令和6年度版

 

〔3〕消滅(終了)

次に、有期労働契約の「消滅(終了)」に関する問題を検討します。

 

有期労働契約の消滅(終了)に関する体系を再度掲載しますと、次の通りです。

 

 

○ 有期労働契約の終了

 

◆有期労働契約の終了に関連する規定は次の通りです。大きく1と2に分かれます。

 

 

1 民法上、期間の定めのある労働契約(雇用契約)は、やむを得ない事由があるとき以外は、各当事者は、解除できない民法第628条)のが原則です = 中途解約の制限。

 

➡ そこで・・・

 

(1)労働者については

 

労働契約の期間満了前は、やむを得ない事由がない限り、解約できないのが原則であるため、労働者の人身拘束の問題が生じます。

 

➡ 従って、労基法が、有期労働契約期間の上限を定めました(労基法第14条第1項)。

 

 

(2)使用者については

 

労働契約法第17条第1項が、上記民法第628条を徹底し、使用者は、期間満了前は、やむを得ない事由がない限り解雇(解約)できないことを強行規定化しました = 雇用保障の効果。

 

 

2 他方、有期労働契約は、期間の満了により、当然に終了するのが原則です(それが当事者間の合意(契約)であるためです)= 自動終了の効果。

そこで、期間満了の際は、基本的には、合意により更新がなされるか(あるいは、民法第629条第1項こちら)の黙示の更新があるか)、それとも、更新されないか(雇止め)が問題となるだけとなります。※1、2

この有期労働契約の期間満了により使用者がその更新をしないことを「雇止め」といいます(有期労働契約の期間満了による終了のことですが、使用者が更新をしない(更新を拒否する)という側面に焦点があてられた表現です)。 

 

しかし、使用者による雇止めを無制約に認めますと、有期契約労働者は不安定な地位におかれることになるため、その保護が問題となります。

この雇止めに係る有期契約労働者の保護に関する規定としては、次のようなものが挙げられます。

 【令和6年度試験 改正事項

(1)雇止め等に関する基準等労基法第14条第2項、第3項。「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」(こちら以下))

 

 

(2)雇止め法理労働契約法第19条こちら以下)(平成24年8月10日施行)

 

 

  

※1 黙示の更新:

 

なお、有期労働契約の期間満了の際に、黙示の更新(民法第629条第1項こちら)が適用される場合はあります。

即ち、期間満了後も労働者が引き続き労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件でさらに雇用をしたものと推定されます(この場合、各当事者は、民法第627条の期間の定めのない雇用契約における解約の申入れをすることができます。即ち、いつでも解約の申入れができ、2週間経過により契約は終了します)。

 

 

※2 期間の満了による当然終了:

 

期間の満了により当然に労働契約が終了するという意味は、例えば、次のようなケースで重要です(すでに触れましたが再述します)。

例えば、4月1日から6か月の有期労働契約で使用されている労働者が、6月1日に業務上負傷して療養のため休業している場合、この労働者の労働契約の終了関係はどうなるのかです。

解雇制限期間(第19条)により、療養のための休業期間中(及びその後30日間)は、解雇が制限されますが、本ケースでは、この休業期間中の9月30日に労働契約の期間が満了しますので、ここで労働契約は終了することになります。

これは期間満了による終了であり、解雇(使用者の一方的な解約の意思表示)による終了ではありませんから、9月30日の契約終了については解雇制限の問題は生じません。

 

 

以下、上記の全体構造の2(こちら)の(1)「雇止めに関する基準等」及び(2)「雇止め法理」について詳しく見ます。

 

 

 

〈1〉雇止め等に関する基準等

有期労働契約の期間満了等における紛争を防止するための制度について学習します。

 

 

一 労働基準法第14条第2項、3項 = 厚生労働大臣の基準定立権等

有期労働契約の「雇止め等に関する基準」等が定められています(第14条第2項第3項)。

まず、次の第14条第2項及び第3項をお読み下さい。

 

 

【条文】

第14条(契約期間等)

 

〔第1項は、省略(全文は、こちら)。〕

 

2.厚生労働大臣は、期間の定めのある労働契約の締結時及び当該労働契約の期間満了時において労働者と使用者との間に紛争が生ずることを未然に防止するため、使用者が講ずべき労働契約の期間の満了に係る通知に関する事項その他必要な事項についての基準を定めることができる。

 

3.行政官庁は、前項の基準に関し、期間の定めのある労働契約を締結する使用者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。

 

 

○趣旨

 

有期労働契約の期間の満了等において紛争を生じることが多いため、厚生労働大臣が基準を定めることができるものとし、行政官庁がこの基準に関して使用者に対して行政指導(助言及び指導)を行うことができることを定めたものです。

 

※ 本規定は、上記キーワードである太字・赤字部分を暗記して下さい(選択式で未出題です)。

 

※ なお、この厚生労働大臣が定めた基準に違反した場合の効果ですが、本条第3項において行政官庁による助言及び指導について定められているだけであること、罰則も定められていないことから、厚生労働大臣の定める基準に違反しても、行政指導の対象となるだけであり、私法上の効力には影響ないと解されています。

例えば、この基準に基づき、後述のように30日前までに雇止めの予告が要求される場合がありますが、この雇止めの予告をしなくても、雇止めが無効となるわけではありません。

 

  

二 雇止め等に関する基準

令和6年度試験 改正事項

 

◆上記の第14条第2項の厚生労働大臣の基準定立権に基づいて、「有期労働契約の締結更新、雇止め等に関する基準」(以下、「雇止め等に関する基準」ということがあります)が告示されています。

 

当初は、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(【平成15.10.22厚生労働省告示第357号】。最終改正は、【平成24.10.26厚生労働省告示第551号】。平成25年4月1日施行)でしたが、令和6年4月1日施行の改正(【令和5.3.30厚生労働省告示第114号】)により、題名も「有期労働契約の締結、更新雇止めに関する基準」に改められました。

(ちなみに、平成23年改正までの改正の経緯等については、労働条件の明示のこちら以下でご紹介しました。)

 

 

※「雇止め」とは、有期労働契約の期間満了により使用者がその更新をしないことです(有期労働契約の期間満了による終了のことですが、使用者が更新をしない(更新を拒否する)という側面に焦点があてられた表現です)。 

 

「雇止め等に関する基準」は、重要です。選択式も含め、過去、出題が多いです(【選択式 平成20年度 A】では、改正前第1条(現在は改められています)の「更新の有無」が空欄にされました)。

まず、次の基準の規定を熟読して下さい。次に、混同しやすい点をゴロ合わせにより押さえます。

 

以下、この「雇止め等に関する基準」(第1条から第5条)を掲載しておきます。

 

 

【基準】

 

※ 次の基準第1条は、令和6年4月1日施行の告示の改正(【令和5.3.30厚生労働省告示第114号】)により新設されました。

 

基準第1条(有期労働契約の変更等に際して更新上限を定める場合等の理由の説明)

使用者は、期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)の締結後、当該有期労働契約の変更又は更新に際して、通算契約期間労働契約法(平成19年法律第128号)第18条第1項〔=無期転換ルール〕に規定する通算契約期間をいう。)又は有期労働契約の更新回数について、上限を定め、又はこれを引き下げようとするときは、あらかじめ、その理由を労働者に説明しなければならない

 

 

 ※ 次の基準第2条は、令和6年4月1日施行の告示の改正により改められています。

〔即ち、従来、「第1条」とあったのが、「第2条」に、従来、「期間の定めのある労働契約」とあったのが、「有期労働契約」に改められました。〕

 

基準第2条(雇止めの予告)

使用者は、有期労働契約(当該契約を3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているもの除く次条第2項において同じ。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日30日前まで、その予告をしなければならない。

 

 

※ 次の基準第3条は、令和6年4月1日施行の告示の改正により改められています。

〔即ち、従来、「第2条」とあったのが、「第3条」に改められ、同条第2項中、従来、「期間の定めのある労働契約」とあったのが、「有期労働契約」に改められました。〕

 

基準第3条(雇止めの理由の明示)

1.前条の場合において、使用者は、労働者が更新しないこととする理由について証明書請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。

 

2.有期労働契約が更新されなかった場合において、使用者は、労働者が更新しなかった理由について証明書請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。

 

 

※ 次の基準第4条は、令和6年4月1日施行の告示の改正により改められています。

〔即ち、従来、「第3条」とあったのが、「第4条」に改められ、従来、「期間の定めのある労働契約」とあったのが、「有期労働契約」に改められました。〕

 

基準第4条(契約期間についての配慮)

使用者は、有期労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない

 

 

・上記の基準の第2条(及び第3条)と第4条は、「3回以上」更新なのか「1回以上」更新なのか、「又は」なのか「かつ」なのか、さらには「1年」、といった数字などについて、混乱する危険があるので、ゴロ合わせで押さえておきます。

 

※【ゴロ合わせ】

 

○ 基準第2条の覚え方

 

・「最高またもやイー声で、雇止めを、予告さ

(人員削減に喜びを見出している人事部長が、また一人、大きなよく通る声で雇止めを予告しているのが聞こえました。)

 

→「さ・い・こう(=「3」回「以」上「更」新)、またもや(=「又は」)、イー(=「い」ち年)・こえ(1年を「超え」て)で、

雇止めを予告(=「雇止めの予告」)、さ(=「3」0日前まで)」

 

この基準第2条を思い出し、それとの比較で、基準第4条は、「3回以上更新」ではなく、「1回以上更新」であること、「又は」ではなく、「かつ」であること、「1年を超えて継続勤務」は同じであることを導きます。 

 

 

※ 次の基準第5条は、令和6年4月1日施行の告示の改正(【令和5.3.30厚生労働省告示第114号】)により新設されました。

 

基準第5条(無期転換後の労働条件に関する説明)

使用者は、労働基準法(昭和22年法律第49号)第15条第1項〔=労働条件の明示〕の規定により、労働者に対して労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第5条第5項に規定する事項〔=有期契約労働者に対する明示事項(「通算契約期間の上限」又は「更新回数の上限」の定めがある場合の当該上限、並びに無期転換ルールに基づく「無期転換申込みに関する事項」及び「無期転換後の労働条件」)〕明示する場合においては、当該事項(同条第1項各号に掲げるもの〔=絶対的明示事項(及び相対的明示事項)〕を除く。〔=即ち、無期転換ルールに基づく「無期転換後の労働条件」〕)に関する定めをするに当たって労働契約法第3条第2項の規定〔=就業実態に応じた均衡考慮の原則〕の趣旨を踏まえて就業の実態に応じて均衡を考慮した事項について、当該労働者に説明するよう努めなければならない。

 

 

 

以下、この「雇止め等の基準」について詳しく見ます。 

 

 

 

(一)基準第1条 = 有期労働契約の変更等に際して更新上限を定める場合等の理由の説明

令和6年度試験 改正事項

 

◆使用者は、期間の定めのある労働契約(「有期労働契約」)の締結後、当該有期労働契約変更又は更新に際して、通算契約期間又は有期労働契約の更新回数について、上限を定め、又はこれを引き下げようとするときは、あらかじめ、その理由を労働者に説明しなければなりません基準第1条)。

 

 

〇趣旨

 

使用者が有期労働契約の締結後に更新上限通算契約期間又は有期労働契約の更新回数上限のことです)を新たに定め、又はこれを引き下げようとするとき(例:更新回数について、従来の5回から4回に縮小する等)は、あらかじめ当該更新上限の新設短縮理由を説明させることによって、有期契約労働者の期待を保護し、紛争の発生防止等を図ろうとした趣旨です。

 

令和6年4月1日施行の施行規則の改正により、有期労働契約の締結(更新)の際に、更新上限の定めがある場合にはその更新上限を明示することが要求されましたが(施行規則第5条第1項第1号の2かっこ書こちらの①)、当該有期労働契約の締結後に、定めがなかった更新上限が新設されたり、更新上限が引き下げられる(短縮される)ことがあります。

この更新上限の新設や短縮は、通常、労働契約の変更となりますから、使用者・労働者間の合意が必要ですが(なお、就業規則の変更や労働協約の変更などによる場合は、それらの変更に係るルールが適用されます)、その際に事前に更新上限の新設・短縮の理由を説明させることによって、労働者の適切な意思決定を可能にさせる等の意味があります。

 

 

 

(二)基準第2条 = 雇止めの予告

◆使用者は、一定の有期労働契約について更新を拒否する場合(=雇止めをする場合)は、期間満了日30日前までに雇止めの予告をすることが必要です(基準第2条)。

 

 

○趣旨

 

労働者に有期労働契約の終了を覚知させて、再就職等の準備を保障する趣旨です(解雇予告制度の趣旨と類似する面があります)。 

 

 

1 要件

 

次の(1)及び(2)のいずれの要件にも該当することが必要です。

 

(1)使用者が、次のいずれかの有期労働契約を更新しないこととしようとすること。

 

(ア)当該有期労働契約を3回以上更新しているもの、又は

 

(イ)雇入れ日から起算して1年を超えて継続勤務しているもの

 

(2)あらかじめ当該有期労働契約を更新しない旨を明示していないこと。

 

 

2 効果

 

(1)当該有期労働契約の期間満了日30日前までに、更新しないこと(雇止め)の予告をしなければなりません。

 

(2)行政官庁は、この雇止めに関する基準に関し、使用者に対して、必要な助言及び指導を行うことができます(第14条第3項)。

そして、この基準に違反しても罰則適用されません

 

先に触れましたが(こちら)、雇止め等に関する基準は、それに違反する雇止めがなされても、行政指導の対象となるだけであり、当該雇止めの私法上の効力には影響しないものと解されます(例えば、30日前までに雇止めの予告をしなくても、雇止めが無効となるわけではありません)。

 

 

 

〇過去問:

 

・【平成16年問2E(一部補正)】

設問:

有期労働契約基準(「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」をいう。)において、使用者は、期間の定めのある労働契約(当該契約を3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならないとされている。

 

解答:

正しいです。

基準第2条です。 本文は、こちら以下です。

 

 

・【平成24年問2A(一部補正)】

設問:

労働基準法第14条第2項の規定に基づく「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準(平成15年厚生労働省告示第357号)」によると、期間が2か月の労働契約(あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。)を3回更新し、4回目に更新しないこととしようとする使用者は、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない。

 

解答:

正しいです。

次の図を参考にして下さい。

 

有期労働契約を3回以上更新した場合は、原則として、雇止めの予告が必要となります(基準第2条)。 本文は、こちら以下です。

 

 

・【平成19年問4D(一部補正)】

設問:

ある使用者が、その期間が3か月の労働契約を2回更新し、3回目を更新しないこととした。その場合には、労働基準法第14条第2項の規定に基づく「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」によれば、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない。

 

解答:

誤りです。

本問では、有期労働契約を3回以上更新していず、かつ、雇入れ日から起算して1年を超えて継続勤務をしていない(9カ月未満しか継続勤務していない)ため、雇止めの予告は不要です(基準第2条)。 本文は、こちら以下です。

 

 

次に、基準の第3条(雇止めの理由の明示)です。

 

 

 

(三)基準第3条 = 雇止めの理由の明示

まず、次の基準第3条を熟読して下さい。

 

 

【基準】

基準第3条(雇止めの理由の明示)

1.前条〔=基準第2条〕の場合において〔=前条の規定に基づき雇止めの予告をした場合ということです〕、使用者は、労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。

 

2.期間の定めのある労働契約〔=基準第2条において、「当該契約を3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。次条第2項〔=本規定〕において同じ。」と規定されています〕が更新されなかった場合において、使用者は、労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。

 

 

3回以上更新し、又は雇入れ日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係る有期労働契約について、雇止めの予告後又は雇止め後に、有期契約労働者に雇止め理由の証明書の請求権を認めたものです。

 

 

○趣旨

 

雇止めをめぐる紛争を防止しようとした趣旨です。

 

基準第3条第1項は「雇止めの予告後雇止め前」の雇止め理由証明書の請求の場合であり、第2項は「雇止め後」の雇止め理由証明書の請求の場合です。次の図を参考にして下さい。

 

※ なお、この基準第3条は、後にこちら以下で学習します法第22条の「退職時の証明書及び解雇理由の証明書」と構造が似ている面があります。 

 

1 基準第3条第1項の雇止め理由証明書

 

(1)要件

 

基準第3条第1項の「雇止めの予告後雇止め前」の雇止め理由証明書を使用者が交付しなければならないのは、次の(ア)及び(イ)のいずれの要件も満たした場合です。

 

(ア)3回以上更新し、又は雇入れ日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係る有期労働契約(あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除きます)について、使用者が更新しない旨予告したこと。

 

(イ)労働者が、更新しない理由について証明書請求したこと。

 

 

(2)効果

 

(a)使用者は、遅滞なく、当該証明書を交付しなければなりません。 

 

(b)行政官庁はこの厚生労働大臣が定める雇止めに関する基準に関し、使用者に対して、必要な助言及び指導を行うことができること(第14条第3項)、この基準に違反しても罰則は適用されないこと(結局、雇止めに関する基準は、それに違反する雇止めがなされても、行政指導の対象となるだけで、当該雇止めの私法上の効力には影響ないこと)は、基準第2条(雇止めの予告)の効果(こちら)と同様です。以下の本ページの基準についても同様です。

 

 

 

2 基準第3条第2項の雇止め理由証明書 

 

(1)要件

 

基準第3条第2項の「雇止め」の雇止め理由証明書を使用者が交付しなければならないのは、次の(ア)及び(イ)のいずれの要件も満たした場合です。

【過去問 平成18年問7C(こちら)】

 

(ア)3回以上更新し、又は雇入れ日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係る有期労働契約(あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除きます)について、使用者が更新しなかったこと(基準第2条かっこ書が規定)。

 

(イ)労働者が、更新しなかった理由について証明書請求したこと。

 

 

(2)効果 

 

◆上記1の(2)(こちら)の効果の場合と同様です。

 

 

 

◯過去問: 

 

・【平成18年問7C(一部補正)】

設問:

労働基準法第14条第2項の規定に基づく「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」によれば、期間の定めのある労働契約(当該契約を3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。)が更新されなかった場合において、労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

 

解答:

正しいです。

基準第3条第2項の「雇止め」の雇止め理由証明書のケースです。

設問の( )の部分には注意です。

 

 

以上で、基準第3条の雇止めの理由の明示について終わります。次に、基準第4条です。

 

 

 

(四)基準第4条 = 契約期間についての配慮

◆使用者は、1回以上更新し、かつ雇入れ日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係る有期労働契約を更新しようとする場合は、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間できる限り長くする努力義務を負います(基準第4条)。

 

 

○趣旨

 

有期労働契約の更新後の契約期間をできる限り長くする配慮をさせることで、有期契約労働者の生活の安定を図った趣旨です。

 

 

【基準第4条】

基準第4条(契約期間についての配慮)

使用者は、期間の定めのある労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない。

 

 

 

1 要件

 

1回以上更新し、かつ、雇入れ日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係る有期労働契約を更新しようとする場合。

 

※ 基準第2条(及び第3条こちら)との要件の違いに要注意です。本件では、「1回以上更新、かつ、1年越え」です。

また、本件の「1回以上更新、かつ、1年越え」においては、「1」は共通するのですが、「以上」と「超え」が異なり、この点にも注意が必要です。

 

 

2 効果

 

◆当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければなりません。

 

※ いわゆる努力義務規定です。従って、私法上の直接の効果は生じません。

 

※ なお、有期労働契約における契約期間の配慮については、労働契約法第17条第2項においても規定があります。前ページのこちらで学習しました。

 

・労契法第17条第2項

 

「使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。」

 

 

 

(五)基準第5条 = 無期転換後の労働条件に関する説明

令和6年度試験 改正事項

◆使用者は、労働者に対して、無期転換ルールに基づく「無期転換後の労働条件を明示する場合においては、当該労働条件に関する定めをするに当たって労働契約法第3条第2項の規定〔=就業実態に応じた均衡考慮の原則〕の趣旨を踏まえて就業の実態に応じて均衡を考慮した事項について、当該労働者に説明するよう努めなければなりません(基準第5条)。

 

 

〇趣旨

 

有期契約労働者が無期転換申込権を行使して、無期転換ルールが適用される場合は、成立する無期労働契約の労働条件は、従前の有期労働契約における契約期間以外の労働条件と同一の労働条件となりますが、別段の定めがある部分は除きます(労働契約法第18条第1項後段こちら以下。つまり、当事者の契約等(労働契約のほか、労働協約や就業規則により定めがある場合等も含みます)により無期転換後の労働条件を決定することができます)。

 

この無期転換申込権の存在や転換後の労働条件等を明確化する見地から、令和6年4月1日施行の施行規則の改正により、無期転換申込権が発生する有期労働契約の更新の際に、使用者に無期転換後の労働条件等を明示することが要求されました。

 

即ち、契約期間内に無期転換申込権が発生する有期労働契約を締結(更新)する場合においては、使用者は、労働契約締結の際に本来必要な労働条件の明示のほか、無期転換申込みに関する事項及び当該申込みに係る有期労働契約の内容である労働条件〔=無期転換後の労働条件〕のうち絶対的明示事項(第1項第2号を除きます)及び(定めをする場合の)相対的明示事項について明示しなければなりません(施行規則第5条第5項こちらの②)。 

 

そして、この「無期転換後の労働条件」を明示する場合において、使用者は、無期転換後の労働条件を決定するに当たって、他の通常の労働者(正社員等のいわゆる正規型の労働者及び無期雇用フルタイム労働者)とのバランスを考慮した事項(例:業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)について、有期契約労働者に説明するよう努力義務を負うというものです。

これにより、通常の労働者との労働条件の格差の是正に対する間接的影響が期待されます。

 

 

※ 通達(【令和5.10.12基発1012第2号】)から引用します。

 

〔引用開始。〕

 

(3)「就業の実態に応じて均衡を考慮した事項」とは、例えば、業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲等が考えられるものであること。

 

(4)雇止めに関する基準第5条に基づく説明は、無期転換後の労働条件に関する定めをするに当たって、他の通常の労働者(正社員等のいわゆる正規型の労働者及び無期雇用フルタイム労働者。この(4)において同じ。)の待遇との均衡を考慮した事項を説明するよう努めなければならないことを規定したものであること。

同条に基づく説明は、個別の待遇について、他の通常の労働者との待遇の相違の内容及び理由を説明することまで求められるものではないが、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号)第14条第2項〔=短時間・有期雇用労働法第14条第1項(労働一般のパスワード)こちら〕に基づく説明と同様に、通常の労働者との待遇の相違の内容及び理由の説明を行うことは、無期転換後の労働条件に対する理解に資するものであること。

 

〔引用終了。〕

 

 

 

※ なお、基準第5条は、条文上は次のような規定となっています。

 

使用者は、労働基準法第15条第1項の規定により、労働者に対して労働基準法施行規則第5条第5項に規定する事項〔=有期契約労働者に対する明示事項(「通算契約期間の上限」又は「更新回数の上限」の定めがある場合の当該上限、並びに無期転換ルールに基づく「無期転換申込みに関する事項」及び「無期転換後の労働条件」)〕を明示する場合においては、当該事項(同条第1項各号に掲げるもの〔=絶対的明示事項(及び相対的明示事項)〕を除く。〔=即ち、無期転換ルールに基づく「無期転換申込みに関する事項」及び「無期転換後の労働条件」が対象となりますが、次のようにその「定めをする」場合ですから、結局、後者の「無期転換後の労働条件」のみが対象となります〕)に関する定めをするに当たって労働契約法第3条第2項の規定〔=就業実態に応じた均衡考慮の原則〕の趣旨を踏まえて就業の実態に応じて均衡を考慮した事項について、当該労働者に説明するよう努めなければならない。

 

上記の通り、施行規則第5条第1項各号に掲げるものを除くと規定されていますから、「通算契約期間の上限」又は「更新回数の上限」の定めがある場合の当該上限は、本件の説明の努力義務の対象とはなりません。

また、明示事項に関する「定めをするに当たって」説明する努力義務を負うのですから、「定め」と関係しない「無期転換申込みに関する事項(=無期転換を申し込むことができる旨)」も対象となりません。

結局、「無期転換後の労働条件」が対象となることになります。 

 

 

次に、「雇止めに係る有期契約労働者の保護に関する規定」の2番目として、「雇止め法理」を学習します。

 

 

 

 

〈2〉雇止め法理(労働契約法第19条)

有期労働契約がその期間の満了により終了する(雇止め)という原則を貫きますと、労働者の保護の観点から妥当でない場合において、判例は、雇止めについて解雇権濫用法理を類推適用するという法理を形成してきました。

労働契約法第19条は、このいわゆる「雇止め法理」を明文化したものです。

平成24年の労働契約法の改正(平成24年8月10日公布。本条は、同日施行です(既存の判例法理を確認した規定であるため公布日に施行されています))により新設されました。 

 

まず、労働契約法第19条を掲載しておきます。最終的には、熟読して下さい。

 

 

【労働契約法】

労働契約法第19条(有期労働契約の更新等)

有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するもの契約期間満了する日までの間労働者当該有期労働契約更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者当該申込みを拒絶することが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前有期労働契約の内容である労働条件同一労働条件当該申込み承諾したものとみなす

 

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

 

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

 

【過去問 労働一般 平成29年問1E(こちら)】

 

 

○趣旨

 

有期労働契約は、期間満了により当然に終了するのが原則ですが(それが当事者間の合意(契約)だからです。従って、期間満了による契約の終了自体について、解雇は問題となりません)、本条は、かかる原則を維持すると有期契約労働者の保護の観点から妥当でないと認められる場合に、解雇権濫用法理(労働契約法第16条)を類推適用したのと同様の取扱いをするものです。

 

即ち、

 

(A)当該有期労働契約が反復更新されて、実質的には期間の定めのない労働契約と同視できる場合(上記の労契法第19条第1号に対応します)、又は

 

(B)労働者が当該有期労働契約の更新を期待することに合理的理由があると認められる場合(上記の第2号に対応します)において、

 

労働者が当該有期労働契約の更新等の申込みをしたときに、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないときは、雇止めは認められず、使用者は、従前の労働条件と同一の労働条件当該申込みを承諾したものとみなされます

 

まず、本規定の内容を理解するために、判例の雇止め法理をざっと見ておきます。 

 

※ なお、「雇止め法理」とは、労働契約法第19条を含む労働契約法が制定される前に判例が採用していた「雇止めについて解雇権濫用法理を類推適用するという法理」を指すことがありますが、当サイトでは、かかる「雇止め法理」を明文化した「労働契約法第19条」自体も「雇止め法理」と表現することが多いです。

 

 

判例の雇止め法理

1 上述のように、有期労働契約は、期間満了により当然に終了するのが原則です。

従って、期間満了による契約の終了自体について、解雇(=使用者による解約の意思表示)は問題となりません。

 

なお、期間満了後に労働者が引き続き労働に従事し、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前と同一の労働条件でさらに労働契約が締結されたものと推定されますが(民法第629条第1項こちら)の黙示の更新)、期間満了の際に、使用者が更新拒絶の旨を通知した場合は、黙示の更新はなされませんから、原則通り、有期労働契約は、期間満了により終了します。

 

しかし、例えば、有期労働契約が長期間反復更新されてきたような場合においては、かかる原則を維持しますと、有期契約労働者の期待は害され、その保護に欠けるおそれがあります。

そこで、判例は、一定の場合に、有期労働契約の更新の拒絶を実質的には解雇の意思表示にあたると考えて、解雇権濫用法理(現在は、労働契約法第16条で明文化されました)を類推適用することによって、雇止めを制限しました。これが雇止め法理といわれるものです。

背景には、信義則の考え方(民法第1条第2項)があるといえます(水町「詳解労働法」第2版390頁(初版381頁)参考)。

 

2 この雇止め法理が適用される場合として、大きくは2つのタイプがあると整理されており、これが本条の第1号と第2号に対応しています。 

 

(A)第1号 = 実質無期契約タイプ

第1号 = 実質無期契約タイプ」の代表的な判例が、【東芝柳町工場事件=最判昭49.7.22】です。

有期労働契約であっても、「期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたもの」と認められる場合に、雇止めの通知は実質的に解雇の意思表示にあたるとして、解雇に関する法理(解雇権濫用法理)を類推適用したものです。

 

※ 以下、この判決の内容をご紹介しますが、次の(事案)をお読み頂き、このようなケースにおいて、実質的に期間の定めのない労働契約と異ならないものと評価した点を把握して下さい(参考までに、判旨も掲載しましたが、下線部分を中心にざっとで足りるでしょう。以下のこのページの判例も同様です)。

 

(事案)

 

契約期間が2箇月の臨時工複数名について、5回~23回にわたり契約更新がなされた後、更新が拒絶されたケース。

仕事の種類・内容等は本工(正規従業員)と差異がない基幹臨時工であり、採用に際して、長期雇用を期待させる説明がなされており、更新手続もルーズになされていた。

 

 

(判旨)

 

「原判決は、以上の事実関係からすれば、本件各労働契約においては、上告会社としても景気変動等の原因による労働力の過剰状態を生じないかぎり契約が継続することを予定していたものであつて、実質において、当事者双方とも、期間は一応2か月と定められてはいるが、いずれかから格別の意思表示がなければ当然更新されるべき労働契約を締結する意思であつたものと解するのが相当であり、したがつて、本件各労働契約は、期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたものといわなければならず、本件各傭止めの意思表示は右のような契約を終了させる趣旨のもとにされたのであるから、実質において解雇の意思表示にあたる、とするのであり、また、そうである以上、本件各傭止めの効力の判断にあたつては、その実質にかんがみ、解雇に関する法理を類推すべきであるとするものであることが明らかであつて、上記の事実関係のもとにおけるその認定判断は、正当として首肯することができ、その過程に所論の違法はない。」  

 

〔※ なお、上記判示中の類推適用される「解雇に関する法理」の意味が問題ですが(解雇予告制度や解雇制限期間なども含むのかです)、次の(B)の【日立メディコ事件=最判昭61.12.4】からは、解雇権濫用法理や不当労働行為などによる解雇無効の法理のことを指すことになります(野川「労働法」427頁、429頁)〕

 

 

(B)第2号 = 期待保護タイプ

第2号 = 期待保護タイプ」の代表的な判例が、【日立メディコ事件=最判昭61.12.4】です。

長期にわたる反復更新はされていないなど、実質的に期間の定めのない労働契約とは同視できない場合であっても労働者が雇用継続を期待することにつき合理性があると認められるときは、解雇に関する法理の類推適用を認めるものです。

 

※ 次の判例も、(事案)と(結論)をお読み下さい。

なお、この判例では、非正規雇用労働者正規雇用労働者について、雇止めの正当性の判断基準を変えている点は重要です(この点は、択一式あたりで出題される可能性もあります)。

のちに※2(こちら)で見ます。

 

令和4年度の労働一般の選択式では、後掲の(判旨)の中から出題されました(後に見ます)。

 

 

(事案)

 

期間2箇月として工場に臨時員として雇用され、労働契約が5回更新された後、雇止めされたケース。各更新時期には、本人の意思を確認して更新の契約書が作成されていたが、担当作業は単純作業とはいえ臨時的なものではなかったという事案。

 

 

(結論)

 

期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたとはいえない場合であっても、雇用関係がある程度の継続を期待され、更新されていたときには、解雇に関する法理の類推適用が認められるとされました。

ただし、簡易な採用手続で雇用された有期契約労働者雇止めの効力判断基準は、終身雇用の期待の下期間の定めのない労働契約を締結している本工正規従業員)の解雇とは合理的な差異があるとし、正規従業員の希望退職募集を行う前に当該有期契約労働者の雇止めを行うこと認められるとされました。

 

 

(判旨)

 

「原審の確定した右事実関係の下においては、本件労働契約の期間の定めを民法90条に違反するものということはできず、また、5回にわたる契約の更新によつて、本件労働契約が期間の定めのない契約に転化したり、あるいは上告人と被上告人との間に期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたということもできないというべきである。

 

〔中略〕

 

原判決は、本件雇止めの効力を判断するに当たつて、次のとおり判示している。

 

(1)P工場の臨時員は、季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものではなく、その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり、上告人との間においても5回にわたり契約が更新されているのであるから、このような労働者を契約期間満了によつて雇止めにするに当たつては、解雇に関する法理が類推され、解雇であれば解雇権の濫用、信義則違反又は不当労働行為などに該当して解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかつたとするならば、期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられる。

 

(2)しかし、右臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである。

 

(3)したがつて、後記のとおり独立採算制がとられている被上告人のP工場において、事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり、その余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく、臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、これに先立ち、期間の定めなく雇用されている従業員につき希望退職者募集の方法による人員削減を図らなかつたとしても、それをもつて不当・不合理であるということはできず、右希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきである。原判決の右判断は、本件労働契約に関する前示の事実関係の下において正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。」

 

 

 

以上の判例の雇止め法理を明文化したものが、労働契約法第19条です。

 

【選択式 労働一般 令和4年度 D=「継続が期待されていた」、E=「従前の労働契約が更新された」(こちら)】

 

 

 

※ なお、通達(【平成24年8月10日基発第0810第2号】。平成24年改正法施行通達)は、この第19条の趣旨、判例の雇止め法理との関係について、次のように通知しています。

 

〔引用開始。〕

 

(1) 趣旨

 

有期労働契約は契約期間の満了によって終了するものであるが、契約が反復更新された後に雇止めされることによる紛争がみられるところであり、有期労働契約の更新等に関するルールをあらかじめ明らかにすることにより、雇止めに際して発生する紛争を防止し、その解決を図る必要がある。

このため、法第19条において、最高裁判所判決で確立している雇止めに関する判例法理(いわゆる雇止め法理)を規定し、一定の場合に雇止めを認めず、有期労働契約が締結又は更新されたものとみなすこととしたものであること。

 

(2) 内容

 

ア 法第19条は、有期労働契約が反復して更新されたことにより、雇止めをすることが解雇と社会通念上同視できると認められる場合(同条第1号)、又は労働者が有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由が認められる場合(同条第2号)に、使用者が雇止めをすることが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めは認められず、したがって、使用者は、従前の有期労働契約と同一の労働条件で労働者による有期労働契約の更新又は締結の申込みを承諾したものとみなされ、有期労働契約が同一の労働条件(契約期間を含む。)で成立することとしたものであること。

 

イ 法第19条は、次に掲げる最高裁判所判決で確立している雇止めに関する判例法理(いわゆる雇止め法理)の内容や適用範囲を変更することなく規定したものであること。

法第19条第1号は、有期労働契約が期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していた場合には、解雇に関する法理を類推すべきであると判示した東芝柳町工場事件最高裁判決(最高裁昭和49年7月22日第一小法廷判決)の要件を規定したものであること。

また、法第19条第2号は、有期労働契約の期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合には、解雇に関する法理が類推されるものと解せられると判示した日立メディコ事件最高裁判決(最高裁昭和61年12月4日第一小法廷判決)の要件を規定したものであること。

 

〔引用終了。〕

 

 

以下、第19条の条文に即して検討します。  

 

 

 

一 要件

労働契約法第19条による雇止め法理が適用されるためには、以下の(一)~(三)のいずれの要件も満たすことが必要です。

 

(一)有期労働契約であって、次の(A)(第1号)又は(B)(第2号)のいずれかに該当するものであること

 

(A)第1号 = 実質無期契約タイプ

 

有期労働契約であっても、実質的には、期間の定めのない労働契約と同視できる場合であるため、更新の拒絶を解雇の意思表示と同様に取り扱えるケースです。

 

◆「当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。」(労働契約法第19条第1号

 

 

(B)第2号 = 期待保護タイプ

 

当該有期労働契約を期間の定めのない労働契約と実質的に同視できない場合であっても、労働者が当該有期労働契約の更新を期待することに合理的理由があると認められるケースです。

 

 ◆「当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。」(労働契約法第19条第2号

 

 

(二)労働者が、契約期間満了日までの間に当該有期労働契約更新の申込みをしたこと、又は期間満了後遅滞なく有期労働契約締結の申込みをしたこと。

 

(三)使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないこと。

 

 

 

以下、詳しく見ます。

 

 

(一)有期労働契約であって、次の(A)(第1号)又は(B)(第2号)のいずれかに該当するものであること

(A)第1号 = 実質無期契約タイプ

 

有期労働契約であっても、実質的には期間の定めのない労働契約と同視できる場合であるため、更新の拒絶解雇の意思表示と同様に取り扱えるケースです。

 

◆「当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。」(労働契約法第19条第1号

 

 

(B)第2号 = 期待保護タイプ

 

当該有期労働契約を期間の定めのない労働契約実質的に同視できない場合であっても、労働者が当該有期労働契約の更新を期待することに合理的理由があると認められるケースです。

 

 ◆「当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。」(労働契約法第19条第2号

 

 

(参考)

 

なお、以上の「(A)第1号=実質無期契約タイプ」の要件に該当する場合には、「(B)第2号=期待保護タイプ」の要件にも該当しますから、(B)が(A)を含む形になり、従って、(B)のみ規定すれば足りるともなります。

ただ、判例法理が(A)➡(B)という段階をおって展開されてきたという沿革があること、また、(A)と(B)とで、効果について若干の違いが生じる可能性もありうること((A)のケースの有期契約労働者の方が、保護が強くなるケースもあり得ます)等から、(A)と(B)を規定上も区別しているといえます。

 

 

※ この(一)の要件について、平成24年改正法施行通達は、次のように通知しています(以下、抜粋します)。

 

法第19条第1号又は第2号の要件に該当するか否かは、これまでの裁判例と同様、当該雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理の状況、雇用継続の期待をもたせる使用者の言動の有無などを総合考慮して、個々の事案ごとに判断されるものであること。」

 

「なお、法第19条第2号の『満了時に』は、雇止めに関する裁判例における判断と同様、『満了時』における合理的期待の有無は、最初の有期労働契約の締結時から雇止めされた有期労働契約の満了時までの間におけるあらゆる事情が総合的に勘案されることを明らかにするために規定したものであること。したがって、いったん労働者が雇用継続への合理的な期待を抱いていたにもかかわらず、当該有期労働契約の契約期間の満了前に使用者が更新年数や更新回数の上限などを一方的に宣言したとしても、そのことのみをもって直ちに同号の該当性が否定されることにはならないと解されるものであること。」※1

 

 

要件の2番目です。

 

 

(二)労働者が、契約期間満了日までの間に当該有期労働契約の更新の申込みをしたこと、又は期間満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをしたこと

この要件は、判例の雇止め法理では判示されていなかったものですが、本条では、労働者の申込みに対して使用者が承諾したとみなす(これにより有期労働契約が更新される)という効果を生じさせる法律構成をとったため、労働者の申込みを要件としたものとされます(合意による契約の成立・変更という契約の原則の建前に沿った構成をしたことになります)。

 

労働者の申込みは、必ず有期労働契約の期間満了前に行わなければならないものではなく、期間満了後でも遅滞なく申し込めばよいことには注意です(対して、「無期転換ルール」の場合(労働契約法第18条第1項前段こちら))は、期間の満了前に申し込みをしなければならない点に注意です(ただし、再度更新された場合は、新たに無期転換申込権が発生します))。 

 

 

この(二)の要件に関する平成24年改正法施行通達は、次の通りです。

 

法第19条の『更新の申込み』及び『締結の申込み』は、要式行為ではなく、使用者による雇止めの意思表示に対して、労働者による何らかの反対の意思表示が使用者に伝わるものでもよいこと。【過去問 労働一般 令和3年問3E(こちら)】

また、雇止めの効力について紛争となった場合における法第19条の『更新の申込み』及び『締結の申込み』をしたことの主張・立証については、労働者が雇止めに異議があることが、例えば、訴訟の提起、紛争調整機関への申立て、団体交渉等によって使用者に直接又は間接に伝えられたことを概括的に主張立証すればよいと解されるものであること。」

 

法第19条の『遅滞なく』は、有期労働契約の契約期間の満了後であっても、正当な又は合理的な理由による申込みの遅滞は許容される意味であること。」

 

 

次に、 要件の3番目(最後)です。 

 

 

(三)使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないこと

この要件は、解雇権濫用法理の場合(労働契約法第16条)と同様です。

 

 

以上で要件を終わり、続いて効果です。  

 

 

二 効果

◆使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなされます(労働契約法第19条柱書)。

 

(一)労働者の更新の申込み、又は有期労働契約の締結の申込みに対して、使用者がこれを承諾したものとみなされますから、従前の有期労働契約が更新されたという効果を生じることになります。

 

先に触れましたが、契約の更新においても、新たな契約の成立として、申込みに対する承諾により更新される契約が成立するのが原則ですから、本条の効果も、労働者の申込みに対する使用者の承諾の擬制という構成をとっています(なお、法律による合意の創出については、こちらを参考)。

 

(二)従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件の内容による更新となります。 

 

 

〇過去問:

 

・【労働一般 平成29年問1E】

設問:

有期労働契約が反復して更新されたことにより、雇止めをすることが解雇と社会通念上同視できると認められる場合、又は労働者が有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由が認められる場合に、使用者が雇止めをすることが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めは認められず、この場合において、労働者が、当該使用者に対し、期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなされる。

 

解答:

誤りです。

期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたとき」ではなく、「有期労働契約(期間の定めのある労働契約)の更新の申込みをしたとき又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをしたとき」が正しいです。

 

雇止め法理(労働契約法第19条)は、所定の要件に該当する場合に、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件による有期労働契約の更新を擬制する制度です。従って、その適用により、期間の定めのない労働契約に転化するわけではありません。

 

なお、本問は、すぐあとで見ます【学校法人福原学園(九州女子短期大学)事件=平成28.12.1】(こちら)において、期間の定めのない労働契約に転化するかが争点となったことがヒントとなって出題されたのかもしれません。

 

 

・【労働一般 令和3年問3E】

設問:

有期労働契約の更新等を定めた労働契約法第19条の「更新の申込み」及び「締結の申込み」は、要式行為ではなく、使用者による雇止めの意思表示に対して、労働者による何らかの反対の意思表示が使用者に伝わるものでもよい。

 

解答:

正しいです(【平成24.8.10基発第0810号第2号】第5の5(2)エ。前掲のこちら)。

労働契約法第19条のいわゆる「雇止め法理」における労働者による有期労働契約の「更新の申込み」や「締結の申込み」については、同条中、書面による等の要式行為である旨の文言はないため、同条の適用が可能であるような労働者による意思表示であれば足りるものと解されます。

 

 

 

※1 不更新条項、更新限度条項の問題:

雇止め法理において、「今回が最後の更新である」旨の条項(不更新条項)や更新の回数や年数に限度(上限)を定める条項(更新限度条項)の取り扱いが問題となります。

即ち、これらの条項が雇止め法理の要件である「無期契約労働者の解雇と社会通念上同視できること」や「有期労働契約の更新に対する合理的期待」の形成を妨げたり、いったん形成されたそれらの状況を失わせるものか等が問題です。

 

※ なお、かかる条項は、労働契約法第18条の「無期転換ルール」との関係では、その有効性自体が問題となります。

即ち、「無期転換ルール」により、有期労働契約が5年(原則。以下この※1において同様です)を超えて反復更新されますと無期転換申込権が発生しますから、この5年経過前に当該契約を終了させるためにこれらの条項が利用されるおそれがあります。

そこで、これらの条項が公序に違反しないかは問題です(民法第90条)。

 

ただ、「無期転換ルール」は、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合に無期転換申込権を発生させる制度であり、この5年以内に有期労働契約が更新されないことを否定しているものではありません。

そこで、上記のような条項を当然に違法とまでみることは困難といえます(その後、令和6年4月1日施行の施行規則の改正により、労働契約締結の際の労働条件の明示事項として、有期労働契約の締結(更新)の際に、更新上限(有期労働契約の通算契約期間又は更新回数上限)の定めがある場合にその更新上限を明示することが追加されましたが(施行規則第5条第1項第1号の2かっこ書こちらの図の左欄の(2)の赤字部分)、これは不更新条項、更新限度条項が適法であることを前提としていることになります)

ただし、かかる条項に基づいて雇止めが行われる場合は、雇止め法理(労働契約法第19条)が適用されることがあります。 

以下、この雇止め法理の適用に関する問題です。 

 

不更新条項・更新限度条項と雇止め法理との関係については、それらの条項が有期労働契約の締結や更新の際に十分説明され、当該労働者が納得したと認められる場合は、一般的には、「有期労働契約の更新に対する合理的期待」等は否定され、雇止め法理は適用されにくいといえます。

他方、いったん更新に対する合理的期待が形成された後に、使用者が以後更新しない旨を明示したり更新限度を一方的に定めたような場合には、原則として、当該合理的期待は失われません(こちらの通達を参考)。

 

この点について、水町「詳解労働法」第2版392頁(初版382頁)は、要旨、本問は、契約を終了させる合意(真意)の存否の問題ではなく、労働契約関係上の信義則に基づき労働者の信頼を保護すべきか否かの問題であり、更新に関する契約の形式・文言ではなく、継続的な関係の中での信義と誠実という観点から実態に照らして判断されるべきとします。

判例の雇止め法理及び労働契約法第19条の理論的根拠について、信義則による信頼保護の要請を考慮しています(同第2版390頁(初版381頁))。

 

 

次に、この更新限度条項も関係します近時の最高裁判例をご紹介します。

 

 

・【学校法人福原学園(九州女子短期大学)事件=最判平成28.12.1

 

(事案)

 

3年を上限として1年ごとに更新する有期労働契約を締結した短期大学の講師が、1年目(平成23年4月1日開始)の終了時に雇止めになったため、当該雇止めは認められない旨を主張した事案。

当該契約では、勤務成績を考慮し、大学側が講師の任用を必要と認め、かつ、当該者が希望した場合は、契約期間が満了するときに、期間の定めのない職種に異動することができる旨が定められていた。

なお、訴訟継続中に3年が経過したため、大学側は、更新限度期間が3年であることを理由とする予備的な雇止めも行った(より正確には、短大側は、本件訴訟係属中の平成25年2月7日に、仮に本件労働契約が1年の契約期間の満了時(平成24年3月31日)に終了していないとしても、1年更新した契約の満了時である平成25年3月31日をもって本件労働契約を終了する旨を通知している。さらに、平成26年1月22日に、本件規程において契約期間の更新の限度は3年とされていることから、仮に本件労働契約が終了していないとしても、3年を経過する平成26年3月31日をもって本件労働契約を終了する旨を通知した)。 

 

原審(【福岡高判平26.12.12】)は、1年目及び2年目のそれぞれの期間満了時の雇止めについて、いずれも客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないとして、当該雇止めの効力を否定して本件労働契約の2回の更新を認めました。

そのうえで、本件3年の期間は「試用期間」であるとして、特段の事情のない限り、「期間の定めのない労働契約」(無期労働契約)に移行するとの期待に客観的な合理性があるものとして、4年目(3年の期間満了後)から無期労働契約に移行したと判断しました。

 

しかし、最高裁は、次のように判示して、この無期労働契約への移行を否定し、3年目の期間満了により当該労働契約は終了したと判断しました。

次の判旨中の①~③の番号は、当サイトで挿入しています。 

 

 

(判旨)

 

「本件労働契約は、期間1年の有期労働契約として締結されたものであるところ、その内容となる本件規程〔=契約職員規程〕には、①契約期間の更新限度が3年であり、その満了時に労働契約を期間の定めのないものとすることができるのは、これを希望する契約職員の勤務成績を考慮して上告人〔=学校法人〕が必要であると認めた場合である旨が明確に定められていたのであり、被上告人〔=講師〕もこのことを十分に認識した上で本件労働契約を締結したものとみることができる。上記のような本件労働契約の定めに加え、②被上告人が大学の教員として上告人に雇用された者であり、大学の教員の雇用については一般に流動性のあることが想定されていることや、③上告人の運営する3つの大学において、3年の更新限度期間の満了後に労働契約が期間の定めのないものとならなかった契約職員も複数に上っていたことに照らせば、本件労働契約が期間の定めのないものとなるか否かは、被上告人の勤務成績を考慮して行う上告人の判断に委ねられているものというべきであり、本件労働契約が3年の更新限度期間の満了時に当然に無期労働契約となることを内容とするものであったと解することはできない。そして、前記2(3)の事実関係に照らせば、上告人が本件労働契約を期間の定めのないものとする必要性を認めていなかったことは明らかである。

また、有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換について定める労働契約法18条〔=無期転換ルール〕の要件を被上告人が満たしていないことも明らかであり、他に、本件事実関係の下において、本件労働契約が期間の定めのないものとなったと解すべき事情を見いだすことはできない。

以上によれば、本件労働契約は、平成26年4月1日から期間の定めのないものとなったとはいえず、同年3月31日をもって終了したというべきである。」

 

 

(解説)

 

1 本件は、有期労働契約に更新限度条項が付されている事案です。

この更新限度を超えて契約が存続するのかについて、原審は、雇止め法理が予定している「有期労働契約」への更新ではなく、「無期労働契約」への移行(転換)を認めたものです。

 

 

2 過去2回の更新拒否

 

まず、本件最高裁判決は、平成26年3月31日をもって本件労働契約が終了した旨を判示していますから、過去2回の学校法人による更新拒否については、原判決の判断と同様に違法であると解しているのでしょう。

即ち、雇止め法理が適用され、「当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること」(労契法第19条第2号)に該当すると判断したものと推測されます。

 

 

3 更新限度を超える更新

 

しかし、本判決は、3年の期間満了後は(無期労働契約への移行を否定しているだけでなく)有期労働契約への更新も認めていず、雇止め法理の適用を否定していることになります。

判示(こちら)の特に①の事情により、本件では、有期労働契約の締結時に、更新の限度が3年であることが明示され、当該労働者もそれを十分認識していたことから、当該有期労働契約の更新に対する合理的期待は認められず、3年の更新限度期間の満了による雇止めは正当なものと認められたことになります。

 

そして、判示(こちら)の③からしますと、3年の更新限度期間の満了後に「無期労働契約」への移行が行われる例はあったようですが、「有期労働契約」への更新の例はみられなかったようです。

仮に3年の更新限度期間の満了後に「有期労働契約」への更新の例がしばしばみられたようなケースなら、本件において雇止め法理が適用されて有期労働契約への更新が認められることもあり得たのかもしれません。

 

 

4 無期労働契約への転換

 

なお、雇止め法理は、「従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」制度ですから(労働契約法第19条柱書)、「有期労働契約」への更新を認めるものであり、本件の原審の判断のように、「無期労働契約」への転換を認めるものではありません。

ただ、「無期労働契約」への転換の期待に合理的な理由があると認められる場合は、雇止め法理の労契法第19条第2号を類推適用するなどして、「無期労働契約」への転換が肯定される余地があるのかもしれません(後掲の櫻井裁判官の補足意見参考)。

 

 

5 試用期間

 

なお、すでに学習しましたが(こちら以下)、期間を定めた労働契約の場合であっても、その期間が労働者の適格性を判断する目的で設けられたものであるときは、特段の事情がない限り、この期間は有期労働契約としての期間ではなく、「試用期間」と考えるべきとする判例法理が形成されています(【神戸広陵学園事件=最判平2.6.5】)。

(この構成によるなら、期間を定めていても、それは「試用期間」に過ぎないのですから、実質的には、期間の定めのない労働契約が存在するものと評価されてしまいます。)

 

本判決では、更新限度期間である3年と試用期間との関係について直接明示はしていませんが、おそらく、上記判示の①~③を考慮して、「右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合」(上記【神戸広陵学園事件=最判平2.6.5】の判示)にあたるとして、当該期間は試用期間ではなく、労働契約の(最長の)存続期間であると解したのでしょう。  

 

 

※ なお、櫻井龍子裁判官の補足意見が付されており、ご紹介します(補足意見は、直接、出題対象となることはないでしょうが、法廷意見の理解等のために参考になります)。

 

〔引用開始。〕

 

私は法廷意見に賛同するが、近年、有期労働契約の雇止めや無期労働契約への転換をめぐって、有期契約労働者の増加、有期労働契約濫用の規制を目的とした労働契約法の改正という情勢の変化を背景に種々議論が生じているところであるので、若干の補足意見を付記しておきたい。

 

1 まず、本件は、法廷意見に述べるとおり、有期労働契約の更新及び無期労働契約への転換の可能性、その場合の判断基準等が、当事者間の個別契約の内容となる本件規程に明記され、一方、被上告人も契約締結の際契約内容を明確に理解し了解していたと思われ、雇止めの措置その基準等に照らし特段不合理な点はなかったと判断できる事案であったといえる。

本件においては、無期労働契約を締結する前に3年を上限とする1年更新の有期労働契約期間を設けるという雇用形態が採られているところ、被上告人が講師として勤務していたのは大学の新設学科であり(原判決の引用する1審判決参照)、同学科において学生獲得の将来見通しが必ずしも明確ではなかったとうかがわれることや、教員という仕事の性格上、その能力、資質等の判定にはある程度長期間が必要であることを考慮すると、このような雇用形態を採用することには一定の合理性が認められるが、どのような業種業態職種についても正社員採用の際にこのような雇用形態が合理性を有するといえるかについては、議論の余地のあるところではなかろうか。

この点は、我が国の法制が有期労働契約についていわゆる入口規制を行っていないこと、労働市場の柔軟性が一定範囲で必要であることが認識されていることを踏まえても、労働基準法14条〔=労働契約の期間、雇止めに関する基準等〕や労働契約法18条〔=無期転換ルール〕の趣旨・目的等を考慮し、また有期契約労働者(とりわけ若年層)の増加が社会全体に及ぼしている種々の影響、それに対応する政策の方向性に照らしてみると、今後発生する紛争解決に当たって十分考慮されるべき問題ではないかと思われる。

 

2 さらに、原審の判断についても一言触れておきたい。

原審の判断を、仮に、判例が積み重ねてきたいわゆる雇止め法理、あるいは労働契約法19条2号の判断枠組みを借用して判断したものととらえることができるとしても、雇止め法理は、有期労働契約の更新の場合に適用されるものとして形成、確立されてきたものであり、本件のような有期労働契約から無期労働契約への転換の場合を想定して確立されてきたものではないことに原審が十分留意して判断したのか疑問である。

すなわち、原審は無期労働契約に移行するとの被上告人の期待に客観的合理性が認められる旨の判断をしているが、有期労働契約が引き続き更新されるであろうという期待と、無期労働契約に転換するであろうという期待とを同列に論ずることができないことは明らかであり、合理性の判断基準にはおのずから大きな差異があるべきといわなければならない。無期労働契約への転換は、いわば正社員採用の一種という性格を持つものであるから、本件のように有期労働契約が試用期間的に先行している場合にあっても、なお使用者側に一定範囲の裁量が留保されているものと解される。そのことを踏まえて期待の合理性の判断が行われなければならない。

もとより、このような場合の期待の合理性は、日立メディコ事件(最高裁昭和56年(オ)第225号同61年12月4日第一小法廷判決・裁判集民事149号209頁)をはじめこれまでの裁判例に明らかなとおり、労働者の主観的期待を基準に考えるのではなく、客観的にみて法的保護に値する期待であるといえるか否かを、様々な事情を踏まえて総合的に判断すべきものであるということを念のため付け加えておきたい。

以上の考え方に照らすと、仮に原審の判断枠組みに沿って考えるとしても、本件は無期労働契約転換についての期待に客観的合理性があったと認めることができる事案とはいえず、雇止めは有効と判断すべきこととなろう。

 

〔引用終了。〕  

 

 

※2 非正規雇用労働者の優先的な雇用調整の可否:

雇用調整(人員整理)の際に、正規雇用労働者より先に非正規雇用労働者を調整の対象とすることがあります。

この点について、前掲の【日立メディコ事件=最判昭和61.12.4】は、「臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである」として、事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり、臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきであるとしました(こちら以下)。

 

これについて、水町「詳解労働法」第2版350頁(初版345頁)は、要旨、次のように説明しています。

確かに、雇止め法理の基礎にある信義則が当事者間の雇用継続の期待を保護しようとする規範であることを考慮すると、雇用継続の期待に差異がある正規労働者と非正規労働者との間ではその要保護性が異なる(雇用継続の期待が相対的に小さい労働者を先に解雇・雇止めすることも不合理とはいえない)とすることも、理論的に説明可能な解釈とします。

もっとも、当事者間の関係は必ずしも一様のものではなく、非正規労働者の中にも、雇用継続の期待など要保護性の高い労働者がいることも考えられ、このような実態の多様性を考慮すると、優先解雇・雇止めの合理性判断は定型的になされるべきではなく、個別の事案のなかで、雇用継続の期待の大きさ、社会的保護の必要性、当事者間での協議・交渉過程などを具体的に勘案して決定されるべきとします。

 

 

以上で、雇止め法理を終わります。

次のページでは、定年到達や当事者の消滅について見ます。