2019年度版

 

第2章 業務災害と通勤災害の認定

ここでは、業務災害と通勤災害の認定について見ていきます。

まず、業務災害の認定の問題からです。

 

 

第1節 業務災害の認定

第1款 総論

一 労災保険法における「業務災害」とは、労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡をいいます(第7条第1項第1号)。

換言しますと、業務上の事由による労働者の負傷、疾病、障害又は死亡のことです(第1条第2条の2等参考)。

 

上記でリンクしました条文では、「業務上の」負傷等と規定されていたり、「業務上の事由による」負傷等と規定されており、文言がやや異なりますが、意味は同じです。

 

二 この「業務災害」、即ち、「労働者の業務上の事由による負傷、疾病、障害又は死亡」(以下、「負傷、疾病、障害又は死亡」を「傷病等」ということがあります)に該当するためには、「業務」(を行っているといえること業務遂行性)、及び当該業務により傷病等が生じたこと(業務上の事由「による」こと。業務と傷病等との間に因果関係が存在すること。業務起因性)が必要と解されています。 

まず、これらの概念の概要を見ます。 

 

(一)業務遂行性

業務遂行性(「業務」といえること)については、被災労働者等の保護の見地からは、「具体的な業務の遂行中(作業中)」といった狭い意味に限定するべきではなく、業務との関連性の程度や事業主の関与の程度・態様、拘束性・強制性の程度などを総合的に考慮して判断すべきと思われますが、一般的に表現しますと、業務遂行性とは、「労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にある状態」をいうものと解されています。

 

例えば、【最判昭和59.5.29】は、次の通りです。

「労働者の負傷、疾病、障害又は死亡(以下『災害』という。)が労働者災害補償保険法に基づく保険給付の対象となるには、それが業務上の事由によるものであることを要するところ、そのための要件の一つとして、労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にある状態において当該災害が発生したことが必要であると解するのが相当である。」

 

もっとも、「業務上の疾病」(特に、長期間にわたり業務に伴う有害作用が蓄積して発病に至る職業性の疾病(じん肺等))の場合は、業務遂行性は当然の前提とした上で(当該業務に内在する有害因子を受ける危険にさらされている状態にあれば、業務遂行性が認められます)、業務と発病との因果関係業務起因性の有無が問題となるため、「業務上の負傷障害死亡)」の場合と「業務上の疾病」の場合との判断方法は分けて考える必要もあります。

 

即ち、職業性の疾病の場合、長期間にわたる業務が原因となっており、発病の原因となった有害作用の加わった時点が明確でないこと等から、被災労働者側が業務起因性を立証することが困難なことが多いです。

そこで、労働者保護の見地より、医学上、一定の業務と疾病との間の因果関係が明確になっている場合を類型化し、かかる類型に該当する場合に、一応、業務起因性を推定することとしています。

この場合、業務遂行性の問題は業務起因性の問題の中に解消されていることになります。  

 

(二)業務起因性

次に、業務起因性は、当該業務と傷病等との間に相当因果関係がある場合に認められます。

換言しますと、業務に内在(ないし随伴する危険が現実化したものと経験則上認められることです。事業主の支配下にある状態に内在する危険が現実化したことと表現することもできます。

 

「相当因果関係」とは、当該業務と当該傷病等との間に因果関係が存在すると経験則上認められることをいいます。

この相当因果関係という表現は、(本来は、刑法や民法の不法行為における因果関係について使用されるものですが)業務起因性において、判例も使用する表現です。

 

 

【条文】

第7条

1.この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。

 

一 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付

 

二 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関する保険給付

 

三 二次健康診断等給付

 

〔第2項以下は、省略(全文は、こちらです)。〕

 

 

  

・【過去問 平成26年問7D】

設問:

労働者が業務に起因して負傷又は疾病を生じた場合に該当すると認められるためには、業務と負傷又は疾病との間に相当因果関係があることが必要である。

 

解答:

正しいです。

なお、相当因果関係とは、上述の通り、当該業務と当該傷病等との間に因果関係が存在すると経験則上認められることをいいます。

もっとも、業務に内在する危険が現実化したものと経験則上認められることと言い換えられていることも多いです。

 

 

以下、「業務上の負傷、障害又は死亡」と「業務上の疾病」に大きく分けて考えます。前述のように、両者は判断方法が異なる面があるからです。  

 

 

第2款 業務上の負傷(障害、死亡)

業務上の負傷、障害、死亡のケースです。

 

 

§1 業務上の負傷(死亡)

まず、業務上の負傷、死亡について見ます。業務上の障害は、少し特殊ですので、§2でみます。以下、負傷と死亡を併せて、負傷と記載したり災害と記載することもあります。

 

労働者の負傷が業務上の負傷(業務上の事由による負傷)と認定されるためには、前述の通り、業務遂行性(労働者が事業主の支配下にあったこと)と業務起因性(当該業務と負傷との間に相当因果関係があること)が必要です。

 

 

〔Ⅰ〕類型化

いかなる場合に業務災害と認められるかは、具体的事案ごとに検討する必要がありますが、具体的事案を大まかに類型化して押さえておくと、思考経済上有用です(ただし、あくまで大まかな類型ですので、あまり硬直化して考えないで下さい)。

 

以下、業務遂行性と業務起因性に分けて、大まかな類型化(考え方)を示しておきます。

 

〔1〕業務遂行性

◆業務遂行性が認められる場合類型化しますと、以下の(A)~(C)のようになります。

 

(A)事業主の支配下にあり、かつ、その管理下(施設管理下)にあり、業務に従事している場合。

つまり、事業場の施設内で業務に従事しているケースです。

 

例:作業中作業の準備中・後始末中待機時間中など。

 

 

(B)事業主の支配下にあり、かつ、その管理下にあるが、業務には従事していない場合。

つまり、業務には従事していないが、事業場の施設内にはいるケースです。

 

例:休憩時間中始業前・始業後の自由時間中事業場内の食堂で食事中、送迎バスなど事業主の提供する通勤専用交通機関の利用中など。

 

例えば、休憩時間中は、業務に直接は従事していませんが、休憩終了後の就業が予定されているのであり、事業主からの拘束を完全に離脱しているわけではありません。

そこで、休憩時間中に生じた災害についても、業務との関連性の程度や事業主の関与の程度・態様、拘束性・強制性の程度などを考慮して、事業主の支配下にある状態と認められる場合は、業務遂行性が肯定されると解されます。

そして、労働者が事業場の施設内にいる場合の休憩時間中の災害については、事業主の支配下及び管理下(施設管理下)にある状態として、一般的には、業務遂行性を肯定しやすいといえます。

ただし、このように休憩時間において一般に業務遂行性が認められる場合であっても、後述の通り、休憩時間中は自由行動が原則として認められていますから、休憩時間中の個々の行為は、通常、私的行為であり、当該私的行為に起因する災害は業務起因性が認められないのが基本であると解されています。

 

 

(C)事業主の支配下にあるが、その管理を離れて業務に従事している場合

つまり、事業場の施設外で、業務に従事しているケースです。

 

例:出張中事業場外労働中(外勤中、公用外出中等)など。

 

この(C)の場合は、例えば、出張先での宿泊中の事故など、作業自体は行っていないときであっても、業務のために出張先での宿泊といった状態に置かれており、出張から自由に離脱できるわけではないことを考えますと、出張過程の全般について事業主の支配下にある状態と考えて、広く業務遂行性が認められると解されます。

 

 

次に、業務起因性を類型化します。

 

〔2〕業務起因性

◆以上の業務遂行性が認められる負傷等について、業務起因性はおおまかには次のように判断されます。

 

一 上記(A)こちら)の場合(事業場の施設内で業務に従事しているケース)は、業務中の災害ですから、原則として、業務起因性(当該業務と災害との間に相当因果関係があること)も認められます

ただし災害の発生業務外の原因に起因していると認められる場合は、業務起因性は否定されます。

例えば、次のような場合です。

 

(a)労働者の業務逸脱行為恣意的行為)や私的行為により災害が発生した場合

 

例:規律違反行為(飲酒運転等)など。

 

なお、この(a)の場合は、当該行為については業務遂行性が失われると考えることも可能であり、事案によってふさわしい構成を使い分ければ足りると考えます(ただし、行政解釈など、一般には、業務起因性の問題として構成しているといえます)。

 

 

(b)特殊例外的要因により災害が発生した場合

 

例:天災地変自然災害)や第三者の異常な行為の関与など。

 

 

これらの(a)及び(b)は、以下の二及び三の場合にも考慮されます。

 

 

二 上記(B)こちら)の場合(業務には従事していないが、事業場の施設内にはいるケース)、例えば休憩時間中の災害については、先に触れましたが、休憩時間中の個々の行為は、通常は、私的行為といえるため、このような被災労働者の私的行為により災害が生じた場合(休憩時間中に事業場の敷地内で同僚とサッカーをしていて負傷したようなケース)は、業務起因性(ないし業務遂行性自体)は認められないものと解されます。

 

ただし、災害が、事業場施設の不備・欠陥等により発生した場合就業中なら業務行為と認められるものにより発生した場合(例えば、用便等の生理的行為作業と関連がある必要行為・合理的行為等の際の災害の発生)には、業務遂行性及び業務起因性が肯定されることがあります

 

 

三 上記(C)こちら)の場合(事業場の施設外で、業務に従事しているケース)は、例えば、出張中事業場外労働の場合であり、労働者が危険にさらされる範囲・機会が広いことを考慮して、業務起因性は広く認められると解されています(例外は、上記(a)業務逸脱行為等や(b)天災地変等のケースとなります)。

 

 

(参考)

 

試験対策上は不要ですが、以下の事例を考える際に疑問を生じることがあるかもしれませんので、業務起因性について、若干、触れておきます。覚える必要ありません。

 

理論的には、業務起因性(相当因果関係)の判断は非常に難しいです。

労災保険法の災害補償制度は、もともと労基法の使用者の災害補償責任(無過失責任主義です)を基礎としたものです(労基法のこちら以下で学習しました)。

そこで、かかる無過失責任主義の見地から、労災保険制度における業務起因性(相当因果関係)の判断について、一般には、予見可能性の有無や程度は問題とならない(予見可能な事情のみを基礎として因果関係を判断するのではない)と解されています。

即ち、災害補償制度における相当因果関係は、結果発生に不可欠な条件となった一切の事情を基礎として事後的に(経験則上相当な因果関係であるかどうか)判断するものとされています(このように客観的事情を相当因果関係の判断の基礎とするという点では、刑法上の客観的相当因果関係説の考え方と一部共通する点があります)。

ただし、この考え方を徹底しますと、結果発生に不可欠な条件となった一切の事情を基礎として事後的に判断する以上、およそ業務遂行性が認められる状況で災害が発生したなら、経験則上、業務起因性も広く認められるということになりえます。

つまり、実際上は、相当因果関係説といっても、行為と結果との間に何らの関係があればよいという単なる条件説と変わらなくなる可能性があります。

ただ、この因果関係の無限定な拡張に重要な歯止めを与えている一つが、上記の(a)労働者の業務逸脱行為(恣意的行為)や私的行為により災害が発生したような場合に業務起因性を否定するという実務から展開された考え方だと思っています。

理屈としては、このような業務逸脱行為等の事情が存在する場合には、それらの事情も基礎とするなら、当該災害は当該業務に内在(随伴)する危険が現実化したものと経験則上は認められないと説明することになります。  

 

以下でも、なかなか理屈的にすっきりしない場面もありますが、とりあえず試験対策ですので、理屈面にはあまり深入りせずに、太字部分を中心にざっとお読み下さい(ちなみに、刑法上の因果関係についても、現在では、以前、学説上の主流であった相当因果関係説は支持されにくい状況になっています(危険の実現・現実化といった視点から考察される方向にあります)。刑法上の因果関係の判断と災害補償制度の因果関係の判断は異なるものではありますが、いずれにしましても、因果関係の問題の難しさがわかります)。

 

 

以下、具体的な事例を見ます。

 

※ 業務災害及び通勤災害の認定に関する問題については、少し前までは出題は少なかったのですが、近時出題が増加しています(後述の「業務上の疾病」に関する問題は、従来から、出題が多かったのですが、ここでは「業務上の疾病」以外の問題の出題傾向をみておきます)。

 

例えば、平成25年度の択一式において、通勤災害の認定に関する事例が散見され、平成26年度の択一式問1において業務災害の認定に関する事例について5肢の出題がありました。

また、平成27年度の択一式問3においても、業務災害の認定に関する問題が3肢出題されました。

さらに、平成28年度の択一式では、問2が業務災害、問3が通勤災害、問5は両者に関する問題となっており、業務災害・通勤災害の認定に関する問題のウエイトがかなり高くなっています。

平成29年度の択一式においても、問1の5肢が業務災害の認定に関する問題です。

ただし、平成30年度は、出題されませんでした。

 

不必要に細かく学習すべきではありませんが(際限がなくなります)、業務災害及び通勤災害の認定に関する問題は出題されるものという前提で学習した方がよさそうです。

試験対策としては、過去問の出題がある個所を中心に特徴的な通達の事例とその結論をイメージ的に頭に入れることが目標です。アンダーラインや太字になっている部分を中心にお読み下さい。

 

ちなみに、当サイトでは、事例の分析を筆者の個人的見解として詳しく記載していますが、あくまでも理解しやすくするための参考です(とはいっても、理屈的になかなかすっきり説明しにくいケースが少なくないです)。 

 

 

以下、業務上の負傷の具体例について、次のように分類してみていきます。

 

 

〇 業務上の負傷の類型:

  

〔1〕作業中

 

〔2〕作業の中断中

 

〔3〕作業に伴う必要又は合理的な行為

 

〔4〕作業に伴う準備行為又は後始末行為中

 

〔5〕緊急行為中

 

〔6〕休憩時間中

 

〔7〕事業場施設の利用中(就業時間外に発生した場合)

 

〔8〕出張中、事業場外労働中(以下、次のページ)

 

〔9〕通勤途上

 

〔10〕運動会、宴会、その他の行事

 

〔11〕療養中

 

〔12〕天災地変による災害

 

〔13〕他人の故意による災害

 

〔14〕自己の故意による災害

 

〔15〕その他の事由による災害

  

 

〔Ⅱ〕具体例

〔1〕作業中

作業中に発生した災害の場合は、通常は、業務遂行性及び業務起因性を満たし、業務災害と認定されます。

ただし、担当業務外の行為(であって、かつ、業務付随行為でもないような行為)に従事中の災害の場合は、「業務遂行性」が否定されることがあります。

また、当該災害の発生が業務外の原因に起因していると認められる場合(例えば、前記(こちら以下)の(a)労働者の業務逸脱行為恣意的行為)や私的行為による場合や(b)特殊・例外的要因により災害が発生した場合)には、「業務起因性」(ないし業務遂行性自体)が否定されることがあります。

 

・厚生労働省労働基準局編労災保険法コンメンタール7訂新版(以下、「厚労省コンメ」と略します)159頁によりますと、「作業中」の場合の業務上の負傷に係る業務災害の認定の判断要素として、おおむね次の事項を挙げています。

 

「(1)その災害が作業中に発生したものかどうか(必ずしも、所定労働時間中に所定就業場所で所定の作業をしていたかどうか、ということではない。)。

〔※ この(1)は、業務遂行性の問題といえます。〕

 

(ア)その行為が担当業務行為であるかどうか、業務に付随する行為であるかどうか、特別の業務命令による業務行為であるかどうか等。

〔※ 要するに、本来の業務との関連性の程度や使用者の関与の程度・態様、拘束性・強制性の程度などに着目したものと解されます。〕

 

(イ)その災害が作業を離脱している際に発生したものでないかどうか(私的行為中、業務放棄中等に発生したものでないかどうか)。

〔※ これも、本来の業務との関連性の程度等に着目したものといえます。〕

 

(2)その災害が業務に起因するものかどうか。

〔※ この(2)は、業務起因性の問題となります。〕

 

(a)その災害が業務外の原因によるものでないかどうか(恣意的行為、私的行為、業務逸脱行為、素因等、天災地変、その他業務と関係のない原因によるものでないかどうか。)。

 

(b)これらの業務外の原因が業務(業務行為、事業場施設の状況その他業務上の事情)と相まって発生したものかどうか。」

 

 

○ 通達に現れた事例として、次のようなものがあります。

 

 

一 業務災害と認定された場合

 

(一)ハブにかまれたケース

 

◆小型パイプが資材置き場に乱雑に荷下ろしされていたのを整理する作業に従事していた配管工である労働者が、草むらにもパイプが投げ込まれていないか探しに入ったところ、この地に多く生息するハブに噛まれて負傷したケース(【昭和27.9.6基収第3026号】)。 【過去問 平成5年】/【平成27年問3C(後掲)】

 

➡ 業務災害と認定されました。

配管工が、その作業に使用するパイプを整理していた際の災害ですから、業務の従事中であり、業務遂行性は認められます。

業務起因性については、ハブに噛まれるというのは特殊なケースとはいえ、例外的要因である業務外の原因によって災害が発生した場合として業務起因性が否定されないかが問題です。

しかし、この地にはハブが多く生息しているという事情があったのであり、かかる事情を基礎として考えるなら、本件草むらで作業をしてハブに噛まれることは、当該草むらでの業務に内在する危険が現実化したものと経験則上判断でき、業務起因性も肯定できることになります。

 

例えば、通常はハブは存在しないであろう東京などで、上記と同様に、作業中に草むらにいたハブにかまれて負傷した場合に、業務起因性が認められるのかは問題です。

業務起因性において、「事前に(一般に)予測できたのか」(事前に予見可能であった事情を基礎として判断する)といったような判断方法をとりますと、東京のハブのケースなら、ハブの存在は通常予測できないとして、業務起因性が認められないことになり得ます。

ただ、実務は、そのようには考えていないといえます。先に少し触れましたが、業務起因性は、結果発生に不可欠な条件となった一切の事情を基礎として事後的に(経験則上相当な因果関係であるかどうか)判断するものとされています。

東京のハブのケースでも、東京の草むらにハブがいたという事情を事後的に考慮して、経験則上相当な因果関係があるかどうかを判断しますから、草むらにハブがいたなら、そこで作業する労働者がかまれて負傷することも通常起こり得ることと判断でき、基本的には業務起因性が認められるということになるのでしょう。

 

(ただし、事後的にすべての事情を考慮するという判断方法をとる場合は、本来は、「通常は東京にはハブは存在しない」という「客観的事情」も事後的に考慮すべきとなるはずです。

しかし、そうなりますと、結局は、事前に予見可能であった事情も基礎として因果関係を判断するという考え方と結論が変わらなくなる可能性があります(この予見可能な事情を重視して因果関係を判断しますと、本例の東京のハブのケースで業務起因性が否定され得るように、場合によっては、被災労働者の保護に欠けるケースがありえます)。

そこで、実務は、「結果発生に不可欠な条件となった事情」を事後的に考慮するという構成をとっているのだと思われます(従って、「通常は東京にはハブは存在しない」という事情は、考慮しないことになります)。

(もっとも、当該事情の異常性の程度等も考慮する必要はあるといえます。この点は、現状では、業務逸脱行為等や天災地変等といった形では考慮されていることになります。)

 

余り深入りせず、さしあたりは、上記の通達の事案を押さえるに留めるのがよさそうです(次のページにおいて、より微妙なケースが増えてきます)。)

 

 

※ この(一)のハブにかまれた事案と類似のケースとして、土木作業員が作業中に蜂に刺されショック死した事案があり、業務災害と認定されました(【昭和25.10.27基収第2693号】)。

当日、数匹の蜂が作業場付近を飛び回っており、労働者・使用者とも、どこかに巣があるとの認識があったそうです。

このケースも、当該作業現場の危険性が考慮されていることになります。 

なお、本件は、【平成29年問1E(後掲)】で出題されました。

 

 

〇過去問:

 

・【平成27年問3C】

設問:

配管工が、早朝に、前夜運搬されてきた小型パイプが事業場の資材置場に乱雑に荷下ろしされていたためそれを整理していた際、材料が小型のため付近の草むらに投げ込まれていないかと草むらに探しに行ったところ、その草むらの中に棲息していた毒蛇に足を咬まれて負傷した場合、業務上の負傷に該当する。

 

解答:

前記の(一)のハブにかまれたケースがベースになっています。

この地に多く生息しているハブに咬まれたといった事情は記載されていませんが、草むらに毒蛇が棲息しているという事情を基礎として事後的に危険性を判断するなら、作業中にその毒蛇に咬まれて負傷することは十分あり得るということでしょう。よって、設問は正しいです。

 

 

・【平成29年問1E】

設問:

川の護岸築堤工事現場で土砂の切取り作業をしていた労働者が、土蜂に足を刺され、そのショックで死亡した。蜂の巣は、土砂の切取り面先約30センチメートル程度の土の中にあったことが後でわかり、当日は数匹の蜂が付近を飛び回っており、労働者も使用者もどこかに巣があるのだろうと思っていた。この場合、業務上として取り扱われる。

 

解答:

先に触れましたように、本件は、業務上として取り扱われます。

即ち、【昭和25.10.27基収第2693号】は、要旨、本件は、危険な作業条件によって生じたものと認められるから、土砂切取り作業に起因する業務上の死亡であると認定しました。 

 

設問では、工事中の災害ですから、業務遂行性は肯定できます。

また、業務起因性については、当該工事現場で数匹の蜂が付近を飛び回っており、その蜂に刺されたのですから、当該業務に内在する危険が実現されたと経験則上判断でき、業務起因性も肯定できることになります 。

 

 

(二)建設作業中の突風による建物崩壊によって負傷したケース

 

◆建設作業中の突風による建物崩壊によって負傷したケース(【昭和26.9.27基災収第1798号】)

 

➡ 業務災害と認定されました。

業務に従事中の災害ですから、業務遂行性は認められます。

業務起因性については、突風という一種の天災地変(自然災害)であり、業務外の原因により災害が発生したとして業務起因性が否定されないか問題です。 

 

本件では、建物崩壊自体は一時的な突風によるものだったらしいですが、当日は風が強く、契約期限が近かったため作業を継続したという事情がありました。

すると、高所で作業するという業務の性質上、強風による災害を被りやすい事情があり、そのような中、作業を強行したのですから、かかる業務上の事情とあいまって突風により災害が発生したものとして、業務に内在する危険が現実化して災害が発生したものと解され、業務起因性が認められるのでしょう(後述の〔12〕の天災地変の個所(こちら)をご参照下さい)。 

 

 

(三)連結器に飛び乗ろうとした車掌が転落死したケース

 

◆電車の発車に際し、乗客が満員のため、やむなく連結機に飛び乗ろうとして車掌が転落死したケース(駅長の黙認もあった)。(【昭和25.5.11基収第1391号】)

 

➡ 業務災害と認定されました。

業務自体には従事していますから、一応、業務遂行性は認められます。

業務起因性については、連結機に搭乗することは禁止されていたとされ、車掌が連結機に飛び乗ろうとする行為は、業務を逸脱する行為として、業務から起因した災害とはいえないのかが問題です。

ただ、当時の鉄道の混雑状況(連結機への飛び乗りも稀なことではなかったようです)や駅長も連結機への飛び乗りを黙認していたようであること、緊急下における行為であることなどから、業務逸脱性が著しいとまでは認められず、業務起因性も認められたのでしょう。

 

※ なお、被災労働者重大な過失(以下、「重過失」ということがあります)があっても業務遂行性ないし業務起因性認められます

なぜなら、第12条の2の2第2項(下記。後にこちら以下で学習します)は、相対的支給制限(保険給付の全部又は一部が支給されないことがある場合)の事由として、労働者に故意や重過失がある場合を挙げており、従って、労働者に重過失があっても保険給付が行われる場合があることを前提としているからです。

ちなみに、労基法の災害補償においては、労働者の重過失による傷病の場合に、当該過失につき行政官庁の認定を受けたときは、休業補償又は障害補償は免責されます(労基法第78条(労基法のパスワード))。

この場合も、重過失があっても、休業補償又は障害補償の要件は満たしていることになります。

 

 

【参考条文】

第12条の2の2

1.労働者が、故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となつた事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない。〔=絶対的支給制限〕

 

2.労働者が故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、負傷、疾病、障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となつた事故を生じさせ、又は負傷、疾病若しくは障害の程度を増進させ、若しくはその回復を妨げたときは、政府は、保険給付の全部又は一部を行わないことができる。〔=相対的支給制限〕

 

 

【労基法】

労基法第78条(休業補償及び障害補償の例外)

労働者が重大な過失によつて業務上負傷し、又は疾病にかかり、且つ使用者がその過失について行政官庁〔=所轄労働基準監督署長〕の認定を受けた場合においては、休業補償又は障害補償を行わなくてもよい。

   

 

(四)事業主による特命があるケース

 

例えば、事業主の命令を受けて、私用である台風被害対策のための枝おろし作業に従事していた雑役夫が感電死した事案(【昭和33.1.25基収第9641号】)。

 

➡ 業務災害と認定されました。

被災労働者は、本来の業務を行っているわけではないですが、事業主による特命を受けて作業に従事しているのですから、事業主の支配下にある状態といえ、業務遂行性を認めるべきと解されます。

そして、かかる支配下にある状態で生じた災害ですから、特段の事情がなければ、業務起因性も認められることになります。

 

 

・なお、類似事案として、事業主から、会社の番犬を動物病院に連れて診察を受けさせる旨を命じられた見習い作業員が、無免許でオート三輪に犬を乗せて帰宅する際に事故を起こし即死したケースがあります(無免許運転は事業主から禁止されていました)。

 

➡ 業務災害と認定されました(【昭和28.9.24基収第4066号】)。

本件も事業主による特命がある場合であり、業務遂行性は認められますが、無免許運転という逸脱行為がある点が問題です。ただ、事業主の特命がある点が重視されたのでしょう。

 

・また、港湾の改良工事に従事中、主任から、海中に転落した取引先の自動車の引揚げ作業を命令された労働者がその引き揚げ作業中に負傷したケースについても、業務災害と認められています(【昭和40.4.1 39基収第8453号】)。

 

当該自動車の引揚げ作業自体は、港湾の改良工事と関係がありませんが、長年の取引関係にある取引先から転落自動車の引揚げを依頼されたことから、当該引揚げ作業は、円滑に事業を達成するために必要なものとされました。

業務の範囲内にあると解された(業務遂行性が認められた)ということでしょう。  

 

 

二 業務災害と認定されなかった場合

 

(一)泥酔した助手がトラックから転落死したケース

 

◆建物の落成式に出席後、泥酔した助手がトラックから転落死したケース(【昭和24.7.15基災収第3845号】)。

 

➡ 業務災害と認定されませんでした。

 

落成式後にトラックに乗車して事業場ないし次の現場に向かうことは業務といえますが、業務起因性について、泥酔している点は業務を逸脱しているといえること、また、泥酔によりトラックから転落することも異常性が強いといえることから、業務起因性が否定されることになったのでしょう。

 

(二)バッドで打った小石が自動車運転手に当たったケース

 

◆児童がバットで打った小石により、自動車運転中の運転手が負傷したケース(【昭和31.3.26基収第822号】)。

 

➡ 業務災害と認定されませんでした。

業務のための自動車運転は、業務遂行性が認められます。

しかし、業務起因性について、バットで打った小石が運転手にあたるという事態は、例外性・異常性が強いことから、自動車運転という業務に内在する危険が現実化したものとは評価できないとしたのでしょう。 

 

 

(三)トラックを運転させたケース

 

◆顔見知りの他人の興味に応じて砂利トラックを運転させてトラック運転手が負傷したケース(【昭和26.4.13基収第1497号】)。

 

➡ 次の過去問を例に検討してみます。

 

・【過去問 平成26年問1B】

設問:

自動車運転手Aは、道路工事現場に砂利を運搬するよう命ぜられ、その作業に従事していた。砂利を敷き終わり、Aが立ち話をしていたところ、顔見知りのBが来て、ちょっと運転をやらせてくれと頼んで運転台に乗り、運転を続けたが、Aは黙認していた。Bが運転している際、Aは車のステップ台に乗っていたが、Bの不熟練のために電柱に衝突しそうになったので、とっさにAは飛び降りようとしたが、そのまま道路の外側にはね飛ばされて負傷した。このAの災害はAの職務逸脱によって発生したものであるため、業務外とされている。

 

解答:

自動車運転手Aが、まだ作業中であったとしますと、一応、業務遂行性は認められます(また、作業中断中あるいは作業終了後であっても、後述のように作業に付随する行為のような場合には、業務遂行性が認められます。ここでは、作業中であると仮定しておきます)。

ただ、作業中に、業務と無関係に、顔見知りのBに対してAの業務用の車を運転することを黙認して運転させる行為は、Aの本来の業務ではなく、また、Aの業務に必要又は合理的な行為ともいえず、Aの業務逸脱行為といえます。

そこで、業務起因性(ないし業務遂行性自体)が否定され、業務災害とは認められないと解されます。よって、設問は正しいです。 

 

・他方、荷物配達のため運転中の運転手(18歳)が、道路工事現場において、作業員から通行止めを指示され戻ろうとしたところ、当該作業員から「自分が依頼して通してやる」として、半ば強制的に運転席に入り込まれ、やむなく運転させ、田に転落し負傷したケースにおいては、業務災害と認定されています(【昭和30.5.21基収第457号】)。

当該運転手が若手であり、運転を拒否できない事情があったとされ、当該運転手の業務逸脱行為性が弱いと評価されたものと解されます。 

 

 

(四)解雇無効の訴訟中に被解雇者が強行就労し、作業中に負傷したケース

 

◆炭鉱関係の事業の人員整理により解雇通知がなされ、労働組合がこれを争い、使用者は被解雇者の事業場立入禁止の仮処分の申請を行ったところ(労働組合も解雇無効確認訴訟の提起等をしています)、労働組合が裁判所の決定を待たずに、労働者を就労させ、就業中に負傷事故が発生したケース。

 

➡ 業務災害と認定されませんでした(【昭和28.12.18基収第4466号】)。

本件被災労働者は、使用者の立入禁止を排して就労を強行したものであるため、雇用関係の存否を論ずるまでもなく、業務上の負傷と解することができないと判断されました。

使用者の立入禁止を排して強行された就労は、仮に解雇が無効で労働契約が有効であったとしても、労働契約の本旨に基づくものではないとして、「業務」に該当しないとしたもの(業務遂行性の否定)と思われます。 

 

 

本問は、平成29年の択一式に次のように出題されました。

 

・【過去問 平成29年問1D】

設問:

会社が人員整理のため、指名解雇通知を行い、労働組合はこれを争い、使用者は裁判所に被解雇者の事業場立入禁止の仮処分申請を行い、労働組合は裁判所に協議約款違反による無効確認訴訟を提起し、併せて被解雇者の身分保全の仮処分を申請していたところ、労働組合は裁判所の決定を待たずに被解雇者らを就労させ、作業中に負傷事故が発生した。この場合、業務外として取り扱われる。

 

解答:

前記の通り、設問は正しいです。  

 

 

三 その他

 

〇 基礎疾患等を有していた場合

 

労働者が基礎疾患等を有していたため、作業中の災害が生じる場合があります。

 

例えば、次の平成28年度の択一式の問題を例に見てみます。

 

・【過去問 平成28年問2E】

設問:

以前にも退勤時に約10分間意識を失ったことのある労働者が、工場の中の2℃ の場所で作業している合間に暖を採るためストーブに近寄り、急な温度変化のために貧血を起こしてストーブに倒れ込み火傷により死亡した場合、業務上の死亡と認められる。

 

解答:

結論としては、業務災害と認められました(【昭和38.9.30基収第2868号】)。

 

本件は、作業中(ないし作業の一時中断中)の災害ですが、当該労働者が「以前にも退勤時に約10分間意識を失ったことのある」という基礎疾患ないし素因(遺伝的、体質的に特定の疾病にかかりやすい状態)を有している場合といえ、いわば特殊・例外的な要因が関与しているとして業務起因性が否定されないかが問題です。

ただ、この事案の場合、そもそも寒冷な場所における作業という作業環境上の過酷な事情が存在しており、このような作業環境が大きく影響して基礎疾患と相まって死亡という結果を生じたものといえそうですから、基礎疾患の特殊性を重視すべきではないものとして、業務災害と認定されたのでしょう。

 

 

以上、「作業中」の類型の事案でした。次に、「作業の中断中」の類型です。

 

 

〔2〕作業の中断中

作業の中断中に災害が発生した場合において、例えば、生理的行為用便飲水など)や反射的行為(風で飛ばされた帽子を拾おうとする行為など)などにより一時的に業務から離れて作業を中断したときは、これらの行為は業務行為そのものではないですが、業務に付随する行為として業務遂行性が認められ、かかる行為に基づき発生した災害については、通常、業務起因性が認められるものと解されます。

ただし、当該行為が当該労働者の私的行為、恣意的行為などと解されるような場合は、業務起因性(ないし業務遂行性自体)が否定されます。

 

要するに、生理的行為や反射的行為は、業務に通常随伴する行為であり、特段の事情がなければ、業務災害と認められることになります。

 

○ 通達に現れた事例として、以下のようなものがあります。

 

 

一 業務災害と認定された場合

 

(一)作業を中断し水を飲みに行く際の災害

 

◆作業時間中に立入禁止区域にある消火栓の水を飲もうとしてドック内に転落して死亡したケース(当日の気温は32度で、作業場所である鉄船内部は35度以上あり、近くに給水施設がなかった)(【昭和23.9.28基収第2997号】)。

 

➡ 業務災害と認定されました。

上記の通り、作業を一時中断して飲水する行為は、業務付随行為として業務遂行性が認められますが、本件では、立入禁止区域にある消火栓の水を飲もうとして死亡しているケースであるため、恣意的行為として、業務遂行性ないし業務起因性が否定されないかが問題です。

 

ただ、本件では、作業場所が高温であり、給水施設がなかったという事情があり、かかる事情の下では、労働者が近辺で水を飲もうとするのはやむを得ないことといえ、本件の飲水行為も業務付随行為の範囲内にあるものと解すべきであり、これに起因した転落死も業務起因性が認められるとできるのでしょう。

 

 

・類似の事案です。

例えば、作業時間中にのどが渇き、職場備え付けのヤカンの湯を飲もうとしたところ、湯がなかったため、構内の炊事場に行って湯を飲み、帰りがけに構内通路の交差点でトラックにひかれ負傷したケースにおいても、業務災害と認定されています(【昭和26.9.6基災収第2455号】)。

許可を得ないで炊事場に行ったとしても、そのような飲水行為が禁止されているものでない限り、業務付随行為とみるべきとされます。

 

・また、鉄道宿舎の工事使用人が、作業中に用便に行き、帰路に転倒等により負傷したケースについても、業務災害と認定されています(付近の作業所付設の便所を使用せず、鉄道線路を超えて15メートル先にある駅換車場内の便所を利用していますが、この駅換車場内の便所の利用は、事業主から黙認されていました)。

【昭和24.11.22基収第3759号】 

 

 

(二)トラックの荷台のシートのかけ直し中に強風で飛ばされた帽子を追う際の災害

 

◆トラックによる荷物の運送中に、国道上で荷台のシートがめくれたので、トラックを停車して運転助手がシートをかけ直したところ、強風が吹いてその防寒帽が吹き飛ばされたため、とっさにその帽子を追って走り出した際、前方から来た自動車に跳ね飛ばされて死亡したケース(【昭和25.5.8基収第1006号】)。【過去問 平成7年】

 

➡ 業務災害と認定されました。

一時的に業務を中断していることにはなりますが、風により飛ばされた帽子をとっさに取りに行く行為は、反射的なものであり、当該労働者としては避けられないもの、ないしやむを得ないものですから、業務付随行為として、業務遂行性が認められ、当該行為に起因する災害は業務起因性が認められると解したものといえます。 

 

 

(三)手待ち時間に自動車前方で仮眠している際の災害

 

◆運転助手が自動車前方の日蔭に降りて、手待時間仮眠をしていたところ、事情を知らない運転手が当該自動車を動かしたためひかれて死亡したケース(【昭和25.11.20基収第2970号】)。

 

➡ 業務災害と認定されました。

事案は、地区の水路が埋没したため、被災労働者等が使用される運送会社が水路の浚せつ工事を勤労奉仕として行うこととなり、当該労働者等が土砂の運搬のため派遣されたものです。

地区の人たちがスコップ等で土砂を投げ捨てている間、運転手は運転台で仮眠し、運転助手は自動車前方の日陰で休息していました。

地区の人たちの作業が終了したことに気づいた運転手は、助手が荷台に乗っているものと思い、自動車を動かし災害が生じてしまいました。

 

本件の運転手及び助手の仮眠は、業務を放棄したものではなく、手待時間と認められました。

手待時間は、使用者の指示があったり手配が整ったりすれば直ちに作業に従事しなければならない時間であり、一般に、業務遂行性が認められます。

本件における仮眠中は、作業を中断していることになりますが、準備・手配が整ったりすれば直ちに作業に従事しなければならない時間であったこと(従って、休憩時間とは異なります)、また、仮眠は生理的行為であり、手待時間中の仮眠も通常は許容される範囲内の行為であるといえますから、手待時間中の仮眠も業務付随行為として業務遂行性が認められるものと解されます。

もっとも、本件では、自動車前方に寝ていたものですから、運転助手及び運転手の不注意に起因している災害とはいえますが、本件の具体的事情を考慮して異常性は著しくなかったものと認められて、業務起因性も否定されなかったのでしょう。  

 

 

〔3〕作業に伴う必要又は合理的な行為中

労働者の担当業務行為ではないが私的行為ともいえないような行為による災害の場合は、当該行為が必要性又は合理性を認められるとき、あるいは、通常ありがちなささいな行為であるときに、当該行為は業務行為又は業務付随行為と認められ、これに起因する災害について業務起因性を判断すべきとされます(なお、必要性は、当該労働者の担当業務の遂行上必要な行為であるかどうかにより判断し、合理性は、当該業務を担当する労働者として合理的な行為であるかどうかにより判断するものとされます)。

 

○ 通達に現れた事例として、次のようなものがあります。

 

 

一 業務災害と認定された場合

 

(一)定休日に自動車修理工が無免許で試運転した際の災害

 

◆事業場の定休日に日直として出勤した自動車修理工が、修理途中であった車の修理を完了させたが、定休日であるため運転手が不在で試運転ができなかったことから、日直職員の許可を得て無免許で試運転をしていたところ、道路下に転落して死亡したケース(【昭和23.1.15基発第51号】)。

 

➡ 業務災害と認定されました。

本件修理工の試運転は、修理工の本来的業務ではなかったのですが、一般には、修理業務に必要で合理的な行為といえますから、業務行為の一環といえ、業務遂行性が認められるものと解されます。

ただし、本件では、無免許者が試運転を行う行為は、合理的な行為とはいえない、あるいは、業務逸脱行為にあたるとして、業務遂行性ないし業務起因性が否定されないかが問題です。

が、本件では、定休日において運転手が不在であったこと、職員の許可を受けていたことという事情があり、不合理性ないし業務の逸脱性が著しいとまでは認めずに、業務災害と認めたものなのでしょう。 

 

 

(二)製材工が、電源の修理のため工場内の電柱に上りトランスを修理中の災害

 

◆製材工が、機械の電源が入らないため工場内の電柱に登りトランスの修理をしていたところ、感電して墜落死したケース(当該製材工には、電気設備の修理経験がありました)(【昭和23.12.17基災発第243号】)。

 

➡ 業務災害と認定されました。

本件製材工のトランスの修理は、その本来的業務ではないのですが、作業を行うためトランスの修理は必要性が認められるといえ、また、工場内にあるトランスの修理であり、当該製材工に修理経験もあったことから、一応、合理性も否定できず、業務付随行為として業務遂行性を認めたものなのでしょう。 

 

 

(三)自動車運転助手が、積み荷のために切断された電線を修理する際に感電死したケース

 

◆自動車運転助手が、積み荷のために切断された電線を修理する際に感電死したケース。電線は200ボルトもあったが、電線を切ったら継いでいくように事前に当該村の地区民から注意されていたもの(【昭和26.12.13基収第5224号】)。

 

➡ 業務災害と認定されました。

本件運転助手の電線の修理は、その本来的業務ではないのですが、自分たちの運転業務により惹起した電線の切断のための修理であること、緊急性もあることから、本件修理行為の必要性が認められ、業務付随行為と認めたのでしょう。

 

もっとも、200ボルトもある電線を電線業者でない者が修理するというのは、合理性を欠く、ないし業務逸脱行為にあたるとして、業務遂行性ないし業務起因性が否定されないかは問題です。

ただ、本件では、たまたま当該地区民が総出で当該道路の炭殻敷き作業をしており、当該地区民から、電線を切断した場合に修理するように事前に注意されていたという事情もありますので、合理性を否定されること等もなかったのでしょう(なお、事業主から、電線切断の際に修理するよう命令されていた場合は、特命(特別の業務上の命令)がある場合として、電線の修理も本来的業務にあたると解されます)。 

 

 

(四)作業上必要な私物の眼鏡を工場の門まで受け取りに行く途中の災害

 

◆作業上必要な私物の眼鏡を工場の門まで受け取りに行く途中に事故にあったケース(【昭和32.7.20基収第3615号】)。

 

➡ 業務災害と認定されました。

本件の私物の眼鏡を受け取りに行く行為は、業務行為自体ではありません(また、作業の途中に行う場合は、既述の(二)「作業の中断中」(こちら以下)の問題となりますが、本件では、生理的行為や反射的行為のパターンそのものではありません(もっとも、実質的には同様の問題といえますが))。

この点は、眼鏡は業務のために不可欠であるといえ、従って、眼鏡を工場の門まで受け取りに行く行為は、必要性及び合理性がある行為として業務付随行為とでき、これに伴う事故も業務起因性が認められるということでしょう。

 

 

・【過去問 平成27年問3A】

設問:

勤務時間中に、作業に必要な私物の眼鏡を自宅に忘れた労働者が、上司の了解を得て、家人が届てくれた眼鏡を工場の門まで自転車で受け取りに行く途中で、運転を誤り、転落して負傷した場合、業務上の負傷に該当する。

 

解答:

上記の(四)のケースがベースとなっている出題です。

眼鏡は業務のために不可欠であり、従って、眼鏡を工場の門まで受け取りに行く行為は、必要性及び合理性がある行為として業務付随行為とできます。

また、設問の場合、上司の了解も得ており、業務逸脱行為等と認められる事情もないことから、自転車で受け取りに行く途中の事故も業務起因性が認められるということでしょう。よって、設問は正しいです。   

 

 

(五)運転未熟を見かねて交代運転し転落死したケース

 

平成29年の択一式をもとに見ます。

 

・【過去問 平成29年問1B】

設問:

A会社の大型トラックを運転して会社の荷物を運んでいた労働者Bは、Cの運転するD会社のトラックと出会ったが、道路の幅が狭くトラックの擦れ違いが不可能であったため、D会社のトラックはその後方の待避所へ後退するため約20メートルバックしたところで停止し、徐行に相当困難な様子であった。これを見かねたBが、Cに代わって運転台に乗り、後退しようとしたが運転を誤り、道路から断崖を墜落し即死した場合、業務上として取り扱われる。

解答:

労働者Bが、対向車を代わって運転することは、Bの本来の業務ではありませんが、荷物を運送中に擦れ違うことができなくなり、かつ、対向車の運転手Cの運転未熟に見かねて代わって運転したものです。

すると、Bの運転行為は、Bの運転業務のために必要又は合理的な範囲内の行為として、業務付随行為といえ、当該行為に起因した本件死亡は、業務災害と認められると解されます。

 

【昭和31.3.31基収第5597号】も、要旨、本件行為は、被災者の本来の業務そのものではないが、自己の運転業務遂行上必要又は合理的な行為の域を超えるものとは認められないから、その行為に起因する本件死亡は、被災者の運転業務に起因するものとして業務上と解するべきである、としています。

 

以上より、設問は正しいです。

 

 

二 業務災害と認定されなかった場合

 

(一)運送会社の労働者が、車検場で検査官の煙突の取り外し作業を手伝う際の災害

 

◆運送会社の車両整備員が、車検のため検査場に行ったところ、検査官が昼休みに検査場のストーブの煙突の取り外し作業をしていたが難渋していたのを見て、木に登り手伝っている際転落死したケース(【昭和32.9.17基収第4722号】)。【過去問 平成7年】

 

➡ 業務災害と認定されませんでした。

検査場の煙突の取り外し作業は、本件車両整備員の車検の受検のための本来的業務ではありません。そして、当該作業は、車検の受検のために必要性がある行為ともいえず、また、合理性がある行為とも認められないということになり、よって、本件行為は業務遂行性ないし業務起因性が認められなかったものと解されます。  

 

 

(二)電気修理工が、他の事業の顔見知りの労働者の作業を個人的な善意で手伝っている際に転落死したケース

 

◆電気修理工が、他の事業の顔見知りの労働者の作業を個人的な善意で手伝っている際に転落死したケース(【昭和23.6.24基収第2008号】)。

 

➡ 業務災害と認定されませんでした。

本件作業は、電気修理工の本来的業務ではありません。そして、他の事業に係る作業であること、個人的な善意で手伝っていることからは、本件作業が電気修理工の業務にとって必要性があるとはいえず、私的行為に近いものととらえて、業務遂行性ないし業務起因性を否定したのでしょう。 

 

 

〔4〕作業に伴う準備行為又は後始末行為中

作業に伴う準備行為又は後始末行為は、本来の業務行為自体ではありませんが、一般には、業務に関連した必要性又は合理性がある行為であり、業務行為に通常又は当然に付随する行為(業務行為の延長、業務行為との接続)として、業務行為性が認められ、これに起因した災害は業務起因性が認められることになります。

ただし、必要性・合理性が認められないような行為は、業務災害にはあたりません(単なる事業場施設の利用行為あるいは自由行動と解されます)。

 

 

一 業務災害と認定された場合

 

(一)日雇労働者が作業終了後、事務所に戻るため鉄道経路上を歩いていた途中の災害

 

◆日雇労働者が作業終了後、作業用具の返還と賃金の受領のため、現場から事務所に戻るため鉄道経路上を歩いていた途中で転落して溺死したケース(【昭和28.11.14基収第5088号】)。

 

➡ 業務災害と認定されました。

現場で作業する日雇労働者が、作業終了後に作業用具の返還と賃金の受領のため事務所に戻る行為は、業務行為に当然付随する行為といえますから、業務遂行性が認められ、これに起因した災害は業務起因性も認められます(なお、当日は酷暑であり、涼しく距離も近くなるため、鉄道線路上を歩いていたとされ、付近の住民も常時線路上を通行していたとされます。

このような事情から、鉄道線路上の歩行であっても、業務逸脱性は著しくないととらえたのでしょう)。 

 

 

(二)勤務終了後に会社の構内の階段から転落死したケース

 

◆勤務終了後に会社の構内の階段から転落死したようなケースも、帰宅のために勤務終了後に会社内を移動する行為は、業務行為に当然付随する行為として業務災害と認められます。

この場合は、どこから通勤災害になるのかが問題ですが、事業場の施設内事業主の支配下にあるものとして業務災害の対象となるものと解されます。

 

例えば、退勤時にタイムカードを打刻したあと、事業場施設内の階段において転倒事故を起こしたケースは、事業主の支配管理下において発生した事故であるので、業務災害とされ(【昭和49.4.9基収第314号】)、また、会社が入居している雑居ビルの玄関口での負傷事故についても通勤災害ではないとされています(不特定多数の通行を予定した場所での災害ではなく、事業主の支配管理下における災害とされます)。(詳細は、通勤災害の個所(こちら以下)で学習します。)

 

 

・【過去問 平成26年問1C】

設問:

事業場施設内における業務に就くための出勤又は業務を終えた後の退勤で「業務」と接続しているものは、業務行為そのものではないが、業務に通常付随する準備後始末行為と認められている。したがって、その行為中の災害については、労働者の積極的な私的行為又は恣意行為によるものと認められず、加えて通常発生しうるような災害である場合は、業務上とされている。

 

解答:

正しいです。 

 

 

〔5〕緊急行為中

緊急行為について、従来の通達は、事業主の命令によるもののほか、事業主の命令がない場合においても、当該業務に従事している労働者として行うべきものについては、私的行為ではなく、業務として取り扱ってきました。

 

しかし、【平成21.7.23基発第0723第14号(緊急行為の取扱いについて)】の通達では、さらに緊急行為の業務上性広く解され、緊急行為が当該業務に従事している労働者として行うべきものでなくても一定の要件の下で業務として取り扱うことにされました。

これは、【名古屋地裁平成20.9.16】の判決を考慮したものです。

以下、この通達を引用します。

この通達は、近時の改正部分ですので、注意が必要でしたが、平成28年度の択一式に2肢出題されました(後掲)。

 

・【平成21.7.23基発第0723第14号】

 

〔引用開始(一部省略した記号等があります〕。〕

 

緊急行為の取扱いについて

 

標記の行為については、事業主の命令によるもののほか、事業主の命令がない場合においても、当該業務に従事している労働者として行うべきものについては、私的行為ではなく、業務として取り扱ってきたところであるが、平成20年9月16日名古屋地方裁判所において別紙の判決があったこと等を踏まえ、下記のとおり取り扱うこととしたので、遺漏なきを期されたい。

 

1 業務に従事している場合緊急行為を行ったとき

 

(1)事業主の命令がある場合

 

緊急行為は、同僚労働者等の救護、事業場施設の防護等当該業務に従事している労働者として行うべきものか否かにかかわらず、私的行為ではなく業務として取り扱う。

 

(2)事業主の命令がない場合

 

同僚労働者等の救護、事業場施設の防護等当該業務に従事している労働者として行うべきものについては、私的行為ではなく、業務として取り扱う。

〔※1 次が改正部分です。〕

また、次の1)~3)の3つの要件を全て満たす場合には、同僚労働者等の救護、事業場施設の防護等当該業務に従事している労働者として行うべきものか否かにかかわらず、私的行為ではなく、業務として取り扱う。

 

1)労働者が緊急行為を行った(行おうとした)際に発生した災害が、労働者が使用されている事業の業務に従事している際に被災する蓋然性が高い災害例えば運送事業の場合の交通事故等に当たること。

〔※ 上記は、業務との関連性を問題としていることになります。〕

 

2)当該災害に係る救出行為等の緊急行為を行うことが、業界団体等の行う講習の内容等から、職務上要請されていることが明らかであること。

 

3)緊急行為を行う者が付近に存在していないこと、災害が重篤であり、人の命に関わりかねない一刻を争うものであったこと、被災者から救助を求められたこと等緊急行為が必要とされると認められる状況であったこと。

なお、上記1)~3)の要件を明確には満たさないものの、業務と同視し得る根拠がある場合には、本省に協議すること。

 

 

2 業務に従事していない場合に緊急行為を行ったとき

 

(1)事業主の命令がある場合

 

緊急行為は、同僚労働者等の救護、事業場施設の防護等当該業務に従事している労働者として行うべきものか否かにかかわらず、私的行為ではなく、業務として取り扱う。

 

(2)事業主の命令がない場合

 

業務に従事していない労働者が、使用されている事業の事業場又は作業場等において災害が生じている際に、業務に従事している同僚労働者等とともに、労働契約の本旨に当たる作業を開始した場合には、特段の命令がないときであっても、当該作業は業務に当たると推定することとする。

 

〔引用終了。〕

 

 

・【名古屋地裁平成20.9.16】は、次のような事案です。

 

(事案)

トラック運送会社の運転手Aがトレーラーで荷物を運送中、国道で軽自動車が横転している現場に遭遇し、同車から脱出した者から事故車内に閉じ込められている同乗者の救助を求められた。このため、Aは事故車の前方にトレーラーを停めて、後続車の男性と協力して事故車内に閉じ込められていた2名の女性を救出したが、その後、上記男性と事故車を起こそうとしていた際、後方から走行してきたB運転の普通乗用車が事故車に衝突し、Aは前方に押し出された事故車とトレーラーの間に挟まれて死亡した。遺族補償年金給付及び葬祭料の給付が支給されなかったため、Aの遺族が当該不支給の処分の取消しを求めた事案。

 

(解説)

この事案は、上記1の(2)(こちら)の「業務に従事している場合に緊急行為を行った」ものであって、「事業主の命令がない場合」にあたりますから、従来の通達によりますと、「当該業務に従事している労働者として行うべきものについては、私的行為ではなく、業務として取り扱う」という処理がなされるものでした。

 

この点、本件では、事故車の横転は被災労働者Aの運送業務及等に由来するものではないこと、特に事故車を起こそうとする復旧行為は相応の危険を伴い、一般的に警察ないし道路管理者の対応に委ねるべきものともいえ、運送業務を行う上で通常想定されている合理的行為とは言いにくい面もあることなどから、本件緊急行為が「当該業務に従事している労働者として行うべきもの」かどうかは微妙な判断になりそうです。

しかし、実質的には、運転業務に従事する者が事故車を発見して被害者を救助しようとする行為は、運送業務に関連して行われる社会通念上必要で相当な緊急行為といえ、これを労災保険で保護しないというのは、労災保険法の目的である被災労働者等の迅速かつ公正な保護の理念に欠けるおそれがあると思われます。

そして、本件名古屋地裁も保険給付の不支給処分の取り消しを認めましたが、その理由づけ参考にしつつ行政上の立場から要件を定立したのが上記通達の1の2(こちら)の※1以下の1)~3)の部分となります。 

 

 

○過去問:

 

・【平成28年問5イ】

設問:

業務に従事している労働者が緊急行為を行ったとき、事業主の命令がある場合には、当該業務に従事している労働者として行うべきものか否かにかかわらず、その行為は業務として取り扱われる。

 

解説:

正しいです。上記本文の1の(1)の場合(こちら)です。

 

 

・【平成28年問5ウ】

設問:

業務に従事していない労働者が、使用されている事業の事業場又は作業場等において災害が生じている際に、業務に従事している同僚労働者等とともに、労働契約の本旨に当たる作業を開始した場合には、事業主から特段の命令がないときであっても、当該作業は業務に当たると推定される。

 

解答:

正しいです。上記本文の2の(2)の場合(こちら)です。 

 

 

〔6〕休憩時間中

休憩時間中は、業務に直接は従事していませんから、業務遂行性を狭く解しますと、休憩時間中に生じた災害はおよそ業務遂行性が認められなくなってしまいます。

ただ、休憩時間といえども、休憩終了後の就業が予定されているのであり、事業主からの拘束を完全に離脱しているわけではありません

従って、休憩時間中に生じた災害についても、業務との関連性の程度や事業主の関与の程度・態様、拘束性・強制性の程度などを考慮して、事業主の支配下にある状態と認められる場合は、業務遂行性が肯定される場合があると解されます。

そして、労働者が事業場の施設内にいる場合の休憩時間中の災害については、事業主の支配下及び管理下(施設管理下)にある状態として、一般には業務遂行性を肯定しやすいといえます。

 

ただし、休憩時間は、自由利用が原則として保障されており(労基法第34条第3項(労基法のパスワード))、自由行動が認められますから、休憩時間中の個々の行為は、通常、私的行為であって、当該私的行為に起因する災害は業務起因性(ないし業務遂行性)が認められないのが基本と解されます(例えば、休憩時間中の事業場内敷地におけるスポーツによる負傷等)。 

 

しかし、当該災害が、事業場の施設や管理事業場施設の不備・欠陥に起因していると認められる場合や就業中なら業務行為に含まれたといえる行為から生じた場合(例えば、用便等の生理的行為作業と関連のある必要行為・合理的行為など業務付随行為の際の災害)については、業務遂行性及び業務起因性が認められると解されます。

 

前者の事業場施設の不備等については、例えば、事業場内の休憩施設がないため、休憩時間に事業場の敷地内の日陰で横になり昼寝をしていたところ、施設内を通行した車両に轢かれたような場合も、業務災害と認められることがあります。休憩施設がないという事業場施設の不備に起因した災害となります。

(また、事業場外の現場作業の休憩時間の場合においても、適切な休憩場所がなく、現場の日陰で休憩していたため上部の岩が落下し負傷したようなケースでは、業務災害と認められることがあります。)

 

後者の生理的行為等の場合は、当該生理的行為等に係る災害が休憩時間で生じたのか、就業時間で生じたのかにより大きく結論が異なるのは不均衡であることが考慮されます。

 

 

○ 通達に現れた事例として、次のようなものがあります。

 

一 業務災害と認定された場合

 

(一)休憩時間に作業所に帰るためトロッコの軌道上を通行中にトロッコの下敷きになったケース

 

◆休憩時間作業所に帰るため通常通行するトロッコの軌道上を通行中に、安全設備の欠陥によって自然に移動してきたトロッコの下敷きになって死亡したケース(【昭和23.3.25基収第1205号】)。

 

➡ 業務災害と認定されました。

休憩時間中であっても、休憩終了後の就業が予定されているものであること、作業現場事業主が労働者の安全確保に配慮すべき場所であることを考えますと、作業現場において生じた災害は、休憩時間中であるからといって、当然に業務遂行性が否定されるわけではないと解されます(事業場内で生じた休憩時間中の災害の場合と類似に考えられると思います)。

ただし、休憩時間中の行為私的行為であることが多く、かかる私的行為により生じた災害については、業務起因性ないし業務遂行性は認められません。

もっとも、本件では、休憩時間に作業所に帰る際の事故であり、単なる私的行為とはいえないこと、また、トロッコの安全設備に欠陥があったことを考えますと、本件事故は、事業主による安全設備の欠陥に起因して発生したものであり、事業主の支配下における危険が現実化したものとして業務遂行性(業務付随行為)及び業務起因性も認められると考えられます。 

 

 

(二)断崖絶壁の石切り場での労働の休憩時間中に飲料水をくみに行く際に転落死したケース

 

◆断崖絶壁の石切り場で労働していた労働者が、休憩時間中に飲料水をくみに行く際に転落死したケース(【昭和24.12.28基災収第4173号】)。【過去問 平成5年】

 

➡ 業務災害と認定されました。

休憩時間中に生じた災害であるからといって、当然に業務遂行性が否定されるわけではありませんが、休憩時間中の行為は私的行為であることが多く、かかる私的行為により生じた災害については業務起因性ないし業務遂行性は認められません。

本件の場合、休憩時間中に作業場の近辺に水を汲みに行った際に生じた災害であり、かかる生理上不可欠な行為が就業中になされたなら、基本的には業務災害と認められるところ、同じ行為が休憩時間中になされたときは認められないというのは不均衡です。

そこで、休憩時間中になされた生理的行為に起因して災害が発生した場合についても、業務に付随する行為に起因して災害が発生したものと解され、業務災害と認められると考えられます。 

 

 

(三)「岩屋」で昼食休憩をしていたところ、岩屋の上盤が倒壊したため死傷したケース

 

◆川の工事に従事していた労働者が、工事現場にある通称「岩屋」で昼食休憩をしていたところ、岩屋の上盤が倒壊したため死傷した事案。この岩屋は、日陰で休憩に適しており、よく利用されていた(【昭和33.3.32基収第574号】)

 (他に休憩小屋がありましたが、狭くて窓もなく、採光も悪いので、労働者は南向きであったかい「岩屋」を休憩に利用するのが通例だったとされます。)

 

➡ 業務災害と認定されました。

本件は、休憩時間中に自然災害(天災地変)が発生した場合とできます。

自然災害のケースは、後述のように、原則としては、災害の発生が業務外の原因に起因しているとして業務起因性は否定されますが、自然災害を被りやすい業務上の事情があって、当該事情と相まって災害が発生したと認められる場合には、業務起因性が認められます。

ただし、本件は、前提として、作業中に自然災害に遭ったのではなく、休憩時間中に遭ったケースであることから、業務遂行性自体が認められるかも問題です。

 

この点は、休憩時間中であっても、休憩終了後の就業が予定されているものですから、当然に業務遂行性が認められないわけではありません。

そして、本件では、他の休憩所に不備があり、適切な休憩場所を確保することに支障があったケースといえ、休憩場所の選択自体が制約されている場合といえますから(拘束性が強いことになります)、岩屋での休憩自体が業務との関連性が強いものと考えられ、従って、岩屋での休憩について事業主の支配下にある状態として業務遂行性は肯定できると考えます(つまり、事業場から私用で外出した際の災害等のケースとは異なることになります)。

また、本件では、岩屋を休憩のため頻繁に利用していたのであり、事業主がこれを禁止していたわけでもないようですから、岩石落下による災害を被りやすい業務上の事情があったといえ、事業主の支配下における危険が現実化したものとして業務起因性も認められるものと考えられます。  

 

 

(四)道路の傍らで休憩していた道路清掃の日雇労働者が自動車にひかれ負傷したケース

 

次の過去問を例に見てみます。

 

・【過去問 平成28年問2A】

設問:

道路清掃工事の日雇い労働者が、正午からの休憩時間中に同僚と作業場内の道路に面した柵にもたれて休憩していたところ、道路を走っていた乗用車が運転操作を誤って柵に激突した時に逃げ遅れ、柵と自動車に挟まれて胸骨を骨折した場合、業務上の負傷と認められる。

 

解答:

本問も、休憩時間中に発生した災害の問題です(【昭和25.6.8基災収発第1252号】)。

適切な休憩場所を確保することに支障があったケースといえ、道路の傍らにおいて休憩せざるを得なかったものといえますから、休憩場所と業務との関連性が強く、事業主の支配下にある状態にあったものとして業務遂行性は肯定できると考えます。

そして、本件では、自動車等による交通の危険にさらされている道路の傍らで休憩をしていたのですから、事業主の支配下における危険が現実化したものとして業務起因性も認められるものと考えられます。 

以上より、設問は正しいです。 

 

 

(五)自動車整備工が、休憩時間中に事業場施設内で喫煙をしようとしたところ、ガソリンの付着した作業衣に引火して火傷を負ったケース

 

◆自動車整備工が、休憩時間中に事業場施設内で喫煙をしようとしたところ、ガソリンの付着した作業衣に引火して火傷を負ったケース(【昭和30.5.12基発第298号】)。【過去問 平成19年問1C(後掲)】

 

➡ 業務災害と認定されました。

休憩時間中に生じた災害であるからといって、当然に業務遂行性が否定されるわけではありませんが、休憩時間中の行為は私的行為であることが多く、かかる私的行為により生じた災害については業務起因性ないし業務遂行性は認められません。

本件の場合は、休憩時間中に喫煙する行為は私的行為といえますが、業務に伴い服に付着したガソリンに引火したことに起因して事故が生じていること、また、発火の危険がある状態で喫煙することは労働者に帰責性が認められるとはいえども、喫煙は少なくとも事故当時は通常許容されていた行為であり、使用者により特に事業場内での喫煙を制限するような指示等がない限りは、本件喫煙行為を恣意的行為等とまではみなせないことに鑑み、本件災害は、ガソリンを扱う本件業務に内在する危険性が現実化したものと考えて、業務遂行性及び業務起因性も認められるものと解されます(被災労働者に重大な過失があるとして、保険給付が支給制限されることはあります。第12条の2の2第2項)。

 

・【過去問 平成19年問1C】

設問:

事業場内での事故による負傷であっても、例えば自動車の整備に従事する者が事業場の施設内で休憩時間中に喫煙しようとしたところガソリンの染み込んだ作業衣に引火して生じた火傷は、休憩時間中の私的行為によるものであるので、業務上の負傷には該当しない。

 

解答:

上記解説の通り、本問は業務災害として業務上の負傷に該当します(【昭和30.5.12基発第298号】)。よって、設問は誤りです。 

 

 

(六)食事の際の災害

 

◆食事のための休憩時間における災害について、例えば、昼食をとるための外出中の事故のような場合は、事業主の施設管理下を離れており、かつ、私的行為であるとして、業務災害と認定されない場合が多いようです。

(他方、食事の際の事故が、事業場の施設や管理(事業場施設の不備・欠陥)に起因していると認められるような場合は、一般には、業務災害と認められます。

事業場における食事の施設が不十分なために、付近の食堂を利用せざるを得ないような場合も、このケースに含められるかもしれません(不明確です)。)

 

なお、例えば、鉄道乗務員が、乗務のための待合時間中に、車掌詰所において昼食のラーメンを調理しようとして包丁により手を負傷した事案については、業務災害と認められていません(【昭和63.3.3 昭和60年労働保険審査会の裁決第134号】)。

当該災害が待合時間中すなわち労働契約に基づいて事業主の支配下にあったときに発生したものであることは否定できませんが、一般に労働者が事業場内において自己の昼食を調理するという行為が労働契約に基づく業務行為であるとはいえないとされます。

要するに、私的行為性が強いものとらえ、業務起因性(ないし業務遂行性)が認められないというのでしょう。

 

ただし、事案によっては、食事の際の外出中の事故が業務災害と認められることがあります。例えば、次の過去問の事例があります。

 

 ・【平成26年問1A】

設問:

自動車運転手が、長距離定期貨物便の運送業務の途上、会社が利用を認めている食堂前に至ったので、食事のために停車し食堂へ向かおうとして道路を横断中に、折から進行してきた自動車にはねられて死亡した災害は業務上とされている。

 

解答:

【昭和32.7.19基収第4390号】は、設問のケースについて、業務災害と認めました。

即ち、貨物自動車会社の運転手が長距離運送業務のため遠隔地に赴く場合、途中で食事をとることは通常予想されるところであり、本件においては事業主もそれを予定していたことから、被災者が運転途中、通常利用している場所で食事をとったことは、被災者の業務に付随する行為とみるべきであるとしました。

よって、設問は正しいです。

 

このように、長距離運送の運転手であること、会社も運送業務の途上での食事を認めていることといった事情があるケースでは、食事の際の事業場外での事故も業務災害と認められていますが、単に昼食を外でとる際の途上での事故などについては、一般には業務災害と認められていないようです。  

 

 

二 業務災害と認定されなかった場合

 

(一)休憩時間中に工場構内でキャッチボールをしていたところ、銃の流れ弾にあたり負傷したケース

 

休憩時間中工場構内でキャッチボールをしていたところ、銃の流れ弾にあたり負傷したケース(【昭和24.5.31基収第1410号】)。【過去問 平成5年】

 

➡ 業務災害と認定されませんでした。

休憩時間中であっても、休憩終了後の就業が予定されているものですから、当然に業務遂行性が否定されるわけではありませんが、休憩時間中の行為は私的行為であることが多く、かかる私的行為により生じた災害については業務遂行性ないし業務起因性は認められません。

本件では、事業主の施設管理下にはいますが〔そこで、事業主の支配下にあるとして、一般的・抽象的には、業務遂行性が認められることになります〕、キャッチボールは、業務と関連性が乏しい私的行為であること、また、流れ弾があたるという極めて特殊・異常な事態が介在して災害が発生していることに鑑み、業務に内在する危険性が現実化したものとはいえず、業務起因性ないし業務遂行性は認められないと解されます。

(キャッチボールは私的行為であるため、例えば、このキャッチボールの際に、ボールを取り損ねて負傷したような場合も、業務起因性(ないし業務遂行性)は否定されます。) 

 

 

(二)拾った不発雷管を拾って休憩時間中にもてあそんでいるうちに爆発して負傷したケース

 

◆拾った不発雷管を拾って休憩時間中にもてあそんでいるうちに爆発して負傷したケース(【昭和27.12.1基災収第3907号】)。【過去問 平成28年問2B(後掲)】

 

➡ 業務災害と認定されませんでした。

本件では、事業主の施設管理下にはいますが、危険物を拾ってもてあそぶという行為は、私的行為であり、恣意的行為でもあり、いずれにしても業務とかけ離れた行為であるため、業務起因性ないし業務遂行性は認められないとなります。

 

 

・【過去問 平成28年問2B】

設問:

炭鉱で採掘の仕事に従事している労働者が、作業中泥に混じっているのを見つけて拾った不発雷管を、休憩時間中に針金でつついて遊んでいるうちに爆発し、手の指を負傷した場合、業務上の負傷と認められる。

解答: 

上記本文の通り、設問の場合は、恣意的行為に起因する負傷として、業務災害とは認められません(【昭和27.12.1基災収第3907号】)。よって、設問は誤りです。  

 

 

〔7〕事業場施設の利用中

◆事業場施設の利用中に災害が発生した場合、特に就業時間外に発生した場合が問題となります。

 

就業時間外は、業務に直接は従事していない場合ですから、業務遂行性を狭く解しますと、例えば、就業時間外に事業場施設を利用中に災害が発生したときは、およそ業務遂行性は認められないということになります。

しかし、それでは、就業時間外に事業場施設が他の従業員の過失によって火事になって負傷したような場合にも、業務災害と認定されることがなくなり、被災労働者の保護に欠けるおそれがあります。

即ち、就業時間外における事業場施設の利用においても、事業主の関与(危険の作出・拡大)の程度・態様や業務との関連性などを考慮して、業務災害性を判断するのが妥当と解されます。

 

この点、就業時間外は、業務を行うべき時間ではないとされている以上、広く業務遂行性や業務と災害との因果関係(業務起因性)を認めることは難しいといえます。

ただし、就業時間外といえども事業場施設を利用している場合は、事業主が管理する施設の下にあり、例えば、事業場施設又はその管理の不備・欠陥等に起因して災害が発生した場合には、事業主の支配下における危険性が現実化したものとして、業務遂行性及び業務起因性が認められると考えます。

 

なお、事業場施設の利用としては、直接に業務運営の用に供する土地、建物、作業用の機械、原材料、製品などのほか、労働者の利用に供せられるものとして、更衣所、便所、洗面所、食堂、風呂場、休憩室、運動設備、通勤専用バスその他の福利施設医療・看護施設寄宿舎等があり、さらに、事業主の行う健康診断を受ける場合など、広義における医療施設の利用も含まれるとされています(この広義の医療施設の利用の場合は、当該施設の状況、診断方法、治療処置等に起因して災害が生じたときは、業務起因性が認められることがあります)。

 

 

○ 通達に現れた事例として、次のようなものがあります。

 

一 業務災害と認定された場合

 

(一)寄宿舎の浴場の電気風呂で、就業後の労働者が入浴中、感電死したケース

 

◆寄宿舎の浴場の電気風呂で、就業後の労働者が入浴中、感電死したケース(【昭和23.1.7基災発第29号】)。

 

➡ 業務災害と認定されました。

就業時間後に生じた災害ですが、寄宿舎の浴場という事業場施設(事業主が管理する施設)の利用中に生じた災害であり、当該寄宿舎の浴場に欠陥等があって感電死したものですから、事業主の支配下における危険性が現実化したものとして、業務遂行性及び業務起因性が認められると考えられます。 

 

 

(二)タクシー会社の事業所の就業時間後の失火

 

◆タクシー会社の事業所の管理責任者Aが営業所の2階に住込みをしていたが、1階の仮眠室で当直中の運転手Bが石油ストーブを運ぶ途中、誤って転倒させて、付近に置かれていた段ボール及び自動車オイルに引火したため事業所が全焼し、逃げ遅れた住込みの管理責任者が死亡したケース。居合わせた労働者も消火器の操作方法を知らなかった(【昭和41.5.23基収第3520号】)。【過去問 平成7年】

 

➡ 業務災害と認定されました。

就業時間終了後に生じた災害ですが、事業場施設の利用中に生じた災害です。

そして、他人(B)の行為が介在しているケースではありますが、当該事業場の労働者であり第三者ではないこと、また、失火させた労働者は当直をしていたものであり、かつ、当直中に暖房のためストーブを利用することは、単なる私的行為等とは同視できないこと、労働者が消火器の操作方法を知らなかったこと等が事故拡大の要因になっていることに鑑みれば、本件災害は、事業場施設の不備により発生・拡大したものと評価でき、事業主の支配下における危険性が現実化したものとして、業務遂行性及び業務起因性が認められるものと考えられます。

 

・なお、事業場付属寄宿舎において、寄宿労働者たちが就業後飲酒をし、泥酔した一名が部屋に戻った後、誤ってストーブに布団を接触させ出火させて焼死したケースについても、業務災害と認められています。

即ち、被災労働者は、事業場付属寄宿舎に起居をしている限りでは事業主の管理下に置かれているものとして、当該災害は、事業場施設の管理状況に起因して生じたものとされました(【昭和39.12.26基収第5754号】)。 

 

 

(三)船中の給食のフグ汁による中毒のケース

 

◆船中の給食による漁船乗組員の食中毒(【昭和26.2.16基災発第111号】)。

(なお、船中での食事は、労働契約で明示されているものではありませんでしたが、会社の給食として慣習的に行われていました。)

 

➡ 業務災害と認定されました。【過去問 平成29年問1C(後掲)】

事業主の提供する給食は、事業主が業務に関連して従業員の福利厚生として提供するものですから、給食提供行為は業務付随行為として業務遂行性が認められるものと解されます。

そして、当該給食に不備があることにより災害が発生した場合(食中毒)には、業務に内在する危険性が具体化したものとして、業務起因性も認められると解されます。

 

なお、隣接の作業員宿舎からもらった飯ずしによる食中毒の場合は、業務災害とは認められませんでした(【昭和33.7.31 労働保険審査会昭和32第4号】)。

事業主の提供するものではなく、事業主の関与がないため、業務遂行性が認められないものと解されます。

 

 

・【過去問 平成29年問1C】

設問:

乗組員6名の漁船が、作業を終えて帰港途中に、船内で夕食としてフグ汁が出された。乗組員のうち、船酔いで食べなかった1名を除く5名が食後、中毒症状を呈した。海上のため手当てできず、そのまま帰港し、直ちに医師の手当てを受けたが重傷の1名が死亡した。船中での食事は、会社の給食として慣習的に行われており、フグの給食が慣習になっていた。この場合、業務上として取り扱われる。

 

解答:

正しいです。

【昭和26.2.16基災第111号】によりますと、要旨、本件は、給食施設に起因して生じたものと認められる限り、業務上と解されるとされました。 

 

 

(四)その他

 

その他の関連過去問を見ておきます。

 

・【過去問 平成28年問2C】

設問:

戸外での作業の開始15分前に、いつもと同様に、同僚とドラム缶に薪を投じて暖をとっていた労働者が、あまり薪が燃えないため、若い同僚が機械の掃除用に作業場に置いてあった石油を持ってきて薪にかけて燃やした際、火が当該労働者のズボンに燃え移って火傷した場合、業務上の負傷と認められる。

 

解答:

事業場における暖房設備の不完全に起因する災害として、業務上の負傷と認められました(【昭和23.6.1基発第1458号】)。

(石油の投与の仕方に問題があった可能性もありますが、恣意的な行為のようなものではなく、暖房設備の設置・管理の瑕疵の面を重視したのでしょう。

なお、本件の暖房行為が、作業開始前の作業準備行為といえないかですが、暖房が作業自体との関連性が強くないような場合は、作業準備行為には当たらないのでしょう。

就業時間外(前)の事業場施設内における災害のケースとして考えた場合も、前記のように、本件は、暖房設備という事業場の施設の不備により発生した災害と構成することができます。) 

 

 

続きは、次のページで見ます。