2019年度版

 

第2項 当事者の意思に基づかない労働契約の終了

次に、当事者の意思に基づかない労働契約の終了事由について学習します。

労働契約の終了自体が直接的には当事者意思に基づいていない場合、即ち、労働契約の終了時に当事者の意思に基づき労働契約を終了させる行為がない場合です。

 

例えば、期間の定めがある労働契約における期間の満了も、広くは、期間を定めたという当事者意思に基づく終了事由ともいえますが、期間の満了により契約が自動終了するという点では、契約の終了自体は直接的には意思に基づいていない場合(契約の終了時に当事者の意思に基づき終了させる行為がない場合)と整理できます(単に整理の便宜上の問題ですから、大雑把に考えて頂いて結構です)。

 

主要なものとして、期間の満了定年到達当事者の消滅等があります。

とりわけ、有期労働契約における期間の満了の問題は重要であり、ここでは有期労働契約の全般について整理します。

 

以下、順に見ていきます。

 

 

§1 期間の満了

期間の定めのある労働契約有期労働契約)については、期間の満了により労働契約が当然に終了するのが原則です = 自動終了の効果。 

 

なお、以下、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を締結した労働者を「有期契約労働者」と、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結した労働者を「無期契約労働者」ということがあります。

 

 

有期労働契約の全体構造

まず、有期労働契約の全体構造を再度まとめておきます(既述の「労働契約の成立」の「労働契約の期間」の個所(こちら)においても、簡単に紹介しました。ここでは詳しく学習します)。

 

有期労働契約を、「発生(成立)➡ 変更(展開)➡ 消滅(終了)」の時系列の視点で整理していきます。

 

 

 有期労働契約の全体構造:

 

(一)有期労働契約の発生(成立)

 

◆有期労働契約の発生(成立)に関連する労基法、労働契約法及び民法の主な規定を挙げますと、次の通りです。

 

1 労働契約の期間上限労基法第14条第1項こちら以下

 

➡ 原則として3年上限です。

 

 

2 期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違の禁止労契法第20条こちら以下。この2は、平成24年の労働契約法の改正により新設された重要な規定です。平成25年4月1日施行)

 

 

3 労働契約締結の際労働条件の明示労基法第15条第1項こちら以下

 

労働契約締結の際の「労働契約の期間」についての絶対的明示事項として、「労働契約の期間に関する事項」と「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」があります。後者は、平成24年の労基法(施行規則)の改正により新設された規定です(平成25年4月1日施行)。

 

 

4 契約期間の長期化配慮義務(必要以上に短い期間による反復更新をしない配慮義務)労働契約法第17条第2項こちら

 

 

 

(二)有期労働契約の変更

 

○ 有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換(いわゆる無期転換ルール) 労働契約法第18条こちら以下平成25年4月1日施行)

 

 

 

(三)有期労働契約の消滅(終了)

 

○ 有期労働契約の終了に関連する規定は、以下の通り、大きくに分かれます。

 

1 民法上、期間の定めのある労働契約(雇用契約)は、やむを得ない事由があるとき以外は、各当事者は、解除できない民法第628条)のが原則です = 中途解約の制限。

 (期間を定めた当事者間の合意(契約)の尊重の趣旨です。)

 

➡ そこで・・・

 

(1)労働者については

 

労働契約の期間満了前は、やむを得ない事由がない限り、解約できないのが原則であるため、労働者の人身拘束の問題が生じます。

 

➡ 従って、労基法が、有期労働契約期間の上限を定めました(労基法第14条第1項)。(上記の1ですでに触れました。)

 

 

(2)使用者については

 

労働契約法第17条第1項が、上記民法第628条を徹底し、使用者は、期間満了前は、やむを得ない事由がない限り解雇(解約)できないことを強行規定化しました = 雇用保障の効果。

 

 

2 他方、有期労働契約は、期間の満了により、当然に終了するのが原則です(それが当事者間の合意(契約)であるためです)= 自動終了の効果。

そこで、期間満了の際は、基本的には、合意により更新がなされるか(あるいは、民法第629条第1項の黙示の更新があるか)、それとも、更新されないか(雇止め)が問題となるだけとなります。

この使用者が有期労働契約の更新を拒否することを「雇止め」といいます。

 

しかし、使用者による雇止めを無制約に認めますと、有期契約労働者は不安定な地位におかれることになるため、その保護が問題となります。

この雇止めに係る有期契約労働者の保護に関する規定としては、次のようなものが挙げられます。

 

(1)雇止めに関する基準等労基法第14条第2項、第3項。「有期労働契約の締結更新及び雇止めに関する基準」(こちら以下))

 

 

(2)雇止め法理労働契約法第19条こちら以下)(平成24年8月10日施行)

 

 

 

 

非正規雇用

なお、有期労働契約(有期契約労働者)の問題は、いわゆる非正規雇用(非典型雇用)の問題の一つに位置づけられます。※1、※2

 

正規雇用とは、一般に、

(Ⅰ)期間の定めのない労働契約(無期労働契約)で、

(Ⅱ)使用者に直接雇用されている、

(Ⅲ)所定労働時間がフルタイム

正規従業員としての雇用をいいます(なお、統計調査においては、職場での呼称も判断基準とすることがあります)。 

 

非正規雇用とは、上記の正規雇用以外の雇用をいいます。

 

従って、正規雇用と非正規雇用との違いとして、一般に、次の3点が挙げられます。

 

(Ⅰ)労働契約の「期間」の問題 = 無期労働契約か有期労働契約かの問題

 

(Ⅱ)直接雇用か間接雇用かの問題

 

➡ 間接雇用の例として、労働者派遣業務請負等があります(派遣先等において間接雇用の関係となります)。

 

(Ⅲ)「労働時間」の問題 = フルタイムかパートタイムかの問題

 

 

このうち、(Ⅰ)の労働契約の「期間」については、以下で、有期労働契約における期間の満了の問題を学習します。

(Ⅱ)については、労働一般の労働者派遣法で学習しますが、労基法でも、各個所で派遣に関する責任分担の問題等が生じます。

(Ⅲ)については、労働時間に関して、労基法で学習するほか、短時間労働者に関して、労働一般のパートタイム労働法で学習します。

 

 

※1 非正規雇用(有期労働契約)の問題点

非正規雇用の問題点として、上記(Ⅰ)の「有期労働契約」に関する問題の所在を見ておきます(川口美貴先生の「労働法」596頁以下その他の文献を参考にしています)。

 

有期労働契約に関する問題は、大別して2つあるとされます。

一つが、労働者の雇用の不安定さ(契約期間の満了により、有期労働契約は当然に終了するのが原則です)、もう一つが、労働条件の格差(期間の定めのない労働契約を締結している労働者との労働条件の格差が大きいこと)です。

(野川「労働法」410頁も、この雇用の安定と公正な処遇の問題を非正規雇用労働者に共通する課題としています。)

 

1 前者の「労働者の雇用の不安定さ」という問題を解決する方法としては、次の(1)~(3)があります。

 

(1)有期労働契約を締結することができる事由の限定(「入口規制」)

 

(2)一定の要件を充足する有期労働契約の無期労働契約への転換(「中間規制」)

 

(3)解雇・契約更新拒否の制限(「出口規制」)

 

 

※ この(1)~(3)については、大まかに、(1)「入口規制 = 発生の問題」、(2)「中間規制 = 変更の問題」、(3)「出口規制 = 消滅の問題」と考えるとわかりやすいです。

具体的には、以下の通りです。

 

 

日本では、(1)の「入口規制」(例えば、有期労働契約を締結することができる事由について、一時的・臨時的労働に従事する場合に限定する等)は、採用されていません

(平成24年の労働契約法の改正の際に入口規制の導入の是非が検討されましたが、雇用機会の減少や有期労働契約が認められる事由に関する紛争の多発化に対する懸念等から、その導入が見送られたとされます。)

 

(2)の「中間規制」については、「無期転換ルール」(前記の(二)有期労働契約の変更(こちら))が規定されました(ちなみに、無期転換ルールを出口規制に位置づけることも多いです)

 

(3)の「出口規制」については、例えば、「有期労働契約期間満了前の解雇の制限」(前記の(三)有期労働契約の終了の1こちらを参考)、「雇止めに関する基準等」(こちら)、「雇止め法理」(こちら)が規定されています。 

 

 

2 また、「労働条件の格差」については、労働契約法第20条において「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違の禁止」(こちら)が規定されました。 

いわゆる「内容規制」の問題です。 

 

 

※2 均衡待遇のルール

なお、上記※1の2(直前の記述)は、労働条件の格差に対応するための均衡待遇のルールの一つですが、非正規雇用労働者一般についての主な均衡待遇のルールは、次の通りです。

 

 

有期契約労働者

 

(ⅰ)前記2の「無期契約労働者との不合理な労働条件の相違の禁止」(労働契約法第20条)。

 

(ⅱ)労働契約法第3条第2項の「就業実態に応じた均衡考慮の原則」等。

 

 

パートタイム労働者

 

(ⅰ)「通常の労働者との不合理な待遇の相違の禁止」(パートタイム労働法第8条(労働一般のパスワード)こちら以下)。

 

(ⅱ)「通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止」(同法第9条)。

 

  

派遣労働者

 

(ⅰ)「派遣元による均衡を考慮した待遇の確保のための措置」(労働者派遣法第30条の3)。

 

(ⅱ)「待遇に関する事項等の説明義務」(同法第31条の2)。

 

(ⅲ)「派遣先による均衡待遇の確保」(同法第40条第2項~第6項)等。  

 

 

・【参考:働き方改革関連法による2020年(平成32年)4月1日施行の改正事項】

 

ちなみに、上記の均衡待遇のルールについては、2020年(平成32年)4月1日施行の改正(働き方改革関連法(【平成30.7.6法律第71号】)。なお、派遣法関係等を除き、中小事業主については、2021年(平成33年)4月1日施行です)により、「雇用形態に関わりない公正な処遇の確保」という見地からより整備されます。

 

この「雇用形態に関わりない公正な待遇の確保」のうち、「賃金」に関する不合理な待遇の相違の禁止を問題とするものが、いわゆる「同一労働同一賃金の原則」(労働の内容が同一(ないし同等)であれば、同一の賃金を支払うべきとの考え方)の問題といえます。

 

今回の平成31年度(2019年度)試験の対象ではありませんが、改正の方向性を知っておくことは無駄なことではありませんので、中心的な内容についてのみ、若干、触れておきます。

 

 

(1)有期契約労働者及びパートタイム労働者について

 

まず、有期契約労働者についての上記①の(ⅰ)(こちら)の「無期契約労働者との不合理な労働条件の相違の禁止」(労働契約法第20条)及び②の(ⅰ)(こちら)のパートタイム労働者についての「通常の労働者との不合理な待遇の相違の禁止」(パートタイム労働法第8条(労働一般のパスワード)こちら以下)が改正されます。

 

即ち、2020年(平成32年)4月1日施行の改正により、パートタイム労働法が「短時間・有期雇用労働法」(通称)に改称され、同法において、短時間労働者有期雇用労働者(事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者のこと。従来の労働契約法で定める有期契約労働者と同様です)に共通するルールが併せて規定されます。

これに伴い、有期契約労働者について「無期契約労働者との不合理な労働条件の相違の禁止」を定めていた労働契約法第20条は廃止され、同条の内容がパートタイム労働法第8条と統合されて、「不合理な待遇の禁止」を定める短時間・有期雇用労働法第8条(労働一般のこちら)に見直されます(この「不合理な待遇の禁止」を「均衡ルール」と表現しておきます)。

 

さらに、パートタイム労働者についての上記②の(ⅱ)(こちら)の「通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止」(パートタイム労働法第9条)についても、有期雇用労働者が併せて対象となり、「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止」に改められます(これを「均等ルール」と表現しておきます)。

 

 

(2)派遣労働者について

 

また、派遣労働者についての上記③の(ⅰ)(こちら)の「派遣元による均衡を考慮した待遇の確保のための措置」(労働者派遣法第30条の3(労働一般のパスワード))も大きく改正されます。

即ち、派遣労働者について、従来、規定がなかった「不合理な待遇の相違の禁止」(均衡ルール)及び「派遣先の通常の労働者と同視すべき派遣労働者の差別的取扱いの禁止」(均等ルール)の規定が改正後の同条(改正後派遣法第30条の3)において明記されます。

 

派遣労働者については、従来、「不合理な待遇の相違の禁止」の規定が定められていなかったことに注意です(「派遣先の通常の労働者と同視すべき派遣労働者」の規定も定められていませんでした)。

「不合理な待遇の相違の禁止」規定は、有期契約(雇用)労働者については、上記①の(ⅰ)(こちら)の「無期契約労働者との不合理な労働条件の相違の禁止」(労働契約法第20条)として、パートタイム労働者については、上記②の(ⅰ)(こちら)の「通常の労働者との不合理な待遇の相違の禁止」(パートタイム労働法第8条)として定められていました。

 

その際、原則として、派遣の通常の労働者との不合理な待遇の相違の禁止・差別的取扱いの禁止(派遣先均等・均衡方式。改正後の第30条の3第1項)が要請されます。

例外として、労使協定により一定の水準を満たす待遇を定めそれを遵守する場合には、当該協定対象派遣労働者については、派遣先均等・均衡方式は適用されず、労使協定により定める均等待遇が適用されます(労使協定方式。改正後の第30条の4)。

 

この例外の労使協定方式については、派遣先労働者との均等・均衡方式を貫くと、派遣労働者がキャリアを蓄積して派遣先を移動しても、派遣先労働者の賃金が低下する場合に、当該派遣労働者の賃金も低下し、派遣労働者の段階的・体系的なキャリア形成支援と不整合な事態を招きかねないことなどが考慮されたものです。

 

また、上記③の(ⅱ)(こちら)の「待遇に関する事項等の説明義務」(派遣法第31条の2)も改正され、派遣元事業主の説明義務が大幅に拡充されました。

 

 

以上のように、働き方改革関連法により、均衡待遇のルールの整備を中核とする「雇用形態に関わりない公正な処遇の確保」を目的とする改正が行われました。

 

 

※3 多様な正社員

なお、近年、「正規雇用」においても、「典型的な正規雇用」と「多様な(形態における)正社員」が区別されることがあります。

即ち、前述の通り、労働契約の期間の定めがない、直接雇用である、所定労働時間がフルタイムである者が、原則として、「正規雇用」とされますが、そのうち職務勤務地労働時間等が限定的でない正社員が「典型的な正規雇用」とされ、いずれかが限定的な正社員が「多様な正社員」とされています。

 

「正規雇用」の労働者と「非正規雇用」の労働者の働き方の二極化を緩和し、労働者一人ひとりのワーク・ライフ・バランスと、企業による優秀な人材の確保や定着の実現のため、職務、勤務地又は労働時間を限定した「多様な正社員」を労使双方にとって望ましい形で普及させることが求められるとされています(「『多様な正社員』の普及・拡大のための有識者懇談会報告書」参考。平成26年7月30日に公表された報告書です)。

 

この「『多様な正社員』の普及・拡大のための有識者懇談会報告書」については、労働一般の平成27年度の択一式問1において数肢出題されており、労働一般の労働契約法の個所でご紹介します(例:【択一式 労働一般 平成27年問1(労働一般のこちら)】)。

 

 

以下、有期労働契約について、発生(成立)に関する問題から順に見ていきます。

 

 

〔1〕発生(成立)

期間の定めのある労働契約(有期労働契約)の「発生(成立)」に関する諸制度を整理します。

 

 

〈1〉労働契約の期間の上限

まず、労働契約の期間の上限が定められています(第14条第1項)。

即ち、期間の定めのある労働契約(雇用契約)については、やむを得ない事由があるとき以外は、各当事者は、解除できない(民法第628条)のが原則ですから、労働者の人身拘束の危険が生じるため、労基法は有期労働契約の期間の上限(原則として3年)を定めています。

 

詳しくは、既述の「労働契約の成立」の「労働契約の期間」の個所(こちら以下)をご参照下さい。

 

 

 

〈2〉期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違の禁止(労働契約法第20条)

同一の使用者に使用されている有期契約労働者無期契約労働者との間において、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違は禁止されます(労働契約法第20条)。

 

 

【労働契約法】

労契法第20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)

有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置変更範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

 

 

○趣旨

有期契約労働者について、期間の定めがあることによる無期契約労働者との不合理な労働条件の相違を禁止することにより、均衡のとれた待遇を確保して、有期契約労働者の公正な処遇を図ろうとした趣旨です。

 

本条は、いわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者との労働条件の格差問題に対応しようとする規定であり、後述の通り、民事的効力があると解されているため、重要です。

労働契約法の平成24年の改正により新設された規定です(平成25年4月1日施行)。

 

 

※【ハマキョウレックス事件=最判平成30.6.1】(正社員と異ならない運転業務を行っている契約社員(有期契約労働者)のドライバーが、正社員にのみ諸手当等が支給されることの労契法第20条違反を主張して差額の支払や損害賠償等を請求した事案)では、本条の趣旨を次のように説明しています。

 

「同条は、有期契約労働者については、無期労働契約を締結している労働者(以下「無期契約労働者」という。)と比較して合理的な労働条件の決定が行われにくく、両者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ、有期契約労働者の公正な処遇を図るため、その労働条件につき、期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したものである。 

そして、同条は、有期契約労働者と無期契約労働者との間で労働条件に相違があり得ることを前提に、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情(以下「職務の内容等」という。)を考慮して、その相違が不合理と認められるものであってはならないとするものであり、職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であると解される。」

 

 

・【平成24年8月10日基発0810第2号】(以下、「平成24年改正法施行通達」といいます)は、本条の趣旨について、次のように述べています。

 

「有期契約労働者については、期間の定めのない労働契約を締結している労働者(以下『無期契約労働者』という。)と比較して、雇止めの不安があることによって合理的な労働条件の決定が行われにくいことや、処遇に対する不満が多く指摘されていることを踏まえ、有期労働契約の労働条件を設定する際のルールを法律上明確化する必要がある。

このため、有期契約労働者の労働条件と無期契約労働者の労働条件が相違する場合において、期間の定めがあることによる不合理な労働条件を禁止するものとしたものであること。」 

 

 

※ なお、本規定は、労働契約法で定められているという点には注意です。 

労働契約法では、労基法と異なり、罰則の適用や行政上の監督といった公法的側面がないという大きな違いがあります。

以下で紹介します労働契約法で定められている規定についても同様です。

 

※ この労契法第20条は、平成32年4月1日施行の改正により廃止され、「短時間・有期雇用労働法」第8条に統合されることについては、こちら以下の(1)でご紹介しました。 

 

※ なお、この労契法第20条について、平成30年6月1日の同日にハマキョウレックス事件(前掲)及び長澤運輸事件という重要な2つの最高裁判決が出されました。

この両判決は、平成31年度の試験においては出題必須といえます。事案、判決文等、詳しくは、労働契約法(労働一般のこちら以下)でご紹介しますが、ここでも、重要事項について触れておきます。

 

 

以下、要件及び効果についての注意点を、前掲の平成24年改正法施行通達をベースにしてまとめておきます。

 

 

一 要件

(一)期間の定めがあることによること

◆「期間の定めがあることによる」労働条件の相違であることが必要です。

 

「有期契約労働者と無期契約労働者との間で労働条件の相違があれば直ちに不合理とされるものではなく、法〔=労契法〕第20条に列挙されている要素を考慮して『期間の定めがあること』を理由とした不合理な労働条件の相違と認められる場合を禁止するものである」とされます(「平成24年改正法施行通達」第5の6(2)ア)。(不合理性の判断については、(三)で見ます。)

 

 

※ この点、【ハマキョウレックス事件=最判平成30.6.1】において、「『期間の定めがあることにより』とは、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が期間の定めの有無に関連して生じたものであることをいうものと解するのが相当である」と判示されました。

 

即ち、「労働契約法20条は、有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより相違していることを前提としているから、両者の労働条件が相違しているというだけで同条を適用することはできない。一方、期間の定めがあることと労働条件が相違していることとの関連性の程度は、労働条件の相違が不合理と認められるものに当たるか否かの判断に当たって考慮すれば足りるものということができる。

そうすると、同条にいう『期間の定めがあることにより』とは、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が期間の定めの有無に関連して生じたものであることをいうものと解するのが相当である。」としています。

 

例えば、有期契約労働者については、転勤が否定されているため無期契約労働者より基本給が低いような場合において、この基本給の相違は、転勤の有無を理由としたものであり、「期間の定めがあること」を理由としたものではなく、本条違反の問題とはならないといったような主張がなされる余地があります。

判例の考え方からは、このような場合にも、当該基本給の相違は期間の定めの有無に関連して生じたものであるとして、本条の射程に入りやすくなりそうです。つまり、因果関係を広く認めることが可能です。

 

なお、前記の「平成24年改正法施行通達」は、「期間の定めがあることを理由とした不合理な労働条件の相違」と表現していますが、今回の判例は、この「理由とした」の解釈に基準を示すことになると考えられます(もっとも、本条の文言上は、「期間の定めがあることによる」と規定されている以上、「理由とした」と言い換える必要もないでしょうが)。

 

(ちなみに、この労契法第20条の「理由とした」の解釈については、「平成24年改正法施行通達」では具体的に示されていませんが、不利益取扱いの禁止において、因果関係があることをいうものと解釈している通達があります(例えば、パートタイム労働法第24条第2項(労働一般のパスワード)の「短時間労働者が紛争の解決の援助を求めたことを理由とする不利益な取扱いの禁止」の【平成26.7.24基発0724第2号】等)。)

 

なお、以上の「関連性」の問題は、パートタイム労働法第8条(短時間労働者の待遇の原則)においても生じる可能性があり、詳しくは労働一般のこちらで触れています。

 

次に、2番目の要件です。

 

 

(二)「同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合」であること

◆「同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合」であることが必要とされます。

以下、詳しく見ます。 

 

1 同一の使用者

 

「同一の使用者」とは、「労働契約を締結する法律上の主体が同一であることをいうものであり、したがって、事業所(事業場)単位ではなく、労働契約締結の法律上の主体が法人であれば法人単位で、個人事業主であれば当該個人事業主単位で判断される」とされます。

 

即ち、事業所単位ではなく、事業主(法人、個人)単位で、同一の使用者性は判断されます(これは、後述の「無期転換ルール」(労働契約法第18条)における「同一の使用者」の判断と同様です)。

ただし、事業所が異なれば、同一の使用者に使用される無期契約労働者との労働条件の相違が合理的と判断されることはあり得ます。

 

※ なお、パートタイム労働法における「事業単位」の取扱いと働き方改革関連法による改正については、労働一般のこちら以下で触れています。

 

 

2 労働条件

 

「労働条件」には、「賃金や労働時間等の狭義の労働条件のみならず、労働契約の内容となっている災害補償、服務規律、教育訓練、付随義務、福利厚生等労働者に対する一切の待遇を包含する」とされます。 

 

 

(三)「当該労働条件の相違が、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(「職務の内容」)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるもの」であること

◆「当該労働条件の相違が、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(「職務の内容」)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるもの」であることです。

 

1 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度

 

(1)「労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」とは、「労働者が従事している業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」をいいます。

 

なお、この「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」という文言(これらを「職務の内容」と呼ぶことも含みます)や次で見ます「職務の内容及び配置の変更の範囲」という文言は、パートタイム労働法の「短時間労働者の待遇の原則」(同法第8条(労働一般のパスワード))や「通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止」(同法第9条)等においても使用されています(労働一般のこちら以下)。

 

 

(2)「当該職務の内容及び配置変更の範囲」は、「今後の見込みも含め、転勤、昇進といった人事異動や本人の役割の変化等(配置の変更を伴わない職務の内容の変更を含む。)の有無範囲を指す」とされます。即ち、人材活用の仕組みや運用等のことです。

 

 

(3)「その他の事情」は、「合理的な労使の慣行などの諸事情」が想定されます。

また、「職務の成果、意欲、能力又は経験等」(パートタイム労働法第10条(労働一般のパスワード)参考)、所定労働時間の長さ、勤続年数等も考慮されます。

 

※【長澤運輸事件=平成30.6.1】(定年退職後に有期労働契約により再雇用された者が、無期契約労働者と職務内容(トラックによるセメントの運搬等)等が同一であるにもかかわらず賃金に格差があったことが労働契約法第20条に違反するとして、差額の支払や損害賠償等を請求した事案)においては、定年退職後有期労働契約により再雇用された者であるという事情も、「その他の事情」に含まれると判示されました。

 

次の通りです。

 

「被上告人〔=会社〕における嘱託乗務員は、被上告人を定年退職した後に、有期労働契約により再雇用された者である。定年制は、使用者が、その雇用する労働者の長期雇用や年功的処遇を前提としながら、人事の刷新等により組織運営の適正化を図るとともに、賃金コストを一定限度に抑制するための制度ということができるところ、定年制の下における無期契約労働者の賃金体系は、当該労働者を定年退職するまで長期間雇用することを前提に定められたものであることが少なくないと解される。これに対し、使用者が定年退職者を有期労働契約により再雇用する場合、当該者を長期間雇用することは通常予定されていない。また、定年退職後に再雇用される有期契約労働者は、定年退職するまでの間無期契約労働者として賃金の支給を受けてきた者であり、一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることも予定されている。そして、このような事情は、定年退職後に再雇用される有期契約労働者の賃金体系の在り方を検討するに当たって、その基礎になるものであるということができる。

そうすると、有期契約労働者が定年退職後に再雇用された者であることは、当該有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かの判断において、労働契約法20条にいう『その他の事情』として考慮されることとなる事情に当たると解するのが相当である。」 

 

 

2 不合理性の判断

 

(1)「不合理」性の判断は、「有期契約労働者と無期契約労働者との間の労働条件の相違について、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、個々の労働条件ごとに判断されるものであること。とりわけ、通勤手当食堂の利用安全管理などについて労働条件を相違させることは、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して特段の理由がない限り合理的とは認められないと解される」とされます(「平成24年改正法施行通達」)。【過去問 労働一般 平成25年問1E(後掲)】 

 

 

(2)なお、文言上、「不合理と認められるものであってはならない」であり、「合理的と認められるものでなければならない」ではありません。

従って、例えば、当該労働条件の相違が不合理かどうか判断できないときは、本条違反には該当しないことになります。  

 

もともとこれは、EU諸国において、人権保障に係る差別的取扱いの禁止の原則と雇用形態に係る不利益取扱いの禁止の原則とが異なる類型に属するものと理解されていることが参考にされたものとされています。

つまり、性別や人種等を理由とした労働契約の内容の差別的取扱いのケースと労働契約が有期であることを理由とする不利益取扱いのケースとでは、当該取扱いの正当性の判断基準が異なるという考え方に基づいているものと解されます。

 

この点で、パートタイム労働法第8条の「短時間労働者の待遇の原則」における不合理性の判断方法と同様になります。

対して、例えば、労働契約法第10条(労基法のパスワード)で規定されています「就業規則の不利益変更」の要件については、就業規則の変更が「合理的なものである」ことが必要であり、本件の判断方法とは異なります。

 

 

※【ハマキョウレックス事件=最判平成30.6.1】も、同様の立場から、次のように判示しました。

 

「イ 次に、労働契約法20条は、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が、職務の内容等を考慮して不合理と認められるものであってはならないとしているところ、所論は、同条にいう『不合理と認められるもの』とは合理的でないものと同義であると解すべき旨をいう。

しかしながら、同条が『不合理と認められるものであってはならない』と規定していることに照らせば、同条は飽くまでも労働条件の相違が不合理と評価されるか否かを問題とするものと解することが文理に沿うものといえる。また、同条は、職務の内容等が異なる場合であっても、その違いを考慮して両者の労働条件が均衡のとれたものであることを求める規定であるところ、両者の労働条件が均衡のとれたものであるか否かの判断に当たっては、労使間の交渉使用者の経営判断尊重すべき面があることも否定し難い

したがって、同条にいう『不合理と認められるもの』とは、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理であると評価することができるものであることをいうと解するのが相当である。

そして、両者の労働条件の相違が不合理であるか否かの判断は規範的評価を伴うものであるから、当該相違が不合理であるとの評価を基礎付ける事実については当該相違が同条に違反することを主張する者が、当該相違が不合理であるとの評価を妨げる事実については当該相違が同条に違反することを争う者が、それぞれ主張立証責任を負うものと解される。」(証明責任については、のちに触れます。)

 

 

なお、【長澤運輸事件=平成30.6.1】において、有期契約労働者と無期契約労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するに当たり、次のような考え方が示されています。

 

「本件においては、被上告人〔=会社〕における嘱託乗務員と正社員との本件各賃金項目に係る労働条件の相違が問題となるところ、労働者の賃金が複数の賃金項目から構成されている場合、個々の賃金項目に係る賃金は、通常、賃金項目ごとに、その趣旨を異にするものであるということができる。そして、有期契約労働者と無期契約労働者との賃金項目に係る労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するに当たっては、当該賃金項目の趣旨により、その考慮すべき事情や考慮の仕方も異なり得るというべきである。

そうすると、有期契約労働者と無期契約労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するに当たっては、両者の賃金の総額を比較することのみによるのではなく当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当である。

なお、ある賃金項目の有無及び内容が、他の賃金項目の有無及び内容を踏まえて決定される場合もあり得るところ、そのような事情も、有期契約労働者と無期契約労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するに当たり考慮されることになるものと解される。」

 

 

 

(3)「例えば、定年後に有期労働契約で継続雇用された労働者の労働条件が定年前の他の無期契約労働者の労働条件と相違することについては、定年の前後で職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲等が変更されることが一般的であることを考慮すれば、特段の事情がない限り不合理と認められないと解される」とされます(「平成24年改正法施行通達」)。 

 

 

※【長澤運輸事件=平成30.6.1】では、この定年後退職に有期労働契約で継続雇用された労働者のケースが問題となりました。

詳細は、労働契約法のこちら以下(労働一般のパスワード)で見ますが、考え方のみ掲載しておきます。

 

この点、長澤運輸事件判決では、定年退職後に有期労働契約により再雇用された者であるときは、かかる事情を労働契約法第20条の「その他の事情」に含めて、不合理性の判断において考慮することはできるとされます(前述しました)。

即ち、使用者が定年退職者を有期労働契約により再雇用する場合は、当該者を長期間雇用することは通常予定されていないこと、定年退職後に再雇用される有期契約労働者は、定年退職するまでの間、無期契約労働者として賃金の支給を受けてきた者であり、一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることも予定されていることといった事情を基礎として賃金体系の在り方が検討されるのであり、このような事情を不合理性の判断の際に考慮することができます。

 

そして、定年退職後に有期労働契約により再雇用された者について、正社員との間に、職務内容及び変更範囲違いがある場合は、一般的には、その違いに応じた賃金差(基本給の額の相違)は許容されるといえるでしょう(前掲の平成24年改正法施行通達参考)。(ただし、問題となる待遇の性質・目的にもよります。)

対して、正社員と職務内容及び変更範囲同一である場合においても、定年退職後に有期労働契約により再雇用された者であるとして待遇に相違を設けることが認められるのかは問題です。このケースが、長澤運輸事件判決の事案でした。

 

この点は、問題となった待遇(労働条件)の性質・目的や当該事案の諸事情を考慮する必要がありますが、長澤運輸事件判決の事案の下では、正社員と定年退職後の再雇用有期労働契約者との基本給の額の相違について、その相違の額の程度が著しくないこと、当該者が定年退職後に再雇用された者であり、一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることができること、労働組合との団体交渉を経て、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給が開始されるまでの間、調整給を支給していることという事情を総合考慮して、不合理性が否定されました。

その他にも、諸手当の相違に関する不合理性が問題となり、精勤手当の支給の有無等については、不合理性が認められています。   

 

なお、改正後の短時間・有期雇用労働法第8条(労働一般のパスワード)や「同一労働同一賃金ガイドライン案」との関係については、労働契約法(労働一般のこちら)で触れています。

 

 

二 効果

不合理と認められた場合の効果

◆不合理と認められた場合の効果について、平成24年改正法施行通達は、本規定は民事上の効力が直接認められるものとしています。

(本条の立法趣旨(立法過程)から、本条が民事上(私法上)の効力を認められる規定であるという点では、争いがありません。)

 

この点、平成24年改正法施行通達は、次のように示しています。

 

「法第20条は、民事的効力のある規定であること。法第20条により不合理とされた労働条件の定め無効となり、故意・過失による権利侵害、すなわち不法行為として損害賠償が認められ得ると解されるものであること。また、法第20条により、無効とされた労働条件については、基本的には、無期契約労働者と同じ労働条件が認められると解されるものであること。」とされます。

 

 

(問題)

 

ただし、不合理な相違として当該有期契約労働者の労働条件を定める労働契約等が私法上無効とされた場合に、さらに、その無効となった労働条件が、比較対象とされた無期契約労働者の労働条件に当然に代替適用されてしまうのかについては、争いがあるところでした。

即ち、本条に民事上の効力が認められることには争いがないにしても、本条に有期契約労働者の労働条件を直接規律する効力(直律的効力・補充的効力)まで認められるのかが問題です(上記の平成24年改正法施行通達は、「基本的には、無期契約労働者と同じ労働条件が認められる」としていますから、原則として、直律的効力も認めているものと解されますが、「基本的には」としており、例外があることを想定しているようです(詳細は不明です))。

 

この点、例えば、通勤手当、食堂の利用、安全管理などに関する労働条件の相違が不合理であると認められたような場合は、当該有期契約労働者の労働契約等において、比較の対象となった無期契約労働者と同じ内容の労働条件が適用されると解して問題はなさそうです。

ただ、相違が問題となる労働条件は多様であり、例えば、昇進・昇格など、使用者の裁量が重視されるべきようなものもあります。

そこで、当然に比較の対象となる無期契約労働者と同じ労働条件が適用されると解するのは、場合によっては、使用者の経営の自由(経営判断)を制約し過ぎるおそれがあるかもしれません。 

そして、労契法第20条の文言上は、労契法第12条労基法第13条労組法第16条のように労働者の労働契約等に対する直律的効力を定めているわけではありません。

すると、不合理として無効となった有期契約労働者の労働条件については、当然に直律的効力が及ぶと解するのではなく、労働契約等の合理的解釈の問題とした方がよさそうに思えます。

 

 

以上の論点については、【ハマキョウレックス事件=最判平成30.6.1】において判断が示されました。

即ち、同判決は、労契法第20条私法上の効力を有するとしましたが(従って、同条に違反する労働条件の相違を設ける部分無効となり、また、当該相違を設けた措置が不法行為に該当することがあります)、

労働条件の相違が同条に違反する場合であっても、同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件同一のものとなるものではないとしました。

即ち、労契法第20条に有期契約労働者の労働条件を直接規律する効力(直律的効力・補充的効力)までは認められないという立場です。

 

以下、引用します。本判示も、極めて重要です。

 

「イ 労働契約法20条が有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違は『不合理と認められるものであってはならない』と規定していることや、その趣旨が有期契約労働者の公正な処遇を図ることにあること等に照らせば、同条の規定は私法上の効力を有するものと解するのが相当であり、有期労働契約のうち同条に違反する労働条件の相違を設ける部分無効となるものと解される。

もっとも、同条は、有期契約労働者について無期契約労働者との職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であり、文言上も、両者の労働条件の相違が同条に違反する場合に、当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなる旨を定めていない

そうすると、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が同条に違反する場合であっても、同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるものではないと解するのが相当である。

 

また、上告人〔=会社〕においては、正社員に適用される就業規則である本件正社員就業規則及び本件正社員給与規程と、契約社員に適用される就業規則である本件契約社員就業規則とが、別個独立のものとして作成されていること等にも鑑みれば、両者の労働条件の相違が同条に違反する場合に、本件正社員就業規則又は本件正社員給与規程の定め契約社員である被上告人に適用されることとなると解することは、就業規則の合理的な解釈としても困難である。」

 

 

※ なお、上記判示の最後の段落では、就業規則の合理的解釈について言及されています。

この判決の考え方からは、有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件を定める就業規則が別個独立のものとして作成されている場合は、両者間の労働条件の相違が労契法第20条に違反すると認められるときでも、例えば、無期契約労働者に関する就業規則の規定を合理的に解釈してそれを有期契約労働者に対して適用するようなことは、基本的には(事案にもよるのでしょうが)、難しいことになりそうです。

 

ただし、例えば、有期契約労働者と無期契約労働者の区別なく就業規則が定められている場合に、通勤手当は無期契約労働者のみに支給する旨の規定があり、当該規定が労契法第20条に違反すると判断されたときは、当該就業規則の合理的解釈として、有期契約労働者についても当該通勤手当の支給が認められるとすることは(通勤手当の支給要件や内容にもよりますが)可能といえます。 

 

 

三 証明責任

不合理性の証明責任について補説しておきます(後掲の判例を一読しておいて下さい)。

 

証明責任については、基本的には、規定の定め方を基準として、自己に有利な法律効果の発生を主張する者が、その法律効果が発生する要件に該当する事実について主張・立証責任を負うとされています(ただし、不合理性といった抽象的な「規範的要件」については、民事訴訟法上の弁論主義が適用される事実をどう考えるか争いがあり、実務上、以下の結論が採られています)。

 

 

具体的には、平成24年改正法施行通達は次のように述べています。

 

「法第20条に基づき民事訴訟が提起された場合の裁判上の主張立証については、有期契約労働者が労働条件が期間の定めを理由とする不合理なものであることを基礎づける事実を主張立証し、他方で使用者が当該労働条件が期間の定めを理由とする合理的なものであることを基礎づける事実の主張立証を行うという形でなされ、同条の司法上の判断は、有期契約労働者及び使用者双方が主張立証を尽くした結果が総体としてなされるものであり、立証の負担有期契約労働者側に一方的に負わされることにはならないと解されるものであること。」

 

 

【ハマキョウレックス事件=最判平成30.6.1】においても、同様に、次のように判示しています。

 

「両者〔=有期契約労働者と無期契約労働者〕の労働条件の相違が不合理であるか否かの判断は規範的評価を伴うものであるから、当該相違が不合理であるとの評価を基礎付ける事実については当該相違が同条に違反することを主張する者が、当該相違が不合理であるとの評価を妨げる事実については当該相違が同条に違反することを争う者が、それぞれ主張立証責任を負うものと解される。」

 

 

 

最後に、本条に関する過去問です。

 

 

・【過去問 労働一般 平成25年問1E】

設問:

労働契約法第20条に定める、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止における「不合理性」は、有期契約労働者と無期契約労働者との間の労働条件の相違について、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下、本肢において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、個々の労働条件ごとに判断されるものであり、とりわけ、通勤手当、食堂の利用、安全管理などについて労働条件を相違させることは、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して特段の理由がない限り合理的とは認められないと解される。

 

解答:

一般的に、正しい内容といえます。こちらの「平成24年改正法施行通達」を参考。

 

 

次に、労働契約締結の際の労働条件の明示の問題です(これはすでに学習しました)。 

 

 

 

〈3〉労働契約締結の際の労働条件の明示(第15条第1項)

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して所定の労働条件を明示することが必要ですが、絶対的明示事項(必ず明示しなければならない事項)として、「労働契約の期間に関する事項」と「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」が挙げられています(施行規則第5条第1項第1号、第1号の2)。

  

※ 詳しくは、既述の「労働契約の成立」の「労働契約の成立過程の問題」の「労働条件の明示」の個所(こちら以下)をご参照下さい。ここでは、結論のみ記載しておきます。

 

一 労働契約の期間に関する事項(施行規則第5条第1項第1号)

期間の定めのある労働契約の場合はその期間、期間の定めのない労働契約の場合はその旨を明示することが必要です。

 

二 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項(施行規則第5条第1項第1号の2)

期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項についても、明示が必要です。

ただし、期間の定めのある労働契約であって当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の場合に限ります(施行規則第5条第1項ただし書同項第1号の2)。

 

この二は、平成24年の施行規則の改正(平成25年4月1日施行)により新設された明示事項です。詳しくは、「労働条件の明示」の個所(こちら以下)をご参照下さい。

 

以上で、労働契約締結の際の労働条件の明示について終わります。

 

 

〈4〉契約期間の長期化の配慮義務(必要以上に短い期間による反復更新をしない配慮義務)(労働契約法第17条第2項)

◆使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければなりません(労働契約法第17条第2項)。

【過去問 労働一般 平成23年問4E(後掲)】

 

 

【労働契約法】

 

※ 次の労働契約法第17条のうち第2項の問題です。ちなみに、本条は、労契法の制定当時からあった規定です(平成24年の改正により、若干、文言が整理されましたが)。

 

労契法第17条(契約期間中の解雇等)

1.使用者は、期間の定めのある労働契約(以下、この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

 

2.使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。

 

 

○趣旨

有期労働契約の契約期間を長期化させることにより、雇止めに関する紛争の端緒となる契約更新の回数そのものを減少させ、紛争を防止しようとする趣旨です。

 

即ち、現行法では、労働契約の期間の下限について直接は規制していませんが(なお、「雇止めに関する基準」第3条(こちら)において、一定の要件のもと、有期労働契約の期間をできる限り長くする努力義務が告示されています)、不必要に短い期間の労働契約が反復更新されることは、労働者の雇用の不安定化をもたらしますので、労働契約法において、有期労働契約の期間の長期化の配慮義務の規定が定められたものです(こちらでも触れました)。

なお、配慮義務は、努力義務よりは一段高い義務です。

 

上記の第2項の太字部分を記憶しておいて下さい。

 

 

・【過去問 労働一般 平成23年問4E】

設問:

使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならないとされている。

 

解答:

正しいです。労働契約法第17条第2項の通りです。

 

 

 

以上で、有期労働契約の「発生」に関する問題を終わります。次に、「変更」に関する問題として、「無期転換ルール」を見ます。

 

 

 

〔2〕変更

有期労働契約の「変更」に関する問題として、有期労働契約の無期労働契約への変更の問題、即ち、いわゆる無期転換ルールを見ます。

 

この無期転換ルールは、有期労働契約の無期労働契約への「転換」という観点からは、「変更」に関する問題ですが、「有期労働契約」が終了するという観点からは、「消滅・終了」に関する問題です。

 

 

有期労働契約の無期労働契約への転換(いわゆる無期転換ルール)(労働契約法第18条)

以下、有期労働契約の無期労働契約への転換の問題、即ち、いわゆる無期転換ルールについて学習します(労働契約法第18条)。

 

※ 本規定も、労働契約法の問題です。平成24年の同法の改正により新設された非常に重要な規定です(平成25年4月1日施行)。

 

 

○趣旨

同一の使用者との間で締結された有期労働契約5年原則を超えて反復更新された場合に、有期契約労働者申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換させる仕組みを設け(無期転換ルールということがあります)、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し労働者の雇用の安定を図ろうとした趣旨です。

 

まず、条文を掲載します。さしあたりは流し読みをして頂き、本文を全部読まれた後に熟読して下さい。

 

【労働契約法】

労働契約法第18条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)

 

1.同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約契約期間の始期の到来前のもの除く。以下この条において同じ。)の契約期間通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす

この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分除く。)とする。

 

2.当該使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間(これらの契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準に該当する場合の当該いずれにも含まれない期間を除く。以下この項において「空白期間」という。)があり、当該空白期間6月(当該空白期間の直前に満了した一の有期労働契約の契約期間(当該一の有期労働契約を含む2以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは、当該2以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間。以下この項において同じ。)が1年に満たない場合にあっては、当該一の有期労働契約の契約期間2分の1を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間(1月に満たない端数を生じたときは、1月として計算する))以上であるときは、当該空白期間前に満了した有期労働契約の労働期間は、通算契約期間算入しない

 

 

※ 要件と効果について、まとめて掲載しておきます。

 

一 要件

 

いわゆる無期転換ルールは、次の(一)及び(二)の要件をみたすときに適用されます労働契約法第18条

 

 

(一)通算契約期間の要件

 

◆同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除きます。以下、本条において同じです)の契約期間を通算した期間(通算契約期間)が5年(原則)を超える労働者であること(労働契約法第18条第1項前段)。

 

※ 前後有期労働契約の契約期間の(=空白期間)が6月以上(原則)の場合は、当該空白期間有期労働契約の契約期間通算契約期間算入できません同条第2項)。

 

 

(二)無期転換申込権の行使

 

◆当該労働者が、当該使用者に対して、現に締結している有期労働契約の契約期間の満了日までの間に、当該満了日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約締結の申込みをしたこと(労働契約法第18条第1項前段)。

 

※ この(二)の申込みをする権利を、「無期転換申込権」といいます。即ち、この(二)は、無期転換申込権の行使の要件ということになります。

 

 

二 効果

 

(一)労働者が所定の申込みをしたとき(無期転換申込権を行使したとき)は、使用者は、当該申込みを承諾したものとみなされます労働契約法第18条第1項前段)= いわゆる「承諾みなし」。

 

※ 現に締結している有期労働契約の期間満了日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約(無期労働契約)が申込みの時点成立します(同項参考)。

 

(二)成立した無期労働契約の労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除きます)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除きます)について別段の定めがある部分除きます)となります(労働契約法第18条第1項後段)。

 

 

※ 要件について:

 

上記一の要件は、厳密には、(一)の「通算契約期間の要件」を満たした場合に、「無期転換申込権」が発生し、(二)当該「無期転換申込権の行使」により、上記二の承諾みなしの効果が発生するということになります。

 

これは、のちに学習します年次有給休暇について、「年休権が発生する要件」を満たした場合に一定の日数の「年休権が発生」し、当該年休権の行使等(時季指定権の行使等)により(特定された時季に有給のまま労働義務が消滅するという)効果が発生する法律構成とパラレルな面があります。  

 

 

※ 無期転換ルールについては、空白期間等に関して細かい政省令が発出されていますが、あまり細かい事項の出題はしにくいといえ、基本的な要件(特に数字)と効果を押さえておきます。

上記の条文のキーワード並びに要件及び効果を押さえ、次の図により全体像をイメージして下さい。

 

全体像は、次の図のようになります(空白期間についての細かい事項は、後述の省令(ただし、読まなくて結構です)に掲載されています)。

 

以下、要件と効果について詳しく見ていきます。

 

 

一 要件

○ いわゆる無期転換ルールは、次の(一)及び(二)の要件をみたすときに適用されます(労契法第18条)。 

 

 

(一)通算契約期間の要件

 

◆同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除きます)の契約期間を通算した期間(通算契約期間)が5年原則を超える労働者であること。

 

※ 前後の有期労働契約の契約期間の間(=空白期間)が6月以上(原則)の場合は、当該空白期間の有期労働契約の契約期間は通算契約期間に算入できません。

 

 

(二)無期転換申込権の行使

 

◆当該労働者が、当該使用者に対して、現に締結している有期労働契約の契約期間の満了日までの間に、当該満了日翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたこと。

 

なお、ここでも、【平成24年8月10日基発0810第2号】を参考にしており、この通達を【平成24年改正法施行通達】として引用します。

 

以上の要件について、詳しく見ます。

 

 

(一)通算契約期間の要件

◆同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く)の契約期間を通算した期間(通算契約期間)が5年(原則)を超える労働者であること

 

1「同一の使用者」との間で2以上の有期労働契約が存在すること

 

「同一の使用者」との間で2以上の有期労働契約が存在することが必要です。「同一の使用者」の意義について、平成24年改正法施行通達は次の通りです。

 

(1)「同一の使用者」とは、「労働契約を締結する法律上の主体が同一であることをいうものであり、したがって、事業場単位ではなく、労働契約締結の法律上の主体が法人であれば法人単位で、個人事業主であれば当該個人事業主単位で判断されるものであること。

ただし、使用者が、就業実態が変わらないにもかかわらず、法第18条第1項に基づき有期契約労働者が無期労働契約への転換を申し込むことができる権利(以下『無期転換申込権』という。)の発生を免れる意図をもって、派遣形態や請負形態を偽装して、労働契約の当事者を形式的に他の使用者に切り替えた場合は、法を潜脱するものとして、同項の通算契約期間の計算上『同一の使用者』との労働契約が継続していると解されるものであること。」

 

※ 以上の「同一の使用者」の考え方は、先に見ました労契法第20条の場合(こちら)と同様であり、事業主(法人、個人)単位で判断されます。【過去問 労働一般 平成30年問3オ(後掲)】

〔上記の「事業主(法人、個人)」の個所について、従来、「事業所(事業場)単位」と誤記しておりました。誠に申し訳ございません。お詫びの上、訂正申し上げます(平成30年10月8日)。〕

 

 

(2)「派遣労働者の場合は、労働契約の締結の主体である派遣事業主との有期労働契約について法第18条第1項の通算契約期間が計算され」ます。

 

※ 即ち、派遣労働者の場合、派遣元事業主を本条の「使用者」と考えるということです。 派遣労働者が労働契約を締結しているのは派遣元事業主だからです。

 

 

・【過去問 労働一般 平成30年問3オ】

設問:

労働契約法第18条第1項の「同一の使用者」は、労働契約を締結する法律上の主体が同一であることをいうものであり、 したがって、事業場単位ではなく、労働契約締結の法律上の主体が法人であれば法人単位で、個人事業主であれば当該個人事業主単位で判断される。

 

解答:

正しいです(前掲の【平成24年8月10日基発0810第2号】)。

労働契約法第18条第1項前段は、単に「同一の使用者」としているだけですから、事業場単位ではなく、事業主単位で判断されると解するのが自然です。

 

 

2「2以上の有期労働契約」が存在すること

 

「2以上の有期労働契約」が存在することが必要です。

 

(1)従って、有期労働契約が、1回は更新されていることが必要です。

例えば、有期事業の場合、5年を超える労働契約の期間を定めることも認められますが(第14条第1項柱書)、有期事業に係る5年を超える期間を定めた有期労働契約が締結されていても、「2以上の有期労働契約」にはあたらないため、本条の無期転換ルールの要件は満たしません。

 

その理由は、本条の効果は無期労働契約に転換するという使用者に対する影響が大きいものですので、使用者に、一度は更新という当該労働者の適格性等を判断する機会が与えられている必要があるためと解されます。

 

平成24年改正法施行通達は、次の通りです。

 

「無期転換申込権は、『2以上の有期労働契約』の通算契約期間が5年を超える場合、すなわち更新が1回以上行われ、かつ、通算契約期間が5年を超えている場合に生じるものであること。

したがって、労働基準法第14条第1項の規定により一定の事業の完了に必要な期間を定めるものとして締結が認められている契約期間が5年を超える有期労働契約が締結されている場合、一度も更新がないときは、法第18条第1項の要件を満たすことにはならない」。

 

 

(2)また、「2以上の有期労働契約」ですから、複数の労働契約いずれも有期労働契約であることが必要であり、無期労働契約については適用の対象となりません(本条は、有期労働契約が反復更新されて長期間継続した場合の有期契約労働者の保護を図ろうとする趣旨だからです)。

例えば、期間の定めのない労働契約による正社員の勤務を定年退職した後に、新たに継続雇用(高年齢者等雇用安定法第9条第1項第2号)されて有期労働契約を締結した場合は、本条は適用されません。

 

 

(3)なお、「2以上の有期労働契約」が存在することが必要ですが、「契約期間の始期の到来前のもの」は除かれます第18条第1項前段かっこ書)。

例えば、5年の有期労働契約の期間満了により雇止めされた際に、将来の有期労働契約の再締結の約束があったとしても、その契約を締結してその始期が到来する前の段階では、当該労働者は無期転換申込権を行使できません。 

 

 

3 通算契約期間が5年(原則)を超えること

 

〇 空白期間の取扱い

 

通算契約期間の算定においては、労契法第18条第2項の「空白期間」の取扱いが問題となり、これに関して省令で「通算契約期間に関する基準」が定められており(【平成24年10月26日厚生労働省令第148号】。以下、この第148号省令を「基準省令」といいます。後に一応掲載しておきますが(こちら)、読まなくて結構です)、なかなか複雑です。

ただ、大まかには、前掲の図(こちら)の中で記載した通りでして、条文中の5年や6月等の数字は出題対象となりそうですが、その他は基準省令等を事細かに見なくても大丈夫だと思います。

 

○ 平成24年改正法施行通達の関連個所を掲載しておきます。太字部分は、注意して下さい。

 

〔引用開始。〕

 

ケ 法第18条第2項は、同条第1項の通算契約期間の計算に当たり、有期労働契約が不存在の期間(以下「無契約期間」という。)が一定以上続いた場合には、当該通算契約期間の計算がリセットされること(いわゆる「クーリング」)について規定したものであること。

法及び「労働契約法第18条第1項の通算契約期間に関する基準を定める省令」(平成24年厚生労働省令第148号。以下「基準省令」という。)の規定により、同一の有期契約労働者と使用者との間で、1か月以上の無契約期間を置いて有期労働契約が再度締結された場合であって、当該無契約期間の長さ次の②のいずれかに該当するときは、当該無契約期間は法第18条第2項空白期間に該当し、当該空白期間前に終了している全ての有期労働契約の契約期間は、同条第1項通算契約期間算入されない(クーリングされる)こととなること。

 

なお、無契約期間の長さ1か月に満たない場合は、法第18条第2項空白期間に該当することはなく、クーリングされないこと(基準省令第2条。シ〔=本通達の「シ」ですが、引用省略〕参照)。

 

① 6か月以上である場合

 

② その直前の有期労働契約の契約期間(複数の有期労働契約が間を置かずに連続している場合又は基準省令第1条第1項で定める基準に該当し連続するものと認められる場合にあっては、それらの有期労働契約の契約期間の合計)が1年未満の場合にあっては、その期間に2分の1を乗じて得た期間(1か月未満の端数は1か月に切り上げて計算する。)以上である場合

 

※ 以上のケは、労契法第18条第2項が定める通算契約期間における空白期間の考え方について説明したものです。上記①及び②で登場する数字は、覚えておく必要があります。

 

なお、基準省令及び通達は、「無契約期間」という概念を用い、労契法第18条第2項における「空白期間」と区別しています。

上掲の図(こちら)においても記載しましたように、「無契約期間」と「空白期間」は仕組みの上では区別する必要がありますが、大まかには同様のものと考えておいた方が混乱しないかもしれません。

以下、通達の続きです。

 

 

コ 基準省令第1条第1項は、法第18条第2項の「契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準」を規定したものであること。具体的には、次の(a)から(c)までのとおりであること。〔この(a)から(c)については、省略します。〕

 

なお、ケ①〔=前掲〕のとおり、6か月以上の空白期間がある場合には当該空白期間前に終了している全ての有期労働契約の契約期間は通算契約期間に算入されない。このため、通算契約期間の算定に当たり、基準省令第1条第1項で定める基準に照らし連続すると認められるかどうかの確認が必要となるのは、労働者が無期転換の申込みをしようとする日から遡って直近の6か月以上の空白期間後の有期労働契約についてであること。

 

〔引用終了。〕  

 

 

次に、無期転換ルールの2番目の要件です。

 

 

(二)無期転換申込権の行使

◆当該労働者が、当該使用者に対して、現に締結している有期労働契約の契約期間の満了日までの間に、当該満了日翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたこと

 

 

○趣旨

労働者の申込みにより無期労働契約への転換を認めることにより、労働者の意思を尊重したものです(即ち、必ずしも無期労働契約への転換を望まない労働者も存在しますので、労働者の申込みを要件としたものです)。

 

 

1 申込みの期限

 

現に締結している有期労働契約の契約期間の満了日までの間」に、申込みをすることが必要です。

この「現に締結している有期労働契約」とは、通算契約期間が5年を超える時点で既に締結している有期労働契約のことを意味します。

 

この点、平成24年改正法施行通達は、無期転換申込権を行使できる期間について、具体的に次のように解しています(ここは、一応、押さえておいて下さい)。

 

「無期転換申込権は、当該契約期間中通算契約期間が5年を超えることとなる有期労働契約契約期間の初日から当該有期労働契約の契約期間が満了する日までの間行使することができるものであること。

なお、無期転換申込権が生じている有期労働契約の契約期間が満了する日までの間無期転換申込権を行使しなかった場合であっても再度有期労働契約が更新された場合は、新たに無期転換申込権が発生し、有期契約労働者は、更新後の有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、無期転換申込権を行使することが可能であること。」

 

上記を図示しますと、次の通りです。

 

2 無期転換申込権の事前放棄の禁止 

 

なお、平成24年改正法施行通達は、次のように、無期転換申込権事前の放棄認められないとしています。

 

「無期転換申込権が発生する有期労働契約の締結以前に、無期転換申込権を行使しないことを更新の条件とする等有期契約労働者にあらかじめ無期転換申込権を放棄させることを認めることは、雇止めによって雇用を失うことを恐れる労働者に対して、使用者が無期転換申込権の放棄を強要する状況を招きかねず、法第18条の趣旨を没却するものであり、こうした有期契約労働者の意思表示は、公序良俗に反し、無効と解されるものであること。」  

 

上記通達は、無期転換申込権の事前の放棄を一切否定する立場といえそうです

理屈としては、私的自治の原則から、自由な意思に基づくものと明白に認められるような無期転換申込権の事前の放棄については有効であると解することも可能です(労契法第18条においても、無期転換申込権の事前の放棄を禁止する文言はありません)。

ただ、力関係の弱い有期契約労働者に対する使用者による放棄の事実上の強要といった問題がありますから、無期転換申込権の事前の放棄が認められる場合があるとしてもごく限定的なケースとなるのでしょう。

この無期転換申込権の事前の放棄の可否については、学説上も争いがあり、さしあたり、試験対策上は、上記通達の立場を押さえておきます。

 

 

(三)適用関係

 

なお、第18条の無期転換ルールの規定は、平成25年4月1日以後の日を契約期間の初日とする期間の定めのある労働契約について適用され、平成25年4月1日前の日が初日である期間の定めのある労働契約の契約期間は、通算契約期間には算入されません(平成24年改正法附則第2項)。

従って、平成25年4月1日以後に締結された有期労働契約の通算契約期間が同締結日から5年(原則)を超えて更新された時点(平成30年4月以後)において、無期転換権が発生します。

 

以上で、無期転換ルールの要件について終わります。次に、効果について簡単に見ます。  

 

 

二 効果

(一)承諾みなし

◆労働者が所定の申込みをしたとき(適法に無期転換権を行使したとき)は、使用者は、当該申込み承諾したものみなされます労働契約法第18条第1項前段)= いわゆる「承諾みなし」。※1

 

現に締結している有期労働契約の期間満了日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約(無期労働契約)が申込みの時点で成立します。

 

つまり、有期契約労働者が無期転換申込権を行使したとき(申込みが使用者に到達したとき)に、無期労働契約が成立すると解されています(後掲の平成24年改正法施行通達参考)。

そこで、無期転換申込権の行使後は、有期労働契約と無期労働契約の両者が併存することになります。

こう解することにより、有期労働契約の期間が満了しても、そのまま無期労働契約に移行することになります。 

 

(二)従前と同一の労働条件の原則

◆成立した無期労働契約労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間除きます)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除きます)について別段の定めがある部分除きます)となります(労働契約法第18条第1項後段)。

 

そこで、無期転換ルールの下では、原則として、従前の有期労働契約における契約期間以外の労働条件を承継することになりますから、本制度は、元来の無期契約労働者(正規雇用労働者)との労働条件の格差を解消させることまでは目的としていないことになります(期間の定めのない労働契約に転換することにより雇用の安定を図る趣旨です)。

 

 

※ 以上、無期転換ルールの「効果」に関しては、労働者の申込みの時点で無期労働契約が成立しているものと取り扱われること、原則として、現に締結している有期労働契約と同一の労働条件となることを押さえておきます。

 

 

※1 ここで、労働契約の締結が強制される場合についてまとめておきます(こちら以下でも触れました)。

 

〇 労働契約の締結が強制される場合:

 

労働契約は、当事者の合意により成立し、又は変更されるのが原則ですが(労働契約法第1条第3条第1項第6条第9条(労基法のパスワード))、近時の改正により、この合意の原則の例外として、労働契約の締結が強制される規定が定められています。本件の無期転換ルールもその一つです。さしあたり、次の①~③の例があります。

 

①無期転換ルール(労働契約法第18条。本件です)➡ 承諾みなし(労働契約の承諾がみなされる)

 

②雇止め法理(労働契約法第19条)➡ 承諾みなし(次のページで見ます)

 

③労働契約申込みみなし制度(労働者派遣法第40条の6(労働一般のパスワード)労働者派遣法のこちら以下

 

➡ 申込みみなし(派遣先が違法に派遣労働者を受け入れた一定の場合に、当該違法行為を行った時点において、派遣先が派遣労働者に対して労働契約の申込みをしたものとみなされる制度です)

 

 

 

以下、無期転換ルールの効果について平成24年改正法施行通達の関連個所を掲載しておきます(読まなくても結構です)。

 

〔引用開始。〕

 

カ 法第18条第1項の規定による無期労働契約への転換は期間の定めのみを変更するものであるが、同項の「別段の定め」をすることにより、期間の定め以外の労働条件を変更することは可能であること。この「別段の定め」は、労働協約、就業規則及び個々の労働契約(無期労働契約への転換に当たり従前の有期労働契約から労働条件を変更することについての有期契約労働者と使用者との間の個別の合意)をいうものであること。

この場合、無期労働契約への転換に当たり、職務の内容などが変更されないにもかかわらず、無期転換後における労働条件を従前よりも低下させることは、無期転換を円滑に進める観点から望ましいものではないこと。

なお、就業規則により別段の定めをする場合においては、法第18条の規定が、法第7条から第10条までに定められている就業規則法理を変更することになるものではないこと。

 

キ 有期契約労働者が無期転換申込権を行使することにより、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日の翌日から労務が提供される無期労働契約その行使の時点で成立していることから、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日をもって当該有期契約労働者との契約関係を終了させようとする使用者は、無期転換申込権の行使により成立した無期労働契約を解約(解雇)する必要があり、当該解雇が法第16条に規定する「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合」には、権利濫用に該当するものとして無効となること。

また、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日前に使用者が当該有期契約労働者との契約関係を終了させようとする場合は、これに加えて、当該有期労働契約の契約期間中の解雇であり法第17条第1項の適用があること。

なお、解雇については当然に労働基準法第20条の解雇予告等の規定の適用があるものであること。

 

ク 有期労働契約の更新時に、所定労働日や始業終業時刻等の労働条件の定期的変更が行われていた場合に、無期労働契約への転換後も従前と同様に定期的にこれらの労働条件の変更を行うことができる旨の別段の定めをすることは差し支えないと解されること。

また、無期労働契約に転換した後における解雇については、個々の事情により判断されるものであるが、一般的には、勤務地や職務が限定されている等労働条件や雇用管理がいわゆる正社員と大きく異なるような労働者については、こうした限定等の事情がない、いわゆる正社員と当然には同列に扱われることにならないと解されること。

 

〔引用終了。〕 

 

 

三 特例

無期転換ルールについては、以下の特例があります。

 

(一)研究者等に関する特例

通算契約期間について、大学等及び研究開発法人の研究者教員等については、5年10年延長する特例が設けられています(「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律」(以下、「教育開発能力強化法」と略します)の改正、及び「大学の教員等の任期に関する法律」(以下、「任期法」と略します)の改正によります。研究開発能力強化法第15条の2任期法第7条。平成26年4月1日施行)。 

 

研究開発能力の強化及び教育研究の活性化等の趣旨です。 

 

以下、試験対策上は不要と思われますが、参考まで。

 

例えば、科学技術に関する研究者又は技術者(科学技術に関する試験若しくは研究又は科学技術に関する開発の補助を行う人材を含みます)であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を締結したものについて、労働契約法第18条第1項の規定の適用においては、同項の通算契約期間の「5年」は「10年」に延長されます(研究開発能力強化法第15条の2第1項第1号)。

また、大学の教員等の任期に関する法律(任期法)に基づく任期の定めがある労働契約を締結した教員等の有期労働契約についても、同様です(任期法第7条

 

なお、大学に在学している間に研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約を締結していた者については、当該大学に在学している期間は、通算契約期間に算入されません研究開発能力強化法第15条の2第2項任期法第7条第2項)。

大学に在学中に、例えばTA(ティーチング・アシスタント)、RA(リサーチ・アシスタント)等として研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約を締結していた者が対象です。 

 

 

(二)専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法

また、「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」(以下、「有期特措法」ということがあります)が制定され(平成26年11月28日公布)、平成27年4月1日から施行されています。

具体的には、(A)一定の「専門的知識等を有する有期雇用労働者」、又は(B)「60歳以上の定年後引き続いて当該事業主(又は特殊関係事業主(グループ企業の事業主です))に雇用される有期雇用労働者」について、事業主が当該有期雇用労働者の特性に応じた雇用管理に関する措置についての計画を作成厚生労働大臣の認定を受けることにより、無期転換ルールの適用の修正が認められました。

 

 

概要は、次の通りです。

 

(A)「専門的知識等を有する有期雇用労働者」については、労働契約法第18条第1項の通算契約期間の「5年」について、「特定有期業務〔=5年を超える一定の期間内に完了することが予定されている専門的知識等を必要とする業務〕の開始の日から完了の日までの期間(当該期間が10年を超える場合にあっては、10年)」と読み替えられます(有期特措法第8条第1項(労働一般のパスワード))。

従って、一定の期間内に完了することが予定されている業務に係る「完了が予定された期間10年上限)」においては、無期転換申込権発生しません

つまり、「専門的知識等を有する有期雇用労働者」が当該プロジェクト(特定有期業務)に従事している期間(10年が上限)は、無期転換申込権が発生しないというものであり、通算契約期間の原則の5年が最長10年に延長されています。

この「専門的知識等を有する有期雇用労働者」は、年収1,075万円以上の者であること等が必要です。

 

(B)「60歳以上の定年後引き続いて雇用される有期雇用労働者」については、60歳以上の定年後引き続いて当該事業主(又は特殊関係事業主)に雇用されている期間は、労働契約法第18条第1項の5年の通算契約期間に算入されません(有期特措法第8条第2項)。

従って、60歳以上の定年後引き続いて雇用される期間においては、無期転換申込権発生しません

 

この(B)は、平成24年の高年齢者等雇用安定法の改正(平成25年4月1日施行)により、65歳までの高年齢者雇用確保措置の実施が義務づけられたところ、このうち継続雇用制度を採用して、有期労働契約を締結した場合に、その継続雇用の期間中は無期転換申込権が発生しないようにしたものです。

 

以上についての詳細は、労働一般のこちらで見ます(しかし、以上の程度の知識で足りそうです)。なお、平成27年度の労働一般の択一式で1肢出題されています(【択一式 労働一般 平成27年問2E】(労働一般のこちら))。

 

 

これにて、無期転換ルールについて終わります。 

なお、 以下、基準省令並びに研究開発能力強化法及び任期法の関係規定を掲載しておきますが、読まなくて結構です。次のページにお進み下さい。 

 

次のページでは、有期労働契約の終了に関する問題として、雇止めに関する基準等と雇止め法理について学習します。

 

 

○ 基準省令=【平成24年10月26日厚生労働省令第148号】

 

・労働契約法第18条第1項の通算契約期間に関する基準を定める省令 

 

基準省令第1条(法第18条第2項の厚生労働省令で定める基準)

1.労働契約法(以下「法」という。)第18条第2項〔=労働契約法第18条第2項〕の厚生労働省令で定める基準は、次の各号に掲げる無契約期間(一の有期労働契約の契約期間が満了した日とその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間がある場合の当該期間をいう。以下この条において同じ。)に応じ、それぞれ当該各号に定めるものであることとする。

 

一 最初の雇入れの日後最初に到来する無契約期間(以下この項において「第1無契約期間」という。)

 

第1無契約期間の期間が、第1無契約期間の前にある有期労働契約の契約期間(2以上の有期労働契約がある場合は、その全ての契約期間を通算した期間)に2分の1を乗じて得た期間(6月を超えるとき6月とし、1月に満たない端数を生じたときはこれを1月として計算した期間とする。)未満であること。

 

二 第1無契約期間の次に到来する無契約期間(以下この項において「第2無契約期間」という。)

 

次に掲げる場合に応じ、それぞれ次に定めるものであること。

 

イ 第1無契約期間が前号に定めるものである場合

 

第2無契約期間の期間が、第2無契約期間の前にある全ての有期労働契約の契約期間を通算した期間に2分の1を乗じて得た期間(6月を超えるときは6月とし、1月に満たない端数を生じたときはこれを1月として計算した期間とする。)未満であること。

 

 ロ イに掲げる場合以外の場合

 

第2無契約期間の期間が、第1無契約期間と第2無契約期間の間にある有期労働契約の契約期間(2以上の有期労働契約がある場合は、その全ての契約期間を通算した期間)に2分の1を乗じて得た期間(6月を超えるときは6月とし、1月に満たない端数を生じたときはこれを1月として計算した期間とする。)未満であること。

 

三 第2無契約期間の次に到来する無契約期間(以下この項において「第3無契約期間」という。)

 

次に掲げる場合に応じ、それぞれ次に定めるものであること。

 

イ 第2無契約期間が前号イに定めるものである場合

 

第3無契約期間の期間が、第3無契約期間の前にある全ての有期労働契約の契約期間を通算した期間に2分の1を乗じて得た期間(6月を超えるときは6月とし、1月に満たない端数を生じたときはこれを1月として計算した期間とする。)未満であること。

 

ロ 第2無契約期間が前号ロに定めるものである場合 

 

第3無契約期間の期間が、第1無契約期間と第3無契約期間の間にある全ての有期労働契約の契約期間を通算した期間に2分の1を乗じて得た期間(6月を超えるときは6月とし、1月に満たない端数を生じたときはこれを1月として計算した期間とする。)未満であること。

 

ハ イ又はロに掲げる場合以外の場合

 

第3無契約期間の期間が、第2無契約期間と第3無契約期間の間にある有期労働契約の契約期間(2以上の有期労働契約がある場合は、その全ての契約期間を通算した期間)に2分の1を乗じて得た期間(6月を超えるときは6月とし、1月に満たない端数を生じたときはこれを1月として計算した期間とする。)未満であること。

 

四 第3無契約期間後に到来する無契約期間

 

当該無契約期間が、前3号の例により計算して得た期間未満であること。

 

2.前項の規定により通算の対象となるそれぞれの有期労働契約の契約期間に1月に満たない端数がある場合は、これらの端数の合算については、30日をもって1月とする。

 

 

基準省令第2条(法第18条第2項の厚生労働省令で定める期間)

法第18条第2項の厚生労働省令で定める期間は、同項の当該一の有期労働契約の契約期間に2分の1を乗じて得た期間(1月に満たない端数を生じたときは、これを1月として計算した期間とする。)とする。

 

 

【基準省令附則】

基準省令附則

1.この省令は、労働契約法の一部を改正する法律(平成24年法律第56号)附則第1項ただし書に規定する規定の施行の日(平成25年4月1日)から施行する。

 

2.第1条第1項の規定は、この省令の施行の日以後の日契約期間の初日とする期間の定めのある労働契約について適用する。

 

 

 

○【参考:研究開発能力強化法第15条の2及び任期法第7条】

  

・【「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の⼀部を改正する法律」】 

研究開発能力強化法第15条の2(労働契約法の特例)

 

1.次の各号に掲げる者の当該各号の労働契約に係る労働契約法(平成19年法律第128号)第18条第1項〔=労働契約法第18条第1項〕の規定の適用については、同項中「5年」とあるのは、「10年」とする。

 

一 科学技術に関する研究者又は技術者(科学技術に関する試験若しくは研究又は科学技術に関する開発の補助を行う人材を含む。第3号において同じ。)であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で期間の定めのある労働契約(以下この条において「有期労働契約」という。)を締結したもの

 

二 科学技術に関する試験若しくは研究若しくは科学技術に関する開発又はそれらの成果の普及若しくは実用化に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の科学技術に関する試験若しくは研究若しくは科学技術に関する開発又はそれらの成果の普及若しくは実用化に係る運営及び管理に係る業務(専門的な知識及び能力を必要とするものに限る。)に従事する者であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約を締結したもの

 

三 試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者が試験研究機関等、研究開発法人又は大学等との協定その他の契約によりこれらと共同して行う科学技術に関する試験若しくは研究若しくは科学技術に関する開発又はそれらの成果の普及若しくは実用化(次号において「共同研究開発等」という。)の業務に専ら従事する科学技術に関する研究者又は技術者であって当該試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者との間で有期労働契約を締結したもの

 

四 共同研究開発等に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の共同研究開発等に係る運営及び管理に係る業務(専門的な知識及び能力を必要とするものに限る。)に専ら従事する者であって当該共同研究開発等を行う試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者との間で有期労働契約を締結したもの

 

2.前項第1号及び第2号に掲げる者(大学の学生である者を除く。)のうち大学に在学している間に研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約(当該有期労働契約の期間のうちに大学に在学している期間を含むものに限る。)を締結していた者の同項第1号及び第2号の労働契約に係る労働契約法第18条第1項の規定の適用については、当該大学に在学している期間は、同項に規定する通算契約期間に算入しない。

 

 

・【大学の教員等の任期に関する法律】

任期法第7条(労働契約法の特例)

1.第5条第1項(前条において準用する場合を含む。)の規定による任期の定めがある労働契約を締結した教員等の当該労働契約に係る労働契約法(平成19年法律第128号)第18条第1項〔=労働契約法第18条第1項〕の規定の適用については、同項中「5年」とあるのは、「10年」とする。

 

2.前項の教員等のうち大学に在学している間に国立大学法人、公立大学法人若しくは学校法人又は大学共同利用機関法人等との間で期間の定めのある労働契約(当該労働契約の期間のうちに大学に在学している期間を含むものに限る。)を締結していた者の同項の労働契約に係る労働契約法第18条第1項の規定の適用については、当該大学に在学している期間は、同項に規定する通算契約期間に算入しない。

 

 

※ 次の平成24年改正法附則第2項は、無期転換ルールの第18条の施行における適用関係を規定しています(既述の本文の記載で足り、読む必要はありません)。

 

【平成24年改正法附則】(平成24年8月18日法律第56号)

平成24年改正法附則

1.(施行期日)

この法律は、公布の日〔=平成24年8月10日〕から施行する。ただし、第2条〔=第18条(無期転換ルール)~第20条の新設等を定めた規定〕並びに次項及び附則第3項の規定は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日〔=原則として、平成25年4月1日〕から施行する。

 

2.(経過措置)

第2条の規定による改正後の労働契約法(以下「新労働契約法」という。)第18条〔=無期転換ルール〕の規定は、前項ただし書に規定する規定の施行の日〔=平成25年4月1日〕以後の日を契約期間の初日とする期間の定めのある労働契約について適用し、同項ただし書に規定する規定の施行の日〔=平成25年4月1日〕前の日が初日である期間の定めのある労働契約の契約期間は、同条第1項に規定する通算契約期間には、算入しない。

 

3.(検討)

政府は、附則第1項ただし書に規定する規定の施行後8年を経過した場合において、新労働契約法第18条〔=無期転換ルール〕の規定について、その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 

 

次のページでは、有期労働契約の終了に関する問題として、雇止めに関する基準等と雇止め法理について学習します。