料を拠出して労基法の災害補償責任のリスクを回避できるという点で被保険者性が認められるからとできます。

 

〔Ⅱ〕 客体

労災保険の対象(保険事故等)に関する問題です。

 

〔1〕労災保険の事業

 

前提として、労災保険の事業の構造をつかまないと、わかりにくいです。

即ち、労災保険の事業は、大きく、保険給付社会復帰促進等事業に分かれます(詳しくは、すぐ後で見ます)。

このうち、保険給付については、「業務災害に関する保険給付」及び「通勤災害に関する保険給付」並びに「二次健康診断等給付」があります。

 

「業務災害又は通勤災害に関する保険給付」の保険事故(保険給付の対象となる事故のことです)は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷疾病障害及び死亡です。

 

二次健康診断等給付の場合は、業務上の事由による脳血管疾患心臓疾患に係る異常の所見の診断が保険事故となります(二次健康診断等給付は、業務上の事由による脳血管疾患及び心臓疾患の発生を予防するための保険給付であり(第26条)、予防給付であるという点で、発症後(事故後)の事後的な補償を図る業務災害又は通勤災害に関する保険給付と異なります)

 

 

〔2〕業務災害と通勤災害

 

業務災害又は通勤災害に関する保険給付の支給要件においては、業務災害(労働者の業務上の事由による負傷、疾病、障害若しくは死亡)又は通勤災害(労働者の通勤による負傷、疾病、障害若しくは死亡)が発生することが必要になります。

 

業務災害にあたるかどうかは、一般に、業務遂行性(労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にある状態であること)と業務起因性(当該業務と傷病等との間に相当因果関係があること)により判断されています。

 

通勤災害にあたるかどうかも、業務災害の場合とパラレルに考えて、通勤遂行性(「通勤」にあたること。第7条第2項が「通勤」の要件(定義)を定めています。即ち、通勤とは、労働者が、就業に関し、一定の移動を、合理的な経路又は方法により行うことをいいます)と通勤起因性(当該通勤と傷病等との間に因果関係があること)により判断すればよいことになります。

 

〔Ⅲ〕 事業

労災保険の事業は、上記の通り、大きくは、保険給付と社会復帰促進事業等に分かれます。

次の目的条文の個所で、やや詳しく見ます。


〔Ⅳ〕 費用(財政)

労災保険の保険料は、全額事業主負担し、労働者負担しません

労災保険制度が、元来、労基法の使用者の災害補償責任を実効化させるための保険制度(事業主は、これにより災害補償責任のリスクを免れます)であることによります。

 

 

§3 労災保険法の目的

労災保険法の目的条文(第1条)を学習します。とても重要です。

まず、次の第1条を熟読して下さい。

 

【条文】

第1条

労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷疾病障害死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。

 

 

※【選択式 平成22年度=「社会復帰」、「安全及び衛生」】/【選択式 平成13年度=「通勤」、「保険給付」、「社会復帰の促進」、「労働者の安全及び衛生の確保」】

 

このように、選択式として、「社会復帰」と「安全及び衛生」というキーワードが2度出題されています。平成22年度に出題されていますが、そろそろ再度の出題可能性もあり、今後は、「迅速かつ公正」や「福祉の増進」といったキーワードにも注意して記憶する必要があります。

 

 

○趣旨

この第1条は、労災保険法の目的を表した条文です(目的条文といいます)。この条文が労災保険法の全体像を言い表しており、労災保険法の全体構造を把握するために役に立つ条文でもあります。

上記の太字のキーワードをすべて覚える必要があります。

 

ポイントは、次の通りです。

 

〔1〕事業の全体像 

 

労災保険法の事業は、上掲の図(こちら)の通り、保険給付とその他の事業(社会復帰促進等事業)からなります(概観は前記の通りですが、ここでは条文を中心にざっと見ます)。

 

次の第2条の2が、労災保険の事業について規定しています。

 

【条文】

第2条の2

労働者災害補償保険は、第1条の目的を達成するため、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に関して保険給付行うほか、社会復帰促進等事業を行うことができる

 

※【選択式 平成13年度=「社会復帰促進等事業」】

 

 

〈1〉保険給付の全体像

 

そして、保険給付については、「業務災害及び通勤災害に関する保険給付」と「二次健康診断等給付」に大きく分かれます(第7条第1項)。

 

【条文】

第7条

1.この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。

 

一 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付

 

二 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関する保険給付

 

三 二次健康診断等給付

 

〔第2項以下は、省略(全文はこちら)。〕

 

 

 

一 業務災害・通勤災害に関する保険給付

 

業務災害及び通勤災害に関する保険給付(ここでは、保険給付のうち、二次健康診断等給付は除外しておきます)については、健康保険との違いに注意です。

 

即ち、労災保険の場合は、業務上の事由又は通勤による負傷、疾病、障害、死亡について保険給付を行いますが(つまり、業務災害通勤災害を対象とします)、健康保険の場合は、基本的には、業務外の事由による疾病、負傷、死亡又は出産に関して保険給付を行うものです。

つまり、健康保険も労災保険も、ともに事業(ないし適用事業所)に使用される労働者(被用者)を対象とする社会保険制度ですが(被用者保険制度とか職域保険制度といわれます。対して、国民健康保険は、健康保険の被保険者等には適用されない非・被用者保険制度です。地域保険制度ともいわれます)、

そのうち、労災保険の保険給付は、業務災害と通勤災害を対象とするのに対して、健康保険の保険給付は、基本的には、業務外の災害を対象とする点が異なります。※1

 

なお、通勤災害は、本来は、業務災害ではなく、業務外の災害なのですが(事業主の支配下において生じた災害とは評価されていません。従って、元々は健康保険の対象でした)、通勤は労働の提供に随伴するものであり、業務との関連性はあること(また、通勤途中の災害も増加していたこと)などから、昭和48年の労災保険法の改正により労災保険の保険給付の対象として追加されたものです。

 

 

※1 健康保険法との関係:

 

ところで、平成25年に健康保険法の第1条(健保法のパスワード)〔=目的条文〕が改正され、健康保険法と労災保険法の関係が修正されました(平成25年10月1日施行)。

 

即ち、従来は、健康保険法は、労働者の業務の事由による傷病等(及び、その被扶養者の傷病等)を対象としていましたが、改正により、健康保険法は「労働者又はその被扶養者の業務災害労働者災害補償保険法第7条第1項第1号に規定する業務災害〔=業務上の負傷、疾病、障害又は死亡〕をいう)以外」の傷病等を対象とするものと改められました。

つまり、労災保険法の業務災害にあたらない労働者等の傷病等は、健康保険法の対象となることになります。

 

これは、例えば、副業で行った請負の業務で負傷した場合(シルバー人材センターの会員の請負契約による就業中の負傷など)やインターンシップで負傷した場合などに、労災保険法からも健康保険法からも給付がなされない事態が生じうるといった問題を解決するためになされた改正です。

 

即ち、例えば、副業で行った請負業務のケースは、実質的に請負関係であるときは、当該請負人は労働者(使用従属関係・指揮命令関係にある者)にはあたりませんから、労災保険法は適用されません。

また、健康保険法の適用対象は、従来、労働者(健康保険法の労働者は、代表取締役も含まれるなど、労基法等の労働者より広義です)の「業務の事由による」傷病等であったため(健康保険法改正前第1条)、業務遂行中(業務遂行性及び業務起因性あり)の負傷等については、健康保険法の適用もないことになり、被災労働者の保護に欠けるおそれがありました。

そこで、このように労災保険法で保護されない傷病等については、健康保険法により保護しようとしたものです。

 

詳細は、健康保険法の「目的」の個所(健康保険法のこちら以下)で説明します。

 

 

※2 保険給付の体系:

 

参考までに、業務災害及び通勤災害に関する保険給付の体系表と体系図を掲載しておきます。詳細は、保険給付の総論において学習します。

 

 

 

二 二次健康診断等給付

 

上掲の第1条及び第2条の2の「業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡」の「」とは、二次健康診断等給付における「業務上の事由による脳血管疾患又は心臓疾患に係る異常の所見の診断」のことを指しています。

 

二次健康診断等給付は、過労死等の増加を背景として、業務上の事由による脳血管疾患及び心臓疾患の発症を予防することを目的とする保険給付です(平成12年の労災保険法の改正により創設されました)。

即ち、労働安全衛生法の規定による直近の定期健康診断等において、脳血管疾患又は心臓疾患の発生にかかわる一定の項目について異常の所見があると診断された場合に、当該労働者の請求に基づき、二次健康診断と特定保健指導を保険給付として行う制度です(第26条~第28条)。

 

予防給付である点が、業務災害・通勤災害に関する保険給付との大きな違いです。

また、二次健康診断等給付は、「業務上の事由」による脳血管疾患及び心臓疾患の発症の予防を目的とする保険給付であり、従って、業務災害に関連する保険給付なのであり、通勤災害に関連する保険給付ではないことは注意です(即ち、通勤による脳血管疾患等の発症の予防を目的とするものではありません)。

 

 

以上が、労災保険法の事業のうち、保険給付になります。

次に、労災保険法の保険給付以外の事業である「社会復帰促進等事業」の概観を見ます。

 

 

〈2〉社会復帰促進等事業

 

社会復帰促進等事業とは、保険給付以外労災保険法の事業であり、具体的には、次の1~3の3つの事業をいいます(第1条第2条の2第29条

 

1.社会復帰促進事業 = 被災労働者の円滑な社会復帰を促進するために必要な事業

 

2.被災労働者等援護事業 = 被災労働者及びその遺族の援護を図るために必要な事業

このうち、特に重要なものが、特別支給金の支給に係る事業です。

 

3.安全衛生確保・賃金支払確保等事業 = 労働者の安全衛生の確保、保険給付の適切な実施の確保、賃金の支払の確保等を図るために必要な事業

 

(なお、この3の事業の名称については、単に「安全衛生確保等事業」などとされることも多いです。当サイトでは、賃金支払確保の事業も含んでいることを暗記する観点から、「安全衛生確保・賃金支払確保等事業」とすることがあります。)

 

 

社会復帰促進等事業の3種類は、次のゴロ合わせで覚えます。

 

※【ゴロ合わせ】

・「復縁で、安心(あんちん)

(恋人と復縁したため、安心です。)

 

→「復(=社会「復」帰促進事業)・縁(=被災労働者等「援」護事業)で、あん・ちん(=「安」全衛生確保・「賃」金支払確保等事業)」

 

 

以上で、目的条文からみた〔1〕事業の全体像を終わります。続いて、目的条文における「迅速かつ公正な保護」の問題です。

 

 

〔2〕迅速かつ公正な保護 

 

上掲の第1条・目的条文では、労災保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して「迅速かつ公正な保護」をするため、必要な保険給付等を行う旨を定めていますが、この「迅速かつ公正な保護」の意味は次の通りです。

 

労災保険制度では、事業主が保険料を拠出しますから、保険制度の建前からは、本来は、事業主に保険給付を支給し、これを事業主から被災労働者に対して交付させるという構成も考えられます。

しかし、それでは被災労働者の保護の迅速性に欠けるおそれもありますし、また、事業主による不正等の危険もありうることから、労災保険制度では、直接、被災労働者に対して保険給付を行うこととしています。

これにより、政府が労災保険を管掌することとあいまって、被災労働者等の「迅速かつ公正な保護」が図られるという意味です。

 

以上で、労災保険法の概観、目的等を終えます。

 

 

次に、便宜上、第5条(命令の制定)についても、ここで言及しておきます。 

 

命令の制定(第5条)

次の第5条を一読して下さい。

 

【条文】

第5条

この法律に基づく政令及び厚生労働省令並びに労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和44年法律第84号。以下「徴収法」という。)に基づく政令及び厚生労働省令(労働者災害補償保険事業に係るものに限る。)は、その草案について、労働政策審議会意見を聞いて、これを制定する。

 

※ 赤字部分を選択式では注意して下さい。

 

○趣旨

労災保険法及び徴収法に基づく政令及び厚生労働省令の制定について、その立案の公正・適切性の確保と施行の円滑を図るため、労働政策審議会の意見を聴取すべき旨を定めたものです。

 

(1)労働政策審議会とは、厚生労働大臣の諮問に応じて労働政策に関する重要事項を調査審議し、厚生労働大臣等に意見を述べること等の事務を行う独立行政委員会です(厚労省設置法第9条参照)。

労働法の各所で登場します(対して、社会保険の各法においては、社会保障審議会が登場します)。

 

労災保険法の中では、事業主責任災害(使用者行為災害。法附則第64条第2項こちら以下)でも登場し、支給調整基準を厚生労働大臣が定める際に、労働政策審議会の議を経ることが必要です。

 

また、労基法でも登場しました。

即ち、1年単位の変形制において、厚生労働大臣が労働日数等の限度を定める場合(労基法第38条の4第3項)、及び企画業務型裁量労働制において、厚生労働大臣が指針を定める場合(労基法第38条の4第3項)において、労働政策審議会の「意見を聴く」ことが必要です。

下記の※2で、労働政策審議会のまとめの図を掲載しておきます。

 

(2)「意見を聞く(聴く)」とは、諮問し、その答申を参考にするという意味で、当該意見に拘束されるわけではありません。

 

 

・【過去問 平成20年問5E】

設問:

労災保険法に基づく政令及び厚生労働省令は、その草案について、労働政策審議会の意見を聞いて、制定される。

 

解答:

正解です。

 

 

なお、労基法においては、次の規定があったことも参考です。

 

・労働基準法第113条(命令の制定)

「この法律に基いて発する命令は、その草案について、公聴会で労働者を代表する者、使用者を代表する者及び公益を代表する者の意見を聴いて、これを制定する。」

 

 

※1 労災保険法の災害保険制度と労基法の災害補償制度の主な違い:

 

労災保険法の災害保険制度労基法の災害補償制度主な違いについて表でまとめておきます(労基法の災害補償の個所で紹介しました。記憶する必要まではなく、何かのときに参考にして下さい)。

 

※2 労働政策審議会のまとめ:

 

次のページからは、主体について学習します。