2019年度版

 

三 事案の類型化

以下、労働時間性が問題となる具体的なケースを類型化しておきます。

具体的なケースの処理の結論については、択一式で出題しやすい個所ですから、しっかり押さえる必要があります。

 

労働時間が問題となるケースは、上記図のように類型化できます(荒木先生の相補的2要件説による整理ですが、その説を採らない場合にも参考になります。ちなみに、相補的2要件説からは、上記図の1(使用者の関与)と〔2又は3(活動内容・職務性)〕との兼ね合い(相関関係)から労働時間にあたるかどうかが判断されます)。

 

以下、便宜上、上記図の「3 不活動時間のケース」から簡単に整理していきます。

 

(一)不活動時間

不活動時間とは、実作業に従事していない時間のこととできます。労働密度の薄さのため労働時間性が問題となる場合です。

(この「不活動時間」という表現は、後述のように、判例も使用しています。)

 

1 手待時間、待機時間

 

(1)例えば、貨物取り扱いの事業場において、貨物の積込係が、貨物自動車の到着を待機して身体を休めている場合とか、運転手が2名乗り込んで交代で運転に当たる場合において運転しない者が助手席で休息し、又は仮眠しているときであっても、それらは「労働」であり、その状態にある時間(これを一般に「手待時間」といいます)は労働時間とされます(【昭和33.10.11基収第6286号】参考)。

【過去問 平成26年問5D(後掲)】/【平成30年問1イ(後掲)】

 

(2)また、昼食休憩中でも、来客当番をさせている場合は、実際には来客がなくても労働時間にあたります(【昭和23.47基収第1196号】等参考)。

 

 

※ このような手待時間、待機時間といった不活動時間は、休憩時間なのか、それとも労働時間なのかが問題となります。

休憩時間とは、既述の通り、「労働者が権利として労働から離れることを保障された時間」をいい、労働時間との区別も、労働からの解放・離脱の有無を考慮することになります。

ただし、拘束時間のうち、休憩時間に該当しない時間は労働時間に当たりますから(第32条参考)、休憩時間に該当するかどうかの判断は、労働時間に該当するかどうかの判断と表裏の関係にあります。

即ち、労働時間は、使用者の指揮命令の下に置かれているものと客観的に評価できる時間と解され(指揮命令下説)、具体的には、使用者の関与の程度・態様や業務(職務)との関連性の程度、拘束性(義務性)の有無・程度など、諸事情を総合的に検討して判断すべきであり、このような労働時間に該当しない拘束時間が休憩時間に該当することになります。

 

この点、手待時間、待機時間は、一般に、状況に応じていつでも現実の業務に従事することが必要となる時間であり、労働から解放された時間とはいえないこと(業務性が強く、拘束性も強いです。そして、これらは使用者の指示等に基づくのが通常です)を考えますと、かかる時間は使用者の指揮命令の下に置かれているものとして、労働時間にあたると考えられます。

 

 

○過去問:

 

・【平成26年問5D】

設問:

労働基準法第32条にいう「労働」とは、一般的に、使用者の指揮監督のもとにあることをいい、必ずしも現実に精神又は肉体を活動させていることを要件とはしない。したがって、例えば、運転手が2名乗り込んで交替で運転に当たる場合において運転しない者が助手席で休息し、又は仮眠をとっているときであってもそれは「労働」であり、その状態にある時間は労働基準法上の労働時間である。

 

解答:

正しいです(【昭和33.10.11基収第6286号】参考)。

 

 

・【平成26年問5E】

設問:

労働基準法第34条に定める「休憩時間」とは、単に作業に従事しないいわゆる手待時間は含まず、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間をいう。

 

解答:

正しいです(【昭和22.9.13発基第17号】参考)。

 

 

・【平成21年問5D】

設問:

労働者を就業規則に定める休憩時間に来客当番として事務所に待機させたが、その時間に実際に来客がなかった場合には、休憩時間以外の労働時間が法定労働時間どおりであれば、使用者は、労働基準法第37条第1項の規定による割増賃金を支払う義務はない。

 

解答:

上述の通り、かかる待機時間は、労働から解放された時間とはいえず、来客の有無にかかわらず、労働時間となります。従って、設問の日の総労働時間は法定労働時間を超えていることになりますから、時間外労働に係る割増賃金の支払義務が生じます。よって、設問は誤りです。

 

 

・【平成30年問1イ】

設問:

貨物自動車に運転手が二人乗り込んで交替で運転に当たる場合において、運転しない者については、助手席において仮眠している間は労働時間としないことが認められている。

 

解答:

前掲の【平成26年問5D】の事案(こちら)と同様です(【昭和33.10.11基収第6286号】参考)。

設問の助手席における仮眠時間についても、状況に応じていつでも運転につくことが必要となる時間であり、労働から解放された時間とはいえないこと(業務性が強く、拘束性も強いです)を考えますと、かかる時間は使用者の指揮命令の下に置かれているものとして、労働時間にあたると考えられます。よって、設問は、誤りです。

 

  

 

(3)なお、訪問介護労働者の待機時間については、使用者が急な需要等に対応するため事業場等において待機を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当するとされます(【平成16.8.27基発第0827001号】参考)。

    

また、訪問介護労働者の移動時間(=事業場、集合場所、使用者宅の相互間を移動する時間をいいます)については、使用者が、業務に従事するために必要な移動を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当するとされます(上掲通達)。【過去問 平成19年問5A(下記)】  

 

 

2 仮眠時間

 

仮眠時間については、既述の大星ビル管理事件判決(こちら以下)の中で詳述しています。

 

基本的な考え方は、上記1の手待時間、待機時間と同様になります。

 

3 マンション住込み管理人の所定時間外の業務

 

マンションの住込み管理人が所定労働時間の前後、あるいは、休日において、断続的に業務に従事していた場合等の労働時間性について、最高裁判例があります。

まだ未出題なので、注意が必要です。

 

【大林ファシリティーズ事件=最判平成19.10.19】

 

(事案)

マンションの住込み管理人〔=判決は、管理員といっています。本件事例では、夫婦による住込みです〕は、所定労働時間(9時から18時まで。休憩時間は1時間)外や休日においては、管理員室を閉じて隣の居室にいたが、住人の呼び出しに等により宅配物の受け渡し等を行っており、また、日曜日(法定休日)・祝日(法定外休日)においても、管理員室の照明の点消灯、ごみ置き場の扉の開閉等を指示されていた場合に、時間外労働及び休日労働の成否が問題となった事案。

詳しい事案は後述しますが、長いため、初めに解説しておきます。

 

(解説)

判決は、労働時間性について、前掲の三菱重工長崎造船所事件判決及び大星ビル管理事件判決で示された基準に従って判断しています。

そして、具体的な事案の処理としては、平日においては、会社の指示や対応、住民の期待等を考慮して、管理員室の照明を点灯しておくよう指示されていた午前7時から午後10時までは、管理員室の隣の居室にいた不活動時間(=実作業に従事していない時間のこと)も含めて、本件会社の指揮命令下に置かれていたものと評価できるとして、労働時間と認めました。

 

他方、日曜日及び祝日については、管理員室の照明の点消灯及びごみ置場の扉の開閉以外には労務の提供が義務づけられておらず、労働からの解放が保障されていたということができ、午前7時から午後10時までの時間全部について待機することが命ぜられた状態と同視することもできないとして、管理員室の照明の点消灯、ごみ置場の扉の開閉その他会社が明示又は黙示に指示したと認められる業務に現実に従事した時間に限り休日労働又は時間外労働をしたものと認めました〔=日曜日及び祝日においても、実際は、受付業務等による住民との対応、宅配物等の受渡し等を行っていたのですが、会社は一定行為以外は指示していなかったこと、及び受付等の業務も平日及び土曜日と比べて相当に少なかったことが考慮されて、平日等のように広範には労働時間を認めませんでした〕。

 

 

詳しくは、次のような事案です(参考までに掲載しておきますが、長いので読まなくても結構です)。

 

夫婦ABがマンション管理会社とマンションの住込み管理のため雇用契約を締結して、当該管理業務に従事していた。

就業規則では、 所定労働時間は、1日8時間(始業午前9時、終業午後6時、休憩正午から午後1時まで)とすること、休日は、1週につき1日の法定休日(日曜日)及び法定外休日(土曜日、祝日、夏期、年末年始等)とすること等が定められていた。

 

実際の勤務状況等は、次の通りになっていた。

 

(a)まず、平日については、会社は、午前9時以前及び午後6時以降(即ち、所定労働時間外)においても、管理員室の照明点灯(午前7時)、ごみ置場の扉の開錠、テナント部分の冷暖房装置の運転開始・停止、無断駐車の確認及び発見後の対応(午後9時)、ごみ置場の扉の施錠(同)、管理員室の照明消灯(午後10時)の業務を行うよう指示していた。

また、別途手渡されていたマニュアルには、管理員が、所定労働時間外においても、住民や外来者から宅配物の受渡し等の要望があった場合はこれに随時対応すべき旨が記載されていた。

なお、夫婦が管理員室に在室するのは午前9時から午後6時までであり、それ以外の時間及び休日については、「本日の受付は終了しました」と記載された札を出し、管理員室の窓口を閉じて隣の居室にいたが、住民からのインターホンによる呼出しに応じていたほか、居住者不在の場合の書留郵便、宅配物等の受渡しもしていた。

 

(b)法定外休日である土曜日についても、原則として、平日と同様の業務を行うべきことを指示していたが、土曜日は夫婦のいずれか1人が業務を行い、業務を行った者については翌週の平日のうち1日を振替休日とすることとし定めていた。

土曜日の業務に関する本件会社の指示及び本件マニュアルの記載のうち、平日と異なる点は、土曜日の勤務は1人で行うため巡回等で管理員室を空ける場合に他方が待機する必要はないこと、冷暖房装置の運転停止の時刻が午後6時であることであった。

しかし、業務の性質が平日の業務と余り変わらないものであったことや住民の要望もあったため、実際には、被上告人らの土曜日の勤務状況は平日とほとんど変わらないものであった。

 

(c)日曜日(法定休日)及び祝日(法定外休日)については、会社は、管理員室の照明の点消灯、ごみ置場の扉の開閉以外には業務を行うべきことを指示していなかった。これらの日に夫婦がやむを得ず仕事をした場合は、振替休日を取るよう指示していた。

しかし、業務の性質が平日の業務と余り変わらないものであったことや住民の要望もあったため、実際には、夫婦は、日曜日及び祝日においても、受付業務等による住民との対応、宅配物等の受渡し、駐車の指示、自転車置場の整理、リサイクル用ごみの整理等に従事していた。もっとも、受付等の業務は平日及び土曜日と比べて相当に少なかった。

 

(d)夫婦は、会社の指示により、管理日報を日々作成し、これを会社に提出していた。会社は、管理日報等により、定期的に夫婦から業務に関する報告を受け、適宜業務についての指示をしていた。

 

 

(判旨)

※ 基本的に、次の判旨の(1)の太字部分に注意すればよいでしょう。(2)以下は、事例判断の部分のため、出題対象とはしにくそうですので、読まなくて結構です(次の、出張中の休日の問題(こちら)に進んで下さい)。

 

「(1)労働基準法32条の労働時間(以下『労基法上の労働時間』という。)とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、実作業に従事していない時間(以下『不活動時間』という。)が労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が不活動時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである(〔※ 三菱重工長崎造船所事件を参照しています〕最高裁平成7年(オ)第2029号同12年3月9日第一小法廷判決・民集54巻3号801頁参照)。そして、不活動時間において、労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。したがって、不活動時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。そして、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である(〔※ 大星ビル管理事件を参照しています〕最高裁平成9年(オ)第608号、第609号同14年2月28日第一小法廷判決・民集56巻2号361頁参照)。」

 

「(2)平日の時間外労働について

 

ア 前記事実関係等によれば、本件会社は、被上告人ら〔=管理人夫婦です。以下同様〕に対し、所定労働時間外においても、管理員室の照明の点消灯、ごみ置場の扉の開閉、テナント部分の冷暖房装置の運転の開始及び停止等の断続的な業務に従事すべき旨を指示し、被上告人らは、上記指示に従い、各指示業務に従事していたというのである。また、本件会社は、被上告人らに対し、午前7時から午後10時まで管理員室の照明を点灯しておくよう指示していたところ、本件マニュアルには、被上告人らは、所定労働時間外においても、住民や外来者から宅配物の受渡し等の要望が出される都度、これに随時対応すべき旨が記載されていたというのであるから、午前7時から午後10時までの時間は、住民等が管理員による対応を期待し、被上告人らとしても、住民等からの要望に随時対応できるようにするため、事実上待機せざるを得ない状態に置かれていたものというべきである。さらに、本件会社は、被上告人らから管理日報等の提出を受けるなどして定期的に業務の報告を受け、適宜業務についての指示をしていたというのであるから、被上告人らが所定労働時間外においても住民等からの要望に対応していた事実を認識していたものといわざるを得ず、このことをも併せ考慮すると、住民等からの要望への対応について本件会社による黙示の指示があったものというべきである。

そうすると、平日の午前7時から午後10時までの時間(正午から午後1時までの休憩時間を除く。)については、被上告人らは、管理員室の隣の居室における不活動時間も含めて、本件会社の指揮命令下に置かれていたものであり、上記時間は、労基法上の労働時間に当たるというべきである。したがって、被上告人らが平日は午前7時から午前9時まで及び午後6時から午後10時まで時間外労働に従事した旨の原審の判断は、正当として是認することができる。

 

イ また、前記事実関係等によれば、平日においては、後述する土曜日の場合とは異なり、1人体制で執務するようにとの本件会社からの指示はなく、実際にも、被上告人らは、所定労働時間外も含め、2人で指示業務に従事したというのである。そうすると、被上告人らが2人で時間外労働に従事した旨の原審の判断についても是認することができる。

 

〔中略〕

 

(3)土曜日の時間外労働について

 

ア 土曜日〔=法定外休日です〕においても、平日と同様、午前7時から午後10時までの時間(正午から午後1時までの休憩時間を除く。)は、管理員室の隣の居室における不活動時間も含めて、労基法上の労働時間に当たるものというべきである。

また、前記事実関係等によれば、本件会社は、土曜日は被上告人らのいずれか1人が業務を行い、業務を行った者については、翌週の平日のうち1日を振替休日とすることについて、被上告人らの承認を得ていたというのであるが、他方で、被上告人らは、現実には、翌週の平日に代休を取得することはなかったというのである。そうである以上、土曜日における午前7時から午後10時までの時間(正午から午後1時までの休憩時間を除く。)は、すべて時間外労働時間に当たるというべきである。

 

イ しかしながら、上記のとおり、本件会社は、土曜日は被上告人らのいずれか1人が業務を行い、業務を行った者については、翌週の平日のうち1日を振替休日とすることについて、被上告人らの承認を得ていたというのであり、また、前記事実関係等によれば、本件会社は、被上告人らに対し、土曜日の勤務は1人で行うため、巡回等で管理員室を空ける場合に他方が待機する必要はないことなどを指示していたというのである。さらに、前記事実関係等によれば、そもそも管理員の業務は、実作業に従事しない時間が多く、軽易であるから、基本的には1人で遂行することが可能であったというのである。

上記のとおり、本件会社は、被上告人らに対し、土曜日は1人体制で執務するよう明確に指示し、被上告人らもこれを承認していたというのであり、土曜日の業務量が1人では処理できないようなものであったともいえないのであるから、土曜日については、上記の指示内容、業務実態、業務量等の事情を勘案して、被上告人らのうち1名のみが業務に従事したものとして労働時間を算定するのが相当である。」

 

「(4)日曜日及び祝日の休日労働ないし時間外労働について前記事実関係等によれば、本件会社は、日曜日及び祝日については、本件雇用契約において休日とされていたことから、管理員室の照明の点消灯、ごみ置場の扉の開閉以外には、被上告人らに対して業務を行うべきことを指示していなかったというのであり、また、日曜日及び祝日は、本件管理委託契約〔=マンションと本件管理会社との契約です〕においても休日とされていたというのである。

そうすると、被上告人らは、日曜日及び祝日については、管理員室の照明の点消灯及びごみ置場の扉の開閉以外には労務の提供が義務付けられておらず、労働からの解放が保障されていたということができ、午前7時から午後10時までの時間につき、待機することが命ぜられた状態と同視することもできない。したがって、上記時間のすべてが労基法上の労働時間に当たるということはできず、被上告人らは、日曜日及び祝日については、管理員室の照明の点消灯、ごみ置場の扉の開閉その他本件会社が明示又は黙示に指示したと認められる業務に現実に従事した時間に限り、休日労働又は時間外労働をしたものというべきである。」

 

「(5)病院への通院、犬の運動に要した時間について

 

被上告人らが病院に通院したり、犬を運動させたりしたことがあったとすれば、それらの行為は、管理員の業務とは関係のない私的な行為であり、被上告人らの業務形態が住み込みによるものであったことを考慮しても、管理員の業務の遂行に当然に伴う行為であるということはできない。病院への通院や犬の運動に要した時間において、被上告人らが本件会社の指揮命令下にあったということはできない。」

 

 

以上で、「3 マンション住込み管理人の所定時間外の業務」について終わります。

 

 

4 出張中の休日

 

出張中に休日があり出張先で格別の業務に従事せずに過ごした場合や、出張中の休日に移動する場合に、「休日」になるのか、それとも「労働時間」として休日労働になるのかは問題です。

 

この点、次の通達があります。

 

「出張中の休日はその日に旅行する等の場合であっても、旅行中における物品の監視等別段の指示がある場合の他は、休日労働として取扱わなくても差し支えない。」(【昭和33.2.13基発第90号】)

 

これは、例えば、出張中の休日に他の出張先に移動するような場合、その移動時間について、原則として休日労働と取り扱わないという意味のようです(その他、休日に出張すべき旨を命令する場合の、この休日中の出張のための移動についても、あてはまる通達かもしれません)。

 

しかし、この通達はわかりにくく、また、その結論には問題があるように思えます。とりあえず、上記の通達と下記の過去問の結論を暗記することに努めて下さい。

以下、筆者の考えを記載しておきますが、参考程度に読んで下さい。

 

(1)まず、出張中に休日があり出張先で格別の業務に従事せずに過ごした場合に、「休日」になるのか、それとも「労働時間」として休日労働になるのかが問題です。

 

この点、災害補償制度(労基法の災害補償制度、労災保険法の労災保険制度)の下では、出張中は出張過程の全般が使用者の支配下にある状態と考えられており、出張中の災害は基本的に業務上の災害にあたるとして取り扱われています。従って、出張中の休日に災害にあっても、原則として、業務災害にあたることになります(詳しくは、労災保険法のこちらで学習します)。

他方、労基法上は、上記の通達の通り、出張中の休日は、原則として休日(労働時間に該当しない)と考えられているといえます。 

 

この両者の取り扱いの違いは、一見、不均衡にも見えます。即ち、災害補償制度において、出張中の休日も使用者の支配下にあると考えるなら、労基法の労働時間においても、出張中の休日は、使用者の支配下・指揮命令下にあるものとして、労働時間にあたるともいえるからです。

 

ただ、災害補償制度と労働時間制の制度目的・趣旨は異なる以上、出張中の休日の取り扱いを同様に解さなければならない必然性もありません。

そして、労基法上、出張中の休日を労働時間と考えますと、使用者が出張中に労働者に休日を付与することを抑制する効果を生じさせるおそれもあり、かえって労働者の保護とならない結果にもなりえます。

そこで、労基法上の労働時間性の問題としては、出張中の休日は、その日の自由利用が保障されている限り、労働時間にはあたらないと解してよいといえます。

 

(2)次に、出張中の休日に他の出張先に移動するために旅行(乗車、乗船、搭乗等)するような場合、この移動・旅行時間が休日労働になるのかが問題です。

上記の通達からは、おそらくこの場合には、休日労働にあたらないと解するのでしょう。

過去問があるので、参考にしてみます。

 

・【過去問 平成18年問3D】

設問:

出張中の休日は、その日に旅行する等の場合であっても、旅行中における物品の監視別段の指示がある場合のほかは、その日が労働基準法第35条の休日に該当するときであっても、休日労働として取り扱わなくても差し支えないとされている。

 

解答:

正しい設問とされています。

 

 

この点、まず、「休日以外の日」における「出張中の移動時間」が労基法上の労働時間に当たるのかを考えてみます。

これについて、出張中の往復時間に関し、出張の際の往復に要する時間は、労働者が日常の通勤に費す時間と同一性質のものと考えられるから、右所要時間は労働時間には算入されないとする下級審決定があります(【日本工業検査事件=横浜地裁川崎支部決定昭和49.1.26】)。

確かに、出張先との往復に要する時間については、通勤時間と同様に考えてよさそうです(そして、通勤時間は、後述の通り、原則として労基法の労働時間にはあたりません。なぜなら、通勤時間は、直接、業務に従事している時間ではなく、また、使用者が直接的な関与をしている時間でもないため、使用者の指揮命令下に置かれた時間とは評価できないからです)。

ただ、出張中の他の出張先等への移動時間についても、通勤時間と同様に考えられるのかは問題です。なぜなら、出張でない通常の勤務の場合も、例えば営業先から営業先までの移動時間は、当然に労働時間に当たると解すべきであり(使用者の指揮命令に基づき営業を行っているのであり、移動時間自体は直接営業と同視できる時間ではないとしても業務に密接に関連した時間なのです)、すると、出張中の営業先どうしの移動時間の場合も同様に考えるべきだからです。

そこで、出張中の他の出張先等への移動時間は労働時間にあたると解すべきであり、すると、「出張中の休日」に他の出張先等へ移動する時間についても、この休日中の移動が使用者の明示ないし黙示の命令に基づくものであるような場合(例えば、実際上、休日中に移動しなければ業務を遂行できないようなケースも、使用者の黙示の命令に基づく場合に含められます)には、この移動が移動先での業務の遂行を目的とした手段であり、業務に密接に関連する移動であることから、使用者の指揮命令下にあると評価できる時間として、労働時間と解するのが自然と思えます。

結局、出張中の休日に移動しなくても出張の目的を達せられるのに、労働者側の便宜により休日に移動したようなときは、休日労働とは取り扱えませんが、そうではなく上記のような休日の移動が使用者の関与に基づくものといえる場合には、休日の移動も休日労働と取り扱うべきではないかと思います。

 

以上で、(一)不活動時間について終わります。次に、(二)本務外の活動です

 

 

(二)本務外の活動

「本来の業務」外の活動の労働時間性が問題となるケースです。

 

考え方は、既述の労働時間性の判断の個所で述べたとおりです。

即ち、労働時間は、使用者の指揮命令の下に置かれているものと客観的に評価できる時間と解され(指揮命令下説)、具体的には、使用者の関与の程度・態様や業務(職務)との関連性の程度、拘束性(義務性)の有無・程度など、諸事情を総合的に検討して判断すべきであり、本件では、特に業務との関連性の程度等が問題となります。

 

 

1 準備、後始末業務

 

既述の三菱重工長崎造船所事件のケース(こちら)が重要です。作業服への更衣、保護具の装着などが問題となっています。前記リンク先をご覧下さい。 

 

 

2 研修・教育、企業の行事、小集団活動

 

所定労働時間外研修・教育活動企業の行事(運動会など)等が行われ労働者が参加した場合、これに要した時間が労働時間に当たるのかの問題です。

参加が義務的なもので企業の業務としての性格が強いような場合は、使用者の指揮命令下にある時間として、労働時間にあたることになります。

具体的ケースとしては、次のようなものがあります。よく出題されています。

 

(1)就業時間外の教育訓練

 

「労働者が使用者の実施する教育に参加することについて、就業規則上の制裁等の不利益取扱による出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にならない。」とされます(【昭和26.1.20基収第2875号】/平成11.3.31基発第168号】)。

 

即ち、「労働者が使用者の実施する教育、研修に参加する時間を労働時間とみるべきか否かについては、就業規則上の制裁等の不利益な取扱いの有無や、教育・研修の内容と業務との関連性が強く、それに参加しないことにより本人の業務に具体的に支障が生ずるか否か等の観点から、実質的にみて出席の強制があるか否かにより判断すべきものである。」とされます(平成22年版厚労省コンメ上巻400頁)。

【過去問 平成26年問5B(下記)】

 

 

・【過去問 平成26年問5B】

設問:

労働者が使用者の実施する教育、研修に参加する時間を労働時間とみるべきか否かについては、就業規則上の制裁等の不利益な取扱いの有無や、教育・研修の内容と業務との関連性が強く、それに参加しないことにより本人の業務に具体的に支障が生ずるか否か等の観点から、実質的にみて出席の強制があるか否かにより判断すべきものである。

 

解答:

上記本文の通り、正しいです。 

 

 

(2)安全衛生教育の時間

 

労働安全衛生法第59条および第60条の安全衛生教育は、労働者がその業務に従事する場合の労働災害の防止を図るため、事業者の責任において実施されなければならないものであり、したがって、安全衛生教育については所定労働時間内に行うのを原則とする。また、安全衛生教育の実施に要する時間労働時間と解されるので、当該教育が法定労働時間外に行われた場合には、当然割増賃金が支払われなければならないものである」とされます(【昭和47.9.18基発第602号】)。

 

この点、安衛法上の安全衛生教育は、当該労働者が従事する業務に関する安全衛生のための教育であり、業務と強い関連性があること、そして、法律上、事業者に安全衛生教育を行う義務が課されており、使用者が積極的に関与することが想定されていることを考えますと、安全衛生教育の実施に要する時間は労働時間にあたると解してよいことになります(なお、この場合、使用者の指揮命令下にあるかどうかという基準は、あまり有効とはいえません)。

 

 

【参考条文 労働安全衛生法】

安衛法第59条(安全衛生教育)

1.事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。〔=雇入れ時の安全衛生教育といいます〕

 

2.前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。〔=作業内容変更時の安衛教育といいます〕

 

3.事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。〔=特別教育といいます〕

 

 

安衛法第60条  

事業者は、その事業場の業種が政令で定めるものに該当するときは、新たに職務につくこととなつた職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(作業主任者を除く。)に対し、次の事項について、厚生労働省令で定めるところにより、安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。〔=職長等の教育といいます〕

 

一  作業方法の決定及び労働者の配置に関すること。

 

二  労働者に対する指導又は監督の方法に関すること。

 

三  前2号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な事項で、厚生労働省令で定めるもの

 

 

過去問としては、安衛法で出題されています。

 

〇過去問:

 

・【安衛法 平成17年問8D】

設問:

労働安全衛生法第59条第3項の規定に基づく安全又は衛生のための特別の教育の実施に要する時間は、業務との関連性が深く、労働時間と解されるが、同条第1項の規定に基づく雇入れ時の安全衛生教育が法定労働時間外に行われた場合には、労働基準法第37条の規定に基づく割増賃金を支払うまでの必要はない。

 

解答:

安衛法第59条第1項の雇入れ時の安全衛生教育の実施に要する時間についても、労働時間にあたるとされています(【昭和47.9.18基発第602号】)。

従って、当該教育が法定労働時間外に行われた場合は、時間外労働にあたりますので、割増賃金の支払が必要です。よって、設問は誤りです。

 

 

・【安衛法 平成26年問10B】

設問:

労働安全衛生法第59条および第60条の安全衛生教育については、それらの実施に要する時間は労働時間と解されるので、当該教育が法定労働時間外に行われた場合には、当然割増賃金が支払われなければならない。

 

解答:

正しいです(【昭和47.9.18基発第602号】)。  

 

 

(3)健康診断の受診時間

 

健康診断の受診時間については、先に少し触れましたが、試験対策上、次のように暗記して下さい。

 

〇 健康診断の受診時間の労働時間制:

 

一般健康診断(の受診時間)➡ 労基法上の労働時間にあたらない ×

 

特殊健康診断(の受診時間)➡ 労基法上の労働時間にあたる ○

 

 

【過去問 平成21年問5A(後掲)】/【平成21年問5E(後掲)】/【安衛法 平成27年問10オ(後掲)】

 

 

通達は、次の通りです。

 

「健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払いについては、労働者一般に対して行われる、いわゆる一般健康診断は、一般的な健康の確保を図ることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行われるものではないので、その受診のために要した時間については、当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい

特定の有害な業務に従事する労働者について行われる健康診断、いわゆる特殊健康診断は、事業の遂行にからんで当然実施されなければならない性格のものであり、それは所定労働時間内に行われるのを原則とする。また、特殊健康診断の実施に要する時間労働時間と解されるので、当該健康診断が時間外に行われた場合には、当然割増賃金を支払わなければならないものである。」(上掲【昭和47.9.18基発第602号】)

 

※ この通達は、前段の一般健康診断の実施に要する時間について、後段の特殊健康診断との対比からして、労働時間にはあたらないと解していることになります(なお、賃金支払の対象になるのかという賃金時間の問題と労基法上の労働時間になるのかの問題とは、既述のように、一応別個の問題です。ただ、労基法上の労働時間といえる場合は、労働契約の合理的解釈として、基本的には、賃金支払義務の生じる賃金時間にあたると解される旨を、大星ビル管理事件の判例が言及しました)。

 

この通達は、労働時間性の判断において一般健康診断と特殊健康診断とを区別する理由として、業務との関連性の程度の違いを考慮しているものと解されます。

確かに、この両者の健診については、業務との関連性の程度に違いがありますし、また、原則として、常時使用する労働者全員に対して実施が要求される一般健康診断について、その受診時間を常に労働時間と解することは、使用者に過度の負担が強いられるおそれもあり、その点でも、一般健診と特殊検診を区別する合理性があるとはいえます。

一方、使用者の指揮命令下にあるかどうかという基準(ないし使用者の関与の程度・態様)という点では、両健康診断を区別する合理性はないことになります。

そこで、指揮命令下説をあまり形式的に考えてしまいますと、本件の通達の立場は説明できないことになります。

 

いずれにしましても、試験対策上は、上記青の枠囲みの部分を記憶すれば足ります。

 

 

【参考条文 安衛法】

安衛法第66条(健康診断)

1.事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第66条の10第1項(安衛法のパスワード)に規定する検査〔=心理的な負担の程度を把握するための検査。いわゆるストレスチェック〕を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行なわなければならない。〔=一般健康診断

〔※ この第1項は、一般健康診断です。次の第2項、3項が特殊健康診断です。〕

 

2.事業者は、有害な業務で、政令で定めるもの従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。〔=有害業務従事者の特殊健康診断

 

3.事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、歯科医師による健康診断を行なわなければならない。〔=歯科医師による健康診断(特殊健康診断)〕

 

〔以下、省略(全文は、安衛法のこちら)。〕

 

 

 

○過去問:

 

・【平成21年問5E】

設問:

労働安全衛生法に定めるいわゆる一般健康診断が法定労働時間外に行われた場合には、使用者は、当該健康診断の受診に要した時間について、労働基準法第37条第1項の規定による割増賃金を支払う義務はない。

 

解答:

前掲の【昭和47.9.18基発第602号】は、後段の特殊健康診断の受診時間について労基法上の労働時間と解していることとの対比から、前段の一般健康診断の受診時間については労基法上の労働時間と解していないことになります。

従って、一般健康診断が法定労働時間外に行われた場合においては、割増賃金の問題は生じないことになります。よって、設問は正解です。

 

なお、上記通達は、一般健康診断は、「業務遂行との関連において行われるものではないので、その受診のために要した時間については、当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものである」としていますが、この部分は、厳密には、本設問の解答のための直接的な手掛かりにはならないことになります。

なぜなら、労基法上の労働時間と賃金支払対象になる時間(賃金時間)とは一応区別されるため、例えば、一般健康診断の受診時間について労基法上の労働時間にあたらないとしても、労働契約等において当該受診時間について賃金を支払う旨の定めをすることは可能なのであり、逆に、当該受診時間について当然には賃金を支払う必要はないものと解した場合であっても、だからといって当然に労基法上の労働時間にあたらないとはいえないからです(要するに、労基法上の労働時間に該当するかどうかは、指揮命令下説等の基準にあたるかどうかを個別に判断することが必要です)。

 

 

・【平成21年問5A】

設問:

労働安全衛生法に定めるいわゆる特殊健康診断が法定労働時間外に行われた場合には、使用者は、当該健康診断の受診に要した時間について、労働基準法第37条第1項の規定による割増賃金を支払わなければならない。

 

解答:

特殊健康診断の受診に要した時間は労働時間に当たるとされるため、法定労働時間外に受診した場合は時間外労働となり、割増賃金の支払義務が生じます。従って、設問は正解です。

 

 

・【安衛法 平成27年問7E】

設問:

健康診断の受診に要した時間に対する賃金の支払について、労働者一般に対し行われるいわゆる一般健康診断の受診に要した時間については当然には事業者の負担すべきものとはされていないが、特定の有害な業務に従事する労働者に対して行われるいわゆる特殊健康診断の実施に要する時間については労働時間と解されているので、事業者の負担すべきものとされている。

 

解答:

上記本文の説明通り、正しいです。  

 

 

(4)安全・衛生委員会の会議開催時間

 

「安全委員会〔=安衛法第17条〕の会議の開催に要する時間は労働時間と解される。したがって、当該会議が法定労働時間外に行われた場合には、それに参加した労働者に対し、当然、割増賃金が支払われなければならない。衛生委員会〔=安衛法第18条〕及び安全衛生委員会〔=同法第19条〕についても同様である」とされます(上掲【昭和47.9.18基発第602号】参考)。【過去問 平成21年問5C(後掲)】

 

安全委員会、衛生委員会及び安全衛生委員会は、安衛法上、一定の事業場について、安全や衛生に関する事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるために設置が義務づけられるものです。

そこで、当該事業場の労働者の業務と密接に関連するものであること、また、法律上、一定の事業場の事業者にかかる委員会を設置する義務が課されており、使用者が積極的に関与することが想定されていることを考えますと、かかる委員会の開催時間は労働時間に当たると解してよいことになります。

 

 

・【過去問 平成21年問5C】

設問:

労働安全衛生法に定める安全委員会の会議が法定労働時間外に行われた場合には、使用者は、当該会議への参加に要した時間について、労働基準法第37条第1項の規定による割増賃金を支払わなければならない。

 

解答:

正しいです(【昭和47.9.18基発第602号】)。 

 

 

(5)その他の会議

 

その他の会議の場合も、参加が義務的なもので企業の業務としての性格が強いような場合は、使用者の指揮命令下にある時間として、労働時間にあたることになります。

 

 

・【過去問 平成21年問5B】

設問:

使用者から会議への参加を命じられた場合に、その会議が法定労働時間を超えて引き続き行われたときは、使用者は、当該引き続き行われた時間について、労働基準法第37条第1項の規定による割増賃金を支払わなければならない。

 

解答:

参加が命じられるなど出席の強制がある場合には労働時間として取り扱われ、法定労働時間を超えて行われたものは時間外労働となるため、割増賃金の支払が必要です。従って、設問は正解です。   

 

 

3 通勤時間

 

なお、通勤時間労働時間にはあたらないのが原則です。

 

なぜなら、通勤時間は、直接、業務に従事している時間ではなく、また、使用者が直接的な関与をしている時間でもないため、使用者の指揮命令下に置かれた時間とは評価できないからです(そして、社会通念上も、通勤時間は労働時間として賃金が支払われるのではなく、通勤手当が支払われるのが一般です)。 

 

 

(三)使用者の関与

使用者の明白な超過勤務の指示により、又は使用者の具体的に指示した仕事が、客観的に見て正規の勤務時間内ではなされ得ないと認められる場合の如く、超過勤務の黙示の指示によって法定労働時間を超えて勤務した場合には、時間外労働となるものと解されています(【昭和25.9.14基収第2983号】参考)。【過去問 平成13年】

つまり、使用者の指揮命令下に置かれたといえるためには、必ずしも使用者の明示の指示等がある必要はなく、黙示的な指示があったといえる場合でもよいことになります。

 

他方、労働者が自発的に残業をしたり、自宅に持ち帰って業務を行った場合、労働者は一応業務は行っていることになりますが、使用者が全く関与していないとき(使用者が黙認すらしていないようなとき)は、労働時間とは認められないと解されます。

例えば、使用者が明示的に残業禁止の業務命令を発しているときに、労働者が時間外に労働をしていても、原則としては労働時間にあたりません。

 

 

以上で、労働時間性の問題は終わります。次ページにおいて、労働時間に関連するその他の問題に移り、第40条の労働時間の特例及び年少者の労働時間を学習します。