令和5年度版

 

§1 目的

まず、番号利用法の目的を見ておきます。次の第1条です。

ざっと流し読んで下さい。

 

 

【番号利用法】

番号利用法第1条(目的)

この法律は、行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者が、個人番号及び法人番号の有する特定の個人及び法人その他の団体を識別する機能を活用し、並びに当該機能によって異なる分野に属する情報を照合してこれらが同一の者に係るものであるかどうかを確認することができるものとして整備された情報システムを運用して、効率的な情報の管理及び利用並びに他の行政事務を処理する者との間における迅速な情報の授受を行うことができるようにするとともに、これにより、行政運営の効率化及び行政分野におけるより公正な給付と負担の確保を図り、かつ、これらの者に対し申請、届出その他の手続を行い、又はこれらの者から便益の提供を受ける国民が、手続の簡素化による負担の軽減、本人確認の簡易な手段その他の利便性の向上を得られるようにするために必要な事項を定めるほか、個人番号その他の特定個人情報の取扱いが安全かつ適正に行われるよう個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)の特例を定めることを目的とする。

 

 

※ なお、前掲の第1条は、令和4年4月1日施行の改正(【令和3.5.19法律第37号】。「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」(いわゆる「デジタル社会形成整備法」)附則第53条。施行日は、同法附則第1条第4号及び【令和3.10.19政令第291号】)により改められています。

〔即ち、同条中、「安全かつ適正に行われるよう」の次に、従来、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第59号)及び」とあったのが削られました。〕

個人情報保護法の改正施行に伴う整理です。

 

 

この番号利用法第1条では、番号利用法の目的として次の4つを挙げています。

 

(1)行政機関地方公共団体その他の行政事務を処理する者が、個人番号及び法人番号の有する特定の個人及び法人その他の団体を識別する機能を活用し、並びに当該機能によって異なる分野に属する情報を照合してこれらが同一の者に係るものであるかどうかを確認することができるものとして整備された情報システムを運用して、効率的な情報の管理及び利用並びに他の行政事務を処理する者との間における迅速な情報の授受を行うことができるようにすること。

 

(2)上記(1)により行政運営の効率化及び行政分野におけるより公正な給付と負担の確保を図ること。

 

(3)(1)の者に対し申請、届出その他の手続を行い、又は(1)の者から便益の提供を受ける国民が、手続の簡素化による負担の軽減及び本人確認の簡易な手段その他の利便性の向上を得られるようにすること。

〔以上の(1)~(3)に必要な事項を定めること。〕

 

(4)個人番号その他の特定個人情報の取扱いが安全かつ適正に行われるよう個人情報保護法特例を定めること。

 

 

※ ちなみに、上記(4)の「個人情報保護法」と「番号利用法」との関係のイメージは次の図のとおりです。 

 

この点、憲法の保障する個人の尊厳(憲法第13条)の実現のためには、個人情報の保護が図られる必要があります。プライバシーの保護や自己の情報をコントロールする権利の保護の必要性です。

この個人情報保護の制度については、個人情報保護の基本法として「個人情報保護法」(【平成15.5.30法律第57号】)があります(平成15年公布、施行)。 

 

しかし、個人番号及び個人番号をその内容に含む特定個人情報(用語の詳細については、次のページのこちら以下でみます)は、個人の識別機能が高いものですから、悪用・誤用により重大なプライバシー侵害を引き起こすおそれがあります。

そこで、番号利用法は、行政運営の効率化の確保、公正な給付と負担の確保の実現、国民の利便性の向上等を目的としつつ、特定個人情報の安全かつ適正な取り扱いを図るために特別の規律を定めるものであり、「個人情報保護法」の特別法という側面があります。 

  

なお、個人情報の保護の観点とは少し異なりますが、国民主権、民主主義に基づき、国民の政治参加や行政監視を可能にし、国民の知る権利の保障に資するものとして、行政機関等が保有する情報の公開に関する手続について定めたのが「行政機関情報公開法」(【平成11.5.14法律第42号】)、「独立行政法人等情報公開法」(【平成13.12.5法律第140号】)及び各地方公共団体の情報公開に関する条例になります。いわゆる情報公開の制度です。

 

 

 

令和3年の個人情報保護法の改正

令和4年度試験 改正事項

なお、以上の個人情報保護等に関する制度の仕組みは、令和3年の改正(【令和3.5.19法律第37号】。「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」。以下、「令和3年改正法」といいます)により大きく改められました(原則として令和4年4月1日施行)。

 

従来は、行政等が取り扱う個人情報については個別の法により規律されていました。

即ち、国が取り扱う個人情報については、「行政機関個人情報保護法」(【平成15.5.30法律第58号】)が規律し(平成15年公布、平成17年施行)、独立行政法人等が取り扱う個人情報については、「独立行政法人等個人情報保護法」(【平成15.5.30法律第59号】)が規律し(平成15年公布、平成17年施行)、地方公共団体が取り扱う個人情報については、各地方公共団体の条例により定められていました。 

次の図のようなイメージでした。 

 

しかし、令和3年の改正(原則令和4年4月1日施行)により、「行政機関個人情報保護法」及び「独立行政法人等個人情報保護法」の2法が廃止され、これらの2法が「個人情報保護法」に統合されて、新たに「個人情報保護法」として一元化されました(個人情報保護委員会が所管します)。前掲のこちらの図を参考です。

また、地方公共団体の個人情報保護制度についても、「個人情報保護法」において全国的な共通ルールが規定され、全体の所管が個人情報保護委員会に一元化されました。

そして、「個人情報保護法」のもとにおいて、「個人情報」の定義等も国・民間・地方について統一されるとともに、行政機関等における匿名加工情報の取扱いに関する規律も明確化されました。

この改正は、従来、個人情報保護等に関する制度の仕組みがそれぞれ別個の法律等で規定されていたことによる混乱を避ける等の見地から、これらを一元化して規律したものです。

 

「個人情報保護委員会」のサイト等では、改正前と改正後の「個人情報保護法」に関する全体像として、次の図が掲げられています(次の図中、【現行】とあるのが令和4年4月1日施行の改正前の仕組みであり、【見直し後】とあるのが令和4年4月1日施行の改正後の現在の仕組みです)。

 

 

 

 

※ 令和3年の個人情報保護法の改正の資料については、こちらこちらを参考です。

 

 

次のページでは、番号利用法における定義等を見ます。