令和6年度版

 

労働時間等設定改善指針

「労働時間等設定改善指針」(いわゆる「労働時間等見直しガイドライン」。【平成20.3.24厚生労働省告示第108号】。こちら参考)は、平成31年4月1日施行の改正(【平成30.10.30厚生労働省告示第375号】)により改められました。

働き方改革関連法による改正に伴うものです。

 

以下、全文を掲載しておきます。読まないで結構ですが、余裕がある場合は、太字部分と※のついたコメント部分を拾い読みして下さい。

 

※ 改正個所について、試験対策上、重要な個所については下線を引いていますが、全面改正された個所など、下線を引くと見づらくなる個所については、改正された旨だけを記載しています。 

 

 

 

労働時間等設定改善指針(【平成20.3.24厚生労働省告示第108号】。最終改正【平成30.10.30厚生労働省告示第375号】)

令和元年度試験 改正事項

〔引用開始。〕

 

労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号)第4条第1項〔=労働時間等設定改善法第4条第1項〕の規定に基づき、労働時間等設定改善指針(平成18年厚生労働省告示第197号)の全部を次のように改正し、平成20年4月1日から適用する。

 

労働時間等設定改善指針

 

我が国は、経済的地位においては世界有数の水準に達したが、その経済的地位にふさわしい豊かでゆとりある労働者生活の実現については、多くの課題を抱えてきた。

このような中で、労使の真摯な取組により労働時間の短縮は着実に進み、近年は、過去に労働時間短縮の目標として掲げられてきた年間総実労働時間1,800時間を下回る、おおむね1,700時間台前半で推移している。

 

〔※ 上記は、改正前は、「・・・年間総実労働時間1,800時間にほぼ近い水準である、おおむね1,800時間台前半で推移している。」とありました。〕 

 

しかしながら、その内実を見ると、全労働者平均の労働時間が短縮した原因は、主に労働時間が短い者の割合が増加した結果であり、いわゆる正社員等については2,000時間前後で推移しており、依然として労働時間は短縮していない。一方、労働時間が長い者と短い者の割合が共に増加し、いわゆる「労働時間分布の長短二極化」が進展している。また、年次有給休暇の取得率5割を下回った状態である

 

〔※ 上記の「5割を下回った状態である」は、改正前は、「低下傾向にある」とありました。

ただし、「平成30年就労条件総合調査」(平成30年10月23日公表)では、平成29年の年次有給休暇の取得率は「51.1%」となり、5割を上回りました(平成11年以来18年ぶりに50%を超えました)。

続いて、「平成31年就労条件総合調査」(令和元年10月29日公表)においても、平成30年の取得率は「52.4%」であり、前年を上回りました。

令和2年就労条件総合調査」(令和2年10月30日公表)においては、平成31年(令和元年)の取得率は「56.3%」であり、引き続き前年を上回っており、過去最高(昭和59年以降)の取得率となっています。

令和3年就労条件総合調査」(令和3年11月9日公表)においては、令和2年の取得率は「56.6%」であり、引き続き前年を上回っており、過去最高(昭和59年以降)の取得率となっています。

また、取得日数(労働者1人平均は17.9日)も過去最多(昭和59年以降)です(このうち労働者が取得した日数は10.1日です)。 

令和4年就労条件総合調査」(令和4年10月28日公表)においては、令和3年の取得率は「58.3%」であり、引き続き前年を上回っており、過去最高(昭和59年以降)の取得率となっています。 

令和5年就労条件総合調査」(令和5年10月31日公表)においては、令和4年の取得率は「62.1%」であり、引き続き前年を上回っており、過去最高(昭和59年以降)の取得率となっています。 

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さらに、長い労働時間等の業務に起因した脳・心臓疾患に係る労災認定件数は高水準で推移している。そして、急速な少子高齢化、労働者の意識や抱える事情の多様化等が進んでいる。

このような情勢の中、今後とも労働時間の短縮が重要であることは言うまでもないが、全労働者を平均しての年間総実労働時間1,800時間という目標を用いることは時宜に合わなくなってきた。むしろ、経済社会を持続可能なものとしていくためには、その担い手である労働者が、心身の健康を保持できることはもとより、職業生活の各段階において、家庭生活、自発的な職業能力開発、地域活動等に必要とされる時間と労働時間を柔軟に組み合わせ、心身共に充実した状態で意欲と能力を十分に発揮できる環境を整備していくことが必要となっている。

このような考え方は、仕事と生活の調和ワーク・ライフ・バランス)の推進という観点から、平成19年12月に策定された「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」(平成22年6月29日仕事と生活の調和推進官民トップ会議改定。以下「憲章」という。)及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」(平成22年6月29日仕事と生活の調和推進官民トップ会議改定。以下「行動指針」という。)においても盛り込まれているところである。

憲章においては、国民的な取組の大きな方向性を示すものとして、仕事と生活の調和の緊要性についての共通認識を整理した上で、仕事と生活の調和が実現した社会とは、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」であり、具体的には、「①就労による経済的自立が可能な社会」、「②健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会」及び「③多様な働き方・生き方が選択できる社会」を目指すべきであるとし、その実現に向けた関係者の役割を明示している。また、行動指針においては、事業主や労働者及び国民の効果的な取組並びに国や地方公共団体の施策の方針を示している。

さらに、憲章及び行動指針においては、事業主及びその団体(以下「事業主等」という。)並びに労働者の役割について、個々の企業の実情に合った効果的な進め方を互いに話し合い、生産性の向上に努めつつ、職場の意識や職場風土の改革をはじめとする働き方の改革に自主的に取り組み、民間主導による仕事と生活の調和に向けた気運を醸成することが重要であることを示しているところである。

これらの趣旨を踏まえ、この指針においては、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号。以下「法」という。)第4条第1項〔=労働時間等設定改善法第4条第1項〕の規定に基づき、事業主等が、労働時間等の設定の改善について適切に対処するために必要な事項について定めるものである。

 

〔※ 次の「また」から始まる1段落は、新設されました。〕

 

また、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)が平成30年7月6日に公布され、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を推進するため、時間外労働の限度時間の設定等の措置を講ずることとされている。加えて、特に過労死等の防止については、過労死等防止対策推進法(平成26年法律第100号)第4条第3項〔=過労死等防止対策推進法4条第3項〕において、事業主は、国及び地方公共団体が実施する過労死等の防止のための対策に協力するよう努めることとされており、同法7条第1項の規定により定められた「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(平成30年7月24日閣議決定)において、労働時間等に関する数値目標等が定められているところである。

 

〔※ 上記の「過労死等の防止のための対策に関する大綱」における数値目標については、「過労死等防止対策推進法」のこちらを参考。〕

 

 

1 労働時間等の設定の改善に関する基本的考え方

 

(1)労働時間等の設定の改善を図る趣旨

 

労働時間等の設定の改善を含めた仕事と生活の調和の実現に向けた取組は、少子化の流れを変え、人口減少下でも多様な人材が仕事に就けるようにし、我が国の社会を持続可能で確かなものとするために必要な取組であるとともに、企業の活力や競争力の源泉である有能な人材の確保・育成・定着の可能性を高めるものでもある。

したがって、労働時間、休日数、年次有給休暇を与える時季その他の労働時間等に関する事項について労働者の健康と生活に配慮するとともに多様な働き方に対応したものへ改善することが重要である。このことは、労働者にとって好ましいのみならず企業活動の担い手である労働者が心身共に充実した状態で意欲と能力を十分に発揮できるようにし、企業経営の効率化と活性化、国民経済の健全な発展にも資するものであり、企業にとっては、「コスト」としてではなく、「明日への投資」として積極的にとらえていく必要がある。

 

(2)労働時間の短縮の推進

 

労働者が健康で充実した生活を送るための基盤の一つとして、生活時間の十分な確保が重要であり、事業主が労働時間等の設定の改善を図るに当たっては、労働時間の短縮が欠かせない。このため、事業主は、今後とも、週40時間労働制の導入、年次有給休暇の取得促進及び時間外・休日労働の削減に努めることが重要である。

 

〔※ 今般の改正により、従来、「所定外労働」とあった個所は、「時間外・休日労働」に改められています。以下も同様です。〕

 

(3)多様な事情への配慮と自主的な取組の推進

 

事業主が労働時間等の設定の改善を図るに当たっては、個々の労使の話合いが十分に行われる体制の整備が重要である。そして、労働者の健康と生活に係る多様な事情を踏まえつつ、個々の労使による自主的な取組を進めていくことが基本となる。

 

(4)経営者に求められる役割

 

経営者においては、1(1)の労働時間等の設定の改善を図る趣旨についての理解を深め、労使による自主的な取組を基本とした上で、自ら主導して職場風土改革のための意識改革、柔軟な働き方の実現等に取り組み、労働時間等の設定の改善に努めることが重要である。

その際には、例えば、経営者の姿勢を明確にするとともに、企業内の推進体制を確立するためにも、役員等が指揮し、労働時間等の設定の改善に取り組むことなどが考えられる。

 

(5)他の法令、計画等との連携

 

この指針は、労働時間等の設定に係る他の法令、計画、指針等と矛盾するものではなく、それらを前提に、事業主等が留意すべき事項について定めるものである。したがって、事業主が労働時間等の設定の改善を図るに当たっては、憲章及び行動指針を踏まえて取り組むとともに、次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)第7条第1項〔=次世代育成支援対策推進法第7条第1項〕に規定する行動計画策定指針少子化社会対策大綱」(平成27年3月20日閣議決定)等を踏まえた少子化対策等にも取り組むことが必要である。

 

〔※ 今般の改正により、従来、「『子ども・子育てビジョン』(平成22年1月29日閣議決定)」とあったのが、上記のように、「少子化社会対策大綱」等に改められています。〕

 

なお、行動指針においては、仕事と生活の調和した社会の実現に向けた企業、働く者、国民、国及び地方自治体の取組を推進するための社会全体の目標として別表〔※ 引用省略〕のとおり定められているところである。しかし、特に年次有給休暇の取得率については、目標に比べて顕著な改善が見られない状況にある。事業主が労働時間等の設定の改善を図るに当たっては、このような社会全体の目標の内容も踏まえ、各企業の実情に応じて仕事と生活の調和の実現に向けて計画的に取り組むことが必要である。

 

 

2 事業主等が講ずべき労働時間等の設定の改善のための措置

 

事業主等は、労働時間等の設定の改善を図るに当たり、1の基本的考え方を踏まえつつ、労働者と十分に話し合うとともに、経営者の主導の下、次に掲げる措置その他の労働者の健康と生活に配慮した措置を講ずるよう努めなければならない。

 

(1)事業主が講ずべき一般的な措置

 

イ 実施体制の整備

 

(イ)実態の把握

 

事業主が労働時間等の設定の改善を図るためには、まず、自己の雇用する労働者の労働時間等の実態について適正に把握していることが前提となる。したがって、事業主は、その雇用する労働者の始業・終業時刻、年次有給休暇の取得、時間当たりの業務負担の度合い等労働時間等の実態を適正に把握すること。

 

(ロ)労使間の話合いの機会の整備

 

労働時間等の設定の改善は、それぞれの労働者の抱える事情や企業経営の実態を踏まえ、企業内における労使の自主的な話合いに基づいて行われるべきものである。また、それぞれの企業の実情に通じた労使自身の主体的な関与がなければ、適切な労働時間等の設定の改善はなしえない。したがって、労働時間等の設定の改善に関して、企業内において労使間の十分な話合いが行われることが必要である。

こうした趣旨に基づき、法において企業内の労働時間等の設定の改善に係る実施体制の整備について事業主の努力義務が定められていることを踏まえ、事業主は、労働時間等設定改善委員会及び労働時間等設定改善企業委員会(以下「設定改善委員会等」という。)をはじめとする労使間の話合いの機会を整備すること。

 

〔※ 労働時間等設定改善企業委員会の創設に伴い、上記の下線部分が追加されています。次の「また」以下・②の終わりまで、も追加されています。〕

 

また、このような労使間の話合いの機会を設けるに当たっては、次に掲げる事項に留意すること。

 

① 設定改善委員会等の構成員について、労働者の抱える多様な事情が反映されるよう、性別、年齢、家族構成等並びに育児・介護、自発的な職業能力開発等の経験及び知見に配慮することが望ましいこと。

 

② 設定改善委員会等の決議は、一定の要件を満たすことを条件に、労働基準法(昭和22年法律第49号)上の労働時間等に関する規定に係る特例〔※ 労使協定に代替する決議です〕が認められているので必要に応じてその活用を図ること。 

 

 

(ハ)個別の要望・苦情の処理

 

労働時間等の設定の改善を図るためには、事業主が、労働者各人からの労働時間等に係る個別の要望・苦情に誠意をもって耳を傾け、善後策を講じることが必要である。このため、事業主は、このような要望・苦情に応じるための担当者の配置や処理制度の導入を図ること。

 

(ニ)業務の見直し等

 

労働時間等の設定の改善を図るに当たっては、業務内容や業務体制の見直し、生産性の向上等により、より効率的に業務を処理できるようにすることが必要である。このため、事業主は、必要に応じて、業務計画の策定等による業務の見直しや要員確保等を図ること。

 

(ホ)労働時間等の設定の改善に係る措置に関する計画

 

労働時間等の設定の改善をより確実にするには、計画的な取組が望ましい。このため、事業主は、具体的な措置の内容、導入・実施の予定等に係る計画を作成し、これに基づいて、労働時間等の設定の改善を推進すること。この場合、労働時間等の設定の改善に係る措置についての具体的な目標を、それぞれの事情を踏まえつつ、自主的に設定することが望ましい。なお、計画の策定に当たっては、労使間の話合いの機会の重要性に鑑み、設定改善委員会等をはじめとする労使間の話合いの機会において労働者の意見を聴くなど、労働者の意向を踏まえたものとするようにすること。また、策定された計画については、随時、その効果を検証し、必要に応じて見直しを行うこと。

 

ロ 労働者の抱える多様な事情及び業務の態様に対応した労働時間等の設定

 

業務の閑散期においても繁忙期と同様の労働時間等の設定を行うことは、事業主にとっても、労働者にとっても得るものが少ない。このため、時季や日に応じて業務量に変動がある事業場については、変形労働時間制、フレックスタイム制を活用すること。特に、年間を通しての業務の繁閑が見通せる業務については、1 年単位の変形労働時間制を活用して、労働時間の効率的な配分を行うこと。また、フレックスタイム制の活用に当たっては、労働者各人が抱える多様な事情を踏まえ、生活時間の確保にも十分な配慮をすること。

また、業務の進め方について労働者の創造性や主体性が必要な業務については、労働時間等の設定についても、労働者の裁量にゆだねることが業務の効率的な遂行につながり、労働者の生活時間の確保にも資する場合がある。このため、事業主は、そのような業務に携わる労働者については、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制の活用も検討すること。裁量労働制を活用する場合には、労働者が抱える多様な事情に配慮するとともに、自己の雇用する労働者の労働実態を適切に把握し、必要に応じて、年次有給休暇の取得奨励や労働者の健康に十分配慮した措置を講ずること。

 

 

〔※ 次の「ハ 年次有給休暇を取得しやすい環境の整備」の個所は、全面的に改正されています。〕

 

ハ 年次有給休暇を取得しやすい環境の整備

 

(イ)年次有給休暇の重要性

 

労働者が心身の疲労を回復させ、健康で充実した生活を送るためには、原則として労働者がその取得時季を自由に設定できる年次有給休暇の取得が必要不可欠である。また、育児・介護等に必要な時間の確保にも資すると考えられる。特に、労働者が仕事を重視した生活設計をすることにより、労働が長時間に及ぶ場合においては、年次有給休暇の取得が健康の保持のために重要である。

しかしながら、年次有給休暇については、周囲に迷惑がかかること、後で多忙になること、職場の雰囲気が取得しづらいこと等を理由に、多くの労働者がその取得にためらいを感じている。逆に、その取得にためらいを感じない労働者がその理由として掲げているのは、職場の雰囲気が取得しやすいこと等となっている。 年次有給休暇の取得は、企業の活力や競争力の源泉である人材がその能力を十分に発揮するための大きな要素であって、生産性の向上にも資するものであり、企業にとっても大きな意味を持つものである。さらに、その取得率が向上すれば、経済・雇用面への効果も期待できる。 

 

(ロ)年次有給休暇に対する意識の改革に向けた措置

 

(イ)を踏まえ、事業主は、年次有給休暇の完全取得を目指して、経営者の主導の下、取得の呼びかけ等による取得しやすい雰囲気づくりや、労使の年次有給休暇に対する意識の改革を図ること。

 

① 年次有給休暇管理簿の作成・周知

 

年次有給休暇の取得促進を図るに当たっては、労働者のみならず、当該労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者も当該労働者の年次有給休暇の取得状況を把握することが重要である。労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第24条の7〔=労基法施行規則第24条の7(労基法のパスワード)〕の規定により、年次有給休暇管理簿の作成が義務付けられているところ、使用者は年次有給休暇管理簿を作成するのみならず、年次有給休暇管理簿の確認を行い、年次有給休暇の取得状況を労働者及び当該労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者に周知すること。

また、労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者が、取得が進んでいない労働者に対して、業務の負担軽減を図る等労務管理上の工夫を行い、年次有給休暇の取得につなげるなど、年次有給休暇の取得促進に年次有給休暇管理簿を活用すること。

 

② 計画的な年次有給休暇の取得

 

計画的な年次有給休暇の取得は、年次有給休暇取得の確実性が高まり、労働者にとっては予定どおりの活動を行いやすく、事業主にとっては計画的な業務運営を可能にする等効用が高い。したがって、年次有給休暇の取得促進を図るためには、特に、計画的な年次有給休暇取得の一層の推進を図ることが重要である。

計画的な年次有給休暇の取得には、労使間で1年間の仕事の繁閑や段取り及び当面達成すべき目標としての取得率の目安を話し合うことが必要であり、労使双方にとって合理的な仕事の進め方を理解し合うためにも有益な手段であると考えられる。

事業主は、業務量を正確に把握した上で、労働者ごとの基準日や年度当初等に聴取した希望を踏まえた個人別年次有給休暇取得計画表の作成、年次有給休暇の完全取得に向けた取得率の目標設定の検討及び業務体制の整備を行うとともに、取得状況を把握すること。あわせて、労働基準法第39条第6項の規定に基づく年次有給休暇の計画的付与制度の活用を図り、その際、連続した休暇の取得促進に配慮するとともに、当該制度の導入に向けた課題及び解決策について検討すること。

また、設定改善委員会等をはじめとする労使間の話合いの機会において年次有給休暇の取得状況を確認する制度を導入するとともに、取得率向上に向けた具体的な方策を検討すること。

なお、同条第7項〔=使用者の時季指定義務〕において、使用者は、原則として年次有給休暇の日数のうち5日(同条第5項〔=労働者の時季指定〕又は第6項〔=計画的付与〕の規定により労働者の請求等に従って年次有給休暇を与えた場合にあっては、当該与えた有給休暇の日数分を除く。)については、時季を指定して与えることとされており、計画的な年次有給休暇の取得に係る取組は当該義務を果たすことにもつながるものであることから、十分に取り組むことが必要である。

 

③ 年次有給休暇の連続取得

 

プラスワン休暇(週休日等に年次有給休暇を組み合わせた連続休暇をいう。)や週休日等と年次有給休暇とを組み合わせた1週間から2週間程度の連続した長期休暇の取得促進を図ること。その際、当該事業場の全労働者が長期休暇を取得できるような制度の導入に向けて検討するとともに、取得時期については、休暇中の渋滞、混雑の緩和、労働者の経済的負担の軽減などの観点から分散化を図り、より寛げる休暇となるよう配慮すること。

 

④ 年次有給休暇の時間単位付与制度等

 

労働基準法第39条第4項の規定に基づく年次有給休暇の時間単位付与制度(以下「時間単位付与制度」という。)の活用や、半日単位での年次有給休暇の利用について、連続休暇取得及び1日単位の取得の阻害とならない範囲で、労働者の希望によるものであることを前提としつつ、検討すること。

 

⑤ 年次有給休暇の早期付与

 

仕事と生活の調和や、労働者が転職により不利にならないようにする観点から、労働基準法第39条第1項及び第3項〔=比例付与〕に規定する雇入れ後初めて年次有給休暇を与えるまでの継続勤務期間を短縮すること、同条第2項及び第3項に規定する年次有給休暇の最大付与日数に達するまでの継続勤続期間を短縮すること等について、事業場の実情を踏まえ検討すること。

 

⑥ 子どもの学校休業日等に合わせた年次有給休暇の取得促進

 

地域の実情に応じ、労働者が子どもの学校休業日や地域のイベント等に合わせて年次有給休暇を取得できるよう配慮すること。 

 

 

ニ 時間外・休日労働の削減

 

時間外・休日労働は、通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に行うものである。

 

〔※ 上記下線部分は、改正前は、「所定外労働は臨時、緊急の時にのみ」とありました。〕

 

事業主は、その雇用する労働者の健康で充実した生活のため、労働時間に関する意識の改革、「ノー残業デー」又は「ノー残業ウィーク」の導入・拡充等により、今後とも時間外・休日労働の削減を図ること。特に、休日労働を避けること。また、時間外・休日労働を行わせた場合には、代休の付与等により総実労働時間の短縮を図ること。労働者が私生活を重視した生活設計をし、時間外・休日労働を望まない場合は、時間外・休日労働の削減について一層の配慮をすること。

 

〔※ 以下の「また」から(ニ)の終わりまでは、全面的に改正されています。〕

 

また、時間外労働についての上限は、労働基準法第36条第3項の規定に基づき原則として月45時間及び年360時間であり、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、上限は年720時間であり、その範囲内において①複数月の平均では休日労働を含んで80時間以内、②単月では、休日労働を含んで100時間未満、③同項限度時間(以下「限度時間」という。)を超えることができる月数は、1年について6か月以内に限られ、これらに違反する場合は同法の規定による罰則の適用があることに留意すること。

 

なお、労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針(平成30年厚生労働省告示第323号)〔=労基法のこちら以下〕に基づき、時間外・休日労働について、次に掲げる事項に留意すること。

 

(イ)時間外・休日労働協定において限度時間を超えて労働させることができる場合を定めるに当たっては、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合をできる限り具体的に定めなければならず、「業務の都合上必要な場合」、「業務上やむを得ない場合」など恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものを定めることは認められないこと。〔=指針第5条第1項労基法のこちら以下

 

 (ロ)時間外・休日労働協定については、原則として限度時間を超えないものとされていることに十分留意し、業務の見直し等により、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間等を限度時間にできる限り近づけるように努めなければならないこと。〔=指針第5条第2項労基法のこちら以下

 

(ハ) 時間外・休日労働協定において限度時間を超えて労働時間を延長して労働させることができる時間に係る割増賃金の率を定めるに当たっては、法定割増賃金率を超える率とするように努めなければならないこと。〔=指針第5条第3項労基法のこちら以下

 

(ニ)時間外・休日労働協定において休日の労働を定めるに当たっては労働させることができる休日の日数をできる限り少なくし、及び休日に労働させる時間をできる限り短くするように努めなければならないこと。 〔=指針第7条労基法のこちら以下

 

 

ホ 労働時間の管理の適正化

 

近年、業務の困難度の高さとあいまって、時間的に過密な業務の運用により、労働者に疲労の蓄積や作業の誤りが生じ、健康障害や重大な事故につながることが懸念されている。また、時間的に過密な業務の運用は、生産性の向上を阻害しかねない。このため、事業主は、時間的に過密とならない業務の運用を図ること。

 

 

ヘ 多様な正社員、ワークシェアリング、テレワーク等の活用

 

〔※ 従来は、上記ヘのタイトルは、「ワークシェアリング、在宅勤務、テレワーク等の活用」でした。以下のこのヘの部分は、改正された個所が多いです。〕

 

事業主は、多様な働き方の選択肢を拡大するため、労働時間等が限定された多様な正社員として勤務する制度やワークシェアリングの導入に努めること。

 

多様な正社員としての働き方は、育児・介護等の事情により長時間労働が困難な者について、就業機会の付与とその継続、能力の発揮を可能とする働き方である。

その活用に当たっては、人事労務管理、経営状況等の事情も踏まえ、当該制度の導入の可否、制度の内容及び処遇については、各企業や事業場において労使で十分に話し合うこと

が必要である。

 

また、テレワークは、職住近接の実現による通勤負担の軽減に加え、多様な働き方の選択肢を拡大するものであり、働く意欲を有する者が仕事と生活を両立させつつ、能力を発揮できるようにするためにも、その活用を図ること。

 

その際には、厚生労働省労働基準局長及び雇用環境・均等局長が定めた「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」〔=労基法のこちら〕に基づき、適切な労務管理の下でのテレワークの実現を図ること。

 

〔※ 上記のガイドラインについては、令和3年3月に、このガイドラインを改定した新たなテレワークに関するガイドラインが公表されました(令和3年3月25日公表)。

テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」です(労基法のこちら)。〕

 

また、テレワークの制度を適切に導入するに当たっては、労使で認識に齟齬が生じないように、あらかじめ導入の目的、対象となる業務及び労働者の範囲、テレワークの方法等について、労使で十分に協議することが望ましいこと。さらに、実際にテレワークを行うか否かは本人の意思によることとすべきであること。 

 

〔※ 次のトは、新設されました。〕

 

ト 終業及び始業の時刻に関する措置 

 

(イ)深夜業の回数の制限

 

深夜業(交替制勤務による夜勤を含む。以下同じ。)は、通常の労働時間と異なる特別な労働であり、労働者の健康の保持や仕事と生活の調和を図るためには、これを抑制することが望ましいことから、深夜業の回数を制限することを検討すること。

 

(ロ)勤務間インターバル

 

勤務間インターバル(前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息を確保することをいう。以下同じ。)は、労働者の生活時間や睡眠時間を確保し、労働者の健康の保持や仕事と生活の調和を図るために有効であることから、その導入に努めること。なお、当該一定時間を設定するに際しては、労働者の通勤時間、交替制勤務等の勤務形態や勤務実態等を十分に考慮し、仕事と生活の両立が可能な実効性ある休息が確保されるよう配慮すること。

 

(ハ)朝型の働き方

 

一定の時刻以降に働くことを禁止し、やむを得ない場合は始業前の朝の時間帯に業務を処理する等のいわゆる朝型の働き方は、勤務間インターバルと同様の効果をもたらすと考えられることから、その導入を検討すること。

なお、やむを得ず時間外労働を行った場合は、割増賃金を適切に支払わなければならないことに留意するとともに、時間外労働をできる限り短くするよう努めること。

 

チ 国の支援の活用

 

事業主が以上の取組を進めるに当たっては、事業主の労働時間等の設定の改善を促進するため国が行う支援制度を積極的に活用すること。

また、労働時間等の設定の改善に係る措置に関する計画については、同業他社と歩調をそろえてこのような計画を作成し、実施することが効果的と考えられる。このため、同一の業種に属する複数の事業主が共同して労働時間等設定改善実施計画を作成する場合には、法により国の支援が行われるので、そうした支援制度を積極的に活用すること。

 

 

(2)特に配慮を必要とする労働者について事業主が講ずべき措置

 

労働者各人の健康と生活に配慮するには、その前提として、事業主が、2(1)イ(イ)に記した労働時間等の実態を把握することに加え、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)等を遵守しつつ、労働者各人について配慮すべき事情を、必要に応じて、把握することが望ましい。なお、このような労働者各人の事情を理由として、その労働者に対して不利益な取扱いをしないこと。

 

イ 特に健康の保持に努める必要があると認められる労働者

 

事業主は、特に健康の保持に努める必要があると認められる労働者についても、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)に基づいて、健康診断の結果を踏まえた医師等の意見又は面接指導の結果を踏まえた医師の意見を勘案し、必要があると認めるときは、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少その他の労働時間等に係る措置も適切に講じること。また、病気休暇から復帰する労働者については、短時間勤務から始め、徐々に通常の勤務時間に戻すこと等円滑な職場復帰を支援するような労働時間等の設定を行うこと。

そして、労働者の健康を守る予防策として、厚生労働大臣が定めた「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を踏まえたメンタルヘルスケアの実施とあわせ、疲労を蓄積させない又は疲労を軽減させるような労働時間等の設定を行うこと。特に、時間外・休日労働の削減に努めること。時間外・休日労働が多い労働者については、代休やまとまった休暇の付与等を行い、疲労の回復を図らせること。恒常的に時間外・休日労働が多い部署については、業務の見直しを行う他、配置転換を行う等により、労働者各人ごとの労働時間の削減を行うこと。

 

ロ 子の養育又は家族の介護を行う労働者

 

事業主は、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)等を遵守し、育児休業、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、所定外労働の免除、時間外労働の制限、深夜業の制限、所定労働時間の短縮措置等により労働時間等の設定の改善を行うとともに、その内容を労働者に積極的に周知する等制度を利用しやすい環境の整備を図ること。

特に、育児等を行う男性は、増加しているものの依然低水準にとどまり、また、出産後の女性が就業継続を希望しながら離職を余儀なくされる場合が見られる現状を踏まえ、男女が共に職業生活と家庭生活の両立を実現できるよう、一層の配慮をすること。

その際には、行動計画策定指針7の1に掲げられた事項にも留意し、子どもの出生時における父親の休暇制度の整備や男性の育児休業の取得促進等男性が育児等に参加しやすい環境づくり、より利用しやすい育児休業制度の実施(法定の期間、回数等を上回る措置を実施すること、休業期間中の経済的援助を行うこと等)等にも努めること。

さらに、時間単位付与制度の活用も含めた年次有給休暇の取得促進、時間外・休日労働の削減等により、子の養育又は家族の介護に必要な時間の確保を図ること。

これらの子の養育又は家族の介護を行う労働者に配慮した労働時間等の設定の改善に当たっては、各企業において労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするための雇用環境の整備に関する取組の状況や課題を把握し、各企業の実情に応じ、必要な対策を実施していくことが重要であるが、その際、厚生労働省雇用環境・均等局長が定めた「両立指標に関する指針」を活用することも効果的である。

 

ハ 妊娠中及び出産後の女性労働者

 

事業主は、労働基準法を遵守し、産前産後の女性労働者に休業を取得させるとともに、妊娠中及び産後1年を経過しない女性が請求した場合においては、時間外労働、休日労働、深夜業等をさせないこと。

また、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)等を遵守し、その雇用する女性労働者が、母子保健法(昭和40年法律第141号)の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにするとともに、当該保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために勤務時間の短縮、休業等の措置を講じること。

 

 

ニ 公民権の行使又は公の職務の執行をする労働者

 

事業主は、労働基準法第7条において、労働者が公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならないこととされていることを踏まえ、公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行する労働者のための休暇制度等を設けることについて検討すること。

なお、労働者が裁判員の職務を行う場合については、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成16年法律第63号)第100条において、労働者が当該職務を行うために休暇を取得したこと等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこととされていることに留意すること。

 

ホ 単身赴任者

 

単身赴任者については、心身の健康保持、家族の絆の維持、子の健全な育成等のため、休日は家族の元に戻って、共に過ごすことが極めて重要である。このため、事業主は、休日の前日の終業時刻の繰り上げ及び休日の翌日の始業時刻の繰り下げ等を行うこと。また、休日前後の年次有給休暇について、時間単位付与制度の活用や労働者の希望を前提とした半日単位の付与を検討すること。さらに、家族の誕生日、記念日等家族にとって特別な日については、休暇を付与すること。

 

ヘ 自発的な職業能力開発を図る労働者

 

企業による労働者の職業能力開発は今後とも重要であるが、サービス経済化、知識社会化が進むとともに、労働者の職業生活が長期化する中で、大学、大学院等への通学等労働者が主体的に行う職業能力開発を支援することの重要性も増してきている。このため、事業主は、有給教育訓練休暇、長期教育訓練休暇その他の特別な休暇の付与、始業・終業時刻の変更、勤務時間の短縮、時間外労働の制限等労働者が自発的な職業能力開発を図ることができるような労働時間等の設定を行うこと。

 

ト 地域活動等を行う労働者

 

災害を受けた地域の復興支援等におけるボランティア活動や地域活動等の役割の重要性に鑑み、事業主は、地域活動、ボランティア活動等へ参加する労働者に対して、その参加を可能とするよう、特別な休暇の付与、時間単位付与制度の活用、労働者の希望を前提とした年次有給休暇の半日単位の付与等について検討するとともに、休暇等に係る制度を設けた場合にはその周知を図ること。

 

チ その他特に配慮を必要とする労働者

 

事業主は、労働者の意見を聞きつつ、その他特に配慮を必要とする労働者がいる場合、その者に係る労働時間等の設定に配慮すること。

 

(3)事業主の団体が行うべき援助

 

同一業種、同一地域にある企業の間では、労働時間等の設定についてお互いに影響を及ぼし合うものと見込まれる。ついては、事業主による労働時間等の設定の改善を促進するためには、仕事と生活の調和の実現に向けた気運の醸成を図るとともに、業種ごと、地域ごとの取組を進めていくことが効果的である。このような取組を進めるに当たっては、業界及び地域の実情に通じた事業主の団体の関与が欠かせない。このため、事業主の団体は、傘下の事業主に対して、仕事と生活の調和に関する啓発資料の作成・配布等を通じた気運の醸成や普及啓発を図るとともに、労働時間等の設定の改善に関する、専門家による指導・助言、情報の提供その他の援助を行うなど、労働者団体とも連携しつつ、民間主導の取組を積極的に行うこと。

なお、事業主の団体がこのような援助を行うに当たっては、一定の条件を満たす場合、事業主団体に対して国が行う支援制度を利用できるので、積極的に活用すること。

 

(4)事業主が他の事業主との取引上配慮すべき事項

 

個々の事業主が労働時間等の設定の改善に関する措置を講じても、親企業からの発注等取引上の都合により、その措置の円滑な実施が阻害されることとなりかねない。

特に中小企業等において時間外・休日労働の削減に取り組むに当たっては、個々の事業主の努力では限界があることから、長時間労働につながる取引慣行の見直しが必要である。

このため、事業主は、他の事業主との取引を行うに当たっては、例えば、次のような事項について配慮をすること。

 

イ 週末発注・週初納入、終業後発注・翌朝納入等の短納期発注を抑制し、納期の適正化を図ること。

 

ロ 発注内容の頻繁な変更を抑制すること。

 

ハ 発注の平準化、発注内容の明確化その他の発注方法の改善を図ること。

 

〔引用終了。〕

 

 

以上で、労働時間等設定改善法を終わります。

 

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