2019年度版

 

第5款 労働条件の明示(労基法第15条)

◆使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して労働条件明示しなければなりません(第15条第1項)。

 

この明示された労働条件が事実と相違する場合には、労働者は即時に労働契約を解除できます(同条第2項)。

 

この即時解除の場合、就業のため住居を変更した労働者が、契約解除日から14日以内帰郷する場合においては、使用者は、必要旅費(帰郷旅費)の負担をしなければなりません(同条第3項)。

 

 

【条文】

第15条(労働条件の明示)

1.使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令施行規則第5条第3項で定める事項については、厚生労働省令で定める方法〔=書面の交付等施行規則第5条第4項)〕により明示しなければならない。

 

2.前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

 

3.前項の場合就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。

 

 

○趣旨

労働条件をめぐる紛争を防止し、労働者の保護を図るため、労働契約締結の際に使用者に労働条件の明示を要求したものです(第15条第1項)。

そして、この労働条件の明示の実効性を図るため、明示された労働条件が事実と相違する場合に労働者に即時解除権を認める(同条第2項)とともに、一定の要件の下で帰郷旅費の請求も可能にさせたものです(同条第3項)。

 

 

※【ポイント】

 

本条の学習では、労働条件の明示事項等の知識を覚えることが必要です(もっぱら、効率良く記憶することがテーマとなります)。

最終的に、上記条文の太字のキーワードを覚える必要があります(選択式で未出題です)。

また、本条は、択一式でも出題が非常に多いため、力を入れる必要があります。

 

以下、第1項から順に学習します。

なお、過去問は、このページの下部(こちら)に掲載しています。

  

 

§1 労働条件の明示(第15条第1項)

◆使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件明示しなければなりません第15条第1項前段)。

 

この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法〔=書面の交付等施行規則第5条第4項〕により明示しなければなりません(同条同項後段)。

 

 

〔1〕要件

○「労働契約の締結の際」であること。

 

 

明示時期 =「労働契約の締結の際」の意義

◆労働条件を明示すべき時期は、「労働契約の締結の際」(意思表示の合致がなされた際)です。

 

1 募集

 

従って、労働者の「募集」の時点では、本規定による労働条件の明示は不要です。

 

なお、職業安定法において、公共職業安定所、職業紹介事業者等は、募集等に当たり労働条件を明示することが義務づけられています(職業安定法第5条の3第1項)。

こちら以下で後述します。

 

 

2 就業規則等の変更

 

労働契約の存続中に、就業規則の変更等によって労働条件が変更された場合には、本規定の適用はないと解されています。

 

文言上、「労働契約の締結に際し」であり、就業規則が変更されても労働契約自体が締結されたわけではないこと、また、就業規則の変更においては、周知及び内容の合理性が要件とされており(労働契約法第10条(労基法のパスワード)こちら以下)。なお、周知については、労基法第106条第1項にも規定があり、罰則適用の対象となります)、これにより労働者の保護も図られること等が理由といえるのでしょう。

 

 

3 有期労働契約の更新

 

有期労働契約の満了後に、これを「更新」する場合は、本規定が適用されます。更新は、新たな労働契約の締結だからです。

 

 

4 できる限りの書面による確認

 

なお、労働契約法第4条は、その第1項において、労働条件及び労働契約の内容について、使用者に対して、労働者の理解を深めるようにさせること(労働契約内容の理解促進)を定めると共に、第2項において、労働者及び使用者に、労働契約の内容について、できる限り書面により確認することを要求しています。

この労働契約法第4条は、その文言上、労基法第15条第1項のように労働契約の締結時にとどまらず、締結前さらには労働契約の変更時にも適用があります。

この労働契約法第4条については、詳しくは、労働契約法のこちら以下(労働一般のパスワード)で説明しています。

 

 

【労働契約法】

労契法第4条(労働契約の内容の理解の促進)

1.使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。

 

2.労働者及び使用者は、労働契約の内容期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。

  

 

 

〔2〕効果

◆使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません(第15条第1項前段)。

 

この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令(施行規則第5条第3項)で定める事項については、厚生労働省令で定める方法〔=書面の交付施行規則第5条第4項)〕により明示しなければなりません(第15条第1項後段)。 

 

2019年度試験 改正事項

※ 平成31年4月1日施行の施行規則の改正(【平成30.9.7厚生労働省令第112号】第1条)により、労働条件の明示については、主に、次の(1)及び(2)の2点が改められています。

 

(1)明示事項の事実との一致

 

使用者は、第15条第1項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件事実と異なるものとしてはならないとされました(施行規則第5条第2項)。

 

労働者の保護のためには、当然ながら、使用者は、事実と合致した労働条件を明示しなければならないということです。

 

なお、「事実と異なるもの」とは、第15条第2項(労働契約の締結の際に明示された労働条件が事実と相違する場合における労働者による即時解除権)において、労働者が即時に労働契約を解除することができるとされる場合と同様に判断されます(【平成30.9.7基発0907第1号】)。

 

 

(2)書面の交付による明示

 

また、従来は、「厚生労働省令(施行規則第5条第3項)で定める事項」については、「書面の交付」による労働条件の明示が必要でした。

しかし、利便性等の見地から、今回の改正により、書面の交付による労働条件の明示を原則としつつ、労働者が希望した場合は、ファクシミリを利用してする送信の方法、又は電子メールその他の電子的方法による送信の方法により明示することが可能となりました(施行規則第5条第4項)。

以下、これらの労働条件の明示の方法について、「書面の交付」ということがあります。

 

以上については、のちにも触れます。

以下は、労働条件の明示の効果について、詳しく見ます。

 

 

一 明示をすべき者(主体)

労働条件の明示をすべき者は「使用者」ですが(第15条第1項前段施行規則第5条第1項本文)、問題となるケースは以下の通りです。 

 

(一)出向

出向の場合は、在籍型であれ移籍型であれ、出向先と労働者との間に新たに労働契約関係が成立するものですから、出向に際して、出向が労働条件を明示することが必要と解されています(この明示は、出向元が出向先に代わって行ってもよいとされます)。

 

なお、出向の意義については「使用者」 の個所(こちら)で、要件等については後述の「労働契約の変更」の個所(こちら)で詳述しています。

 

 

(二)労働者派遣

派遣労働者に対する労働条件の明示は、派遣の使用者が、(労働者派遣法における労働基準法の適用に関する特例により自己が労基法に基づく義務を負わない労働時間休憩休日等を含めてすべての明示義務を負います。

【過去問 平成24年問2E(後掲)】/【平成29年問3E(後掲)】

 

なぜなら、労働条件の明示は労働契約を締結する際の使用者の義務であるところ(第15条第1項前段)、派遣労働者と労働契約を締結する使用者は派遣先ではなく派遣元の使用者だからです(こちら以下も参考)。

 

なお、労働者派遣法第34条(労働一般のパスワード)こちら)は、派遣元事業主は、労働者派遣をする場合にはあらかじめ労働者派遣契約で定める就業条件等を当該派遣される労働者に明示しなければならないと規定しています。

 

この点、労働契約の締結時点と派遣する時点が同時である場合には、労基法第15条による労働条件の明示義務と労働者派遣法第34条による派遣先における就業条件の明示義務を併せて行っても差支えないとされています(【昭和61.6.6基発333号】参考)。

 

(三)日雇労働者等

明示をする相手方である労働者についての問題として、例えば、日々雇い入れられる者(日雇労働者)や2か月以内の期間を定めて使用される者等についても、第15条第1項に基づく労働条件の明示が必要です。【過去問 平成11年/平成9年】

本規定は、「労働者」としているだけで、日雇労働者等を除外しているわけでなく、また、労働条件を明確化して紛争を防止する必要性も異ならないからです。

 

もっとも、日雇労働者については、同一条件で労働契約が更新される場合には、最初の雇入れの際に書面(書面の交付が必要な労働条件の明示のケースです)を交付すれば足り、その都度、当該書面を交付する必要はないとされています(【昭和51.9.28基発690号】参考)。

 

日々雇い入れられるという性格から、毎日書面を交付する手間の回避という実際上の必要性を考慮したものといえ、また、その都度の書面交付を不要としても、同一条件による更新であるなら、労働者にとっても労働条件は明確であり本規定の趣旨は満たされるということでしょう。  

 

なお、後述のように、パートタイム労働法における短時間労働者については、特則があります。

 

 

二 明示事項(客体)

次に、最も出題頻度が高い「労働条件の明示事項」について学習します。最初に、「労働条件の明示事項」の一覧表を掲載します。

 

※ 次の一覧表の通り、「労働条件の明示事項」と「就業規則の記載事項」は、対比して覚えるのが効率的です(就業規則の記載事項の詳細については、こちら以下の就業規則の個所で学習します)。

 

◆上記の図と下記のゴロ合わせにより明示事項を覚えます。

 

※ 労働条件の明示事項のうち、絶対的明示事項とは、必ず明示しなければならない事項のこと、相対的明示事項とは、定めがある場合には明示しなければならない事項のことです(施行規則第5条第1項柱書参考)。

 

就業規則の記載事項の場合も類似になっており(用語は若干異なりますが)、就業規則の絶対的必要記載事項とは、就業規則に必ず記載しなければならない事項のこと、相対的必要記載事項とは、定めをする場合には記載しなければならない事項のことです(第89条参考)。

 

記憶すべきポイントは、2点あります。

 

1.まず、上記の図(こちら)のように、労働条件の明示事項就業規則の記載事項は、労働条件の明示事項特有の「(1)~(3)及び(4)のうち所定労働時間を超える労働の有無」を除いては、基本的に同様になっています。

もっとも、最後(※1の上)の(h)についても、両者は異なります。

 

2.労働条件の明示事項の場合、絶対的明示事項は、「昇給に関する事項」を除き、「書面の交付」により明示することが必要です(第15条第1項後段施行規則第5条第3項、第4項)。

昇給に関する事項と相対的明示事項は、口頭による明示でも足ります

 

昇給に関する事項の明示を書面の交付等による必要がないとした理由は、昇給に関する基準等は人事上の秘密性の強い事項であること、将来的な事項であり不確定要素も強いこと等から、書面化になじまないという点にあると考えられます。

 

以上の前提知識をもとに、以下、記憶の作業に入ります。

少なくとも、絶対的明示事項は覚えておいた方がよいです。出題もひところ多かったですし、就業規則の絶対的必要記載事項との混同を防止する必要もあるからです。そこで、ゴロ合わせでいきます。

 

※【ゴロ合わせ】

 

○ 絶対的明示事項:

 

・「期間工の状況を超えるかどうか、始終時刻に、きゅうきゅうきゅうてか。

賃金の決算払を締切り期にしようというのは、しょうもないタイ

(期間工の苦しい状況をイメージして下さい。)

 

→「期間(=労働契約の「期間」)・工(=「更」新)の・状(=就業の「場(じょう)」所)・況(=従事すべき「業(きょう)」務)を・超えるかどうか(=所定労働時間を「超える労働の有無」)、

始・終・時刻(=「始」業及び「終」業の「時刻」)に、

きゅう(=「休」憩時間)・きゅう(=「休」日)・きゅう(=「休」暇)・てか(=就業時「転換」)。

賃金の・決(=「決」定)・算(=計「算」)・払(=支「払」の方法)を・締切り(=「締切り」)・期(=支払の時「期」)に、

しよう(=「昇」給)というのは、しょうもない(=「書」面の交付等が「ない」)・タイ(=「退」職)」

 

 

上記のゴロ合わせのうち、「期間工の状況を超えるかどうかまでが、「就業規則」の絶対的必要記載事項には含まれていない事項です。

これらの事項は、個々の労働者ごとに異なるのが一般であるため、就業規則によって画一的・定型的に定めることは妥当でないとして、就業規則の記載事項とはしていません。

 

 

○ 相対的明示事項:

 

平成24年度の択一式においては、相対的明示事項のうち「表彰に関する事項」が出題されていますので、相対的明示事項も余裕があれば覚えて下さい。一応、ゴロ合わせを紹介しておきます。

 

※「たいてい、臨時のボーナス最低で、食用に敢えてくれーと、がいがい(がやがや)してたら、おもてで制裁され休職した

(期間工は、たいていボーナスも最低で、食事をくれーと外でガヤガヤしてたら、パンチを受け休職する羽目になりました。)

 

→「たい・てい(=「退」職「手」当)・臨時(=「臨時」に支払われる賃金)の・ボーナス(=賞与)・最低(=「最低」賃金額)で・

食(=「食」費)・用(=作業「用」品)に、あ・えて(=「安」全及び「衛」生)・くれーと(=職業「訓練」)、

がい・がい(=災「害」補償及び業務「外」疾病扶助)してたら、おもてで(=「表」彰)・制裁(=制裁)され・休職(=休職)した」

 

 

※ 臨時の賃金等:

 

なお、上記の図(こちら)における※1の「臨時の賃金等」(図中の中央部分以下に3つあります)は、上記図の※2(図の最下部の文字部分です)のように、賃金支払の5原則の中の「毎月一回以上払、一定期日払の原則」の例外(こちら)と同じ内容です。

覚える必要はないといえますが、一応、ゴロを紹介しておきます(このゴロは、のちに賃金支払の5原則のゴロと合体します)。

 

・「ボーリングなら、一番、正規の勝率よ」

(ボーリングなら、勝率が高いです。)

 

→「ボー(「ボ」ーナス=賞与)・リン(「臨」時に支払われる賃金)グなら、

一番(「1」箇月)・正(「精」勤手当)・規(「勤」続手当)の・勝(「奨」励加給)・率(能「率」手当)よ」

 

 

 

※ 労働条件の明示事項を具体的に定めている施行規則第5条を掲載しておきます。最終的には、熟読して下さい。

 

【施行規則】

2019年度試験 改正事項

※ 次の施行規則第5条は、平成31年4月1日施行の改正(【平成30.9.7厚生労働省令第112号】第1条)により改められています。

〔即ち、同条第2項(現第3項)中、従来、「前項第1号」とあったのが、「第1項第1号」に改められ、第3項(現第4項)に後掲のただし書が追加され、第3項を第4項とし、第2項を第3項とし、第1項の次に、後掲の第2項が新設されました。〕

 

施行規則第5条

1.使用者が法第15条第1項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。ただし、第1号の2に掲げる事項については期間の定めのある労働契約であつて当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の場合に限り、第4号の2から第11号までに掲げる事項〔=相対的明示事項〕については使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りでない。

 

一 労働契約の期間に関する事項

 

一の二 期間の定めのある労働契約更新する場合の基準に関する事項

 

一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項

 

二 始業及び終業の時刻所定労働時間を超える労働の有無休憩時間休日休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項

 

三 賃金退職手当及び第5号に規定する賃金〔=臨時の賃金等〕を除く。以下この号において同じ。)の決定計算及び支払方法、賃金の締切り及び支払時期並びに昇給に関する事項

 

四 退職に関する事項(解雇の事由含む。)

 

 

〔※ 以下相対的明示事項です。〕

 

四の二 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項

 

五 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第8条各号に掲げる賃金〔=1箇月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当等〕並びに最低賃金額に関する事項

 

六 労働者に負担させるべき食費作業用品その他に関する事項

 

七 安全及び衛生に関する事項

 

八 職業訓練に関する事項

 

九 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

 

十 表彰及び制裁に関する事項

 

十一 休職に関する事項

 

 

2.使用者は、法第15条第1項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならない。 

 

3.法第15条第1項後段の厚生労働省令で定める事項〔=書面の交付等による明示が必要な事項〕は、第1項第1号から第4号までに掲げる事項〔=絶対的明示事項〕(昇給に関する事項を除く。)とする。

 

4.法第15条第1項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。ただし、当該労働者同項に規定する事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法とすることができる。

 

一 ファクシミリを利用してする送信の方法

 

二 電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第1号に規定する電気通信をいう。以下この号において「電子メール等」という。)の送信の方法(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。) 

 

 

以下、明示事項について個別に見ていきます。 

 

 

1 絶対的明示事項(施行規則第5条第1項第1号~第4号)

(1)「労働契約の期間に関する事項」施行規則第5条第1項第1号

【過去問 平成21年問2B】

 

◆「労働契約の期間に関する事項」です。

期間の定めのある労働契約の場合はその期間、期間の定めのない労働契約の場合はその旨を、明示します(【平11.1.29基発第45号】参考)。

なお、定年制の場合は、期間の定めのない労働契約ですから、期間の定めのない旨を明示します(こちら以下参考)。

 

 

(2)「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」施行規則第5条第1項第1号の2

 

◆「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」です。

ただし、期間の定めのある労働契約であって当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の場合に限ります(施行規則第5条第1項ただし書同項第1号の2)。

 

○趣旨

この(2)は、平成24年の施行規則の改正(平成25年4月1日施行)により新設された明示事項です。

以前は、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を締結する際の更新の有無等の明示については、【平成15.10.22厚生労働省告示第357号】(「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」。以下、「雇止めに関する基準」ということがあります)の中で定められていました(詳細は、「労働契約の終了」の「期間の満了」の個所(こちら以下)で学習します)。

 

即ち、この改正前の「雇止めに関する基準」において、契約締結時の明示事項等としては、次のような内容が示されていました(覚えなくて結構です)。

 

(a)使用者は、期間の定めのある労働契約(「有期労働契約」)の締結に際し、労働者に対して、当該契約の期間の満了後における当該契約に係る更新の有無を明示しなければならない。

 

(b)上記(a)の場合において、使用者が当該契約を更新する場合がある旨明示したときは、使用者は、労働者に対して当該契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければならない。

 

(c)使用者は、有期労働契約の締結後に前記(a)、(b)に該当する事項に関して変更する場合には、当該契約を締結した労働者に対して、速やかにその内容を明示しなければならない。

 

しかし、前記平成24年の改正において、「有期労働契約の継続・終了に係る予測可能性と納得性を高め、もって紛争の防止に資するため、契約更新の判断基準は、労働基準法第15条第1項後段の規定による明示をすることとすることが適当である」として、「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」を書面による明示が必要な絶対的明示事項とすることとしました(従来の告示においては、書面による明示は要求されていませんでした)。

そこで、上記の(a)~(c)は削除されました。

 

・この改正に係る通達である【平成24年10月26日基発1026第2号】を掲載しておきます(以上の記述を押さえておけば、この通達は読まないで結構です)。

 

〔引用開始。〕

 

労働基準法(昭和22年法律第49号。以下「法」という。)第15条第1項前段〔=法第15条第1項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件及び同項後段の厚生労働省令で定める事項として、期間の定めのある労働契約であって当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の場合においては「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」(以下「更新の基準」という。)を加えるものとしたこと(則第5条第1項第1号の2及び〔平成31年4月1日施行の施行規則の改正前の〕第2項)。

これにより、更新の基準は、〔平成31年4月1日施行の施行規則の改正前の〕則第5条第3項の規定により、書面の交付により明示しなければならない労働条件となるものであること。

 

〔※ 上記個所は、平成31年4月1日施行の施行規則の改正(【平成30.9.7厚生労働省令第112号】第1条)に伴い、「これにより、更新の基準は、則第5条第4項の規定により、書面の交付により明示しなければならない労働条件となるものであること。」といった内容に改められることになります。〕

 

書面の交付〔等〕により明示しなければならないこととされる更新の基準の内容は、有期労働契約を締結する労働者が、契約期間満了後の自らの雇用継続の可能性について一定程度予見することが可能となるものであることを要するものであること。

当該内容については、平成15年10月22日付け基発第1022001号「労働基準法の一部を改正する法律の施行について」の記の第1の2の(2)のアの(ア)において示していたものと同様であり、

例えば、「更新の有無」として、

a 自動的に更新する

b 更新する場合があり得る

c 契約の更新はしない

等を、

また、「契約更新の判断基準」として、

a 契約期間満了時の業務量により判断する

b 労働者の勤務成績、態度により判断する

c 労働者の能力により判断する

d 会社の経営状況により判断する

e 従事している業務の進捗状況により判断する

等を明示することが考えられるものであること。

また、更新の基準についても、他の労働条件と同様、労働契約の内容となっている労働条件を使用者が変更する場合には、労働者との合意その他の方法により、適法に変更される必要があること。

 

〔引用終了。〕

 

 

以下、本文に戻り、明示事項の(3)からです。

 

 

(3)就業の場所及び従事すべき業務に関する事項施行規則第5条第1項第1号の3

【過去問 平成15年問2E(後掲)】/【平成21年問2B(後掲)】

 

◆「就業の場所及び従事すべき業務に関する事項」については、雇入れ直後の「就業の場所及び従事すべき業務」を明示すれば足りますが、将来の就業場所等を併せ網羅的に明示することは差支えないとされます(前掲【平成11.1.29基発第45号】参考)。

 

 

(4)「始業及び就業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無〔=いわゆる残業の有無です〕休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項」施行規則第5条第1項第2号

【過去問 平成15年問2A(後掲)】/【平成18年問3C(後掲)】

 

(ア)当該労働者に適用される労働時間等に関する具体的な条件を明示することが必要です。

 

(イ)当該明示すべき事項の内容が膨大なものとなる場合においては、労働者の利便性をも考慮し、所定労働時間を超える労働の有無以外の事項については、勤務の種類ごとの始業及び終業の時刻、休日等に関する考え方を示した上、当該労働者に適用される就業規則上の関係条項名網羅的に示すことで足ります(以上、前掲【平成11.1.29基発第45号】参考)。

 

 

(5)「賃金(退職手当及び第5号〔=下記の2の(2)〕に規定する賃金〔=臨時の賃金等〕を除く。以下この(5)において同じ)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」施行規則第5条第1項第3号

  

◆「賃金退職手当及び第5号こちら)に規定する賃金〔=臨時の賃金等〕を除きます)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」です。

 

(ア)「退職手当及び臨時の賃金等」(これらは、相対的記載事項になっています)を除く「賃金」に関する事項となります。

 

(イ)就業規則等の規定と併せて、賃金に関する事項が当該労働者について確定し得るものであればよいとされます(ただし、就業規則等を労働者に周知させる措置がとられていることが必要です)。

例えば、労働者の採用時に交付される辞令等であって、就業規則等に規定されている賃金等級が表示されたものでもよいとされます(【昭和51.9.28基発第690号】参考)。【過去問 平成15年問2C(後掲)】

 

 

(6)「退職に関する事項(解雇の事由を含む)」施行規則第5条第1項第4号

 

退職の事由及び手続、解雇の事由等を明示しなければなりません(前掲【平成11.1.29基発第45号】参考)。

当該明示すべき事項の内容が膨大なものとなる場合においては、労働者の利便性をも考慮し、当該労働者に適用される就業規則上の関係条項名網羅的に示すことで足りるとされます(【平15.10.22基発第1022001号】参考)。

 

以上で、絶対的明示事項について終わります。次に、相対的明示事項です。

 

 

2 相対的明示事項(施行規則第5条第1項第4号の2~第11号)

(1)「退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項」施行規則第5条第1項第4号の2

 

この(1)は、退職手当関係です。

 

 

(2)「臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与及び第8条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項」施行規則第5条第1項第5号

 

◆「臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与及び施行規則第8条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項」が、相対的明示事項です。

 

このうち、「施行規則第8条各号に掲げる賃金」とは、次の(ア)~(ウ)です(前掲の図(こちら)の下部の※1、2でも記載しました。また、ゴロ合わせも紹介済みです)。

 

(ア)1箇月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当

 

(イ)1箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当

 

(ウ)1箇月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当

 

 

なお、(a)就業規則の記載事項、及び(b)賃金支払の5原則の中の「毎月一回以上払一定期日払の原則」の例外こちら)においては、「臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金」を「臨時の賃金等」と規定していますが(第24条第2項ただし書第89条第2号)、この「厚生労働省令で定める賃金」とは、上記「施行規則第8条各号に掲げる賃金」((ア)~(ウ))のことをいうとされています(施行規則第8条柱書)。

従って、本件(2)の労働条件の相対的明示事項第5号と上記(a)及び(b)の「臨時の賃金等」とは、結局、同じ内容を指すことになります。

(前掲の明示事項の図(こちら)の最下部の※1、2の中でも記載しました。出題が多い個所というわけではなく、無用の混乱を避けるために記載しています。)

 

 

なお、ここで、「臨時に支払われる賃金」についてまとめておきます。

 

臨時に支払われる賃金」とは、「臨時的、突発的事由にもとづいて支払われるもの及び結婚手当等支給条件は予め確定されているが、支給事由の発生が不確定であり、且つ非常に稀に発生するもの」のことです(【昭和22.9.13基発第17号】参考)。

例えば、就業規則の定めによって支払われる私傷病手当(【昭和26.12.27基収第3857号】)、病気欠勤等の月給者に支給される加療見舞金(【昭和27.5.10基収第6054号】)、退職金(【昭和22.9.13発基第17号】などです。

 

 

※ 「臨時に支払われる(た)賃金」は、労基法上、次のような取扱いがなされます(「臨時に支払われる賃金」と規定されている場合と「臨時に支払われた賃金」と規定されている場合がありますが、同様の内容です)。労基法全体の学習が終わった時点で、再度、ここを確認して下さい。

 

〇「臨時に支払われる(た)賃金」の労基法上の取扱い :

 

(a)平均賃金

 

「臨時に支払われた賃金」は、平均賃金の算定基礎である賃金総額から控除されます(第12条第4項こちらの(一)

 

 

(b)毎月一回以上払、一定期日払の原則の例外

 

「臨時に支払われる賃金」は、毎月一回以上払一定期日払の原則の例外となります(第24条第2項ただし書こちらの(一))。

 

 

(c)割増賃金

 

「臨時に支払われた賃金」は、割増賃金算定基礎から除外されます(第37条第5項施行規則第21条第4号こちらの6

 

 

(d)就業規則の相対的必要記載事項

 

「臨時に支払われる賃金」は、就業規則相対的必要記載事項の「臨時の賃金等」となります(第89条第4号第24条第2項ただし書こちら

 

 

(e)労働契約締結の際の労働条件の相対的明示事項

 

「臨時に支払われる賃金」は、労働契約締結の際労働条件の相対的明示事項となります(第15条第1項施行規則第5条第1項第5号)。(これが本問の問題です。)

 

 

相対的明示事項の続きに戻ります。以下は、簡単に見ます。 

 

 

(3)「労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項」施行規則第5条第1項第6号

 

 

(4)「安全及び衛生に関する事項」施行規則第5条第1項第7号

 

 

(5)「職業訓練に関する事項」施行規則第5条第1項第8号

 

 

(6)「災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項」施行規則第5条第1項第9号

 

 

(7)「表彰及び制裁に関する事項施行規則第5条第1項第10号

 

※ 制裁に関する事項とは、いわゆる懲戒処分に関する事項です。「労働契約の変更(展開)」の「懲戒処分」の個所(こちら以下)で詳しく学習します。

 

 

(8)「休職に関する事項」施行規則第5条第1項第11号

 

※「休職に関する事項」は、就業規則の相対的必要記載事項には列挙されていませんが(前掲の図(こちら)を参考)、「休職に関する事項」が当該事業場の労働者の全てに適用される定めであるときは、第89条第10号に該当しますから、相対的必要記載事項として就業規則に記載することが必要となります。【過去問 平成14年問2B(後掲)】  

 

 

○ その他、明示事項に関する知識を若干補足しておきます。

 

2019年度試験 改正事項

(ⅰ)使用者は、第15条第1項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件事実と異なるものとしてはなりません施行規則第5条第2項)。

 

先に触れましたが、労働者の保護のためには、当然ながら、使用者は、事実と合致した労働条件を明示しなければならないということです。

前述の通り、平成31年4月1日施行の施行規則の改正(【平成30.9.7厚生労働省令第112号】第1条)により施行規則第5条に追加された規定です。

 

 

(ⅱ)第15条労働契約の締結の際に明示すべき労働条件」の範囲は、第1条及び第2条の「労働条件」の範囲とは異なります。【過去問 平成16年問1E(後掲)】

 

第1条及び第2条の労働条件は、労働者の職場における一切の待遇をいいますが(こちら)、第15条の労働条件は、これまで見てきました施行規則第5条第1項に規定されている労働条件であり、後者の方が狭いことになります。

これらの各規定の趣旨・目的が違いますので、同じ「労働条件」の範囲も異なってくるものです。

 

 

(ⅲ)健康保険厚生年金保険労働者災害補償保険及び雇用保険適用に関する事項は、第15条の労働条件の明示事項には含まれていません

【過去問 平成14年問2C(後掲)】

後述のように、これらの事項は、職業安定法こちら以下)では、書面の交付等により明示が必要な事項とされています。

 

 

(ⅳ)「所定労働日以外の日労働の有無」(即ち、休日労働の有無)は、本条の明示事項には含まれていません。

【過去問 前掲の平成18年問3C(含まれるとする出題。後掲)】

 

「休日に関する事項」は絶対的明示事項に含まれており、休日労働の有無もこの「休日に関する事項」に含まれないかは問題です。

しかし、労働時間については、「始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無」が絶対的明示事項として定められており、「所定労働時間を超える労働の有無(即ち、時間外労働の有無)」が明示事項として明確に規定されていることと比較しますと、休日の場合は、「所定労働日以外の日の労働の有無」は規定されていず、従って、休日労働の有無は、明示事項に含まれていないと解するのが自然となります。

 

以上で、「二 明示事項(客体)」を終わります。 

 

 

三 明示の方法

2019年度試験 改正事項

 

絶対的明示事項のうち、「昇給に関する事項」を除き書面の交付等による明示が必要です(施行規則第5条第3項第4項)。

【過去問 平成15年問2A(後掲)】/【平成21年問2B(前掲)】

 

正確には、次の通りです。

 

絶対的明示事項のうち、「昇給に関する事項」を除き、労働者に対して当該事項が明らかとなる書面の交付による明示を行うことが原則として必要です(施行規則第5条第3項第4項本文)。

ただし、当該労働者が当該事項が明らかとなる次の①又は②のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法により明示することができます(施行規則第5条第4項ただし書)。 

 

ファクシミリを利用してする送信の方法 

 

②電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(以下、「電子メール等」といいます)の送信の方法(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限ります) 

 

 

※ なお、要式は自由です。

そして、当該労働者に適用する部分を明確にして就業規則を労働契約の締結の際に交付することとしても差し支えありません(前掲の【平成11.1.29基発45号】参考)。【過去問 平成24年問7E(後掲)】 

 

 

四 労働条件の明示がない場合

次に、第15条第1項に違反して、労働契約の締結の際に労働条件を明示せずに労働契約が締結された場合の効果の問題について見ておきます。

 

(一)公法上の効果

まず、第15条第1項に違反して労働条件を明示しなかった使用者は、30万円以下の罰金に処せられます(第120条第1号)。

 

※ なお、労働条件を明示しなかった場合には罰則適用されますが、明示した労働条件が実際の労働条件と異なる場合には、罰則適用されず、労働契約の即時解除及び帰郷旅費の問題(第15条第2項及び第3項)となることには注意です。【過去問 平成27年問3C(後掲)】

 

 

(二)私法上の効果

労働契約の締結の際、使用者が必要な労働条件の明示をしなかった場合であっても、労働契約自体は有効に成立すると解されています。

 

なぜなら、第15条第2項は、明示された労働条件が事実と相違する場合に労働者に即時解除権を認めていますが、これは、一定の労働条件が明示されず、その結果、労働条件と事実が相違したとしても、労働契約の成立自体は認めることを前提としているものと解されること(契約の解除は、契約が有効に成立したことを前提とするものです)、また、明示ない場合に労働契約が無効となるとしますと、労働条件は明示されなかったが労働者が現状の労働条件に満足しており労働契約の存続を望んでいるような場合、かえって労働者の不利益になりかねないこと等が考慮されているものと解されます。

 

 

以上で、労働条件の明示に関する第15条第1項を終わります。続いて、同条第2項の即時解除について学習します。 

 

 

§2 即時解除(第15条第2項)

第15条第1項によって労働契約の締結の際に明示された労働条件事実と相違する場合は、労働者は、即時に労働契約を解除することができます(第15条第2項)。

【過去問 平成23年問2B(後掲)】

 

【条文】

第15条(労働条件の明示)

 

〔第1項は、省略。〕

 

2.前項の規定によつて明示された労働条件事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

 

3.前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。

 

 

○趣旨

第15条第1項によって明示された労働条件が事実と相違する場合は、労働者の保護のため、労働者に労働契約の即時解除権を認めたものです。

 

即ち、錯誤無効(民法改正により錯誤取消し)や債務不履行による契約解除といった民法上の手段によらなくても、単に「事実と相違する」だけで契約を解消できる点、また、期間の定めの有無にかかわらず、「即時に」解除権を行使できる点において、民法の原則を修正して、労働者の保護を図っています。

 

この後者については、労働者が労働契約を解約する場合、本来なら、期間の定めのある労働契約のときは、やむを得ない事由がなければ中途解約はできず(民法第628条)、期間の定めのない労働契約の場合も2週間の予告期間が必要となるという原則(民法第627条第1項)を修正しているということです。  

 

一 要件

第15条第1項の規定によって明示された労働条件事実と相違すること。

 

(一)労働条件

第15条第1項の規定によって明示された労働条件」となっていますから、この「労働条件」とは、明示されたすべての労働条件を指すものではなく、明示された労働条件中、第15条第1項によって明示すべきこととされている労働条件(絶対的明示事項と相対的明示事項)に限られると解されています。

 

例えば、社宅が単なる福利厚生施設とみなされる場合は、労働契約締結の際に社宅の供与を明示しながら実際にはこれを供与しなかったとしても、本規定に基づき解除することはできません(【昭和23.11.27基収第3514号】参考)。

社宅の供与といった福利厚生は、第15条第1項の所定の労働条件には含まれていないからです。

 

ただし、社宅の供与を受ける利益が「賃金」にあたる場合(=社宅の供与を受けない者に対して均衡手当が支給される場合は、賃金にあたると解されています。詳しくは、「賃金」のこちら)には、第15条第1項に基づく施行規則第5条第1項第3号の「賃金」に該当するため、当該社宅の供与を受ける利益も明示事項に含まれますから、本規定に基づく解除もできます。

 

(二)労働条件の主体

「明示された労働条件」とは、当該労働者自身に関する労働条件に限られると解されています。【過去問 平成12年】

例えば、労働契約の締結の際、自己以外の者の労働条件について付帯条項が明示されていた場合(労働者の契約締結に当たって、均衡上、他の労働者の賃金を上げることを使用者が約束したケースなど)、使用者がその条項通りに契約を履行しないことがあっても、当該労働者は本規定に基づき契約を解除することはできないとされます(【昭和23.1.27基収第3514号】参考)。

(労働者自身に関する労働条件でない事項について明示と異なっていても、当該労働者の保護のために労働契約を解除するまでの必要性は乏しいといえること、また、当該労働者の保護は、債務不履行に基づく損害賠償請求や解除権の行使(民法第415条、第541条以下)という一般原則により行えることが考慮されているのでしょう。)

 

 

二 効果

◆当該労働者は、即時に労働契約を解除できます。

 

(参考)

 

この「解除」とは、契約の効果を遡及的に消滅させる解除(民法第545条等)のことではなく、契約を将来に向かって消滅させる解約のことです(民法第630条が、「雇用契約の解除は、将来に向かってのみ効力を生じる」旨を規定しています)。

【過去問 平成28年問2B(後掲)】

 

雇用契約(労働契約)は、通常、継続的な契約関係であるため、解除により過去に遡及して権利義務を消滅させては法律関係の安定を害します(例えば、労働者は受領した過去の賃金相当額を返還し、使用者は給付された過去の労働に相当する利益の額を返還することになり、清算関係が複雑化します)。

そこで、雇用契約の解除に遡及効は認めず将来効のみ認めたものです。

 

 

以上で、即時解除を終わり、最後に帰郷旅費の負担について学習します。 

 

 

§3 帰郷旅費の負担(第15条第3項)

◆労働契約の締結に際し明示された労働条件事実と相違するため、労働者が労働契約を即時解除する場合において、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければなりません(第15条第3項)。

 

 

【条文】

第15条(労働条件の明示)

 

〔第1項は、省略。〕

 

2.前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

 

3.前項場合就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。

 

※【記述式 平成8年度=「14日」】

 

○趣旨 

明示された労働条件が事実と相違するため、労働契約を即時解除した労働者が、就業のために住居を変更しており帰郷する場合に、使用者に帰郷旅費を負担させることによって、労働者の解除権の行使を実質的に保障しその保護を図ろうとした趣旨です。

 

 

一 要件

◆就業のために住居を変更した労働者が、第15条第1項により明示された労働条件と事実が相違することを理由として労働契約を即時解除し、当該契約解除日から14日以内に帰郷すること。

 

以下、問題となる点を見ます。

 

(一)住居

「住居」とは、住所(「各人の生活の本拠を住所とする」。民法第22条(国年法のパスワード。国年法のこちら)よりも広く、居所(=生活の本拠とまではいえないが、多少の期間、継続して居住する場所。民法第23条第1項は、「住所が知れない場合には、居所を住所とみなす」としています)も含むとされています。

 

例えば、寄宿舎に入居した場合や住込み労働者になったような場合にも、帰郷するときには帰郷旅費を保障する必要性があることには変わりがないからです。

 

 

(二)帰郷

「帰郷」とは、通常、就業する直前に労働者の居住していた場所まで帰ることをいいますが、これのみに限定されず、父母その他親族の保護を受ける場合には、その者の住所に帰る場合も含むと解されています(【昭和23.7.20基収第2483号】参考)。

 

 

(三)契約解除の日から14日以内

「契約解除の日から14日以内」とは、民法の期間の計算(民法第140条第141条)を適用し、初日算入せず契約解除日翌日から起算して14日以内ということです。

 

1 まず、民法の期間計算の考え方の基本を見ておきます(詳しくは、後にも見ます(こちら))。

 

又は」によって期間を定めたときは、以下の通り、期間を計算します。

 

(1)起算点起算日

 

◆期間の初日は、原則として、算入しません = 初日不算入の原則民法第140条本文)。

 

例外は、期間が午前零時から始まるとき、即ち、初日に端数がないときです。この場合は、初日を算入します(民法第140条ただし書)。

 

 

(2)満了点満了日

 

◆期間は、その末日の終了をもって満了するのが原則です(民法第141条)。

そして、又はによって期間を定めた場合は、その期間はに従って計算し(民法第143条第1項)、満了点は、起算日に応答する日前日となるのが原則です(同条第2項本文)。

 

 

例えば、本件の「明示された労働条件が事実と相違する場合の帰郷旅費の負担」のケースにおいて、6月1日に労働契約を解除した場合は、次の通りです。

 

・起算点

 

6月1日における労働契約の解除は、通常、1日の途中に行われるものですから、初日に端数がないことになり、初日不算入の原則通りとなるため、起算点は6月2日(の午前零時)となります。

 

 

・満了点

 

本件のように期間が日にちである場合は、起算点から当該日数を数えます。

そこで、6月2日から14日を数えて、満了点は6月15日(の午後24時)となります(丸々14日をあけることが必要です)。

 

※ 簡単には、「6月2日(初日不算入)+14日 ー 1日」と計算します。

 

期間の計算は、社労士試験では色々な場面で登場し、重要です。特に徴収法等で必要な知識です。関係個所でまた解説することとし、ひとまず期間計算の問題は終わります。

 

 

2 14日以内に帰郷することが必要ですが、14日以内に目的地に向けて出発すれば足り、到着する必要はないと解されています(到着することが必要としては、遠距離に帰郷する者ほど不利になり不合理でしょう)。

 

なお、使用者が帰郷旅費を支給しないために14日経過後に帰郷(出発)する場合も、使用者に対する帰郷旅費請求権は失わないとされています。

 

 

二 効果

(一)私法上の効果

◆使用者は、帰郷のため必要な旅費を負担しなければなりません第15条第3項)。

 

※「必要な旅費」とは、帰郷するまでに通常必要とする一切の費用をいいます。

食費、宿泊費や家財道具等の運送費等も含みます。

また、労働者本人の分だけでなく、就業のため移転した家族の旅費含まれると解されています(【昭和23.9.13発基第17号】等参考)。【過去問 平成29年問3B(後掲)】

 

(二)公法上の効果

◆使用者が、本項に違反して帰郷旅費を負担しない場合は、30万円以下の罰金に処せられます(第120条第1号)。

 

 

三 横断整理

最後に、本件の「明示された労働条件が事実と相違する場合の帰郷旅費の負担」について、類似する事項との横断整理をしておきます(初学者の方は、流し読みして下さい)。

 

(一)14日

まず、労基法において「14日」が登場する場面は、4つあります。

 

1 本件の「明示された労働条件が事実と相違する場合の即時解除に伴う帰郷旅費第15条第3項こちら

 

 

2 試用期間中の者に係る解雇予告の制度適用除外第21条第4号こちら

 

試の使用期間中の者(試用期間中の者)については、原則として、解雇予告の制度は適用されませんが、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合には適用されます。

(ゴロ合わせについては、解雇予告の制度の個所で紹介します。)

 

 

3 年少者が解雇された場合帰郷旅費第64条こちら

 

満18歳未満の者(=年少者といいます)が解雇日から14日以内に帰郷する場合は、使用者は、必要旅費を負担しなければならないのが原則です(例外として、当該年少者がその責めに帰すべき事由に基づいて解雇され、使用者が当該事由について行政官庁(所轄労働基準監督署長)の認定をうけた場合は、負担は不要です)。

 

※【ゴロ合わせ】

・「帰郷は嫌かい? いーよ、本人のせいにて

 

→「帰郷(=「帰郷」旅費の負担)は・嫌(=「18」歳)・かい(=「解」雇)? 

いー・よ(=「14」)、本人の・せい(=「本人」に「帰責」事由あり)・にて(=「認定」)」

 

 

4 寄宿舎計画の届出第96条の2こちら

 

使用者は、常時10人以上の労働者を就業させる事業、厚生労働省令で定める危険な事業又は衛生上有害な事業の附属寄宿舎を設置し、移転し、又は変更しようとする場合においては、厚生労働省令で定める危害防止等に関する基準に従い定めた計画を、工事着手14日前までに、所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。

 

※【ゴロ合わせ】

・「寄宿舎計画、とーちゃん、重視して、せいへんかー?

 

→「寄宿舎計画、とー(=常時「10」人以上使用)・ちゃん・重視(=工事「着」手「14」日前まで)し・て(=届「出」)、

せ(=「設」置)・い(=「移」転)・へん(=「変」更)かー?」

 

 

(二)各法の労働条件の明示の比較

※ 労働条件の明示は、職業安定法パートタイム労働法でも要求されており、労基法の労働条件の明示と比較しておきます(初学者の方は、現段階では、パートタイム労働法と職業安定法でも問題となることだけ押さえておいて下さい。詳細は、労働一般の上記各法において学習します)。

  

まず、次のまとめの図で、概観をつかんで下さい。

 

なお、職業安定法における労働条件の明示事項については、平成30年1月1日施行の改正により改められています。

平成30年度試験 改正事項

 

※ 平成30年1月1日施行の職業安定法施行規則の改正により、上記図の右側の「職業安定法」ののうち、(ⅱ)以外の3つが追加されました。

その他に、職業紹介の際に明示した労働条件を変更等する場合は、労働契約の相手方となろうとする者に対して、変更する労働条件等を明示することが必要となりました。 

 

以下、上記の図のパートタイム労働法と職業安定法の部分について、解説します。

 

Ⅰ パートタイム労働法

なお、「パートタイム労働法」は、正式には、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」といいます。

  

(Ⅰ)短時間労働者

 

パートタイム労働法における「短時間労働者」(=1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者のそれに比べ短い労働者をいいます)についても、労基法は適用されますから、労基法第15条第1項労働条件の明示の規定は適用されます。

ただし、パートタイム労働法では、書面による労働条件の明示について、労基法の特則を設けており、以下の(Ⅱ)の〔2〕及び〔3〕の通りとなります。

 

 

(Ⅱ)パートタイム労働法における短時間労働者に対する文書による労働条件の明示の規制

 

以下は、詳しくは、パートタイム労働法で学習します(労働一般のこちら)。

 

〔1〕労基法第15条第1項の「労働契約締結の際の労働条件の絶対的明示事項」(これは、労基法がそのまま適用されるケースです)

 

➡ 昇給に関する事項を除き、書面の交付による明示が必要です。

 

➡ 違反しますと、30万円以下の罰金に処せられます(労基法第120条第1号)。

 

 

〔2〕特定事項 = 昇給の有無退職手当の有無賞与の有無及び相談窓口4つ

 

➡「文書の交付等」による明示が必要です(パートタイム労働法第6条第1項(労働一般のパスワード)同法施行規則第2条第1項)。

 

この「文書の交付等」とは、文書の交付の他、短時間労働者が希望した場合ファックス送信電子メール送信の方法をいいます(同法施行規則第2条第2項)。

(労基法の労働条件の明示の方法においても、平成31年4月1日施行の改正により、同様の内容に改められました(先にこちらで触れました)。)

 

※ なお、「昇給」に関する事項は、労基法では絶対的明示事項ですが、書面の交付等は不要となっています。

また、「退職手当」と「賞与」に関する事項は、労基法では任意的明示事項で、定めがある場合は明示は必要ですが、書面の交付等は不要となっています。

パートタイム労働法では、以上の3つについても、文書の交付等による明示を要求しています。

 

※ さらに、平成27年4月1日施行のパートタイム労働法施行規則の改正により、特定事項に「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」が追加されました。

 

※ 以上の〔2〕の「特定事項の文書の交付等による明示義務」に違反しますと、10万円以下の過料に処せられます(パートタイム労働法第31条

 

 ※【ゴロ合わせ】

 ・「と(10)・くてい事項

 

(参考)

 

なお、「過料」とは、上記〔1〕の労基法上の「罰金」のような行政「刑罰」(刑法総則や刑事訴訟法が適用されるのが原則です)ではなく、秩序罰といわれるものであり、行政上の義務の不履行に対して、刑法上の刑罰以外の制裁として科されるものです。

行政上の届出違反など、比較的軽微な違反に対して科されることが多いです。

 

 

〔3〕上記〔1〕と〔2〕以外の事項

 

➡ 文書の交付等により明示するように努める努力義務にとどまります(パートタイム労働法第6条第2項)。

 

 

※ 以上の〔1〕~〔3〕について図示しますと、次の通りです。 

 

参考までに、条文を掲載しておきます。

 

【パートタイム労働法】

パートタイム労働法第6条(労働条件に関する文書の交付等)

1.事業主は、短時間労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該短時間労働者に対して、労働条件に関する事項のうち労働基準法(昭和22年法律第49号)第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項〔=労基法上、労働契約の締結の際に書面の交付により労働条件の明示が必要な事項〕以外のものであって厚生労働省令〔=施行規則第2条第1項〕で定めるもの(次項及び第14条第1項において「特定事項」という。)を文書の交付その他厚生労働省令〔=施行規則第2条第2項〕で定める方法(次項において「文書の交付等」という。)により明示しなければならない。

 

2.事業主は、前項の規定に基づき特定事項を明示するときは、労働条件に関する事項のうち特定事項及び労働基準法第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものについても、文書の交付等により明示するように努めるものとする。

 

 

【パートタイム労働法施行規則】

パートタイム労働法施行規則第2条(法第6条第1項の明示事項及び明示の方法)

 

1.法第6条第1項の厚生労働省令で定める短時間労働者に対して明示しなければならない労働条件に関する事項は、次に掲げるものとする。

 

一 昇給の有無

 

二 退職手当の有無

 

三 賞与の有無

 

四 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

 

2.法第6条第1項の厚生労働省令で定める方法は、前項各号に掲げる事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを当該短時間労働者が希望した場合における当該方法とする。

 

一 ファクシミリを利用してする送信の方法

 

二 電子メールの送信の方法(当該短時間労働者が当該電子メールの記録を出力することによる書面を作成することができるものに限る。)

 

3.前項第1号の方法により行われた法第6条第1項に規定する特定事項(以下本項において「特定事項」という。)の明示は、当該短時間労働者の使用に係るファクシミリ装置により受信した時に、前項第2号の方法により行われた特定事項の明示は、当該短時間労働者の使用に係る通信端末機器により受信した時に、それぞれ当該短時間労働者に到達したものとみなす。

 

  

 

Ⅱ 職業安定法

【平成29年度 平成30年度試験 改正事項

 

職業安定法において、公共職業安定所、特定地方公共団体等は、職業紹介等に当たり、求職者等に対し、労働条件を明示しなければならないとされ、また、求人者は、求人の申込みに当たり公共職業安定所、特定地方公共団体又は職業紹介事業者に対し、労働条件を明示しなければならない等とされており(職業安定法第5条の3)、この明示すべき労働条件とは以下の事項とされています(同法施行規則第4条の2第3項)。

なお、これらの事項は、書面の交付等による明示が必要です(同法施行規則第4条の2第4項)。

 

※ 平成30年1月1日施行の改正(雇用保険法等の一部を改正する法律(【平成29.3.31法律第14号】)に基づく施行規則の改正(【平成29.6.30厚生労働省令第66号】)により、明示事項等が改正されました。

以下の(3)(8)及び(9)追加になっています。下線部分です。

 

 

(1)労働契約の期間

 

(2)就業の場所に関する事項

 

(3)試みの使用期間に関する事項

 

(4)労働者が従事すべき業務の内容

 

(5)所定労働時間を超える労働の有無、始業及び終業の時刻、休憩時間及び休日に関する事項 

 

※ 労基法の絶対的明示事項と異なり、「休暇」と「就業時転換」に関する事項は、含まれていません

 

 

(6)賃金(臨時に支払われる賃金、賞与及び労働基準法施行規則(労基法施行規則第8条各号に掲げる賃金〔=臨時の賃金等〕を除く)の額に関する事項

 

※ 労基法の絶対的明示事項と異なり、「賃金の額」に関する事項の明示で足ります

 

 

(7)健康保険厚生年金保険労働者災害補償保険及び雇用保険適用に関する事項

 

※ 労基法の明示事項と異なり、社会保険(広義)の適用に関する事項も明示事項となっています。

 

※ なお、平成25年施行の労基法の絶対的明示事項の追加である「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」は、職業安定法上の明示事項には入っていません。

 

 

(8)労働者を雇用しようとする者氏名又は名称に関する事項

 

(9)労働者を派遣労働者として雇用しようとする旨(労働者を派遣労働者として雇用しようとする者に限る)

 

 

 

※ 労働条件の変更の場合の明示:

 【平成30年度試験 改正事項】

また、職業紹介の際に明示した労働条件を変更等する場合は、労働契約の相手方となろうとする者に対して、変更する労働条件等を明示することが必要となりました(職業安定法第5条の3第3項の新設。平成30年1月1日施行)。

 

即ち、求人者、労働者の募集を行う者及び労働者供給を受けようとする者(供給される労働者を雇用する場合に限ります)は、それぞれ、求人の申込みをした公共職業安定所、特定地方公共団体若しくは職業紹介事業者の紹介による求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者と労働契約を締結しようとする場合であって、これらの者に対して職業安定法第5条の3第1項の規定により明示された従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件(「従事すべき業務の内容等」)を変更する場合その他厚生労働省令〔=職業安定法施行規則第4条の2第1項で定める場合は、当該契約の相手方となろうとする者に対し、当該変更する従事すべき業務の内容等その他厚生労働省令〔=同法施行規則第4条の2第2項〕で定める事項を明示しなければなりません(職業安定法第5条の3第3項)。

 

 

具体的には、次の(ⅰ)~(ⅳ)の場合に、変更内容の明示が必要です(職業安定法第5条の3第3項同法施行規則第4条の2第1項)。〔以下の具体例は、厚労省のリーフレットから転載しています。〕

 

(ⅰ)当初明示された「従事すべき業務の内容等」を変更する場合(職業安定法第5条の3第3項

 

例)当初:基本給30万円/月 ⇒ 基本給28万円/月

 

 

(ⅱ)当初明示された「従事すべき業務の内容等」の範囲内で従事すべき業務の内容等を特定する場合(施行規則第4条の2第1項第1号

 

例)当初:基本給25万円~30万円/月 ⇒ 基本給28万円/月

 

 

(ⅲ)当初明示された「従事すべき業務の内容等」を削除する場合(施行規則第4条の2第1項第2号

 

例)当初:基本給25万円/月、営業手当3万円/月 ⇒ 基本給25万円/月

 

 

(ⅳ)(当初明示されていなかった)「従事すべき業務の内容等」を追加する場合(施行規則第4条の2第1項第3号

 

例)当初:基本給25万円/月 ⇒ 基本給25万円/月、営業手当3万円/月

 

  

以下、職業安定法等の条文です。さしあたりはスルーで結構です。労働一般で学習します。  

 

 

【職業安定法】

 

次の職業安定法第5条の3は、平成30年1月1日施行の改正(雇用保険法等の一部を改正する法律【平成29.3.31法律第14号】)により、第3項が新設されるといった見直しが行われています。

 

なお、平成28年8月20日施行の職業安定法の改正により、第1項等に、「特定地方公共団体」が追加されています。   

 

職業安定法第5条の3(労働条件等の明示)

1.公共職業安定所特定地方公共団体及び職業紹介事業者労働者の募集を行う者及び募集受託者並びに労働者供給事業者は、それぞれ、職業紹介労働者の募集又は労働者供給に当たり、求職者募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者に対し、その者が従事すべき業務の内容及び賃金労働時間その他の労働条件明示しなければならない。

 

2.求人者求人の申込みに当たり公共職業安定所特定地方公共団体又は職業紹介事業者に対し、労働者供給を受けようとする者はあらかじめ労働者供給事業者に対し、それぞれ、求職者又は供給される労働者従事すべき業務の内容及び賃金労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

 

3.求人者、労働者の募集を行う者及び労働者供給を受けようとする者(供給される労働者を雇用する場合に限る。)は、それぞれ、求人の申込みをした公共職業安定所、特定地方公共団体若しくは職業紹介事業者の紹介による求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者と労働契約を締結しようとする場合であつて、これらの者に対して第1項の規定により明示された従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件(以下この項において「従事すべき業務の内容等」という。)を変更する場合その他厚生労働省令〔=職業安定法施行規則第4条の2第1項〕で定める場合は、当該契約の相手方となろうとする者に対し当該変更する従事すべき業務の内容等その他厚生労働省令〔=同法施行規則第4条の2第2項〕で定める事項を明示しなければならない

 

4.前3項の規定による明示は、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令〔=同法施行規則第4条の2第3項〕で定める事項については、厚生労働省令〔=同法施行規則第4条の2第4項〕で定める方法により行わなければならない。

 

 

【職業安定法施行規則】

 

※ 次の職業安定法施行規則第4条の2も、平成30年1月1日施行の改正(【平成29.6.30厚生労働省令第66号】)により大きく改められています。 

 

職業安定法施行規則第4条の2(法第5条の3に関する事項)

 

1.法第5条の3第3項〔=明示した労働条件を変更等する場合〕の厚生労働省令で定める場合は、次のとおりとする。

 

一 求人の申込みをした公共職業安定所、特定地方公共団体若しくは職業紹介事業者の紹介による求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者(以下この項において「紹介求職者等」という。)に対して法第5条の3第1項の規定により明示された従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件(以下「従事すべき業務の内容等」という。)の範囲内で従事すべき業務の内容等を特定する場合

 

二 紹介求職者等に対して法第5条の3第1項の規定により明示された従事すべき業務の内容等を削除する場合

 

三 従事すべき業務の内容等を追加する場合

 

2.法第5条の3第3項〔=労働条件の変更等の場合に明示すべき事項〕の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。

 

一 前項第1号の場合において特定する従事すべき業務の内容等

 

二 前項第2号の場合において削除する従事すべき業務の内容等

 

三 前項第3号の場合において追加する従事すべき業務の内容等

 

3.法第5条の3第4項の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。ただし、第8号に掲げる事項にあつては、労働者を派遣労働者(労働者派遣法第2条第2号2条第2号(労働一般のパスワード)に規定する派遣労働者をいう。以下同じ。)として雇用しようとする者に限るものとする。

 

一 労働者が従事すべき業務の内容に関する事項

 

二 労働契約の期間に関する事項

 

二の二 試みの使用期間に関する事項

 

三 就業の場所に関する事項

 

四 始業及び終業の時刻所定労働時間を超える労働の有無休憩時間及び休日に関する事項

 

五 賃金(臨時に支払われる賃金、賞与及び労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第8条各号〔=労働基準法施行規則第8条各号〕に掲げる賃金を除く。)の額に関する事項

 

六 健康保険法(大正11年法律第70号)による健康保険、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)による厚生年金、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)による労働者災害補償保険及び雇用保険法(昭和49年法律第116号)による雇用保険適用に関する事項

 

七 労働者を雇用しようとする者氏名又は名称に関する事項

 

八 労働者を派遣労働者として雇用しようとする旨

 

4.法第5条の3第4項の厚生労働省令で定める方法は、前項各号に掲げる事項(以下この項及び次項において「明示事項」という。)が明らかとなる次のいずれかの方法とする。ただし、職業紹介の実施について緊急の必要があるためあらかじめこれらの方法によることができない場合において、明示事項をあらかじめこれらの方法以外の方法により明示したときは、この限りでない。

 

一 書面の交付の方法

 

二 電子情報処理組織(書面交付者(明示事項を前号の方法により明示する場合において、書面の交付を行うべき者をいう。以下この号において同じ。)の使用に係る電子計算機と、書面被交付者(明示事項を前号の方法により明示する場合において、書面の交付を受けるべき者をいう。以下この号及び次項において同じ。)の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)を使用する方法のうち、書面交付者の使用に係る電子計算機と書面被交付者の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し、書面被交付者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法(書面被交付者がファイルへの記録を出力することによる書面を作成することができるものに限る。)によることを書面被交付者が希望した場合における当該方法〔=つまり、本人が希望した場合の電子メールの送信の方法です〕

 

5.前項第2号の方法により行われた明示事項の明示は、書面被交付者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録されたときに当該書面被交付者に到達したものとみなす。

 

6.法第5条の3第1項から第3項までの規定による明示は、試みの使用期間中従事すべき業務の内容等当該期間が終了した後の従事すべき業務の内容等とが異なる場合には、それぞれの従事すべき業務の内容等を示すことにより行わなければならない。

 

7.求人者、労働者の募集を行う者及び労働者供給を受けようとする者は、求職者、募集に応じて労働者となろうとする者又は供給される労働者に対して法第5条の3第1項の規定により明示された従事すべき業務の内容等に関する記録を、当該明示に係る職業紹介、労働者の募集又は労働者供給が終了する日(当該明示に係る職業紹介、労働者の募集又は労働者供給が終了する日以降に当該明示に係る労働契約を締結しようとする者にあつては、当該明示に係る労働契約を締結する日)までの間保存しなければならない。

 

8.求人者は、公共職業安定所から求職者の紹介を受けたときは、当該公共職業安定所に、その者を採用したかどうかを及び採用しないときはその理由を、速やかに、通知するものとする。

 

 

以上で、本文を終わります。次に、労働条件の明示に関する過去問を見ます。 

  

 

○過去問:

 

【以下の過去問についてのご注意】

 

※ 平成31年4月1日施行の施行規則の改正により、従来、書面の交付により労働条件を明示することが必要であった場合について、当該労働者が当該明示事項が明らかとなるファクシミリを利用してする送信の方法又は電子メール等の送信の方法(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限ります)のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法により明示することができることに改められました(施行規則第5条第4項)。

これらの明示の方法を、当サイトでは、「書面の交付」といいます。

以下の本ページにおける過去問について、出題当時、設問中に「書面の交付」とあった個所は、「書面の交付」に補正しています。

 

なお、今後、この労働条件の明示の方法(書面の交付等の内容)自体が問われる可能性がありますので、こちらをチェックしておいて下さい。

 

 

・【平成15年問2E(一部補正)】

設問:

労働契約の締結に際し労働者に対して書面の交付により明示しなければならないこととされている労働条件の多くは就業規則のいわゆる絶対的必要記載事項とも一致しているが、労働契約の締結に際し労働者に対し書面の交付等により明示しなければならないこととされている「就業の場所に関する事項」は、就業規則の絶対的必要記載事項とはされていない。

 

解答:

正しいです施行規則第5条第1項第1号の3法第89条)。

労働契約の締結の際に書面の交付により明示しなければならない事項のうち、「労働契約の期間に関する事項」、「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」、「就業の場所及び従事すべき業務に関する事項」及び「所定労働時間を超える労働の有無」に関する事項については、就業規則の絶対的必要記載事項ではありません(本文は、こちら以下です)。

 

 

・【平成21年問2B(一部補正)】

設問:

労働契約の期間に関する事項、就業の場所及び従事すべき業務に関する事項は、使用者が、労働契約の締結に際し、労働者に対して書面の交付によって明示しなければならない事項に含まれている。

 

解答:

正しいです施行規則第5条第1項第1号(労働契約の期間に関する事項)、第1項第1号の3(就業の場所及び従事すべき業務に関する事項)。施行規則第5条第3項、第4項)。

「絶対的明示事項」のうち「書面の交付による明示」が「不要」な事項は、「昇給に関する事項」のみです。

 

 

・【平成25年問6C(一部補正)】

設問:

使用者は、期間の定めのある労働契約であって当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の際に、労働者に対して、期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項を、書面の交付により明示しなければならない。

 

解答:

平成24年の施行規則の改正事項(平成25年4月1日施行)であり施行規則第5条第1項第1号の2、正しい内容です。

 

 

・【平成15年問2A(一部補正)】

設問:

労働基準法第15条においては、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については書面の交付により明示しなければならないこととされているが、労働時間については、始業及び終業の時刻、休憩時間、休日等のほか、残業(所定労働時間を超える労働)の有無についても、書面の交付により明示しなければならないこととされている。

 

解答:

正しいです施行規則第5条第1項第2号

 

 

・【平成18年問3C(一部補正)】

設問:

使用者は、労働基準法第15条(労働条件の明示)の規定に基づき、労働契約の締結に際し、労働者に対して、「所定労働時間を超える労働の有無」及び「所定労働日以外の日の労働の有無」について、書面の交付により明示しなければならないこととされている。

 

解答:

「所定労働日以外の日の労働の有無」(休日労働の有無)については、第15条に基づく労働条件の明示事項に含まれていません。

従って、休日労働の有無は、書面の交付による明示も必要ありません。よって、設問は誤りです。本文は、こちらです。

 

 

・【平成15年問2C(一部補正)】

設問:

労働契約の締結に際し、労働者に対して書面の交付により明示しなければならないこととされている賃金(退職手当及び一定の賃金を除く。)の決定及び計算に関する事項に係る書面の内容としては、当該事業場の就業規則を労働者に周知させる措置が講じられていれば、就業規則の規定と併せ当該事項が当該労働者について確定し得るものであればよく、例えば、当該労働者の採用時に交付される辞令であって当該就業規則等に規定されている賃金等級が表示されたものでも差し支えないとされている。

 

解答:

正しいです(【昭和51.9.28基発第690号】)。本文は、こちらです。

 

 

・【平成24年問2D】

設問:

使用者は、「表彰に関する事項」については、それに関する定めをする場合であっても、労働契約の締結に際し、労働者に対して、労働基準法第15条の規定に基づく明示をする必要はない。

 

解答:

相対的明示事項であるため、定めをする場合は、明示が必要です施行規則第5条第1項第10号。従って、設問は誤りです。

 

 

・【平成14年問2B】

設問:

休職に関する事項は、使用者がこれに関する定めをする場合には、労働基準法第15条第1項及び同法施行規則第5条第1項の規定により、労働契約の締結に際し労働者に対して明示しなければならない労働条件とされており、また、それが当該事業場の労働者のすべてに適用される定めであれば、同法第89条に規定する就業規則の必要記載事項でもある。

 

解答:

正しいです施行規則第5条第1項第11号第89条第10号)。

就業規則の記載事項については、詳しくは就業規則の個所(こちら)で学習します。

 

 

・【平成14年問2C(一部補正)】

設問:

労働基準法第15条では、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならず、そのうち一定の事項については書面の交付により明示しなければならないとされているが、健康保険、厚生年金保険、労働者災害補償保険及び雇用保険の適用に関する事項もこの書面により明示しなければならない事項に含まれている。

 

解答:

「健康保険、厚生年金保険、労働者災害補償保険及び雇用保険の適用に関する事項」は、労働契約締結の際に書面の交付等により明示しなければならない労働条件に係る事項ではありません。よって、設問は誤りです。

これらの事項は、職業安定法における労働者の募集、職業紹介に係る労働条件の文書等の交付による明示事項です(こちら)。

 

 

・【平成16年問1E】

設問:

労働基準法第15条に基づいて明示すべき労働条件の範囲は、同法第1条「労働条件の原則」及び第2条「労働条件の決定」でいう労働条件の範囲とは異なる。

 

解答:

正しいです。

第1条及び第2条の労働条件は、労働者の職場における一切の待遇をいいますが、第15条の労働条件は、施行規則第5条第1項に規定されている労働条件であり、後者の方が狭いことになります(本文は、こちらです)。

 

 

・【平成24年問2E】

設問:

派遣元の使用者は、労働者派遣法第44条第2項における労働基準法の適用に関する特例により、労働時間に係る労働基準法第32条、第32条の2第1項等の規定については、派遣先の事業のみを派遣中の労働者を使用する事業とみなすとされているところから、これらの特例の対象となる事項については、労働基準法第15条による労働条件の明示をする必要はない。

  

解答:

派遣労働者に対する労働条件の明示は、派遣元の使用者が、(労働者派遣法における労働基準法の適用に関する特例により自己が労基法に基づく義務を負わない労働時間、休憩、休日等を含めて)すべての明示義務を負います。

なぜなら、労働条件の明示は労働契約を締結する際の使用者の義務であるところ、派遣労働者と労働契約を締結する使用者は派遣先ではなく派遣元の使用者だからです。

よって、設問は誤りです。本文は、こちらです。

 

なお、設問の「労働者派遣法第44条第2項(労働一般のパスワード)とは、派遣先のみが使用者とみなされる特例に関する規定であり、「労働基準法第32条」とは、法定労働時間を定めた規定、「第32条第1項」とは、1箇月単位の変形労働時間制を定めた規定のことです。

 

 

・【平成29年問3E】

設問:

派遣労働者に対する労働条件の明示は、労働者派遣法における労働基準法の適用に関する特例により派遣先の事業のみを派遣中の労働者を使用する事業とみなして適用することとされている労働時間、休憩、休日等については、派遣先の使用者がその義務を負う。

 

解答:

前問の解説と同様、派遣労働者に対する労働条件の明示は、派遣元の使用者が、(労働者派遣法における労働基準法の適用に関する特例により自己が労基法に基づく義務を負わない労働時間、休憩、休日等を含めて)すべての明示義務を負います。

なぜなら、労働条件の明示は労働契約を締結する際の使用者の義務であるところ、派遣労働者と労働契約を締結する使用者は派遣先ではなく派遣元の使用者だからです。

よって、設問は誤りです。本文は、こちら以下です。

 

 

・【平成23年問2B】

設問:

労働基準法第15条第1項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

 

解答:

第15条第2項の通り、正しいです。

 

 

・【平成27年問3C】

設問:

労働基準法第15条は、使用者が労働契約の締結に際し労働者に明示した労働条件が実際の労働条件と相違することを、同法第120条に定める罰則付きで禁止している。

 

解答:

労基法第15条に違反して労働条件を明示しなかった場合には、罰則が適用されますが(第120条第1号)、明示した労働条件が実際の労働条件と異なる場合には、罰則は適用されないことに注意です。

この場合は、労働契約の即時解除及び帰郷旅費の問題(第15条第2項及び第3項)の問題となります。

本問は過去に出題が無かった問題といえます。間違えやすい問題でした。

 

 

・【平成28年問2B】

設問:

労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と相違しているため、労働者が労働契約を解除した場合、当該解除により労働契約の効力は遡及的に消滅し、契約が締結されなかったのと同一の法律効果が生じる。

 

解答:

明示された労働条件が事実と相違する場合に行われた労働契約の即時解除の効果に関する問題です。設問は、誤りです。

当サイトでは、「(参考)」と表記していますが、こちらで掲載していました。

本問は、通常、テキストには記載がない論点かもしれません。

ただ、設問の通りに、即時解除された労働契約の効力が初めから消滅したとするとどのような問題が生じるのかを想像して頂くと、正解できた問題といえます。

 

 

・【平成29年問3B】

設問:

明示された労働条件と異なるために労働契約を解除し帰郷する労働者について、労働基準法第15条第3項に基づいて使用者が負担しなければならない旅費は労働者本人の分であって、家族の分は含まれない。

 

解答:

明示された労働条件が事実と相違する場合の帰郷旅費の問題です第15条第3項)。

即ち、労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と相違するため、労働者が労働契約を即時解除する場合において、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければなりません。

 

この「必要な旅費」とは、帰郷するまでに通常必要とする一切の費用をいい、労働者本人の分だけでなく、就業のため移転した家族の旅費も含まれると解されています(【昭和23.9.13発基第17号】等参考)。よって、設問は誤りです。本文は、こちら以下です。

 

 

これにて、労働契約の発生に関する問題を終わります。次は、労働契約の変更に関する問題です。