2020年度版

 

第1節 総則

このページでは、介護保険法の目的と必要性について見ます。

 

 

第1款 目的

一 特徴

介護保険法は、高齢者の介護を社会全体で支えあう仕組みを定めた法律であり、平成9年(1997年)に制定され(【平成9.12.17法律第123号】)、原則として、平成12年2000年4月1日から施行されました。

【過去問 平成19年問7A(後掲)】/【平成27年問10E(後掲)】

 

 

介護保険法の特徴は、以下の点にあるといえます。 

 

 

介護の社会化(介護に対する社会的支援)

 

介護保険制度は、老後の大きな不安要因である介護を社会全体で支える仕組みです。

第1条では、介護保険制度は「国民の共同連帯の理念」に基づき設けられた旨が規定されています。

 

 

社会保険方式

 

介護保険においては、その対象者は、被保険者として介護保険に加入し、保険料を納付して、保険事故(要介護状態等)が発生した場合には保険給付を受けられるという社会保険方式が採用されています。

 

社会保険方式の場合は、税方式に比べ、給付と負担の関係が明確であること、安定的な財源を確保できることといったメリットがあります(また、保険料を支払う利用者が権利意識を持ちやすく、低所得者が利用するといった社会福祉制度に対する心理的抵抗感をなくして、介護保険制度を利用しやすくできるといった側面もありました)。

 

ただし、社会保険方式では、当然のことながら、被保険者が保険料を負担しなければならないこと(特に低所得者について保険料負担が重くなりうること)、被用者医療保険に加入する第2号被保険者(例えば、45歳以上65歳未満の健康保険の被保険者)については、事業主も介護保険料の半額負担義務を負うため、企業の人件費が増加することといった問題もあります。

 

 

自立支援

 

介護保険制度は、単に介護を要する高齢者の身の回りの世話をするということを超えて、高齢者の自立を支援することを理念としています。

第1条では、介護保険制度は、要介護状態の者等の「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう」にするものであることに触れています。

 

 

利用者本位

 

以前の老人福祉と老人医療に分かれていた縦割りの高齢者医療・福祉制度が再編成され、介護保険制度では、利用者の選択により、多様な主体から保健医療サービス、福祉サービスを総合的に受けられるという利用者本位のサービス利用システムが採用されています(第2条第3項参考)。

 

以前の制度の問題点については、次に見ます。

 

 

二 介護保険法の制定の必要性

まず、介護保険法の制定以前の高齢者に対する介護・医療に関する制度の経緯は、次の表の通りでした。

高齢者の介護については、主として老人福祉法が、高齢者の医療については、主として老人保健法や健康保険法・国民健康保険法等が適用されていました。

 

【厚労省資料の平成30年「公的介護保険制度の現状と今後の役割」をベースに改編】

 

 

介護保険法の制定の背景として、主に、次のような事情が挙げられます。

 

高齢化の急速な進展による介護を必要とする高齢者の増大

 

家族による介護機能基盤の弱体化家族の介護負担の増大

 

従来の老人福祉制度と老人医療制度による対応の限界

 

④介護費用の増大に対応した新たな財源確保の必要性 

 

 

要するに、介護を必要とする高齢者が増加する一方で、十分な介護環境の維持が困難となる中、利用しやすく、かつ、適切で効率的な介護に関する制度の構築が必要となった、ということになります。

 

以下、やや詳しく見ます。

 

 

1 高齢化の急速な進展による介護を必要とする高齢者の増大

 

なにより、高齢化が急速に進行しました。

 

介護保険制度が施行された2000年には、高齢化率総人口に占める65歳以上人口の割合)は17.3%となっていました。約6人に1人が65歳以上の者です。

ちなみに、2017(平成29)年は、さらに上がり、27.7%です。4人に1人を超えてしまいました。

 

高齢化が進行すれば、要介護高齢者の数も増加します。また、本人が要介護状態等とならなくても、その親や配偶者が要介護状態等となる可能性も増加します。

介護リスクが一般化したことになります。

 

 

2 家族による介護機能基盤の弱体化と家族の介護負担の増大

 

以前は、要介護高齢者を家族等(実際は、妻や子の嫁)が介護していたケースが多かったといえます。

しかし、家族規模の縮小(核家族化の進行)、高齢者夫婦のみ世帯(介護する家族の高齢化)や単身世帯の増加、女性の就労の増大等によって、家族による介護機能が弱体化し、家族の介護負担の重さが見逃せなくなりました。

さらに、寝たきりの防止、認知症への対応、褥瘡(じょくそう。いわゆる床ずれ)等の処理など、適切な介護をするためには、専門的な知識・経験も必要です。

 

 

3 従来の老人福祉制度と老人医療制度による対応の限界

 

一方、前記の通り、高齢者の介護については、老人福祉法の適用による老人福祉制度が用意され、高齢者の医療については、老人保健法被用者医療保険健康保険法等)・国民健康保険の適用による老人医療制度が用意されていました。

しかし、このそれぞれについて、大きな問題を抱えていました。

 

まず、老人福祉制度は、措置制度により実施されていました。

措置制度とは、行政機関が対象者に対するサービスの適用の必要性等を判断し、行政処分としてサービスの利用を決定する制度のことです。

現在も、生活保護や社会福祉制度の一部では、措置制度が採用されています。

 

措置制度は、利用者の制度利用に関する権利性が乏しいこと、利用者がサービスの種類や提供機関等を選択することができないこと、利用の際に、所得調査を前提とするなど、手続が煩雑であるのみならず、利用に当たって心理的抵抗感を伴うこと、行政機関が直接あるいは委託により提供するサービスが基本であるため、競争原理が働かず、サービス内容が画一的となりがちであること、本人と扶養義務者の収入に応じた利用者負担(応能負担)となるため、中高所得層にとって重い負担となること、といった問題がありました。

要するに、行政機関が主体となる制度であり、利用者にとっては利用しにくいものでした。

 

他方、老人医療制度については、介護のために病院に長期入院しているという社会的入院の問題が発生していました。

これは、福祉サービスの整備が不十分であった反面、医療機関の病床数は多かったこと、医療機関の方が利用者負担も少ないこと、福祉施設より病院に入院する方が心理的抵抗感も少なかったこと等を背景としたものです。

 

社会的入院の増加により、医療費が増加する問題が生じ(特別養護老人ホーム等における介護より、医療機関における方がコストがかかります)、また、治療を目的とする病院では、スタッフや生活環境の面(狭い病室、食堂や入浴施設がない等)で、要介護者の長期療養として適切でもありませんでした。

 

以上のように、保健医療と福祉についての2つの制度にそれぞれの問題が存在し、かつ、これらの制度による縦割りの弊害があったため、介護サービスを介護保険という独立した1つの制度により構築する必要がありました。

 

 

4 介護費用の増大に対応した新たな財源確保の必要性

 

そして、バブル崩壊後の1990年代前半からの長期不況の中、税収が減少し、高齢者介護を公費に依存することが困難となってきました。

 

 

以上のような事情を背景として、介護保険法が制定されたものです(1994年(平成6年)に、当時の厚生大臣の私的諮問機関により「21世紀福祉ビジョン」報告書が公表され、新たな介護システムの構築の必要性に言及され、当時の厚生省に高齢者介護対策本部が設置されたあたりが、介護保険法制定に向けての契機とされます)

 

 

参考までに、上記3の「従来の老人福祉制度と老人医療制度による対応の限界」をまとめますと、次の図の通りです。

 

【厚労省資料の平成30年「公的介護保険制度の現状と今後の役割」をベースに改編】

 

〇過去問:

 

・【平成19年問7A】

設問:

高齢化や核家族化等の進行に伴い深刻化していた高齢者の介護問題に対応する新たな社会的仕組みを構築するために、介護保険法が平成9年に制定され、一部を除き平成12年4月から施行された。

 

解答:

正しいです。

「平成9年制定、平成12年施行」を押さえます。本文は、こちらです。

 

 

・【平成26年問10E】

設問:

深刻化する高齢者の介護問題に対応するため、介護保険法が平成9年に制定され、平成12年4月から施行された。介護保険制度の創設により、介護保険の被保険者は要介護認定受ければ、原則として費用の1割の自己負担で介護サービスを受けられるようになった。

 

解答:

正しいです。 

介護保険法の制定年と施行年月の出題は、前問と同様です。

 

なお、自己負担については、介護保険制度の発足当時は、基本的に1割負担でしたが、平成27年8月1日施行の改正により、一定以上所得者である第1号被保険者については2割負担となり、さらに、平成30年8月1日施行の改正により、より所得が高い第1号被保険者については、3割負担となりました(詳しくは、次のページのこちらや居宅介護サービス費のこちら以下で触れています)。

 

 

三 目的(第1条)

介護保険法の目的条文等について、条文をベースに押さえておきます。

 

まず、目的条文(第1条)です。

平成27年度の選択式に2つの空欄が出題されていますが、目的条文は引き続き十分な学習が必要です。

 

 

【条文】

第1条(目的) 

この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。

 

【選択式 平成27年 C=「機能訓練」、Ⅾ=「国民の共同連帯の理念」(こちら)】

 

〇趣旨

 

本条は、介護保険法が、加齢に伴い要介護状態となり介護・医療を要する者等について、尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とすることを定めています。

 

ポイントは、以下の点です。

 

 

(一)加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等

 

第1条において、介護保険の対象者は、「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等」であることが示されています。

 

詳しくは次のページ(こちら以下)で見ますが、第1号被保険者(市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者)の場合は、要介護状態(大まかには、日常生活について常時介護を要する状態)又は要支援状態(大まかには、日常生活について支援を要する状態。要介護状態となるおそれがある状態です)にあれば、要介護者又は要支援者に該当し、要介護認定又は要支援認定を受けることにより、保険給付の支給を受けることができます(こちらの図を参考)。

 

対して、第2号被保険者(市町村の区域内に住所を有する40歳以上65歳未満の医療保険加入者)の場合は、要介護状態又は要支援状態にあるだけでなく、その要介護状態又は要支援状態加齢に起因する一定の疾病(「特定疾病」といいます。加齢に伴い発生頻度が高くなる疾病のことであり、第7条第3項第2号に基づく政令により定められています)によって生じたものである場合に限り、要介護者又は要支援者に該当し、要介護認定又は要支援認定を受けることにより、保険給付の支給を受けることができます。

つまり、第2号被保険者が保険給付の支給を受けるためには、老化に起因する疾病(特定疾病)により要介護状態又は要支援状態となることが必要です(特定疾病以外により要介護(要支援)状態となった場合は、障害者福祉施策により保護されます)。

 

例えば、交通事故により要介護状態となった場合は、65歳以上の者であれば、介護保険から保険給付の支給を受けることができますが、40歳以上65歳未満の者であれば、特定疾病により要介護状態となったのではありませんから、介護保険から保険給付の支給を受けることはできません。これは、重要な知識です。

 

そこで、前記の第1条の「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり」の「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病」(特定疾病です)は、第2号被保険者(40歳以上65歳未満の者)について問題となることになります。

対して、第1号被保険者については、「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病」の「」の部分があることによって、特定疾病によらずに要介護状態(要支援状態)となった場合も含まれることが想定されています。

 

ちなみに、この第1条では、「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり」として、要介護状態を明示し、要支援状態については明示していませんが、要支援状態は、「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者」の最後の「」に含まれていることになります。

 

「要支援状態」も対象となることについては、後述の第2条第1項において、「介護保険は、被保険者の要介護状態又は要支援状態(以下「要介護状態等」という。)に関し、必要な保険給付を行うものとする。」として明記されるなど、特段の問題はないのですが、第1条では明記がないため、念のため触れておきました。

 

 

(二)尊厳を保持

 

第1条の「尊厳を保持し」という文言は、介護保険法の制定当時には規定がなく、平成17(2005)年の改正の際に追加挿入されたものです。

 

社会福祉事業法の全面改正により平成12(2000)年に制定された社会福祉法第3条において、福祉サービスの基本的理念として、「福祉サービスは、個人の尊厳を旨とし」と規定されたこと、また、近年の社会保障関係法における学説において、社会保障の根拠として、生存権を定める憲法第25条だけでなく、個人の尊重(尊厳)を定める憲法第13条が考慮されるようになってきたことを背景とするものと解されます。

 

 

(三)その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができる

 

「その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう」とは、「自立支援」という考え方です。

 

自立とは多義的な用語ですが、介護保険制度における自立とは、同制度が主として要介護者(要支援者)に対する介護を内容としていることから、(生活保護法第1条における「自立助長」のような経済的自立・社会的自立に重点がおかれたものではなく)身体的自立や精神的自立を意味するものと解されます。

 

 

(四)必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付

 

介護保険においては、従来、老人医療制度と老人福祉制度において、縦割りで行われていた介護に関するサービスを総合的・一体的に提供しようとします。

 

保健医療サービス」とは、介護保険法の制定以前は、医療保険制度(健康保険、国民健康保険等)や老人保健制度(老人保健法)の下で行われていたようなサービスです(例:居宅サービスとしての訪問看護や訪問リハビリテーションなど。施設サービスとしての、介護老人保健施設等におけるサービス)。

 

福祉サービス」とは、介護保険法の制定以前は、老人福祉制度(老人福祉法)の下で行われていたようなサービスです(例:居宅サービスとしての訪問介護、訪問入浴介護、通所介護(デイサービス)など。施設サービスとしての介護老人福祉施設におけるサービス等)。

 

 

(五)国民の共同連帯の理念

 

1 自助、互助、共助、公助

 

国民の共同連帯の理念」に基づき、社会保険方式により介護保険制度が運営されます。

 

いわゆる「自助」、「共助」及び「公助」のうち、「共助」にあたるものです(詳しくは、白書対策講座の「社会保障総論」のこちら以下)。

なお、第4条第2項においても、「国民は、共同連帯の理念に基づき、介護保険事業に要する費用を公平に負担する。」と規定されています。

 

介護保険は、「自助」や「公助」(前述の措置制度による老人福祉制度)による介護に限界がきていたことを踏まえて、「共助」として誕生した制度といえます。

 

ただし、高齢者人口が増加している中、現行の介護保険の給付水準を維持すれば、介護費用が増大するおそれが指摘されています。

 

この点、「地域包括ケアシステム」は、高齢者が地域で継続して生活ができるように、地域(市町村)が中心となって、医療、介護、介護予防、住居、生活支援を包括的に確保しようとする施策です(やや詳しくは、次のページ(こちら以下)で見ます)。【選択式 平成26年度 B=「地域包括ケアシステム」(こちら)】

介護保険法においても、第5条第3項において、国及び地方公共団体の責務(努力義務)として「地域包括ケアシステム」の根拠となる規定が定められています(平成23年の改正により、同規定を追加)。 

 

この「地域包括ケアシステム」は、高齢者が住み慣れた地域で継続して生活することを可能とさせるという本人の利益が重視されたものですが、前記の介護費用の増加といった介護保険、医療保険等の制度の持続可能性の問題も大きな背景となって採用された施策といえます。

 

 

ちなみに、近時、「自助」、「共助」、「公助」の他、「互助」も加えた4つの要素により、地域包括ケアシステムを実際に支える方法を分析する考え方が主張されています(「地域包括ケア研究会」(平成20年に厚生労働省老人保健健康増進等事業の一環として設立)による報告書。平成25年3月公表等。こちらを参考ですが、読まなくて結構です)。 

 

(ⅰ)この報告書では、費用負担という面から、これらの4つを次のように区別しています(要旨を当サイトでまとめています)。

 

・「公助」は、公費(税)を財源とした公的な福祉サービスなどのこと(例:生活保護)。

 

・「共助」は、介護保険、医療保険など社会保険制度を通じて連帯制度化された支えあいの仕組みのこと。

 

・「自助」は、自らが自らの生活を支えること。市場サービスの購入によって自らの生活を支える方法も、含まれている。

 

・「互助」は、家族や地域の支え合いなど、市場とは異なる生活空間の中で支えあう機能のこと。

相互に支え合っているという意味で「共助」と共通点があるが、費用負担が制度的に裏付けられていない自発的なものであるという違いがある。

 

 

(ⅱ)時代や地域による違いという面から、これらの4つを見ますと次の通りです。

 

・2025年〔=第1次ベビーブームの世代が75歳以上となる年〕までは、高齢者のひとり暮らしや高齢者のみ世帯がより一層増加。「自助」「互助」の概念や求められる範囲、役割が新しい形に。

 

・都市部では、強い「互助」を期待することが難しい一方、民間サービス市場が大きく「自助」によるサービス購入が可能。

都市部以外の地域は、民間市場が限定的だが、「互助」の役割が大。

 

・少子高齢化や財政状況から、「共助」「公助」の大幅な拡充を期待することは難しく、「自助」「互助」の果たす役割が大きくなることを意識した取組が必要。 

 

 

(ⅲ)この報告書の基本的考え方は、次の通りです(平成25年及び平成28年公表の報告書の要旨です)。

 

今後、高齢化の一層の進展により、介護費用が爆発的に増加するおそれがあり、効率的かつ効果的な制度設計を目指す必要がある。

介護費用が増大する中で、すべてのニーズや希望に対応するサービスを介護保険制度が給付することは、保険理論からも、また共助の仕組みである社会保障制度の理念に照らしても適切ではない。

一定限度額までの介護サービスを、その内容と成果を吟味しつつ介護保険制度が給付することは当然であるが、自助・互助・公助との適切な役割分担を検討していかなければならない。

 

なお、介護保険制度は、「自助」や「互助」だけでは介護負担を受け止められなくなった社会状況に対応して誕生した。

ただし、その目的は、「自助」や「互助」を介護保険(共助)で置き換えるものではない。あくまで「自助」や「互助」では対応しきれない部分や、所得等の経済力によって逆選別となりがちだった「公助」では対応しにくかったニーズに対して、「共助」がこれに対応するとの認識のもとに、介護保険制度は設計され、発展してきた。

自助や互助の積極的な取組は、結果として共助としての介護保険制度の持続可能性を高めると考えられる。

 

〔※ 以上、報告書が指摘しますように、「自助、互助、共助、公助」の適切な役割分担を図ることが重要であることは間違いないのでしょう。

ただ、報告書も触れていますように、そもそも、「自助」や「互助」が限界であり、「公助」でも適切に対応できなかったことから介護保険制度が創設されたものです。

そして、「自助」・「互助」が声高になりますと、家族による介護の負担の甘受や地域ボランティア等への過度の依存といった状況に「戻る」のではないかという問題もあるでしょう。

介護保険制度の適切な射程範囲をどう考えていくかは、難しい問題です。〕

 

 

 

2 国民の共同連帯の理念

 

なお、「国民の共同連帯(の理念)」は、高齢者医療確保法第1条社会一般のこちら)や国民年金法第1条国年法のこちら)においても用いられています。

 

 

・【選択式 平成27年度】

設問:

3 介護保険法第1条は、「この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、 並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、 に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。」と規定している。

 

選択肢(本問に関連するもののみ):

①機能訓練 ③公的責任の実現と社会連帯の精神 ⑤高齢者の尊厳と相互扶助の理念 ⑥国民の共同連帯の理念 ⑦国民の相互扶助の理念 ⑧作業療法 ⑨施設サービス ⑳理学療法  

 

 

解答:

 

C=①機能訓練(第1条

D=⑥国民の共同連帯の理念(同上)

 

 

以上、第1条でした。

次のページでは、介護保険法の体系について見ます。その後、制度の原則・原理に関わるような総則的規定(第2条~第6条)について、改めて学習します。